JPH0620182U - 自動二輪車のスイングアーム - Google Patents

自動二輪車のスイングアーム

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JPH0620182U JP2189592U JP2189592U JPH0620182U JP H0620182 U JPH0620182 U JP H0620182U JP 2189592 U JP2189592 U JP 2189592U JP 2189592 U JP2189592 U JP 2189592U JP H0620182 U JPH0620182 U JP H0620182U
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和広 前田
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亮一 大南
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 軽量・高剛性・小慣性モーメントという点で
好ましいスイングアームを提供する。 【構成】 アーム本体20・30の後方端部に比べて、
スイングアーム1の他の部分の上下方向寸法(厚さ)を
大きくとる。すなわち、アーム本体20・30の前後の
中ほどの部分における厚さsのほか、ピボット軸10を
囲む位置での中間部40の上板41・下板42間の上下
間隔(厚さr)をも大きくとっている。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、自動二輪車のサスペンション(懸架装置)として組み込まれるスイ ングアームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車の後輪用サスペンションには各種の形式があるが、多くのものは、 ある軸心の回りに一端部が揺動するいわゆるスイングアームを有している。つま り自動二輪車のスイングアームは、前より(車体の前向き。以下同様)の位置に ピボット部(揺動中心となる軸または軸に嵌まる穴を有する部分)があって後方 (車体の後ろ向き。以下同様)へアーム本体が延び、その後方端部に後輪車軸( リアアクスル)を支持する。この後方端部はピボット部を中心にして上下に揺動 するが、その動きに緩衝作用を及ぼし、かつ変位を復元するために、スイングア ームの一部と車体フレームとの間にはスプリングやダンパなどからなるクッショ ンユニットが取り付けられる。
【0003】 このようなスイングアームは、自動二輪車の走行中、車体とともに上下左右へ 運動することはもちろんだが、路面の凹凸等によって後方端部が上下に激しい揺 動運動をする。そのため、特にレーサーにおいてスイングアームには、軽量であ ることや、ピボット部まわりの慣性モーメントが小さいことが求められる。また そのような運動にともなって引っ張り力・曲げ・捩りなどが作用することから、 十分な剛性があることも必要である。なかでも、近年になって自動二輪車の主流 となりつつあるモノショック(後輪より前の位置に、クッションユニットが一つ だけ設けられる)型のサスペンションにあっては、後輪の側方に各一(合計二つ )のクッションユニットがある旧来のものに比べ、より高い剛性がスイングアー ムに要求される。荷重を受ける点、すなわち後方端部における後輪車軸の支持点 と、スイングアームが支えられる点、すなわちクッションユニットを取り付けて いる点とが、旧来のものに比べてかなり離れているからである。
【0004】 図7には、そのようなモノショックサスペンションのために構成されたスイン グアームの一例を示す。前方(図の左方)のピボット部10に対して左右二本の アーム本体20・30が接合されており、その後方端部のホルダー21・31に 後輪車軸(図示せず)が支持される。符号6(図7(b)の仮想線)は駆動用のチ ェーンで、7・8はスプロケットである。左右のアーム本体20・30間のうち 前方の部分とピボット部10とには中間部40が一体化され、そこに円筒壁44 が形成されているが、上記した一つだけのクッションユニット(図示せず)は、 その円筒壁44の内側を通して配備され、下部のブラケット43に一部が連結さ れる。
【0005】 図7のスイングアーム3において、上記の中間部40としては、補強材である 上板41・下板42などが接合・一体化されている。下板42はブラケット43 のベースをも兼ねているが、上板41・下板42の双方をアーム本体20・30 とピボット軸10とに一体化してボックス状の閉じた構造体を形成することによ り、捩りや曲げに対する剛性を高めているのである。中間部40の上下方向寸法 つまり上板41・下板42間の間隔は、このスイングアーム3については図7( b)のとおり、ピボット部10の外周部から後輪に面する中ほどの位置まで徐々 に増大している。したがって、スイングアーム3を全体的に見た場合の上下方向 の寸法(厚さ)は、ピボット部10の付近とアーム本体20・30の後方端部と で小さく(薄く)、その中ほどの部分で大きい(厚い)ことになる。
【0006】 なお、関連する技術として実公平2−14549号がある。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
前述したようにスイングアームには、軽量でありながら剛性が高く、しかも慣 性モーメントの小さいことが求められるが、図7に示したスイングアーム3はそ のような点でまだ最適なものではなく、重量比の強度がすぐれるアルミ合金など を材料として構成しても、運動性能の高い型式の自動二輪車(レーサーなど)に 採用するにはなおも改善が期待されている。なおここで言う剛性としては、主と して捩りモーメントに対する剛性を取り上げている。車体を傾けて走行するとき 後輪が路面から上向きの力を受ける(多くの場合、振動や衝撃をともなう)と、 それが車軸を介してスイングアームに対する捩りモーメント(図7の例で言えば 中心線aまわりのモーメント)となるが、それによる変形の大小は自動二輪車( レーサーなど)の走行性能に直接影響するからである。
【0008】 本考案の目的は、軽量・高剛性・小慣性モーメントという点で、より最適に近 いスイングアームを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本考案による自動二輪車のスイングアームは、アーム本体の後方端部に比べて スイングアームの他の部分−すなわちアーム本体の前方部分や前記した中間部 を含むスイングアームの全域で、アーム本体の後方端部を除く部分−の上下方 向寸法(厚さ)を大きくとったものである。図7に示した従来のスイングアーム においても前後の中ほどの部分は上下方向寸法が大きいが、本考案ではさらに、 スイングアームの前端部における上下方向寸法、つまりピボット軸付近での中間 部の上下寸法をも大きくとっている。
【0010】
【作用】
本考案のスイングアームは、アーム本体の後方端部に比べてそれ以外の部分の 上下方向寸法(厚さ寸法)が大きい。したがって、従来のものと比較する(たと えば図1(b)と図7(b)とを比較する)と、前方のピボット部の周辺において上 下方向寸法が大きい点に顕著な差がある。このようなスイングアームは、軽量・ 高剛性・小慣性モーメントの点で理想に近い。ピボット部付近を除くすべての部 分が従来のスイングアームと全く同一であると仮定すれば、全体の重量が多少増 加することこそ避けられないものの、ピボット部を中心とした慣性モーメントの 増加はごくわずかであり、しかも剛性が増大する割合は著しい。すなわち、重量 比(重量で除した値)をとって比較した場合、本考案のスイングアームは、従来 のものに比べて慣性モーメントおよび剛性の点ですぐれることになる。
【0011】 発明者らは、有限要素法(FEM)解析によってスイングアームの挙動や強度 を検討するうちに上記の点を見いだすに至ったが、本考案のスイングアームに上 記の特性がある理由は、下記のように推定することができる。
【0012】 1) 回転(揺動)中心であるピボット部にごく近い部分において重量が増すだ けなので、回転中心からの距離の二乗と各部重量との積の総和である慣性モーメ ントの増加割合は、重量そのものの増加分に比してごく小さい。なお、回転中心 からの距離が最も大きい部分であるアーム本体の後方端部についてとくに厚さ等 を増さないことも、慣性モーメントの増加を抑える意味がある。
【0013】 2) スイングアームが後輪車軸から負荷として受ける捩りのモーメントはアー ム本体の後方端部からピボット部まで均一に伝わるが、a)アーム本体(または中 間部)とピボット部との接続部は形状的に不連続であって応力等が集中しがちで あること、b)左右に分かれたアーム本体のそれぞれについて見れば、後方端部に 上向きまたは下向きの荷重を受けて曲げモーメントを生じることにほかならず、 その曲げモーメントは、荷重点から離れたピボット部に近い箇所ほど大きくなる こと、c)スイングアームの全体的な横幅寸法は、図1(a)や図7(a)のように前 方のピボット部に近づくほど小さい場合が多いこと−などから、ピボット部の 付近にとくに変形が生じやすい。その点、本考案のスイングアームでは、上記の ように応力や変形の集中しがちな部分において、アーム本体の前部とピボット部 とにつながる中間部の上下寸法を大きくしている。板などで上下左右を囲んだボ ックス状の構造体においては、一般にそれらの上下寸法(たとえば上下の板の間 隔)が大きいほど捩りや曲げに対する剛性が高いため、こうした構成によって、 最小限の重量増で変形を小さく抑えることができる。
【0014】
【実施例】
図1〜図3に、本考案の一実施例として自動二輪車(図示せず)用のスイング アーム1を示す。図1(a)・(b)は平面図および側面図、図2(a)・(b)・(c) ・(d)は図1におけるA−A・B−B・C−C・D−Dでの各断面図、また図3 は斜視図である。
【0015】 このスイングアーム1はアルミ合金の板を主体とした溶接構造のもので、図1 および図3に示すように、前方(自動二輪車の前方に相当。図の左方)端部のピ ボット部10に対し、後方へ延びた左右二本のアーム本体20・30や、前方に おいてそれらをつないだ中間部40などが一体化されている。ピボット部10の 穴の内に車体フレーム(図示せず)の支軸(同)を挿入して揺動中心とし、揺動 端すなわちアーム本体20・30の各後方端部に設けられたホルダー21・31 に、後輪(図示せず)の車軸(同)を支持するようになっている。
【0016】 構造の詳細はつぎのとおりである。まずアーム本体20・30は、図1のよう に、駆動側(エンジンの側)のスプロケット7と後輪側のスプロケット8との間 の駆動用チェーン6が左側(車体前方に向かって左側)のみに掛けわたされるこ となどから、互いに対称な配置・形状ではない。右側のアーム本体30が一本の 中空矩形筒であるのに対し、左側のアーム本体20はアームの分岐体22(図2 (b)・(c)参照)を有し、間にチェーン6の通るスペースを設けている。また中 間部40は、上板41や下板42などによってピボット部10と左右のアーム本 体20・30とを接合し、図2(a)・(b)および(d)のようなボックス構造を形 成させたものだが、下部にはブラケット43を有し、中ほどに円筒壁44および 補強材45を含んでいる。ブラケット43のベース43aは下板42に連続し、 その一部をなしている。いわゆるモノショックサスペンションを構成するための 一組だけのクッションユニット(図示せず)は、円筒壁44の内側を通され、か つブラケット43に連結して取り付けられる。
【0017】 以上の点は図7に紹介した従来のスイングアーム3ととくに差異はないが、本 実施例のスイングアーム1の特徴は、強度や運動特性に関連した形状的な面にあ る。すなわち、図1(b)に示されるようにスイングアーム1を横から見たとき、 アーム本体20・30の後方端部(ホルダー21・31付近)に比べ、それ以外 の部分が目立って厚い(上下に寸法が大きい)ことである。アーム本体20・3 0の前後方向中間位置において全体厚さが最大であり、それより後方にかけて厚 さが漸減することはスイングアーム3(図7)と同様だが、違うのは、ピボット 部分10の付近でも厚いことである。中間部40の上下寸法(上板41・下板4 2の間隔)がピボット部10の最前端の周面上から急激に増大し、同部10の後 端周面の付近ではすでに最大厚さの7割を越える寸法になっている。図1のスイ ングアーム1の場合、全長は約650mmであるが、ピボット部10のすぐ後方 での厚さrが約160mm、前後の中程での最大厚さsが約190mm、そして 後方端部の厚さtが約70mmである。
【0018】 スイングアーム1においてこうした形状を採用したのは、つぎのような理由に よる。第一には、後方端部の寸法を増やさないままピボット部10の付近を厚く してその付近の重量を増やしても、その付近は揺動中心に近いため慣性モーメン トの目立った増大は招かないことである。慣性モーメントが大きくないことは、 スイングアーム1が高速にて運動(揺動)しやすく、その運動が車体におよぼす 影響も小さくて自動二輪車の走行性能がすぐれることを意味する。また第二の理 由は、重量の増加分以上にスイングアーム1の剛性が増大し、重量比でみた剛性 も高くなることである。この第二の点は、下記のような実測によって確かめるこ とができた。
【0019】 図3に、スイングアーム1の斜視図とともにその剛性計測の要領を模式的に示 す。すなわち前方のピボット部10を、その軸心を中心にした回転のみを自在に して固定しておき、アーム本体20・30の後方端部(ホルダー21・31)間 に後輪車軸に代わるダミーのシャフト5を通し、このシャフト5に対して中心軸 aまわりの捩りのモーメントを負荷する。同時に、変位として各部の捩り角を測 定するのである。そしてスイングアーム1だけでなく、前述した図7の従来型の スイングアーム3と、その改良型ともいえる図6のスイングアーム2と(スイン グアーム1・2・3は、左右の後方端部間の間隔および全長が共通。対応する構 造部分には各図において同じ符号を付している)に対しても同様の計測を行い、 捩り角を比較することによって剛性の大小を知る(剛性の大きさは“捩りモーメ ント/捩り角”にて評価される)。なお図6のスイングアーム2は、本実施例の スイングアーム1に似たものだが、ピボット軸10の付近では中間部40を含め て厚さが小さく、前後の中ほどにかけてその厚さが徐々に大きくなる形状を有す る点で相違する。
【0020】 以上のような計測の結果をまとめたものが、図4のグラフである。ピボット部 10の軸心から計測点までの距離(mm)を横軸に、捩り角(deg)を縦軸に とって、前記のシャフト5(図3)に100kgf・m(980N・m)の捩り モーメントを負荷したときの状態を表わしている。図の実線がスイングアーム1 についてのもの、二点鎖線および破線がそれぞれスイングアーム2・3の計測値 である。本考案の実施例であるスイングアーム1の捩り角が最も小さく、したが ってその剛性が最も高いことがわかる。ピボット軸10より550mm離れた点 でのスイングアーム1・2・3の捩り角はそれぞれ0.274°・0.320° ・0.392°である。なお、スイングアーム1の重量は6.8kgで、スイン グアーム2・3の重量6.6kgよりも重いため、重量比でみた剛性を比較する 必要があるが、その点でもスイングアーム1は他よりもすぐれている。剛性の評 価値を重量で除した“捩りモーメント/(捩り角×重量)”の値が、スイングア ーム1において他のものよりも大きいからである。
【0021】 なお、上の実施例では板材を主体にしてスイングアームを構成したが、鋳造物 を用いて構成することも可能である。図5に示すスイングアーム(対応部分には 図1などと同一の符号を付している)は、ピボット部10を含む中間部40を鋳 造によって成形し、その後方に、やはり鋳造成形したアーム本体20・30を溶 接づけしたものである。中間部40は、軽量化のため内部に空洞部を有しボック ス状の構造となっている(適宜、補強リブを有する場合もある)。この例では、 アーム本体20・30の接続箇所(ピボット部10と直接には接続していない) にも特徴がある。そのほか、本考案のスイングアームは、全体を左右(車体の左 右)間の中央部で分け、左右の各部を別々に成形したうえあとで接合する−と いった工程によっても構成することができる。アルミ合金以外の金属や非金属を 材料とし得ることももちろんである。
【0022】
【考案の効果】
本考案による自動二輪車のスイングアームは、従来のものに比べて全体の重量 こそ多少増加する傾向にあるものの、ピボット部まわりの慣性モーメントの増加 はほとんどなく、しかも剛性の増大について顕著な向上をもたらす。そしてこの 点により、自動二輪車(とくにレーサー)の走行性能(運動特性)を改善する。 なお、ピボット部まわりの慣性モーメントが大きくないのは、ピボット部付近に のみ重量増があるためだが、このことは車体の中央付近にのみ重量増があること をさし、この点でも自動二輪車の走行性能に関して好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例として自動二輪車用スイング
アーム1を示す図で、図1(a)は平面図、同(b)は側面
図である。
【図2】図2(a)・(b)・(c)・(d)はそれぞれ、図1
におけるA−A・B−B・C−C・D−Dでの断面図で
ある。
【図3】上記スイングアーム1についての斜視図であ
り、剛性計測の要領をも表わしている。
【図4】スイングアーム1・2・3についての剛性計測
の結果を表わすグラフである。
【図5】本考案の他の実施例を示す平面図(図5(a))
と側面図(同(b))である。
【図6】スイングアーム1に対する比較例としてのスイ
ングアーム2を示す平面図(図6(a))および側面図
(同(b))である。
【図7】従来のスイングアーム3を示す平面図(図7
(a))および側面図(同(b))である。
【符号の説明】
1 スイングアーム 10 ピボット部 20・30 アーム本体 40 中間部 41 上板 42 下板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 木野内 総介 兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工業 株式会社明石工場内 (72)考案者 大南 亮一 兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工業 株式会社明石工場内 (72)考案者 門田 浩次 兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工業 株式会社明石工場内 (72)考案者 西川 弘泰 兵庫県明石市川崎町1番1号 川崎重工業 株式会社明石工場内

Claims (1)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車体に取り付けられるピボット部と、後
    方端部にて後輪車軸を支持する左右のアーム本体と、そ
    れらアーム本体やピボット部につながってボックス状の
    構造をなす中間部とが一体化されたスイングアームであ
    って、 アーム本体の後方端部に比べて他の部分は、上記中間部
    のうちのピボット部付近を含めて、上下方向の寸法を大
    きくとったことを特徴とする自動二輪車のスイングアー
    ム。
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