JPH06250400A - 水溶性レジストの剥離方法 - Google Patents

水溶性レジストの剥離方法

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JPH06250400A
JPH06250400A JP3527493A JP3527493A JPH06250400A JP H06250400 A JPH06250400 A JP H06250400A JP 3527493 A JP3527493 A JP 3527493A JP 3527493 A JP3527493 A JP 3527493A JP H06250400 A JPH06250400 A JP H06250400A
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resist
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宏一 津山
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和久 大塚
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昭士 中祖
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Abstract

(57)【要約】 【目的】より優れたはんだの溶解抑制と、同時に、鉛の
析出防止も行った水溶性レジストの剥離方法を提供する
こと。 【構成】銅箔を積層した基板に、水溶性レジストでめっ
きレジストを形成し、はんだめっきを行い、その後、こ
の水溶性レジストを剥離する水溶性レジストの剥離方法
において、剥離液中に、式(1)で表される有機物、N
トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(別名:ト
リシン)、または、式(2)で表される有機物もしく
は、これらの塩を含むこと。 【化1】 【化2】 (上記化学式中のNは−CH2COOH基もしくは−C
2PO(OH)2基と直接結合する第3級アミンであ
り、R、R’は、置換基または分子鎖をしめす。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、配線板の製造工程にお
ける水溶性レジストの剥離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】配線板の製造法の一つに、はんだをエッ
チングレジストとして用い、配線形成する方法が知られ
ている。この方法の一般的な場合を例にあげると、両面
に銅箔を積層した基板に、穴あけ後、銅めっきをほどこ
し、この後、有機レジスト膜によって、被めっき部以外
を被覆する。このものに、はんだめっきを行い、有機レ
ジスト膜を剥離後、不要部分の銅をエッチングによって
除去する。この有機レジスト膜に水溶性レジストを用
い、アルカリ性水溶液によって剥離する方法がある。水
溶性レジストの剥離に用いられる剥離液は、一般的に水
酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの強アルカリ性水
溶液で、pH13以上で用いられることが多い。このと
きの、温度は、40〜50℃で、剥離に要する時間は、
2〜3分程度が一般的である。
【0003】実際の剥離時間は、高密度パターン部分に
剥離残渣などが残らず、完全に水溶性レジストが剥離さ
れるために、ほぼレジストが剥離される時間(約40〜
50秒)の3倍程度に設定される。このため、剥離作業
の多くの時間は、銅(水溶性レジストの剥離された部
分)とはんだめっきとが同時に剥離液にさらされる状態
となる。
【0004】剥離液は、上記したように強アルカリ性の
液であるため、エッチングレジストの役割を果たすべ
き、はんだが溶解され、その厚さが不十分となったり、
また、はんだの構成金属の一方(錫)が過剰に溶解され
てしまったりすることがある。特に基板周辺部や疎なパ
ターンにおいては、はんだめっきの電流密度が大とな
り、はんだめっき中の錫成分が増加し、溶解しやすくな
る傾向がある。このため、次工程であるアルカリエッチ
ング工程において、充分なエッチングレジストの役割を
果たしえず、配線に断線や欠けなどの欠陥を作ることが
あった。また、水溶性レジストの剥離時には、銅とはん
だが接触しているための局部電池作用も、先に述べたは
んだの腐食、溶解の促進要因となっている。そこで、こ
の腐食、溶解を防止するために、還元性物質や、さら
に、アリールスルホン酸ナトリウムや有機イオウ化合物
等を添加する方法、ホウ水素化合物を添加する方法、イ
ミダゾール化合物を添加する方法や、3,5ジメチルピ
ラゾールを添加する方法が、特開昭63−183445
号公報、特開昭64−24254号公報、特開昭64−
81295号公報および特開昭62−151589号公
報に、それぞれ、示されている。また、水溶性レジスト
の剥離において、鉛イオンが水溶性レジスト剥離後の銅
表面に析出し、エッチングを阻害するため、配線間のシ
ョートを引き起こすことがある。そこで、鉛の析出を防
ぐために、酸化剤を添加する方法が、特開昭63−38
588号公報に示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記特開昭63−18
3445号公報、特開昭64−24254号公報、特開
昭64−81295号公報および特開昭62−1515
89号公報に示されている方法では、スプレー方式によ
り剥離作業を行うと、充分な効果が得られない。また、
特開昭63−38588号公報において鉛の析出を防ぐ
方法として示されている酸化剤を用いる方法と、特開昭
63−183445号公報や特開昭64−81295号
公報においてはんだの溶解を抑制する方法として示され
ている還元性物質を用いる方法とは、両立しえない。す
なわち、いままでは、はんだの溶解抑制と鉛の析出防止
を同時にはかることは困難であった。
【0006】本発明は、上記公報に示されたはんだの溶
解抑制方法よりも、より優れたはんだの溶解抑制と、同
時に、鉛の析出防止も行った水溶性レジストの剥離方法
を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、銅箔を積層し
た基板に、水溶性レジストでめっきレジストを形成し、
はんだめっきを行い、その後、この水溶性レジストを剥
離する水溶性レジストの剥離方法において、剥離液中
に、式(1)で表される有機物、Nトリス(ヒドロキシ
メチル)メチルグリシン(別名:トリシン)、または、
式(2)で表される有機物もしくは、これらの塩を含む
ことを特徴とする。
【0008】
【化3】
【0009】
【化4】 (上記化学式中のNは−CH2COOH基もしくは−C
2PO(OH)2基と直接結合する第3級アミンであ
り、R、R’は、置換基または分子鎖をしめす。)
【0010】さらに、アミノグアニジン、ヒドラジン
類、亜硫酸、亜二チオン酸またはこれらの塩、ホウ水素
化物、カルバジン酸エステル、二酸化チオ尿素、スルフ
ィン酸類、スルホキシ酸類、ヒドラジド類、セミカルバ
ジド塩の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0011】配線形成を阻害する鉛の析出について、特
開昭63−38588号公報では、はんだめっき液成分
残存の影響が述べられている。しかし、筆者らの検討結
果では、鉛の析出は、剥離液中で引き起こされるものと
考えられる。以下に、これについて詳細に述べる。銅の
エッチングレジストに使用されるはんだの構成金属であ
る錫や鉛は、pH13以上で溶解することが、化学同人
1984年発行の「金属の腐食防食序論」p242にお
ける図17−11、「スズの電位−pH図」、および、
p243における図17−12、「鉛の電位−pH図」
などに示されている。実際に、銅表面に配線幅、スペー
ス幅ともに100〜150μm程度の高密度なはんだめ
っきのパターンを形成し、40g/l程度の水酸化ナト
リウム水溶液の液滴を落とすと、室温で数分放置後に、
銅の露出部分が灰色に変色するのが容易に観察されるこ
とを、筆者らは見出している。また、この灰色部分を分
析すると鉛が検出される。この理由は、はんだめっき金
属が、一旦溶解後、液中に溶けでた鉛イオンが再析出す
るものと考えられる。なお、鉛については、液滴中で、
溶解と析出が同時に、もしくは、逐次的に起っているこ
とになる。この詳細な機構については不明である。はん
だめっき金属の鉛と錫、および、銅(はんだめっきがな
されていない部分)の三種類の金属が存在するためにこ
の様な現象が起るようである。このように、アルカリ剥
離液中での、はんだの溶解や鉛の再析出現象は容易に確
認される。
【0012】はんだの溶解抑制方法を示した特開昭63
−183445号公報、特開昭64−81295号公
報、特開昭62−151589号公報および特開昭63
−38588号公報に、室温において、静置時の溶解速
度や溶解量の実例が実施例および比較例として示されて
いる。これら4件の公報のそれぞれの実施例に示されて
いるように、溶解をある程度抑制することはできるが、
完全には溶解を抑制できないことがわかる。実際の作業
には、一般的に、1〜2kg/cm2のスプレー圧力
で、40〜50℃の温度の剥離液を、コンベアを用いて
搬送している基板に接触させて、水溶性レジストを剥離
するスプレー方式を用いられることが多い。この様に、
常に新しい液が基板表面に供給される場合、見かけの拡
散係数は静置時と比較にならないほど大きくなり、はん
だの溶解速度は、上記の公報の実施例の値よりもはるか
に大きくなることが容易に推定される。従って、上に示
したような溶解抑制方法を採用しても、基板の処理枚数
とともに、剥離液中にはんだが溶解し、その金属イオン
量が増加することになる。実際に、スプレー式水溶性レ
ジスト剥離装置を用い、特開昭63−183445号公
報に示されている方法に相当する還元剤入り薬剤である
OPCパーソリ(奥野製薬株式会社製、商品名)を剥離
液に添加し、200mm×200mmの基板(はんだ面
積:25%)のドライフィルムHF450(日立化成工
業株式会社製、商品名)を剥離した後、液中の鉛イオン
を測定したところ、その濃度は、300〜400ppm
であった。筆者らは、剥離液中の鉛イオン量が、400
ppm程度になると、鉛の基板表面への析出が目視で観
察され始め、その後のアルカリエッチングで残銅を引き
起こすことを見出している。
【0013】そこで、鋭意検討を行った結果、液中に鉛
イオンが増加すると、溶解が加速されること、また、特
開昭63−183445号公報、特開昭64−2425
4号公報、特開昭64−81295号公報および特開昭
62−151589号公報に示されている溶解電流値を
測定する方法で試験した結果、液中に鉛イオンが存在す
ると溶解が増大し、充分な抑制効果が得られないことを
見出した。鉛イオンの存在時に、溶解が加速される理由
として、先に述べた鉛の再析出反応が、腐食、溶解の対
極反応となっているためと推定される。また、溶解電流
を測定したところ、液中の鉛イオンが50〜100pp
mの場合、目視では必ずしも鉛の析出が確認できない
が、この様な溶解の加速現象の起ることがわかった。即
ち、一般の剥離作業において、はんだの溶解が特に問題
になるのは、単にアルカリ液中へはんだが溶解する単純
な溶解現象に加えて、このような加速現象によるためと
考えられる。そこで、鉛イオンと錯体を形成し、鉛の析
出を抑制する方法を検討した結果、アルカリ性の剥離液
中に式(1)で表される有機物、トリシン、または、式
(2)で表される有機物もしくは、これらの塩を添加す
ることが有効なことがわかった。
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】 (上記化学式中のNは−CH2COOH基もしくは−C
2PO(OH)2基と直接結合する第3級アミンであ
り、R、R’は、置換基または分子鎖をしめす。)
【0016】剥離液中へ、上記の化合物を添加した結
果、水溶性レジストの剥離前後におけるはんだめっきの
鉛と錫の比率の変化もほとんどなくなり、その後のアル
カリエッチングによって配線部分がエッチングされる
(欠けや断線不良)ような欠陥を防止できる。
【0017】式(1)または(2)の化合物として、具
体的には、ジヒドロキシエチルグリシン、1,2シクロ
ヘキサンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢
酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エ
チレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジア
ミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレン
ジアミン四(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリア
ミン五(メチレンホスホン酸)やこれらの塩があげられ
る。一般的に、鉛イオンと形成する錯体の鉛との比率
や、上記有機物の分子量によって有効な添加量の範囲は
異なる。しかし、実用的には、0.05g/l以上の添
加範囲で有効である。また、不必要に多くの量を添加す
ることは、コスト的に不利となることから、100g/
lが実用的な最大添加量である。なお、上記有機物を複
数用いる場合は、「添加量」の語を「合計の添加量」と
読みかえることにより、本特許の内容を規定する。実用
上、より望ましい添加量の範囲は、0.1〜50g/l
である。さらに、アミノグアニジン、ヒドラジン類、亜
硫酸、亜二チオン酸またはこれらの塩、ホウ水素化物、
カルバジン酸エステル、二酸化チオ尿素、スルフィン酸
類、スルホキシ酸類、ヒドラジド類、セミカルバジド塩
の少なくとも一つを添加することによって、より一層の
効果が得られる。アミノグアニジン類については、重炭
酸アミノグアニジン、硫酸アミノグアニジン、塩酸アミ
ノグアニジンなどを例示できる。ヒドラジン類について
は、水加ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチル
ヒドラジンなどを例示でき、その塩としては、硫酸ヒド
ラジン、炭酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジンを例示でき
る。亜硫酸については、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリ
ウムを例示できる。亜二チオン酸塩としては、ハイドロ
サルファイトナトリウム、ハイドロサルファイトカリウ
ム、ハイドロサルファイトアンモニウムを例示できる。
ホウ水素化物としては、ジメチルアミンボラン、水素化
ホウ素ナトリウムや水素化ホウ素カリウムを例示でき
る。カルバジン酸エステルとしては、メチルカルバゼー
ト(別名:カルバジン酸メチル)やエチルカルバゼート
(別名:カルバジン酸エチル)を例示できる。スルフィ
ン酸類としては、ホルムアミジンスルフィン酸をスルホ
キシ酸類としては、通称ロンガリットと呼ばれるソジウ
ムホルムアルデヒドスルホキシレート(別名:ヒドロキ
シメタンスルホン酸ナトリウム)が例示できる。ヒドラ
ジド類としては、カルボヒドラジド、アセトヒドラジド
やイソニコチン酸ヒドラジドを例示できる。セミカルバ
ジド塩としては、硫酸セミカルバジドや塩酸セミカルバ
ジドを例示できる。なお、二酸化チオ尿素は、アルカリ
液中で分解し、ホルムアミジンスルフィン酸を生成する
ので、ホルムアミジンスルフィン酸と同様の効果が得ら
れるものである。第二の添加剤として示した上記化合物
は、いずれも剥離液中で還元効果を示すものであり、添
加量は、これらの化合物の還元当量や寿命(還元効果の
持続時間)によって異なる。しかし、溶解性やコストな
どの実用的な観点から、望ましい添加量は、0.01〜
100g/lである。なお、第二の添加剤を複数用いる
場合は、「添加量」の語を「合計の添加量」と読みかえ
ることにより、本特許の内容を規定する。実用上、より
望ましい添加量の範囲は、0.05〜50g/lであ
る。一般的に、還元剤として知られている亜リン酸水素
二ナトリウムやホスフィン酸ナトリウム(別名:次亜リ
ン酸ナトリウム)では、剥離液中で充分な還元性が見ら
れず、また、溶解抑制効果(溶解電流を測定)も得られ
なかった。この理由として、剥離液のpH条件では、還
元寿命が数分以下と極めて短いためではないかと考えら
れる。チオ硫酸ナトリウムについては、還元寿命はある
程度得られるものの、溶解抑制効果は得られなかった。
この理由として、チオ硫酸ナトリウムの還元能力が低
く、溶解抑制には不十分なことが考えられる。また、ア
ルデヒド類であるホルムアルデヒド、テレフタルアルデ
ヒド酸、o−フタルアルデヒド酸、ベンズアルデヒド−
oスルホン酸、テレフタルアルデヒド、ベンズアルデヒ
ド2,4ジスルホン酸については、剥離液中での還元剤
としての寿命が、極めて短く、30分以下で還元剤量
(ヨウ素による酸化還元滴定で測定)が初期投入量から
計算される値の1/10以下となり、実用的ではなかっ
た。フェノール類である没食子酸、没食子酸エチル、没
食子酸nプロピル、没食子酸メチル、ピロガロール、p
ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4キシ
レノールについては、還元寿命が短く、実用的ではなか
った。なお、アミノグアニジンについては、剥離液中で
還元効果が得られるが、1,1,3,3テトラメチルグ
アニジンや硫酸グアニジンなどアミノ基のないグアニジ
ン類については効果が得られず、適していなかった。以
上の様に、剥離液に添加して効果のある還元性物質は、
本特許に示したように、極めて限られたものだけであっ
た。また、剥離液に添加された還元剤は、剥離作業時に
基板と接触する。亜硫酸ナトリウムで調べた結果、銅と
の接触によって分解が促進された。本発明の場合、前記
した(1)または(2)式で表される有機物、もしく
は、これらの塩の添加によって、このような還元剤の寿
命低下が抑制された。
【0018】
【作用】従来の剥離液に対するはんだの溶解抑制方法
は、静置条件では効果が得られていた。しかし、スプレ
ーのように新しい液が常に接触する条件では、はんだの
溶解が予想以上に大きく、その結果、基板を処理するに
したがい、剥離液中の鉛イオンが増加すること、50〜
100ppmの鉛イオンの存在においても、従来の溶解
抑制方法の効果を阻害するという知見を得ることにより
本発明をなしえたものである。
【0019】本発明では、金属イオンと錯体を形成し得
る特定の物質を剥離液に添加することにより、鉛イオン
を封鎖、もしくは、銅表面を封鎖し、はんだめっきの溶
解抑制効果を得られたと考えられる。また、より一層の
溶解抑制効果を得るために、特定の還元剤の添加を行っ
た。公知の還元剤のみを添加する方法では、はんだめっ
きより溶けだす鉛イオンの作用によって、充分な効果が
得られなかった。しかし、本発明の場合、金属イオンと
錯体を形成し得る物質によって、鉛イオンの析出作用を
防いでおり、その結果、還元剤の添加による溶解抑制効
果を得ることができた。ここで、還元剤によって、はん
だの溶解が抑制される理由の一つとして、次のように推
定している。はんだ中の金属(鉛、錫)が亜鉛酸、鉛酸
や亜錫酸、錫酸などのイオンに溶解する反応が酸素要求
反応である。剥離液に添加された還元剤は、液中の溶存
酸素を還元し、液中の溶存酸素濃度を低下させる。この
ために、はんだの溶解反応が抑制される。
【0020】実際に、いくつかの還元剤で、溶存酸素濃
度を測定した。その結果、ハイドロサルファイトナトリ
ウム、亜硫酸ナトリウム、ホルムアミジンスルフィン酸
やヒドラジンでは、室温で溶存酸素濃度の低下がみられ
た。また、溶解電流値の測定から、室温では、効果が少
なかったが、50℃では溶解抑制効果のみられたソジウ
ムアルデヒドスルホキシレート、硫酸アミノグアニジン
や水素化ホウ素ナトリウム等では、測定した溶存酸素濃
度低下も、室温では、あまりみられず、50℃で大きな
低下がみられた。このように、還元剤添加による溶存酸
素濃度の低下とはんだの溶解抑制効果に相関がみられ
た。また、重金属は、還元剤の分解を促進させる作用が
あるが、本発明の場合、重金属が封鎖されているためか
還元剤の分解が抑制されている。以上のことから明らか
なように、本発明では、鉛の析出と溶解の問題を同時に
解決したものである。
【0021】
【実施例】
(溶解抑制添加剤の実施例および比較例)NaOH水溶
液40g/lに、鉛濃度で150mg/l(150pp
m)となるように硫酸鉛を混合し、約2時間撹拌して硫
酸鉛を完全に溶解し、液を調整した。容量100mlの
ビーカに、この液50mlをそそぎ、また、それぞれ露
出面積が4cm2となるように被覆した銅とはんだ板を
液中に浸漬し、液中を流れる電流測定用の電極とした。
電極からの引きだし線間に10オームの抵抗を介し、銅
とはんだ電極を接続した。この抵抗両端の電圧を測定す
ることにより、溶解電流を測定できるようにした。測定
は、約20℃において、マグネチックスターラで液を撹
拌しながら行った。また、以下の表1に示す添加剤0.
2gを、2〜3mlのNaOH水溶液40g/lに溶解
した液を用意した。これらの液を撹拌中のビーカ内に注
ぎ、溶解電流の変化を測定した。
【0022】
【表1】 その結果、すべての実施例において、添加剤投入後(添
加剤濃度:約4g/l)の電流値が投入前の電流値に比
べ、2割以上低下し、すべての比較例においては、逆に
増加した。なお、×のものは、ほとんどのものにおい
て、電流値の減少は見られなかった。特に、比較例20
〜23の含有機イオウ化合物、比較例32〜35のニト
ロ化合物、比較例54の臭素酸ナトリウムについては、
鉛イオンを含まない水酸化ナトリウム溶液にこれらの化
合物を添加するだけでも、溶解電流の大幅な増大をもた
らし、かえって、はんだの溶解を促進した。
【0023】(第二の添加剤の実施例および比較例)次
に、第二の添加剤(還元剤)の溶解抑制効果を調べた。
効果の有無は、50℃の液温を保ったまま、はんだと銅
電極を用い、マグネチックスターラで液を撹拌しながら
溶解電流を測定することにより確認した。より詳しくの
べると、予め、10mlのNaOH水溶液40g/lに
溶解した0.2gの還元剤を50℃に加温しておき、こ
の液を、同じく50℃に加温した40mlのDTPA4
g/l入りのNaOH水溶液40g/lに加えることに
よりおこなった。評価は、表2に示す第二の添加剤を加
えたことによって、2割以上の電流値低下が見られたも
のを○、それ以外を×とした。結果は、すべての実施例
において、添加剤投入後(添加剤濃度:約4g/l)の
電流値が投入前の電流値に比べ、2割以上低下し、すべ
ての比較例においては、逆に増加した。なお、×のもの
は、ほとんどのものにおいて、電流値の減少は見られな
かった。
【0024】
【表2】
【0025】(第一の添加剤の還元剤寿命延長効果)第
一の添加剤による還元剤の寿命延長効果を調べた。Na
OH水溶液(NaOH濃度:40g/l)中に、第二の
添加剤として亜硫酸ナトリウムを還元剤濃度で、0.3
規定(19g/l)となるように調整した。この液中
に、第一の添加剤の濃度が4g/lとなるように添加し
たもの(表3−1、実施例24〜28)と添加しないも
の(表3−2、比較例66)をつくった。また、別途、
NaOH水溶液(NaOH濃度:40g/l)中に、O
PCパーソリを添加し、0.3規定となるように液を調
整した(OPCパーソリの添加量で25ml/l、比較
例67)。300mlトールビーカに、これらの液10
0mlと2cm角の銅張り積層板をいれ、湯煎器で、温
度を50℃に保った。液中にエアーポンプで毎分2.5
〜3リットルの空気を注入し、液と空気を接触させた。
この時、空気と液との接触を良くするために、ガラスボ
ールフィルタ(木下式、タイプ2、径20mm)によっ
て、微細な気泡にした。この液を適宜サンプリングし、
還元剤濃度を、ヨウ素による滴定によって測定し、経時
変化を調べた。評価は、還元剤濃度が初期値の50%に
なるまでの時間が6時間以上の場合を〇、6時間以下の
場合を×とした。実際には、表に示した実施例24〜2
8の場合、いずれも8時間経過後において80%以上の
還元剤濃度を保っていた(水分蒸発による濃縮分を換算
したもの)。一方、第一の添加剤を含まない比較例68
の場合、1時間後には、50%以下の濃度となり、8時
間後には10%以下となっていた。また、比較例67に
ついては、2時間後に10%以下の濃度となり、8時間
後には1%程度まで濃度が低下していた。
【0026】
【表3】
【0027】(鉛の析出抑制効果)銅張り積層板に、水
溶性ドライフィルムHP450(日立化成工業株式会社
製、商品名)を用いて、露光、現像を行い、パターンを
形成した。このものに、約5μmの厚さに電気はんだめ
っきを行った。この基板を、2cm×5cmになるように切
り出した。このとき、基板の半分(2cm×2.5cm)が
ドライフィルムで被覆されており、残りの部分がはんだ
めっきされているようにした。このものを、400ppm
の鉛イオンと添加剤とを含むNaOH水溶液中に浸漬
し、ドライフィルムを剥離した。剥離は、ビーカ中で行
い、温度50℃でマグネチックスターラーで約2分間、
撹拌しながら行った。このときの鉛の析出を、目視で観
察した。露出している銅に、灰色の変色部分が観察され
たものを×、全く変色なが観察されず銅光沢のあるもの
を〇とした。結果を表4に示す。
【0028】
【表4】
【0029】(はんだめっきの組成変化)ドライフィル
ムHF450(日立化成工業株式会社製、商品名)を用
いて、はんだめっきした基板(配線幅160μm/スペ
ース幅250μmの平行パターン)を1cm×2.5cmに
切断した。このものを、表5に示すそれぞれの液中に吊
り下げて、マグネチックスターラで撹拌し、ドライフル
ムを剥離した。このときのはんだの組成を、螢光X線を
用いた分析機であるSFT8000(セイコー電子工業
株式会社製、商品名)によって調べた。ドライフィルム
は、1分以下で剥離されたが、はんだの組成変化をより
明確にするために、撹拌したまま15分間、ドライフィ
ルムの剥離に用いた液中に放置した後、水洗して測定し
た。結果を表5に示す。また、鉛イオンを400ppm含
む液で処理した基板では、比較例の全てにおいて、ドラ
イフィルムが剥離され、露出した銅表面に鉛の析出が見
られたが、実施例においては、いずれも鉛の析出は見ら
れなかった。
【0030】(鉛イオンが存在する剥離液中での添加剤
の効果)第一の添加剤と第二の添加剤の効果、および、
これらの共同効果を明かにするための試験を行った。ま
ず、NaOHの濃度が40g/lの水溶液を作った。別
に、NaOHの濃度が40g/lの水溶液に、硫酸鉛を
溶解し、5000ppmの鉛イオンを含む液を作った。ま
た、第一の添加剤(DTPAとエチレンジアミン4(メ
チレンホスホン酸))と、第二の添加剤(亜硫酸ナトリ
ウム)のそれぞれ0.2gを、少量(2〜3ml)のNa
OH溶液(NaOH濃度;40g/l)に溶解した。容量
1000mlのビーカに、濃度が40g/lのNaOH水溶
液を50mlそそぎ、先に述べた銅とはんだ電極を用い
て、添加剤等を順次加えたときの溶解電流の変化を測定
した。測定は、50℃で、マグネチックスターラで液を
撹拌しながら行った。結果を図1及び図2に示す。この
図において、最初は、NaOH水溶液中での溶解電流を
測定しており、電極の表面状態がわずかづつ変化するた
めか、除々に電流値が減少している(区間1)。このよ
うな現象は、実際の水溶性レジストの剥離時にも起こっ
ているものと思われる。しかし、実際の剥離に要する時
間(2〜3分間)における電流の減少量はわずかであ
る。ここで、第二の添加剤の効果をみるために、先に用
意した亜硫酸ナトリウムを液に投入する。そうすると、
急速に電流値の減少が起る(区間2)。説明を加える
と、ここでは、添加剤の効果をみるために、後から、第
二の添加剤を加えたが、実際の場合は、最初から液に加
えられているので、電極を液に入れて、電流値を測定し
始める時から電流値は低下していることになる。次に、
鉛イオンの影響をみるために、先に用意した5000p
pmの鉛を含む液を1ml加える。すると、加えられた
液の鉛イオン濃度は、約100ppmとなる。鉛イオン
が加わることにより、第二の添加剤の効果は、全くなく
なり、急激に、溶解電流値が上昇してしまう(区間
3)。そこで、第一の添加剤であるDTPA(図1)と
エチレンジアミン四(メチレンホスホン酸)(図2)を
水酸化ナトリウム水溶液へ溶解したものを加えると、鉛
イオンによる電流値上昇分がほとんど打ち消されて、鉛
イオン添加前の電流値近くまで減少する(区間4)。こ
のように、第二の添加剤だけでは、鉛イオンがある時に
は、電流値抑制効果が打ち消されてしまうが、第一の添
加剤を加えることにより、鉛イオンの作用をなくし、第
二の添加剤の効果を発揮させることができるようにな
る。
【0031】
【発明の効果】水溶性レジストをアルカリ性の剥離液で
剥離する場合に、本発明を適用することにより、はんだ
めっきの溶解を抑制できるとともに、鉛の析出も抑制で
きる。このため、配線欠陥のない良好な配線を形成する
ことができる。その他の効果として、本方法に用いる剥
離液は、強アルカリを得るために、安価な水酸化ナトリ
ウムや水酸化カリウムなどの無機アルカリを用いること
ができる。また、鉛の析出がなくなるため、同一量の剥
離液で処理できる基板面積が増加する。従って、基板の
単位面積当たりの剥離液使用量が減少し、廃液量が減少
する。このため、処理に費やすコストが低下し、また、
有機アルカリを用いないので、廃液処理も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の効果を説明するための添加剤と溶解電
流の関係を示す線図である。
【図2】本発明の効果を説明するための添加剤と溶解電
流の関係を示す線図である。
【手続補正書】
【提出日】平成5年4月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 水溶性レジストの剥離方法
【特許請求の範囲】
【化1】 (上記化学式中のNは−CH2COOH基と直接結合す
る第3級アミンであり、R、R’は、置換基または分子
鎖をしめす。)
【化2】 (上記化学式中のNは−CH2PO(OH)2基と直接結
合する第3級アミンであり、R、R’は、置換基または
分子鎖をしめす。)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、配線板の製造工程にお
ける水溶性レジストの剥離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】配線板の製造法の一つに、はんだをエッ
チングレジストとして用い、配線形成する方法が知られ
ている。この方法の一般的な場合を例にあげると、両面
に銅箔を積層した基板に、穴あけ後、銅めっきをほどこ
し、この後、有機レジスト膜によって、被めっき部以外
を被覆する。このものに、はんだめっきを行い、有機レ
ジスト膜を剥離後、不要部分の銅をエッチングによって
除去する。この有機レジスト膜に水溶性レジストを用
い、アルカリ性水溶液によって剥離する方法がある。水
溶性レジストの剥離に用いられる剥離液は、一般的に水
酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの強アルカリ性水
溶液で、pH13以上で用いられることが多い。このと
きの、温度は、40〜50℃で、剥離に要する時間は、
2〜3分程度が一般的である。
【0003】実際の剥離時間は、高密度パターン部分に
剥離残渣などが残らず、完全に水溶性レジストが剥離さ
れるために、ほぼレジストが剥離される時間(約40〜
50秒)の3倍程度に設定される。このため、剥離作業
の多くの時間は、銅(水溶性レジストの剥離された部
分)とはんだめっきとが同時に剥離液にさらされる状態
となる。
【0004】剥離液は、上記したように強アルカリ性の
液であるため、エッチングレジストの役割を果たすべ
き、はんだが溶解され、その厚さが不十分となったり、
また、はんだの構成金属の一方(錫)が過剰に溶解され
てしまったりすることがある。特に基板周辺部や疎なパ
ターンにおいては、はんだめっきの電流密度が大とな
り、はんだめっき中の錫成分が増加し、溶解しやすくな
る傾向がある。このため、次工程であるアルカリエッチ
ング工程において、充分なエッチングレジストの役割を
果たしえず、配線に断線や欠けなどの欠陥を作ることが
あった。また、水溶性レジストの剥離時には、銅とはん
だが接触しているための局部電池作用も、先に述べたは
んだの腐食、溶解の促進要因となっている。そこで、こ
の腐食、溶解を防止するために、還元性物質や、さら
に、アリールスルホン酸ナトリウムや有機イオウ化合物
等を添加する方法、ホウ水素化合物を添加する方法、イ
ミダゾール化合物を添加する方法や、3,5ジメチルピ
ラゾールを添加する方法が、特開昭63−183445
号公報、特開昭64−24254号公報、特開昭64−
81295号公報および特開昭62−151589号公
報に、それぞれ、示されている。また、水溶性レジスト
の剥離において、鉛イオンが水溶性レジスト剥離後の銅
表面に析出し、エッチングを阻害するため、配線間のシ
ョートを引き起こすことがある。そこで、鉛の析出を防
ぐために、酸化剤を添加する方法が、特開昭63−38
588号公報に示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記特開昭63−18
3445号公報、特開昭64−24254号公報、特開
昭64−81295号公報および特開昭62−1515
89号公報に示されている方法では、スプレー方式によ
り剥離作業を行うと、充分な効果が得られない。また、
特開昭63−38588号公報において鉛の析出を防ぐ
方法として示されている酸化剤を用いる方法と、特開昭
63−183445号公報や特開昭64−81295号
公報においてはんだの溶解を抑制する方法として示され
ている還元性物質を用いる方法とは、両立しえない。す
なわち、いままでは、はんだの溶解抑制と鉛の析出防止
を同時にはかることは困難であった。
【0006】本発明は、上記公報に示されたはんだの溶
解抑制方法よりも、より優れたはんだの溶解抑制と、同
時に、鉛の析出防止も行った水溶性レジストの剥離方法
を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、銅箔を積層し
た基板に、水溶性レジストでめっきレジストを形成し、
はんだめっきを行い、その後、この水溶性レジストを剥
離する水溶性レジストの剥離方法において、剥離液中
に、式(1)で表される有機物、Nトリス(ヒドロキシ
メチル)メチルグリシン(別名:トリシン)、または、
式(2)で表される有機物もしくは、これらの塩を含む
ことを特徴とする。
【0008】
【化3】
【0009】
【化4】 (上記化学式中のNは−CH2COOH基もしくは−C
2PO(OH)2基と直接結合する第3級アミンであ
り、R、R’は、置換基または分子鎖をしめす。)
【0010】さらに、アミノグアニジン、ヒドラジン
類、亜硫酸、亜二チオン酸またはこれらの塩、ホウ水素
化物、カルバジン酸エステル、二酸化チオ尿素、スルフ
ィン酸類、スルホキシ酸類、ヒドラジド類、セミカルバ
ジド塩の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0011】配線形成を阻害する鉛の析出について、特
開昭63−38588号公報では、はんだめっき液成分
残存の影響が述べられている。しかし、筆者らの検討結
果では、鉛の析出は、剥離液中で引き起こされるものと
考えられる。以下に、これについて詳細に述べる。銅の
エッチングレジストに使用されるはんだの構成金属であ
る錫や鉛は、pH13以上で溶解することが、化学同人
1984年発行の「金属の腐食防食序論」p242にお
ける図17−11、「スズの電位−pH図」、および、
p243における図17−12、「鉛の電位−pH図」
などに示されている。実際に、銅表面に配線幅、スペー
ス幅ともに100〜150μm程度の高密度なはんだめ
っきのパターンを形成し、400ppmの鉛イオンを含
む40g/l程度の水酸化ナトリウム水溶液の液滴を落
とすと、室温で数分放置後に、銅の露出部分が灰色に変
色するのが容易に観察されることを、筆者らは見出して
いる。また、この灰色部分を分析すると鉛が検出され
る。この理由は、はんだめっき金属成分の溶解と鉛イオ
ンの再析出が、液滴中で、同時に、もしくは、逐次的に
起っていることになる。この詳細な機構については不明
である。はんだめっき金属の鉛と錫、および、銅(はん
だめっきがなされていない部分)の三種類の金属が存在
するためにこの様な現象が起るようである。このよう
に、アルカリ剥離液中での、はんだの溶解や鉛の再析出
現象は容易に確認される。
【0012】はんだの溶解抑制方法を示した特開昭63
−183445号公報、特開昭64−81295号公
報、特開昭62−151589号公報および特開昭63
−38588号公報に、室温において、静置時の溶解速
度や溶解量の実例が実施例および比較例として示されて
いる。これら4件の公報のそれぞれの実施例に示されて
いるように、溶解をある程度抑制することはできるが、
完全には溶解を抑制できないことがわかる。実際の作業
には、一般的に、1〜2kg/cm2のスプレー圧力
で、40〜50℃の温度の剥離液を、コンベアを用いて
搬送している基板に接触させて、水溶性レジストを剥離
するスプレー方式を用いられることが多い。この様に、
常に新しい液が基板表面に供給される場合、見かけの拡
散係数は静置時と比較にならないほど大きくなり、はん
だの溶解速度は、上記の公報の実施例の値よりもはるか
に大きくなることが容易に推定される。従って、上に示
したような溶解抑制方法を採用しても、基板の処理枚数
とともに、剥離液中にはんだが溶解し、その金属イオン
量が増加することになる。実際に、スプレー式水溶性レ
ジスト剥離装置を用い、特開昭63−183445号公
報に示されている方法に相当する還元剤入り薬剤である
OPCパーソリ(奥野製薬株式会社製、商品名)を剥離
液に添加し、200m2の基板(はんだ面積:25%)
のドライフィルムHF450(日立化成工業株式会社
製、商品名)を剥離した後、液中の鉛イオンを測定した
ところ、その濃度は、300〜400ppmであった。
筆者らは、剥離液中の鉛イオン量が、400ppm程度
になると、鉛の基板表面への析出が目視で観察され始
め、その後のアルカリエッチングで残銅を引き起こすこ
とを見出している。
【0013】そこで、鋭意検討を行った結果、液中に鉛
イオンが増加すると、溶解が加速されること、また、特
開昭63−183445号公報、特開昭64−2425
4号公報、特開昭64−81295号公報および特開昭
62−151589号公報に示されている剥離液を後述
の溶解電流値を測定する方法で試験した結果、液中に鉛
イオンが存在すると溶解が増大し、充分な抑制効果が得
られないことを見出した。鉛イオンの存在時に、溶解が
加速される理由として、先に述べた鉛の再析出反応が、
腐食、溶解の対極反応となっているためと推定される。
また、溶解電流を測定したところ、液中の鉛イオンが5
0〜100ppmの場合、目視では必ずしも鉛の析出が
確認できないが、この様な溶解の加速現象の起ることが
わかった。即ち、一般の剥離作業において、はんだの溶
解が特に問題になるのは、単にアルカリ液中へはんだが
溶解する単純な溶解現象に加えて、このような加速現象
によるためと考えられる。そこで、鉛イオンと錯体を形
成し、鉛の析出を抑制する方法を検討した結果、アルカ
リ性の剥離液中に式(1)で表される有機物、トリシ
ン、または、式(2)で表される有機物もしくは、これ
らの塩を添加することが有効なことがわかった。
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】 (上記化学式中のNは−CH2COOH基もしくは−C
2PO(OH)2基と直接結合する第3級アミンであ
り、R、R’は、置換基または分子鎖をしめす。)
【0016】剥離液中へ、上記の化合物を添加した結
果、水溶性レジストの剥離前後におけるはんだめっきの
鉛と錫の比率の変化もほとんどなくなり、その後のアル
カリエッチングによって配線部分がエッチングされる
(欠けや断線不良)ような欠陥を防止できる。
【0017】式(1)または(2)の化合物として、具
体的には、ジヒドロキシエチルグリシン、1,2シクロ
ヘキサンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢
酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エ
チレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジア
ミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレン
ジアミン四(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリア
ミン五(メチレンホスホン酸)やこれらの塩があげられ
る。一般的に、鉛イオンと形成する錯体の鉛との比率
や、上記有機物の分子量によって有効な添加量の範囲は
異なる。しかし、実用的には、0.05g/l以上の添
加範囲で有効である。また、不必要に多くの量を添加す
ることは、コスト的に不利となることから、100g/
lが実用的な最大添加量である。なお、上記有機物を複
数用いる場合は、「添加量」の語を「合計の添加量」と
読みかえることにより、本特許の内容を規定する。実用
上、より望ましい添加量の範囲は、0.1〜50g/l
である。さらに、アミノグアニジン、ヒドラジン類、亜
硫酸、亜二チオン酸またはこれらの塩、ホウ水素化物、
カルバジン酸エステル、二酸化チオ尿素、スルフィン酸
類、スルホキシ酸類、ヒドラジド類、セミカルバジド塩
の少なくとも一つを添加することによって、より一層の
効果が得られる。アミノグアニジン類については、重炭
酸アミノグアニジン、硫酸アミノグアニジン、塩酸アミ
ノグアニジンなどを例示できる。ヒドラジン類について
は、水加ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチル
ヒドラジンなどを例示でき、その塩としては、硫酸ヒド
ラジン、炭酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジンを例示でき
る。亜硫酸については、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリ
ウムを例示できる。亜二チオン酸塩としては、ハイドロ
サルファイトナトリウム、ハイドロサルファイトカリウ
ム、ハイドロサルファイトアンモニウムを例示できる。
ホウ水素化物としては、ジメチルアミンボラン、水素化
ホウ素ナトリウムや水素化ホウ素カリウムを例示でき
る。カルバジン酸エステルとしては、メチルカルバゼー
ト(別名:カルバジン酸メチル)やエチルカルバゼート
(別名:カルバジン酸エチル)を例示できる。スルフィ
ン酸類としては、ホルムアミジンスルフィン酸をスルホ
キシ酸類としては、通称ロンガリットと呼ばれるソジウ
ムホルムアルデヒドスルホキシレート(別名:ヒドロキ
シメタンスルホン酸ナトリウム)が例示できる。ヒドラ
ジド類としては、カルボヒドラジド、アセトヒドラジド
やイソニコチン酸ヒドラジドを例示できる。セミカルバ
ジド塩としては、硫酸セミカルバジドや塩酸セミカルバ
ジドを例示できる。なお、二酸化チオ尿素は、アルカリ
液中で分解し、ホルムアミジンスルフィン酸を生成する
ので、ホルムアミジンスルフィン酸と同様の効果が得ら
れるものである。第二の添加剤として示した上記化合物
は、いずれも剥離液中で還元効果を示すものであり、添
加量は、これらの化合物の還元当量や寿命(還元効果の
持続時間)によって異なる。しかし、溶解性やコストな
どの実用的な観点から、望ましい添加量は、0.01〜
100g/lである。なお、第二の添加剤を複数用いる
場合は、「添加量」の語を「合計の添加量」と読みかえ
ることにより、本特許の内容を規定する。実用上、より
望ましい添加量の範囲は、0.05〜50g/lであ
る。一般的に、還元剤として知られている亜リン酸水素
二ナトリウムやホスフィン酸ナトリウム(別名:次亜リ
ン酸ナトリウム)では、剥離液中で充分な還元性が見ら
れず、また、溶解抑制効果(溶解電流を測定)も得られ
なかった。この理由として、剥離液のpH条件では、還
元寿命が数分以下と極めて短いためではないかと考えら
れる。チオ硫酸ナトリウムについては、還元寿命はある
程度得られるものの、溶解抑制効果は得られなかった。
この理由として、チオ硫酸ナトリウムの還元能力が低
く、溶解抑制には不十分なことが考えられる。また、ア
ルデヒド類であるホルムアルデヒド、テレフタルアルデ
ヒド酸、o−フタルアルデヒド酸、ベンズアルデヒド−
oスルホン酸、テレフタルアルデヒド、ベンズアルデヒ
ド2,4ジスルホン酸については、剥離液中での還元剤
としての寿命が、極めて短く、30分以下で還元剤量
(ヨウ素による酸化還元滴定で測定)が初期投入量から
計算される値の1/10以下となり、実用的ではなかっ
た。フェノール類である没食子酸、没食子酸エチル、没
食子酸nプロピル、没食子酸メチル、ピロガロール、p
ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、2,4キシ
レノールについては、還元寿命が短く、実用的ではなか
った。なお、アミノグアニジンについては、剥離液中で
還元効果が得られるが、1,1,3,3テトラメチルグ
アニジンや硫酸グアニジンなどアミノ基のないグアニジ
ン類については効果が得られず、適していなかった。以
上の様に、剥離液に添加して効果のある還元性物質は、
本特許に示したように、極めて限られたものだけであっ
た。また、剥離液に添加された還元剤は、剥離作業時に
基板と接触する。亜硫酸ナトリウムで調べた結果、銅と
の接触によって分解が促進された。本発明の場合、前記
した(1)または(2)式で表される有機物、もしく
は、これらの塩の添加によって、このような還元剤の寿
命低下が抑制された。
【0018】
【作用】従来の剥離液に対するはんだの溶解抑制方法
は、静置条件では効果が得られていた。しかし、スプレ
ーのように新しい液が常に接触する条件では、はんだの
溶解が予想以上に大きく、その結果、基板を処理するに
したがい、剥離液中の鉛イオンが増加すること、50〜
100ppmの鉛イオンの存在においても、従来の溶解
抑制方法の効果を阻害するという知見を得ることにより
本発明をなしえたものである。
【0019】本発明では、金属イオンと錯体を形成し得
る特定の物質を剥離液に添加することにより、鉛イオン
を封鎖、もしくは、銅表面を封鎖し、はんだめっきの溶
解抑制効果を得られたと考えられる。また、より一層の
溶解抑制効果を得るために、特定の還元剤の添加を行っ
た。公知の還元剤のみを添加する方法では、はんだめっ
きより溶けだす鉛イオンの作用によって、充分な効果が
得られなかった。しかし、本発明の場合、金属イオンと
錯体を形成し得る物質によって、鉛イオンの析出作用を
防いでおり、その結果、還元剤の添加による溶解抑制効
果を得ることができた。ここで、還元剤によって、はん
だの溶解が抑制される理由の一つとして、次のように推
定している。はんだ中の金属(鉛、錫)が亜鉛酸、鉛酸
や亜錫酸、錫酸などのイオンに溶解する反応が酸素要求
反応である。剥離液に添加された還元剤は、液中の溶存
酸素を還元し、液中の溶存酸素濃度を低下させる。この
ために、はんだの溶解反応が抑制される。
【0020】実際に、いくつかの還元剤で、溶存酸素濃
度を測定した。その結果、ハイドロサルファイトナトリ
ウム、亜硫酸ナトリウム、ホルムアミジンスルフィン酸
やヒドラジンでは、室温で溶存酸素濃度の低下がみられ
た。また、溶解電流値の測定から、室温では、効果が少
なかったが、50℃では溶解抑制効果のみられたソジウ
ムアルデヒドスルホキシレート、硫酸アミノグアニジン
や水素化ホウ素ナトリウム等では、測定した溶存酸素濃
度低下も、室温では、あまりみられず、50℃で大きな
低下がみられた。このように、還元剤添加による溶存酸
素濃度の低下とはんだの溶解抑制効果に相関がみられ
た。また、重金属は、還元剤の分解を促進させる作用が
あるが、本発明の場合、重金属が封鎖されているためか
還元剤の分解が抑制されている。以上のことから明らか
なように、本発明では、鉛の析出と溶解の問題を同時に
解決したものである。
【0021】
【実施例】 (溶解抑制添加剤の実施例および比較例)NaOH水溶
液40g/lに、鉛濃度で150mg/l(150pp
m)となるように硫酸鉛を混合し、約2時間撹拌して硫
酸鉛を完全に溶解し、液を調整した。容量100mlの
ビーカに、この液50mlをそそぎ、また、それぞれ露
出面積が4cm2となるように被覆した銅とはんだ板を
液中に浸漬し、液中を流れる電流測定用の電極とした。
電極からの引きだし線間に10オームの抵抗を介し、銅
とはんだ電極を接続した。この抵抗両端の電圧を測定す
ることにより、溶解電流を測定できるようにした。測定
は、約20℃において、マグネチックスターラで液を撹
拌しながら行った。また、以下の表1に示す添加剤0.
2gを、2〜3mlのNaOH水溶液40g/lに溶解
した液を用意した。これらの液を撹拌中のビーカ内に注
ぎ、溶解電流の変化を測定した。
【0022】
【表1】 その結果を表1に示す。添加剤投入後(添加剤濃度:約
4g/l)の電流値が投入前の電流値に比べ、2割以上
低下したものを〇、2割未満ないしは逆に増加したもの
を×とした。なお、×のものは、ほとんどのものにおい
て、電流値の減少は見られなかった。特に、比較例20
〜23の含有機イオウ化合物、比較例32〜35のニト
ロ化合物、比較例54の臭素酸ナトリウムについては、
鉛イオンを含まない水酸化ナトリウム溶液にこれらの化
合物を添加するだけでも、溶解電流の大幅な増大をもた
らし、かえって、はんだの溶解を促進した。
【0023】(第二の添加剤の実施例および比較例)次
に、第二の添加剤(還元剤)の溶解抑制効果を調べた。
効果の有無は、50℃の液温を保ったまま、はんだと銅
電極を用い、マグネチックスターラで液を撹拌しながら
溶解電流を測定することにより確認した。より詳しくの
べると、予め、10mlのNaOH水溶液40g/lに
溶解した0.2gの還元剤を50℃に加温しておき、こ
の液を、同じく50℃に加温した40mlのDTPA4
g/l入りのNaOH水溶液40g/lに加えることに
よりおこなった。評価は、表2に示す第二の添加剤を加
えたことによって、2割以上の電流値低下が見られたも
のを○、それ以外を×とした。結果は、すべての実施例
において、添加剤投入後(添加剤濃度:約4g/l)の
電流値が投入前の電流値に比べ、2割以上低下し、すべ
ての比較例においては、ほとんどのものにおいて、電流
値の減少は見られなかった。
【0024】
【表2】
【0025】(第一の添加剤の還元剤寿命延長効果)第
一の添加剤による還元剤の寿命延長効果を調べた。Na
OH水溶液(NaOH濃度:40g/l)中に、第二の
添加剤として亜硫酸ナトリウムを還元剤濃度で、0.3
規定(19g/l)となるように調整した。この液中
に、第一の添加剤の濃度が4g/lとなるように添加し
たもの(表3−1、実施例24〜28)と添加しないも
の(表3−2、比較例66)をつくった。また、別途、
NaOH水溶液(NaOH濃度:40g/l)中に、O
PCパーソリを添加し、0.3規定となるように液を調
整した(OPCパーソリの添加量で25ml/l、比較
例67)。300mlトールビーカに、これらの液10
0mlと2cm角の銅張り積層板をいれ、湯煎器で、温
度を50℃に保った。液中にエアーポンプで毎分2.5
〜3リットルの空気を注入し、液と空気を接触させた。
この時、空気と液との接触を良くするために、ガラスボ
ールフィルタ(木下式、タイプ2、径20mm)によっ
て、微細な気泡にした。この液を適宜サンプリングし、
還元剤濃度を、ヨウ素による滴定によって測定し、経時
変化を調べた。評価は、還元剤濃度が初期値の50%に
なるまでの時間が6時間以上の場合を〇、6時間以下の
場合を×とした。実際には、表に示した実施例24〜2
8の場合、いずれも8時間経過後において80%以上の
還元剤濃度を保っていた(水分蒸発による濃縮分を換算
したもの)。一方、第一の添加剤を含まない比較例68
の場合、1時間後には、50%以下の濃度となり、8時
間後には10%以下となっていた。また、比較例67に
ついては、2時間後に10%以下の濃度となり、8時間
後には1%程度まで濃度が低下していた。
【0026】
【表3】
【0027】(鉛の析出抑制効果)銅張り積層板に、水
溶性ドライフィルムHF450(日立化成工業株式会社
製、商品名)を用いて、露光、現像を行い、パターンを
形成した。このものに、約5μmの厚さに電気はんだめ
っきを行った。この基板を、2cm×5cmになるように切
り出した。このとき、基板の半分(2cm×2.5cm)が
ドライフィルムで被覆されており、残りの部分がはんだ
めっきされているようにした。このものを、400ppm
の鉛イオンと添加剤とを含むNaOH水溶液中に浸漬
し、ドライフィルムを剥離した。剥離は、ビーカ中で行
い、温度50℃でマグネチックスターラーで約2分間、
撹拌しながら行った。このときの鉛の析出を、目視で観
察した。露出している銅に、灰色の変色部分が観察され
たものを×、全く変色が観察されず銅光沢のあるものを
〇とした。結果を表4に示す。
【0028】
【表4】
【0029】(はんだめっきの組成変化)ドライフィル
ムHF450(日立化成工業株式会社製、商品名)を用
いて、はんだめっきした基板(配線幅160μm/スペ
ース幅250μmの平行パターン)を1cm×2.5cmに
切断した。このものを、表5に示すそれぞれの液中に吊
り下げて、マグネチックスターラで撹拌し、ドライフル
ムを剥離した。このときのはんだの組成を、螢光X線を
用いた分析機であるSFT8000(セイコー電子工業
株式会社製、商品名)によって調べた。ドライフィルム
は、1分以下で剥離されたが、はんだの組成変化をより
明確にするために、撹拌したまま15分間、ドライフィ
ルムの剥離に用いた液中に放置した後、水洗して測定し
た。結果を表5に示す。尚、未処理のものの錫比率を測
定したところ、最大値70.7%、最小値66.8%、
平均値68.3%、標準偏差1.04%であった。ま
た、鉛イオンを400ppm含む液で処理した基板では、
比較例の全てにおいて、ドライフィルムが剥離され、露
出した銅表面に鉛の析出が見られたが、実施例において
は、いずれも鉛の析出は見られなかった。
【0030】
【表5】
【0031】(鉛イオンが存在する剥離液中での添加剤
の効果)第一の添加剤と第二の添加剤の効果、および、
これらの共同効果を明かにするための試験を行った。ま
ず、NaOHの濃度が40g/lの水溶液を作った。別
に、NaOHの濃度が40g/lの水溶液に、硫酸鉛を
溶解し、5000ppmの鉛イオンを含む液を作った。ま
た、第一の添加剤(DTPAとエチレンジアミン4(メ
チレンホスホン酸))と、第二の添加剤(亜硫酸ナトリ
ウム)のそれぞれ0.2gを、少量(2〜3ml)のNa
OH溶液(NaOH濃度;40g/l)に溶解した。容量
100mlのビーカに、濃度が40g/lのNaOH水溶液
を50mlそそぎ、先に述べた銅とはんだ電極を用いて、
添加剤等を順次加えたときの溶解電流の変化を測定し
た。測定は、50℃で、マグネチックスターラで液を撹
拌しながら行った。結果を図1及び図2に示す。この図
において、最初は、NaOH水溶液中での溶解電流を測
定しており、電極の表面状態がわずかづつ変化するため
か、除々に電流値が減少している(区間1)。このよう
な現象は、実際の水溶性レジストの剥離時にも起こって
いるものと思われる。しかし、実際の剥離に要する時間
(2〜3分間)における電流の減少量はわずかである。
ここで、第二の添加剤の効果をみるために、先に用意し
た亜硫酸ナトリウムを液に投入する。そうすると、急速
に電流値の減少が起る(区間2)。説明を加えると、こ
こでは、添加剤の効果をみるために、後から、第二の添
加剤を加えたが、実際の場合は、最初から液に加えられ
ているので、電極を液に入れて、電流値を測定し始める
時から電流値は低下していることになる。次に、鉛イオ
ンの影響をみるために、先に用意した5000ppmの
鉛を含む液を1ml加える。すると、加えられた液の鉛
イオン濃度は、約100ppmとなる。鉛イオンが加わ
ることにより、第二の添加剤の効果は、全くなくなり、
急激に、溶解電流値が上昇してしまう(区間3)。そこ
で、第一の添加剤であるDTPA(図1)とエチレンジ
アミン四(メチレンホスホン酸)(図2)を水酸化ナト
リウム水溶液へ溶解したものを加えると、鉛イオンによ
る電流値上昇分がほとんど打ち消されて、鉛イオン添加
前の電流値近くまで減少する(区間4)。このように、
第二の添加剤だけでは、鉛イオンがある時には、電流値
抑制効果が打ち消されてしまうが、第一の添加剤を加え
ることにより、鉛イオンの作用をなくし、第二の添加剤
の効果を発揮させることができるようになる。
【0032】
【発明の効果】水溶性レジストをアルカリ性の剥離液で
剥離する場合に、本発明を適用することにより、はんだ
めっきの溶解を抑制できるとともに、鉛の析出も抑制で
きる。このため、配線欠陥のない良好な配線を形成する
ことができる。その他の効果として、本方法に用いる剥
離液は、強アルカリを得るために、安価な水酸化ナトリ
ウムや水酸化カリウムなどの無機アルカリを用いること
ができる。また、鉛の析出がなくなるため、同一量の剥
離液で処理できる基板面積が増加する。従って、基板の
単位面積当たりの剥離液使用量が減少し、廃液量が減少
する。このため、処理に費やすコストが低下し、また、
有機アルカリを用いないので、廃液処理も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の効果を説明するための添加剤と溶解電
流の関係を示す線図である。
【図2】本発明の効果を説明するための添加剤と溶解電
流の関係を示す線図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銅箔を積層した基板に、ドライフィルム等
    の水溶性レジストによって、めっきレジストを形成し、
    はんだめっきを行い、水溶性レジストを強アルカリ性水
    溶液で剥離する水溶性レジストの剥離方法において、剥
    離液中に、式(1)で表される有機物もしくは、その塩
    を0.05〜100g/l含むことを特徴とする水溶性
    レジストの剥離方法。 【化1】 (上記化学式中のNは−CH2COOH基と直接結合す
    る第3級アミンであり、R、R’は、置換基または分子
    鎖をしめす。)
  2. 【請求項2】剥離液中に含まれる有機物が、ジヒドロキ
    シエチルグリシン、1,2シクロヘキサンジアミン四酢
    酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、
    ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢
    酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエ
    チレンテトラミン六酢酸のいづれかであることを特徴と
    する請求項1に記載の水溶性レジストの剥離方法
  3. 【請求項3】銅箔を積層した基板に、ドライフィルム等
    の水溶性レジストによって、めっきレジストを形成し、
    はんだめっきを行い、水溶性レジストを強アルカリ性水
    溶液で剥離する水溶性レジストの剥離方法において、剥
    離液中にNトリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシ
    ン、もしくは、その塩を0.05〜100g/l含むこ
    とを特徴とする水溶性レジストの剥離方法。
  4. 【請求項4】銅箔を積層した基板に、ドライフィルム等
    の水溶性レジストによって、めっきレジストを形成し、
    はんだめっきを行い、水溶性レジストを強アルカリ性水
    溶液で剥離する水溶性レジストの剥離方法において、剥
    離液中に、式(2)で表される有機物もしくは、その塩
    を0.05〜100g/l含むことを特徴とする水溶性
    レジストの剥離方法。 【化2】 (上記化学式中のNは−CH2PO(OH)2基と直接結
    合する第3級アミンであり、R、R’は、置換基または
    分子鎖をしめす。)
  5. 【請求項5】剥離液中に含まれる有機物が、エチレンジ
    アミン四(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミ
    ン五(メチレンホスホン酸)のいづれかであることを特
    徴とする請求項4に記載の水溶性レジストの剥離方法。
  6. 【請求項6】剥離液への第二の添加剤として、アミノグ
    アニジン、ヒドラジン類、亜硫酸、亜二チオン酸または
    これらの塩、ホウ水素化物、カルバジン酸エステル、二
    酸化チオ尿素、スルフィン酸類、スルホキシ酸類、ヒド
    ラジド類、セミカルバジド塩の少なくとも一つを0.0
    1〜100g/lを含むことを特徴とする請求項1〜5
    のうちいずれかに記載した水溶性レジストの剥離方法。
  7. 【請求項7】剥離液をスプレーによって基板に接触させ
    ることを特徴とする請求項1〜6のうちいずれかに記載
    した水溶性レジストの剥離方法。
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