JPH0619181U - テープカセット用のスリップシート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 テープ走行性の安定化、耐久性の向上を図
り、巻取りトルクの上昇を抑制する。 【構成】 カセット筐体６内のリールハブ３、４とカセ
ット筐体６との間に配置されるスリップシートにおい
て、リールハブ３、４に対向するスリップシート部分や
その周辺を少なくともカセット筐体６の厚さ方向内方へ
相互に突出させてテープ巻き段差防止用の突出部１１、
１２を形成する。この突出部１１、１２のリールスピン
ドル挿入口７Ａ、７Ｂ、８Ａ、８Ｂの周辺に切り込み部
１６を形成し、局部的に弾性力を低下させ、テープ巻き
段差発生時におけるリールハブ３、４とスリップシート
７、８との接触圧力を低下させる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、磁気テープを巻装したリールハブを回転可能に支承したテープカセ ットにおいて、上記リールハブの両側に敷設されたスリップシートに関するもの である。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、アナログオーディオまたはデジタルオーディオ用のテープカセットを 用いて、これに記録再生を行う場合にはテープレコーダ等の磁気記録再生装置を 使用する。この種のテープカセットは、磁気記録再生装置の所定の記録または再 生位置に装着され、磁気テープを走行する。 磁気テープの記録再生に際しては、磁気テープを早送り（または巻戻し）した 後、直ちに記録または再生の定速走行モードに切り換えるなど磁気テープに対し て定速或いは高速走行が繰り返して行われ、これと同時に正回転、逆回転も繰り 返して行われることになる。この時、供給側リールハブと巻取り側リールハブと の間の磁気テープには上記操作の繰り返しに起因して弛みが生じる傾向となる。 また、テープ速度の速い、早送り（または巻戻し）とテープ速度の遅い定速走 行とでは、テープ巻上げのテンションが異なる。その結果、前記テープの弛み及 び前記テープ巻上げのテンションの差によって、テープ巻取り時に磁気テープの 巻装がくずれて巻取り位置が、例えば上下動してテープ巻き段差が発生してしま う。

【０００３】 このようなテープ巻取り時におけるテープ巻き段差が、テープ走行時における 回転動作により、テープ巻取り位置を規制するために敷設された一対のスリップ シートと接触する場合が生ずる。このようなテープ巻き段差の量がある限度を越 えると、テープ巻き段差と一方のスリップシートが接触して巻装されたテープは 他方のスリップシート側に付勢され、その結果、接触したスリップシートに対し てリールハブを挟んで対向して敷設された他方のスリップシートと、リールハブ が接触することになる。この場合、接触圧力が高いと、テープレコーダの走行駆 動トルク以上の負荷が発生してしまい、磁気テープの走行停止や磁気テープの伸 びが発生するという不都合が生ずる。また前記負荷が巻取り側で発生した場合に は、供給された磁気テープが巻取れなくなり、その結果、弛んだ磁気テープがキ ャプスタンやピンチローラに巻き込まれてしまい、磁気テープの切断、テープレ コーダの故障、或いはテープカセットの排出不能に至ってしまう。 このような事故を防止するため、早送り（または巻戻し）と定速走行における 磁気テープの巻装状態を一定に保つスリップシートが種々提案され、実用化され ている。

【０００４】 その一例としては、スリップシートにリールハブ及び磁気テープを弾性的に支 承する突出部を形成するものが提案されている。 図５は従来のスリップシートを有する磁気テープカセットの分解斜視図である 。カセット筐体の下ハーフ１と上ハーフ２とを組み合わせることによりカセット 筐体６が形成される。カセット筐体６の下ハーフ１と上ハーフ２との間には、リ ールハブ３、４に巻かれた磁気テープ５があり、磁気テープ５とカセット筐体６ の下ハーフ１と上ハーフ２との間には、巻装乃至巻回される磁気テープの位置等 を規制するスリップシート７、８が敷設されている。スリップシート７、８には 、テープレコーダ（図示せず）等のリールスピンドル９、１０を挿入するリール スピンドル挿入口７Ａ、７Ｂ及び８Ａ、８Ｂがそれぞれ設けられ、また、テープ 巻き段差の発生を防止するための巻き段差防止用の突出部１１、１２がカセット 筐体の厚さ方向内方に向けて相互に突出させて加工されている。下側のスリップ シート７のＡ−Ａ線断面図を図６に示す。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、上述したように２つのリールハブ３、４を両側から挟んで一対のス リップシート７、８を設けることにより、テープ巻回時にテープ巻き段差が発生 してもこのテープ巻き段差がスリップシートの突出部１１、１２と接触して巻き 段差の発生を阻止するように作用するのであるが、ここで問題となるのは、突出 部１１、１２の弾性力である。すなわち、スリップシート７、８に弾性力の低い 材料を使用した場合には、前記テープ巻き段差が発生したときの突出部１１、１ ２と磁気テープ５及びリールハブ３、４との接触圧力を低く押さえることができ る。しかしながら、この場合には巻回された磁気テープ５の位置を規制するとい うスリップシートの機能は、大きく劣ってしまい、大きな巻き段差が発生すると いう問題点がある。

【０００６】 これに対して、スリップシート７、８の突出部１１、１２の弾性力が高い場合 には、テープ巻き段差の発生をかなり抑制することができるが、反対に突出部１ １、１２と磁気テープ５及びリールハブ３、４との接触圧力は高くなるという問 題点がある。 以上のように、従来構造のスリップシートにあっては前記テープ巻き段差の発 生を少なくし、かつ前記接触圧力を低く保つという機能を十分に備えていないと いう問題点があった。

【０００７】 上記問題点を解決するために、実公昭６２−１５９１１号公報に示されている ようにスリップシートの両側に半円状の突状部を形成し、この突状部に剛性を調 整するための切り込みを設けた構造のスリップシートも開示されている。しかし ながら、このスリップシートは構造が比較的複雑で製造コストが高くなるという 問題点があるばかりか、構造上リールハブに対応する部分のスリップシートの強 度及びこの周辺部の強度も同じなので、テープ巻き段差発生時にはリールハブと スリッブシートの接触圧力乃至巻取りトルクが過度に増加するという問題点があ る。 本考案は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案された ものであり、その目的は、テープ走行性の安定化、耐久性の向上を図り、巻取り トルクの上昇を抑制することができる磁気テープカセット用のスリップシートを 提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】 本考案は、上記問題点を解決するために、カセット筐体内に回転可能に支承さ れると共に磁気テープが巻装されるリールハブと前記カセット筐体との間に敷設 され、前記リールハブと係合するリールスピンドルを挿入するためのリールスピ ンドル挿入口を有する一対のスリップシートにおいて、少なくとも前記リールハ ブに対向する前記スリップシート部分及びその周辺に、前記カセット筐体の厚さ 方向内方に突出させてテープ巻き段差防止用の突出部を形成し、前記リールスピ ンドル挿入口の周辺の前記突出部に局部的に弾性力を低下させる切り込み部を形 成したものである。

【０００９】

【作用】

本考案は、以上のように構成したので、テープ巻き段差防止用の突出部のリー ルハブと接触する部分には、例えば放射状に切り込み部が形成されているのでこ の部分の弾性力は低くなされ、この部分以外の突出部すなわち巻回された磁気テ ープと接触する部分の弾性力は高く保たれる。従って、テープ巻き段差の発生が 抑制され、同時にスリップシートとリールハブの接触圧力を低くすることができ 、この結果、磁気テープの巻取りトルクの上昇を防止することが可能となる。

【００１０】

【実施例】

以下に、本考案に係るテープカセット用のスリップシートの一実施例を詳述す る。 図１は本考案に係るスリップシートを用いるテープカセットを示す分解斜視図 、図２は本考案に係るスリップシートを示す斜視図、図３は組み立てられた磁気 テープカセットを示す斜視図、図４は図３中のＢ−Ｂ線断面であり、スリップシ ートとリールハブとの関係を示す図である。尚、図５に示すテープカセットと同 一部分については同一符号を付す。 図示するようにこの磁気テープカセット１３は、そのケーシングとしてプラス チックス等により形成されたカセット筐体６を有し、このカセット筐体６は、下 ハーフ１と上ハーフ２とを組み合わせることにより形成される。

【００１１】 カセット筐体６の下ハーフ１と上ハーフ２との間には、回転可能に支承された リールハブ３、４に巻かれた磁気テープ５が収納されており、磁気テープ５とカ セット筐体６の下ハーフ１と上ハーフ２との間には、巻回される磁気テープの位 置等を規制する本考案の特長とするスリップシート１４、１５が敷設されている 。スリップシート１４、１５には、テープレコーダ（図示せず）等のリールスピ ンドル９、１０を挿入するリールスピンドル挿入口１４Ａ、１４Ｂ及び１５Ａ、 １５Ｂがそれぞれ設けられ、また、テープ巻き段差の発生を防止するためのテー プ巻き段差防止用の突出部１１、１２がカセット筐体の厚さ方向内方に向けて相 互に突出させて加工されている。

【００１２】 上記突出部１１、１２は、リールハブ３、４に対向するスリップシート部分及 びその周辺に少なくとも形成され、本実施例においては略長方形状のスリップシ ート１４、１５の幅の約半分の幅Ｌ１、Ｌ２でもってその中央部に長手方向に沿 ってテープ巻き段差防止用の突出部１１、１２が形成されている。これら突出部 １１、１２間の距離Ｌ３は、カセット組み立て時にこの突出部１１、１２間にリ ールハブ３、４及び巻回された磁気テープ５が遊嵌状態で収容し得るような距離 に設定される。

【００１３】 そして、各スリップシート１４、１５の各リールスピンドル挿入口１４Ａ、１ ４Ｂ、１５Ａ、１５Ｂの周辺部には、この部分の弾性力を局部的に低下させるた めの切り込み部１６が各挿入口を中心としてそれぞれ複数個形成されている。従 って、各挿入口の周辺部のスリップシートは切り込み切片１７として構成される 。各切り込み部１６の長さＬ４は、リールハブ３、４の外周部の長さＬ５と略同 等の長さに設定してリールハブ３、４と直接接触するスリップシート部分の弾性 力を低下させる。すなわち、リールハブ回転時にこれとスリップシートとが押圧 接触しても切り込み切片１７が屈曲変形することで接触圧力が弱められるように 構成されている。

【００１４】 上記１つの挿入口に対して形成される切り込み部１６の数は、スリップシート １４、１５の材質の持つ弾性率によって設定するようにし、例えばスリップシー トの材質が弾性率が高い場合には、切り込み部１６の数を多く形成することによ りリールハブ３、４との接触部、すなわち切り込み切片１７における弾性力を大 きく低下させることが可能となる。 図２は下側のスリップシートの斜視図を示し、図２（Ａ）に示すスリップシー ト１４の場合には、リールスピンドル挿入口１４Ａ、１４Ｂを中心としてそれぞ れ点対称に２個の切り込み部１６が形成されている。また、図２（Ｂ）に示すス リップシート７の場合には、リールスピンドル挿入口１４Ａ、１４Ｂを中心とし てそれぞれ１２０°の間隔を隔てて放射状に３個の切り込み部１６が形成されて いる。更に、図２（Ｃ）に示すスリップシート１４の場合には、リールスピンド ル挿入口１４Ａ、１４Ｂを中心としてそれぞれ９０°の間隔を隔てて放射状に４ 個の切り込み部１６が形成されている。このようにスリップシートの弾性力を考 慮して種々の数の切り込み部を形成することが可能である。

【００１５】 次に、以上のように構成された本実施例の作用について説明する。 以上のように構成されたスリップシート１４、１５を組み込んだ磁気テープカ セット１３において、磁気テープ５に対して早送り、或いは巻き戻しを繰り返し 行ったり、記録・再生を繰り返し行ったりしているうちに、図４に示すようにテ ープ巻き段差１８が発生した場合には、段差１８が接近した側すなわち図示例に あっては上側のスリップシート１５（図示例にあっては段差１８が上側に向けて 偏った場合を示す）の突出部１２の内面と段差部分１９とが接触し、この結果、 反作用によりこのリールハブ４及びこれに巻回された磁気テープ５は図中下方向 に向けて付勢されることになる。このように、下方向への付勢力が発生すると、 リールハブ４とリールスピンドル挿入口１４Ｂの周辺部の切り込み切片１７が接 触することになる。

【００１６】 そして、上記テープ巻き段差１８の高さがある限度を越えると、従来構造のス リップシートでは接触圧力が直線的に増加して巻取りトルクが許容値以上に上昇 してしまうが、本実施例のスリップシート７にあっては、切り込み部１６が形成 してあることからこの部分の弾性力が低下しており、従って、切り込み切片１７ が図中仮想線で示すように矢印２０の方向へ僅かに屈曲変形し、これによりスリ ップシート７とリールハブ４との接触圧力が弱められ、巻取りトルクの過度の上 昇が防止されることになる。 このような作用は、テープ巻き段差１８が下方向に偏って発生した場合も或い は他方のリールハブ３側で発生した場合にも同様に発揮されることになる。この ようにカセット使用時にテープ巻き段差１８が発生しても、スリップシート１４ 、１５とリールハブ３、４の接触圧力が過度に大きくなることを防止でき、巻取 りトルクが許容値以上に大きくなることを確実に防止することができる。

【００１７】 また、上述のように接触圧力を十分に低下させることができることから２つの スリットシート７、８の突出部１１、１２間の距離Ｌ３を従来より小さく設定す ることができ、従って、テープ巻き段差１８の発生防止効果を高めることができ る。 尚、上記実施例にあっては、切り込み部１６の長さＬ４をリールハブ３、４の 外周部の長さＬ５と略同じに設定したが、これに限定されず、もう少し長くして 或いは短くしてこの部分の弾性力を調整するようにしてもよい。

【００１８】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案のスリップシートによれば、テープ巻き段差防止 用の突出部に切り込み部を形成することにより、テープ巻き段差を小さく押さえ ることができ、リールハブとスリップシートの突出部の接触圧力を低く維持する ことができる。 従って、巻取りトルクの上昇を防止することができ、テープ走行性の安定化、 耐久性の向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係るスリップシートを用いる磁気テー
プカセットを示す分解斜視図である。

【図２】本考案に係るスリップシートの複数の例を示す
斜視図である。

【図３】組み立てられた磁気テープカセットを示す斜視
図である。

【図４】図３中のＢ−Ｂ線断面であり、スリップシート
とリールハブの関係を示す図である。

【図５】従来のスリップシートを用いる磁気テープカセ
ットを示す分解斜視図である。

【図６】図５のＡ−Ａ線断面図である。

【符号の説明】

１…下ハーフ、２…上ハーフ、３，４…リールハブ、５
…磁気テープ、６…カセット筐体、９，１０…リールス
ピンドル、１１，１２…テープ巻き段差防止用の突出
部、１３…磁気テープカセット、１４，１５…スリップ
シート、１４Ａ，１４Ｂ，１５Ａ，１５Ｂ…リールスピ
ンドル挿入口、１６…切り込み部、１７…切り込み切
片、１８…テープ巻き段差、Ｌ４…切り込み部の長さ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 カセット筐体内に回転可能に支承される
   と共に磁気テープが巻装されるリールハブと前記カセッ
   ト筐体との間に敷設され、前記リールハブと係合するリ
   ールスピンドルを挿入するためのリールスピンドル挿入
   口を有する一対のスリップシートにおいて、少なくとも
   前記リールハブに対向する前記スリップシート部分及び
   その周辺に、前記カセット筐体の厚さ方向内方に突出さ
   せてテープ巻き段差防止用の突出部を形成し、前記リー
   ルスピンドル挿入口の周辺の前記突出部に局部的に弾性
   力を低下させる切り込み部を形成したことを特徴とする
   テープカセット用のスリップシート。