JPH06256782A - 金属／セラミック潤滑用のチオカルバメート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 金属−セラミック界面を潤滑させる方法、お
よび該方法により潤滑させた金属−セラミック界面を含
む内燃機関を提供することにある。 【構成】 金属−セラミック界面を潤滑させる方法であ
って、該方法は、以下の(a)および(b)を含有する組成物
を該界面に供給することを包含する： (a)担体流体、および(b)チオカルバメート化合物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、セラミック−金属界面
（例えば、これは、内燃機関に見いだされ得る）を潤滑
させる方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】乗用車のセラミック部品（例えば、セラ
ミックバルブトレーン部品）の使用の増大により、混成
セラミックエンジンに使用できる潤滑剤が必要とされて
いる。しかしながら、ジチオリン酸亜鉛極圧剤を含有す
る従来の潤滑剤の存在下では、セラミックと接触してい
る金属の高い摩耗損失が、問題となっている。潤滑剤中
の界面活性添加剤（清浄剤および分散剤）間の相互作用
は、耐摩耗性の存続期間にて、低負荷領域で、ジチオリ
ン酸亜鉛の耐摩耗性能に悪影響を与えることが、Lub. E
ng., 45, 1989, p.761, F. Roundsに報告されている。
従って、本発明は、このようなセラミック−金属界面を
潤滑させる改良方法を提供する。

【０００３】Tribology Transactions, 34 (1991) 417-
425（Preprint No. 90-TC-2C-1、October 8-10, 199
0）、Gates and Hsu、「Effect of Selected Chemical
Compounds on the Lubrication of Silicon Nitride」
は、有機ジチオカルバミン酸モリブデンおよびイオウ−
モリブデン化合物を含めた種々の化合物を用いる、セラ
ミック表面の潤滑を開示している。モリブデン−イオウ
化合物は、リンを含有しないなら、窒化ケイ素の摩擦低
減剤として作用するにすぎないことが、報告されてい
る。リンも存在するときには、低摩擦性に加えて、低摩
耗性も得られる。

【０００４】Tribology Transactions, 32 (1989) 2、2
51-257、Yamamoto and Gondo、「Friction and Wear Ch
aracteristics of Molybdenum Dithiocarbamate and Mo
lybdenum Dithiophosphate」は、炭化水素ベースライン
油において、高炭素クロムベアリング鋼の表面間の摩擦
を低減するために、ジチオカルバミン酸モリブデンの使
用を開示している。

【０００５】1989年５月23日の米国特許第4,832,867号
（Seiki et al.）は、潤滑ベース油、少なくとも１種の
有機リン化合物、およびオキシ硫化アルキルホスホロジ
チオ酸モリブデンおよびオキシ硫化アルキルジチオカル
バミン酸モリブデンからなる群から選択される少なくと
も１種の有機モリブデン化合物を含有する潤滑油組成物
を開示している。この潤滑組成物は、報告によれば、耐
摩耗特性、焼付き防止性および耐腐食性に優れており、
ギア油、 ベアリング油、内燃機関油、自動変速機油、
油圧作動液および金属加工油剤に適切である。

【０００６】1989年７月11日の米国特許第4,846,983号
（Ward, Jr.）は、機能流体（例えば、潤滑油、自動変
速機油および燃料組成物）用のチオカルバミン酸モリブ
デンまたはチオカルバミン酸タングステン添加剤を開示
している。

【０００７】

【発明の要約】本発明は、金属−セラミック界面を潤滑
させる方法を提供し、該方法は、以下の(a)および(b)を
含有する組成物を該界面に供給することを包含する： (a)担体流体、および(b)チオカルバメート化合物。

【０００８】本発明は、さらに、前記方法により潤滑さ
せた金属−セラミック界面を含む内燃機関を提供する。

【０００９】

【発明の構成】本発明では、金属−セラミック界面に、
潤滑剤組成物が供給される。金属には、構造物形成の目
的に使用できるいずれの金属も挙げられ、これらには、
鉄系金属、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、チ
タン、タングステン、バナジウム、クロム、銅、パラジ
ウム、銀、カドミウム、スズ、白金、金、鉛、およびこ
れらの金属同士のおよびこれらの金属と他の元素との合
金、配合物および金属化合物が含まれる。鉄系金属（こ
れには、鉄、鋳鉄、鋼およびステンレス鋼が含まれる）
は、特に好ましい。鋳鉄、特に、内燃機関の成分として
の使用に適切な特定の等級の鋳鉄は、最も好ましい。

【００１０】セラミックスは、一般に、無機粉末を焼結
する周知方法により調製した無機固体として、記述され
る。無機粉末は、一般に、金属粉末または非金属粉末で
あり得るが、本発明で用いられるように、これらは、通
常、非金属粉末である。このような粉末はまた、金属元
素または非金属元素の酸化物または非酸化物であり得
る。これらの無機粉末は、以下の金属または半金属の１
種またはそれ以上の無機化合物を包含し得る：カルシウ
ム、マグネシウム、バリウム、スカンジウム、チタン、
バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケ
ル、銅、亜鉛、イットリウム、ニオブ、モリブデン、ル
テニウム、ロジウム、銀、カドミウム、ランタン、アク
チニウム、金、希土類元素（これには、原子番号が57〜
71のランタノイド元素が含まれ、原子番号39のイットリ
ウムを含む）、およびケイ素。これらの無機化合物に
は、上記元素のフェライト、チタン酸塩、窒化物、炭化
物、ホウ化物、フッ化物、硫化物、水酸化物および酸化
物が挙げられる。この酸化物粉末の特定の例には、上で
同定した金属の酸化物に加えて、酸化ベリリウム、酸化
マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、
酸化バリウム、酸化ランタン、酸化ガリウム、酸化イン
ジウム、酸化セレンなどのような化合物が包含される。
１種より多い金属を含有する酸化物、一般に、二重酸化
物(double oxides)と呼ばれるものの特定の例には、ペ
ロブスカイトタイプの酸化物（例えば、NaNbO₃、SrZr
O₃、PbZrO₃、SrTiO₃、BaZrO₃、BaTiO₃）；スピネルタイ
プの酸化物（例えば、MgAl₂O₄、ZnAl₂O₄、CoAl₂O₄、NiA
l₂O₄、NiCr₂O₄、FeCr₂O₄、MgFe₂O₄、ZnFe₂O₄など）；イ
ルメナイトタイプの酸化物（例えば、MgTiO₃、MnTiO₃、
FeTiO₃、CoTiO₃、ZnTiO₃、LiTaO₃など）；およびガーネ
ットタイプの酸化物（例えば、Gd₃Ga₅O₁₂、およびY₃Fe₅
O₁₂により代表される希土類−鉄ガーネット）が包含さ
れる。

【００１１】非酸化物粉末の例には、上記元素の炭化
物、窒化物、ホウ化物および硫化物が包含される。これ
らの炭化物の特定の例には、SiC、TiC、WC、TaC、HfC、
ZrC、AlCが包含され、窒化物の例には、Si₃N₄、AlN、BN
およびTi₃N₄が包含され、そしてホウ化物には、TiB₂、Z
rB₂およびLaB₆が挙げられる。

【００１２】これらの無機粉末はまた、粘土であっても
よい。粘土の例には、カオリナイト、ナクライト(nacri
te)、ディッカイト、モンモリロナイト、ノントロナイ
ト(nontronite)、スパポナイト(spaponite)、ヘクトラ
イト(hectorite)などが包含される。

【００１３】１実施態様では、この無機粉末は、窒化ケ
イ素、炭化ケイ素、ジルコニア、アルミナ、窒化アルミ
ニウム、バリウムフェライト、バリウム−ストロンチウ
ムフェライトまたは酸化銅である。他の実施態様では、
この無機粉末は、アルミナまたは粘土である。好ましく
は、このセラミックは、アルミナ、窒化アルミニウム、
炭化ケイ素、バリウムフェライト、酸化銅、または最も
好ましくは、窒化ケイ素（Si₃N₄）から調製される。

【００１４】無機粉末の組成物には、最終セラミック物
質の調製の中間工程として、いわゆる「未焼結体」の製
造を促進するために、有機結合剤が含有され得る。この
ような未焼結体は、押出成形または射出成形、圧縮成形
またはスリップ注型または他の方法により、製造され得
る。この組成物に含有される結合剤の量は、未焼結体ま
たは焼結形状品に所望の特性を与える量である。一般
に、これらの組成物は、この無機粉末の重量を基準にし
て、約５重量％の結合剤を含有するが、それより多い量
（例えば、約30重量％まで）は、ある種の用途に使用さ
れ得る。この結合剤は、この無機粉末の0.5重量％より
多い量で、存在し得る。

【００１５】従来技術にて、種々の結合剤が提案され使
用されており、セラミックを調製する際に利用され得
る。これらの結合剤の例には、デンプン、セルロース誘
導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールな
どが包含される。合成樹脂結合剤の例には、熱可塑性物
質（例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピ
レンおよびそれらの混合物）が包含される。他の結合剤
には、植物油、石油ゼリーおよび種々のワックスタイプ
の結合剤（これらは、炭化水素ワックスまたは酸素含有
炭化水素ワックスであり得る）が挙げられる。

【００１６】セラミック物質の形成を促進するために、
焼結助剤もまた用いられ得る。焼結助剤は、最終の焼結
生成物の特性を改良する有機物質または無機物質であり
得る。無機物質の例には、アルカリ金属、アルカリ土類
金属および遷移金属（これには、特に、希土類元素が含
まれる）の水酸化物、酸化物または炭酸塩が包含され
る。無機焼結助剤の特定の例には、酸化カルシウム、酸
化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、
酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化イットリウム、炭酸イットリ
ウム、酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、酸化ラン
タン、酸化ネオジム、酸化サマリウムなどが包含され
る。セラミック形成用の他の伝統的な添加剤および成分
もまた、用いられ得る。

【００１７】セラミックの形成には、一般に、第一工程
として、液状分散媒体に無機粉末を分散させることが包
含される。使用される液状分散媒体の量は、広範囲に変
えられ得るが、一般に、最大量の無機粉末および最小量
の分散媒体を含有する組成物を調製するのが、望まし
い。ある特定の配合に使用される液状分散媒体の量は、
この無機粉末の性質、分散剤のタイプおよび量、および
この組成物中に存在する他の成分に依存して、当業者に
より容易に決定され得る。存在する液状分散媒体の量
は、通常、無機粉末の量を基準にして、１〜２重量％程
度から、一般に、約５重量％から、好ましくは、約10重
量％から、さらに好ましくは、約15重量％から、約40重
量％まで、好ましくは、約35重量％まで、さらに好まし
くは、約30重量％までである。

【００１８】この液状分散媒体は、酸素を含有し得る
か、または事実上は炭化水素であり得、好ましくは、そ
の除去を促進するために、揮発性である。酸素含有溶媒
には、アルコール、エステル、ケトンおよび水、および
それらのエトキシ化された型が挙げられる。これらの物
質の組合せもまた、有用である。アルキル炭化水素、シ
クロアルキル炭化水素およびアリール炭化水素、および
石油留分もまた、液状媒体として用いられ得る。これら
のタイプに含まれるのは、例えば、ナフテンベースの石
油留分に見いだされるベンゼンおよびアルキル化ベンゼ
ン、シクロアルカンおよびアルキル化シクロアルカン、
シクロアルケンおよびアルキル化シクロアルケン、およ
び、例えば、パラフィンベースの石油留分に見いだされ
るアルカンがある。

【００１９】最終のセラミック部分の形成は、一般に、
上の成分を配合し、これらを、金型、静水プレスまたは
シート金型で形造ることにより、行われる。他方、この
配合した混合物は、押出成形または射出成形され、未焼
結体が形成され得るか、または、この混合物は、テープ
上で鋳造することにより、調製され得る。この未焼結体
はまた、噴霧乾燥、ロータリーエバポレーションなどに
より、調製され得る。この混合物を所望の形状に形成し
た後、この形成した塊は、高温処理（焼結）にかけられ
る。この時点で、この無機粉末は焼結されて、適当な密
度を含めた所望の特性を有する形状品が形成される。セ
ラミック加工用には、この焼結は、一般に、約600℃か
ら、好ましくは、約700℃から約1700℃までで起こる。

【００２０】本発明の方法は、選択された潤滑剤組成物
を金属−セラミック界面に供給することにより、この界
面を潤滑させることを包含する。用いる潤滑剤は、担体
流体およびチオカルバミン酸化合物を含有する。

【００２１】この担体流体は、最も一般的には、潤滑粘
性のあるオイルまたは液状燃料である。潤滑粘性のある
オイルには、天然潤滑油および合成潤滑油およびそれら
の混合物が挙げられる。天然油には、動物油、植物油、
パラフィンタイプ、ナフテンタイプまたは混合タイプの
鉱物性潤滑油、溶媒処理されたまたは酸処理された鉱
油、および石炭または頁岩から誘導されるオイルが挙げ
られる。合成潤滑油には、炭化水素油、ハロ置換炭化水
素油、アルキレンオキシド重合体（これらには、エチレ
ンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合により製造
されるものが含まれる）、ジカルボン酸のエステル、お
よび種々のアルコール（これらには、ポリオールが含ま
れる）、モノカルボン酸およびポリオールのエステル、
リン含有酸のエステル、重合テトラヒドロフラン、およ
びシリコンベース油（これらには、シロキサン油および
シリケート油が含まれる）が挙げられる。未精製油、精
製油および再精製油は、含まれる。潤滑粘性のあるオイ
ルの特定の例は、米国特許第4,326,972号に記述されて
いる。

【００２２】本発明の潤滑油は、通常、主要量の組成物
を含有する。それゆえ、この量は、通常、組成物の少な
くとも50重量％、好ましくは、85〜99.95重量％、さら
に好ましくは、92〜99.9重量％である。次に、この潤滑
剤系の活性成分（チオカルバメート）は、通常、この組
成物100万重量部あたり少なくとも10重量部、好ましく
は、この組成物の0.1〜３重量％を構成する。しかしな
がら、別の実施態様として、本発明は、添加剤濃縮物を
提供し、この濃縮物では、オイルが少量（例えば、０〜
20重量％、好ましくは、約１〜10重量％）で存在し得、
他の成分（これらは、以下でさらに詳細に記述する）
は、それに比例して、増加する。

【００２３】この潤滑組成物が油だめから供給されると
き、この担体流体は、通常、油だめ潤滑される内燃機関
におけるオイルである。他方、ある種のディーゼルエン
ジンに特徴的な２ストロークエンジンを潤滑させるのに
用いられる潤滑方法に類似の方法により、本発明の方法
を行うのが望ましいとき、この担体流体は、さらに一般
的には、液状燃料である。この場合、本発明の活性成分
は、この燃料組成物に直接溶解されるかまたは分散され
得、または（上記のような）オイル中、またはこの液状
燃料と相溶性の他の媒体中の濃縮物として、加えられ得
る。

【００２４】適切な液状燃料には、ガソリン（有鉛等級
および無鉛等級を含めて）、アルコール含有ガソリンを
含めた酸素含有等級のガソリン（この場合、このアルコ
ールは、メタノール、エタノール、または低級アルカノ
ール混合物であり得る）、および石油の他の留出物また
は他の天然または合成の燃料原料（ディーゼル燃料、ジ
ェット燃料、灯油、燃料油を含めて）が挙げられ、ま
た、圧縮気体燃料または液化天然ガスのような燃料が含
まれる。この担体流体が燃料のとき、その活性成分（チ
オカルバメート）は、この組成物100万重量部あたり、
少なくとも10重量部を構成し、好ましくは、この組成物
100万重量部あたり、10重量部〜5000重量部を構成す
る。

【００２５】他方、この担体流体は、水であり得、また
は水を含有し得る。それはまた、冷却流体でもあり得
る。冷却流体との用語は、冷却機、空気調和装置または
熱ポンプユニット中の熱伝達手段として役立つように、
液体状態と気体状態の間で容易に転化され得る気体また
は揮発性液体を含むことを意図している。 冷却流体に
は、１種またはそれ以上のハロカーボン、二酸化炭素お
よびアンモニアが挙げられる。本発明の化合物は、冷却
部品または熱伝達部品に潤滑性を与えるために、用いら
れ得る。

【００２６】本発明の他の主要成分は、チオカルバメー
ト化合物、好ましくは、ジチオカルバメート化合物、さ
らに好ましくは、ジチオカルバミン酸塩である。

【００２７】このチオカルバメート含有化合物を製造す
る際に用いられるチオカルバメートは、周知の方法によ
り、例えば、以下の反応に従って、アミンと二硫化炭素
または硫化カルボニルとを反応させることにより、調製
される：

【００２８】

【化１】

【００２９】この反応がCS₂との反応であるとき、その
生成物は、ここで示すように、ジチオカルバミン酸であ
る。この反応がCOSとの反応であるとき、その生成物
は、次式を有するチオカルバミン酸である：

【００３０】

【化２】

【００３１】ここで用いられる「チオカルバミン酸」ま
たは「チオカルバメート」との用語は、他に特定されて
いなければ、ジチオカルバミン酸またはジチオカルバメ
ートを含むことを意図している。このチオカルバミン酸
は、一般に、単離されず、さらに反応されて、本発明の
チオカルバメートを形成する。このチオカルバミン酸
は、金属源と反応されて、チオカルバミン酸金属を生じ
得る。

【００３２】

【化３】

【００３３】（ジチオカルバメートだけが、ここで示さ
れており）、この場合、Mは金属または金属錯体、Xは対
イオンであり、そしてｎ、ｏ、ｐおよびｑは、この化学
種の原子価を満たすのに適切な数である。M_nX_oは、金属
酸化物または金属水酸化物であり得る。Mが金属錯体の
場合、適切なチオカルバミン酸金属は、一般に、次式に
より表わされ得る：

【００３４】

【化４】

【００３５】（ジチオカルバメートだけが、ここで示さ
れており）、この場合、Meは金属であり、Meの酸化状態
に依存して、ｂは少なくとも１、ａは少なくとも１であ
り、Ｍｅの酸化状態に依存して、ｃは少なくとも１であ
り、そしてＭｅの酸化状態に依存して、ｄは０または少
なくとも１である。一般に、ａおよびｂは、１〜５であ
り、ｃは、１〜６であり、そしてｄは、０〜10である。
好ましい実施態様では、ａは、１または２であり、ｂ
は、１または２であり、ｃは、１または２であり、そし
てｄは、０または２である。

【００３６】この金属は、いずれかの周知の金属であり
得、好ましくは、元素の周期表の第3b族、第4b族、第5b
族、第6b族、第7b族、第８族、第1b族および第2b族（CA
S表記法）に由来の１種またはそれ以上のアルカリ金
属、アルカリ土類金属または遷移金属である。これらの
金属には、銅、コバルト、ニッケル、タングステン、チ
タン、マンガン、モリブデン、鉄、クロムおよびバナジ
ウムが含まれ、ランタノイド（希土類元素）もまた、含
まれる。さらに好ましい化合物には、モリブデン化合物
がある。ジチオカルバミン酸モリブデンは、一般に、
（III）式のような１種またはそれ以上の構造を有する
錯体金属であると考えられているが、この式によって、
本発明の範囲を限定する意図はない：

【００３７】

【化５】

【００３８】このようなチオカルバミン酸モリブデン
は、米国特許第4,846,983号にさらに詳細に記述されて
いる。

【００３９】ジチオカルバミン酸モリブデンは、以下の
化合物を含有する水性媒体中にて、80℃またはそれ以上
の温度で、二硫化炭素と第二級アミンとを反応させるこ
とにより、調製され得る：この水性媒体は、三酸化モリ
ブデン、モリブデン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸ア
ンモニウム塩およびそれらの混合物からなる群から選択
されるモリブデン化合物、およびアルカリ金属硫化水
素、アンモニウム硫化水素、およびアルカリ金属硫化
物、アンモニウム硫化物、およびそれらの混合物からな
る群から選択される硫化物化合物を、１：0.05と１：４
の間の範囲の硫化物化合物に対するモリブデン化合物の
モル比で含有する。このような物質の合成は、米国特許
第4,098,705号および第3,356,702号にさらに詳細に示さ
れている。

【００４０】式（Ｉ）、（I'）、（II）、（II'）およ
び（III）では、各R¹およびR²は、独立して、水素、ま
たは１個〜50個の炭素原子、好ましくは、３個〜24個の
炭素原子、さらに好ましくは、８個〜24個の炭素原子、
さらにより好ましくは、12個〜18個の炭素原子を有する
ヒドロカルビル基であるが、R¹およびR²の両方ともが水
素であるべきではない。このヒドロカルビル基はまた、
置換基またはヘテロ原子（例えば、Ｏ、ＮまたはＳ）を
含有し得、特に、アミン置換ヒドロカルビル基が考慮さ
れる。アミン置換ヒドロカルビル基が用いられるなら、
このようなアミノ基は、それ自体、このチオカルバメー
トの合成中に、二硫化炭素または硫化カルボニルと化学
的に相互作用して、さらに複雑な構造を形成し得る。他
方、R¹は、R²および窒素原子と共に結合して、五員環、
六員環または七員環の複素環を形成し得る。上の記述
は、R¹基およびR²基の全ての立体配置（直鎖基および分
枝鎖基を含めて）を包含する。

【００４１】R¹およびR²が、窒素原子と共に結合して、
五員環、六員環または七員環の複素環を形成するとき、
この複素環基は、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モ
ルホリニル基またはピペラジニル基である。この複素環
基は、その複素環上に、１個またはそれ以上のアルキル
置換基、好ましくは、１個〜３個のアルキル置換基を含
有し得る。このアルキル置換基は、好ましくは、約１個
〜約６個の炭素原子を含有する。複素環基の例には、2-
メチルモルホリニル基、3-メチル-5-エチルピペリジニ
ル基、3-ヘキシルモルホリニル基、テトラメチルピロリ
ジニル基、ピペラジニル基、2,5-ジプロピルピペラジニ
ル基、ピペリジニル基、2-ブチルピペラジニル基、3,4,
5-トリエチルピペリジニル基、3-ヘキシルピロリジニル
基および3-エチル-5-イソプロピルモルホリニル基が包
含される。好ましくは、この複素環基は、ピロリジニル
基またはピペリジニル基である。他の実施態様では、
（III）式中の１個のR¹およびR²は、窒素原子と共に結
合して、五員環、六員環または七員環の複素環基を形成
するのに対して、他のR¹は、独立して、水素またはヒド
ロカルビル基であり、そして他のR²は、ヒドロカルビル
基である。他の実施態様では、（III）式中の各R¹およ
びR²は、窒素原子と共に結合して、五員環、六員環また
は七員環の複素環基を形成する。

【００４２】これらのアミンは、第一級アミンまたは第
二級アミンであり得る。脂肪族アミンが好ましい。特定
の第二級脂肪族アミンには、ジメチルアミン、ジエチル
アミン、および好ましくは、ジプロピルアミン、ジブチ
ルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプ
チルアミン、ジココアルキルアミン、ジタロアミン、ジ
水素添加タロアルキルアミン、ジデシルアミン、および
ジオクタデシルアミンが挙げられる。非対称の第二級ア
ミンもまた用いられ得、これらには、メチルエチルアミ
ン、エチルブチルアミン、エチルアミルアミンなどが含
まれる。第一級脂肪族アミン（これは、好ましい）に
は、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミ
ン、2-エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルア
ミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシ
ルアミン、オレイルアミン、ココアルキルアミン、ソヤ
アルキルアミン、タロアルキルアミン、および水素添加
したタロアルキルアミンが挙げられる。ポリアミンもま
た用いられ得、これらには、N-ココ−1,3-ジアミノプロ
パン、N-タロ−1,3−ジアミノプロパン、N-オレイル−
1,3-ジアミノプロパン、およびN-タロアルキルジプロピ
レントリアミンが含まれる。他のヘテロ原子を含有する
類似のアミンは、用いられ得、これらには、エーテルア
ミン（例えば、メトキシプロピルアミン、エトキシプロ
ピルアミン、イソプロポキシプロピルアミン、n-ヘキシ
ルオキシプロピルアミン、イソオクチルオキシプロピル
アミン、C₁₂〜C₁₄オキシプロピルアミン、C₁₄〜C₁₆オキ
シプロピルアミン、トリデシルオキシプロピルアミン、
およびメトキシエトキシプロピルアミン）が挙げられ
る。アミンの混合物は、用いられ得る。

【００４３】このチオカルバメート化合物はまた、チオ
カルバミン酸エステル、チオカルバミン酸アミド、チオ
カルバミン酸エーテル、またはアルキレンでカップリン
グされたチオカルバメート、または好ましくは、このよ
うな化合物と上記チオカルバミン酸塩との混合物であり
得る。このチオカルバミン酸アミド、エーテルおよびエ
ステルは、一般に、チオカルバミン酸（好ましくは、上
記のもの）と、不飽和アミド、エーテルまたはエステル
とを反応させて、以下の反応（またはモノチオカルバミ
ン酸との対応する反応）に従って、チオカルバメート含
有化合物を形成することにより、調製される：

【００４４】

【化６】

【００４５】ここで、R³は、水素またはヒドロカルビル
基、そしてYは、アミド、エーテルまたはエステルを形
成する基、すなわち、それぞれ、−CONR⁴R⁵、−CH₂OR⁶
または−COOR⁷であり、この場合、R⁴、R⁵およびR⁶は、
水素またはヒドロカルビルであり、そしてR⁷はヒドロカ
ルビルである。このチオカルバミン酸と反応される不飽
和アミド、エーテルまたはエステルは、好ましくは、
α、β−不飽和化合物である。好ましくは、これらの化
合物には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アク
リル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチ
ル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエ
チル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸
2-ヒドロキシプロピル、アクリルアミドおよびアクリロ
ニトリルが挙げられ、好ましくは、アクリルアミドであ
る。アクリルアミド類には、アクリルアミド、メタクリ
ルアミド、ビスアクリルアミド、ビスメタクリルアミ
ド、ビスメチレンアクリルアミド、N-ヒドロキシメチル
アクリルアミド、およびN-メルカプトメチルアクリルア
ミドが挙げられる。

【００４６】このチオカルバメートは、25℃〜125℃の
温度、好ましくは、50℃〜100℃の温度、さらに好まし
くは、70℃〜90℃の温度で、この不飽和化合物と反応さ
れる。この反応は、溶媒の存在下または非存在下にて、
行われ得る。溶媒には、炭化水素（例えば、トルエン、
キシレン、ヘキサン、ヘプタン、灯油、燃料油または潤
滑粘性のあるオイル）、および塩素化炭化水素（クロロ
ホルム、四塩化炭素などを含めた）が挙げられる。アル
コールもまた用いられ得、例えば、メタノール、エタノ
ール、プロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノー
ルなどがある。

【００４７】他の実施態様では、このチオカルバメート
含有化合物は、アルキレンでカップリングされたチオカ
ルバミン酸塩である。アルキレンでカップリングされた
ジチオカルバミン酸塩は、次式により表され得る：

【００４８】

【化７】

【００４９】ここで、R¹およびR²は、この上で定義のも
のと同じであり、そしてR⁹は、１個〜約10個の炭素原
子、好ましくは、１個〜約４個の炭素原子、さらに好ま
しくは、１個または２個の炭素原子を有するヒドロカル
ビレン基である。好ましくは、R⁹は、アルキレン、アリ
ーレン、アルカリーレンまたはアリールアルキレンであ
る。１実施態様では、R⁹は、アルキレン基、好ましく
は、メチレン基またはエチレン基、さらに好ましくは、
メチレンである。

【００５０】１実施態様では、R⁹は、６個〜約10個の炭
素原子、好ましくは、６個〜約８個の炭素原子を有する
アリーレン基、アルカリーレン基、またはアリールアル
キレン基である。好ましくは、R⁹は、フェニルメチレ
ン、フェニルエチレン、フェニルジエチレン、フェニレ
ン、トリレンなどである。

【００５１】好ましくは、このチオカルバメート化合物
は、ジチオカルバメート化合物、さらに好ましくは、ジ
アルキルジチオカルバミン酸モリブデンであり、さらに
より好ましくは、モノアルキルジチオカルバミン酸モリ
ブデンである。これらのアルキル基は、少なくとも１個
〜50個の炭素原子、好ましくは、３個〜24個の炭素原
子、さらに好ましくは、８個〜24個の炭素原子、さらに
より好ましくは、12個〜18個の炭素原子を含有し得、こ
れらには、分枝鎖基および直鎖基の両方が含まれる。さ
らに一般的には、これらは、R¹基およびR²基について上
で定義の組成を有し得る。好ましいアルキル基の例に
は、オレイルがあり、好ましい化合物は、N-オレイルジ
チオカルバミン酸モリブデンである。

【００５２】本発明で用いられる潤滑組成物は、潤滑剤
の分野で周知の他の添加剤を含有し得、通常、含有す
る。このような添加剤には、酸化防止剤、腐食防止剤、
極圧剤および耐摩耗剤（これには、塩素化脂肪族炭化水
素およびホウ素含有化合物（ホウ酸エステルを含めて）
が含まれる）、粘度改良剤および多機能性粘度改良剤、
流動点降下剤および消泡剤が挙げられる。特に好ましい
追加の添加剤には、オーバーベース化塩および分散剤が
挙げられる。

【００５３】オーバーベース化物質は、別にはオーバー
ベース化塩またはスーパーベース化塩と呼ばれるが、一
般に、金属およびこの金属と反応する特定の酸性有機化
合物の化学量論に従って、中和のために存在する量より
も過剰の金属含量により特徴づけられる、単一相の均一
なニュートン系である。このオーバーベース化物質は、
酸性物質（典型的には、無機酸または低級カルボン酸、
好ましくは、二酸化炭素）と、該酸性有機物質用の少な
くとも１種の不活性有機溶媒（鉱油、ナフサ、トルエ
ン、キシレンなど）を含有する反応媒体、化学量論的に
過剰な金属塩基、および促進剤（例えば、フェノールま
たはアルコール）とを反応させることにより、調製され
る。この酸性有機物質は、通常、オイル中での一定の溶
解性を与えるのに充分な数の炭素原子を有する。過剰の
金属量は、通常、金属比により表わされる。「金属比」
との用語は、この酸性有機化合物の当量に対する金属の
全当量の比である。中性の金属塩は、１の金属比を有す
る。正塩中に存在する金属の4.5倍の金属を有する塩
は、3.5当量過剰の金属を有し、すなわち、4.5の金属比
を有する。

【００５４】このようなオーバーベース化物質は、当業
者に周知である。スルホン酸、カルボン酸、フェノー
ル、ホスホン酸、およびこれらの２種またはそれ以上の
混合物の製造方法を記述している特許には、米国特許第
2,501,731号；第2,616,905号；第2,616,911号；第2,61
6,925号；第2,777,874号；第3,256,186号；第3,384,585
号；第3,365,396号；第3,320,162号；第3,318,809号；
第3,488,284号；および第3,629,109号が挙げられる。

【００５５】分散剤は、潤滑剤の分野で周知であり、こ
れらには、主として、無灰分タイプの分散剤および重合
体分散剤として知られているものが含まれる。無灰分タ
イプの分散剤は、比較的に高分子量の炭化水素鎖に結合
した極性基により特徴づけられる。典型的な無灰分散剤
には、次式を含む種々の化学構造を有するN-置換された
長鎖アルケニルスクシンイミドが挙げられる：

【００５６】

【化８】

【００５７】ここで、各R¹は、独立して、アルキル基、
しばしば、500〜5000の分子量を有するポリイソブチル
基であり、そしてR²は、アルケニル基、通常、エチレニ
ル（C₂H₄）基である。このような分子は、通常、アルケ
ニルアシル化剤とポリアミンとの反応により誘導され、
この２個の部分の間では、上で示した単純なイミド構造
の他に、種々のアミドおよび四級アンモニウム塩を含め
て、種々の結合が可能である。スクシンイミド分散剤
は、米国特許第4,234,435号にさらに詳細に記述されて
いる。

【００５８】他のクラスの無灰分散剤には、高分子量エ
ステルがある。これらの物質は、ヒドロカルビルアシル
化剤および多価脂肪族アルコール（例えば、グリセロー
ル、ペンタエリスリトールまたはソルビトール）との反
応により調製され得ることが分かっていること以外は、
上記スクシンイミドに類似している。このような物質
は、米国特許第3,381,022号に、さらに詳細に記述され
ている。

【００５９】他のクラスの無灰分散剤には、マンニッヒ
塩基がある。これらは、高分子量のアルキル置換フェノ
ール、アルキレンポリアミンおよびアルデヒド（例え
ば、ホルムアルデヒド）の縮合により形成される物質で
ある。このような物質は、以下の一般式（種々の異性体
などを含めて）を有し得、米国特許第3,634,515号にさ
らに詳細に記述されている：

【００６０】

【化９】

【００６１】他の分散剤には、重合体分散剤添加剤が挙
げられ、これらは、一般に、重合体に分散特性を与える
極性官能性を含む炭化水素ベースの重合体である。

【００６２】上記潤滑組成物は、金属部分とセラミック
部分との間の界面を潤滑させるために、用いられる。こ
の界面は、典型的には、特定のセラミックエンジンにお
いて、２個の部品の間の接触点である。セラミックから
製造され得る多くのエンジン部品には、タペット、カム
シャフト、揺れ腕、油ポンプギア、ピストン、ピストン
リング、ピストンピン、シリンダライナ、ベアリングお
よびターボ過給機部品がある。この潤滑剤は、典型的に
は、（伝統的な油だめ潤滑式の火花点火ガソリンエンジ
ンでは）、ポンプによって油だめから供給されるが、
（２サイクルの圧縮点火ディーゼルエンジンでは）、他
の手段が用いられ得る。この潤滑組成物が油だめから供
給されるなら、その油だめ温度は、潤滑剤の熱劣化を回
避するために、175℃を越えないのが好ましく、さらに
好ましくは、150℃をこえない。同様に、潤滑される部
品の温度は、潤滑剤の熱劣化を回避するために、好まし
くは、同様に、限定される。他方、本発明の方法により
潤滑される表面の温度は、好ましくは、少なくとも50℃
であるべきである。このような適度に高い温度では、ジ
チオカルバミン酸モリブデンは、接触表面上にて、MoS₂
フィルムを形成することが観察されると認められてい
る。このようなフィルムの形成は、本発明の方法の効果
的な潤滑に重要であると考えられるが、本発明は、この
ような理論的な機構により限定することを意図していな
い。

【００６３】ここで用いられるように、「ヒドロカルビ
ル置換基」または「ヒドロカルビル基」との用語は、分
子の残部に直接結合した炭素原子を有しそして主として
炭化水素的な性質を有する基を意味する。このような基
には、炭化水素基、置換炭化水素基、およびヘテロ基
（すなわち、主として、炭化水素の性質を有するもの
の、鎖または環に存在する炭素以外のものを含有する
が、その他は炭素原子で構成されている基）が挙げられ
る。

【００６４】

【実施例】実施例１〜６ 往復摩耗試験機を用いて摩耗試験を行い、この試験機
は、このような試験の目的に通常用いられるタイプのピ
ン−オン−プレート(pin-on-plate)タイプの接触立体図
形を有する。このような装置は、「Evaluation of High
Temperature Lubricants in Ceramic/Metal and Metal
/Metal Contancts」、STLE［Society of Tribologists
and Lubrication Engineers］ Preprint No. 92-TC-4A-
4（1992）に記述されている。プレート標本として、窒
化ケイ素を用い、ピン標本として、鋳鉄を用いる。プレ
ートは、76 mm（３インチ）長、25 mm（１インチ）幅お
よび６ mm（0.25インチ）厚である。

【００６５】0.05 m/sec.の平均すべり速度にて、室温
〜200℃（典型的には、150℃）のバルク標本温度で２時
間にわたり、摩耗試験を行う。摩耗試験した標本を、走
査電子顕微鏡、Ｘ線のエネルキー分散分析（「EDA
X」）、オージュ電子分光法およびＸ線電子分光法によ
り、分析する。

【００６６】基油としてエクソンのオイルを用い、これ
に、N-オレイルジチオカルバミン酸モリブデン（「MoDT
C」）および必要に応じて、オーバーベース化した合成
のアルキルスルホン酸カルシウム（390の数平均分子量
を有し、300の全塩基価、14：１の金属比まで、炭酸カ
ルシウムでオーバーベース化されている）を加え、さら
に、５重量％のポリイソブチレン（940の数平均分子
量）置換無水コハク酸（合わせて「清浄剤」と呼ばれ
る）、および必要に応じて、ポリイソブチレン（2000の
数平均分子量）置換無水コハク酸とポリエチレンポリア
ミン（ペンタエチレンアミンに相当する平均組成を有す
る）との反応生成物（「分散剤」と呼ばれる）を、表１
に示すように含有させて、潤滑調製物を調製する：

【００６７】

【表１】

【００６８】実施例１〜６の各組成物を、上記のように
試験する。実施例２、４、５および６の潤滑剤を用いた
試験は、比較例３と同様に、非常に低い全摩耗容量を示
し、各ケースでは、対照である比較例１よりも著しく良
好である。しかし、本発明の実施例については、清浄剤
および分散剤の存在下であっても、改良が認められる。
測定した摩耗容量は、好都合には、２個の鋳鉄表面を用
いて試験を繰り返したときの結果に、匹敵する。このこ
とは、鋳鉄上の接触圧力が、窒化ケイ素に対して測定し
たときには、鋳鉄に対して測定したときよりも20％高い
という事実を考慮すると、特に重要である。これは、窒
化ケイ素が圧力下でもあまり変形しないからである。

【００６９】実施例７〜36 ジチオカルバメートを、表２で示す量および種類の物質
で置き換えたこと以外は、実施例６の試験を繰り返す：

【００７０】

【表２】

【００７１】実施例37〜39 表３に示すように、液状燃料中にて、ジチオカルバメー
トの組成物を調製する：

【００７２】

【表３】

【００７３】上で引用した各文献は、参考として本明細
書に援用されている。実施例を除いて、または他に明白
に示されている場合を除いて、本明細書において、物質
の量および反応条件を特定している全ての数値量は、
「約」という語句により修飾されることが理解されるべ
きである。他に指示がなければ、ここで挙げた各化学物
質または組成物は、市販等級の物質であると解釈すべき
であり、これらの物質は、その異性体、副生成物、誘導
体、および市販等級にて通常存在すると認められる他の
このような物質を含有し得る。ここで用いられるよう
に、「本質的になる」との表現は、考慮する組成物の基
本的で新規な特性に著しく影響を与えない物質の混入を
許容する。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁵ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｃ１０Ｎ 10:08 10:10 10:12 10:14 10:16 40:25 50:02 80:00

Claims (29)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属−セラミック界面を潤滑させる方法
   であって、該方法は、以下の(a)および(b)を含有する組
   成物を該界面に供給することを包含する： (a)担体流体、および(b)チオカルバメート化合物。
2. 【請求項２】 前記組成物が約175℃までの油だめ温度
   で油だめから供給される、請求項１に記載の方法。
3. 【請求項３】 前記組成物がポンプにより前記界面に供
   給される、請求項１に記載の方法。
4. 【請求項４】 前記金属−セラミック界面の該金属が鉄
   を包含する、請求項１に記載の方法。
5. 【請求項５】 前記金属−セラミック界面の該セラミッ
   クが窒化ケイ素を包含する、請求項１に記載の方法。
6. 【請求項６】 前記金属−セラミック界面が内燃機関の
   一部である、請求項１に記載の方法。
7. 【請求項７】 前記内燃機関が火花点火エンジンであ
   る、請求項６に記載の方法。
8. 【請求項８】 前記内燃機関が圧縮点火エンジンであ
   る、請求項６に記載の方法。
9. 【請求項９】 前記チオカルバメート化合物が、前記組
   成物100万重量部あたり少なくとも約10重量部を構成す
   る、請求項１に記載の方法。
10. 【請求項１０】 前記担体流体が燃料である、請求項１
    に記載の方法。
11. 【請求項１１】 前記燃料がガソリン、ディーゼル燃
    料、ジェット燃料、アルコール含有燃料または圧縮気体
    燃料である、請求項１０に記載の方法。
12. 【請求項１２】 前記チオカルバメート化合物が、前記
    燃料100万重量部あたり約10重量部〜約5000重量部を構
    成する、請求項１０に記載の方法。
13. 【請求項１３】 前記担体流体が水を含有する、請求項
    １に記載の方法。
14. 【請求項１４】 前記担体流体が冷却流体である、請求
    項１に記載の方法。
15. 【請求項１５】 前記担体流体が潤滑粘性のあるオイル
    である、請求項１に記載の方法。
16. 【請求項１６】 前記潤滑粘性のあるオイルが、天然潤
    滑油および合成潤滑油からなる群から選択される、請求
    項１５に記載の方法。
17. 【請求項１７】 前記オイルが鉱油である、請求項１５
    に記載の方法。
18. 【請求項１８】 前記チオカルバメート化合物が、前記
    組成物の約0.1〜約３重量％を構成する、請求項１５に
    記載の方法
19. 【請求項１９】 前記チオカルバメート化合物がエステ
    ルである、請求項１に記載の方法。
20. 【請求項２０】 前記チオカルバメート化合物が金属塩
    である、請求項１に記載の方法。
21. 【請求項２１】 前記金属が元素の周期表の第3b族、第
    4b族、第5b族、第6b族、第7b族、第８族、第1b族および
    第2b族（CAS表示法）に由来の金属からなる群から選択
    される、請求項２０に記載の方法。
22. 【請求項２２】 前記金属がモリブデンである、請求項
    ２１に記載の方法。
23. 【請求項２３】 前記チオカルバミン酸モリブデンが、
    ヒドロカルビルチオカルバミン酸モリブデンである、請
    求項２２に記載の方法。
24. 【請求項２４】 前記ヒドロカルビルチオカルバミン酸
    モリブデンが、アルキルチオカルバミン酸モリブデンで
    ある、請求項２３に記載の方法。
25. 【請求項２５】 前記アルキルチオカルバミン酸モリブ
    デンが、アルキルジチオカルバミン酸モリブデンであ
    る、請求項２４に記載の方法。
26. 【請求項２６】 前記アルキルジチオカルバミン酸モリ
    ブデンが、N-オレイルジチオカルバミン酸モリブデンで
    ある、請求項２５に記載の方法。
27. 【請求項２７】 前記組成物がさらにオーバーベース化
    金属塩を含有する、請求項１に記載の方法。
28. 【請求項２８】 前記組成物がさらに分散剤を含有す
    る、請求項１に記載の方法。
29. 【請求項２９】 請求項１の方法により潤滑させた金属
    −セラミック界面を含む内燃機関。