JPH06218029A - スプレー用消毒組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スプレーにより、消毒効果持続性の優れた消
毒皮膜を形成するのに有用なスプレー用消毒組成物を提
供する。 【構成】 無機物質粉体（例えばヒドロキシアパタイ
ト）からなる担体と、それに担持されている殺菌性物質
（例えば銀イオン）とを含み、必要によりガラスを更に
含む消毒成分粉末と、バインダーと、バインダー用溶剤
とを含む分散液からなるスプレー用消毒組成物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はスプレー用消毒組成物に
関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明
は、スプレーによって有効期間が長い消毒皮膜を形成す
ることができ、病院、食品工場などにおける消毒、殺菌
に有用なスプレー用消毒組成物に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】病院、又は食品工場などにおいて、高い
清潔性又は無菌性を要求される場所の床面、壁面、天井
面などには、消毒処理が施される。消毒処理方法には多
くの種類が知られているが、その中でも、消毒液を、所
要面にスプレーする方法が簡便かつ、有効な方法として
広く実用されている。

【０００３】しかし、従来の消毒液スプレー法には、そ
の消毒殺菌効果が短期間内に消失してしまうため、消毒
処理を頻繁に行わなければならないという欠点がある。
これは消毒液中の有効成分が、短期間中に流失、揮発、
又は分解するためである。

【０００４】そこで、簡便なスプレー法を用いることが
できるが、消毒殺菌効果の長期間にわたる持続性が高い
スプレー用消毒剤の開発が強く望まれていた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、スプレー消
毒に適し、消毒効果にすぐれ、しかも、その有効持続期
間が長く、消毒面を著しく着色させたり失透させること
がない、スプレー用消毒組成物を提供しようとするもの
である。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、消毒有効
成分を無機粉体に担持させ、この粉体を、バインダーを
含む溶剤とともにスプレーすることにより、上記課題を
解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。

【０００７】本発明のスプレー用消毒組成物は、下記成
分；(1) 無機物質粉体からなる担体と、この担体上に担
持されている殺菌性物質とを含む消毒成分粉末、(2) バ
インダー、および(3) 前記バインダー用溶剤、を含む分
散液からなることを特徴とするものである。

【０００８】本発明のスプレー用消毒組成物の一実施態
様において、前記殺菌性物質が銀イオンであり、前記無
機物質粉体が、ヒドロキシアパタイトであることが好ま
しい。

【０００９】また、本発明のスプレー用消毒組成物の一
実施態様において、前記消毒成分粉末が、ヒドロキシア
パタイト粉体からなる担体上に銀イオンを担持させ、こ
の銀イオン担持ヒドロキシアパタイト粉体と、ガラスフ
リットとを混合し、この混合物を焼成して得られたもの
であることが好ましい。

【００１０】さらに、本発明のスプレー用消毒組成物の
一実施態様において、前記消毒成分粉末が、１μm 以下
の粒径を有する超微粒子であることが好ましく、このよ
うな超微粒子消毒成分を用いることにより消毒面に形成
される消毒皮膜が着色、又は失透することを防止するこ
とができる。

【００１１】

【作用】本発明のスプレー用消毒組成物の消毒成分粒子
は、無機物質粉体からなる担体粉末と、この担体上に担
持されている殺菌性物質とを含むものである。この殺菌
性物質は、従来既知の殺菌性、又は抗菌性物質から選ぶ
ことができ、例えばクロルヘキシジン、サイアベンタゾ
ール、第四級アンモニウム塩化合物、および抗菌性金属
イオンなどを用いることができる。抗菌性金属イオンと
しては、銀、銅、および亜鉛などの金属イオンを用いる
ことができるが、銀イオンを用いることが好ましい。上
記金属イオンを供給する化合物としては硝酸銀、フッ化
銀、並びに銅および亜鉛の硫酸塩、硝酸塩、および塩酸
塩などを用いることができる。

【００１２】本発明に用いられる無機物質粉体として
は、リン酸塩（例えばリン酸カルシウム、リン酸ジルコ
ニウム、りん酸アルミニウムなど）、けい酸塩（例えば
けい酸カルシウム、シリカゲル、けい酸アルミニウムな
ど）、アルミン酸塩（例えばアルミン酸カルシウム、ゼ
オライトなど）、チタン化合物（チタニア）および炭素
（活性炭）などのように、水に不溶であり、殺菌性物質
に対する吸着性がすぐれている無機物質から選ぶことが
できる。

【００１３】無機物質粉体からなる担体上に殺菌性物質
を担持させるには、適宜の溶媒、例えば水、又はアルコ
ールなどに、殺菌性物質を溶解し、この溶液中に無機物
質粉体を分散して、この粉体上に殺菌性物質を吸着さ
せ、その後、必要に応じて殺菌性物質担持無機物質粉体
を濾過法、又は遠心分離法などによって溶剤から分離捕
集し、溶剤を乾燥除去すればよい。

【００１４】本発明に用いられるバインダー用溶剤に
は、それが消毒効果を阻害しない限り格別の制限はない
が、一般には、消毒殺菌効果を有し、かつ揮発乾燥の容
易なエタノールを用いることが好ましい。

【００１５】本発明に用いられるバインダーは、前記溶
剤に溶解し、強靱で安定な皮膜を形成することができ、
かつ、消毒効果を阻害しないものである限り格別の制限
はないが、一般にポリビニルブチラールを用いることが
好適である。

【００１６】本発明のスプレー用消毒組成物において、
消毒成分粉末の含有量は、溶剤重量に対して０．１〜３
０％であることが好ましい。この含有量が０．１％未満
であると、十分な殺菌性、又は抗菌性を有するスプレー
皮膜が得られないことがあり、またそれが３０％を超え
ると、スプレーが困難になることがある。

【００１７】本発明のスプレー用消毒組成物において、
バインダーの含有量は、溶剤重量に対して１０〜１００
％であることが好ましい。この含有量が１０％未満であ
ると、実用上十分な強靱性と安定性とを有する皮膜の形
成が困難になり、またそれが１００％を超えると、スプ
レーが困難になることがある。

【００１８】本発明のスプレー用消毒組成物において、
殺菌性物質として銀イオンを用い、無機物質としてヒド
ロキシアパタイトを用いた場合、実用上、消毒効果が高
く、かつ持続性にすぐれた消毒皮膜を形成することがで
きる。この場合、ヒドロキシアパタイト重量に対する銀
イオンの担持量は１〜１０％であることが好ましい。こ
の銀イオン担持量が１％未満の場合、得られる消毒皮膜
の抗菌性が不十分になることがあり、またそれを１０％
より多くしても、抗菌性が飽和してしまい、格別の効果
は認められなくなる。

【００１９】しかしながら、銀イオン−ヒドロキシアパ
タイト系消毒成分粉末は、紫外線に曝露されると変色す
るという問題点を有している。これは、銀イオンが紫外
線に感光し、金属銀が析出するためと考えられる。この
問題点を克服するためには、ヒドロキシアパタイト粉末
からなる担体に銀イオンを担持させ、この銀イオン担持
ヒドロキシアパタイト粉体にガラスフリットを混合し、
この混合物を高温、例えば７００〜１２００℃の温度で
焼成して、消毒成分粉末を製造すればよい。このように
して得られた消毒成分粉末を含有する消毒皮膜は、それ
に紫外線が照射されても着色することがなく、又は少な
い。

【００２０】上記のようなガラス含有消毒成分粉末の作
製において、ガラスフリットの添加量は含重量に対し１
０〜８０％であることが好ましい。またこの場合に用い
られるガラスフリットの組成に格別の制限はないが、焼
成温度以下の温度、特に６００〜１３００℃で流動化す
るものが好ましい。更に、上記焼成温度は、用いられた
ガラスが流動化する温度であることが好ましい。

【００２１】更に、ガラスフリットは、フッ素を含んで
いてもよく、このようにフッ素を含むガラスフリットを
用いると、得られる消毒成分粉末の耐酸性を向上させる
ことができる。これは、消毒成分粉末中のヒドロキシア
パタイトが、耐酸性のすぐれたフッ素アパタイトに変化
するためと考えられる。

【００２２】一般に、本発明の消毒成分粉末を含むスプ
レー用消毒組成物から形成される消毒皮膜は、消毒面を
若干白っぽくする傾向がある。この問題点を克服、又は
軽減するためには、消毒成分粉体の平均粒径を有するす
る超微粒子にすることが有効であり、このためには、担
体として用いられる無機物質粉末の平均粒径を、１μm
以下にすればよい。このような超微粒子は光を散乱する
性質が低いため、消毒皮膜を透明化し、この消毒皮膜面
の白っぽさを軽減することができる。また消毒面の変色
を防止、又は少なくすることができる。

【００２３】

【実施例】本発明を下記実施例により更に説明する。実施例１ (1) 消毒成分粉末の調製 表１に記載の４種の殺菌性物質の各々の１０％水溶液１
００mlに、表１に記載の７種の無機物質粉末（平均粒
径：０．１〜１０μm ）の各々の１０ｇを投入し、この
混合物を、マグネチックスターラーを用いて２４時間攪
拌しながら、無機物質粉末に殺菌性物質を担持せしめ、
得られた消毒成分粉末を混合物から濾過によって分離捕
集し、乾燥した。２８種の消毒成分粉末が調製された。

【００２４】(2) 消毒組成物の調製 上記消毒成分粉末の各々の１０ｇと、ポリビニルブチラ
ールからなるバインダー１０ｇと、エタノールからなる
溶剤２００ｇとを混合し、この混合物をはげしく攪拌し
て懸濁液組成物を調製した。

【００２５】(3) スプレー消毒皮膜の形成 予め十分に消毒されたステンレス板上に、上記組成物
を、塗布液量が１０ml／１００cm² になるようにスプレ
ーし、自然乾燥させた。

【００２６】(4) 消毒効果持続性テスト 上記消毒皮膜を担持しているステンレス板を、水道水の
流水中に浸漬し、所定時間の経過毎に上記ステンレス板
を取り出して自然乾燥し、消毒皮膜上に付着している生
菌数を測定した。この測定は、寒天平板法によって行わ
れた。上記テストによって消毒皮膜上に、１００cm² 当
たり１個以上の生菌が確認されたときの、流水中浸漬日
数を定め、この日数をもって、ステンレス板上の当該消
毒皮膜の消毒効果持続性を表示した。テスト結果を表１
に示す。

【００２７】

【表１】

【００２８】実施例２ 実施例１において調製された銀イオン−ヒドロキシアパ
タイト消毒成分粉末１０ｇに、含フッ素ガラスフリット
（市販品、融点：１２００℃) １０ｇを混合し、この混
合物を１２００℃で１時間焼成した。この焼成物を、平
均粒径１μm に粉砕した。

【００２９】上記のようにして調製した含フッ素ガラス
含有消毒成分粉末を用いて、実施例１に記載の方法によ
りスプレー用消毒組成物を調製し、その消毒効果持続性
テストを行った。このテスト結果は、３６５日以上であ
った。

【００３０】またこの消毒皮膜担持ステンレス板の消毒
皮膜に、１０％塩酸水溶液により拭き取り処理を施した
後に、前記消毒効果持続性テストに供した。テスト結果
は３６５日以上であった。また、この消毒皮膜は、紫外
線照射による変色が認められないものであった。

【００３１】尚、フッ素を含有しないガラスフリットを
用いて実施例２と同様の操作およびテストを行った。１
０％塩酸水溶液による拭き取り処理を施さない場合の消
毒効果持続日数は３６５日以上であったが、１０％塩酸
水溶液による拭き取り処理を施を施したところ、消毒効
果持続日数は１日であった。

【００３２】実施例３ 実施例２と同様の実験およびテストを行った。但し、消
毒成分粉体を微粉砕して、その平均粒径を１μm 以下に
した。この消毒組成物によるスプレー消毒皮膜の消毒効
果持続日数は３６５日以上であり、またその耐紫外線
性、および耐酸性は、実施例２と同様であった。但し、
この消毒皮膜は、透明であって、消毒面の白化が認めら
れなかった。

【００３３】

【発明の効果】本発明のスプレー用消毒組成物は、すぐ
れた消毒効果持続性を有する消毒皮膜を形成することが
でき、従って病院、食品工場などに持続性のすぐれた消
毒を施すことが可能になり、院内感染、日和見感染症な
どの防止に有効なものである。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 下記成分； (1) 無機物質粉体からなる担体と、この担体上に担持さ
   れている殺菌性物質とを含む消毒成分粉末、 (2) バインダー、および (3) 前記バインダー用溶剤、を含む分散液からなるスプ
   レー用消毒組成物。
2. 【請求項２】 前記殺菌性物質が銀イオンであり、前記
   無機物質粉体が、ヒドロキシアパタイトである、請求項
   １に記載のスプレー用消毒組成物。
3. 【請求項３】 前記消毒成分粉末が、ヒドロキシアパタ
   イト粉体からなる担体上に銀イオンを担持させ、この銀
   イオン担持ヒドロキシアパタイト粉体と、ガラスフリッ
   トとを混合し、この混合物を焼成して得られたものであ
   る、請求項１に記載のスプレー用消毒組成物。
4. 【請求項４】 前記消毒成分粉末が１μm 以下の平均粒
   径を有する超微粒子である、請求項１〜３のいずれか１
   項に記載のスプレー用消毒組成物。