JP3659700B2 - 抗菌剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌性を維持し、かつそのスペクトルが広範囲であることが有用である各種成形物品、例えば壁、壁紙などの建材、食品包装材料、工業用品、日用品、医療用機械器具及びその部材等に用いる抗菌剤組成物の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、抗菌性を物に付与する手段の多くは、有機系抗菌剤によるものであり、例えば有機銅や錫化合物、有機砒素化合物などが広く用いられてきた。しかし、一般的にはこれらの抗菌性の効果が大きいほど有毒性が強いという難点があった。一方、金属イオンの微量溶出法なども広く検討されている。この例としては、各種形状の銀、銅或いはその酸化物を物に添付する手段、粉末状の糊料や塗料への混和、繊維への混紡などが用いられている。これらのうち医療用分野を例にとれば、カテーテル表面への銀粒子の固定(米国特許第4054139号)、医療用高分子材料表面への銀、亜鉛、セリウムなどの金属塩のコーティング法(米国特許第4612337号、特開昭62−11457)、バルーンカテーテルのバルーン部表面への金属層の形成(特開平−135358)などをあげることができる。しかし、いずれの分野でも、使用する金属粉末等の分散性や効果持続性に劣るため、殆ど実用化されていなかった。さらに、これらの欠点を改良する試みとして、銀等の金属イオンを担持した天然、合成ゼオライトを抗菌剤として工業用品、日用品あるいは医療用品への適用が試みられている(特公昭63−54013号)。これら以外にも銀を担持する担体として酸化チタン、アバタイト、シリカ、低分子ガラス、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウムなどが用いられ、広く工業用品、日用品、雑貨品などとして使用されている。更には、界面活性剤を用いた抗菌剤として、例えば陽イオン界面活性剤水溶液に抗菌性金属を有するN−長鎖アシルアミノ酸塩が分散した抗菌性液状物(特開平6−256123号)やアニオン性界面活性剤の銀塩(特開平3−141205号)などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の無機系抗菌剤に随伴する欠点である該剤の分散性に劣ること、また、その安定性に欠けることなどの問題を解決し、かつ抗菌剤として最も重要な使命である抗菌力そのものの向上を図ることのできる抗菌剤組成物を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、次のことが明らかとなった。一般的に、銀担持無機系抗菌剤は、銀の溶出により抗菌力を示すと考えられる。これらの抗菌剤を含む抗菌剤組成物の抗菌力を向上させる方法としては、組成物中の抗菌剤含有量を増加させたり、抗菌剤に担持される銀量を増加させる手段による。しかし、これらの手段では成形品の材料としての、物性や外観上好ましくない結果を生じ、満足に至らなかった。しかい、この研究過程において、無機系抗菌剤と水和能の高いポリマー微粒子及び/又はオリゴマとを混和することにより高い抗菌力を示し、更に無機系抗菌剤と界面活性剤と水和能の高いポリマー微粒子及び/又はオリゴマとを混和することにより高い抗菌力を示すことが明らかとなった。これらの抗菌剤組成物を作出する方法は種々あるが、例えば抗菌性金属やこれを担持する無機系抗菌剤及び界面活性剤、水和能の高いポリマー微粒子を構成要素とし、溶融ポリマーに混練することにより微粒子状あるいは所望の形状の抗菌剤組成物を得ることができる。すなわち、該組成物を直接賦形し、また、マトリックスをポリマー溶液として部材等の表面にコーティングするなどできる。本発明に係る抗菌剤組成物は、用途、形態に特に制約はなく、繊維の抗菌防臭、塗料の抗菌、包装材料の抗菌、各種接着剤や油剤等の抗菌その他に広く応用可能である。
【0005】
【発明の実施の形態】
前記界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、油溶性界面活性剤のいずれでもよい。好ましくは使用するポリマーやオリゴマと相溶性があり、さらには添加される抗菌性金属やその化合物又はこれらを担持した無機系抗菌剤、水和能の高いポリマー微粒子の分散性を増す界面活性剤であるが、一種又は複数の界面活性剤を混和することも可能である。界面活性剤の添加量としては、本発明に係る抗菌剤組成物中0.5乃至20重量%でよく、より好ましくは5乃至15重量%である。上述のとおり、界面活性剤は種々用いることができるが、リン脂質のものは、親水化能と細菌付着抑制効果が優れているし、リン脂質は医薬、食品にも用いられ、安全性が高いことを考慮すべきである。
【0006】
前記添加する水和能の高いポリマー微粒子としては、デンプン系、セルロース系などの天然高分子類、ポリビニル系やアクリル系などの合成高分子類のいずれでもよい。用いる微粒子径としては、10μm以下、より好ましくは3μm以下でよいが、1μm以下の粒子であることが最も効果的である。次に、水和能としては、3乃至6の値のものが好ましい。この値は、以下の方法により得られた測定値をいう。即ち、試料2gを100mlの遠心管に量り取り、pH6.4の蒸留水40mlを加え懸濁状になるまで遠心管を激しく振とうする。5分後及び10分後に更に振とうした後、2000rpmで15分間遠心分離し、上澄液を静かに捨て、遠心管と沈渣の重さを再び量る。水和能値は乾燥品重さ分の膨潤品の重さにより得られる。また、添加量は、物性を損ねてはならず、好ましくは本発明に係る抗菌剤組成物中1乃至20重量%、より好ましくは3乃至10重量%である。
【0007】
添加する抗菌性金属又はこれを担持した無機系抗菌剤は種々考えられるが、例えば銀、酸化銀、塩化銀、チオスルファト銀錯塩、リン酸銀、銅、酸化亜鉛、銀担持酸化チタン、銀担持リン酸ジルコニウム、銀・亜鉛担持ゼオライトなどである。これらのものの粒子径は、10μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下、もっとも好ましいのは1μm以下である。添加量は、本発明に係る抗菌剤組成物中3乃至40重量%が好ましく、より好ましくは20乃至40重量%である。
【0008】
【実施例】
本発明の実施例を以下のとおり説明する。ただし、もとよりこれに限定されるものではない。なお、実施例に関し、抗菌力試験に用いる培地組成は表1のとおりであり、また、減菌率の計算は、振とう前の平均菌数をAとし、振とう後の平均菌数をBとし、logA分の(logA−logB)に100を乗じた値により算出した。
【表1】
実施例の1は、銀及び亜鉛を担持した酸化チタン(以下「ABC−T」と略称する。)と水和能の高いポリマー微粒子としてポリビニルピロリドン(ビーエーエスエフジャパン社製、以下「PVP」と略称する。)と、シリコーンであるフレキシブルコーティング剤(東レシリコーン社製、以下「シリコーン剤」と略称する。)を次の方法で混和した。即ち、ヘキサン溶媒にABC−T及びPVPを添加し、よく攪拌する。得られた懸濁液にシリコーン剤を添加し、さらによく攪拌する。得られた懸濁液にシリコーンシートを浸漬することにより、その表面に被膜を形成させた。該シリコーンシートについて抗菌力試験を行った結果、各々の配合比及び抗菌力試験結果を表2に示す。
【表2】
参考例として、ABC−Tと界面活性剤としてTween80(和光純薬製)とシリコーン剤を実施例の1と同様の方法で混和した場合の抗菌力試験結果は表3のとおりである。
【表3】
実施例の2は、ABC−TとTween80とPVPとシリコーン剤を実施例1と同様の方法により混和した場合の抗菌力試験結果は、表4のとおりで、PVPやTween80を単独で配合するよりも複合することにより、より高い抗菌力を示す組成物が得られた。
【表4】
実施例の3は、前同様の方法でABC−T、PVPと界面活性剤としてレシチン(味の素社製)を用い抗菌剤組成物を作成した場合の抗菌力試験結果は表5のとおりで、水和能の高いポリマー微粒子及び界面活性剤を添加することにより、抗菌力の向上が認められた。
【表5】
【0009】
【発明の作用及び効果】
いわゆる抗菌性金属が強い抗菌効果を示す機構は充分には明らかにされていない。微量金属イオンが抗菌作用を有することは古くから知られている。この金属イオンの作用を強めるには、単純にイオンの溶出量を増やすことにより達成されると考えられる。本発明においては、抗菌性金属や化合物あるいはそれを担持した無機系抗菌剤以外の添加物によりイオンの溶出が助長されるためにあると考えられる。以上のことは充分に解明されているものとはいえないが、考慮されるべきである。また、本発明では、界面活性剤により水との親和性を高め、かつ、水和能の高いポリマー微粒子により、より組成物中への水の拡散が容易となる。このことにより、組成物中の抗菌性物質である金属イオンの溶出が助長されるとも考えられる。さらに、界面活性剤はイオンと細菌との作用を助長したとも考えられる。さらには、界面活性剤によって抗菌性金属やこれを担持した無機系抗菌剤の分散を向上させたことはいうまでもない。本発明は抗菌性の点で優れているばかりでなく、きわめて多方面の分野において応用可能である。
Claims (2)
- 抗菌性を有する金属を酸化チタンに担持した無機系抗菌剤と、ポリビニルピロリドン微粒子とを混和してなることを特徴とする抗菌剤組成物
- 抗菌性を有する金属を酸化チタンに担持した無機系抗菌剤と、界面活性剤と、ポリビニルピロリドン微粒子とを混和してなることを特徴とする抗菌剤組成物
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JPH0930913A JPH0930913A (ja) | 1997-02-04 |
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