JPH06172939A - 高磁束密度低鉄損一方向性電磁鋼板およびその製造法 - Google Patents

高磁束密度低鉄損一方向性電磁鋼板およびその製造法

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JPH06172939A
JPH06172939A JP32431892A JP32431892A JPH06172939A JP H06172939 A JPH06172939 A JP H06172939A JP 32431892 A JP32431892 A JP 32431892A JP 32431892 A JP32431892 A JP 32431892A JP H06172939 A JPH06172939 A JP H06172939A
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magnetic flux
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grain
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JP32431892A
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Hiroaki Masui
浩昭 増井
Isao Iwanaga
功 岩永
Kunihide Takashima
邦秀 高嶋
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 一次被膜の形成および安定したGOSS方位
の二次再結晶方位粒を得る方向性電磁鋼板およびその製
造法を提供する。 【構成】 Si:1〜7%および鉄中の拡散の活性化エ
ネルギーが70kcal/mol以上の元素の1種類以上を合計
0.005〜0.50%含む鋼をベースとする一方向性
電磁鋼板の製造法において、仕上げ焼鈍の昇温速度をM
gOにSb系の添加物を0.05〜0.50%添加する
ときは0.1〜80℃/時、またボロン系の添加物を添
加する場合は、5〜400℃/時にすることにより、高
磁束密度、低鉄損を得る。さらに、80kcal/mol以上の
元素のHf,Bi,Wに特定し、高磁束密度の鋼板を得
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は表面被膜および磁気特性
に優れた珪素鋼板およびその製造法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】トランス用等の磁気特性に優れた珪素鋼
板を製造するに際して、絶縁特性と鋼板表面に張力を与
えトランスの性能向上に必要な磁気特性を向上させ、か
つ鋼板との密着性が良好な一次被膜を形成させることは
大変重要である。通常の技術では脱炭を伴う一次焼鈍後
に鋼板にマグネシアと呼ばれる酸化マグネシウム(Mg
O)の微粉末を水溶させたスラリー状のものを塗り、必
要に応じて乾燥させたあと、二次再結晶焼鈍工程で焼成
させ、鋼板中のSiとの反応でフォルステライト(Mg
2 SiO4 )と呼ばれるセラミックス質状の絶縁被膜を
形成させる。これが鋼板に張力を与え、磁気特性とりわ
け鉄損と呼ばれるトランスの効率を支配する特性値を向
上させるのに有効である。
【0003】しかも、このフォルステライト形成の状態
が、二次再結晶で鋼板の結晶方位を通称GOSS方位と
呼ばれ、透磁率や磁束密度の向上に不可欠な鋼板長手方
向(圧延方向)に対して{110}〔001〕の結晶方
位を有するやや粗大な二次再結晶粒を成長させるのにも
重要な役割を果たしていることもよく知られている。す
なわち、二次再結晶焼鈍昇温過程中に十分緻密な被膜が
形成されないまま二次再結晶させようとしても鋼板内の
インヒビターと呼ばれる微細な窒化物や硫化物等がその
ままの状態で、あるいは分解して早く鋼板外に抜けでて
しまう。
【0004】このため、昇温中にGOSS方位粒を優先
的に成長させ、他の方位粒の成長を抑制させる役目のイ
ンヒビター効果が発揮できず、通称、細粒と呼ばれ、G
OSS方位粒の二次再結晶粒の成長が部分的あるいは全
面的に行われない、極めて磁気特性の劣る鋼板を生み出
すことになる。なお、このMgOの中に酸化チタン(T
iO2 等)やその他の化合物を添加させ、さらに緻密な
一次被膜を形成させることも行われる。
【0005】しかるに、実際は上記の技術知見があって
もなおかつ十分な一次被膜および二次再結晶組織を安定
して作ることは容易ではなく、特に二次再結晶焼鈍条件
を工業的必要性から種々変化させることがあるがこの場
合にも十分な一次被膜を作りこなし、さらに十分適正な
方位の二次再結晶を生成せしめることは容易なことでは
ない。その理由の一つとして、一次被膜の形成とインヒ
ビターと称される二次再結晶過程での適切な添加物の形
成に関する製法上の解明が未だ十分でないことが挙げら
れる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術における課題を解決し、二次再結晶時に一次被膜を安
定して珪素鋼表面に形成し、かつ磁区制御を行う前の磁
束密度B8 ≧1.92T(テスラ)および鉄損W17/50
≦1.10watt/kgを常時安定して出せる、GOSS方
位の集積した二次再結晶粒を有する方向性珪素鋼板およ
びその製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは下記の通りである。 (1)フォルステライトを主成分とする一次被膜および
母金属に含まれる総計でHf,Biの元素の1種類以上
の合計が0.003〜0.30%であり、かつ磁束密度
8 が1.92T(テスラ)以上および鉄損W17/50
1.10watt/kg以下である高磁束密度低鉄損一方向性
電磁鋼板。 (2)フォルステライトを主成分とする一次被膜および
母金属に含まれる総計でHfが0.003〜0.30%
であり、かつ磁束密度B8 が1.92T(テスラ)以上
および鉄損W17/50 が1.10watt/kg以下である高磁
束密度低鉄損一方向性電磁鋼板。
【0008】(3)Si:1〜7%を含む鋼を溶製し、
熱間圧延、冷間圧延、一次再結晶焼鈍および二次再結晶
焼鈍を基本工程とする方向性電磁鋼板の製造において、
鋼中成分として、鉄中の拡散の活性化エネルギーQが7
0kcal/mol以上の元素の1種類以上を合計で0.005
〜0.5%含有させ、一次再結晶粒径(断面粒径)の測
定の平均値を5〜35μm、かつそのそれぞれの粒径の
標準偏差値が該平均値の10〜70%とし、かつ二次再
結晶焼鈍前にフォルステライトを主体とする一次被膜形
成のために塗布するマグネシアの中にアンチモン系の化
合物を0.05〜5.0%添加し、かつ二次再結晶焼鈍
での800℃〜最高到達温度の平均昇温速度を毎時0.
1〜80℃とする高磁束密度低鉄損一方向性電磁鋼板の
製造法。 (4)Si:1〜7%を含む鋼を溶製し、熱間圧延、冷
間圧延、一次再結晶焼鈍および二次再結晶焼鈍を基本工
程とする方向性電磁鋼板の製造において、鋼中成分とし
て、鉄中の拡散の活性化エネルギーQが70kcal/mol以
上の元素の1種類以上を合計で0.005〜0.5%含
有させ、一次再結晶結晶粒径(断面粒径)の測定の平均
値を5〜35μm、かつそのそれぞれの粒径の標準偏差
値が該平均値の10〜70%とし、二次再結晶焼鈍前に
フォルステライトを主体とする一次被膜形成のために塗
布するマグネシアの中にボロン系、ストロンチウム・バ
リウム系、炭・窒化物系、硫化物系、塩化物系の1種ま
たは2種以上を合計0.05〜5.0%添加し、かつ二
次再結晶焼鈍での800℃〜最高到達温度の平均昇温速
度を毎時5〜400℃とする高磁束密度低鉄損一方向性
電磁鋼板の製造法。 (5)鋼中への添加元素として活性化エネルギーQが7
0kcal/mol以上の元素であるHf,Bi,W,Nb,C
o,Ni,Cu,Moを使用する(3)または(4)記
載の高磁束密度低鉄損一方向性電磁鋼板の製造法。 (6)鋼中への添加元素として、活性化エネルギーQが
80kcal/mol以上の元素であるHf,Bi,Wを使用す
る(3)または(4)記載の高磁束密度低鉄損一方向性
電磁鋼板の製造法。
【0009】以下に本発明を詳細に説明する。方向性珪
素鋼板の二次再結晶はGOSS方位と呼ばれる{11
0}〈001〉方位の粒を二次再結晶焼鈍(仕上げ焼鈍
とも呼ばれる)時に十分成長させることが肝要である。
これは一次再結晶焼鈍(以下、一次焼鈍と呼ぶ)の中の
ある特定粒のみを粗大再結晶させるもので、この時にイ
ンヒビター(Inhibitor)と呼ばれるAlN等
の微細析出物を仕上げ焼鈍前に十分作っておくことが技
術上必要であることがよく知られている。そして、Al
N,Si3 4 等を利用する場合は、このために必要な
Nを鋼溶製時または一次焼鈍後または他の工程中に添加
することが行われる。後者の場合は、通常脱炭反応も機
能する一次焼鈍の設備の一部に窒化反応を行う設備を内
部または近接して設置し、一次焼鈍後またはそれと平行
させて窒化反応させる方法がある。
【0010】鋼溶製時に十分低炭素化した鋼では脱炭機
能よりも一次焼鈍後の表面層の酸化物層を変えて、被膜
形成に有利な形にすることがむしろ重要な役割となる。
このように一次焼鈍し、その前か後の工程で窒素を添加
した鋼板にMgOを主体とする通称MgOパウダーとい
うものをスラリー状に鋼板表面に塗布し、仕上げ焼鈍工
程で被膜生成および二次再結晶を行せしめるのが一つの
方法であるが、この一次被膜形成に関連し、次の実験を
行った。
【0011】表1は一次焼鈍および窒化後の3%Si鋼
板にMgOパウダーをスラリー状に塗布して、二次再結
晶焼鈍の途中の仕上げ焼鈍引き出し実験を行った結果で
ある。ここでパウダーにSb系、B系とあるのはここで
はそれぞれMgOパウダーに微量のTiO2 (5%)と
Sb2 (SO4 3 (0.2%)、TiO2 (5%)と
Na2 4 7 (0.3%)を添加し、フォルステライ
ト形成等を促進させたものである。
【0012】二次再結晶焼鈍は図1の方法で途中まで行
い、各温度で引き出す、いわゆる引き出し実験を行っ
た。かくして引き出した鋼板を表面からGDS分析(G
lowDischarge Optical Emis
sion Spectrometry:グロー放電発光
分光分析法)を行い、フォルステライト、つまり、Mg
ピークがどの引き出し温度から出現するかを調べた結果
を表1に示してある。ここで( )の温度は測定温度の
中間に出現があったと判定されたものである。表1の結
果で明瞭なことは、Sb系の方がB系よりも低い温度で
フォルステライトの形成があることである。
【0013】
【表1】
【0014】フォルステライトの生成はMgOと鋼板中
の表面濃化したSiが反応し、 2MgO+SiO2 →Mg2 SiO4 の反応を起こしたものと一般的に考えられている。とこ
ろで珪素鋼板の製造工程とこれらの鋼板の性質とはどの
ようにコントロールできるのであるのか、という点につ
いて検討してみた。上述のように一次被膜の形成過程と
珪素鋼板の諸性質との因果関係が明確になれば、当然工
業的にそれを製造に反映させることができることにな
る。
【0015】表1の実験結果にみられるようにSb系の
化合物をMgOに微量添加した場合、MgOの溶融は比
較的低温で行われるので、たとえば二次再結晶焼鈍の昇
温速度を比較的小さくした方がより早くフォルステライ
トの生成を促進させ、優れた一次被膜を生成させやすい
ことになる。なおアンチモン(Sb)系の化合物とは当
実験で用いたSb2 (SO4 3 のみならずSbを含む
他の化合物を含む。一方、同じ低融点化合物でもB系の
化合物をMgOに微量添加した場合は、MgOの溶融は
Sb系の化合物よりも比較的高温で行われるので、たと
えば二次再結晶焼鈍の昇温速度を比較的大きくした方
が、より早くフォルステライトの生成を促進させる。な
おボロン(B)系はNa系のみならずNaの代わりにC
a,Mg等を含む化合物や、ほう酸(H3 BO3 )やほ
う酸ソーダも含まれる。
【0016】さらに、アンチモン系よりも高融点系とい
う点でストロンチウム・バリウム系、炭・窒化物系、硫
化物系、塩化物系もボロン系と同等の作用がみとめられ
る。これらの化合物を総称して非アンチモン系と呼ぶこ
とにする。なお、通常MgOにはTiO2 等の酸化物を
添加させ高温反応を容易にすることが行われるが、本発
明の上記の添加物の効果はその酸化物の添加量に関係な
く発揮されるので、MgOに酸化物が添加されても、こ
れをプレインと称してベース材の一部とみなしている。
このように珪素鋼板の特性に重要な支配要因となる一次
被膜は本発明により、その組成分布の解明およびそれと
相関を有する製造方法との組み合わせにより、ある程度
自由にコントロールすることが可能となった。
【0017】さて、ここで珪素鋼板の製造方法に触れる
必要がある。前述のように本発明が可能な珪素鋼板は必
要に応じてAlを含有し、AlNあるいはSi3 4
主要インヒビターの一部とすることが可能である。もち
ろんSi,Al以外に、後述する本発明の擬インヒビタ
ー元素およびMn,S,Se,Sb,B,Ti,Sn,
V,Cr,P等の他の添加元素を付加的に添加させ、磁
気特性の向上をはかることは本発明の基本を変えるもの
ではない。ところでAlNあるいはSi3 4 をインヒ
ビターとする鋼は公知であり、そのいずれの場合におい
ても本発明の技術を適用することが可能である。しかし
ながら、これだけでは本発明の目標の磁区制御を行う前
のB8 ≧1.92TおよびW17/50 ≦1.10watt/kg
を安定して達成することは困難である。すなわち本発明
の主要の考えの一部は以下の通りである。
【0018】従来の一方向性電磁鋼板の二次再結晶でG
OSS方位を鋭く得るためには、インヒビターと称する
析出物を二次再結晶前または二次再結晶時に鉄中に出さ
せることが知られている。これはGOSS方位を持った
結晶粒が優先的に成長するべく、他の方位の結晶粒の成
長を抑制するためであると一般的に言われている。事実
AlNやMnSやMnSe等に代表される一方向性電磁
鋼板はこれらの析出物を使い、優れた磁性の鋼板を製造
している。しかしながらこのような方法だけでは、いか
なる条件下でも安定して上記の本発明の特性の鋼板を製
造することは困難である。その理由はこれらの析出物が
高温、例えば1000℃以上では基本的に分解してしま
うことによると考えられる。従って1000℃以上の粒
成長でのインヒビターフリーの状況下で粒成長させて
も、GOSS方位から多少逸脱して粒成長することがあ
ると考えられる。
【0019】このような状況に対応するためにまず10
00℃以上で安定して存在する析出物が極めて重要であ
ることがわかる。従来の知見では残念ながら適当な技術
が見つかっていない。その理由は例えば、Tiは高温で
も安定な化合物、TiN等をつくるし、その他の元素で
も酸化物等が比較的高温、たとえば1200℃以上でも
安定である。しかしながら、これらの化合物はその生成
量が結晶粒の粒界を万遍なく覆うほど数が多くはなく、
インヒビターとしての機能が期待できない。仮に量を多
くするべく多量に入れたとしても、今度は純化の目的も
ある二次再結晶焼鈍では十分抜けないで製品の鉄損を劣
化させる。一方、1000℃以上でインヒビター強度が
全く変わらず頑固なままでは、1000℃までに成長し
たGOSS方位から多少ずれた二次再結晶粒が、そのま
ま軌道修正せずに製品に残ることが考えられる。
【0020】本発明ではかかる従来知見の状況を打開す
るべく画期的な技術知見を見いだしたものである。本発
明が着目したのは従来の析出物の概念にとらわれないで
粒界移動を抑制する物質がないか、という観点からスタ
ートした。その結果、粒界に偏析しやすくかつ1000
℃以上の高温でもそれが比較的残り、かつさらに高温に
なったときに徐々に消えていくような元素はないかとい
う点に帰結した。その結果、鉄のなかに入って拡散の活
性化エネルギーQ(kcal/mol)の大きい元素に着目し
た。
【0021】その理由は以下の通りである。いわゆる拡
散係数Dは式で表される。 D=D0 exp(−Q/RT) ………………………………… ここでD:拡散定数、D0 :定数、R:気体定数、T:
絶対温度 この式は対数をとると、式となる。 InD=InD0 +(−Q/RT) ………………………………… つまり、拡散定数Dは、活性化エネルギーQが大きいほ
ど、高温でも小さいことを示し、つまり拡散に長時間を
必要とすることを示している。このことはもし高温まで
この式が通用するならば、Qの大きい元素(高拡散エネ
ルギー元素)は高温でも安定していることを示してい
る。このような元素はそれ自体インヒビターとしての可
能性があるのではないかと予測される。
【0022】その結果、本発明によれば、Qが70kcal
/mol以上の場合には元素それ自体のインヒビターとして
の効果(以下本発明では擬インヒビター元素と呼ぶ)が
認められることが明らかとなった。一方、このQの大き
い元素の添加だけでは必ずしも十分本発明の目標の磁区
制御前の磁束密度B8 ≧1.92Tおよび鉄損W17/5 0
≦1.10watt/kgを安定して満たしてくれる一方向性
電磁鋼板を製造することが困難であることが明らかにな
った。
【0023】その理由は以下の通りである。前述のよう
に一方向性電磁鋼板はフォルステライトを主成分とする
一次被膜が十分にできないとインヒビターが逃げてしま
い、GOSS方位のそろった二次再結晶が十分成長しな
いばかりか、その一次被膜の張力による鉄損も十分向上
せず、よい磁気特性の製品は得られない。そして、この
ためのマグネシアMgOに混ぜるSb2 (SO4 3
の特殊添加物の種類によって前述のごとく昇温速度の最
適値がある。
【0024】一方、本発明が上記のように元素の拡散定
数の特性からくる擬インヒビターを使用するために、そ
の観点からも二次再結晶時の昇温速度は当然ながら極め
て重要な因子となる。この組み合わせがいわば本発明の
もう一つの重要な技術要素を構成している。1000℃
以上でもなお安定する擬インヒビター元素は昇温速度に
よって拡散量は変化する。たとえば、Biの場合、その
拡散式は式のように表されることが本発明で明らかに
なった。 D=3.9×103 exp(−85,000/RT)……………… (ここでBiのQは85kcal/mol)
【0025】これをもとに二次再結晶焼鈍(仕上げ焼
鈍)の昇温速度を図2のように変えて昇温すると、その
ときのBiの拡散量(移動量)は式から計算すると図
3に示すように変化し、昇温速度の小さいほど拡散移動
量は多くなる。一方、式は鉄中のAsの拡散式であ
る。 D=4.3×exp(−52,500/RT) ………………
【0026】このAsの場合は昇温速度と拡散移動量と
の関係も図3のように表される。つまりBiに比べれば
活性化エネルギーQが52.5kcal/molと小さいAsで
は、どの昇温速度でも拡散移動量がはるかに大きく、イ
ンヒビターとしての機能ははるかに弱いことがこれから
もわかる。そしてどちらの場合も昇温速度が小さいほど
拡散移動量は多くなる。そして二次再結晶が熱活性過程
で行われる以上、鉄(Fe)元素固有の自己拡散との競
争になる。Feの自己拡散の活性化エネルギーQは60
kcal前後の値であり、本発明の擬インヒビター元素のQ
(≧70kcal/mol)よりも小さい。このことはFeの自
己拡散に基づく二次再結晶粒の自己粒成長の駆動力の方
が擬インヒビター元素の拡散の移動の駆動力よりも大き
いことを示す。
【0027】このことが、とりもなおさず擬インヒビタ
ー元素が1種のブレーキとして二次再結晶のインヒビタ
ーとしての1種のドラッグ(drag)効果をもたらし
ていることに他ならないと考えられる。従って、ドラッ
グ効果は鉄の自己拡散の活性化エネルギーの60kcal/m
ol台の値よりも大きい70kcal/mol以上の元素ならば、
当然ドラッグ効果が期待できる。この元素としてはB
i,Hf,W,Nb,Co,Ni,Cu,Moである。
一方、80kcal/mol以上ではさらにこのドラッグ効果が
大きくなり、よりGOSS方位の先鋭な二次再結晶組織
の高磁束密度の一方向性電磁鋼板が得られることがわか
った。80kcal/mol以上の元素はHf,Bi,Wであ
る。
【0028】そしてとりわけ本発明で重要なことは仕上
げ焼鈍の昇温速度との関係である。つまり、昇温速度の
大きい場合、自己拡散の活性化エネルギーQが、本発明
の擬インヒビター元素の拡散のQよりも小さい鉄の自己
拡散が擬インヒビター元素の拡散の移動よりも相対的に
移動しやすく、つまり鉄が粒成長しようとする駆動力の
方が擬インヒビターの駆動力をはるかに大きく上回って
しまう。ところが図3に示すように昇温速度が大きい場
合は、擬インヒビターの移動量は減る(残存量が増え
る)のでそれだけインヒビター効果は強くなり、これが
うまく昇温速度を大きくすることによる粒成長の駆動力
の急増とバランスする。
【0029】一方、昇温速度が小さいとこの逆の現象が
起こり、この場合もうまく粒成長とインヒビター強度が
バランスする。この擬インヒビター元素の自己調整作用
が昇温速度の変動に対して工業的に安定してGOSSの
先鋭な二次再結晶の形成に寄与していると考えられる。
とりわけ拡散の活性化エネルギーQが80kcal/mol以上
の元素Hf,Bi,Wでは、この効果が十分に発揮され
極めてGOSS方位の先鋭な磁束密度の高い一方向性電
磁鋼板が得られることがわかった。
【0030】当然ながら鉄の自己拡散エネルギー(60
kcal/mol台)よりも大きい拡散の活性化エネルギーQが
70kcal/mol以上の他の元素のNb,Co,Ni,C
u,Mo等の元素も程度は少し弱いが類似の効果が認め
られた。また、Qが60kcal/mol台でも70kcal/molに
近いV,Cr,Pも補助的な効果は期待できるが、本発
明では必須ではない。従って、仕上げ焼鈍の昇温速度を
決めるのは、むしろ一次被膜の形成がそれに追従できる
ことが必要条件であり、この点から以下の制約がでてく
る。Sb系のたとえばSb2 (SO4 3 系の添加物を
マグネシアに添加する場合は、仕上げ焼鈍の比較的小さ
い昇温速度でかつ低い温度からよい一次被膜ができやす
い。一方、ボロン系の添加物を添加する場合は、比較的
高温でかつ比較的高い昇温速度でもよい一次被膜ができ
やすい。
【0031】さらに本発明の構成要素で重要な点は以下
の技術的知見である。本発明の擬インヒビター効果をも
たらす拡散の活性化エネルギーQが、70kcal/mol以上
の元素を添加しただけでは十分先鋭なGOSS方位の二
次再結晶組織を安定して得ることが困難である。図4は
擬インヒビター元素のBiを0.025%含む3.20
%Si鋼の画像解析装置で求めた一次再結晶焼鈍後の結
晶粒径の断面組織の平均粒径および標準偏差の該平均粒
径への割合(%)と、製品の磁束密度B8 との関係を示
したものである。なお、ここで粒径の標準偏差の求め方
を式で表す。 標準偏差:σn=((ΣX2 −(ΣX)2 /n))/n)1/2 …… ここでX:各結晶粒径 n:結晶粒の数
【0032】また、標準偏差を平均粒径で割り、これに
100を乗じ、この値を百分率(%)で表した値を本発
明では、標準偏差の平均粒径への割合として、重要な指
標の一つとして扱う。これをみても明らかのように、高
磁束密度を安定して得られる断面一次粒径の平均粒径お
よび標準偏差の該平均粒径への割合の最適範囲があるこ
とがわかる。この理由は必ずしも明確ではないが以下の
ように考えられる。すなわち、これも擬インヒビター元
素の拡散の活性化エネルギーと関係があると考えられ
る。
【0033】一次再結晶粒径の平均値は一次粒径の粒界
エネルギーの大きさと対応しており、粒径の小さいほ
ど、粒界面積が多いので粒界エネルギーは大きい。本発
明の場合、擬インヒビター元素は一次再結晶粒の粒界に
も当然偏析しており、その粒成長過程でも粒成長を抑制
している。従って平均粒径が大き過ぎると粒界エネルギ
ーが弱すぎて仕上げ焼鈍で粒成長が十分行われずに、い
わゆる細粒組織となって極めて磁性は悪い。一方、一次
粒径の平均値が小さすぎると粒界エネルギーが大きすぎ
て、どの方位の粒も成長しやすいため、分散した方位の
二次再結晶組織となりやすく磁性は安定して高くはなら
ない。これが一次再結晶組織の断面平均粒径の最適範囲
を5〜35μmとした理由である。
【0034】本発明によれば平均粒径は一次焼鈍温度と
傾向的に相関があり、高いほど大きい傾向もある。この
点からは一次焼鈍温度は好ましくは780〜860℃が
よい。
【0035】一方、擬インヒビター元素の粒界偏析のた
め大きい粒と小さい粒が混ざって存在すると、粒界偏析
している擬インヒビター元素の濃度が局所的に異なり、
仕上げ焼鈍の一次再結晶粒の成長過程で擬インヒビター
元素の拡散の移動の絶対量が部分的に異なってしまう。
このため、いわゆる鉄の自己拡散をベースとする粒成長
の駆動力と、擬インヒビター元素の拡散の移動量の局部
遍在によるインヒビター効果の局部的ばらつきとの不均
衡により、二次再結晶の粒成長とインヒビター効果との
不一致が生じ、二次再結晶粒の成長と共に徐々にインヒ
ビター強度が一様に弱まっていくことによるGOSSの
優先成長という本発明の基本思想からのずれが生じてい
き、磁性の安定が見られないと考えられる。このため、
一次粒径の標準偏差の平均粒径に対する比率は70%以
下でなければならない。
【0036】一方、一次粒径の標準偏差が平均粒径に対
し10%未満であると再び磁性が悪くなる。この理由も
明確ではないが以下のことが考えられる。つまり、一次
組織の整粒性がよく成りすぎると、どの方位の粒も均一
な比較的揃った粒界エネルギーを有するので、かえっ
て、GOSS方位粒の成長優先性が失われることが考え
られる。
【0037】本発明によれば粒径の標準偏差は冷間圧延
率と一次焼鈍温度とに傾向的に相関があり、この点から
好ましくは冷延圧下率は70〜93%、一方一次焼鈍温
度は780〜860℃がよい。
【0038】さて、本発明の特徴をより一層発揮させる
にはとりわけ以下に示す製造法が最適である。すなわち
Siを1〜7%含む鋼で必要に応じAlを鋼溶製時に
0.1%以下含み、また、AlN,Si3 4 等をイン
ヒビターとして利用する場合は珪素鋼板製造工程におけ
る鋼溶製時または冷延後の一次焼鈍中の脱炭焼鈍中また
は後に、鋼板に直接窒化反応を介して鋼にNを強制的に
添加せしめる方法等により、二次再結晶焼鈍前にNを6
0〜400ppm 鋼に含むことを特徴とする。
【0039】Siは本発明においては上記のようにフォ
ルステライト形成のために最低1%は必要である。一
方、7%を超えると加工性が極端に劣化し工業生産に適
さない。AlはAlNインヒビター形成に有効である。
しかし0.1%を超えるとAl2 3 生成量が多くなり
健全な鋼の清浄度を損ない、ひいては磁気特性に悪影響
をもたらす。NはAlNやSi3 4 インヒビターを形
成するのに不可欠であり、本発明においてはこれらのイ
ンヒビターを利用する場合は一次焼鈍後つまり、仕上げ
焼鈍の二次再結晶開始前で最低60ppm は必要である。
一方400ppm を超えるとAlやSiを食いすぎて好ま
しくはない。この他の元素は本発明では従来の鋼に較べ
て特に特徴的ではないが以下に制約することが好まし
い。
【0040】Cは鋼溶製中に十分低くするかまたは一次
焼鈍の脱炭焼鈍時に十分低くする必要があり、二次再結
晶焼鈍開始時には0.03%以下が好ましい。Mnは
0.5%以下ならばSと反応してMnSインヒビターを
形成する。0.15%以下だとさらに磁束密度の向上に
好ましい。Oは鋼溶製後に0.05%以下であればAl
2 3 を多量に作りすぎず清浄度的に好ましい。Hf,
Bi,W,Nb,Co,Ni,Cu,Moの元素は鉄中
の拡散の活性化エネルギーが70kcal/mol以上で前述の
擬インヒビター効果により、磁束密度の向上、鉄損低減
の効果があり、そのためにはその1種類以上の合計が鋼
溶製時に最低0.005%以上必要である。一方、0.
50%超では熱間脆性が激しく熱延が極めて困難にな
る。これは高温での活性化エネルギーの大きいことと無
関係ではないと考えられる。V,Cr,Pは本発明では
必須元素ではないが、前述のように擬インヒビター元素
への補助的効果が認められる。この場合、その1種類以
上の合計が0.02%以上を含まないと補助的効果はな
く、一方、0.30%超では一次被膜形成が十分でなく
なる。Snは本発明では必須元素ではないが鉄損低減に
効果があり、その場合は0.02%以上必要である。一
方、0.20%超では一次被膜が十分できない。
【0041】次に化学成分以外の本発明の製造方法につ
いて述べる。鋼を転炉または電気炉等で出鋼し、必要に
応じて精錬工程を加えて成分調整を行った溶鋼を連続鋳
造法、造塊分塊圧延法あるいは熱延工程省略のための薄
スラブ連続鋳造法等により、厚さ30〜400mm(薄ス
ラブ連続鋳造法では50mm以下)のスラブとする。ここ
で30mmは生産性の下限であり、400mmは中心偏析で
Al2 3 等の分布が異常になることを防ぐための上限
である。また50mmは冷速が小さくなって粗大粒が出て
くることを抑制するための上限である。
【0042】該スラブをガス加熱、電気利用加熱等によ
り1000〜1400℃に再加熱を行い、引き続き熱間
圧延を行って厚さ10mm以下のホットコイルとする。こ
こで1000℃はAlN溶解の下限であり、1400℃
は表面肌あれと材質劣化の上限である。また10mmは適
正な析出物を生成する冷速を得る上限である。なお、薄
スラブ連続鋳造法では直接コイル状にすることも可能で
あり、そのためには10mm以下が好ましい。このように
作ったホットコイルを再び800〜1250℃で焼鈍
し、磁性向上をはかることもしばしば行われる。ここで
800℃はAlN等のインヒビター析出物の再溶解の下
限であり、1250℃はAlN等インヒビター析出物の
粗粒化防止の上限である。
【0043】かかる処理工程の後、ホットコイルを直接
またはバッチ的に酸洗後冷間圧延を行う。冷間圧延は圧
下率60〜95%で行うが、60%は本発明で再結晶可
能な限界であり、好ましくは70%以上が一次焼鈍で
{111}〔112〕方位粒を多くして、二次再結晶焼
鈍時のGOSS方位粒の生成を促進させる下限であり、
一方95%超では二次再結晶焼鈍で首振りGOSS粒と
称するGOSS方位粒が板面内回転した磁気特性に好ま
しくない粒が生成される。以上はいわゆる一回冷延法で
製造する場合だが、なお、二回冷延法と称して冷延−焼
鈍−冷延を行う場合は、一回目の圧下率は10〜80
%、二回目の圧下率は50〜95%となる。ここで10
%は再結晶に必要な最低圧下率、80%と95%はそれ
ぞれ二次再結晶時に適正なGOSS方位粒を生成させる
ための上限圧下率、また50%は二回冷延法においては
一次焼鈍時の{111}〔112〕方位粒を適正に残す
下限圧下率である。
【0044】なお、通称パス間エージングと称し、冷間
圧延の途中で鋼板を適当な方法で100〜400℃の範
囲で加熱することも磁気特性の向上に有効である。10
0℃未満ではエージングの効果がなく、一方、400℃
超では転位が回復してしまう。しかる後、一回冷延法で
も二回冷延法でも一次焼鈍を行うわけであるが、この焼
鈍で脱炭を行うことは有効である。前述のようにCは二
次再結晶粒の成長に好ましくないばかりか、不純物とし
て残ると鉄損の劣化を招く。なお鋼の溶製時にCを下げ
ておくと脱炭工程が短縮化されるばかりか{111}
〔112〕方位粒も増すので好ましい。なお、この脱炭
焼鈍工程で適正な露点を設定することで後の一次被膜生
成に必要な酸化層の確保が行われる。
【0045】一次焼鈍温度は700〜950℃が好まし
い。ここで700℃は再結晶可能な下限温度であり、9
50℃は粗大粒の発生を抑制する上限温度である。さら
に、AlNやSi3 4 インヒビターのNを積極的に利
用する場合は、鋼溶製時または一次焼鈍時か後に窒化法
等で強制添加することが行われるが、一次焼鈍中または
直後に行う場合は、アンモニア(NH3 )等で窒化法に
より窒化することも行われる。この場合の窒化法の温度
は600〜950℃が好ましい。ここで600℃は窒化
反応を起こす下限であり、一方950℃は粗大粒発生を
抑える上限である。
【0046】本発明において窒化は一次再結晶焼鈍後に
行う場合は、工業的には同じ炉内の後面に仕切りを設け
て雰囲気を必要に応じて多少変えて、NH3 ガスを流す
か、近接した設備で行うため一次再結晶と平行して窒化
されることもしばしば行われる。この際前述のようにN
2 分圧が低い方が窒化量は大きく、窒素と酸素の分圧比
P N2 /P H2 は0.5以下が好ましい。一次焼鈍ある
いは上記窒化法を行い、その後、酸化マグネシウム(M
gOを主成分とする。以下MgOと呼ぶ)パウダーを水
または水を主成分とする水溶液に溶かしスラリー状にし
て鋼板に塗布する。
【0047】この際、後の二次再結晶焼鈍時にMgOパ
ウダーの溶融を容易にさせ、フォルステライト生成反応
を促進させる目的で、適当な化合物を微量添加すること
も行われる。TiO2 を添加する場合は1〜15%が好
ましいが、ここで1%はフォルステライト反応促進効果
を発揮する下限であり、15%超ではMgOが少なくな
って、かえってフォルステライト反応が進まない。Sb
2 (SO4 3 等のアンチモン系の化合物はMgOを比
較的低温で溶融させるのに効果があり、添加を行う場合
は0.05〜5%が好ましい。ここで、0.05%は上
記低温溶融を起こす下限であり、一方、5%を超える場
合は多すぎてMgOのフォルステライトの本来の反応を
不活性化する。
【0048】Na2 4 7 等のボロン系の化合物およ
びそれと同様の作用を持つストロンチウム・バリウム
系、炭・窒化物系、硫化物系、塩化物系の化合物は、ア
ンチモン系よりは比較的高温でMgOを溶融させるのに
効果があり、添加する場合は0.05〜5%が好まし
い。ここで、0.05%は上記の効果を発揮する下限で
あり、一方5%超ではやはりMgOのフォルステライト
の本来の反応を不活性化するので好ましくない。なおこ
れらの化合物は互いに複合して添加することも可能であ
る。ただしアンチモン系の低温溶融型とボロン系他の比
較的高温溶融型の化合物を混ぜて使用するときは、その
効果は高温溶融型に近いことになるが、本発明の主旨と
矛盾するものではなく、その場合は本発明の高温溶融型
の昇温速度をとることが好ましい。
【0049】なお、ここで添加する化合物の%はMgO
の重量を100%としたときの重量比を%で示してあ
る。二次再結晶焼鈍は最高到達温度を1100〜130
0℃で行うのが好ましい。1100℃は二次再結晶が行
われる下限の温度であり、一方1300℃超は結晶粒が
粗大化し過ぎて鉄損の劣化を招く。なお、前述のよう
に、この二次再結晶焼鈍中の比較的前段階で雰囲気等よ
りNを追加添加する窒化法が行われることもある。
【0050】さて、この二次再結晶焼鈍の昇温速度はと
りわけ本発明では重要である。すなわち、MgO中に添
加する化合物の種類によって昇温速度を変化させること
が必要である。アンチモン系の化合物をMgOに添加す
る場合は、800℃〜最高到達温度の平均昇温速度は毎
時0.1〜80℃の比較的小さいことが必要である。こ
こで、0.1℃/時は工業的昇温速度の下限であり、一
方前述のようにMgOがアンチモン系の化合物の添加で
は低温で溶融するため、より早く確実にフォルステライ
トの生成を行っておく必要があり、それには昇温速度は
80℃/時以下にしておく必要がある。一方、ボロン
系、ストロンチウム・バリウム系、炭・窒化物系、硫化
物系および塩化物系では上記平均昇温速度は毎時5〜4
00℃が好ましい。すなわち、高温溶融型の化合物の添
加ではMgOの溶融を比較的高温で起こすため、早く高
温に到達するため5℃/時以上の昇温速度が必要であ
り、一方、400℃/時超では二次再結晶そのものがイ
ンヒビターとの関係で十分行われない。
【0051】以上が本発明の珪素鋼板の製造方法での重
要な部分であるが、工業的にはさらに絶縁特性や磁気特
性を向上させる目的で、鋼板にロールコータ法やコロイ
ド法やゾルゲール法等による有機質や無機質による二次
被膜の生成や、さらに機械的、化学的またはレーザー付
加等の非接触型のエネルギー照射法による磁区制御法、
さらにはその後の発粉防止のための三次被膜の生成等の
いくつかの工程が伴うことが多い。
【0052】
【実施例】
実施例1 表2に示す化学組織を有する鋼を、150kg真空溶解炉
で溶製した。これを鋳造し、加熱、熱間圧延し、厚さ
1.8mmの熱延板とした。熱延板の何枚かに1120℃
×30秒間の焼鈍を施した。熱延板焼鈍した材料および
熱間圧延ままの材料を酸洗し、次いで90%の圧下率を
適用して冷間圧延し、0.18mmの最終板厚とした。こ
の冷間圧延過程で、材料を250℃の温度に保持するパ
ス間エイジングを施した。然る後、材料を油洗し、
2 :25%+H2 :75%、露点:60℃の雰囲気で
表3の焼鈍条件で脱炭を兼ねる一次再結晶焼鈍を施した
後、下記の焼鈍分離剤を塗布した。
【0053】(1) MgO+TiO2 (5%)……プレイン (2) MgO+TiO2 (5%)+Sb2 (SO4 3 (0.2
%:Sb系)、(0.02%:低Sb系)、(6.0%:高Sb
系) (3) MgO+TiO2 (5%)+Na2 4 7 (0.3%:
B系)、(0.03%:低B系)、(7.0%:高B系) (4) MgO+MgSO4 (4%)+FeSO4 (0.1%)+
Na2 4 7 (0.5%)……硫化物系 (5) MgO+SrCO3 (0.08%)+BaCl2 (0.5
%)+Ba(H)2 (0.1%)……ストロンチウム・バリ
ウム系 (6) MgO+V2 5 (5%)+CrN(3%)……炭・窒
化物系 (7) MgO+MnO2 (0.2%)+TiO2 (8%)+Ti
Cl4 (0.5%)……塩化物系
【0054】焼鈍分離剤はこれを水に溶解させてスラリ
ー状にしてロールコータで鋼板に塗布した後、350℃
の炉内で乾燥した。次いで、仕上げ焼鈍工程において、
800℃〜最高到達温度間の昇温速度を種々変化させて
鋼板を二次再結晶させた。焼鈍後の材料を水洗した後、
燐酸系の絶縁被膜(二次被膜)を塗布し、焼付処理し
た。得られた珪素鋼板に、N2 :90%+H2 :10%
のドライ雰囲気中、850℃×4時間の歪取焼鈍を施し
た後、被膜およびマクロ組織外観検査、磁気測定、被膜
張力測定、密着性試験を行った。その結果を表3に示
す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】被膜外観検査の結果を、○印:スケール、
霜降り状欠陥なし、△印:若干の霜降り状欠陥あり、×
印:スケール、霜降り状欠陥が多く、被膜が十分に形成
されていない、という表示方法で示した。スケールと
は、被膜がある程度広く剥離しているもの、霜降り状欠
陥とは、点状に被膜が剥離している欠陥のことである。
また、マクロ組織外観検査の結果を、○印:二次再結晶
組織が十分にできている、△印:部分的に細粒が認めら
れる、×印:全面に細粒が認められる、という表示方法
で示した。磁気測定は、幅:60mm、長さ:300mmの
単板のSST(Single Sheet Teste
r)試験法によって行った。B8 値(800A/mにお
ける磁束密度〔ガウス〕)およびW17/50 (50Hzで
1.7Tesla の交番磁界における鉄損値〔w/kg〕)を
測定した。
【0059】密着性試験においては、直径:20mmの円
柱に鋼板を巻き付け、その結果を、○印:被膜のクラッ
クなし、△印:被膜の微細クラックあり、×印:ほぼ全
面にクラックあり、という表示方法で評価した。さら
に、被膜張力は、鋼板の片面の被膜を除去し、そのとき
の鋼板の反りを測定し、計算によって被膜張力を算出す
るという方法によって測定した。算出結果の値の大きい
方が、被膜と地鉄の熱膨脹係数の差によって鋼板に生起
する張力が大きく、これによって鉄損特性が大きく改善
される。なお、板厚が薄いほど被膜張力は高めに出る傾
向がある。
【0060】表3から明らかなように、Sb(アンチモ
ン)系の化合物を添加した焼鈍分離剤を用いて製造され
た方向性珪素鋼板で、仕上げ焼鈍工程における昇温速度
が低く、また、B系等の化合物を添加した焼鈍分離剤を
用いて製造された方向性珪素鋼板では昇温速度が比較的
高く、かつ本発明で規定する諸条件を満足し、なかんず
く、一次再結晶組織が本発明に入るものは上記特性試験
結果が全て良好である。
【0061】一方、MgO+TiO2 からなる焼鈍分離
剤(プレイン)を用いて製造された珪素鋼板では、仕上
げ焼鈍工程における昇温速度が低い方が、上記特性試験
結果が良好なものが認められるけれども、Sb(アンチ
モン)系の化合物を焼鈍分離剤に添加したものよりも若
干諸特性が劣る傾向がある。
【0062】実施例2 表4,表7に示す化学組成を有する鋼を転炉で溶製し、
表5,表8に示す製造条件で厚さ:0.27mmの製品を
製造した。なお、符号2−30,2−33の材料につい
ては、仕上げ焼鈍工程における昇温中に鋼板に窒化処理
を施した。符号2−9,2−15および2−34〜2−
40の材料については、一次再結晶焼鈍後にアンモニア
ガスを含む雰囲気中で鋼板を窒化処理した。また、符号
2−28,2−32の材料については、一次再結晶焼鈍
後にアンモニアガスを含む雰囲気中で鋼板を窒化処理
し、さらに仕上げ焼鈍工程における昇温中に鋼板に窒化
処理を施した。焼鈍分離剤に添加する諸種の化合物は、
実施例1におけると同じである。得られた製品に、実施
例1におけると同様の諸種の特性試験を行った。
【0063】その結果を表6,表9に示す。表6,表9
から明らかなように、本発明で規定する条件を満足する
ものは、上記特性試験結果が全て良好である。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
【表7】
【0067】
【表8】
【0068】
【表9】
【0069】
【表10】
【0070】
【発明の効果】本発明によれば磁気特性の優れた一方向
性電磁鋼板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b),(c)は仕上げ焼鈍条件を示
す図表である。
【図2】仕上げ焼鈍速度を示す図表である。
【図3】昇温速度と拡散移動量の関係を示す図表であ
る。
【図4】一次粒径の平均値および標準偏差と磁気測定の
関係を示す図表である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フォルステライトを主成分とする一次被
    膜および母金属に含まれる総計でHf,Biの元素の1
    種類以上の合計が0.003〜0.30%であり、かつ
    磁束密度B8 が1.92T(テスラ)以上および鉄損W
    17/50 が1.10watt/kg以下であることを特徴とする
    高磁束密度低鉄損一方向性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】 フォルステライトを主成分とする一次被
    膜および母金属に含まれる総計でHfが0.003〜
    0.30%であることを特徴とする請求項1記載の高磁
    束密度低鉄損一方向性電磁鋼板。
  3. 【請求項3】 Si:1〜7%を含む鋼を溶製し、熱間
    圧延、冷間圧延、一次再結晶焼鈍および二次再結晶焼鈍
    を基本工程とする方向性電磁鋼板の製造において、鋼中
    成分として、鉄中の拡散の活性化エネルギーQが70kc
    al/mol以上の元素の1種類以上を合計で0.005〜
    0.5%含有させ、一次再結晶粒径(断面粒径)の測定
    の平均値を5〜35μm、かつそのそれぞれの粒径の標
    準偏差値が該平均値の10〜70%とし、かつ二次再結
    晶焼鈍前にフォルステライトを主体とする一次被膜形成
    のために塗布するマグネシアの中にアンチモン系の化合
    物を0.05〜5.0%添加し、かつ二次再結晶焼鈍で
    の800℃〜最高到達温度の平均昇温速度を毎時0.1
    〜80℃とすることを特徴とする高磁束密度低鉄損一方
    向性電磁鋼板の製造法。
  4. 【請求項4】 マグネシアの中にボロン系、ストロンチ
    ウム・バリウム系、炭・窒化物系、硫化物系、塩化物系
    の1種または2種以上を合計0.05〜5.0%添加
    し、かつ二次再結晶焼鈍での800℃〜最高到達温度の
    平均昇温速度を毎時5〜400℃とすることを特徴とす
    る請求項3記載の高磁束密度低鉄損一方向性電磁鋼板の
    製造法。
  5. 【請求項5】 鋼中への添加元素として活性化エネルギ
    ーQが70kcal/mol以上の元素であるHf,Bi,W,
    Nb,Co,Ni,Cu,Moを使用することを特徴と
    する請求項3または4記載の高磁束密度低鉄損一方向性
    電磁鋼板の製造法。
  6. 【請求項6】 鋼中への添加元素として、活性化エネル
    ギーQが80kcal/mol以上の元素であるHf,Bi,W
    を使用することを特徴とする請求項3または4記載の高
    磁束密度低鉄損一方向性電磁鋼板の製造法。
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