JPH0616736U - 車両用ディスクブレーキのキャリパボディ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】キャリパボディがピストン対向型の場合に、キ
ャリパ重量を軽量に保ちつつ、作用部の中央部付近にお
ける制動時の変形を極力防止する。 【構成】ディスク内周側のキャリパブラケット３ｄを、
一対の連結腕３ｈ，３ｉと、先端連結部のボス部３ｊと
で形成する。ディスク回入寄りの連結腕３ｈの中心軸Ｌ
１を、ボス部３ｊから作用部３ａ側の３つのピストン６
ａ〜６ｃの推力中心Ｐ１へ向けて配設し、ディスク回入
及び回出側から離れていた作用部３ａの中央部付近に、
連結腕３ｈの剛性力が働くようにする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動二輪車等の車両に搭載されるディスクブレーキのキャリパボデ ィがピストン対向型の場合であって、特にこのキャリパボディの剛性を高める構 造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

自動二輪車のディスクロータに用いられるキャリパボディとして、例えば実開 平３−８８０３７号公報に示されるピストン対向型がある。このキャリパボディ は、ディスクロータの両側に配設される一対の作用部に、ディスク周方向へ並ぶ ３つのシリンダ孔を対向して設け、これらシリンダ孔のそれぞれに、摩擦パッド をディスクロータの側面へ押圧するピストンを内挿したもので、キャリパボディ の一方の作用部には、ディスク回出側とディスク内周側とに、車体取付け用のキ ャリパブラケットが一体形成されている。

【０００３】 このうち、ディスク内周側のキャリパブラケットは、キャリパボディの一方の 作用部からディスク内周方向へ延びる３つの作用腕と、これら作用腕の先端連結 部に形成される車体取付け用のボス部となっている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

このような構成から、キャリパボディのディスク回入及び回出側では、ディス クロータの外側で一体か若しくは連結ボルト等で連結されているため、必要な剛 性力が確保されるが、作用部の中央部付近では、ディスク回入及び回出の剛性部 分から離れているため、制動反力によって外側へ撓み易くなり、ピストンのロス ストロークや液圧損失の原因となっていた。殊に、ディスクロータを跨ぐブリッ ジ部に天井開口部を形成したオープントップ型では剛性力が一層劣り、上述の変 形が顕著なものとなっていた。

【０００５】 そこで、中間部のシリンダ孔をディスク回入側や回出側よりも小さくしたり、 作用部の外面にリブを立てて変形を抑える対策が考えられるが、シリンダ孔の小 径化では、摩擦パッドに対するピストン押圧力の均等化を優先させなければなら ないという制約があり、またリブで補強するものでは、キャリパ重量を増加する わりには剛性力があまり上がらないという不具合があって、いずれも満足できる ものではなかった。

【０００６】 本考案は、このような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは 、キャリパボディに一体形成されるキャリパブラケットを利用することにより、 キャリパ重量を軽量に保ちつつ、制動反力による変形を極力防止するようにした 車両用ディスクブレーキのキャリパボディを提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上述の目的に従い、本考案の第１の構成では、ディスクロータの両側に配設さ れる一対の作用部に、シリンダ孔を対向して設け、これらシリンダ孔のそれぞれ にピストンを内挿したピストン対向型のキャリパボディであって、前記キャリパ ボディの一方の作用部に一体形成されるキャリパブラケットが、ディスク内周側 へ延びる連結腕と、該連結腕の先端部に形成される車体取付け用のボス部とを有 する車両用ディスクブレーキのキャリパボディにおいて、前記キャリパブラケッ トの連結腕を、前記車体取付け用のボス部から前記一方の作用部に配設されたピ ストンの推力中心に向けて配設している。

【０００８】 また、本考案の第２の構成では、上記キャリパブラケットの連結腕の厚みを、 一方の作用部へ近づくに連れて、ディスク軸方向へ漸増させることにより、制動 反力によるキャリパボディの変形を、より一層防止するようにしている。

【０００９】

【作用】

上述の構成によれば、制動反力が集中するピストンの推力中心付近を、これへ 向けられた連結腕の剛性力で補強するので、制動反力による外側への撓み変形が 極力抑止され、特に連結腕の作用部側を厚肉とした第２の構成では、作用部中央 部分の剛性力が一層高められる。

【００１０】

【実施例】

以下本考案の第１実施例を、図１及び図２に基づいて説明する。

【００１１】 ディスクブレーキ１は、図示しない車輪と矢印Ａ方向へ一体に回転するディス クロータ２と、該ロータ２の一側部で車体に支持されるキャリパボディ３と、該 ボディ３の作用部３ａ，３ｂの間にディスクロータ２を挟んで対向配置される一 対の摩擦パッド４，４とからなっている。

【００１２】 キャリパボディ３は、ディスクロータ２の両側に配設される上述の作用部３ａ ，３ｂに、大小３個のシリンダ孔５ａ，５ｂ，５ｃをディスク周方向へ並べなが ら対向させ、これら双方のシリンダ孔５ａ，５ｂ，５ｃにピストン６ａ，６ｂ， ６ｃを内挿した６ポット対向型で、このキャリパボディ３は、ディスクロータ２ の外側を跨ぐブリッジ部から作用部３ａ，３ｂに分割され、これら作用部３ａ， ３ｂのディスク回入及び回出側を、２本づつの連結ボルト７，７で連結した構造 となっている。また、一方の作用部３ａには、ディスク回出側へ突出するキャリ パブラケット３ｃと、ディスク内周側へ突出するキャリパブラケット３ｄとが一 体に設けられていて、キャリパボディ３は、双方のブラケット３ｃ，３ｄを車体 にボルト止めにて取付けられる。

【００１３】 各摩擦パッド４は、ブリッジ部中央の天井開口部３ｅを挟んで作用部３ａ，３ ｂに架け渡されるハンガーピン８を、裏板４ｂの上部に差込んでディスク軸方向 へ移動可能に取付けられており、各シリンダ孔５ａ〜５ｃ底部の液圧室に昇圧し た作動液が供給されると、ピストン６ａ〜６ｃがそれぞれのシリンダ孔５ａ〜５ ｃを前進し、摩擦パッド４，４をディスクロータ２の側面へ押圧して、制動作用 が行なわれる。

【００１４】 また、両作用部３ａ，３ｂのシリンダ孔５ａ〜５ｃとピストン６ａ〜６ｃは、 上述の摩擦パッド４，４を、ディスクロータ２へ均等に押圧できるように、ディ スク回入側から、中径，小径，大径の順に並べられている。

【００１５】 ディスク回出側のキャリパブラケット３ｃは、作用部３ａから突出する連結腕 ３ｆと、該連結腕３ｆの先端に形成される車体取付け用のボス部３ｇとからなっ ている。また、ディスク内周側のキャリパブラケット３ｄは、一対の連結腕３ｈ ，３ｉを、作用部３ａから異なる角度で突出させて、先端同士を突き合わせるよ うに連結し、この先端連結部に、ディスク回出側と同様の車体取付け用のボス部 ３ｊを設けている。双方の車体取付け用のボス部３ｇ，３ｊには、連結ボルトを 螺着するためのめねじ孔３ｋが穿設されている。

【００１６】 また、ディスク回出側のキャリパブラケット３ｄでは、ディスク回入寄りの連 結腕３ｈの中心軸Ｌ１が、ボス部３ｊから作用部３ａ側の３つのピストン６ａ〜 ６ｃの推力中心Ｐ１へ向けて配設されており、連結ボルト７，７で連結されたデ ィスク回入及び回出側から離れていた作用部３ａの中央部付近に、連結腕３ｈの 剛性力が働くようにしている。本実施例は、このようにして、従来剛性力の低か った作用部３ａの中央部近傍を、連結腕３ｈの剛性力で補強するようにしたから 、本実施例のようにブリッジ部に天井開口部３ｅが設けられていても、制動反力 による外側への撓み変形を極力抑止することができるので、ピストン６ａ〜６ｃ のロスストロークや液圧損失が抑えられる。

【００１７】 特に、本実施例では、既存の構成を利用して剛性を高めるようにしたもので、 作用部の外面にリブを立てて補強するものに較べて極めて軽量とすることができ 、同時にバネ下荷重の軽減が図れる。しかも材料が少なくて済むので、安価に製 作することができる。また本実施例では、中央のシリンダ孔５ｂとピストン６ｂ とを、他のものよりも小径としているが、この構成は、記述したように、もとも とパッド押圧力の均等化を勘案してなされたもので、制動反力による変形防止を 主目的としたものではないから、摩擦パッド４に対する均等な押圧力を損うもの ではない。

【００１８】 図３及び図４は、本考案を８ポット対向型のキャリパボディ２０に適用した第 ２実施例で、キャリパボディ２０と、ディスクロータ２を挟んで作用部２０ａ， ２０ｂの間に対向配置される摩擦パッド２１，２１は、第１実施例よりもディス ク周方向へ長い形状となっている。

【００１９】 作用部２０ａ，２０ｂのそれぞれに形成される４つのシリンダ孔２２ａ，２２ ｂ，２２ｃ，２２ｃとピストン２３ａ，２３ｂ，２３ｃ，２３ｃは、摩擦パッド ２１に均等な押圧力が作用するように、中央の２つのシリンダ孔２２ｃ，２２ｃ とピストン２３ｃ，２３ｃとが、ディスク回入及び回出側の２つのシリンダ孔２ ２ａ，２２ｂ及びピストン２３ａ，２３ｂよりも小径となっている。

【００２０】 作用部２０ａ，２０ｂのディスク回入及び回出側は、それぞれ２本の連結ボル ト７，７で連結され、また車体取付け側となる一方の作用部２０ａには、ディス ク回出側へ突出するキャリパブラケット２０ｃと、ディスク内周側へ突出するキ ャリパブラケット２０ｄとが一体に設けられている。

【００２１】 ディスク回出側のキャリパブラケット２０ｃは、第１実施例と同様に、連結腕 ２０ｅと車体取付け用のボス部２０ｆとからなっている。また、ディスク内周側 のキャリパブラケット２０ｄも、一対の連結腕２０ｇ，２０ｈと車体取付け用の ボス部２０ｉとから構成され、更にディスク回入寄りの連結腕２０ｇの中心軸Ｌ ２が、ボス部２０ｉから作用部２０ａ側の４つのピストン２３ａ，２３ｂ，２３ ｃ，２３ｃの推力中心Ｐ２へ向けて配設されている点で、第１実施例と同様であ るが、ディスク回入寄りの連結腕２０ｇの厚みを、作用部２０ａへ近づくに連れ て、ディスク軸方向へ漸増させた点で異なっている（図４参照）。

【００２２】 本実施例では、ボス部２０ｉから作用部２０ａ側の推力中心Ｐ２へ向かう連結 腕２０ｇの厚みを、作用部２０ａへ近づくに連れて、ディスク軸方向へ次第に厚 くしたことにより、作用部２０ａの中央部近傍の剛性力を、第１実施例よりも一 層高めることができる。

【００２３】 尚、上述の実施例では、ディスク内周側のキャリパブラケットを、二股状の連 結腕で説明したが、本考案は、連結腕が複数であれば、そのうちの１つを推力中 心方向へ向けるようにし、また連結腕を複数に分けずに一枚板とし、その一部を 推力中心方向へ向けるようにしてもよい。

【００２４】 また本考案は、シリンダ孔の数に拘りなく、ピストン対向型のキャリパボディ に幅広く適用が可能である。

【００２５】

【考案の効果】

本考案は以上説明したように、ピストン対向型のキャリパボディのキャリパブ ラケットの連結腕を、車体取付け用のボス部から一方の作用部に配設されたピス トンの推力中心に向けて配設したことにより、剛性力の高いディスク回入及び回 出側から離れた作用部の中央部付近の剛性を高めるようにしたから、作用部の中 央部付近における制動反力の撓み変形を極力抑止することができ、ピストンのロ スストロークや液圧損失が抑えられる。特に本考案は、既存の構成を利用するの で、作用部の外面にリブを立てて補強するものに較べて極めて軽量とすることが でき、同時にバネ下荷重の軽減が図れる。しかも材料が少なくて済むので、安価 に製作することができる。また作用部の中央部に形成されるシリンダ孔の大きさ を制約しなくて済むので、、摩擦パッドに対する均等な押圧力を損なわない。

【００２６】 更に、上述の連結腕の厚みを、作用部へ近づくに連れて、ディスク軸方向へ漸 増させることにより、作用部の中央部付近の剛性を尚一層高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第１実施例を示すディスクブレーキの
一部断面正面図

【図２】図１の断面側面図

【図３】本考案の第２実施例を示すディスクブレーキの
一部断面正面図

【図４】図３の断面側面図

【符号の説明】

１…ディスクブレーキ ２…ディスクロータ ３…キャリパボディ ３ａ，３ｂ…作用部 ３ｃ，３ｄ…キャリパブラケット ３ｅ…天井開口部 ３ｆ，３ｈ，３ｉ…連結腕 ３ｇ，３ｊ…車体取付け用のボス部 ３ｋ…めねじ孔 ４…摩擦パッド ５ａ，５ｂ，５ｃ…シリンダ孔 ６ａ，６ｂ，６ｃ…ピストン ７…連結ボルト Ｌ１…ディスク回入寄りの連結腕３ｈの中心軸 Ｐ１…作用部３ａ側の３つのピストン６ａ〜６ｃの推力
中心

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ディスクロータの両側に配設される一対
   の作用部に、シリンダ孔を対向して設け、これらシリン
   ダ孔のそれぞれにピストンを内挿したピストン対向型の
   キャリパボディであって、前記キャリパボディの一方の
   作用部に一体形成されるキャリパブラケットが、ディス
   ク内周側へ延びる連結腕と、該連結腕の先端部に形成さ
   れる車体取付け用のボス部とを有する車両用ディスクブ
   レーキのキャリパボディにおいて、前記キャリパブラケ
   ットの連結腕を、前記車体取付け用のボス部から前記一
   方の作用部に配設されたピストンの推力中心に向けて配
   設したことを特徴とする車両用ディスクブレーキのキャ
   リパボディ。
2. 【請求項２】 前記キャリパブラケットの連結腕の厚み
   を、前記一方の作用部へ近づくに連れて、ディスク軸方
   向へ漸増させたことを特徴とする請求項１記載の車両用
   ディスクブレーキのキャリパボディ。