JP3602500B2 - 苗竹生産方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、竹の発芽および発根方法、特に蓬莱竹の発芽および発根方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蓬莱竹は、国内では南九州、四国南部、近畿南部等に自生するほか、従来から各地で主として鑑賞用として庭等に植えられている。また、特開2000−154546号公報に記載のように、蓬莱竹等を代表とするバンブー種の竹は、根が横に広がらずに下方に強く長く伸びる性質を有していることから、山林や造成地の法面の崩壊防止、災害(自然災害、人為災害)により崩壊した法面の復旧、河川や池の護岸改修等のための土留め用として利用することが考えられ、蓬莱竹等の特定種の竹の茎の部分を複数の節を含む長さに切って、横向けにして土中所定深さに埋め込むことにより、節の部分から発根し下方に強く伸びる根によって土留めを行う、特定種の竹の植生を利用する土留め方法が開発された。この方法によれば、蓬莱竹等の根によって土留めを強力に行うことができ、しかも、竹が成長することによって緑化を促進できて、周辺環境とも馴染みやすい。また、施工が簡単で工費も安価にできる。また、この方法は、畑で苗竹を生産する方法としても利用できる。その場合、複数の節を含む茎の部分を畑で発芽および発根させて、そのまま例えば土留め用に出荷することもでき、また、節毎に刻んで鑑賞用の苗竹として出荷することもできる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
蓬莱竹等の特定種の竹は、複数の節を含む茎の部分を畑の土に埋めて発芽および発根させ、苗竹として出荷することが可能であるが、このように畑で発芽および発根させる場合の発根率は、3年生等の条件の良い竹を使用した場合でも概ね20%程度で、歩留まりが良いとはいえない。
【0004】
この発明は、発根率が高く、生産効率の良い苗竹生産方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の苗竹生産方法は、竹の茎の部分を複数の節を含む所定長さに切り、水を張った水槽に入れて、水面下で略水平に保持するとともに、水槽内の水に酸素を注入し、所定日数を経て節の部分から発芽および発根させるものであり、特に、蓬莱竹に適用するのが好適な苗竹生産方法である。
【0006】
この場合、水に注入した酸素によって、竹の節の部分からの発芽および発根を促進し、また、竹の腐りを防止することができて、例えば蓬莱竹では、20日程度の比較的短い期間で、100%近い発根率で発芽および発根させ、活着率の高い苗竹として出荷することが可能となる。
【0007】
竹は、2稈3節以上の長さに切るのがよく、水面下に保持するため、少なくとも一部の節と節の間の稈の部分に、穴を開け、浸水させるのがよい。
【0008】
また、複数の節を含む所定長さに切った複数本の竹を水槽内で筏状に並べ、重しを載せて水面下所定位置に保持するようにするとよい。
【0009】
そして、複数の節を含む所定長さに切った竹は、水面下10センチメートル以内に保持するのがよい。
【0010】
なお、竹は、一般的には切り取って2から3日以内(最長5日まで可)に加工して水槽に入れるのが好ましい。根付き掘り出しの場合では掘り出し後10日以内、それ以外の場合では切り取って3から4日以内が発根の可能な期間である。ただし、発根率を高めるためには、水槽に入れる迄の日数を上記期間の半分程度に収めるのがよく、したがって、上述のとおり一般的に切り取ってから2から3日以内に作業を行うのが好ましく、最長5日までは可能ということになる。もっとも、竹が枯れて発根の可能性が無くなるまでの日数は、根付きの状態か、切り取ったままの状態か、葉っぱを取り除いた状態か、所定長さごとに刻んだ状態かといった条件や、保管状態(温度、湿度、太陽光等)により様々であって、要は水分発散を遅らせることによって作業迄の日数を延ばすことができる。
【0011】
こうして作業を適期に好適な条件で行うことにより、例えば蓬莱竹の場合、上述のように20日程度の比較的短い期間で、100%近い発根率で節の部分から発芽および発根させることができ、十分に発芽および発根させて活着率の高い苗竹とすることができる。この苗竹は、そのまま例えば土留め用に出荷し、また、節毎に刻んで鑑賞用等の苗竹として出荷する。
【0012】
例えば蓬莱竹は、特に3年生の竹の場合に発根率が高く、5年生まで発根可能である。ただし、それらの竹の全ての部分が利用できるわけではなく、3年生では穂先から1.5m程度の部分は発根しないため、それ以外の部分を使用する必要がある。そして、5年生では発根する部分が非常に少なくなる。また、2年生でもしっかりした材料であれば、むしろ5年生より発根率が高いこともある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、例えば次のように実施するものである。
【0014】
図1は実施の形態の設備配置の一例を示す。図において、1は水槽、2は酸素発生機、3はホース、4はバブラー(発泡機)である。
【0015】
この例では、例えば3年生の蓬莱竹を使用し、その茎の部分を複数の節を含んだ2稈3節以上(図示の例では、4稈5節)の所定長さに切った竹5を、水6を張った水槽1内に入れ、水面下で略水平に保持するとともに、水槽1内の水に酸素発生機2からホース3およびモータ駆動のバブラー4を経て酸素を注入する。
【0016】
水槽1は、コンクリートや綱板等により形成した例えば矩形プール状の容器であってよく、また、例えば地面を矩形プール状に掘り下げて側面および底面を防水処理したものであってよく、その他、天然の池等であってもよい。
【0017】
酸素発生機2は、魚の養殖場等で使用されているものと同様のもので、コンプレッサーを内蔵する。酸素発生量は操作パネルにより調整可能である。
【0018】
使用する蓬莱竹は、切り取って2から3日以内(最長5日まで可)のもので、茎の部分を切り、枝を払って、図示のような例えば4稈5節の長さ(3〜4m程度)の竹5とする。図において、aはの節を示し、bは稈を示す。竹5には、一部あるいは全部の節aと節aの間の稈bの部分に穴(図示せず)を開け、浸水するようにしておく。そして、その切って加工した竹5を、水6を張った水槽5内に入れ、通常は複数本の竹5を筏状に並べて、木の棒や金属のパイプ等の重しを載せ、水面下例えば5cm前後に保持する。その際、竹の種類や季節にもよるが、一般的に水面下10cm以内に保持することが好ましい。なお、重しが十分であれば稈bの部分の穴は必ずしも必要でない。また、重しがなくても、稈bの部分の穴への浸水だけで竹5を適度に沈ませることも可能である。また、水槽に入れる竹5は複数本でなくてもよいことは勿論である。
【0019】
こうして水槽1内で水面下に竹5を保持した状態で、酸素発生機2を稼働させて、酸素をホース3およびバブラー4を経て発泡状態で水中に注入し、酸素発生量を所定量に調整しつつ、各節aの部分から発芽および発根するまでその状態を保つ。
【0020】
この方法により、水中に注入した酸素の作用で、竹の節aの部分からの発芽および発根を促進するとともに、腐りを防止することができ、季節にもよるが、概ね20日程度で、100%近い発根率で発芽および発根し、活着率の高い苗竹となる。
【0021】
図2は発芽および発根した竹の一例を示す。図において、cは竹の根、dは芽である。このように各節aから発芽および発根した竹5は、そのまま苗竹として出荷し、あるいは、図3に示すように節毎に刻んで出荷する。図3において、一点鎖線は切断箇所を示す。
【0022】
こうして生産され出荷される苗竹は、蓬莱竹の場合に、根が横に広がらずに下方に強く長く伸びる性質を利用して、山林や造成地の法面の崩壊防止、災害により崩壊した法面の復旧、河川や池の護岸改修等のための土留めとして好適であり、また、節毎に刻んだ苗竹を鑑賞用として例えば図4に示すように鉢植えするのに適している。図4において、7は鉢植え容器(植木鉢、プランター等)、8は土である。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の苗竹生産方法によれば、水と酸素によって竹の節の部分からの発芽および発根を促進するとともに、竹の腐りを防止することができ、蓬莱竹等の特定種の竹の場合に、20日程度の比較的短い期間で、100%近い発根率で発芽および発根させるなど、活着率の高い苗竹を効率良く生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の設備配置の一例を示す断面図である。
【図2】実施の形態において発芽および発根した竹の一例を示す正面図である。
【図3】実施の形態において発芽および発根した竹を節毎に刻む加工の一例を示す正面図である。
【図4】実施の形態において苗竹の植え付け状態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 水槽
2 酸素発生機
3 ホース
4 バブラー
5 竹
6 水
a 節
b 稈
c 根
d 芽
Claims (5)
- 竹の茎の部分を複数の節を含む所定長さに切り、水を張った水槽に入れて、水面下で略水平に保持するとともに、水槽内の水に酸素を注入し、所定日数を経て節の部分から発芽および発根させることを特徴とする苗竹生産方法。
- 蓬莱竹に適用した請求項1記載の苗竹生産方法。
- 2稈3節以上の長さに切った竹の、少なくとも一部の節と節の間の稈の部分に、穴を開け、浸水させる、請求項1または2記載の苗竹生産方法。
- 複数の節を含む所定長さに切った複数本の竹を水槽内で筏状に並べ、重しを載せて水面下所定位置に保持する、請求項1、2または3記載の苗竹生産方法。
- 複数の節を含む所定長さに切った竹を水面下10センチメートル以内に保持する、請求項1、2、3または4記載の苗竹生産方法。
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