JP3540887B2 - 選択的ニッケル剥離液およびこれを用いる剥離方法 - Google Patents

選択的ニッケル剥離液およびこれを用いる剥離方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、選択的なニッケル剥離液に関し、更に詳細には、銅または銅合金および錫または錫合金を殆ど侵すことなくニッケルのみを選択的に剥離することのできる剥離液に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プリント基板では電気ニッケルめっきや無電解ニッケルめっきが施されており、その不要なニッケル皮膜を剥離するためにニッケル剥離液が使用されている。 しかし、最近の電子材料としてのプリント基板や電子部品としての半導体は、ファイン化が進むにつれその形成する素材も複合素材化し、従来のような比較的シンプルな処理薬品では不可能となってきた。
【0003】
すなわち、従来の剥離液は、下地素材上の皮膜を剥離するいわゆる単一素材上の剥離液であり、複合素材化した電子材料、例えば、プリント基板、セラミックス基板や半導体分野であるTAB(テープオートマテックボンディング)、PGA(ピングリッドアレー)、BGA(ボールグリッドアレー)などでは、数種類の素材から特定の金属のみを選択的に剥離するには、幾つかの問題点があり使用に適さなかった。
【0004】
例えば、硝酸系のニッケル剥離液では、剥離すべき金属の他、その下地素材である銅またはその合金や錫またはその合金が侵されてしまうという問題があった。また、過酸化水素とフッ化物系のニッケル剥離液の場合でも、錫または錫合金が侵されてしまう。 更に、シアンアルカリやアミンアルカリに酸化剤を添加した物は、複合素材の有機レジストを膨潤し溶解してしまうので不適であり、また、シアン系ニッケル剥離液は毒性が高い問題があり、アミン錯体系のニッケル剥離液は廃水処理性に難点があり、公害性が高いという問題があった。
【0005】
また、特開昭58−108785号公報では、硫酸とm−ニトロベンゼンスルホン酸を含む液で電解剥離を行う方法が、特開昭58−58280号公報では、鉄イオンとヒドロキシカルボン酸を主成分とする硝酸と過酸化水素の混合物が、特開平6−322559号公報では、硝酸、硫酸、過酸化水素およびケトン化合物を含有する剥離液がそれぞれ開示、報告されている。
【0006】
更に、市販のニッケルおよびニッケル合金の剥離液(エッチング液)としては、アルカリ性のエンストリップNP(メルテックス社製)、メテックスSCB(マグダーミット社製)、トップリップAZ(奥野製薬社製)、オキシストリップOS−456(荏原ユージライト社製)や酸性のエバストリップST−41(荏原ユージライト社製)、メルストリップN−950(メルテックス社製)、メルストリップHN−841(メルテックス社製)などの浸漬剥離法が知られている。
【0007】
ところで、従来の処理方法で行うと次のような欠点が見られ、いずれも複合素材からの選択的ニッケル剥離液としては十分なものといい難かった。 例えば、特開昭58−108785号公報の硫酸とm−ニトロベンゼンスルホン酸を含む液で電解剥離を行う方法は、ニッケルを剥離する部分に電解のための通電接点を新たに形成しなければ成らないという基本的な欠点があり、不適である。 また、特開昭58−58280号公報では、鉄イオンとヒドロキシカルボン酸を主成分とする硝酸と過酸化水素の混合物が、特開平6−322559号公報では、硝酸、硫酸、過酸化水素およびケトン化合物を含有する剥離液で、いずれもが硝酸を含むため処理複合素材の錫または錫合金を溶解する欠点がある。
【0008】
更に、上記市販ニッケル剥離液のうち、アルカリ性のものは、処理複合素材のレジストを膨潤溶解してしまい不適である。 また、酸性のタイプは、上記問題はないが、無電解ニッケル(Ni−P)の剥離で黒色のスマットが残り、スマット除去に後処理としてシアンやクロム酸などの毒性の高い処理薬品を必要としするため、実用性に乏しいものであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、複合素材素材上から、他の金属あるいは素材に影響を与えず、ニッケルのみを選択的に剥離できる剥離液の提供が求められていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ニッケル金属の選択的剥離液について、鋭意研究を行った結果、酸性成分および酸化剤を主成分とし、これに特定な金属溶解抑制剤を添加すれば、他の金属やレジスト等に影響することなくニッケルまたはその合金皮膜を選択的に剥離できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明の目的は、複合素材から、ニッケルまたはその合金を剥離し、銅またはその合金、錫またはその合金を剥離することなく、更に、複合素材の有機レジストも侵さないことを特徴とする選択的ニッケル剥離液を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記剥離液の一例である成分(a)〜(d)
(a) ハロゲンイオン成分を含まない無機酸または有機酸、
(b) 酸化剤、
(c) 芳香族ニトロ化合物、
(d) 金属溶解抑制剤、
を含有する選択的ニッケル剥離液を提供することである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の選択的ニッケル剥離液において、使用される(a)成分としては、硫酸、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸およびギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、スルファミン酸、アルカンスルホン酸であるメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アルカノールスルホン酸、芳香族スルホン酸とその誘導体であるフェノールスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸等のアルカノールスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
【0013】
これらの(a)成分のうち、好ましいものとしては、硫酸およびクエン酸が挙げられる。
【0014】
この(a)成分は、(b)成分である酸化剤や(c)成分である芳香族ニトロ化合物で酸化されたニッケルを溶解する作用をするものであり、例えば、硫酸を使用する場合、その使用量は50g/l〜300g/lである。 この硫酸の濃度が50g/lより少ないと剥離作用が弱く、300g/lより多いと酸度が強過ぎて複合素材のレジストにダメージを与え、また、銅の配線や銅合金フレームを過度にエッチングする場合がある。
【0015】
更に、クエン酸は本発明の酸化剤と金属抑制剤との組合せにより、ニッケルを選択的に溶解し、また、酸化剤で酸化された無電解ニッケルの剥離に効果があり、これを使用する場合の量は100g/l〜500g/lである。 この濃度が、100g/lより少ないと剥離作用が弱く、500g/lを越える場合には、それ以上の効果が期待できず実用上不経済である。
【0016】
また、成分(b)である酸化剤は、ニッケルを酸化してニッケルの剥離を促進するが、特に、成分(c)である芳香族ニトロ化合物の作用を助長する作用を有するものである。 この酸化剤としては、過酸化水素およびペルオキソ化合物であるペルオキソ2硫塩酸、ペルオキソホウ酸塩等が挙げられる。 これらの配合量は過酸化水素では20ml/l〜150ml/lが好ましく、配合量が20ml/l以下ではニッケルの黒色酸化皮膜を十分に除去できず、また、150ml/lを越えると複合素材の銅の配線や銅合金フレームを過度にエッチングする場合がある。
【0017】
更に、成分(c)である芳香族ニトロ化合物は、ニッケルを酸化してニッケルの剥離を促進するものである。 この芳香族ニトロ化合物の例としては、o−、m−、p−ニトロベンゼンスルホン酸、o−、m−、p−ニトロ安息香酸、o−、m−、p−ニトロアニリン、o−、m−、p−ニトロフェノールおよびこれらの塩が挙げられる。 この成分(c)の配合量としては、20g/l〜150g/lが好ましい。配合量が20g/l以下では、酸化効果が十分に発揮されずニッケルの剥離速度が遅く、150g/lを越えるとニッケルが酸化され過ぎて黒色化し、剥離速度が遅くなることがある。
【0018】
本発明の(d)成分である金属抑制剤のうち、第1抑制剤である有機染料は、酸性溶液に溶解可能なものであり、特に、錫−鉛合金と銅−銅合金に作用して腐食抑制作用を奏する。有機染料の例としては、アゾ染料(アゾ基:−N=N−)、アントラキノン染料、インジゴ系染料、フタロシアニン染料、ジおよびトリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、アジン系染料、スチルベン染料、メチン系染料(メチン結合:−CH=、アゾメチン結合:−CH=N−)、ニトロ及びニトロソ染料およびチアゾール染料が挙げられる。このうち、塩基性染料のカチオン系染料が好ましく、例えば、アイゼン・カチロン・イエロー GLH( Aisen Cathilon Yellow GLH ;保土谷化学)、アイゼン・カチロン・ピンクFGH( Aisen Cathilon Pink FGH ;保土谷化学)等の商品名で販売されているアゾ系染料やアイゼン・カチロン・オレンジRH( Aisen Cathilon Orange RH ;保土谷化学)、アイゼン・アストラ・フロキシン FF( Aisen Astra Phloxine FF ;保土谷化学)などの商品名で販売されているメチン系染料が好ましい。
【0019】
上記有機染料の添加量は10〜100mg/lが好ましく、添加量を10〜100mg/lにするのは、10mg/l以下では、複合素材の錫−鉛合金および銅合金フレームの腐食抑制効果が小さく、100mg/lを越える場合には、それ以上の効果が期待できず実用上不経済であるからである。
【0020】
また、(d)成分のうち、第2の金属抑制剤となるアゾール類としては、ピラゾール、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、ナフトトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトトリアゾールまたはベンズイミダゾール等が挙げられる。 このアゾール類の配合量は、0.5〜10.0g/lが好ましく、配合量が0.5g/l以下では、複合素材の銅配線や銅合金フレームおよび錫−鉛合金の腐食抑制効果が小さく、10.0g/lを越える場合には、それ以上の効果が期待できず実用上不経済である。
【0021】
本発明の選択的ニッケル剥離液の使用方法は、成分(a)〜(d)を上記の量で配合した水溶液に、ニッケルを剥離する対象物を浸漬すれば良い。 この浸漬の条件としては、30〜45℃程度の温度で、撹拌は15〜60cm/min程度の揺動撹拌とすれば良い。 剥離液の寿命は、ニッケルの剥離速度の低下により判断することができ、一般には、ニッケル剥離液中のニッケル濃度が50g/l以上となった時点を目安とすればよい。
【0022】
また、本発明の選択的ニッケル剥離液は、単にニッケルを剥離するのみでなく、その選択的なニッケル剥離能を生かして積極的に電子部品や回路の形成に利用することもできる。 例えば、まず、銅合金フレームの表面にニッケルまたはニッケル合金皮膜を形成させ、レジストで配線パターンを形成後、この上に電気銅めっきにより銅配線パターンを得る。 次いで、先のレジストを剥離除去後、2回目のレジストを施し、錫−鉛合金めっきで電極ボールを形成する。 更に、この配線と反対側(裏面)から銅合金フレーム面をエッチングし、前述のニッケルめっき皮膜を露出させ、最後に、このニッケルまたはニッケル合金皮膜を本発明の選択的ニッケル剥離液に浸漬することにより、選択的に剥離し、微細配線の電子部品、例えばBGAフレームを製造することができる。
【0023】
更に、絶縁基材表面に銅箔を接着した銅箔板、または化学的処理後無電解銅めっき上に電気銅めっきを施し導電膜を形成した絶縁基材表面に、有機レジストで配線パターンを形成後、露出した銅配線パターン部分に電気ニッケルめっきまたは無電解ニッケルめっきを施した配線パターンを形成する。同時に、このめっき配線パターンには、電子部品を搭載する端子パターンが形成されており、有機めっきレジストを使ってこの端子パターン部のみに錫−鉛合金(はんだ)めっきを行った後、有機めっきレジストを除去するとニッケルめっきと錫−鉛合金による配線パターンが形成される。更に、このめっきによる配線パターンをエッチングレジストとして用い、露出した銅箔のみをエッチング除去すると必要な回路の形状が形成できる。
最後に、ニッケルめっきのみを選択的に除去し、電子部品の端子パターン部分には、錫−鉛合金めっきを残し、ニッケル下地の銅や錫−鉛合金の下地銅をサイドエッチングせずに配線回路を形成できる。
【0024】
【作用】
本発明の選択的ニッケル剥離液が、選択的にニッケルを剥離する作用機序は、金属溶解抑制剤である有機染料とアゾール類が銅やその合金あるいは錫やその合金に吸着して保護するため、剥離液の有効成分である酸類、酸化剤および芳香族ニトロ化合物がニッケルのみを酸化し、この酸化ニッケルを有効成分の酸類で溶解するものと解されている。
【0025】
【実施例】
次に実施例を挙げ、更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等になんら制約されるものではない。
【0026】
実 施 例 1
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
( 組 成 )
硫酸(98%) 100g/l
クエン酸 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸 65g/l
ナトリウム
ベンゾトリアゾール 5g/l
【0027】
実 施 例 2
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
硫 酸(98%) 100g/l
クエン酸 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリ 65g/l
ウム
アイゼン・アストラ・フロキシン FF 50mg/l
【0028】
実 施 例 3
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
硫酸(98%) 100g/l
クエン酸 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸 65g/l
ナトリウム
ベンゾトリアゾール 5g/l
アイゼン・アストラ・フロキシン FF 50mg/l
【0029】
実 施 例 4
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
硫酸(98%) 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸 65g/l
ナトリウム
ベンゾトリアゾール 5g/l
【0030】
実 施 例 5
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
クエン酸 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸 65g/l
ナトリウム
ベンゾトリアゾール 5g/l
【0031】
実 施 例 6
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
イセチオン酸(70%) 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸 65g/l
ナトリウム
ベンゾトリアゾール 5g/l
アイゼン・アストラ・フロキシンFF 50mg/l
【0032】
実 施 例 7
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
イセチオン酸(70%) 100g/l
クエン酸(98%) 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸 65g/l
ナトリウム
ベンゾトリアゾール 5g/l
アイゼン・アストラ・フロキシンFF 50mg/l
【0033】
実 施 例 8
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
イセチオン酸(70%) 100g/l
グリコール酸(98%) 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸 65g/l
ナトリウム
ベンゾトリアゾール 5g/l
アイゼン・アストラ・フロキシンFF 50mg/l
【0034】
実 施 例 9
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
リン酸(98%) 100g/l
イセチオン酸(70%) 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸 65g/l
ナトリウム
ベンゾトリアゾール 5g/l
アイゼン・アストラ・フロキシンFF 50mg/l
【0035】
実 施 例 10
下記組成により、ニッケル剥離液を調製した。
硫 酸(98%) 100g/l
イセチオン酸(70%) 100g/l
過酸化水素(35%) 50ml/l
m−ニトロベンゼンスルホン酸 65g/l
ナトリウム
ベンゾトリアゾール 5g/l
アイゼン・アストラ・フロキシンFF 50mg/l
【0036】
比 較 例 1
ニッケル剥離液(特公平3−77878号、実施例1)
リ ン 酸(90%) 500ml/l
硝 酸(62%) 100ml/l
o−ニトロソフェノール 0.5g/l
( 温 度 60℃ )
【0037】
比 較 例 2
ニッケル剥離液(特公平3−77878号、実施例3)
硫 酸(98%) 300ml/l
硝 酸(62%) 30ml/l
酢 酸(99%) 50ml
シュウ酸 100g/l
p−ニトロフェニルヒドラジン 0.5g/l
( 温 度 60℃ )
【0038】
比 較 例 3
ニッケル剥離液(特開平6−57454号、実施例3)
硝 酸(67.5%) 200g/l
過酸化水素(35%) 10ml/l
酢 酸(99%) 100g/l
ベンズトリアゾール 5g/l
( 温 度 50℃ )
【0039】
比 較 例 4
ニッケル剥離液(特開平6−57454号、実施例2)
硝 酸(67.5%) 200g/l
過酸化水素(35%) 10ml/l
プロピオン酸 100g/l
ベンズトリアゾール 5g/l
( 温 度 50℃ )
【0040】
試 験 例
ニッケル剥離性試験:
銅平板(20×10×0.5mm)上に電気ニッケルめっきおよび錫−鉛合金めっきを施したものを試料として、ニッケルの剥離試験を行った。
試料は、銅上にニッケルめっきを10μmの厚みで施し、更にこのニッケル皮膜の半分をマスキングテープでマスキングしてから錫−鉛合金(9:1 はんだ)めっきを10μm施し、マスキングテープを除去したものを試験片とした。
【0041】
試験は、この試験片を実施例の剥離液に、温度35℃で5分間浸漬し、ニッケル皮膜の剥離の程度、錫−鉛めっき層および銅素材の侵食の程度を目視で観察した。 また、各剥離液の銅、錫および鉛の溶解性を、銅平板あるいは錫−鉛合金めっき皮膜を直接浸漬し(35℃、5分間)、浸漬後の剥離液中の銅、錫および鉛の量を原子吸光光度法により測定することにより行った。 また、比較例1〜4のニッケル剥離剤についても、温度を指定の温度に変更する以外は同様にしてニッケル剥離性試験を行った。 この結果を下の表に示す。
【0042】
Figure 0003540887
【0043】
この結果から明らかなように、本発明のニッケル剥離液によれば、複合材料中からニッケルを選択的に剥離することが可能である。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、複合素材上から選択的にニッケルのみを剥離する剥離液が提供される。 この剥離液は、単に不要なニッケル金属を剥離するために利用できるのみならず、ファイン化した電子部品や回路を製作するために、最もコストメリットがあり量産性の高いウエット処理を提供することができるものである。
【0045】
例えば、従来の半導体BGA(ボールグリッドアレー)は主にドライ法で製作されていたが、この方法は真空チャンバーを用いる枚葉処理となり、処理ごとに真空チャンバーへ処理物挿入、真空チャンバー排気、真空チャンバー大気開放、処理物取り出しの工程をとるため、大掛かりな真空設備を必要とし、量産向きでなく高コストであった。
【0046】
これに対し、本発明の選択的ニッケル剥離液を用いるウエット法によれば、大気下、40℃付近の温度で半導体BGAを製作することが可能になり、コストを大幅に引き下げることが可能となる。 従って、ファイン化の限界が見えてきたQFP半導体パッケージに対し、生産コスト面で不利であったBGAパッケージを経済的に製造することが可能となった。
【0047】
同様に、電子分野であるプリント基板、セラミックス基板や半導体分野であるTAB(テープオートマテックボンディング)、PGA(ピングリッドアレー)などで、数種類の素材からなる複合材で回路パターンやバンプ形成をするときに、ニッケルまたはその合金のみを選択的、優先的に溶解剥離し、所望の電子部品の配線回路を形成することも可能となった。
以 上

Claims (10)

  1. 次の成分(a)〜(d)
    (a) ハロゲンイオン成分を含まない無機酸または有機酸、
    (b) 酸化剤、
    (c) 芳香族ニトロ化合物、
    (d) 次の第1抑制剤または第2抑制剤から選ばれる金属溶解抑制剤、 アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ系染料、フタロシアニン染料、 ジおよびトリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、ア ジン系染料、スチルベン染料、メチン系染料、ニトロ及びニトロソ染料、 チアゾール染料から選ばれた第1抑制剤、 アゾール類またはトリアゾール類から選ばれた第2抑制剤
    を含有する選択的ニッケル剥離液。
  2. 成分(a)のハロゲンイオン成分を含まない無機酸または有機酸が、硫酸、リン酸、ホウ酸、炭酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、スルファミン酸、アルカンスルホン酸、芳香族スルホン酸またはアルカノールスルホン酸から選ばれたものである請求項第1項記載の選択的ニッケル剥離液。
  3. 成分(b)の酸化剤が、過酸化水素またはペルオキソ化合物である請求項第1項または請求項第2項記載の選択的ニッケル剥離液。
  4. 成分(c)の芳香族ニトロ化合物が、o−、m−、p−ニトロベンゼンスルホン酸、o−、m−、p−ニトロ安息香酸、o−、m−、p−ニトロアニリン、o−、m−、p−ニトロフェノールまたはこれらの塩から選ばれたものである請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の選択的ニッケル剥離液。
  5. 成分(d)の金属溶解抑制剤が、第1抑制剤と第2抑制剤よりなるものである請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載の選択的ニッケル剥離液。
  6. 第1抑制剤が、アゾ染料であるアイゼン・カチロン・イエロー GLH( Aisen Cathilon Yellow GLH )もしくはアイゼン・カチロン・ピンク FGH( Aisen Cathilon Pink FGH )またはメチン系染料であるアイゼン・カチロン・オレンジ RH( Aisen Cathilon Orange RH )RHもしくはアイゼン・アストラ・フロキシン FF( Aisen Astra Phloxine FF である請求項第1項ないし第5項の何れかの項記載の選択的ニッケル剥離液。
  7. 第2抑制剤が、ピラゾール、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリトリアゾール、ナフトトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトトリアゾールまたはベンズイミダゾールから選ばれたものである請求項第1項ないし第6項の何れかの項記載の選択的ニッケル剥離液。
  8. 請求項第1項ないし第7項の何れかの項記載の選択的ニッケル剥離液を用い、銅または銅合金、錫または錫合金およびニッケルからなる複合素材から、実質的に銅または銅合金および錫または錫合金を侵すことなく、ニッケルまたはその合金皮膜を0.5〜1.0μm/分の速度で剥離する選択的ニッケル剥離方法。
  9. 次の工程を順次行うことを特徴とする電子回路の作製方法。
    (i)絶縁基材表面に銅箔を接着した銅箔板に、有機めっきレジストで第一の配線パター ンを形成後、ニッケルめっきを施す、
    (ii)(i)で得られたニッケルめっき後の表面に、有機めっきレジストを使って第二の 配線パターンを形成し、錫−鉛合金めっきを行なう、
    (iii)露出した銅部分をエッチング除去する、
    (iv)(iii)で得られたニッケルめっきと錫−鉛合金による回路配線を作成後、請求項 第1項ないし第7項の何れかの項記載の選択的ニッケル剥離液に浸漬し、ニッケル皮膜を選択的に剥離する。
  10. 次の工程を順次行うことを特徴とする電子部品もしくは電子回路の作製方法。
    (i)銅または銅合金フレーム上にニッケルまたはニッケル合金めっきを施す、
    (ii)(i)で得られたニッケルまたはニッケル合金皮膜上に、有機めっきレジストで第 一の配線パターンを形成後、銅めっきを施す、
    (iii)(ii)で得られた銅めっき後の表面から、有機めっきレジストを除去し、更に別 の有機めっきレジストを使って第二の配線パターンを形成し、錫−鉛合金めっきを行 なう、
    (iv) 裏側の銅または銅合金フレーム部分をエッチング除去する、
    (v)(iv)で露出したニッケルめっきを、請求項第1項ないし第7項の何れかの項に記 載の選択的ニッケル剥離液に浸漬し、ニッケル皮膜を選択的に剥離する、
    (vi) 有機めっきレジストを除去する。
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