JPH06215367A - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体の製造方法

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Publication number
JPH06215367A
JPH06215367A JP2166693A JP2166693A JPH06215367A JP H06215367 A JPH06215367 A JP H06215367A JP 2166693 A JP2166693 A JP 2166693A JP 2166693 A JP2166693 A JP 2166693A JP H06215367 A JPH06215367 A JP H06215367A
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JP
Japan
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gas
protective film
lubricant layer
fluorine
radical species
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Application number
JP2166693A
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English (en)
Inventor
Hideyuki Ueda
英之 植田
Kiyoshi Takahashi
喜代司 高橋
Mikio Murai
幹夫 村居
Masaru Odagiri
優 小田桐
Kenji Kuwabara
賢次 桑原
Hiroshi Seki
博司 関
Yukikazu Ochi
幸和 大地
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電磁変換特性と走行安定性、耐久性、耐候性
等の信頼性とを併せて備える強磁性薄膜型磁気記録媒体
を提供する。 【構成】 非磁性基板1の強磁性金属薄膜3の上に硬質
炭素保護膜5を形成し、その表面にコロナ放電により生
成した中性ラジカル種を照射した後、含フッ素系潤滑剤
層7を湿式塗布法により形成する。この照射で硬質炭素
保護膜5と潤滑剤層7との接着性が向上する。保護層5
上に含フッ素系潤滑剤層7を形成した後、中性ラジカル
種を照射してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、VTR、磁気ディスク
装置等に用いられる強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の製
造方法に関し、特に、高次元の電磁変換特性と実用信頼
性とを共に備える磁気記録媒体が得られるように構成し
たものである。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録媒体装置は、高性能化
(VTRの場合は、高画質・高音質化、磁気ディスク装
置の場合は、大容量・高速化)、小型軽量化が要望され
るようになってきた。それに伴い磁気記録媒体として
は、高密度記録を達成することが必要不可欠であり、磁
性層の残留磁束密度(Br)及び保磁力(Hc)が共に
大きく、磁性層の薄層化が可能であり、しかも磁性層表
面の超平滑化に最適である強磁性金属薄膜型磁気記録媒
体の開発、実用化が積極的に行なわれている。
【0003】一般に強磁性金属薄膜型磁気記録媒体は、
真空雰囲気中で、Co、Co−Ni、Co−Cr等の金
属もしくは合金を電子ビーム等で加熱・蒸発させ、真空
槽内にわずかな酸素ガスを導入しながら、連続的に入射
角を変化させた斜方蒸着法、スパッタリング法等を用い
て、ポリエステル、ポリイミド等の高分子フィルムや非
磁性金属からなる基板上に付着・堆積させることにより
得ることができる。
【0004】しかしながら、強磁性金属薄膜型磁気記録
媒体の磁性層は、硬度が低く塑性変形しやすいため、高
速回転するVTRの磁気ヘッドおよび金属シリンダと直
接接触する場合、磁性層は瞬間的に摩耗・損傷され、ヘ
ッド摺動面に金属凝着を引き起こし、その結果、耐久性
の悪化(繰り返し走行による大幅な記録再生出力の低
下、スチルライフの著しい減少等)を招くという問題が
生じた。また磁性層表面は、酸化被膜が形成され保護さ
れているものの高湿環境下における耐食性は、不充分で
あるといった問題を有していた。
【0005】そこで、従来より、強磁性金属薄膜型磁気
記録媒体の潤滑性、耐摩耗性および耐食性を向上させる
ために、微小突起を形成したベースフィルムを使用した
り、磁性層上に保護膜あるいは滑り性・撥水性効果を合
わせ持つ含フッ素系潤滑剤層を形成することが提案され
ている。特に保護膜については、磁性層と磁気ヘッド間
のスペーシング損失を低減するために、保護膜の膜厚を
薄く設定する必要があり、そのため高硬度で摩耗しにく
いダイヤモンド状炭素膜を磁性層上に形成する構成が数
多く提案されている。(例えば特開昭61−21051
8号公報および特開昭63−98824号公報等に記
載。)また、特開平1−245417号公報および特開
平2−158909号公報等には、磁性層上にダイヤモ
ンド状炭素膜を形成し、さらにこのダイヤモンド状炭素
膜上に潤滑剤層(含フッ素脂肪酸層)を形成する構成が
開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来よ
り行なわれてきた方法を用いて、優れた電磁変換特性お
よび耐久性を兼ね備えた磁気記録媒体を提供することは
非常に困難であり、様々な問題が生じている。
【0007】例えば、磁性層上に含フッ素系潤滑剤層の
みを形成した場合には、せん断力を低下させることがで
きるものの、媒体表面の硬度が低く摩耗しやすいため、
走行安定性が悪化するとともに、スチルライフが減少す
る結果を招いてしまう。
【0008】また、磁性層上に硬質保護膜(例えばダイ
ヤモンド状炭素膜)のみを形成した場合には、高速回転
するVTRの磁気ヘッドおよび金属シリンダとの直接接
触により保護膜自体が脆性破壊を起こし、その結果、ス
チルライフの著しい減少を招くとともに、ヘッド摩耗あ
るいは偏摩耗(ヘッド摺動面のアモルファス部分がフェ
ライト部分に対し著しく摩耗する現象)を生じ、再生出
力の安定性を確保することが不可能となる。
【0009】さらに磁性層上に高硬度なダイヤモンド状
炭素膜および潤滑剤層を順次形成させた場合において
も、ダイヤモンド状炭素膜の表面状態が化学的に非常に
不活性であるため、潤滑剤との接着性が不充分となり、
記録再生時にヘッド摺動面に潤滑剤成分からなる焼付き
が生じ、著しい出力低下を招いたり、長時間のヘッド目
づまりを発生させる等の問題を有していた。
【0010】一方、潤滑剤層を湿式塗布法によって保護
膜上に形成する際に、潤滑剤溶液中に大量の水分が混入
している場合、もしくは高湿環境下で塗布・乾燥工程を
行なった場合には、潤滑剤分子の配向性が悪化し、塗布
ムラを生じ、その結果、ドロップ・アウト(D.O.)が
増加することになる。また、耐食性についても、潤滑剤
層中に混入している水分等が保護膜と磁性層との界面、
磁性層とベースフィルムとの界面に容易に侵入し、錆、
ふくれ、剥離等が発生するといった問題を有していた。
【0011】本発明は、前記課題を解決するものであ
り、電磁変換特性と実用信頼性とを高次元で両立させる
ことのできる強磁性金属薄膜型磁気記録媒体を提供する
ことを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明では、磁
気記録媒体の製造において、非磁性基板上に強磁性金属
薄膜を形成し、強磁性金属薄膜上に保護膜を形成し、さ
らに、この保護膜にコロナ放電により生成した中性ラジ
カル種(原子状気体)を照射した後、潤滑剤層を形成し
ている。
【0013】また、非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形
成し、強磁性金属薄膜上に保護膜を形成し、保護膜上に
潤滑剤層を形成し、さらに、この潤滑剤層にコロナ放電
により生成した中性ラジカル種(原子状気体)を照射し
ている。
【0014】また、非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形
成し、強磁性金属薄膜上に保護膜を形成し、この保護膜
上にコロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状
気体)を照射した後、潤滑剤層を形成し、さらに、この
潤滑剤層にコロナ放電により生成した中性ラジカル種
(原子状気体)を照射している。
【0015】また、前記保護膜を、ビッカース硬度が2
000kg/mm2以上の非晶質炭素の連続膜で形成し
ている。
【0016】また、前記保護膜に照射する中性ラジカル
種(原子状気体)を、N、P、O、S、F、B、Siお
よび金属から選ばれた少なくとも一つの元素を分子中に
含有するモノマーガス、または前記モノマーガスと、N
2 ガス、O2 ガス、CO2 ガスもしくはNH3 ガスとの
混合ガスから生成している。
【0017】また、前記潤滑剤層に照射する中性ラジカ
ル種(原子状気体)を、N2 、O2、NH3 、CF4
の反応性ガスから生成している。
【0018】また、前記潤滑剤層を、−COOH、−O
H、−SH、−NH2 、=NH、−NCO、−CONH
2 、−CONHR、−CONR2 、−COOR、=P
R、=PRO、=PRS、−OPO(OH)2 、−OP
O(OR)2 および−SO3 M(ただし、Rは炭素数1
〜22の炭化水素基、Mは水素、アルカリ金属またはア
ルカリ土類金属)から選ばれた少なくとも一つの極性基
を有する含フッ素系潤滑剤を用いて形成している。
【0019】また、保護膜や潤滑剤層への中性ラジカル
種(原子状気体)の照射処理と、潤滑剤層の湿式塗布法
による形成とを、相対湿度20%以下の除湿ガス雰囲気
中で連続的に行なっている。
【0020】また、前記除湿ガスとして、N2 ガスまた
はO2 ガスを用いている。
【0021】また、前記保護膜への中性ラジカル種(原
子状気体)の照射処理と、前記潤滑剤層の湿式塗布法に
よる形成とを一つのローラー上で行なっている。
【0022】また、前記潤滑剤層を形成するための潤滑
剤溶液中の水分混入濃度を1000ppm以下に設定し
ている。
【0023】さらに、潤滑剤層の形成に当たって、潤滑
剤溶液を塗布した直後に、相対湿度15%以下の除湿ガ
スを塗布面に吹き付けて乾燥させている。
【0024】
【作用】本発明によれば、保護膜表面にコロナ放電によ
り生成した中性ラジカル種(原子状気体)を照射するこ
とにより、保護膜表面が清浄化されるとともに、種々の
官能基(反応性基)が保護膜表面に導入される。すなわ
ち保護膜表面に反応活性層が形成されることになる。そ
の結果、潤滑剤分子中の極性基との化学的親和力が増大
するため、保護膜と潤滑剤層との接着性が向上する。
【0025】また、保護膜上に潤滑剤層を形成した後、
この潤滑剤層にコロナ放電により生成した中性ラジカル
種(原子状気体)を照射することにより、潤滑剤分子中
にラジカルが生成し、このラジカルが保護膜表面上で反
応し、保護膜をマトリックス(幹)とし潤滑剤の骨格成
分をグラフト(枝)とするグラフト共重合体が形成され
る。その結果、常に一定量の潤滑剤が保護膜表面上に存
在することになる。
【0026】保護膜表面にコロナ放電により生成した中
性ラジカル種(原子状気体)を照射した後、潤滑剤層を
形成し、さらに、この潤滑剤層にコロナ放電により生成
した中性ラジカル種(原子状気体)を照射する場合に
は、保護膜表面に導入された種々の官能基(反応性基)
と潤滑剤分子中の極性基との化学的親和力の増大、およ
び保護膜をマトリックス(幹)とし、潤滑剤の骨格成分
をグラフト(枝)とするグラフト共重合体の形成といっ
た二つの効果により、保護膜上の潤滑剤の配向性、接着
性が飛躍的に向上することになる。
【0027】したがって、磁性層上に形成された保護膜
と潤滑剤層との相乗効果を充分に発揮することができる
ため、テープの走行安定性、耐久性の著しい向上、およ
びヘッド摺動面の異種材料間の偏摩耗を低減することが
可能となる。
【0028】さらに、コロナ放電により生成した中性ラ
ジカル種(原子状気体)の保護膜表面への照射処理と湿
式塗布法による潤滑剤層の形成、コロナ放電により生成
した中性ラジカル種(原子状気体)の潤滑剤層への照射
処理を除湿ガス雰囲気中で行なうことにより、保護膜表
面に導入された官能基(反応性基)への水分の吸着、潤
滑剤溶液中への水分の混入等を防止することができるた
め、ドロップアウト(D.O.)の低減化および耐食性の
著しい向上を達成することができる。
【0029】
【実施例】以下本発明の実施例について図面を参照しな
がら詳細に説明する。
【0030】図1は、本発明の強磁性金属薄膜型磁気テ
ープAの構成を示す拡大断面図である。(この図は、後
述する実施例(1)〜(5)における強磁性金属薄膜型
磁気テープの構成図に相当するものである。)図中、1
は非磁性基板であり、ポリエチレンテレフタレート、ポ
リエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド等の
高分子フィルムを用いることができ、磁性層側の基板表
面には10nm〜20nm程度の微小突起層2が形成さ
れている。3は強磁性金属薄膜であり、真空雰囲気中
で、Co、Co−Ni、Co−Cr等の金属または合金
を電子ビーム等で加熱・蒸発させ、真空槽内にわずかな
酸素ガスを導入しながら、連続的に入射角を変化させた
斜方蒸着法により形成する。その膜厚は100nm〜2
00nmである。4はバックコート層であり、カーボン
ブラック、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂を
主成分とした塗料を塗布・乾燥させることにより形成す
る。5は硬質炭素保護膜であり、プラズマCVD法等に
より形成することができ、その膜厚は短波長領域での再
生出力を確保するために、8nm〜12nm程度であ
る。6は反応活性層であり、硬質炭素保護膜5表面にコ
ロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)
を照射することにより形成する。また、7は−COOH
等の極性基を導入した含フッ素系潤滑剤層であり、湿式
塗布法により形成する。
【0031】また(図2)は、本発明の強磁性金属薄膜
型磁気テープBの構成を示す拡大断面図である。(この
図は、後述する実施例(6)〜(9)における強磁性金
属薄膜型磁気テープの構成図に相当するものである。)
図中、8は部分グラフト化含フッ素系潤滑剤層であり、
含フッ素系潤滑剤層7にコロナ放電により生成した中性
ラジカル種(原子状気体)を照射することにより形成す
る。他の1〜5は、強磁性金属薄膜型磁気テープAの構
成と同様である。
【0032】また、図3は、本発明の強磁性金属薄膜型
磁気テープCの構成を示す拡大断面図である。(この図
は、後述する実施例(10)〜(14)における強磁性
金属薄膜型磁気テープの構成図に相当するものであ
る。)図中、8は部分グラフト化含フッ素系潤滑剤層で
あり、含フッ素系潤滑剤層7にコロナ放電により生成し
た中性ラジカル種(原子状気体)を照射することにより
形成する。他の1〜6は、強磁性金属薄膜型磁気テープ
Aの構成と同様である。
【0033】図4は、本発明の強磁性金属薄膜型磁気テ
ープAの製造工程において、硬質炭素保護膜5表面にコ
ロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)
を照射し、反応活性層6を形成するための処理装置の概
略図、および含フッ素系潤滑剤層7を形成するための塗
布装置の要部構成図を示したものである。
【0034】図中、9はクリーンルームであり、除湿ガ
ス10を導入することでクリーンルーム内の環境(温度お
よび相対湿度)の制御を行なっている。
【0035】11は放電室であり、放電室11の内部には、
放電電極12およびアース電極13が設置されている。放電
電極12はコロナ放電発生用電源14と接続されており、コ
ロナ放電発生用電源14としては、周波数1〜100kH
zで最大30kVの電圧が印加可能である。15はモノマ
ーガス等を放電室11内に導入するための処理ガス導入口
である。16は中性ラジカル種吹き出し口であり、コロナ
放電により生成したイオンを除去し、中性ラジカル種
(原子状気体)のみを硬質炭素保護膜5表面に照射でき
るようにスリット状に成形されている。17は非磁性基板
1上に微小突起層2、強磁性金属薄膜3、バックコート
層4および硬質炭素保護膜5が形成された磁気テープで
あり、巻き出しロール18から送り出され、ニップロール
19を経て矢印a方向に移動する。
【0036】まず、バックアップロール20の外周面上に
位置する磁気テープ17の硬質炭素保護膜5表面にコロナ
放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)が照
射され、反応活性層6が形成される。なお、バックアッ
プロール20の表面は、耐熱性、耐溶剤性、耐摩耗性のゴ
ムにより被覆されている。
【0037】次に反応活性層6上にアプリケーションロ
ール21に転写した含フッ素系潤滑剤溶液24が塗布され、
含フッ素系潤滑剤層7が形成される。この際、含フッ素
系潤滑剤層7の膜厚を均一なものとするためには、矢印
b方向に回転するアプリケーションロール21と反対のc
方向に回転するメタリングロール22との速度比および隙
間(ギャップ)を調整する必要がある。そしてアプリケ
ーションロール21に過剰に転写した含フッ素系潤滑剤溶
液の一部はメタリングロール22に転写され、ドクターブ
レード23により掻き落とされて、含フッ素系潤滑剤溶液
24用のパン25に戻る。なお、含フッ素系潤滑剤溶液24
は、含フッ素系潤滑剤をイソプロピルアルコールに溶解
することで調製した。
【0038】さらに、ウェットな状態にある含フッ素系
潤滑剤層7表面にノズル26から温度および相対湿度が制
御された除湿ガス27を吹き付けた後、反応活性層6およ
び含フッ素系潤滑剤層7を付与した磁気テープ17は、乾
燥炉28に送りこまれた後、ニップロール19を経て巻き取
りロール29に巻きこまれる。
【0039】実施例(1) 27℃−23%RHのクリーンルーム環境(除湿ガスと
してN2ガスを使用することで、温度および相対湿度を
制御。)において、まず放電室11内にアリルアミンを抵
抗加熱法により導入する。この際、キャリアガスとして
除湿N2 ガス(23℃−4%RH)を用い、その流量を
200cc/minとした。
【0040】次に、10μm厚のポリエチレンテレフタ
レート1上に微小突起層2、強磁性金属薄膜3、バック
コート4、ビッカース硬度が2200kg/mm2 の硬
質炭素保護膜5を約10nm程度形成させた磁気テープ
17を10m/minの走行スピードで搬送させるととも
に、放電電極12に周波数30kHz、800Wの電力を
投入することでコロナ放電を発生させ、磁気テープ17の
硬質炭素保護膜5表面に中性ラジカル種を照射(照射時
間約3sec程度)し、反応活性層6を形成する。
【0041】その後連続的に(反応活性層6形成後直ち
に)、水分混入濃度が430ppmであり、極性基とし
て−COOHを導入した含フッ素系潤滑剤溶液24を用
い、上述した湿式塗布法により含フッ素系潤滑剤層7を
形成する。
【0042】さらにノズル26から温度および相対湿度を
28℃−4%RHに制御した除湿N2ガスをウェットな
状態にある含フッ素系潤滑剤層7表面に吹き付けた後、
乾燥炉28(90℃−18%RHに制御)内を通過させる
ことで乾燥後の含フッ素系潤滑剤層7の膜厚を約3nm
程度とする。
【0043】得られた強磁性金属薄膜型磁気テープA原
反を8mm幅にスリットし、8mmVTR用薄膜テープ
を作製した。
【0044】実施例(2) 硬質炭素保護膜5表面に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料(モノマー)として、アリルアミ
ンの代わりにテトラメチルジシロキサンを用いる以外
は、実施例(1)と同様な方法により、8mmVTR用
薄膜テープを作製した。
【0045】実施例(3) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成とを連続的に行なうクリーンルームの環境が25℃
−18%RHであること以外は、実施例(1)と同様な
方法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0046】実施例(4) 硬質炭素保護膜5表面に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料(モノマー)として、アリルアミ
ンの代わりにテトラメチル錫を用い、それ以外は実施例
(3)と同様な方法により、8mmVTR用薄膜テープ
を作製した。
【0047】実施例(5) 硬質炭素保護膜5表面に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料(モノマー)として、アリルアミ
ンの代わりにヘキサメチルジシラザンを用いること以外
は、実施例(3)と同様な方法により、8mmVTR用
薄膜テープを作製した。
【0048】比較例(1) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理を実施せず
に、直接硬質炭素保護膜5上に極性基として−COOH
を導入した含フッ素系潤滑剤層7を上述した湿式塗布法
を用いて形成することにより、8mmVTR用薄膜テー
プを作製した。
【0049】比較例(2) 硬質炭素保護膜5表面に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料(モノマー)として、アリルアミ
ンの代わりにベンゼンを用いること以外は、実施例
(1)と同様な方法により、8mmVTR用薄膜テープ
を作製した。
【0050】比較例(3) 硬質炭素保護膜5表面に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料(モノマー)として、アリルアミ
ンの代わりにスチレンを用いること以外は、実施例
(1)と同様な方法により、8mmVTR用薄膜テープ
を作製した。
【0051】比較例(4) 硬質炭素保護膜5の代わりに、ビッカース硬度が800
kg/mm2 であるプラズマ重合膜を用いること以外
は、実施例(1)と同様な方法により、8mmVTR用
薄膜テープを作製した。
【0052】比較例(5) 硬質炭素保護膜5の代わりに、ビッカース硬度が170
0kg/mm2 であるプラズマ重合膜を用いること以外
は、実施例(1)と同様な方法により、8mmVTR用
薄膜テープを作製した。
【0053】比較例(6) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成とを連続的に行なうクリーンルームの環境が25℃
−50%RHであること以外は、実施例(1)と同様な
方法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0054】比較例(7) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成とを連続的に行なうクリーンルームの環境が25℃
−50%RHであること、および湿式塗布法により含フ
ッ素系潤滑剤層7を形成する際に、含フッ素系潤滑剤溶
液24中の水分混入濃度が18000ppmであること以
外は、実施例(1)と同様な方法により、8mmVTR
用薄膜テープを作製した。
【0055】比較例(8) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成とを連続的に行なうクリーンルームの環境が25℃
−50%RHであること、および湿式塗布法により含フ
ッ素系潤滑剤層7を形成する際に、含フッ素系潤滑剤溶
液24中の水分混入濃度が1100ppmであること以外
は、実施例(1)と同様な方法により、8mmVTR用
薄膜テープを作製した。
【0056】比較例(9) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成とを連続的に行なうクリーンルームの環境が25℃
−50%RHであること、およびノズル26から温度およ
び相対湿度を制御した除湿N2 ガスをウェットな状態に
ある含フッ素系潤滑剤層7表面に吹き付ける処理を実施
しないこと以外は、実施例(1)と同様な方法により、
8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0057】比較例(10) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成とを連続的に行なうクリーンルームの環境が25℃
−50%RHであること、およびノズル26からウェット
な状態にある含フッ素系潤滑剤層7表面に吹き付ける除
湿N2 ガスが28℃−19%RHであること以外は、実
施例(1)と同様な方法により、8mmVTR用薄膜テ
ープを作製した。
【0058】比較例(11) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成とを行なうクリーンルームの環境が25℃−50%
RHであること、および前記二つの工程を連続的には実
施せずに、反応活性層6の形成後、常温常湿(23℃−
60%RH)の大気中に2日間放置し、次に湿式塗布法
による含フッ素系潤滑剤層7の形成を行なうこと以外
は、実施例(1)と同様な方法により、8mmVTR用
薄膜テープを作製した。
【0059】(図5)は、本発明の強磁性金属薄膜型磁
気テープBの製造工程において、硬質炭素保護膜5上に
含フッ素系潤滑剤層7を形成するための塗布装置の要部
構成図、および含フッ素系潤滑剤層7にコロナ放電によ
り生成した中性ラジカル種(原子状気体)を照射し、部
分グラフト化含フッ素系潤滑剤層8を形成するための処
理装置の概略図を示したものである。
【0060】図中、9はクリーンルームであり、除湿ガ
ス10を導入することでクリーンルーム内の環境(温度
および相対湿度)の制御を行なっている。
【0061】30は放電室であり、放電室30の内部には、
放電電極31およびアース電極32が設置されている。放電
電極31はコロナ放電発生用電源33と接続されており、コ
ロナ放電発生用電源33としては、周波数1〜100kH
zで最大30kVの電圧が印加可能である。34はモノマ
ーガス等を放電室30内に導入するための処理ガス導入口
である。35は中性ラジカル種吹き出し口であり、コロナ
放電により生成したイオンを除去し、中性ラジカル種
(原子状気体)のみを含フッ素系潤滑剤層7表面に照射
できるようにスリット状に成形されている。
【0062】17は非磁性基板1上に微小突起層2、強磁
性金属薄膜3、バックコート層4および硬質炭素保護膜
5が形成された磁気テープであり、巻き出しロール18か
ら送り出され、ニップロール19を経て矢印a方向に移動
する。
【0063】まず硬質炭素保護膜5上にアプリケーショ
ンロール21に転写した含フッ素系潤滑剤溶液24が塗布さ
れ、含フッ素系潤滑剤層7が形成される。この際、含フ
ッ素系潤滑剤層7の膜厚を均一なものとするためには、
矢印b方向に回転するアプリケーションロール21と反対
のc方向に回転するメタリングロール22との速度比およ
び隙間(ギャップ)を調整する必要がある。そしてアプ
リケーションロール21に過剰に転写した含フッ素系潤滑
剤溶液の一部はメタリングロール22に転写され、ドクタ
ーブレード23により掻き落とされて、含フッ素系潤滑剤
溶液24用のパン25に戻る。なお含フッ素系潤滑剤溶液24
は、含フッ素系潤滑剤をイソプロピルアルコールに溶解
することで調製した。
【0064】次にウェットな状態にある含フッ素系潤滑
剤層7表面にノズル26から温度および相対湿度が制御さ
れた除湿ガス27を吹き付けた後、含フッ素系潤滑剤層7
を付与した磁気テープ17は、乾燥炉28に送りこまれ、ニ
ップロール19を経て矢印a方向に移動する。
【0065】さらに金属ロール36の外周面上に位置する
磁気テープ17の含フッ素系潤滑剤層7にコロナ放電によ
り生成した中性ラジカル種(原子状気体)が照射され、
部分グラフト化含フッ素系潤滑剤層8が形成される。そ
の後、ニップロール19を経て巻き取りロール29に巻きこ
まれる。
【0066】実施例(6) 27℃−25%RHのクリーンルーム環境(除湿ガスと
してN2 ガスを使用することで、温度および相対湿度を
制御。)において、まず10μm厚のポリエチレンテレ
フタレート1上に微小突起層2、強磁性金属薄膜3、バ
ックコート4、ビッカース硬度が2200kg/mm2
の硬質炭素保護膜5を約10nm程度形成させた磁気テ
ープ17を10m/minの走行スピードで搬送させ、磁
気テープ17の硬質炭素保護膜5上に極性基として−CO
OHを導入した含フッ素系潤滑剤層7を上述した湿式塗
布法により形成する。なお含フッ素系潤滑剤溶液24中の
水分混入濃度は870ppmであった。
【0067】次に、ノズル26から温度および相対湿度を
25℃−11%RHに制御した除湿N2 ガスをウェット
な状態にある含フッ素潤滑剤層7表面に吹き付けた後、
乾燥炉28(90℃−15%RHに制御)内を通過させる
ことで乾燥後の含フッ素系潤滑剤層7の膜厚を約3nm
程度とする。
【0068】さらに放電室30内に除湿N2 ガス(23℃
−4%RH、流量:400cc/min)を導入し、放
電電極31に周波数20kHz、600Wの電力を投入す
ることでコロナ放電を発生させ、乾燥炉28内を通過した
直後の磁気テープ17の含フッ素系潤滑剤層7に中性ラジ
カル種を照射(照射時間約6sec程度)し、部分グラ
フト化含フッ素系潤滑剤層8を形成する。
【0069】得られた強磁性金属薄膜型磁気テープB原
反を8mm幅にスリットし、8mmVTR用薄膜テープ
を作製した。
【0070】実施例(7) 含フッ素系潤滑剤層7に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料ガスとして、N2 ガスの代わりに
NH3 ガスを用いること以外は、実施例(6)と同様な
方法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0071】実施例(8) 湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の形成とコロナ
放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)の含
フッ素系潤滑剤層7への照射処理(部分グラフト化含フ
ッ素系潤滑剤層8の形成)とを連続的に行なうクリーン
ルームの環境が27℃−15%RHであること以外は、
実施例(6)と同様な方法により、8mmVTR用薄膜
テープを作製した。
【0072】実施例(9) 含フッ素系潤滑剤層7に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料ガスとして、N2 ガスの代わりに
NH3 ガスを用いること以外は、実施例(8)と同様な
方法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0073】比較例(12) 含フッ素系潤滑剤層7に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料ガスとして、N2 ガスの代わりに
Arガスを用いること以外は、実施例(6)と同様な方
法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0074】比較例(13) 含フッ素系潤滑剤層7に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料ガスとして、N2 ガスの代わりに
H2 ガスを用いること以外は、実施例(6)と同様な方
法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0075】比較例(14) 硬質炭素保護膜5の代わりに、ビッカース硬度が800
kg/mm2 であるプラズマ重合膜を用いること以外
は、実施例(6)と同様な方法により、8mmVTR用
薄膜テープを作製した。
【0076】比較例(15) 硬質炭素保護膜5の代わりに、ビッカース硬度が160
0kg/mm2 であるプラズマ重合膜を用いること以外
は、実施例(6)と同様な方法により、8mmVTR用
薄膜テープを作製した。
【0077】比較例(16) 湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の形成とコロナ
放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)の含
フッ素系潤滑剤層7への照射処理(部分グラフト化含フ
ッ素系潤滑剤層8の形成)とを連続的に行なうクリーン
ルームの環境が27℃−45%RHであること以外は、
実施例(6)と同様な方法により、8mmVTR用薄膜
テープを作製した。
【0078】比較例(17) 湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の形成とコロナ
放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)の含
フッ素系潤滑剤層7への照射処理(部分グラフト化含フ
ッ素系潤滑剤層8の形成)とを連続的に行なうクリーン
ルームの環境が27℃−45%RHであること、および
湿式塗布法により含フッ素系潤滑剤層7を形成する際
に、含フッ素系潤滑剤溶液24中の水分混入濃度が120
00ppmであること以外は、実施例(6)と同様な方
法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0079】比較例(18) 湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の形成とコロナ
放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)の含
フッ素系潤滑剤層7への照射処理(部分グラフト化含フ
ッ素系潤滑剤層8の形成)とを連続的に行なうクリーン
ルームの環境が27℃−45%RHであること、および
湿式塗布法により含フッ素系潤滑剤層7を形成する際
に、含フッ素系潤滑剤溶液24中の水分混入濃度が130
0ppmであること以外は、実施例(6)と同様な方法
により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0080】比較例(19) 湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の形成とコロナ
放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)の含
フッ素系潤滑剤層7への照射処理(部分グラフト化含フ
ッ素系潤滑剤層8の形成)とを連続的に行なうクリーン
ルームの環境が27℃−45%RHであること、および
ノズル26から温度および相対湿度を制御した除湿N2 ガ
スをウェットな状態にある含フッ素系潤滑剤層7表面に
吹き付ける処理を実施しないこと以外は、実施例(6)
と同様な方法により、8mmVTR用薄膜テープを作製
した。
【0081】比較例(20) 湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の形成とコロナ
放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)の含
フッ素系潤滑剤層7への照射処理(部分グラフト化含フ
ッ素系潤滑剤層8の形成)とを連続的に行なうクリーン
ルームの環境が27℃−45%RHであること、および
ノズル26からウェットな状態にある含フッ素系潤滑剤層
7表面に吹き付ける除湿N2 ガスが25℃−21%RH
であること以外は、実施例(6)と同様な方法により、
8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0082】比較例(21) 湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の形成とコロナ
放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)の含
フッ素系潤滑剤層7への照射処理(部分グラフト化含フ
ッ素系潤滑剤層8の形成)とを行なうクリーンルームの
環境が27℃−45%RHであること、および上記二つ
の工程を連続的には実施せずに、含フッ素系潤滑剤層7
の形成後、常温常湿(23℃−60%RH)の大気中に
7日間放置し、次にコロナ放電により生成した中性ラジ
カル種(原子状気体)の含フッ素系潤滑剤層7への照射
処理(部分グラフト化含フッ素系潤滑剤層8の形成)を
行なうこと以外は、実施例(6)と同様な方法により、
8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0083】(図6)は、本発明の強磁性金属薄膜型磁
気テープCの製造工程において、硬質炭素保護膜5表面
にコロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)を照射し、反応活性層6を形成するための処理装置
の概略図、および含フッ素系潤滑剤層7を形成するため
の塗布装置の要部構成図、および含フッ素系潤滑剤層7
にコロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)を照射し、部分グラフト化含フッ素系潤滑剤層8を
形成するための処理装置の概略図を示したものである。
【0084】この装置は、図5に示した装置に、さらに
図4における、硬質炭素保護膜5表面に中性ラジカル種
(原子状気体)を照射するための機構を組み合わせたも
のに相当している。
【0085】非磁性基板1上に微小突起層2、強磁性金
属薄膜3、バックコート層4および硬質炭素保護膜5が
形成された磁気テープ17は、巻き出しロール18から送り
出され、ニップロール19を経て矢印a方向に移動する。
【0086】まず、バックアップロール20の外周面上に
位置する磁気テープ17の硬質炭素保護膜5表面にコロナ
放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)が照
射され、反応活性層6が形成される。
【0087】次に反応活性層6上にアプリケーションロ
ール21に転写した含フッ素系潤滑剤溶液24が塗布さ
れ、含フッ素系潤滑剤層7が形成される。
【0088】次いでウェットな状態にある含フッ素系潤
滑剤層7表面にノズル26から温度および相対湿度が制御
された除湿ガス27を吹き付けた後、反応活性層6および
含フッ素系潤滑剤層7を付与した磁気テープ17は、乾燥
炉28に送りこまれる。
【0089】乾燥炉28を出た磁気テープ17は、金属ロー
ル36の外周面上において、含フッ素系潤滑剤層7にコロ
ナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)が
照射され、部分グラフト化含フッ素系潤滑剤層8が形成
される。その後、ニップロール19を経て巻き取りロール
29に巻きこまれる。
【0090】実施例(10)22℃−24%RHのクリ
ーンルーム環境(除湿ガスとしてN2ガスを使用するこ
とで、温度および相対湿度を制御。)において、まず放
電室11内にアリルアミンを抵抗加熱法により導入する。
この際、キャリアガスとして除湿N2 ガス(23℃−4
%RH)を用い、その流量を200cc/minとし
た。
【0091】次に、10μm厚のポリエチレンテレフタ
レート1上に微小突起層2、強磁性金属薄膜3、バック
コート4、ビッカース硬度が2200kg/mm2 の硬
質炭素保護膜5を約10nm程度形成させた磁気テープ
17を10m/minの走行スピードで搬送させるととも
に、放電電極12に周波数30kHz、800Wの電力を
投入することでコロナ放電を発生させ、磁気テープ17の
硬質炭素保護膜5表面に中性ラジカル種を照射(照射時
間約3sec程度)し、反応活性層6を形成する。
【0092】その後連続的に(反応活性層6形成後直ち
に)、水分混入濃度が670ppmであり、極性基とし
て−COOHを導入した含フッ素系潤滑剤溶液24を用
い、湿式塗布法により含フッ素系潤滑剤層7を形成す
る。
【0093】さらに、ノズル26から温度および相対湿度
を28℃−4%RHに制御した除湿N2ガスをウェット
な状態にある含フッ素系潤滑剤層7表面に吹き付けた
後、乾燥炉28(90℃−18%RHに制御)内を通過さ
せることで乾燥後の含フッ素系潤滑剤層7の膜厚を約3
nm程度とする。
【0094】次に放電室30内に除湿N2 ガス(23℃
−4%RH、流量:400cc/min)を導入し、放
電電極31に周波数20kHz、600Wの電力を投入す
ることでコロナ放電を発生させ、乾燥炉28を通過した直
後の磁気テープ17の含フッ素系潤滑剤層7に中性ラジカ
ル種を照射(照射時間約6sec程度)し、部分グラフ
ト化含フッ素系潤滑剤層8を形成する。
【0095】得られた強磁性金属薄膜型磁気テープC原
反を8mm幅にスリットし、8mmVTR用薄膜テープ
を作製した。
【0096】実施例(11) 硬質炭素保護膜5表面に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料(モノマー)として、アリルアミ
ンの代わりにテトラメチルジシロキサンを用いる以外
は、実施例(10)と同様な方法により、8mmVTR
用薄膜テープを作製した。
【0097】実施例(12) 含フッ素系潤滑剤層7に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料ガスとして、N2 ガスの代わりに
NH3 ガスを用いること以外は、実施例(10)と同様
な方法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0098】実施例(13) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成とコロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子
状気体)の含フッ素系潤滑剤層7への照射処理(部分グ
ラフト化含フッ素系潤滑剤層8の形成)とを連続的に行
なうクリーンルームの環境が28℃−17%RHである
こと以外は、実施例(10)と同様な方法により、8m
mVTR用薄膜テープを作成した。
【0099】実施例(14) 硬質炭素保護膜5表面に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料(モノマー)として、アリルアミ
ンの代わりにテトラメチル錫を用いること、および含フ
ッ素系潤滑剤層7に照射する中性ラジカル種(原子状気
体)生成用の原料ガスとして、N2 ガスの代わりにNH
3ガスを用いること以外は、実施例(13)と同様な方
法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0100】比較例(22) 硬質炭素保護膜5表面に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料(モノマー)として、アリルアミ
ンの代わりにベンゼンを用いること以外は、実施例(1
0)と同様な方法により、8mmVTR用薄膜テープを
作製した。
【0101】比較例(23) 含フッ素系潤滑剤層7に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料ガスとして、N2 ガスの代わりに
Arガスを用いること以外は、実施例(10)と同様な
方法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0102】比較例(24) 硬質炭素保護膜5表面に照射する中性ラジカル種(原子
状気体)生成用の原料(モノマー)として、アリルアミ
ンの代わりにベンゼンを用いること、および含フッ素系
潤滑剤層7に照射する中性ラジカル種(原子状気体)生
成用の原料ガスとして、N2 ガスの代わりにArガスを
用いること以外は、実施例(10)と同様な方法によ
り、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0103】比較例(25) 硬質炭素保護膜5の代わりに、ビッカース硬度が170
0kg/mm2 であるプラズマ重合膜を用いること以外
は、実施例(10)と同様な方法により、8mmVTR
用薄膜テープを作製した。
【0104】比較例(26) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成とコロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子
状気体)の含フッ素系潤滑剤層7への照射処理(部分グ
ラフト化含フッ素系潤滑剤層8の形成)とを連続的に行
なうクリーンルームの環境が22℃−43%RHである
こと以外は、実施例(10)と同様な方法により、8m
mVTR用薄膜テープを作成した。
【0105】比較例(27) 湿式塗布法により含フッ素系潤滑剤層7を形成する際
に、含フッ素系潤滑剤溶液24中の水分混入濃度が135
0ppmであること以外は、実施例(10)と同様な方
法により、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0106】比較例(28) ノズル26から温度および相対湿度を制御した除湿N2 ガ
スをウェットな状態にある含フッ素系潤滑剤層7表面に
吹き付ける処理を実施しないこと以外は、実施例(1
0)と同様な方法により、8mmVTR用薄膜テープを
作製した。
【0107】比較例(29) ノズル26からウェットな状態にある含フッ素系潤滑剤層
7表面に吹き付ける除湿N2 ガスが29℃−17%RH
であること以外は、実施例(10)と同様な方法によ
り、8mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0108】比較例(30) コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の硬質炭素保護膜5表面への照射処理(反応活性層
6の形成)と、湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7
の形成と、コロナ放電により生成した中性ラジカル種
(原子状気体)の含フッ素系潤滑剤層7への照射処理
(部分グラフト化含フッ素系潤滑剤層8の形成)との三
つの工程を連続的には実施せずに、反応活性層6の形成
後、常温常湿(23℃−60%RH)の大気中に2日間
放置し、次に湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層7の
形成を行なった後、再び常温常湿の大気中に7日間放置
し、さらにコロナ放電により生成した中性ラジカル種
(原子状気体)の含フッ素系潤滑剤層7への照射処理
(部分グラフト化含フッ素系潤滑剤層8の形成)を行な
うこと以外は、実施例(10)と同様な方法により、8
mmVTR用薄膜テープを作製した。
【0109】なお、各実施例および比較例における含フ
ッ素系潤滑剤溶液24中の水分混入濃度は、潤滑油用水分
気化付属装置を用いたカールフィッシャー電量滴定法に
より測定した結果を示したものである。
【0110】また、各実施例および比較例における硬質
炭素保護膜5のビッカース硬度は、磁気テープの代わり
に、Siウエハー上にプラズマCVD法等で硬質炭素保
護膜を膜厚約1〜3μm程度形成させた試料を数種類作
成し、微小硬度計(マイクロ硬度計)を用いて上記試料
のビッカース硬度を測定するとともに、その膜厚依存性
について検討した後、外挿法により膜厚約10nmに相
当する硬質炭素保護膜5のビッカース硬度を算出した結
果を示したものである。なお、上記試料での硬質炭素保
護膜の膜厚は、エリプソメターにより測定した値を採用
した。
【0111】以上の実施例および比較例によって得られ
た各8mmVTR用薄膜テープについて以下の測定を行
なった。
【0112】(1)スチルライフ スチルライフ測定用に改造した8mmVTRを用い、2
3℃−10%RHの環境下20g荷重の条件で、予め録
画しておいた静止画をスチルモードで再生し、その映像
信号が6dB落ち込むまでの時間を示した。なお、測定
は最長180分間で打ち切った。
【0113】(2)出力低下 5℃−80%RHの環境下、約60分長の薄膜テープに
映像信号を記録し、再生を100パス行なう(繰り返し
走行による耐久試験)。出力低下の定義としては、再生
1パス目の出力を基準(0dB)とし、100パス再生
中に最も出力が低下した値(最低出力値)をデシベル表
示した。
【0114】(3)ヘッド目づまり 上記繰り返し走行による耐久試験において、6dB以上
の再生出力の低下が継続した時間をヘッド目づまり時間
とした。
【0115】(4)耐候性 耐候性試験としては、約30日間に渡って40℃−90
%RHの環境下に薄膜テープを放置し、塗布ムラ、錆、
ふくれ、結晶、剥離等の発生状態を顕微鏡で観察した。
【0116】(5)摩擦係数μk 直径4mm、表面粗さ0.2Sのステンレス円柱(SU
S420J2)に薄膜テープが90℃に渡って接触する
ようにし、ステンレス円柱に対して、入側張力を30
g、テープ走行速度を0.5mm/secに設定した時
の出側張力Xgを測定し、次式 μk=2/π・ln(X/30) から摩擦係数を求めた。なお、測定環境は23℃−60
%RHであり、摩擦係数としては、走行30パス目の測
定値を採用することにした。
【0117】(6)ドロップアウト(D.O.) D.O.測定用に改造した8mmVTRを用い、23℃
−60%RHの環境下で、映像信号を記録した約60分
長の薄膜テープについて、15μsにわたって16dB
以上の出力低下が発生する1分間当たりの個数を測定し
た。
【0118】図7の表には、強磁性金属薄膜型磁気テー
プAに関して、各実施例および比較例で作製した8mm
VTR用薄膜テープの評価結果を示している。
【0119】図7の表から明らかなように、実施例
(1)〜(5)は、硬質炭素保護膜表面にコロナ放電に
より生成した中性ラジカル種(原子状気体)が照射され
ることにより、硬質炭素保護膜表面が清浄化されると共
に種々の官能基(反応性基)が硬質炭素保護膜表面に導
入されるため、潤滑剤分子中の極性基との化学的親和力
が増大し、硬質炭素保護膜上の潤滑剤の配向性および接
着性が向上し、その結果、スチルライフの著しい向上、
出力低下およびヘッド目づまりの大幅な改善、走行安定
性の確保を同時に達成することができた。
【0120】さらに、実施例(3)〜(5)では、コロ
ナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)の
硬質炭素保護膜表面への照射処理と湿式塗布法による含
フッ素系潤滑剤層の形成とを、20%RH以下の低湿度
の除湿ガス雰囲気中で行なっているため、硬質炭素保護
膜表面に導入された官能基(反応性基)への水分の吸
着、含フッ素系潤滑剤溶液中への水分の混入等に対する
防止効果が上がり、潤滑剤の塗布ムラが発生せず、耐食
性の飛躍的な向上およびD.O.の低減化を達成するこ
とができた。
【0121】比較例(1)では、コロナ放電により生成
した中性ラジカル種(原子状気体)の硬質炭素保護膜表
面への照射処理を実施していないために、硬質炭素保護
膜と含フッ素系潤滑剤層との接着性が改善されず、スチ
ルライフの著しい減少、出力低下の大幅な悪化、長時間
のヘッド目づまりの発生等を招いている。また、硬質炭
素保護膜表面に照射する中性ラジカル種(原子状気体)
生成用の原料(モノマー)として、ベンゼンまたはスチ
レンを使用した比較例(2)および比較例(3)におい
ても、硬質炭素保護膜と含フッ素系潤滑剤層との接着性
の改善は見られない。
【0122】比較例(4)および比較例(5)では、保
護膜のビッカース硬度が低いため、スチルライフが短く
なっている。保護膜のビッカース硬度は、2000Kg
/mm2以上あることが望ましい。
【0123】比較例(7)では、高湿環境下で塗布・乾
燥工程を行ない、しかも含フッ素系潤滑剤溶液中に大量
の水分が混入しているため、硬質炭素保護膜表面上での
潤滑剤分子の配向性が悪化し、塗布ムラを生じ、その結
果、長時間のヘッド目づまりの発生およびD.O.が増
加する結果となった。また、耐食性についても、含フッ
素系潤滑剤層中に混入している水分等が硬質炭素保護膜
と磁性層との界面、磁性層とベースフィルムとの界面に
容易に侵入し、錆、ふくれが発生するといった問題も生
じた。潤滑剤溶液中の水分混入濃度は、1000ppm
以下に抑えることが望ましい。
【0124】比較例(11)では、硬質炭素保護膜表面
に導入された官能基(反応性基)に大量の水分等が吸着
するため、硬質炭素保護膜と含フッ素系潤滑剤層との接
着性が改善されず、スチルライフ、出力低下、ヘッド目
づまり等が悪化する傾向を示した。
【0125】また、図8の表には、強磁性金属薄膜型磁
気テープBに関して、各実施例および比較例で作製した
8mmVTR用薄膜テープの評価結果を示している。
【0126】図8の表から明らかなように、実施例
(6)〜(9)は、スチルライフの著しい向上、出力低
下およびヘッド目づまりの大幅な改善、走行安定性の確
保を同時に達成している。この実施例(6)〜(9)で
は、硬質炭素保護膜上の含フッ素系潤滑剤層に対して、
コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)が照射される結果、潤滑剤分子中にラジカルが生成
し、このラジカルが硬質炭素保護膜表面上で反応し、硬
質炭素保護膜をマトリックス(幹)とし潤滑剤の骨格成
分をグラフト(枝)とするグラフト共重合体が形成され
る。そのため常に一定量の含フッ素系潤滑剤が硬質炭素
保護膜表面上に存在する状態となり、これが前記各特性
の向上をもたらしている。
【0127】さらに、実施例(8)および実施例(9)
では、湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層の形成と、
コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状気
体)の含フッ素系潤滑剤層への照射処理とを、20%R
H以下の低湿度の除湿ガス雰囲気中で行なっているた
め、含フッ素系潤滑剤溶液中への水分の混入等に対する
防止効果が上がり、潤滑剤の塗布ムラが発生せず、耐食
性の飛躍的な向上およびD.O.の低減化が達成できて
いる。
【0128】比較例(12)および比較例(13)で
は、含フッ素系潤滑剤層に照射する中性ラジカル種(原
子状気体)生成用の原料ガスが非反応性タイプのガスで
あるため、グラフト共重合体が形成されず、しかもエッ
チング効果が大きな中性ラジカル種が生成されるため
に、スチルライフの著しい減少、出力低下の大幅な悪
化、長時間のヘッド目づまりの発生、耐候性の劣化等を
招く結果となった。
【0129】比較例(14)および比較例(15)で
は、保護膜のビッカース硬度が低いため、スチルライフ
が短くなっている。保護膜のビッカース硬度は2000
Kg/mm2以上あることが望ましい。
【0130】比較例(17)では、高湿環境下で塗布・
乾燥工程を行ない、しかも含フッ素系潤滑剤溶液中に大
量の水分が混入しているため、硬質炭素保護膜表面上で
の潤滑剤分子の配向性が悪化し、塗布ムラを生じ、その
結果、長時間のヘッド目づまりの発生およびD.O.が
増加する結果となった。また耐食性についても、含フッ
素系潤滑剤層中に混入している水分等が硬質炭素保護膜
と磁性層との界面、磁性層とベースフィルムとの界面に
容易に侵入し、錆、ふくれが発生するといった問題も生
じた。潤滑剤溶液中の水分混入濃度は、1000ppm
以下に抑えることが望ましい。
【0131】比較例(21)では、含フッ素系潤滑剤層
の表面に大量の水分等が吸着するため、潤滑剤分子中で
のラジカルの生成が抑制される、つまりグラフト共重合
体の形成が困難となるため、スチルライフ、出力低下、
ヘッド目づまり等が悪化する傾向を示した。
【0132】また、図9の表には、強磁性金属薄膜型磁
気テープCに関して、各実施例および比較例で作製した
8mmVTR用薄膜テープの評価結果を示している。
【0133】図9の表から明らかなように、実施例(1
0)〜(14)は、硬質炭素保護膜表面にコロナ放電に
より生成した中性ラジカル種(原子状気体)が照射され
ることにより、硬質炭素保護膜表面が清浄化されるとと
もに、種々の官能基(反応性基)が硬質炭素保護膜表面
に導入されるため、潤滑剤分子中の極性基との化学的親
和力が増大し、硬質炭素保護膜上の潤滑剤の配向性およ
び接着性が向上する。さらに含フッ素系潤滑剤層に対し
て、コロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子状
気体)が照射されることにより、潤滑剤分子中にラジカ
ルが生成し、このラジカルが硬質炭素保護膜表面上で反
応し、硬質炭素保護膜をマトリックス(幹)とし潤滑剤
の骨格成分をグラフト(枝)とするグラフト共重合体が
形成されるため、常に一定量の含フッ素系潤滑剤が硬質
炭素保護膜表面上に存在する状態になる。これらの二つ
の効果により、スチルライフの著しい向上、出力低下お
よびヘッド目づまりの大幅な改善、走行安定性の確保を
同時に達成することができた。
【0134】さらに、実施例(13)および実施例(1
4)では、コロナ放電により生成した中性ラジカル種
(原子状気体)の硬質炭素保護膜表面へに照射処理と、
湿式塗布法による含フッ素系潤滑剤層の形成と、中性ラ
ジカル種(原子状気体)の含フッ素系潤滑剤層への照射
処理とを、20%以下の低湿度の除湿ガス雰囲気中で行
なっているため、硬質炭素保護膜表面に導入された官能
基(反応性基)への水分の吸着、含フッ素系潤滑剤溶液
中への水分の混入等に対する防止効果が上がり、潤滑剤
の塗布ムラが発生せず、耐食性の飛躍的な向上および
D.O.の低減化が達成できた。
【0135】比較例(22)では、含フッ素系潤滑剤層
中にグラフト共重合体が一部形成されるものの、硬質炭
素保護膜表面に照射する中性ラジカル種(原子状気体)
生成用の原料(モノマー)が硬質炭素保護膜に官能基を
導入する元素を含有していないために、硬質炭素保護膜
と含フッ素系潤滑剤層中のグラフト化していない潤滑剤
分子との接着性が改善されず、そのため、実施例(1
0)に比べて、スチルライフ、出力低下、ヘッド目づま
り等を大幅に改善することができなかった。
【0136】比較例(23)では、硬質炭素保護膜表面
に導入された種々の官能基(反応性基)と潤滑剤分子中
の極性基との化学的親和力が増大するものの、含フッ素
系潤滑剤層に照射する中性ラジカル種(原子状気体)生
成用の原料ガスが非反応性タイプのガスであるため、グ
ラフト共重合体が形成されず、しかもエッチング効果が
大きな中性ラジカル種が生成されるために、実施例(1
0)に比べて、スチルライフ、出力低下、ヘッド目づま
り、耐候性等を大幅に改善することはできなかった。
【0137】また、比較例(24)では、硬質炭素保護
膜表面に照射する中性ラジカル種(原子状気体)生成用
の原料(モノマー)が硬質炭素保護膜に官能基を導入す
る元素を含有していないため、硬質炭素保護膜と含フッ
素系潤滑剤層との接着性が改善されず、また、含フッ素
系潤滑剤層に照射する中性ラジカル種(原子状気体)生
成用の原料ガスが非反応性タイプのガスであるために、
グラフト共重合体が形成されず、しかもエッチング効果
が大きな中性ラジカル種が生成されるために、スチルラ
イフの著しい減少、出力低下の大幅な悪化、長時間のヘ
ッド目づまりの発生、耐候性の劣化等を招いている。
【0138】比較例(25)では、保護膜のビッカース
硬度が低いため、スチルライフが短くなっている。保護
膜のビッカース硬度は2000Kg/mm2以上あるこ
とが望ましい。
【0139】比較例(30)では、硬質炭素保護膜表面
に導入された官能基(反応性基)に大量の水分等が吸着
するため、硬質炭素保護膜と含フッ素系潤滑剤層との接
着性が改善されない。また、含フッ素系潤滑剤層表面に
大量の水分等が吸着するために、潤滑剤分子中でのラジ
カルの生成が抑制され、グラフト共重合体の形成が困難
になる。こうしたことから、スチルライフ、出力低下、
ヘッド目づまり等が悪化する傾向を示した。潤滑剤溶液
中の水分混入濃度は、1000ppm以下に抑えること
が望ましい。
【0140】なお、上記実施例では、8mmVTR用薄
膜テープのみについて説明したが、これに限定されるも
のではなく、他の強磁性金属薄膜型磁気テープ、磁気デ
ィスク等の磁気記録媒体についても同様に適用できる。
【0141】また、上記実施例では、硬質炭素保護膜表
面に照射する中性ラジカル種(原子状気体)生成用の原
料(モノマー)として、アリルアミン、テトラメチルジ
シロキサン、テトラメチル錫またはヘキサメチルジシラ
ザンを使用する場合について示したが、これらに限定さ
れるものではなく、N、P、O、S、F、B、Siおよ
び金属から選ばれた少なくとも一つの元素を分子中に含
有するモノマーガスであれば、同様に適用できる。ま
た、上記モノマーガスと混合するキャリアガスには、N
2ガス以外に、O2ガス、CO2ガス、NH3ガスを適応す
ることが可能である。
【0142】また、上記実施例では、極性基として−C
OOHを導入した含フッ素系潤滑剤について示している
が、−OH、−SH、−NH2、=NH、−NCO、−
CONH2、−CONHR、−CONR2、−COOR、
=PR、=PRO、=PRS、−OPO(OH)2、−
OPO(OR)2、−SO3M(ただし、Rは炭素数1〜
22の炭化水素基、Mは水素、アルカリ金属またはアル
カリ土類金属)から選ばれた少なくとも一つの極性基を
有する含フッ素系潤滑剤であれば同様に適用可能であ
る。
【0143】また、上記実施例では、含フッ素系潤滑剤
層に照射する中性ラジカル種(原子状気体)生成用の原
料ガスとして、N2ガスまたはNH3ガスを使用する場合
について示しているが、これに限定されるものではな
く、O2、CF4等の反応性ガスであれば同様に適用でき
る。
【0144】さらに、上記実施例では、クリーンルーム
内の環境(温度および相対湿度)を制御するために導入
する除湿ガスとして、N2ガスを用いる場合について示
しているが、O2ガスを用いることも可能である。
【0145】なお、含フッ素系潤滑剤層の湿式塗布によ
る形成には、実施例で示したリバースロールコーター以
外の塗布装置を用いることも可能である。
【0146】
【発明の効果】以上の実施例の説明から明らかなよう
に、本発明の磁気記録媒体は、保護膜表面にコロナ放電
により生成した中性ラジカル種(原子状気体)を照射し
た後、潤滑剤層を形成する構成により、保護膜表面に導
入された種々の官能基(反応性基)と潤滑剤分子中の極
性基との化学的親和力が増大し、保護膜と潤滑剤層との
接着性が向上する。
【0147】また、保護膜上に潤滑剤層を形成した後、
潤滑剤層にコロナ放電により生成した中性ラジカル種
(原子状気体)を照射する構成により、潤滑剤分子中に
ラジカルが生成し、このラジカルが保護膜表面上で反応
し、保護膜をマトリックス(幹)とし潤滑剤の骨格成分
をグラフト(枝)とするグラフト共重合体が形成される
ため、常に一定量の潤滑剤が保護膜表面上に存在するこ
とになる。
【0148】以上の二つの処理効果を個々にあるいは組
み合わせて用いることにより、磁性層上に形成された保
護膜と潤滑剤層との相乗効果を充分に発揮させることが
できるため、磁気記録媒体の走行安定性および耐久性を
飛躍的に向上させることが可能となる。
【0149】さらに、コロナ放電により生成した中性ラ
ジカル種(原子状気体)の保護膜表面への照射処理と、
湿式塗布法による潤滑剤層の形成と、中性ラジカル種
(原子状気体)の潤滑剤層への照射処理とを除湿ガス雰
囲気中で行なうことにより、保護膜表面に導入された官
能基(反応性基)への水分の吸着や潤滑剤溶液中への水
分の混入等を防止することができるため、D.O.(ド
ロップアウト)の低減化および耐食性の著しい向上を達
成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例により製造される薄膜磁気媒体
Aの構成を示す拡大断面図、
【図2】本発明の実施例により製造される薄膜磁気媒体
Bの構成を示す拡大断面図、
【図3】本発明の実施例により製造される薄膜磁気媒体
Cの構成を示す拡大断面図、
【図4】前記薄膜磁気媒体Aの製造に使用する製造装置
の構成図、
【図5】前記薄膜磁気媒体Bの製造に使用する製造装置
の構成図、
【図6】前記薄膜磁気媒体Cの製造に使用する製造装置
の構成図、
【図7】各実施例および比較例により製造した前記薄膜
磁気媒体Aの特性を示す表、
【図8】各実施例および比較例により製造した前記薄膜
磁気媒体Bの特性を示す表、
【図9】各実施例および比較例により製造した前記薄膜
磁気媒体Cの特性を示す表である。
【符号の説明】
1 非磁性基板 2 微小突起層 3 強磁性金属薄膜 4 バックコート層 5 硬質炭素保護膜 6 反応活性層 7 含フッ素系潤滑剤層 8 部分グラフト化含フッ素系潤滑剤層 9 クリーンルーム 10 除湿ガス 11、30 放電室 12、31 放電電極 13、32 アース電極 14、33 コロナ放電発生用電源 15、34 処理ガス導入口 16、35 中性ラジカル種吹き出し口 17 磁気テープ 18 巻き出しロール 19 ニップロール 20 バックアップロール 21 アプリケーションロール 22 メタリングロール 23 ドクターブレード 24 含フッ素系潤滑剤溶液 25 パン 26 ノズル 27 除湿ガス 28 乾燥炉 29 巻き取りロール 36 金属ロール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小田桐 優 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 桑原 賢次 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 関 博司 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 大地 幸和 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成
    し、前記強磁性金属薄膜上に保護膜を形成し、さらに前
    記保護膜にコロナ放電により生成した中性ラジカル種
    (原子状気体)を照射した後、潤滑剤層を形成すること
    を特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  2. 【請求項2】 非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成
    し、前記強磁性金属薄膜上に保護膜を形成し、前記保護
    膜上に潤滑剤層を形成し、さらに前記潤滑剤層にコロナ
    放電により生成した中性ラジカル種(原子状気体)を照
    射することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  3. 【請求項3】 非磁性基板上に強磁性金属薄膜を形成
    し、前記強磁性金属薄膜上に保護膜を形成し、前記保護
    膜上にコロナ放電により生成した中性ラジカル種(原子
    状気体)を照射した後、潤滑剤層を形成し、さらに前記
    潤滑剤層にコロナ放電により生成した中性ラジカル種
    (原子状気体)を照射することを特徴とする磁気記録媒
    体の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記保護膜が非晶質炭素の連続膜から成
    り、且つ前記保護膜のビッカース硬度が2000kg/
    mm2以上であることを特徴とする請求項1、2または
    3に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記保護膜に照射する中性ラジカル種
    (原子状気体)を、N、P、O、S、F、B、Siおよ
    び金属から選ばれた少なくとも一つの元素を分子中に含
    有するモノマーガス、または前記モノマーガスと、N2
    ガス、O2 ガス、CO2 ガスもしくはNH3 ガスとの混
    合ガスから生成することを特徴とする請求項1または3
    に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記潤滑剤層に照射する中性ラジカル種
    (原子状気体)を、N2 、O2 、NH3 、CF4 等の反
    応性ガスから生成することを特徴とする請求項2または
    3記載の磁気記録媒体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記潤滑剤層を、−COOH、−OH、
    −SH、−NH2 、=NH、−NCO、−CONH2
    −CONHR、−CONR2 、−COOR、=PR、=
    PRO、=PRS、−OPO(OH)2 、−OPO(O
    R)2 および−SO3 M(ただし、Rは炭素数1〜22
    の炭化水素基、Mは水素、アルカリ金属またはアルカリ
    土類金属)から選ばれた少なくとも一つの極性基を有す
    る含フッ素系潤滑剤を用いて形成することを特徴とする
    請求項1、2または3に記載の磁気記録媒体の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 前記保護膜および/または前記潤滑剤層
    への中性ラジカル種(原子状気体)の照射処理と、前記
    潤滑剤層の湿式塗布法による形成とを、相対湿度20%
    以下の除湿ガス雰囲気中で連続的に行なうことを特徴と
    する請求項1、2または3に記載の磁気記録媒体の製造
    方法。
  9. 【請求項9】 前記除湿ガスとして、N2 ガスまたはO
    2 ガスを用いることを特徴とする請求項8に記載の磁気
    記録媒体の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記保護膜への中性ラジカル種(原子
    状気体)の照射処理と、前記潤滑剤層の湿式塗布法によ
    る形成とを一つのローラー上で行なうことを特徴とする
    請求項8に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記潤滑剤層を形成するための潤滑剤
    溶液中の水分混入濃度を1000ppm以下に設定する
    ことを特徴とする請求項8に記載の磁気記録媒体の製造
    方法。
  12. 【請求項12】 前記潤滑剤層の形成に当たって、前記
    潤滑剤溶液を塗布した直後に、相対湿度15%以下の除
    湿ガスを塗布面に吹き付けて乾燥させることを特徴とす
    る請求項10に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9238350B2 (en) 2011-06-06 2016-01-19 Taiyo Yuden Chemical Technology Co., Ltd. Method for affixing water-and-oil-repellent layer to amorphous carbon film layer, and laminated body formed by said method
US11157717B2 (en) * 2018-07-10 2021-10-26 Next Biometrics Group Asa Thermally conductive and protective coating for electronic device

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