JPH06212571A - 高強力布帛およびその製造方法 - Google Patents

高強力布帛およびその製造方法

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JPH06212571A
JPH06212571A JP2082293A JP2082293A JPH06212571A JP H06212571 A JPH06212571 A JP H06212571A JP 2082293 A JP2082293 A JP 2082293A JP 2082293 A JP2082293 A JP 2082293A JP H06212571 A JPH06212571 A JP H06212571A
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fabric
strength
silicone rubber
cloth
rubbing
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JP2082293A
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Sumio Hishinuma
澄男 菱沼
Masaru Masaki
勝 正木
Takashi Shiotani
隆 塩谷
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 元来強力が低い布帛を、その布帛本来の風合
などを損なわせることなく高強力にし、しかもその強力
保持性の大きい布帛及びその製造方法を提供すること。 【構成】 布帛の表層部分における繊維間にシリコーン
系ゴムが微塊状に圧着され、かつその圧着量が前記布帛
に対して0.01〜3.0重量%である高強力布帛。ま
た、布帛とシリコーン系ゴムとを相互に圧接させて相対
移動させ、前記シリコーン系ゴムを前記布帛の表層部分
の繊維間に擦り込むようにする高強力布帛の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は強力の高い布帛及びその
製造方法に関し、さらに詳しくは、元来強力が弱い衣料
用の織物、編物などを、その風合などを損なうことなく
引裂強力や破裂強力等の強力を向上した布帛及びその製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、衣料分野における機能性の拡大の
一環として、例えば、しなやかさを追及した単糸繊度が
1デニール以下の極細繊維品、ソフトな風合に加工され
たポリエステルのアルカリ減量加工品、ピーチスキンタ
ッチと呼ばれる起毛品、毛玉がでにくくなるように改質
された坑ピリング素材品、撥水機能を付与したコーティ
ング加工品などが提案されている。
【0003】しかしながら、これら高機能性を付与され
た布帛に共通する欠点は、いずれも強力が弱いというこ
とであった。その原因は、極細繊維品では、単糸繊度が
細すぎる故に十分に延伸することができずに繊維の配向
性が不十分となり、ポリエステルの減量加工品では、ア
ルカリの加水分解で繊維が細くなったり、或いは非晶領
域の分子鎖がアルカリで切断されて脆弱化したりしてお
り、坑ピル素材品では、例えばポリエステルでは、イソ
フタル酸等の第3成分を共重合して改質し、原糸強度レ
ベルを低下させているからである。また、薄地にポリウ
レタン樹脂等を片面に被膜形成させたコーティング加工
品では、樹脂が布帛の全面に密着しているため組織の自
由度が失われ、いったん裂け目が入ると強力が著しく低
下してしまうからである。従来、これら高機能品に対す
る強力向上対策は種々提案されているが、いずれも改善
効果が小さかったり、風合などの本来の機能を低下させ
るなどの問題があり、実用上十分でない欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、元来
強力が低い布帛を、その布帛本来の風合などを損なわせ
ることなく高強力にし、しかもその強力保持性の大きい
布帛、及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を解決する本発
明の高強力布帛は、布帛の表層部分における繊維間にシ
リコーン系ゴムが微塊状に圧着され、かつその圧着量が
前記布帛に対して0.01〜3.0重量%であることを
特徴とするものである。また、この高強力布帛を製造す
る方法は、布帛とシリコーン系ゴムとを相互に圧接させ
て相対移動させ、前記シリコーン系ゴムを前記布帛の表
層部分の繊維間に擦り込むことを特徴とするものであ
る。
【0006】本発明において、布帛の構成繊維の中に微
塊状に擦り込まれたシリコーン系ゴムは、その粘着特性
と若干の平滑性とが、布帛の引裂応力に対して大きな抵
抗力を発揮するため布帛強力を向上させ、耐久性の大き
な高強力布帛にする。このようにして布帛に擦りこまれ
るシリコーン系ゴムの量は極く微量であり、かつ布帛の
表層部分に均一に薄く圧着し、裏面(未処理面)には浸
透していないため、布帛本来の風合、外観、機能性等を
損なうことはない。本発明に使用されるシリコーン系ゴ
ムとは、分子中にポリシロキサンで構成されるものであ
れば、限定するものではないが、具体的には下記の〔化
1〕〜〔化4〕に示す化学構造のものを用いることが好
ましい。
【0007】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0008】また、本発明において最も好ましくは、上
記シリコーン系ゴムを100%用いることがよいが、少
量であれば、シリコーンゴムにフッ素ゴム、ウレタンゴ
ム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン
アクリルゴム、多硫化ゴム、クロロスルホン化ポリエチ
レンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロ
ロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチ
レンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴ
ム、天然ゴムなどを配合、混合、組み合わせるようにし
ても差し支えない。
【0009】また、上記シリコーン系ゴムには、ゴムの
強度を制御する充填剤、劣化防止剤、架橋反応を行なう
加硫剤やその促進剤、加工上必要な助剤、軟化剤、可塑
剤などを適宜配合するようにしてもよい。かかるシリコ
ーン系ゴムは、布帛表層部に効率よく擦りこませるた
め、ゴムの硬度として低目のものを用いることが好まし
く、その目安としてはショア硬度で40〜80のものが
好ましい。また、ゴム材の色は無色のものが好ましく適
用される。
【0010】他方、本発明において布帛とは、織物、編
物、コーティング品、立毛品、不織布などをいい、特に
限定するものではない。特に、織物、編物、コーティン
グ品に対して行う場合に効果を顕著にすることができ
る。布帛の目付としては、200g/m2 以下の低目付
の薄地及び/又は構成糸の打ち込み数が240本/イン
チ以下の低密度品に対する場合に効果が大きい。布帛を
構成する繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド
繊維、アクリル繊維が好ましい。特に、機能性の付与処
理において強力が低下するポリエステル、ポリアミド、
アクリルのマルチフィラメント糸およびスパン糸が好ま
しい。これら繊維の単糸繊度としては5.0デニール以
下が好ましく、さらに好ましくは0.05〜2.0デニ
ールの範囲がよい。単糸繊度が5.0デニールを超える
ものは、一般に強力が高い傾向があるので、本発明を適
用する必要性がない場合が多い。
【0011】具体例として、単糸繊度が0.05〜1.
0デニールの極細繊維(ポリエステル、ポリアミド)、
20重量%以上減量されたアルカリ減量加工品(ポリエ
ステル)、バフ加工や針布起毛された起毛加工品(ポリ
エステル、ポリアミド、アクリル)、ポリウレタン、ア
クリル樹脂等のコーティング加工品(ポリアミド、ポリ
エステル)、イソフタル酸やトリメリト酸、或いはポリ
エチレングリコール等を2〜5モル%共重合した抗ピル
性ポリマーおよび易染性ポリマー(ポリエステル)など
の機能性を付与したものに対して本発明を適用する場
合、その効果を顕著に発揮させることができる。
【0012】本発明において、上記布帛に対して前述し
たシリコーン系ゴムを擦り込む面は、好ましくは片面だ
けに行うことが望ましいが、布帛の風合等の機能性を損
なわない範囲であれば両面に行ってもよい。このシリコ
ーン系ゴムの布帛に対する擦り込み量(圧着量)は0.
01〜3.0重量%にする。擦り込み量が0.01重量
%に満たない場合は、布帛に対する強力向上効果は顕著
にはあらわれない。また、3.0重量%を越えるほどに
多くすると、布帛本来の風合を変化させるようになる。
【0013】本発明において、シリコーン系ゴムの布帛
に対する擦り込み量とは、次式により定義されたものを
いう。 擦り込み量(重量%)={(W1−W0)/W0}×100 但し、W0 :擦り込み処理前の布帛の重量(g) W1 :擦り込み処理後の布帛の重量(g) 布帛に対する擦り込み量は、目標とする強力向上に合わ
せて適宜選定すればよいが、上記0.01〜3.0重量
%の範囲内において、布帛表層部に限定して出来るだけ
微量に擦り込むことが好ましい。また、布帛の厚みに応
じて変えるようにすることが望ましく、例えば薄地なら
ば0.1〜0.8重量%、中厚地であれば0.5〜1.
5重量%、厚地であれば0.8〜2.5重量%にするこ
とが特に好ましい。
【0014】図9は、シリコーン系ゴムの布帛への擦り
込み量と布帛の引裂強力との関係を示しており、その引
裂強力はシリコーン系ゴムの擦り込み量と共に相乗的に
増加し、一定量以上になるとほぼ飽和に達するようにな
っている。このシリコーン系ゴムが布帛に与える効果と
しては、上述した強力向上効果のほかに、耐薬品性、耐
寒性、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐油性等もあり、
しかもこれらの効果を長期間保持する特性を有してい
る。
【0015】本発明による高強力布帛の製造方法は、以
下に説明するような装置を利用して行うことができる。
図6は、本発明により高強力布帛を製造する装置を例示
するものである。支持ロール2は、被処理用の布帛Fを
巻回させて移送させるもので、比較的大きな径を有して
おり、その外周にピンチロール1とニップロール3とを
配置すると共に、その中間位置に、独立した駆動系によ
って回転する摩擦回転体4を配置している。
【0016】被処理用の布帛Fは、拡布状態でピンチロ
ール1に挟まれ、次いで支持ロール2の外周を約3/4
周密着状態になって一体回転したのち、ニップロール3
から再び離脱するようになっている。摩擦回転体4は、
外周に複数の支持板5を一定の間隔に配置するように固
定し、これら支持板5の上に、それぞれシリコーン系ゴ
ム板Aを先端側の一部が支持板5の端部から外側へ突出
するように取り付けられて構成されている。この摩擦回
転体4が回転すると、複数枚のシリコーン系ゴム板Aが
支持ロール2上の布帛Fの表面を順次叩打し、その叩打
によって、シリコーン系ゴムの一部が布帛表層部の繊維
間に強く擦り込められる。
【0017】シリコーン系ゴム板Aを支持するための支
持板5としては、優れた耐久性と適度な弾性を有する鋼
板で構成するとよく、かつその半径方向の形状として
は、先端部を可撓性をもたせるように尖鋭化する一方、
根元は厚くして大きな剛性をもたせるようにすることが
望ましい。このように先端側が可撓性をもつ形状にする
ことによって、シリコーン系ゴムを布帛Fに均一に擦り
込ませやすくする。シリコーン系ゴムを擦り込ませるた
めの摩擦回転体としては、図7や図8に示すような手段
を使用することもできる。
【0018】図7の摩擦回転体4′は、一対のロール1
5,15上にシリコーン系ゴムベルトA′を巻回させて
回動させながら、そのシリコーン系ゴムベルトA′を移
送ロール16,17によって搬送される布帛Fの表面に
圧接させて擦り込みを行なうものである。この摩擦回転
体4′は、シリコーン系ゴムベルトA′を高速回転でき
るため、非常に効率のよい処理が行える利点がある。
【0019】図8の摩擦回転体4″は、ロール25の外
周にシリコーン系ゴム層A″を貼り付け、これを支持ロ
ール26により搬送される布帛Fの表面に圧接し、両者
の送り速度の差を利用して擦り込み処理を行なうもので
ある。この摩擦回転体4″によって行う処理は風合がソ
フトになる傾向があり、特に厚地布帛用の処理に好まし
い。この摩擦回転体4″の場合は、支持ロール26なし
で、布帛Fに対して単独に圧接させることにより処理す
ることもできる。
【0020】上述した擦り込み処理において、擦り込み
圧力(圧接圧力)としては、図6の叩打方式の場合に
は、布帛幅1mに対して6〜60kg/mにし、かつ長さ
方向に3〜40kg/mの処理張力を付与しながら行うよ
うにするとよい。また、シリコーン系ゴム板Aの枚数は
10〜40枚にし、回転数を150〜400r.p.m にす
ることが好ましい。図7の回転ベルト方式の場合には、
擦り込み圧力(圧接圧力)を上記のようにした上で、布
帛Fとの接触面積を20〜60mm2 にし、かつベルト回
転数を800〜2000r.p.m にすることが好ましい。
図8の圧接ロール方式の場合には、ロール間の速度差を
1:0.3〜2.5にすると共に、擦り込み圧力(圧接
圧力)を0.5〜3.0kg/cm2 、ロール25の回転速
度を500〜1500r.p.m にすることが好ましい。
【0021】上述した擦りこみ処理を行なった布帛は、
次いで通常の仕上げ処理を行うことによって完成する。
上記処理により擦り込まれたシリコーン系ゴムは非常に
耐久性が高いため、その擦り込み処理を布帛の染色処理
前に行っても、或いは染色処理後に行っても、シリコー
ン系ゴムが脱落することはない。すなわち、擦り込まれ
たシリコーン系ゴムは無色で、かつ耐熱性が高いでの、
たとえ擦り込み処理後に染色を行っても、その染色操作
時の加熱や揉み作用によって殆んど脱落することがな
い。仕上処理は、擦りこみ処理が片面処理の場合には、
一方の非接触面に対する従来の仕上をそのまま適用する
ことができる。例えば、コーティング加工、撥水加工、
起毛加工、抗ピル加工、一般樹脂加工等を行う加工であ
る。
【0022】上述のようにして得られた本発明の布帛
は、シリコーン系ゴムの擦り込みによって高い引裂強力
や破裂強力にすることができる。また、これら引裂強力
や破裂強力は、洗濯やドライクリーニングに対して低下
することがなく、高い耐久性を示すものとなる。特に、
極細繊維や改質繊維 (易染性、抗ピルなど) からなる織
編物に対する強力改善効果は高く、また減量加工品、起
毛加工品、コーティング加工品に対しても同様に強力改
善効果を大きくすることができる。また、本発明による
高強力布帛は処理前の布帛に比べて本来の風合、光沢、
外観、色相を失なわないという特長を有し、特に片面処
理の場合においてその効果は大きい。また、製造方法で
は、シリコーン系ゴムの圧着処理を簡単に行えると共に
均一な擦り込むことができる。また、擦り込み材のシリ
コーン系ゴムの摩耗も少なく、摩耗した場合でも簡単に
取替えができる。さらに、擦り込み圧力や処理張力の制
御がしやすく、安定した品質の布帛を得ることができ
る。
【0023】
【実施例】以下に実施例および比較例を説明するが、こ
れら実施例および比較例で示した布帛の評価は下記の方
法によって行った。
【0024】<シリコーン系ゴムの擦り込み量>前述し
た式に従って測定した。但し、処理前後の重量測定は、
室温20℃、湿度60%の恒温恒湿室で24時間放置し
たのちに精秤した。 <処理布の表面観察>処理布の表面を、走査型電子顕微
鏡(SEM.(株)日立製作所製S−2100A )に
より150〜800倍の倍率に拡大して観察した。 <布帛の引裂強力>JIS−L1096法(ペンジュラ
ム法)に従って、それぞれタテ糸およびヨコ糸の強力
(g)を測定した。 <布帛の破裂強力>JIS−L1018法(ミューレン
形法)に従って、布帛の破裂強力(kg/cm2)を測定し
た。
【0025】<強力増加比率>前記引裂強力および破裂
強力について、それぞれ未処理品に対する処理品の強力
の増加比率(倍)を求めた。値が大なるものほど強力の
増加が高いことを表わす。 <強力の耐久性>処理布を家庭用洗濯機VH1150N
((株)東芝製)により、合成洗剤(“ザブ”(花王
(株)製)2g/リットル、温度40℃で10分間洗濯
したのち、5分間のすすぎを行って風乾する。これを5
回繰り返し、5回洗濯後の強力を前記方法で測定した。
また、この処理布の洗濯後の強力を洗濯前の強力に対す
る低下率で示した。 <風合変化>処理布の風合は、専門家のパネラーによる
官能評価により、次の4段階に評価した。 ◎:未処理布に比べて風合変化が少なく、極めて良好な
もの ○:未処理布に比べて風合変化が少なく、ほぼ良好なも
の △:風合がヌルヌルする風合変化があって不良なもの ×:風合変化が極めて大きくて不良なもの
【0026】<抗ピリング性>JIS−L1076[I
CI形法]に従って、処理布のピリング(毛玉)の発生
について、次の5段階に評価した。 5級:ピリングの発生が全く認められず良好 4級:ピリングの発生がほとんど認められず良好 3級:ピリングの発生が普通 2級:ピリングの発生がややあり不良 1級:ピリングの発生が極めて多く不良 <擦り込み圧力>摩擦回転体を静かに回転させて、シリ
コーン系ゴムが同幅の布帛に接触した時の抵抗力をバネ
秤で測定し、その抵抗力を処理布帛の幅(m)で除した
値を擦り込み圧力(kg/m)とした。 <処理張力>擦り込み処理での布帛の長さ方向にかかる
張力(kg)をMBテンションセンサー((株)ニレコ
製)を用いて測定し、それを処理布の幅(m)で除した
値を処理張力(kg/m)とした。
【0027】実施例1,2 70デニール52フィラメント(単糸繊度1.3デニー
ル)のポリアミド繊維マルチフィラメント糸(東レ
(株)製)をタテ糸およびヨコ糸に用い、幅126cm、
タテ糸密度123本/吋、ヨコ糸密度87本/吋、目付
68g/m2 の薄地のタフタ(平織)織物を製織した。
次いで、この織物を常法により精練・セットしたのち、
ブラウンに染色した。
【0028】この織物を被処理布帛として、図6の装置
(ただし、摩擦回転体を2個配置)によりシリコーン系
ゴムの擦り込み処理を行った。シリコーン系ゴムには前
記〔化2〕式で示される化学構造を有するゴムを主成分
とするものを使用し、常法により加硫成形することによ
り、ショア硬度50、サイズが高さ125mm、幅126
0mm(布幅と同じ)、厚み1.0mmの板状に成形し、こ
のシリコーン系ゴム板を1ドラムあたりに12枚(2個
で24枚)配置したものとした。
【0029】上記擦り込み処理において、摩擦回転体の
回転数を300r.p.m 、擦り込み圧力を34.6kg/
m、処理張力を25.9kg/mとし、被処理布帛の処理
速度(送り速度)をそれぞれ15.0m/分(実施例
1)および3.5m/分(実施例2)に異ならせて処理
した。次いで、処理後の布帛を、常法により仕上セット
して仕上げをした。得られたナイロンタフタ織物の表面
を電子顕微鏡で観察すると、処理前の表面は図5(倍率
150倍)のようであったが、処理後の実施例1の織物
の表面は図1(倍率150倍)および図2(倍率800
倍)のようであり、また実施例2の織物の表面は同様の
倍率で図3、図4のようになっていた。これら写真に見
る通り、いずれの織物もシリコーン系ゴムが織物の表面
(片面)に極めて均一に擦りこまれており、それぞれ表
層部分の繊維間にシリコーン系ゴムが微塊状に圧着した
状態になっており、その圧着量は実施例1の織物は0.
26重量%、実施例2の織物は1.25重量%であっ
た。これら織物の引裂強力、強力増加比率、耐久性、風
合変化等の評価結果は表1の通りであった。
【0030】
【表1】 表1に示す通り、実施例1および2の織物とも、それぞ
れ引裂強力は未処理布に対して1.9〜3.7倍にも高
くなっている。また、洗濯による強力低下比率もごく小
さく、耐久性も極めて高いものであった。圧着量(擦り
込み量)もごく少ないため風合の変化も殆んどなく、本
来の風合、光沢を残し、かつ目ズレ欠点も認められなか
った。
【0031】比較例1 シリコーン系ゴムに代えてウレタンゴム (タイプEu.
ショア硬度65) を使用した以外は、実施例2と同様の
方法で擦り込み処理と仕上げとを行った。得られた織物
の引裂強力、強力増加比率、耐久性、風合変化等の評価
結果は、表1に示す通りであった。この織物の表層部に
擦り込められたゴム成分は、実施例1、2にくらべて、
ややサイズが大きい塊状であった。しかしながら、引裂
強力の向上効果が殆んどみられず、また風合が変化して
いた。
【0032】比較例2 シリコーン樹脂SH8200 (東レシリコーン (株)
製) の2.0%溶液を作製し、この溶液に実施例1と同
一のナイロン織物を浸漬すると共に、ニップしたのち、
通常のパディング処理をして乾燥した。得られた織物
は、シリコーン樹脂を全面に付着させており、その付着
量は1.28重量%であった。得られたナイロン織物の
引裂強力、強力増加比率、耐久性、風合変化等の評価結
果は、表1に示す通りであった。表1から、織物の引裂
強力は25〜30%増加したものの、洗濯後は殆んど効
果がなく、耐久性に乏しいものであった。また、シリコ
ーン樹脂が織物の全面に付着しているためヌルヌルした
風合となり、かつ目ズレ欠点があった。
【0033】比較例3 実施例1,2における未処理のナイロン織物について、
その引裂強力、強力増加比率、耐久性、風合変化等の評
価結果を表1に併せて示した。引裂強力のレベルは小さ
く、平凡なものであることがわかる。 実施例3〜5 実施例1において、シリコーン系ゴム板の枚数および擦
り込み処理日数を変えることにより、シリコーン系ゴム
の擦り込み量を0.14重量% (実施例3) 、0.88
重量% (実施例4) 、2.87重量% (実施例5) にそ
れぞれ変えた3種類のナイロン織物を作製した。これら
3種類のナイロン織物の引裂強力、強力増加比率、耐久
性、風合変化等の評価結果は表2に示す通りであった。
【0034】
【表2】 実施例3,4,5のいずれの織物も、シリコーン系ゴム
は塊状になって織物表面 (片面) の繊維間に均一に擦り
込まれており、引裂強力が1.73〜3.64倍に高め
られていた。洗濯後の強力保持性もよく、また風合変化
も小さかった。
【0035】比較例4,5 シリコーン系ゴムの擦り込み量を0.008重量% (比
較例4) および3.31重量% (比較例5) に変えたほ
かは、実施例1と同様にして擦り込み処理と仕上げ処理
とを行った。得られた織物の評価結果は表2に示す通り
であった。比較例4の織物は、風合の変化は少ないが、
引裂強力の増加率が5〜6%(1.05〜1.06倍)
と極めて低いものであった。また、比較例5の織物は、
引裂強力のレベルは高くなっているものの、表面がヌル
ヌルしすぎる風合を有し、風合変化が大きくなってい
た。 比較例6 被処理布帛として、75デニール、36フィラメント
(単糸繊度2.1デニール) のポリエステル繊維マルチ
フィラメントに2500回/mの撚を掛けた糸をそれぞ
れタテ糸およびヨコ糸に使用し、織物幅113cm、タテ
糸密度118本/吋、ヨコ糸密度116本/吋の強撚ジ
ョーゼットクレープ織物を製織し、次いでこの織物をシ
ボ立て精練と中間セットをしたのちアルカリ減量 (減量
率26重量%) した。
【0036】この被処理布帛を、実施例1と同様にし
て、シリコーン系ゴムを擦り込み量が0.95重量%と
なるように擦り込み処理し、次いで常法に従ってグレー
に染色して仕上げ処理した。得られたポリエステル繊維
ジョーゼットクレープ織物は、引裂強力がタテ糸355
0g、ヨコ糸1890gであり、擦り込み処理しないで
染色仕上したポリエステル織物の引裂強力 (タテ糸12
30g、ヨコ糸920g) に比べて、タテ糸2.89
倍、ヨコ糸20.5倍に高強力になっていた。この織物
を5回の洗濯を行っても、引裂強力は殆んど低下せず
(洗濯後の引裂強力:タテ3480g、ヨコ1820g)
、極めて大きな耐久性を有していた。また、風合、光
沢、外観の変化はごく小さかった。
【0037】実施例7 50デニール、72フィラメント (単糸繊度0.7デニ
ール) のポリエステルマルチフィラメント糸を用いて、
天竺組織の丸編地に編成した。次いで、この編物を常法
により精練、セット、染色、バフ加工 (軽起毛加工) し
た。次いで、この編地を、図7の装置により接触面積4
0mm、ベルトの回転数1000r.p.m 、処理速度8.0
m/分の条件で、実施例1と同じシリコーン系ゴムを擦
り込み処理し (非起毛面を片面、1回処理) 、擦り込み
量0.92重量%の編地にした。さらに、処理後の編地
を常法に従って仕上げ処理した。得られた丸編地は破裂
強力が3.2kg/cm2 であり、擦りこみ処理前に比べて
2.5倍にも強力が向上していた。また、起毛面 (非擦
り込み処理面) の抗ピリング性は4級であり、問題ない
レベルであった。 実施例8
【0038】70デニール、52フィラメント(単糸繊
度1.3デニール) のポリアミドマルチフィラメント糸
をタテ糸、120デニール、138フィラメント(単糸
繊度0.87デニール) のポリアミドマルチフィラメン
ト糸をヨコ糸に用いたタフタ織物を製織し、その片面に
ウレタン樹脂をコーティングした。次いで、このコーテ
ィング織物の非コーティング面に、シリコーン系ゴムと
して前記〔化4〕式の化学構造を有するゴムを主成分と
するシリコーン系ゴムを用いた以外は、実施例1と同じ
方法により擦り込み処理を行うと共に仕上げ処理した。
得られた織物のシリコーン系ゴムの擦り込み量は0.3
5重量%であった。得られたコーティング織物の引裂強
力はタテ糸1860g、よこ糸1640gであり、擦り
込み処理前の織物の引裂強力 (タテ糸860g、ヨコ糸
720g)に対して著しく向上していた。このコーティ
ング織物を通常のドライクリーニング洗濯を7回行なっ
たが、殆んど引裂強力の低下はみられず、極めて高い耐
久性を有していた。
【0039】実施例9 アクリル短繊維とウールとの混紡糸 (混紡率;アクリル
60/ウール40、糸使い;60番手、双糸) を、タテ
糸およびヨコ糸に使用してマットウース織物を製織し
た。次いで、常法により精練、縮絨、染色したのち、実
施例1と同じシリコーン系ゴムを用いて、図8の装置に
よりロール間速度差を1:0.4、擦り込み圧力を2.
3kg/cm2 、ロールの回転速度720r.p.m 、処理速度
9.0m/分で片面に擦り込み処理した。次いで常法に
より仕上げ処理し、シリコーン系ゴムの擦り込み量0.
41重量%のマットウース織物を得た。得られた織物の
引裂強力はタテ糸1580g、ヨコ糸1640gであ
り、擦り込み処理前の織物に比べて、タテ糸2.3倍、
ヨコ糸2.4倍の高強力になっていた。また、風合の変
化が少なく、抗ピリング性 (非処理面) も4〜5級であ
った。
【0040】実施例10 5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合した常圧カ
チオン染料可染型ポリエステル (“ルミレット”東レ
(株) 製) の紡績糸(40番手、双糸)をタテ糸および
ヨコ糸として使用し、2/2綾組織の織物を製織した。
この織物を常法により精練したのち、実施例1と同様の
方法により擦り込み処理をし、シリコーン系ゴムの擦り
込み量が0.35重量%の織物にした。次いで、この織
物を赤のカチオン染料で印捺し、98℃で常圧スチーミ
ングしてプリントして仕上げた。得られた織物の引裂強
力はタテ糸2860g、ヨコ糸2420gであり、擦り
こみ処理前の引裂強力に対して、タテ糸3.5倍、ヨコ
糸2.8倍に向上したいた。また、洗濯鋸の強力低下も
殆んどなく、風合の変化も少ない赤のプリント綾織物で
あった。
【0041】
【発明の効果】上述したように、本発明の布帛は、シリ
コーン系ゴムの圧着によって極めて高い強力を有し、か
つその強力は繰り返し洗濯によっても低下しない高い耐
久性を示すことができる。また、シリコーン系ゴムの圧
着に基づく風合の変化はほとんど認められない。また、
本発明の製造方法によれば、上記高強力の布帛を簡単に
効率よく得るることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による高強力布帛の表面の一実施例を示
す走査型電子顕微鏡写真 (倍率150倍) である。
【図2】同上の布帛表面を倍率800倍で示す走査型電
子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の他の実施例の高強力布帛の表面の一実
施例を示す走査型電子顕微鏡写真 (倍率150倍) であ
る。
【図4】同上の布帛表面を倍率800倍で示す走査型電
子顕微鏡写真である。
【図5】本発明による処理前のナイロン織物の表面を示
す走査型電子顕微鏡写真 (倍率150倍) である。
【図6】本発明の製造方法を実施する装置の一例を示す
概略図である。
【図7】本発明の製造方法を実施する装置の他の例を示
す概略図である。
【図8】本発明の製造方法を実施する装置のさらに他の
例を示す概略図である。
【図9】シリコーン系ゴムの擦り込み量と布帛の引裂強
力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ピンチロール 2 支持ロー
ル 3 ニップロール 4,4′,
4″ 摩擦回転体 15 ロール 16,17
移送ロール 25 ロール 26 支持ロ
ール A シリコーン系ゴム板 A′ シリコ
ーン系ゴムベルト A″シリコーン系ゴム層 F 布帛
【手続補正書】
【提出日】平成5年7月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による高強力布帛の表面の繊維の形状の
一実施例を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率50倍)で
ある。
【図2】同上の布帛表面の繊維の形状を倍率800倍で
示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の他の実施例の高強力布帛の表面の繊維
の形状の一実施例を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率1
50倍)である。
【図4】同上の布帛表面の繊維の形状を倍率800倍で
示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明による処理前のナイロン織物の表面の繊
維の形状を示す走査型電子顕微鏡写真(倍率50倍)で
ある。
【図6】本発明の製造方法を実施する装置の一例を示す
概略図である。
【図7】本発明の製造方法を実施する装置の他の例を示
す概略図である。
【図8】本発明の製造方法を実施する装置のさらに他の
例を示す概略図である。
【図9】シリコーン系ゴムの擦り込み量と布帛の引裂強
力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】 1 ピンチロール 2 支持
ロール 3 ニップロール 4,4′,
4″ 摩擦回転体 15 ロール 16,17
移送ロール 25 ロール 26 支持
ロール A シリコーン系ゴム板 A′ シリ
コーン系ゴムベルト A″ シリコーン系ゴム層 F 布帛

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 布帛の表層部分における繊維間にシリコ
    ーン系ゴムが微塊状に圧着され、かつその圧着量が前記
    布帛に対して0.01〜3.0重量%である高強力布
    帛。
  2. 【請求項2】 布帛とシリコーン系ゴムとを相互に圧接
    させて相対移動させ、前記シリコーン系ゴムを前記布帛
    の表層部分の繊維間に擦り込むことを特徴とする高強力
    布帛の製造方法。
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