JPH06227855A - セラミック成形用有機バインダー、その製法及びこれを用いたセラミック基板 - Google Patents

セラミック成形用有機バインダー、その製法及びこれを用いたセラミック基板

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JPH06227855A
JPH06227855A JP5306245A JP30624593A JPH06227855A JP H06227855 A JPH06227855 A JP H06227855A JP 5306245 A JP5306245 A JP 5306245A JP 30624593 A JP30624593 A JP 30624593A JP H06227855 A JPH06227855 A JP H06227855A
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昌作 石原
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】セラミック成形用バインダーとして、グリーン
シートの柔軟性、成形性、分散性、機械的強度等の諸特
性において優れたものが得られるセラミック成形用有機
バインダーその製法及びこれを用いた用途を提供するこ
とを目的とする。 【構成】(B)成分である、重合用分散剤の水溶性高分
子を溶解した水又は水と水溶性有機溶剤の混合液中に
て、重合開始剤存在下(A)成分である、少なくとも一
種類以上の(メタ)アクリル酸エステル、共重合可能な
ビニル単量体を懸濁(共)重合させることを特徴とする
セラミック成形用有機バインダー及びその製法。(C)
成分である、セラミック微粉末100重量部と、(D)
成分である、バインダーとして特許請求の範囲第1項に
記載のセラミック成形用有機バインダー5から30重量
部とからなるセラミック前駆体組成物の薄膜よりなるセ
ラミックグリーンシート。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低公害、省資源及び安
全性の観点からアルミナ等のいわゆるセラミックを成形
する際に、即ちセラミックス前駆体からなる成形体、グ
リーンシートを製造するために用いられる有機系バイン
ダーに関するものであり、特に水系で脱バインダー性に
優れたセラミック用有機系バインダーに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】
(イ)従来、セラミック用バインダーとして、一般にポ
リビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂
等の有機バインダーが用いられている。このバインダー
をアルコール、ケトン、塩素系溶剤、芳香族系溶剤等の
有機系溶剤に溶解し、又は分散し、これをセラミック微
粉末と混合し、ボールミル等で長時間混練、分散し、ス
リップ状となす。これを、脱泡後、ドクターブレード法
等で一定の厚みのシートをポリエステルフイルム等の基
材上にキャスティングして、加熱乾燥させてグリーンシ
ートを成形する方法等が採用されている。
【0003】(ロ)セラミック用水溶性バインダーとし
て、アセタール化度10モル%以下である水溶性ポリビ
ニルアセタールとして特開昭56ー76405号公報、
アセタール化度10〜30モル%の冷水可溶性ポリビニ
ルアセタールとして特開昭64ー29408号公報、疎
水基或は特定のイオン性親水基を側鎖に有する変性ポリ
ビニルアルコールを水系有機バインダとして特開昭59
ー156959号公報等で知られている。
【0004】(ハ)水溶性ポリ(メタ)アクリル酸エステ
ル系バイダーとして特公平1ー53233号公報、特公
平1ー44668号公報、特開平1ー286955号公
報が知られている。これらは、(メタ)アクリル酸エステ
ルと(メタ)アクリル酸の共重合体をアンモニア、トリ
メチルアミン等のトリアルキルアミン、ジメチルアミノ
アルコール、モノエタノールアミン等のアミン類で中和
(pH調整)している。
【0005】また、(ニ)界面活性剤を用いてビニル単
量体を乳化重合して得られたエマルジョン系バインダー
に(メタ)アクリル酸を用い、アンモニアで中和(pH
調整)しているものとして特開昭60ー180955号
公報、特開昭60ー180956号公報、特開昭61ー
151060号公報、特開平1ー286955号公報、
架橋構造を有するものとして特開昭63ー260855
号公報が知られている。
【0006】また、(ホ)(a)αーオレフィン重合
体、(b)(メタ)アクリル酸エステル単独又は(メ
タ)アクリル酸エステル単量体及びスチレン系単量体、
(c)重合開始剤からなる膨潤物を、重合用分散剤(例
えば、水溶性高分子ポリビニルアルコール)を含む水系
媒体中に分散させて懸濁重合させる系をバインダーとし
て、特開平3ー131604号公報が知られている。
【0007】(ヘ)特開昭59ー128266号公報に
は、(a)水溶性高分子成分100重量部に対し、
(b)疎水性高分子成分が1から1000重量部を含有
するセラミック成形用複合バインダーが知られている。
【0008】一方、(ト)特開昭59ー995号公報、
特開昭60ー254697号公報では、多層セラミック
回路板基板の製造方法が知られ、その中に熱解重合型樹
脂を含むバインダーとしてポリメタクリル酸エステル系
樹脂が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、(イ)
のバインダーでは有機溶剤としてブチルアルコール、イ
ソプロピルアルコール、トリクロロエチレン、トルエン
等が用いられている。しかし、引火による爆発性、火災
の危険性、成形時、乾燥時の臭気、特にハロゲン系溶剤
は、蒸発ガスによる環境汚染、人体への有害性の公害問
題等があり、これらを防ぐために防爆設備、廃ガス処理
設備、溶剤回収設備等の設置が必要である等の、多くの
問題がある。(ロ)、(ハ)の場合は水溶性であるため
に吸湿性が大きく、セラミックグリーンシートの特性の
バラツキが生じる等の欠点がある。(ニ)の場合、カル
ボキシル基を有するエマルジョンを用いたセラミックグ
リーンシートは引張り強さが弱く、光沢性、平滑性に劣
る等の欠点がある。また、いずれのバインダーも脱バイ
ンダー性に劣るため、焼成後のセラミックシート及びセ
ラミック基板の強度が劣る等の問題がある。また、
(ホ)の場合、(a)成分と(b)成分との相溶性が悪
く、セラミック前駆体組成物の機械的特性がよくない。
またαーオレフィン重合体やポリビニルアルコール等の
熱分解性が悪いポリマーを使用しているため、脱バイン
ダー性に劣り、焼成後のセラミック、セラミックシート
及びセラミック基板の強度が劣る等の問題がある。
(ヘ)の場合、水系分散体として乳化重合で得られた疎
水性高分子ラテックスを水に溶かした水溶性高分子溶液
に添加する方法であるが、水溶性高分子は熱分解性の悪
い高分子が多いため、水溶性高分子をバインダーとして
用いるには、添加量はできるだけ少ないことが重要であ
る。又水溶性高分子が多く存在すると、グリーンシート
が吸湿しやすいので機械的特性等のバラツキが大きい。
又乳化重合で得られた疎水性高分子ラテックスには界面
活性剤が含まれているため、セラミック粉末の種類によ
って凝集したり、脱泡時に泡が多く発生する等、作業性
が良くない。
【0010】一方、(ト)に用いられているポリメタク
リル酸エステル系樹脂をセラミック成形用有機バインダ
ーとして使用するには、例えば、メチルエチルケトンな
どのケトン系溶剤、ブチルアルコールなどのアルコール
系溶剤等の蒸気圧が高い有機溶剤を使用するため、火災
に対する安全性に欠ける。
【0011】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは鋭
意検討した結果、水溶性高分子を重合用分散安定剤とし
て用いて懸濁重合によって得られたセラミック成形用有
機バインダーは、脱バインダー性に優れ、水系セラミッ
ク有機バインダーとして有用であることを見出し、本発
明を完成した。すなわち、本発明は、(A)成分であ
る、少なくとも一種類以上の(メタ)アクリル酸エステ
ル(但し、炭素数が1〜18個のアルキル基、炭素数が
1〜12個の環状アルキル基又はアリール基のエステ
ル);100重量,(B)成分である、水溶性高分子;
1〜9.5重量部〔(A)成分100重量部に対して〕
を溶解した水又は水と水溶性有機溶剤の混合液中にて、
重合開始剤存在下(A)成分を懸濁(共)重合させるこ
とを特徴とするセラミック成形用有機バインダーとして
上記の目的が達成される。
【0012】又(C)成分であるセラミック粉末は、特
に限定されるものではないが、グリーンシート化する際
のセラミック粉末の平均粒径は50.0ミクロン以下で
あるあることが望ましい。(C)成分であるセラミック
粉末100重量部と、(D)成分である、上記セラミッ
ク成形用有機バインダー5から30重量部と、必要に応
じて(E)成分である、分散剤、可塑剤とからなるセラ
ミック前駆体組成物スラリーから所定の成形体が得られ
る。
【0013】グリーンシートは、(C)成分である、平
均粒径は50.0ミクロン以下のセラミック粉末100
重量部と、(D)成分である、上記セラミック成形用有
機バインダー5から30重量部と、必要に応じて(E)
成分である、分散剤、可塑剤とからなるセラミック前駆
体組成物スラリーを基材の表面に薄膜状にコーティング
することにより得られ、上記の目的が達成される。
【0014】又、(C)成分である、平均粒径が10.
0ミクロン以下であるセラミック微粉末100重量部
と、(D)成分である、上記セラミック成形用有機バイ
ンダー5から30重量部と、必要に応じて(E)成分で
ある、分散剤、可塑剤とからなるセラミック前駆体組成
物で構成され、この上にパターン状に導電体層を形成
し、数層から数10層になるように積層接着させ、焼結
する(脱バインダ工程、ついで残留炭素を少なくする工
程)ことによって多層セラミック基板が得られる。又は
グリーンシート層が、(C)成分である、平均粒径が1
0.0ミクロン以下であるセラミック微粉末100重量
部と、(D)成分である、上記セラミック成形用有機バ
インダー5から30重量部と、必要に応じて(E)成分
である、分散剤、可塑剤とからなるセラミック前駆体組
成物で構成され、複数の導体層を上記グリーンシート層
を介して積層体を焼結してなる多層配線セラミック基板
の製造法によって上記の目的が達成される。
【0015】以下に、本発明を詳細に説明する。
【0016】即ち、本発明は、(A)成分である、少な
くとも一種類以上の(メタ)アクリル酸エステル(但
し、炭素数が1〜18個のアルキル基、炭素数が1〜1
2個の環状アルキル基又はアリール基のエステル);1
00重量部,(B)成分である水溶性高分子;(A)成
分100重量部に対して1〜9.5重量部を溶解した水
又は水と水溶性有機溶剤の混合液中にて、重合開始剤存
在下(A)成分を懸濁(共)重合させることを特徴とす
るセラミック成形用有機バインダー及びその製法に関す
るものである。
【0017】本発明に用いられる(A)成分はセラミッ
ク成形用有機バインダーの主成分であり、セラミック粉
末とセラミック粉末同士を接着するものであり、例え
ば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アク
リレート、nープロピル(メタ)アクリレート、イソプ
ロピル(メタ)アクリレート、nーブチル(メタ)アク
リレート、イソブチル(メタ)アクリレート、nーアミ
ル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレ
ート、nーヘキシル(メタ)アクリレート、nーオクチ
ル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリ
レート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メ
タ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ス
テアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メ
タ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレー
ト、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)
アクリレート等が挙げられる。これらの成分うち、熱分
解性の点から、メタクリル酸エステル系、更にはメタク
リル酸nーブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸
nープロピル、メタクリル酸iープロピル、メタクリル
酸nーオクチル、メタクリル酸メチル、が良い。
【0018】本発明に用いられる(B)成分は、上記
(A)成分を重合開始剤の存在下で重合する際の重合用
分散安定剤として用いられ、水溶性高分子である。例え
ば、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルー2ーピロリ
ドン、ポリビニルー2ーピロリドン共重合体、ポリ(2
ーオキサゾリン)系等が使用される。好ましくは、熱分
解性の点からポリエチレンオキサイドがよい。又、セラ
ミック用有機バインダとして使用する場合には、ポリマ
の平均粒径(粒径分布の中心)が5ミクロン以下、好ま
しくは3.0ミクロン以下が良い。このようなポリマ粒
径を製造するには、重合用分散安定剤のポリエチレンオ
キサイドが粘度平均分子量10〜100万であることが
良い。好ましくは25〜50万が良い。(B)成分の使
用量は、モノマーの総量100重量部に対して1〜9.
5重量部である。使用量が1重量部未満の場合には、全
く分散しない、又はポリマー粒子が大きくなり粒子の沈
降が起こる。9.5重量部を越える場合には、この水溶
性高分子をバインダーとして使用すると脱バインダー性
が劣るため、焼結体の強度が低く、また誘電率が高く成
り実用に供することができない。(B)成分はポリマで
あるため、作成されたグリーンシート外観が、低分子の
界面活性剤を使用した場合よりも非常に平滑で、表面か
らセラミック粉末が脱落しにくく、又脱泡時に泡立ちが
少なく作業性に優れている。水溶性高分子を使用した場
合、湿度がグリーンシートの機械的特性のバラツキ、ひ
いては穴開け加工精度を低下させる原因になる。しか
し、ポリエチレンオキシド(融点60数℃〜67℃、粘
度平均分子量10〜100万)のように、結晶性を有す
る水溶性高分子は、吸湿性が低いことから、(A)成分
の重合体と混合してバインダーとして用いても湿度にあ
まり左右されにくいことを見出した。また、本発明によ
って得られた水系有機バインダーの性能は、同成分より
なる有機溶剤系から作成されたグリーンシートと同等以
上であることを見出した。
【0019】また、必要に応じて少なくとも一種類以上
の組合せで、(A)成分中に2ーヒドルキシエチル(メ
タ)アクリレート、2ーヒドロキシプロピル(メタ)ア
クリレート等のヒドロキシル(メタ)アクリレートを3
0重量%以下の範囲で使用することもできる。30重量
%を越える場合には、懸濁重合中に懸濁液に分散してい
るポリマ粒子同志の凝集が起こることにより安定な懸濁
液を得ることができず、実用に供することができない。
同様に、必要に応じて少なくとも一種類以上の組合せ
で、エチレン、イソブチレン、メタクリロニトリル等の
エチレン系単量体、スチレン、αーメチルスチレン等の
スチレン系単量体、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジ
エステル、イタコン酸ジエステル、シトラコン酸ジエス
テル等の不飽和ジエステル系単量体等を50重量%以下
で使用できる。50重量%を越える場合には、この共重
合体をバインダーとしセラミック焼結体としたときに、
脱バインダー性が劣るため焼結体の強度が低く、また誘
電率が高く成り実用に供することができない。(A)成
分にエチレン等の上記ビニル単量体を共重合する目的
は、熱分解性の向上や機械的特性の改質を図るためであ
る。
【0020】又、バインダとともに使用される可塑剤
は、基本的には水又は水系溶剤と共沸しにくいもので、
且つビニル単量体から得られたポリマと相溶性が良いこ
とである。例えば、ジブチルフタレート(DBPと略
す)、ジー2ーエチルヘキシルフタレート(DOP)、
ジイソノニルフタレート(DINP),ジイソデシルフ
タレート(DIDP)、ジヘプチルフタレート(DH
P)、ジーnーオクチルフタレート(NーDOP)ブチ
ルベンジルフタレート(BBP)、エチルフタリルエチ
ルグリコレート等のフタル酸エステル系、ジー2ーエチ
ルヘキシルアジペート(DOA)、ジブチルジグリコー
ルアジペート(BXA)等の脂肪族エステル系、トリプ
ロピレングリコールメチルエーテル(TPM)、ジプロ
ピレングリコールーnーブチルエーテル(DPnB)、
トリプロピレングリコールーnーブチルエーテル(TP
nB)、プロピレングリコールフェニルエーテル(PP
h)等のプロピレン系グリコールエーテルが挙げられ
る。好ましくは、DOP、DINP,DIDP、DH
P、NーDOPが良い。上記可塑剤はそれぞれの形態に
応じて添加すれば良く、特に制限されるものでない。即
ち、セラミック用有機バインダーを使用して成形された
セラミック前駆体組成物の機械的特性が保持され、ハン
ドリング性が優れていれば良い。即ち、可塑剤の添加量
を変えるることによって得られたグリーンシートの機械
的特性を可塑剤で調整できる。一つの目安として、グリ
ーンシートのハンドリング性と穴開け加工精度を得るた
めには、伸びが5から25%程度が必要である。可塑剤
の添加方法はビニル単量体の懸濁重合時、又は重合後で
もよい。好ましくはポリマの粒子同志の癒着を防止する
ためにも重合時に添加するのが良い。
【0021】本発明に用いられるセラミック成形用有機
バインダーの固形分濃度は50重量%以下、15重量%
以上とする。50重量%を超えると(A)成分の粒径が
大きくなり、15重量%未満では作業性が低下する。
【0022】本発明に用いられるセラミック成形用有機
バインダーの製造方法は、水又は水と水溶性有機溶剤の
混合液中に、(B)成分を、(A)成分であるモノマー
の総量100重量部に対して1〜9.5重量部を溶解す
る。この溶液中で重合触媒存在下、加熱、激しく撹拌し
ながら(A)成分を添加し、重合又は共重合反応を行
う。
【0023】本発明に用いられる溶剤としては、例え
ば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソ
プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールメ
チルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エ
チレングリコールブチルエーテル等のエチレングリコー
ル誘導体、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエ
チレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコー
ルブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体、プ
ロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコ
ールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエー
テル等のプロピレングリコール誘導体、酢酸メチル、酢
酸エチル等の酢酸エステル誘導体、乳酸メチル、乳酸エ
チル等の乳酸エステル誘導体等のような水溶性溶剤が挙
げられる。少なくとも一種以上の水または水及び水溶性
溶剤から選ばれる。又水に溶けにくいアルコール系溶剤
を一部添加しても良い。水及び水溶性溶剤を使用する場
合の混合割合は、水100〜50重量%、水溶性溶剤0
〜50、好ましくは水95〜50重量%、水溶性溶剤5
〜50重量%である。
【0024】重合開始剤としては、例えば、2,2’−
アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス
(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾ
ビス(イソブチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、タ
シャリーブチルハイドロパ−オキサイド、ベンゾイルパ
ーオキサイド、tーブチルパーオキサイド等の過酸化
物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムのようなの過
硫酸塩等の水溶性重合開始剤が特に制限なく使用でき
る。使用量は、モノマーの総量100重量部に対して
0.05〜5重量部を使用することが望ましい。また、
必要に応じてタシャリードデシルメルカプタン、チオグ
リコール酸等の連鎖移動剤を用いることによってバイン
ダの分子量が制御できる。
【0025】この反応は、重合触媒の種類にもよるが、
通常40〜90℃で行うことができる。低温では、高分
子量の生成物を与え、高温では低分子量の重合体が得ら
れる。
【0026】本発明に用いられる上記バインダであるビ
ニル単量体の重合体の平均重量分子量は10万〜100
万、好ましくは20万〜55万である。10万未満では
グリーンシートの機械的特性が十分に得られず、100
万を超えるとバインダー樹脂の流動性が低くなり、グリ
ーンシートの機械的特性が十分に得られにくい。
【0027】本発明により得られた重合体の粒子径は電
子顕微鏡、マイクロトラック法等で測定できる。
【0028】本発明に用いられる平均粒径が50.0ミ
クロン以下であるセラミック粉末としては、例えば、A
23、SiO2、3Al23・SiO2、PbO、Al
23・MgO、B23、CaO、BaO、ZrO2、ZnO、
Na2O、P25、K2O、Li2O等から少なくとも1
種以上より選ばれたものである。更に詳しく言えば、ア
ルミナ(Al23)、ムライト(Mullite,3A
23・2SiO2)、コージェライト(Cordie
rite,2MgO・2Al23・5SiO2)のうち
少なくとも一種のセラミック粉末、SiO2−B23
Na2O系、SiO2−B23−K2O系、SiO2−B2
3−Li2O系、SiO2−B23−ZnO系等のホウ
珪酸ガラスのうち、少なくとも1種以上のガラスセラミ
ック粉末より選ばれる。又これらのガラスセラミックが
銅の融点より低温で焼成可能な非結晶性又は結晶性ガラ
スセラミックであることが好ましく、又焼結後にクリス
トバライト(Cristobalite)が生成しにく
い成分が好ましい。このセラミック微粒子は球状、粉砕
状のもの等が使用される。微細なスルーホール加工を必
要とする場合には、グリーンシート用セラミック粉末の
平均粒径は、一般的に10ミクロン以下、更に好ましく
は5ミクロン以下が望ましい。
【0029】又本発明に用いられるセラミック原料とし
ては、BaTiO3等の高誘電体材料、抵抗体材料等も
挙げられ、特に制限されるものではない。
【0030】本発明に用いられるセラミック用分散助剤
としては、ポリアクリル酸のアンモニウム等のポリアク
リル酸の塩、ホスヘ−トエステル(Phosphate
ester)、ポリエチレングリコ−ル、ポリビニル−
2−ピロリドン及び共重合体、グリセロ−ルトリオレ−
ト(Glycerol trioleaste)等があ
げられる(Advaces in ceramics、
Vol.21、Ceramic Powder Sci
ence p537〜547、1987)。
【0031】セラミック用分散助剤は、セラミック粉末
同志が凝集しにくくし、スラリ−の流動を容易にするも
のである。セラミック用分散助剤は溶剤(水、水及び水
溶性溶剤)に溶解又は分散した溶液に、セラミック粉末
を添加して使用する。使用する場合、ボ−ルミルを用い
て湿式混合を1から5時間行ない、次にセラミック用有
機バインダを所定量添加し、更にこのセラミック前駆体
組成物をボ−ルミルを用いて湿式混合を少なくとも10
時間以上行なってもよい。
【0032】本発明に用いられるセラミック前駆体組成
物の製造法は、(C)成分であるセラミック粉末100
重量部と、(D)成分である、バインダ−として(メ
タ)アクリル系樹脂懸濁液5から30重量部と、必要に
応じて(E)成分である、各種セラミック用分散助剤の
うちから選ばれた分散剤とからなるセラミック前駆体組
成物をボ−ルミルを用いて湿式混合を少なくとも5時間
以上行ない、セラミック前駆体組成物スラリ−にし、脱
泡工程を経たのち、押出成形法、射出成形法、ドクタ−
ブレ−ド法、カレンダ−ロ−ル法等によつて成形され
る。製法は特に制限されるものではない。
【0033】本発明に用いられるセラミックの製造法
は、上記の製法で得られたセラミック前駆体組成物を3
50〜1800℃の温度で少なくとも5時間以上空気中
或いは非還元性雰囲気中で焼成することによって得るこ
とができる。
【0034】本発明に用いられる多層セラミック基板は
つぎの製造法によって得られる。(C)成分である、平
均粒径が50.0ミクロン以下であるセラミック微粉末
100重量部と、(D)成分である、バインダ−として
(メタ)アクリル系樹脂懸濁液5から30重量部と、必
要に応じて(E)成分である、各種セラミック用分散剤
のうちから選ばれた分散剤をセラミック粉末とからなる
セラミック前駆体組成物をボ−ルミルをもちいて湿式混
合を5〜50時間行ない、セラミック前駆体組成物スラ
リ−にし、脱泡工程を経たのち、室温から120℃のキ
ャスト温度でドクタ−ブレ−ド法等によつてグリ−ンシ
−トが成形される。必要に応じて得られたグリ−ンシ−
トの機械的特性を向上させるために、更に100〜12
0℃にて30分から90分乾燥しても良い。得られた厚
さ0.05〜2mmのグリ−ンシ−トを所定の大きさ
(例えば、10〜200mm×10〜200mm角)に
切断し、必要な層、所定の位置にスル−ホ−ルを打ち抜
く。スル−ホ−ルの直径は制限されるものではないが、
最小40ミクロンまで可能である。この打ち抜かれたグ
リ−ンシ−ト上に、例えば、W(融点3410℃)、M
o(融点2620℃)、Ag(融点961.9)、Au
(融点1064℃)、Pt(融点1769℃)、Pd
(融点1554℃)、Cu(融点1083.4℃)、N
i(融点1453℃)等の一種類以上の導体を主成分と
した導体ペ−ストをスクリ−ン印刷法によって所定の位
置に印刷する。こうして導体をスクリ−ンマスクを介し
て印刷したグリ−ンシ−トに所定の回路を形成し、この
回路形成されたグリ−ンシ−ト数層から数十層を積層
し、温度80〜150℃、圧力0.98MPa〜29.
4MPa(10〜300kgf/cm2)で熱プレス圧
着する。得られた積層体を所定の形状、大きさになるよ
うに切断する。これを上記の導体の種類によって焼成温
度が異なる(一般には導体の融点以下で焼成)が、約3
50〜1800℃の温度で少なくとも5時間以上空気中
或いは非還元性雰囲気中で焼成することによってセラミ
ック基板が得られる。
【0035】多層ガラスセラミック回路基板を製造する
には、焼成の際、空気中又は非還元性雰囲気中、その昇
温過程で350〜450℃で焼成し、更に600〜90
0℃で焼成して脱バインダした後、必要に応じて残留炭
素を飛散させるために水素(H2)と水蒸気(H2O)の
体積比が10~ 7〜10~ 4或いは水蒸気(水蒸気分圧
0.005〜0.5気圧に制御した不活性雰囲気)の雰
囲気中下で、900℃から上記導体の融点以下で焼結す
ることによって多層ガラスセラミック回路基板が得られ
る。
【0036】本発明により得られるセラミック成形用有
機バインダーは、水単独又は水及び水溶性有機溶剤とか
らなるもので、非水溶性有機溶剤を全く又はほとんど使
用することなく必要性がなく、セラミックの分散性、表
面の平滑性、密度、伸び、及び強度において優れたセラ
ミックグリ−ンシ−トを生成することができ、低公害、
省資源の観点から有利である。また、該グリ−ンシ−ト
を積層、焼成することにより緻密で、表面平滑性及び強
度おいてに優れた多層セラミック基板が得られる。
【0037】
【作用】本発明の特徴は、上記セラミック成形用有機バ
インダーが水系セラミック有機バインダ−として有用で
あり、且つセラミック微粉末間の結合には上記セラミッ
ク成形用有機バインダーがその機能を発揮し、グリ−ン
シ−トの諸特性、即ち、柔軟性、成形性、分散性、表面
状態を満たすものである。更に回路パタ−ン付グリ−ン
シ−トの積層体の諸特性、即ち、積層圧着性、機械的強
度等を満たすものである。
【0038】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこ
れに限定されるものではない。
【0039】単に%とある場合は重量%を意味する。
【0040】セラミック粉末100重量部、セラミック
成形用有機バインダー5〜30重量部を加え合わせセラ
ミック前駆体組成物をえた。これをボールミルにて混練
した。このようにしてセラミック前駆体組成物スラリー
を作製した後、更にこのスラリーから減圧で空気を脱泡
した。このように調製した均一なスラリー混合液の粘度
を調整して、ドクターブレード型キャスト装置を用い、
ポリエステルフィルム上に塗布して乾燥してグリーンシ
ートを作製した。シートの諸物性は、成形性、柔軟性、
分散性について評価した。
【0041】(成形性)ポリエステルフィルム上に塗布
して乾燥後、目視により評価した。
【0042】〇:ポリエステルシートでのグリーンシー
トの剥離がよく、割れが無いこと。
【0043】△:若干割れのあるグリーンシートである
こと。
【0044】×:ヒビ割れてグリーンシートにならない
こと。
【0045】(柔軟性)グリーンシートの中央部を直径
のことなる5種のガラス芯棒のそれぞれで抑え、これを
中心とする180°の折り曲げ試験を行った。シートに
割れが入る直前の芯棒の直径(mmφ)で、柔軟性を示し
た。芯棒の直径は2,3,4,6,8mmである。
【0046】(分散性) 〇:グリーンシート中セラミック微粒子の分散状態で二
次凝集が少ないこと。
【0047】△:グリーンシート中セラミック微粒子の
分散状態で二次凝集が若干多いこと。
【0048】×:グリーンシート中セラミック微粒子の
分散状態で二次凝集が多いこと。
【0049】〔実施例1〕 (セラミック成形用有機バインダーの合成)撹拌機、温
度計、還流コンデンサ、滴下ロート及びガス導入管を備
えた5lのフラスコに窒素ガス気流下にイオン交換水1
100gを仕込み、そこにポリエチレングリコール(平
均分子量:25〜30万)100gを分散して撹拌しつ
つ加熱し、ポリエチレンオキサイドの水溶液を得た。こ
の水溶液を60℃に加熱し激しく撹拌しながら、メタク
リル酸ブチル800g、アクリル酸n−ブチル200
g、アゾビスイソブチロニトリル20gの混合溶液を1
時間で均一に滴下し、さらに60℃で4時間加熱した。
これを室温まで冷却し、固形分濃度50%のセラミック
ス成形用有機バインダーを得た。
【0050】(グリーンシートの作製)アルミナ粉末を
主成分として、全体の組成としてはAl23 91%、
SiO26%、MgO 3%の成分を有する粒径5ミクロ
ン以下のセラミック粉末100重量部、セラミックス成
形用有機バインダー20重量部を加え合わせセラミック
前駆体組成物をえた。これをアルミナ製内張り容器、ア
ルミナ製ボールを用いたボールミルにて24時間混練し
た。このようにしてセラミック前駆体組成物スラリーを
作製した後、更にこのスラリーから減圧で空気を脱泡し
た。このように調製した均一なスラリー混合液の粘度を
調整して5,000〜10,000cpsとし、ドクタ
ーブレード型キャスト装置を用い、ポリエステルフィル
ム上に塗布して120℃で乾燥してグリーンシートを作
製した。シートの諸物性は表1に示すように、成形性、
柔軟性、分散性ともに良好であった。
【0051】(多層配線セラミック基板の作製)グリー
ンシートをパンチ金型を用いて、200mm×200m
m角に切断し、ガイド用の穴を施した。その後、このガ
イド用の穴を利用してグリーンシートを固定し、パンチ
法により所定位置に径0.1mmのスルーホールを打ち
抜いた。粒径5μm以下のタングステン粉末:ニトロセ
ルロース:エチルセルロース:α−テレピネオール=1
00:4:2:23(重量比)の導体ペーストをグリー
ンシートにあけたスルーホールに充填し、次にスクリー
ン印刷法により所定回路パターンをグリーンシート表面
に印刷した。このように導体を印刷し、回路形成された
グリーンシートをガイド用の穴の位置を合わせて40枚
を積層し、120℃、100kgf/cm2の圧力にて
熱プレス圧着を行なった。得られた積層体を必要な形状
に切断し、150mm×150mm角のグリーンシート
積層板とし、窒素−水素−水蒸気の混合雰囲気焼成炉内
で1600℃で2時間焼成した。焼成の際には昇温過程
で脱バインダを充分に行なった。このグリーンシート積
層法によって120mm×120mm角、厚さ7mmの
多層配線セラミック基板を作製した。
【0052】〔実施例2〜10〕 (セラミック成形用有機バインダーの合成)水溶性ポリ
マーの種類及び量、モノマーの配合比、重合開始剤の種
類及び量、分散媒の種類及び量を表1に示すごとく替え
た他は実施例1と同様に実験を行ない、セラミック成形
用有機バインダーを得た。
【0053】(グリーンシートの作製)セラミック成形
用有機バインダー及びその添加量を替えた他は実施例1
と同様にして実験を行ない、グリーンシートを作製し、
その諸特性を表1に示した。
【0054】(多層配線セラミック基板の作製)実施例
1と同様にして実験を行ない、グリーンシートより多層
配線セラミック基板を作製した。
【0055】〔実施例11〜26〕 (セラミック成形用有機バインダーの合成)水溶性ポリ
マーの種類及び量、モノマーの配合比、重合開始剤の種
類及び量、分散媒の種類及び量を表2,3に示すごとく
替えた他は実施例1と同様に実験を行ない、セラミック
成形用有機バインダーを得た。
【0056】(グリーンシートの作製)アルミナ粉末を
主成分として、全体の組成としてはAl23 33%、
SiO233%、ほうけい酸ガラス 34%の成分を有す
る粒径5ミクロン以下のセラミック粉末100重量部、
これに表2記載のセラミック成形用有機バインダー5〜
30重量部を加え合わせセラミック前駆体組成物をえ
た。これをアルミナ製内張り容器、アルミナ製ボールを
用いたボールミルにて24時間混練した。以下、実施例
1と同様にして実験を行ない、グリーンシートを作製
し、その諸特性を表2,表3に示した。
【0057】(多層配線セラミック基板の作製)焼成温
度を350から840℃、20時間仮焼成のあとに95
0℃、2時間本焼成と変えた他は、実施例1と同様にし
て実験を行ない、グリーンシートより多層配線セラミッ
ク基板を作製した。
【0058】〔実施例27〕 (セラミック成形用有機バインダーの合成)撹拌機、温
度計、還流コンデンサ、滴下ロート及び窒素ガス導入管
を備えた2lのフラスコに窒素ガス気流下にイオン交換
水742.7g、水溶性高分子ポリエチレンオキシド
(以下、PEOと略す、平均分子量;25〜30万)2
8.5gを撹拌しつつ、添加し、均一に溶解し、30分
間窒素ガス置換した。撹拌しながら、メタクリル酸ブチ
ル300g、、可塑剤ジイソノニルフタレート31.5
g、重合開始剤過硫酸アンモニウム0.45gを添加
し、30分から1時間で窒素ガスを置換した。重合温度
を60℃で4時間加熱し続け、更に80℃で2時間重合
し、反応を完結した。これを室温まで冷却し、固形分濃
度32%のセラミックス成形用有機バインダーを得た
〔ポリマー50%平均粒径;3.0ミクロン、懸濁液の
粘度;7Pa・s、重量平均分子量;50万。〕 (グリーンシートの作製)アルミナ粉末を主成分とし
て、全体の組成としてはAl23 91%、SiO2
%、MgO 3%の成分を有する粒径5ミクロン以下の
セラミック粉末100重量部、イオン交換水40重量
部、セラミック分散剤A6114(商品名、固形分40
%、東亜合成化学製)0.1重量部を混合し、これをア
ルミナ製内張り容器、アルミナ製ボールを用いたボール
ミルにて2時間混練した。更にセラミックス成形用有機
バインダー20重量部を加え合わせセラミック前駆体組
成物を得た。これをアルミナ製内張り容器、アルミナ製
ボールを用いたボールミルにて24時間混練した。この
ようにしてセラミック前駆体組成物スラリーを作製した
後、更にこのスラリーを減圧133.3Pa〜6665
Pa(1mmHg〜50mmHg)下で脱泡した。この
ように調製した均一なスラリー混合液を、更に減圧下で
水を飛散させながら粘度を調整して3Pa・s〜10P
a・sとし、ドクターブレード型キャスト装置を用い、
ポリエステルフィルム上にキャスティングして120℃
で乾燥して厚さ0.2mmのグリーンシートを作製し
た。シートの諸物性は表4に示すように、成形性、柔軟
性、分散性ともに良好であった。
【0059】(多層配線セラミック基板の作製)得られ
たグリーンシートをパンチ金型を用いて、200mm×
200mm角に切断し、ガイド用の穴を施した。その
後、このガイド用の穴を利用してグリーンシートを固定
し、パンチ法により所定位置に径0.1mmのスルーホ
ールを打ち抜いた。粒径5ミクロン以下のタングステン
粉末:ニトロセルロース:エチルセルロース:αーテレ
ピネオール=100:4:2:23(重量比)の導体ペ
ーストをグリーンシートに開けたスルーホールに充填
し、次にスクリーン印刷法により所定回路パターンをグ
リーンシート表面に印刷した。このように導体を印刷
し、回路形成されたグリーンシートをガイド用の穴の位
置を合わせて40枚を積層し、120℃、圧力9.80
MPa(100kgf/cm2)にて熱プレス圧着を行
なった。得られた積層体を必要な形状に切断し、150
mm×150mm角のグリーンシート積層体とし、窒素
ー水素ー水蒸気(圧力比;0.6気圧:0.2気圧:
0.2気圧)の混合雰囲気焼成炉内で1600℃で2時
間焼成した。焼成の際には昇温過程で脱バインダを充分
に行なった。このグリーンシート積層法によって120
mm×120mm角、厚さ7mmの多層配線セラミック
基板を作製した。
【0060】〔実施例28〜37〕表4には、前記実施
例27及び実施例28〜37について、バインダー組成
と使用量、グリーンシートの諸特性の評価結果等を示
す。
【0061】(セラミック成形用有機バインダーの合
成)実施例28〜30には(A)成分と(B)成分の配
合比を(A)成分300gに対して、(B)成分である
PEOを、それぞれ24g、21g、15gとした。ま
たイオン交換水は、それぞれ733.1g、726.8
g、718.0g、とした。又実施例31〜33には、
(A)成分のビニル単量体の種類(配合比一定)、
(B)成分の粘度平均分子量の種類と使用量をそれぞれ
変え、実施例34〜37には、水と水溶性溶剤の配合比
をそれぞれ変えた以外は、実施例27と同様にして、固
形分濃度32重量%のセラミックス成形用有機バインダ
ーを得た。
【0062】(グリーンシートの作製)セラミック成形
用有機バインダー及びその添加量を変えた以外は、実施
例27と同様にして実験を行い、グリーンシートを作製
し、グリーンシートの諸特性を表4に示した。
【0063】(多層セラミック基板の作製)実施例27
と同様にして実験を行い、グリーンシートから多層配線
セラミック基板を作製した。
【0064】〔実施例38〜54〕表5には、バインダ
ー組成である(A)成分、(B)成分、可塑剤、重合開
始剤の各種類と使用量、及びグリーンシートの諸特性の
評価結果等を示す。
【0065】(セラミック成形用有機バインダーの合
成)(A)成分、(B)成分、可塑剤、重合開始剤、水
溶性溶剤の各種類及び使用量を表5に示す如く変えた以
外は、実施例1と同様にして、固形分濃度32重量%の
セラミックス成形用有機バインダーを得た。
【0066】(グリーンシートの作製)ガラスセラミッ
ク用として、ホウ珪酸ガラス(SiO279%、B23
19%、K2O2%)65vol%、アルミナ15vo
l%、コージェライト20vol%となる成分を有する
粒径5.0ミクロン以下のセラミック粉末100重量
部、これにA6114(上記記載)0.1重量部、イオ
ン交換水40重量部を添加し、ボールミル混合を2時間
行い、これに表2記載のセラミック成形用有機バインダ
ー10から30重量部を加え合わせてセラミック前駆体
組成物を得た。これを実施例27と同様にして実験を行
い、グリーンシートを作製し、その諸特性を表5に示し
た。
【0067】(多層セラミック基板の作製)得られたグ
リーンシートをパンチ金型を用いて、200mm×20
0mm角に切断し、ガイド用の穴を施した。その後、こ
のガイド用の穴を利用してグリーンシートを固定し、パ
ンチ法により所定位置に径0.1mmのスルーホールを
打ち抜いた。
【0068】粒径3ミクロン以下の銅粉末89重量%、
ビヒクル(溶剤;nーブチルカルビトールアセテート9
0〜95重量%、バインダ:エチルセルロース5〜10
重量%)11重量%からなる導体ペーストをスルーホー
ルを開けたグリーンシートに充填し、次にスクリーン印
刷法により所定回路パターンをグリーンシート表面に印
刷した。このように導体を印刷し、回路形成されたグリ
ーンシートをガイド用の穴の位置を合わせて40枚を積
層し、120℃、圧力9.80MPa(100kgf/
cm2)にて熱プレス圧着を行なった。得られた積層体
を必要な形状に切断し、150mm×150mm角のグ
リーンシート積層板とし、窒素ー水素ー水蒸気(圧力
比;0.65気圧:1×10~ 4気圧:0.35気圧)
雰囲気で350から850℃、20時間脱バインダー
後、窒素雰囲気で950℃で2時間焼成した。焼成の際
には昇温過程で脱バインダを充分に行なった。このグリ
ーンシート積層法によって120mm×120mm角、
厚さ7mmの多層配線セラミック基板を作製した。
【0069】〔比較例1〕 (バインダー樹脂)オクチルアクリルアミドを4.0モ
ル%,トリメチルー3ー(1ーメタクリルアミドープロ
ピル)アンモニウムクロリド2.0モル%を含有するポ
リ酢酸ビニル系共重合体で、その酢酸ビニル成分の8
8.7モル%がケン化され、かつ20℃における4%水
溶液粘度が34センチポイズである変性PVAをバイン
ダーとした。
【0070】(グリーンシートの作製)アルミナ粉末を
主成分として全体の組成としてはAl23 33%、S
iO233%、ほうけい酸ガラス 34%の成分を有する
粒径5ミクロン以下のセラミック粉末100重量部、前
記バインダー樹脂を6部、分散剤としてポリオキシエチ
レンノニルフェノールエーテルを1部、イオン交換水5
0部を加え合わせセラミック前駆体組成物をえた。これ
をアルミナ製内張り容器、アルミナ製ボールを用いたボ
ールミルにて24時間混練した。以下実施例1と同様に
して実験を行ない、グリーンシートを作製し、その諸特
性を表8に示した。
【0071】〔比較例2〕 (バインダー樹脂)アクリル酸、アクリル酸ブチル、ア
クリル酸エチル重合比(50/25/25)重量平均分
子量約10万の共重合体のモノエタノールアミン塩20
gを分散剤として水/メタノール重合比(5/5)80
gの混合溶媒中でアクリル酸エチルを過硫酸アンモニウ
ム0.4gを重合開始剤として乳化重合し、固形分50
%のラテックスを得た。
【0072】(グリーンシートの作製)前記ラテックス
を24部、イオン交換水18部を用いた他は、比較例1
と同様にして実験を行ない、グリーンシートを作製し、
その諸特性を表7に示した。
【0073】〔比較例3〕 (バインダー樹脂)分散剤として非イオン系界面活性剤
を乳化剤としてアクリル酸ブチル、アクリル酸、メタア
クリル酸重合比(70/15/15)の組成を有するラ
テックスを得た。
【0074】(グリーンシートの作製)前記ラテックス
10部(固形分)、中和剤としてモノエタノールアミン
及びイオン交換水25部を用いた他は、比較例1と同様
にして実験を行ない、グリーンシートを作製し、その諸
特性を表7に示した。
【0075】〔比較例4〕 (バインダー樹脂)ポリオキシエチレンオクチルフェニ
ルエーテルの塩化グリシンベタインエステル4重量部、
ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールの
ジメタクリル酸エステル4重量部を乳化剤として、重合
開始剤として2,2′ーアゾビス(N,N′ージメチレ
ンイソブチルアミジン)塩酸塩を用い、アクリル酸エチ
ル75重量部、メタクリル酸メチル75重量部、Nーメ
チロールアクリル酸アミド4.5重量部の組成を有する
ラテックスを得た。
【0076】(グリーンシートの作製)前記ラテックス
10部(固形分)、可塑剤としてポリエチレングリコー
ル(分子量200)3部およびエチルカルビトール2
部、イオン交換水25部を用いた他は、比較例1と同様
にして実験を行ない、グリーンシートを作製し、その諸
特性を表7に示した。
【0077】〔比較例5〕 (バインダー樹脂)(B)成分である疎水性高分子の水系
分散体:メタクリル酸エステル(MMA/nーBMA/
LMA/CHMA=10/60/10/20、固形分4
8%)のエマルジョンと(A)成分である10%水溶性高
分子PVA(重合500、ケン化度88.5モル%、)
を1/1重量比で混合し、グリーンシート用有機バイン
ダ(複合バインダ)を得た。
【0078】(グリーンシートの作製)アルミナ粉末を
主成分として全体の組成としてはAl23 33%、S
iO33%、ほうけい酸ガラス 34%の成分を有す
る粒径5ミクロン以下のセラミック粉末100重量部、
前記ラテックス16部(固形分)水50重量部、ポリア
クリル酸アンモニウム塩の分散助剤0.3部を、ボール
ミルで2時間混合したのち、複合バインダを固形分で1
0部添加し粉体と均一に混合した以外は。比較例1と同
様にして実験を行ない、グリーンシートを作製し、その
諸特性を表7に示した。
【0079】但し、表1,2,3,4,5,6,7中の
略称は以下の通りとする。
【0080】PEO:ポリエチレンオキサイド,PEt
OZO:ポリ(2ーエチルオキサゾリン),PVP:ポ
リビニルー2ーピロリドン、nーBMA:nーブチルメ
タクリレート,iーBMA:イソブチルメタクリレー
ト,nーBAA:nーブチルアクリレート,MAA:メ
チルアクリレート,HEMA:2ーヒドロキシエチルメ
タクリレート,St:スチレン,EAA:エチルアクリ
レート,EMA:エチルメタクリレート,HEA:ヒド
ロキシエチルアクリレート,iーBt:イソブチレン,
iーBMA:イソブチルメタクリレート,BzMA:ベ
ンジルメタクリレート,MMA:メチルメタクリレー
ト,HPMA:ヒドロキシプロピルメタクリレート,α
ーSt:αーメチルスチレン,MEAA:メトキシエチ
ルアクリレート、MAA:メチルアクリレート、LM
A:ラウリルメタクリレート,CHMA:シクロヘキシ
ルメタクリレート,PGM:プロピレングリコールモノ
メチルエーテル,PGE:プロピレングリコールモノエ
チルエーテル,ML:乳酸メチル,IPA:イソプロピ
ルアルコール,AIBN:2,2’−アゾビス(イソブ
チロニトリル),APS:過硫酸アンモニウム,KP
S:過硫酸カリウム,tーBHPO:ターシャリーブチ
ルハイドロパーオキシド 次いで実施例1,5,12,14,15,18,19,
20,21,24,27,31,34,39,40,4
3,44,46,49,52及び比較例1〜5で得られ
た有機バインダーを白金ルツボ中に入れ、600℃の電
気炉中で窒素雰囲気下3時間で灰化させ、その重量を測
定した。また、実施例1,5,27,31,34で得ら
れたグリーンシート5枚を120℃、100kgf/c
2にて熱プレス圧着を行った。この時の剥離数を目視
により観察した。さらに、窒素ー水素ー水蒸気(圧力
比;0.6気圧:0.2気圧:0.2気圧)雰囲気で1
600℃、2時間焼成してセラミックシートを得た。実
施例12,14,18,19,20,21,24,3
9,40,43,44,46,49,52及び比較例1
〜5で得られたグリーンシート5枚を120℃、100
kgf/cm2にて熱プレス圧着を行った。この時の剥
離数を目視により観察した。さらに、この積層体を窒素
ー水素ー水蒸気(圧力比;0.65気圧:1×10~ 4
気圧:0.35気圧)雰囲気で350から850℃、2
0時間脱バインダ後、窒素雰囲気で950℃、2時間本
焼成した。これらのシートの密度を測定し、表面状態を
目視により観察した。その結果を表8に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
【発明の効果】本発明により得られるセラミック成形用
有機バインダーは、非水溶性有機溶剤を全く又はほとん
ど使用することなく、セラミックの分散性、表面の平滑
性、密度、機械的強度において優れたセラミックグリー
ンシートを生成することができ、低公害、省資源の観点
から、有利である。特にドクターブレード法において、
有機溶媒系から安全で衛生的な水系への移行が可能であ
り、又機械的強度の改良等優れた特性を可ね備えたもの
であって、セラミック用バインダーとして有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石原 昌作 神奈川県横浜市戸塚区吉田町292番地株式 会社日立製作所生産技術研究所内 (72)発明者 藤田 毅 神奈川県秦野市堀山下1番地 株式会社日 立製作所汎用コンピュータ事業部内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)少なくとも一種類以上のビニル系単
    量体の重合体100重量部と(B)水溶性高分子1〜
    9.5重量部と水又は水及び水溶性有機溶剤から成るこ
    とを特徴とするセラミック成形用有機バインダー。
  2. 【請求項2】請求項1記載の(A)成分であるビニル系
    単量体の重合体が(メタ)アクリル酸エステル系である
    ことを特徴とするセラミック成形用有機バインダー。
  3. 【請求項3】請求項2記載の(A)成分である(メタ)
    アクリル酸エステル系重合体のエステルが、炭素数が1
    〜18個のアルキル基又は/及び炭素数が3〜12個の
    環状アルキル基又は/及びアリール基のエステルである
    ことを特徴とするセラミック成形用有機バインダー。
  4. 【請求項4】請求項2記載の(A)成分である(メタ)
    アクリル酸エステル系重合体のエステルが、炭素数が1
    〜18個のアルキル基又は/及び炭素数が3〜12個の
    環状アルキル基又は/及びアリール基のエステル及びヒ
    ドロキシアルキル基のエステルであることを特徴とする
    セラミック成形用有機バインダー。
  5. 【請求項5】請求項1記載の(A)成分が、(メタ)ア
    クリル酸エステル系重合体のエステルが炭素数が1〜1
    8個のアルキル基又は/及び炭素数が3〜12個の環状
    アルキル基又は/及びアリール基及びヒドロキシアルキ
    ル基のエステル50%以上と、それと共重合可能なビニ
    ル系単量体50%以下とからなることを特徴とするセラ
    ミック成形用有機バインダー。
  6. 【請求項6】請求項1記載の(B)成分である水溶性高
    分子が平均粘度分子量20〜100万のポリエチレンオ
    キサイドであることを特徴とするセラミック成形用有機
    バインダー。
  7. 【請求項7】請求項1記載の(B)成分である、水溶性
    高分子がポリ(2−エチルオキサゾリン)であることを
    特徴とするセラミック成形用有機バインダー。
  8. 【請求項8】(A)成分である、少なくとも一種類以上
    のビニル系単量体100重量部と(B)成分である水溶
    性高分子1〜9.5重量部を溶解した水又は水及び水溶
    性有機溶剤の混合液中、重合開始剤の存在下で(A)成
    分を懸濁(共)重合させることを特徴とするセラミック
    成形用有機バインダーの製法。
  9. 【請求項9】(C)セラミック粉末100重量部と、
    (D)バインダーとして特許請求の範囲第1項に記載の
    セラミック成形用有機バインダー5から30重量部とか
    らなることを特徴とするセラミック前駆体組成物。
  10. 【請求項10】(C)成分である、セラミック粉末10
    0重量部と、(D)バインダーとして特許請求の範囲第
    1項に記載のセラミック成形用有機バインダー5から3
    0重量部とからなるセラミック前駆体組成物を焼結して
    なることを特徴とするセラミック。
  11. 【請求項11】(C)成分である、平均粒径が50.0
    ミクロン以下であるセラミック微粉末100重量部と、
    (D)成分である、バインダーとして特許請求の範囲第
    1項に記載のセラミック成形用有機バインダー5から3
    0重量部とからなるセラミック前駆体組成物の薄膜より
    なるセラミックグリーンシート。
  12. 【請求項12】(C)成分である、平均粒径が50.0
    ミクロン以下であるセラミック微粉末100重量部と、
    (D)成分である、バインダーとして特許請求の範囲第
    1項に記載のセラミック成形用有機バインダー5から3
    0重量部とからなるセラミックグリーンシートを焼結し
    てなるセラミックシート。
  13. 【請求項13】セラミックグリーンシート層が、(C)
    成分である、平均粒径が10.0ミクロン以下であるセ
    ラミック微粉末100重量部と、(D)成分である、バ
    インダーとして特許請求の範囲第1項に記載のセラミッ
    ク成形用有機バインダー5から30重量部とからなるセ
    ラミック前駆体組成物で構成され、複数の導体層を上記
    セラミックグリーンシート層を介して積層体とし、これ
    を焼結してなる多層配線セラミック基板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR970015523A (ko) * 1995-09-29 1997-04-28 마크 에스, 에듈러 무기 고형물을 이용한 부품형성방법 및 이에 사용되는 바인더 조성물
JP2008202041A (ja) * 2007-01-26 2008-09-04 Kyocera Corp ペースト組成物、セラミック成形体およびセラミック構造体の製造方法
JP2011230943A (ja) * 2010-04-26 2011-11-17 Kyocera Corp セラミックグリーンシートおよびその製造方法
JP2014047338A (ja) * 2012-09-04 2014-03-17 Kyoeisha Chem Co Ltd 焼結用バインダー樹脂組成物

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