JPH06193887A - 加熱調理器具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 パンなどの食品を、乾燥させることなく表面
に焦げ目がつくように焼き上げることができる加熱調理
器具を提供する。 【構成】 上容器１２と下容器１４とが重箱の如く組み
合わされており、それぞれ開口部１６、１８が設けられ
ている。開口部１６、１８を覆うように発熱板２２、２
４が設けられており、発熱板以外の部分にはマイクロ波
遮蔽層２８、３０が設けられている。 【効果】 食品Ａを発熱板２２、２４で挟んで容器１０
を電子レンジ内に入れる。マイクロ波により発熱板２
２、２４が発熱し、食品Ａに焦げ目がつくように加熱さ
れる。マイクロ波は、遮蔽層２８、３０で遮蔽されるた
め、食品Ａを直接に加熱することはない。従って、食品
を乾燥させることなくこんがりと焦げ目がつくように焼
き上げることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、主に家庭で用いる電子
レンジを利用して、パンなどに焦げ目をつけて焼くこと
ができる加熱調理器具に関する。詳しくは、マイクロ波
を吸収して発熱する材料であるセラミックス発熱板の発
熱に伴う熱伝導、熱輻射を利用した加熱調理器具に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】電子レンジは、マイクロ波による水分子
の振動エネルギーによる発熱作用を用いて調理するもの
であるため、水分のある調理物は１００℃以上に加熱し
て調理することは不可能であった。

【０００３】マイクロ波を吸収して発熱する材料を用い
た間接加熱方式の調理器具として、金属製の鍋やフライ
パンの底にフェライトなどをつけたマイクロ波吸収発熱
用の器具がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】金属製の鍋等の底にフ
ェライトをつけたものでは、鍋自身は発熱するが、調理
物の温度は１００℃以上にならないため、焦げ目をつけ
ることは不可能であった。

【０００５】もちろん、電子レンジのマイクロ波加熱で
は、焦げ目がつくようにパンやクッキーなどを焼くこと
は不可能であった。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１の加熱
調理器具は、内部に偏平な被加熱食品を収容する内部ス
ペースを有した偏平浅箱状のマイクロ波透過材料製の容
器と、該内部スペースを挟むように該容器内に対設され
たマイクロ波吸収発熱板と、該容器の内面、外面及び該
内面と外面との間の少なくとも１箇所であって且つ該マ
イクロ波吸収発熱板以外の部分に設けられたマイクロ波
遮蔽層と、を備えてなり、前記容器は厚さ方向の延長方
向に開放し得る１対の半割体よりなり、前記マイクロ波
吸収発熱板は各半割体の内面に取り付けられていること
を特徴とするものである。

【０００７】請求項２の加熱調理器具は、請求項１にお
いて、双方の前記半割体はその周縁に周壁を備えてお
り、一方の半割体は、その周壁が他方の半割体の周壁の
内側に入り込む大きさとされていることを特徴とするも
のである。

【０００８】請求項３の加熱調理器具は、請求項１又は
２において、前記マイクロ波吸収発熱板は連続気孔の多
孔質板であり、前記半割体のうち該マイクロ波吸収発熱
板の背後の少なくとも一部が開口部とされていることを
特徴とするものである。

【０００９】請求項４の加熱調理器具は、請求項３にお
いて、少なくとも一方の半割体の外面に、容器の厚さ方
向の延長方向に突出する脚部が突設されていることを特
徴とするものである。

【００１０】

【作用】本発明の加熱調理器具は、スライスされた食パ
ンや、成形されたクッキー材料などの偏平な被加熱食品
（以下、食品という。）を容器内にいれてマイクロ波が
照射される。これにより、マイクロ波吸収発熱板（以
下、単に発熱板という。）が発熱し、内部の食品を加熱
する。この容器は偏平状であり、発熱板と食品が近接す
るか又は接触するため、食品の表面が急速に加熱され、
焦げ目がつくように焼かれる。

【００１１】この加熱調理器具においては、発熱板以外
の部分にマイクロ波遮蔽層が設けられているため、マイ
クロ波は内部の食品を直接に発熱させることは殆どな
い。従って、食品が乾燥していわゆるカサカサ、ボロボ
ロの状態になってしまうこともない。

【００１２】特に、請求項２の加熱調理器具にあって
は、一対の半割体を重箱の如く組み合わせて容器を構成
している。従って、所定以上の厚さの食品であれば、そ
の両面を発熱板に接触させて焼くことができる。

【００１３】請求項３の加熱調理器具にあっては、食品
の加熱に伴って発生した水分が、多孔質の発熱板の気孔
と、容器（半割体）の開口部を通って外部に逃散するよ
うになるため、食品をベタつかせることなくこんがりと
焼き上げることができる。

【００１４】請求項４の加熱調理器具にあっては、脚部
が設けられているから容器を電子レンジ内の底面から浮
かせるようにして使用できる。従って、容器の下面側の
開口部からも水分が抜け出るようになる。また、発熱板
を電子レンジ内の底面から離隔させることができ、該底
面の過度の昇温を防ぐこともできる。

【００１５】

【実施例】以下図面を参照して実施例について説明す
る。第１図は本発明の実施例に係る加熱調理器具の断面
図（第２図のＩ−Ｉ線に沿う断面図）、第２図はこの加
熱調理器具の斜視図である。

【００１６】加熱調理器具の容器１０は、偏平浅箱状で
あり、重箱の如く上容器（上側半割体）１２と、下容器
（下側半割体）１４とを備えている。上容器１２は、上
面部１２ａと、該上面部１２ａの周縁から垂設された周
壁１２ｂとを備えており、この上面部１２ａの中央部に
は開口部１６が設けられている。下容器１４は、下面部
１４ａと、該下面部１４ａの周縁部から立ち上げられた
周壁１４ｂとを備えており、この周壁１４ｂの中央部に
は開口部１８が設けられている。また、この下面部１４
ａの下側には脚部２０が突設されている。

【００１７】開口部１６、１８を覆うように、容器１０
の内部に一対の発熱板２２、２４が設けられている。発
熱板２２、２４は、それぞれ開口部１６、１８よりも大
きな面積を有しており、開口部１６、１８の周縁部にそ
れぞれ接着剤２６により接着されている。容器１０の内
面のうち、発熱板２２、２４で覆われていない部分には
マイクロ波の遮蔽層２８、３０が設けられている。

【００１８】本発明において、容器１０の材質として
は、マイクロ波を通過させるもの、即ち、マイクロ波を
吸収して発熱することがないものが用いられる。具体的
には、合成樹脂とりわけ耐熱性合成樹脂が用いられる。
なかでも、トリフェニレンサルファイド（ＰＰＳ）が最
も好適である。

【００１９】発熱板２２、２４としては、マイクロ波を
効率的に吸収して発熱する耐熱性の良好な材料が用いら
れる。この発熱板としては、炭化珪素（ＳｉＣ）セラミ
ックス粒子の多孔質焼結体にＳｉ（シリコン）を溶射法
によりコーティングしたものが好適である。さらに、こ
のＳｉＣセラミックス焼結体よりなる発熱板としては、
耐熱性に優れると共に低熱容量であり、しかも水分を通
り抜けさせる性質を有するところから、連続気孔の多孔
質セラミックス板が好適である。この連続気孔の焼結板
としては、気孔率が約５０〜６０％位のものが最も好適
であり、このものは軽量であり、耐熱性に優れ、熱容量
も小さい。この発熱板は、マイクロ波の吸収により３５
０℃程度まで昇温可能である。

【００２０】なお、このセラミックス焼結板の表面にＳ
ｉをコーティングすると、短時間に効率良く発熱するよ
うになる。このコーティングの厚さとしては５０〜１０
０μｍ程度が好適である。発熱板２２、２４の熱容量を
小さくするためには、その厚さは１．５〜３とりわけ２
〜２．５ｍｍが好適である。

【００２１】発熱板２２、２４を上容器１２、下容器１
４に取り付けるための接着剤としては、耐熱性の良い接
着剤を用いるのが好ましい。好ましい接着剤としては、
耐熱性のシリコン接着剤が挙げられる。この接着剤は、
開口部１６、１８と発熱板２２、２４の全周縁部を接着
しても良いが、一部のみを点付けにて接着しても良い。
点付けした場合には、接着していない部分において発熱
板２２、２４と上容器１２、下容器１４との間に若干の
隙間があくため、容器１０の内部からの水分の抜け出し
性が若干向上する。

【００２２】マイクロ波遮蔽層２８、３０は、マイクロ
波が容器１０の内部に入り込んで食品Ａを直接に加熱す
ることがないようにするためのものであり、金属のフィ
ルムを貼り付けることにより構成するのが好適である。
金属フィルムの材質としては、アルミニウム、銅、錫、
スチールなど各種のものが挙げられるが、熱容量が小さ
い点からしてアルミニウム又はアルミニウム合金が好適
である。この金属フィルムは、接着剤を用いて容器内面
に貼り付けても良く、接着剤付きのテープを貼り付ける
ようにしても良い。

【００２３】ところで、上容器１２と下容器１４の周壁
１２ｂ、１４ｂの被さり代からマイクロ波が容器１０の
内部に入り込むことを防止するために、この被さり代の
隙間は１ｍｍ以内とするのが好適である。

【００２４】このように構成された加熱調理器具におい
ては、スライスされた食パンや成形されたクッキー材料
などの偏平な食品Ａを容器１０内に入れ、この容器を電
子レンジ内に入れ、マイクロ波を照射する。マイクロ波
が発熱板２２、２４に吸収され、発熱板２２、２４が急
速に発熱し、食品Ａが加熱される。なお、食品Ａを入れ
ないでおいて加熱調理器具を電子レンジに入れ、発熱板
を十分に（例えば１００〜３５０℃程度）に加熱してか
ら食品を該器具内に入れて加熱しても良い。

【００２５】第１図の状態にあっては、食品Ａは十分に
厚さの大きなものであり、発熱板２２、２４の双方に接
触している。従って、食品Ａの表裏両面に効率良く焦げ
目がつく。

【００２６】なお、食品Ａがかなり薄いものである場合
には、食品Ａの上面と発熱板２２との間に隙間があくこ
とになるが、この場合にも食品Ａの上面は発熱板２２か
らの輻射熱により焦げ目がつく。ただし、この場合に
は、第１図のように食品Ａの上面が発熱板２２に接触し
ている場合に比べ、多少焦げ目がつくまでに要する時間
が長いものとなる。

【００２７】この加熱調理器具による加熱調理による
と、マイクロ波が容器１０の内部に殆ど入り込むことが
なく、食品Ａはもっぱら発熱板２２、２４からの伝熱及
び熱輻射により加熱されるものであるから、食品Ａが乾
燥していわゆるカサカサ、ボロボロの状態になってしま
うことがなく、こんがりと焼き上がった食品を得ること
ができる。

【００２８】第１図から明らかな如く、この実施例に係
る加熱調理器具は、重箱の如く組み合わせた上容器１２
及び下容器１４を備えているため、食品Ａの厚さが変わ
っても、食品Ａの上下両面を発熱板２２、２４に接触さ
せることができる。また、食品Ａがきわめて薄いもので
あっても、食品Ａの上面を発熱板２２に近接させること
ができる。

【００２９】また、本実施例の加熱調理器具は、発熱板
２２、２４が連続気孔の多孔質よりなるものであるか
ら、食品Ａの加熱に伴って蒸気が発生した場合、この蒸
気（水分）は発熱板２２、２４を通過し、開口部１６、
１８からきわめて容易に逃散するようになる。従って、
食品Ａをべたつかせることなく加熱調理することができ
る。また、容器１０の内部に湿気がこもることも防止さ
れる。

【００３０】特に、本実施例にあっては、脚部２０を設
けているから、容器１０の下側からの水分の抜けもきわ
めて良好である。なお、この脚部２０を設けているた
め、発熱板２４が電子レンジ内の底面から浮いた状態と
なる。従って、発熱板２４が高温になっても、電子レン
ジ内の底面が過度に加熱されることが防止される。

【００３１】上記実施例において、発熱板２２、２４と
して、一辺が１１０ｍｍで、厚さが２．３ｍｍ、気孔率
５０％、溶射層の厚さ７５μｍのＳｉＣ多孔質セラミッ
クス板を用い、開口１６、１８の大きさを１００ｍｍ角
とした。容器１０としては、厚さが２．０ｍｍのＰＰＳ
製のものを用い、内面にアルミニウム製のテープを接着
して遮蔽層２８、３０を構成した。なお、発熱板２２、
２４は耐熱性シリコン接着剤で上容器１２及び下容器１
４に接着した。上容器１２及び下容器１４の周壁１２
ｂ、１４ｂの高さを２０ｍｍとした。この加熱調理器具
を用い、４枚切り、６枚切り及び８枚切りの食パンを焼
いたところ、通常の家庭用電子レンジにより、それぞれ
１分４５秒ないし１分３０秒程度できつね色にこんがり
と焼き上がったトーストを得ることができた。このトー
ストパンは、内部に水分が十分に残っており、柔らかく
非常に美味しいものであった。

【００３２】なお、比較のために、８枚切りのパンを、
上記の容器を用いることなくそのまま電子レンジ内に入
れて加熱したところ、全く焦げ目はつかず、水分が抜け
カサカサのものになってしまった。

【００３３】上記実施例は、容器１０が正方形状のもの
であるが、この容器は長方形や六角形などの多角形、あ
るいは円形や楕円形など他の形状であっても良い。

【００３４】上記実施例では金属フィルム等よりなるマ
イクロ波遮蔽層を容器の内面に設けているが、容器の外
面に設けても良い。また、インサート成形やサンドイッ
チ成形等の手法により、容器の器壁内に配設しても良
い。

【００３５】

【発明の効果】以上の通り、本発明の加熱調理器具によ
ると、食品の表面を急速に加熱して焦げ目がつくように
焼き上げることができる。この加熱調理器具によると、
食品が直接マイクロ波加熱されることがなく、食品がカ
サカサになることなく表面だけに焦げ目がつくようこん
がりと焼き上げることができる。

【００３６】なお、請求項２の加熱調理器具によると、
食品の厚さが変わっても、その両面を十分に加熱してこ
んがりと焼き上げることができる。

【００３７】請求項３の加熱調理器具によると、食品の
焼き上げに伴って発生する水分を容器外に抜き出し、食
品をべたつかせることなく焼き上げることが可能であ
る。

【００３８】請求項４の加熱調理器具によると、容器の
下面側からも水分を十分に抜き出すことができる。ま
た、発熱板の熱が電子レンジ内の底面を過度に昇温させ
ることもない。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例に係る加熱調理器具の縦断面図である。

【図２】実施例に係る加熱調理器具の斜視図である。

【符号の説明】

１０ 容器 １２ 上容器 １４ 下容器 １６，１８ 開口部 ２０ 脚部 ２２，２４ 発熱板 ２６ 接着剤 ２８，３０ マイクロ波遮蔽層

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内部に偏平な被加熱食品を収容する内部
   スペースを有した偏平浅箱状のマイクロ波透過材料製の
   容器と、 該内部スペースを挟むように該容器内に対設されたマイ
   クロ波吸収発熱板と、 該容器の内面、外面及び該内面と外面との間の少なくと
   も１箇所であって且つ該マイクロ波吸収発熱板以外の部
   分に設けられたマイクロ波遮蔽層と、を備えてなり、 前記容器は厚さ方向の延長方向に開放し得る１対の半割
   体よりなり、前記マイクロ波吸収発熱板は各半割体の内
   面に取り付けられていることを特徴とする加熱調理器
   具。
2. 【請求項２】 請求項１において、双方の前記半割体は
   その周縁に周壁を備えており、 一方の半割体は、その周壁が他方の半割体の周壁の内側
   に入り込む大きさとされていることを特徴とする加熱調
   理器具。
3. 【請求項３】 請求項１又は２において、前記マイクロ
   波吸収発熱板は連続気孔の多孔質板であり、前記半割体
   のうち該マイクロ波吸収発熱板の背後の少なくとも一部
   が開口部とされていることを特徴とする加熱調理器具。
4. 【請求項４】 請求項３において、少なくとも一方の半
   割体の外面に、容器の厚さ方向の延長方向に突出する脚
   部が突設されていることを特徴とする加熱調理器具。