JPH0617788A - サージング発生予測装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】このサージング発生予測装置は、記憶部１０ａ
に、ベーン開度とサージング開始点差圧との関係を示す
データを、予め記憶している。しきい値設定部１０ｂ
が、記憶されたデータに基づいて、その時のベーン開度
に応じた、適切なサージング開始点差圧をしきい値とし
て採用する。このしきい値と検出された差圧との比較に
基づいてサージングの発生を予測する。 【効果】風量の変化にかかわらずサージングの発生を的
確に予測できる。ひいては、ターボ圧縮機に、運転範囲
の拡大および部分負荷効率の向上をもたらす。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、ターボ冷凍機等に用
いられるターボ圧縮機に備えられ、サージングの発生を
予測するサージング発生予測装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】通常、ターボ圧縮機においては、インペ
ラの吐き出し側で流体を減速して運動エネルギを静圧に
変換するディフューザと、このディフューザに連続した
スクロール（渦巻き室）とが設けられている。一般に、
ディフューザは、平行な側壁によって形成されている。

【０００３】このディフューザの入口部でのシュラウド
側圧力とハブ側圧力との差圧と、サージングの発生との
間には、密接な相関があり、上記差圧がある臨界値を超
えないようにすることにより、サージングを防止できる
ということが知られている。そこで、上記の差圧と臨界
値との比較に基づいてサージングの発生を予測するサー
ジング発生予測装置が提供されている。このサージング
発生予測装置は、上記の差圧が臨界値に近づくと、サー
ジングの発生が近づいたことを知らせるように警報を発
する警報装置に適用されたり、上記の差圧が臨界値に近
づくとベーン開度を大きくして風量を増大させることに
よりサージングの発生を防止するサージング発生防止装
置に適用されたりしている。

【０００４】一方、従来、ディフューザの通路幅は、固
定的であったので、吐出風量を吸込みベーンによって可
変する容量制御式のターボ圧縮機に対しては、負荷の変
化に対応できず、ディフューザの効率が悪くなる等の問
題があった。このような問題点を解決するために、ディ
フューザの通路幅を調整自在な可動側壁を設け、この可
動側壁を、駆動機構によって、ベーン開度が小さくなる
と通路幅が小さくなるように移動させることにより、負
荷の変化に対応するようにしたターボ圧縮機が提供され
ている（例えば、特開平３−１５７００号公報参照）。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】このようにディフュー
ザの出口部の通路幅が変更されるタイプのターボ圧縮機
においては、通路幅の変更に伴う風量の変化に応じて、
上記のサージング開始点での差圧も変化される。これに
対して、上記のサージング発生予測装置の臨界値として
一定の値を設定していた場合には、下記のような不具合
が生ずる。

【０００６】風量変化に無関係に一定の値を臨界値とし
て採用すると、この臨界値は、必然的に低めに設定され
ることになり、ターボ圧縮機の運転は、サージング限界
までを有効に使ったものではなくなる。すなわち、運転
範囲が狭く、部分負荷効率もあまり高いものが得られな
い。そこで、この発明の目的は、風量の変化にかかわら
ずサージングを的確に予測でき、ひいてはターボ圧縮機
に、運転範囲の拡大および部分負荷効率の向上をもたら
すサージング発生予測装置を提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】請求項１に係るサージン
グ発生予測装置は、サクションベーンの開度に応じてデ
ィフューザの少なくとも出口部の通路幅を調整するター
ボ圧縮機に備えられ、サージングの発生を予測するサー
ジング発生予測装置において、サクションベーンの開度
およびディフューザの出口部の通路幅の何れか一方から
なる、風量に関連する状態量を検出する状態量検出手
段、ディフューザの入口部でのシュラウド側圧力とハブ
側圧力との差圧を検出する差圧検出手段、およびこの差
圧検出手段によって検出された差圧と設定されたしきい
値との比較に基づいてサージングの発生を予測するコン
トローラを備え、このコントローラは、上記状態量とサ
ージング開始点での差圧との関係を示すデータを予め記
憶しておく記憶部、およびこの記憶部によって記憶され
たデータに基づいて、上記状態量検出手段によって検出
された状態量に応じた、サージング開始点での差圧をし
きい値として設定するしきい値設定部を含んでいること
を特徴とするものである。

【０００８】

【作用】本発明者は、ディフューザの入口部でのシュラ
ウド側圧力とハブ側圧力との差圧と、サージングの発生
との間には密接な相関があり、上記の差圧がある臨界値
を超えないようにすれば、サージングを防止することが
できるという知見を得ている。一方、上記の臨界値すな
わちサージング開始点での差圧は、常に一定というわけ
ではなく、風量に応じて変化する。

【０００９】そこで、本発明においては、ベーン開度等
の風量に関連する状態量とサージング開始点差圧との関
係を示すデータを、予め記憶部に記憶しておき、この記
憶されたデータに基づいて、しきい値設定部によって、
検出された状態量に応じたサージング開始点差圧をしき
い値として設定し、この設定されたしきい値と検出され
た差圧との比較に基づいてサージングの発生を予測す
る。風量に関連する状態量に応じて、適切なしきい値を
採用することにより、風量の変化にかかわらずサージン
グの予測が的確に行える。

【００１０】さらに、本発明者は、サージング開始点差
圧を無次元化した量は、ベーン開度が全開の状態におい
て、ディフューザの出口部の通路幅の絞り比に無関係に
一定となり、サージング開始点差圧と他の状態量との相
関に一定の規則性があるという知見を得ている。したが
って、ある絞り比での基礎試験を事前に行っておけば、
多数の絞り比でのデータを取るための試験を行う必要が
なく、データ確保のための試験に手間がかからない。

【００１１】

【実施例】以下実施例を示す添付図面によって詳細に説
明する。図２はこの発明の一実施例のサージング発生予
測装置を含むターボ圧縮機を示す概略断面図であり、図
１はその概略構成図である。図２を参照して、このター
ボ圧縮機は、空気調和装置の冷凍機などで用いられるも
ので、図外の蒸発器で外部から潜熱を奪って蒸気化した
高温の冷媒ガスを圧縮し、高温高圧となった冷媒ガス
を、図外の凝縮器に与えるようにしたものであり、ハウ
ジング１４の中心部に、モータ（図示せず）に連動する
増速装置１５を介して、ハブ１ｃを持ったインペラ１が
駆動回転可能に支持しているとともに、このインペラ１
の出口１ｂ側に、通路７を有するディフューザＡの入口
部Ａ１を臨ませており、インペラ１の入口１ａ側には、
サクションベーン１６を、モータ１７により風量調節可
能に内装している。

【００１２】インペラ１が高速に回転駆動されると、イ
ンペラ１内に吸入された冷媒ガスはハブ１ｃとシュラウ
ド１ｄとの間を通る際に遠心力を与えられ、ディフュー
ザＡを介して、ディフューザＡに連続して形成されたス
クロール４に導かれる。このようにして、吸入した冷媒
ガスに遠心力によって速度エネルギを与え、この速度エ
ネルギを圧力エネルギに変換するようにして冷媒ガスの
圧縮が達成される。

【００１３】本実施例のサージング発生予測装置Ｂは、
サクションベーン１６の開度を検出する開度検出手段２
１、ディフューザＡの入口部Ａ１でのシュラウド側圧力
とハブ側圧力との差圧を検出する差圧検出手段２２、お
よびサージングの発生を予測し、報知手段としてのディ
スプレイ２３の画面に所定の警告表示を行わせるべく、
ディスプレイ２３に対して報知信号を出力するコントー
ラ１０２を含んでいる。

【００１４】図１を参照して、ディフューザＡは、イン
ペラ１の吐き出し方向に伸びた一対の対向した側壁２お
よび側壁３により形成されている。側壁２の一部は、デ
ィフューザＡの出口部Ａ２を絞るためにディフューザＡ
の通路幅の方向に移動自在な可動側壁８として構成され
ており、スクロール４は、この可動側壁８側に片寄った
状態で形成されている。

【００１５】この可動側壁８は、通路幅調整機構９によ
って上記のサクショベーン１６の開度に応じて移動さ
れ、これにより、ディフューザＡの出口部Ａ２の通路幅
が調整されるようになっている。この通路幅調整機構９
は、サクションベーン１６を駆動する駆動軸９１と、こ
の駆動軸９１に一体的に設けられた偏心カム９２と、こ
の偏心カム９２に一端部９３ａが接触し、他端部９３ｂ
が可動側壁８の裏面に固定された操作軸９３とからな
る。

【００１６】上記の駆動軸９１の所定部には、ギア部９
１ａが設けられ、このギア部９１ａには、回転型のポテ
ンショメータ２１ａがギア結合されている。このポテン
ショメータ２１ａには、当該ポテンショメータ２１ａか
らの信号に基づいてベーン開度を検出する、上記開度検
出手段２１が接続されている。この開度検出手段２１
は、コントローラ１０の後述するしきい値設定部１０ｂ
に、開度信号を出力する。

【００１７】ディフューザＡの入口部Ａ１には、ハブ側
圧力を導くハブ側導管１１、およびシュラウド側圧力を
導くシュラウド側導管１２が、開口されている。これら
の導管１１，１２は、各導管１１，１２からの圧力に基
づいて上記ハブ側圧力とシュラウド側圧力との差圧を検
出する、上記差圧検出手段２２に接続されている。この
差圧検出手段２２は、コントローラ１０の後述する判定
部１０ｃに、しきい値信号を出力する。

【００１８】コントローラ１０は、サクションベーン１
６の開度とサージング開始点での差圧との関係を示すデ
ータ（図３参照）を近似式として予め記憶しておく記憶
部１０ａ、この記憶部１０ａからのデータ信号を受け、
記憶されたデータに基づいて、開度検出手段２１によっ
て検出された開度に応じたサージング開始点での差圧を
しきい値として設定するしきい値設定部１０ｂ、しきい
値設定部１０ｂからのしきい値信号を受け、設定された
しきい値と差圧検出手段２２によって検出された差圧と
を比較し、検出された差圧がしきい値を超えた場合に、
その旨を示す判定信号を出力する判定手段１０ｃ、およ
びこの判定手段１０ｃからの信号を受けてディスプレイ
２３に対して報知信号を出力する出力部１０ｄを含んで
いる。

【００１９】この実施例によれば、ターボ圧縮機の仕様
が決まった時点で、基礎試験を行って、風量に関連する
状態量であるベーン開度とサージング開始点差圧との関
係を示すデータを取り、このデータを、コントローラ１
０の記憶部１０ａに記憶しておく。この記憶されたデー
タに基づいて、しきい値設定部１０ｂによって、検出さ
れたベーン開度に応じたサージング開始点差圧をしきい
値として設定し、この設定されたしきい値と検出された
差圧との比較に基づいてサージングの発生を予測する。
ベーン開度に応じてすなわち風量に応じて、適切なしき
い値を採用することにより、風量の変化にかかわらず最
適な、サージングの予測が行える。

【００２０】そして、ベーン開度が小さい起動時では、
ディフューザＡの出口幅が小さく、サージラインが高ヘ
ッド側に移動しているため、水温が高くても始動が可能
となるとともに、不要にディスプレイ２３の画面上に警
告表示がなされることがない。また、サージングライン
およびベーン開度１００％ラインを示す図４（図４にお
いて、Ｃ１〜Ｃ４は、ディフューザＡの出口部Ａ２の絞
り比εがそれぞれ、１〜０．２５を示している）、およ
び流量係数とサージング余裕圧力係数を０．０４とした
性能評価線上での断熱効率との関係を示す図５を参照し
て、通常運転時では、能力に応じて、十分なサージング
余裕および高い効率（図５において、その風量領域での
最大効率が得られる効率線が採用される）を確保した状
態での最適な運転が可能となるとともに、運転条件に応
じたサージング防止が可能となる。従来、行っていた高
圧カットによるサージング防止の場合と比較して、サー
ジング限界までより近づいた状態での運転（図４におい
て、風量に応じて最適なサージングラインが選択され
る）が可能となる。

【００２１】なお、本発明者は、サージング開始点差圧
ΔＰを、サージング開始点における圧縮機入口密度ρ、
流量係数φ、圧力係数Ψおよびインペラ出口周速Ｕを用
いて無次元化した量ΔＰ／ρＵ² （φ／Ψ）が、ベーン
開度が全開の状態において、図６に示すようにディフュ
ーザＡの出口部Ａ２の通路幅の絞り比εに無関係に一定
となり、サージング開始点差圧と他の状態量との相関に
一定の規則性があるという知見を得ている。したがっ
て、ある絞り比での基礎試験を事前に行っておけば、多
数の絞り比でのデータを取るための試験を行う必要がな
く、データ確保のための試験に手間がかからない。

【００２２】なお、この発明は上記実施例に限定される
ものではなく、サクションベーン１６および可動側壁８
を、油圧により駆動することができる。また、状態量検
出手段として、開度検出手段に代えて、ディフューザＡ
の出口部Ａ２の通路幅を検出する通路幅検出手段を設
け、コントローラ１０の記憶部１０ａには、通路幅とサ
ージング開始点での差圧との関係データを記憶させてお
き、コントローラ１０のしきい値設定部１０ｂには、通
路幅に応じたしきい値を設定させるようにすることもで
きる。

【００２３】その他、この発明の要旨を変更しない範囲
で種々の設計変更を施すことができる。

【００２４】

【発明の効果】この発明によれば、風量に関連する状態
量の変化に応じて、適切なサージング開始点差圧をしき
い値として設定するので、風量の変化にかかわらずサー
ジングの予測が的確に行える。ひいては、ターボ圧縮機
に、運転範囲の拡大および部分負荷効率の向上をもたら
すことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係るサージング発生予測装
置、を含むターボ圧縮機の概略構成図である。

【図２】ターボ圧縮機の概略縦断面図である。

【図３】ベーン開度とサージング開始点での差圧との関
係を示す図である。

【図４】流量係数と圧力係数との関係を示す図である。

【図５】流量係数と断熱効率との関係を示す図である。

【図６】ディフューザの出口部の絞り比と、ベーン開度
が全開の状態での、ディフューザ入口部での幅方向差圧
を無次元化した量との関係を示す図である。

【符号の説明】

Ａ ディフューザ Ａ１ 入口部 Ａ２ 出口部 １０ コントローラ １０ａ 記憶部 １０ｂ しきい値設定部 １６ サクションベーン ２１ 開度検出手段 ２２ 差圧検出手段

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】サクションベーン（１６）の開度に応じて
   ディフューザ（Ａ）の少なくとも出口部（Ａ２）の通路
   幅を調整するターボ圧縮機に備えられ、サージングの発
   生を予測するサージング発生予測装置において、 サクションベーン（１６）の開度およびディフューザ
   （Ａ）の出口部（Ａ２）の通路幅の何れか一方からな
   る、風量に関連する状態量を検出する状態量検出手段
   （２１）、 ディフューザ（Ａ）の入口部（Ａ１）でのシュラウド側
   圧力とハブ側圧力との差圧を検出する差圧検出手段（２
   ２）、およびこの差圧検出手段（２２）によって検出さ
   れた差圧と設定されたしきい値との比較に基づいてサー
   ジングの発生を予測するコントローラ（１０）を備え、 このコントローラ（１０）は、 上記状態量とサージング開始点での差圧との関係を示す
   データを予め記憶しておく記憶部（１０ａ）、およびこ
   の記憶部（１０ａ）によって記憶されたデータに基づい
   て、上記状態量検出手段（２１）によって検出された状
   態量に応じた、サージング開始点での差圧をしきい値と
   して設定するしきい値設定部（１０ｂ）を含んでいるこ
   とを特徴とするサージング発生予測装置。