JPH06158344A - 耐外面錆性および鮮映性に優れた有機複合被覆鋼板 - Google Patents

耐外面錆性および鮮映性に優れた有機複合被覆鋼板

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JPH06158344A
JPH06158344A JP4336689A JP33668992A JPH06158344A JP H06158344 A JPH06158344 A JP H06158344A JP 4336689 A JP4336689 A JP 4336689A JP 33668992 A JP33668992 A JP 33668992A JP H06158344 A JPH06158344 A JP H06158344A
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隆広 窪田
Masaaki Yamashita
正明 山下
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Yasuhiko Haruta
泰彦 春田
Yoshio Imazaki
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 自動車車体の外板等の外面側において優れた
耐外面錆性と鮮映性を示す有機複合被覆鋼板を提供する
こと 【構成】 亜鉛系めっき鋼板の表面に所定のクロム付着
量のクロメ−ト層を有し、その上層に、エポキシ樹脂、
多官能アミンおよびモノイソシアネートからなる変性エ
ポキシ樹脂(A)に対し、ポリオ−ル、ポリイソシアネ
−トおよびブロック剤からなるブロックウレタン(B)
を所定の割合で混合したブロックウレタン変性エポキシ
樹脂と、このブロックウレタン変性エポキシ樹脂に対し
て所定の割合で添加される防錆添加剤と、ジアセトンア
ルコールおよび/またはジエチレングリコールを50%
以上含む有機溶剤とを含有する塗料組成物を塗布して得
られた、膜厚0.2〜2μmの有機樹脂皮膜を有する有
機複合被覆鋼板である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車車体や家電製
品等に使用される、耐外面錆性および鮮映性に優れ、且
つ耐パウダリング性、溶接性、塗料密着性にも優れた有
機複合被覆鋼板に関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、北米や北欧などの寒冷地では、冬期
に散布する道路凍結防止用の塩類による自動車車体の腐
食が大きな社会問題となっている。この自動車車体の防
錆対策の一つとして、従来の冷延鋼板に代わり、耐食性
に優れた表面処理鋼板の使用比率が高まりつつあるのが
現状である。
【0003】このような表面処理鋼板として、特開昭6
4−8033号公報や特開平2−15177号公報に示
されるような有機複合被覆鋼板を挙げることができる。
これらの鋼板は、亜鉛系めっき鋼板をベースとして、第
1層にクロメート皮膜を有し、その上層に第2層とし
て、エポキシ樹脂の末端に1個以上の塩基性窒素原子と
2個以上の一級水酸基とを付加させた基体樹脂と、ポリ
イソシアネート化合物およびブロックイソシアネート化
合物とからなる有機樹脂に、シリカと難溶性クロム酸塩
を特定の比率で添加した有機樹脂皮膜を有することを特
徴とする、耐食性、溶接性、耐パウダリング性、塗料密
着性に優れた有機複合被覆鋼板である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一方、最近の自動車の
高級化・個性化志向に伴い、塗装後の仕上がり品質、特
に鮮映性が重要視されるようになってきた。しかし、上
述した有機複合被覆鋼板は、自動車車体の外板および内
板の内面側に要求される耐孔あき性に関しては優れた特
性を有しているものの、自動車車体の外板の外面側にお
いては、従来使用されている亜鉛系めっき鋼板と比較し
て鮮映性がやや劣るという問題がある。また、これらの
有機複合被覆鋼板は、耐外面錆性に関しても必ずしも十
分な特性を有しているとは言い難い。本発明は、上記の
ような問題点を解決するためになされたもので、自動車
車体外板の外面側において優れた耐外面錆性と鮮映性を
示す有機複合被覆鋼板を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るため、本発明の有機複合被覆鋼板は次のような構成を
有する。 〔1〕 亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層として金属
クロム換算で付着量10〜200mg/m2のクロメー
ト層を有し、その上層に第2層として、下記(1)およ
び(2)を含有し、且つ下記(3)の有機溶剤を70〜
95wt%含有する塗料組成物を塗布して得られた、膜
厚0.2〜2μmの有機樹脂皮膜を有してなる耐外面錆
性および鮮映性に優れた有機複合被覆鋼板。 (1)エポキシ樹脂、多官能アミンおよびモノイソシア
ネートからなる変性エポキシ樹脂(A)に対し、ポリオ
ール、ポリイソシアネートおよびブロック剤からなるブ
ロックウレタン(B)をA/B=95/5〜50/50
(不揮発分の重量比)の割合で混合したブロックウレタ
ン変性エポキシ樹脂 (2)ブロックウレタン変性エポキシ樹脂に対する配合
割合が、ブロックウレタン変性エポキシ樹脂/防錆添加
剤=90/10〜40/60(不揮発分の重量比)であ
る防錆添加剤 (3)ジアセトンアルコールおよび/またはジエチレン
グリコールモノブチルエーテルを50wt%以上含有す
る有機溶剤
【0006】〔2〕 上記〔1〕の有機複合被覆鋼板に
おいて、塗料組成物中の防錆添加剤がシリカである耐外
面錆性および鮮映性に優れた有機複合被覆鋼板。 〔3〕 上記〔1〕の有機複合被覆鋼板において、塗料
組成物中の防錆添加剤が難溶性クロム酸塩である耐外面
錆性および鮮映性に優れた有機複合被覆鋼板。 〔4〕 上記〔1〕の有機複合被覆鋼板において、塗料
組成物中の防錆添加剤が、下記割合からなるシリカおよ
び難溶性クロム酸塩である耐外面錆性および鮮映性に優
れた有機複合被覆鋼板。 シリカ/難溶性クロム酸塩=90/10〜10/90
(固形分の重量比)
【0007】
【作用】以下、本発明の詳細とその限定理由を説明す
る。ベースとなる亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっ
き鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金め
っき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Al合金
めっき鋼板、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Co−
Cr合金めっき鋼板、さらには上記各めっき鋼板のめっ
き成分中に金属酸化物、難溶性クロム酸塩、ポリマー等
を分散めっきした亜鉛系複合めっき鋼板を挙げることが
できる。また、上記のようなめっきのうち同種または異
種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板であって
もよい。めっき方法としては、電解法、溶融法、気相法
のうち実施可能ないずれの方法を採用することもできる
が、下地の冷延鋼板の選択性からは、電解法が有利であ
る。
【0008】上記の亜鉛系めっき鋼板の表面に形成され
るクロメート層は、6価クロムのクロム酸イオンによる
自己修復作用により亜鉛系めっき鋼板の腐食を抑制す
る。このクロメート層の付着量が、金属クロム換算で1
0〜200mg/m2の範囲であることが必要である。
10mg/m2未満では十分な耐食性を期待することが
できず、一方、200mg/m2を超えると溶接性が劣
化する。さらに高度な耐食性、溶接性を満足させるため
には、金属クロム換算で20〜100mg/m2の範囲
とすることが好ましい。このクロメート層を形成するた
めのクロメート処理としては、反応型、電解型、塗布型
のいずれの方法も適用可能である。耐食性の観点から
は、クロメート層中に6価クロムのクロム酸イオンを多
く含有する塗布型が好ましい。
【0009】塗布型クロメート処理は、部分的に還元さ
れたクロム酸水溶液を主成分とし、 水溶性または水分散性のアクリル樹脂、ポリエステル
樹脂等の有機樹脂 シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物
コロイド類および/または粉末 モリブデン酸、タングステン酸、バナジン酸等の酸お
よび/またはその塩類 りん酸、ポリりん酸等のりん酸類 ジルコニウムフッ化物、ケイフッ化物、チタンフッ化
物等のフッ化物 亜鉛イオン等の金属イオン りん化鉄、アンチモンドープ型酸化錫等の導電性微粉
末 上記〜の成分の中から、必要に応じて1種以上を添
加された処理液を亜鉛系めっき鋼板に塗布し、水洗する
ことなく乾燥させる。塗布型クロメート処理は、通常、
ロールコーター法により処理液を塗布するが、浸漬法や
スプレー法により塗布した後に、エアナイフ法やロール
絞り法により塗布量を調整することも可能である。
【0010】上記のように、亜鉛系めっき鋼板の表面に
形成されたクロメート層の上層に、第2層として形成さ
れた有機樹脂皮膜は、クロメート層中の6価のクロム酸
イオンの腐食環境中への過剰な溶出を抑制し、防食効果
を持続させるとともに、有機樹脂皮膜中に添加されたシ
リカやクロム酸塩によりさらに耐食性を向上させる。こ
の有機樹脂皮膜の膜厚が0.2μm未満では十分な耐食
性を期待することができず、一方、2μmを超えると溶
接性や鮮映性が劣化する。さらに高度な耐食性、溶接
性、鮮映性を満足させるためには、0.3〜1.5μm
の範囲が好ましい。
【0011】この有機樹脂皮膜は、エポキシ樹脂、多官
能アミンおよびモノイソシアネートからなる変性エポキ
シ樹脂(A)と、ポリオール、ポリイソシアネートおよ
びブロック剤からなるブロックウレタン(B)とをA/
B=95/5〜50/50の割合(不揮発分の重量比)
で混合したブロックウレタン変性エポキシ樹脂と所定の
配合割合の防錆添加剤とを主たる構成成分としている。
【0012】エポキシ樹脂としては、ビスフェノール
A、ビスフェノールF、ノボラック等をグリシジルエー
テル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレ
ンオキサイドまたはエチレンオキサイドを付加しグリシ
ジルエーテル化したエポキシ樹脂等を用いることができ
る。さらに、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹
脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂も用いることができ、
これらのエポキシ樹脂を2種以上併用することも可能で
ある。ここで、エポキシ樹脂のエポキシ当量は400以
上が耐食性の点から好ましい。
【0013】これらのエポキシ樹脂のグリシジル基と多
官能アミンを反応させることで変性エポキシ樹脂(A)
を得ることができる。多官能アミンとしては、エタノー
ルアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミ
ン、ブタノールアミン等の1級のアルカノールアミン、
プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシ
ルアミン等の1級アルキルアミン、エチレンジアミン、
ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、キ
シレンジアミン、アミノエチルピペラジン、ノルボルナ
ンジアミノメチル等の1分子中に活性水素を2個以上有
するものが挙げられ、また、これらアミンを2種以上併
用することも可能である。多官能アミンとしてはアルカ
ノールアミンが耐食性および塗料密着性の点から特に好
ましい。
【0014】モノイソシアネートとしては、脂肪族モノ
アミンまたは芳香族モノアミンにホスゲンを反応させ得
られる。さらに、ジイソシアネート化合物の一方のイソ
シアネート基と脂肪族アルコール、芳香族アルコール、
脂環族アルコールを反応させたものを用いることができ
る。ここで、アルコールとしては炭素数4以上のアルコ
ールが、エポキシ樹脂との相溶性の点から好ましい。ジ
イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネ
ート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の
脂肪族イソシアネート、キシリレンジイソシアネート、
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレン
ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、イソホロ
ンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメ
チル等の脂環族イソシアネート等が挙げられ、また、こ
れらを2種以上混合して使用することも可能である。エ
ポキシ樹脂をこれらのモノイソシアネートで変性するこ
とにより皮膜の耐食性が向上する。
【0015】変性エポキシ樹脂(A)の合成例として
は、エポキシ樹脂のグリシジル基に対し多官能アミンの
活性水素を1.1〜1.8倍当量となるように両者を混
合し、70〜150℃で4〜10時間反応させ、さらに
モノイソシアネートを残存するアミンの活性水素に対し
0.7〜2.0倍当量となるように添加し、30〜10
0℃で反応を継続する例が挙げられる。
【0016】本発明のブロックウレタンとは、イソシア
ネート化合物の活性の強いイソシアネート基を適当な化
合物で保護し不活性としたもので、加熱すればブロック
剤が解離し容易にイソシアネート基の活性を再生するも
のである。すなわち、変性エポキシ樹脂の硬化剤として
の役割を持つ。ポリオールとしては、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオー
ル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等
の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパ
ン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール等の低分
子ポリオール、さらにカプロラクトンあるいは低分子ポ
リオールとジカルボン酸から得られるポリエステルポリ
オール、さらに分子量が400以上であるポリエチレン
グリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメ
チレングリコール等の高分子ポリオールが例示でき、ま
た、これらのポリオールを2種以上併用することも可能
である。ここでポリオールとしては、高分子ポリオール
を用いると有機樹脂皮膜に適度な親水性が付与され、カ
チオン電着塗料とのなじみが向上して平滑な電着塗装面
が得られ、中・上塗り塗装後の鮮映性に優れ好ましい。
【0017】ポリイソシアネートとしては、前述したジ
イソシアネートの全て、及びこれらの混合物、多核体を
用いることができる。ブロック剤としてはフェノール等
のフェノール系化合物、ε−カプロラクタム等のラクタ
ム系化合物、メチルエチルケトオキシム等のオキシム系
化合物、エチレンイミン等のイミン系化合物を用いるこ
とができ、また、これら2種以上の混合物を使用するこ
とも可能である。
【0018】ブロックイソシアネート(B)は、ポリイ
ソシアネートのイソシアネート基がポリオールの水酸基
に対し過剰となるように両者を混合・反応させることに
よりプレポリマーを合成し、さらにこのプレポリマーの
残存イソシアネート基をブロック剤で保護することで得
られる。なお、これらの反応温度は30〜100℃であ
る。
【0019】本発明のブロックウレタン変性エポキシ樹
脂は、前述の変性エポキシ樹脂(A)とブロックウレタ
ン(B)とを混合し、得ることができる。混合割合(不
揮発分の重量比)は、A/B=95/5〜50/50の
範囲とする。この混合割合が95/5を超えると、中・
上塗り塗装後の鮮映性が劣化し問題がある。また、混合
割合が50/50未満であると耐食性が劣化する。ま
た、さらに高度な鮮映性、耐食性を得るためには、A/
B=90/10〜60/40の範囲とすることが好まし
い。
【0020】本発明は、上記のブロックウレタン変性エ
ポキシ樹脂にシリカおよび/または難溶性クロム酸塩を
配合することにより、耐食性を向上させることができ
る。シリカは、亜鉛系めっき鋼板の腐食生成物のうち腐
食の抑制に有効な塩基性塩化亜鉛の生成を促進する効果
を有するほか、腐食環境中に微量に溶解することで、ケ
イ酸イオンが皮膜形成型腐食抑制剤として機能すること
により、防食効果が発揮されるものと推定される。ここ
で、ブロックウレタン変性エポキシ樹脂中へのシリカの
添加量については、不揮発分の重量比でブロックウレタ
ン変性エポキシ樹脂/シリカが90/10を超えると、
シリカによる防食効果が十分に発揮されず耐食性が劣
る。一方、40/60未満であると、ブロックウレタン
変性エポキシ樹脂のバインダーとしての効果が不十分と
なり、塗料密着性が劣化する。
【0021】本発明で使用するシリカとしては、乾式シ
リカ(例えば、日本アエロジル(株)製の AEROS
IL 130,AEROSIL 200,AEROSI
L300,AEROSIL 380,AEROSIL
R972,AEROSILR811,AEROSIL
R805等)、オルガノシリカゾル(例えば、日産化学
工業(株)製の MA−ST,IPA−ST,NBA−
ST,IBA−ST,EG−ST,XBA−ST,ET
C−ST,DMAC−ST等)、沈降法湿式シリカ(例
えば、徳山曹達(株)製の T−32(S),K−4
1,F−80等)、ゲル法湿式シリカ(例えば、富士デ
ヴィソン化学(株)製のサイロイド244,サイロイド
150,サイロイド72,サイロイド65,SHIEL
DEX等)等を使用することができる。また、上記のシ
リカを1種以上混合して使用することも可能である。
【0022】シリカ表面のシラノール基をメチル基等で
置換することにより表面を疎水化した疎水性シリカをブ
ロックウレタン変性エポキシ樹脂に添加した場合には、
有機樹脂皮膜とカチオン電着塗料とのなじみが悪くな
り、平滑な電着塗装面が得られないことから、中・上塗
り塗装後の鮮映性が劣る。したがって、優れた鮮映性を
得るためには、表面を疎水化していないシリカ(親水性
シリカ)の方が好ましい。
【0023】また、有機皮膜中に添加された難溶性クロ
ム酸塩は、腐食環境中で微量に溶解することにより、6
価のクロム酸イオンを放出し、クロメート層と同様の機
構で亜鉛系めっき鋼板の腐食を抑制するものと考えられ
る。ここで、ブロックウレタン変性エポキシ樹脂中への
難溶性クロム酸塩の添加量については、不揮発分の重量
比でブロックウレタン変性エポキシ樹脂/難溶性クロム
酸塩が90/10を超えると、難溶性クロム酸塩による
防食効果が十分に発揮されず耐食性が劣る。一方、40
/60未満であると、ブロックウレタン変性エポキシ樹
脂のバインダーとしての効果が不十分となり、塗料密着
性が劣化する。
【0024】本発明で使用する難溶性クロム酸塩として
は、クロム酸バリウム(BaCrO4)、クロム酸スト
ロンチウム(SrCrO4)、クロム酸カルシウム(C
aCrO4)、クロム酸亜鉛(ZnCrO4・4Zn(O
H)2)、クロム酸亜鉛カリウム(K2O・4ZnO・4
CrO3・3H2O)、クロム酸鉛(PbCrO4)等の
微粉末を使用することができる。また、上記の難溶性ク
ロム酸塩を2種以上混合して使用することも可能であ
る。但し、耐食性の観点からは、長期にわたってクロム
酸イオンによる自己修復効果の期待できるクロム酸バリ
ウム、クロム酸ストロンチウムを使用することが好まし
い。また、自動車の塗装前処理工程において、有機樹脂
皮膜中からの水可溶性クロムの溶出をできるだけ少なく
するという観点からは、水に対する溶解度の小さいクロ
ム酸バリウムが好ましい。
【0025】本発明では、ブロックウレタン変性エポキ
シ樹脂にシリカおよび難溶性クロム酸塩を特定の比率で
配合することにより、双方の防食効果の相乗効果によっ
て、最も優れた耐食性を実現できる。すなわち、シリカ
および難溶性クロム酸塩が不揮発分の重量比で、 ブロックウレタン変性エポキシ樹脂/(シリカ+難溶
性クロム酸塩)=90/10〜40/60 シリカ/難溶性クロム酸塩=90/10〜10/90 の割合で配合された場合に、最も優れた耐食性を得るこ
とが可能となる。ここで、ブロックウレタン変性エポキ
シ樹脂/(シリカ+難溶性クロム酸塩)が90/10を
超えると、シリカおよび難溶性クロム酸塩による防食効
果が十分に発揮されず耐食性が劣る。一方、40/60
未満であると、ブロックウレタン変性エポキシ樹脂のバ
インダーとしての効果が不十分となり、塗料密着性が劣
化する。また、シリカ/難溶性クロム酸塩が90/10
を超えても、10/90未満でも両者による相乗効果が
不十分となり、耐食性がやや劣る。
【0026】本発明では、上記の各成分が有機溶剤に溶
解または分散され、塗料組成物が得られる。本発明で使
用する塗料組成物中には、有機溶剤を70〜95wt%
含有させることにより、塗料の均一な薄膜塗布が可能と
なる。塗料中の溶剤分が70%未満では、塗料の粘度が
高く、チキソトロピック性も強いために、塗料の均一な
薄膜塗布が困難となり、塗装作業性に問題を生じる。ま
た、塗料中の溶剤分が95%を超えると、必要以上に塗
料の固形分濃度が低くなるため、ロールコーター等で塗
布する際に、所定の付着量を得ることが困難となる。
【0027】本発明では、ジアセトンアルコールおよび
/またはジエチレングリコールモノブチルエーテルを5
0wt%以上含有する有機溶剤が用いられる。この理由
は以下の通りである。すなわち、本発明では優れた鮮映
性を得るために、特定のブロックウレタン変性エポキシ
樹脂と表面を疎水化していないシリカ(親水性シリカ)
を用いるが、表面を疎水化していないシリカを塗料組成
物中に多量に添加すると、塗料の粘度が著しく高くな
り、ロールコーター等で薄膜塗布を行う際にムラが発生
し易いという問題を生じる。塗料の粘度を下げる方法と
して、一般的には水素結合性の高い溶媒、例えば水やア
ルコール系溶剤等の使用が考えられるが、これらは本発
明で使用するブロックウレタン変性エポキシ樹脂に対し
ては極性が高過ぎるため溶解性がなく、使用できない。
また、ブロックウレタン変性エポキシ樹脂に対する溶解
性を付与することを目的として、ケトン系有機溶剤を水
やアルコール系溶剤と併用した場合でも、溶解性を維持
可能な範囲内での水やアルコール系溶剤の使用量は限定
されているため、粘度を低下させるためには効果が不十
分であり、本発明に用いる塗料組成物には適用できな
い。
【0028】溶剤種について検討した結果、ジアセトン
アルコールおよび/またはジエチレングリコールモノブ
チルエーテルが、本発明で使用するブロックウレタン変
性エポキシ樹脂に対して溶解性を有し、且つ塗料の粘度
上昇を防止できることを見出した。すなわち、これらの
溶剤を用いることにより、表面を疎水化していないシリ
カを塗料組成物中に多量に添加した場合でも塗料の粘度
が上昇することなく、ロールコーター等による薄膜の均
一な塗布が可能となる。この理由としては、これらの溶
剤が分子内にカルボニル基またはエーテル基を有してい
るため、本発明で使用するブロックウレタン変性エポキ
シ樹脂に対する溶解性を有し、且つ一級水酸基がシリカ
表面のシラノール基に水素結合し、これらの溶剤分子が
立体障害となることによって、シリカの凝集による3次
元的編み目状構造の形成を抑制することによるものと考
えられる。
【0029】ジアセトンアルコールおよび/またはジエ
チレングリコールモノブチルエーテルは、塗料組成物を
構成する有機溶剤中に50wt%以上含まれることが必
要である。50wt%未満では塗料の粘度上昇を抑制す
る効果が不十分となり、ロールコーター等で薄膜塗布を
行う際にムラが発生し易い。経済性を考慮して、他の安
価な有機溶剤(例えば、キシレン、シクロヘキサノン、
イソプロピルグリコール)を50wt%未満の範囲で併
用することが可能である。
【0030】なお、本発明で使用される塗料組成物は、
上記のブロックウレタン変性エポキシ樹脂、シリカおよ
び/または難溶性クロム酸塩、ジアセトンアルコールお
よび/またはジエチレングリコールモノブチルエーテル
を50wt%以上含有する有機溶剤が主な構成成分とな
るが、その他にもシランカップリング剤、着色顔料(例
えば、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料
等)、着色染料(例えば、アゾ系染料、アゾ系金属錯塩
染料等)、潤滑剤(例えば、ポリエチレン系ワックス、
テフロン、グラファイト、二硫化モリブデン等)、防錆
顔料(例えば、トリポリりん酸二水素アルミニウム、り
んモリブデン酸アルミニウム、りん酸亜鉛等)、導電顔
料(例えば、りん化鉄、アンチモンドープ型酸化錫
等)、界面活性剤等を適宜含有してもよい。
【0031】上記の塗料組成物を、第1層として前記ク
ロメート層が形成された亜鉛系めっき鋼板に塗布後加熱
処理することによって、第2層の有機樹脂皮膜が形成さ
れる。塗装は、通常、ロールコーター法により行われる
が、浸漬法やスプレー法により塗布した後にエアナイフ
法やロール絞り法により塗布量を調整することも可能で
ある。また、塗料組成物を塗布した後の加熱処理方法と
しては、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉等を用い
ることができる。加熱処理は到達板温で50〜300
℃、好ましくは60〜250℃の範囲で行われる。な
お、本発明をBH鋼板に適用する場合には、150℃以
下の加熱処理が好ましい。本発明の有機複合被覆鋼板
は、通常、両面に亜鉛系めっき皮膜+クロメート皮膜+
有機樹脂皮膜を有するが、必要に応じて片面のみに適用
し、他の片面を鋼板面、亜鉛系めっき面、亜鉛系めっき
皮膜+クロメート皮膜面とすることも可能である。
【0032】
【実施例】自動車車体用の表面処理鋼板として、亜鉛系
めっき鋼板の両面をアルカリ脱脂後、水洗・乾燥し、次
いでクロメート処理を施し、さらに塗料組成物をロール
コーターにより塗布し、最高到達板温150℃×4秒の
焼付処理を行った。得られた有機複合被覆鋼板につい
て、耐食性(耐外面錆性)、鮮映性、塗料密着性、溶接
性の各試験を行った。その結果を表9ないし表13に示
す。本実施例の処理条件は、以下の通りである。
【0033】(1)亜鉛系めっき鋼板 厚さ0.8mm、表面粗さ(Ra)1.0μmの冷延鋼
板に表1に示すような各種亜鉛系めっきを施し、処理原
板として用いた。
【0034】(2)クロメート処理 塗布型クロメート処理 下記に示す液組成のクロメート処理液をロールコーター
により塗布し、水洗することなく乾燥させた。クロメー
ト層の付着量は、ロールコーターのピックアップロール
とアプリケーターロールの周速比を変化させ調整した。 無水クロム酸:20g/l りん酸イオン:4g/l ジルコニウムフッ化物イオン:1g/l 亜鉛イオン:1g/l 6価クロム/3価クロム:3/3(重量比) 無水クロム酸/ジルコニウムフッ化物イオン:20/1
(重量比) 電解クロメート処理 無水クロム酸:30g/l、硫酸:0.2g/l、浴
温:40℃の処理液を用いて、電流密度:10A/dm
2で、亜鉛系めっき鋼板に陰極電解処理を施し、水洗・
乾燥した。クロメート層の付着量は、陰極電解処理の通
電量を制御することにより調整した。 反応型クロメート処理 無水クロム酸:30g/l、りん酸:10g/l、Na
F:0.5g/l、K2TiF6:4g/l、浴温:60
℃の処理液を用いて、亜鉛系めっき鋼板にスプレー処理
し、水洗・乾燥した。クロメート層の付着量は、処理時
間を変化させることで調整した。
【0035】(3)有機樹脂 表2に、本実施例で用いたブロックウレタン変性エポキ
シ樹脂を示す。なお、同表に示した変性エポキシ樹脂お
よびブロックウレタンは、下記に示す方法で作成した。 変性エポキシ樹脂(A) コンデンサー、撹拌機、温度計を備えた反応器に、エポ
キシ当量が1500であるビスフェノールA型エポキシ
樹脂500部、キシレン385部、シクロヘキサノン3
85部を入れ、撹拌下に加熱・溶解した。さらに、イソ
プロパノールアミン20部を加え、100℃で5時間反
応させ、さらにNCO%(イソシアネート%)が13%
である2,4−トリレンジイソシアネートとオクチルア
ルコール付加物のモノイソシアネート65部を加え、6
0℃で5時間反応させ、樹脂分が40%の変性エポキシ
樹脂Aを得た。 ブロックウレタン(B) コンデンサー、撹拌機、温度計を備えた反応器に、分子
量1000のポリエチレングリコール440部、キシレ
ン125部を入れ、撹拌下に60℃で加熱し、2,6−
トリレンジイソシアネート153部を添加した。この中
間体のNCO%は4.8%であった。さらに、ε−カプ
ロラクタム106部を加え反応を継続し、NCO%が0
であることを確認した後にブタノール175部を加え、
樹脂分が70%のブロックウレタンB1を得た。同様
の装置、反応条件で分子量4000のポリプロピレング
リコール500部、キシレン300部とヘキサメチレン
ジイソシアネート42部よりNCO%が1.2%の中間
体を得た。さらに、メチルエチルケトオキシム23部を
加えて反応を継続し、NCO%が0であることを確認し
た後にブタノール77部を加え、樹脂分が60%のブロ
ックウレタンB2を得た。
【0036】(4)塗料組成物 表5〜表8に、本実施例において用いた塗料組成物を示
す。なお、表5に示した塗料組成物は表2に示した樹脂
に、所定の防錆添加剤と有機溶剤を加え、サンドグライ
ンダーにて調整した。使用したシリカを表3に、また、
難溶性クロム酸塩を表4にそれぞれ示す。
【0037】なお、各特性の評価方法は以下の通りであ
る。 (a)塗布作業性 塗料のチキソトロピック性が強い場合には、ロールコー
ターで一旦塗布された塗料は流動しにくいためにロール
目が残り易く平滑な塗膜が得られない。そこで、JIS
K 5400 4.5.3(1990)の参考試験で
ある、回転粘度計による非ニュートン性の評価に示され
ている、TI(Thixotropy index:回転数6rpmと6
0rpmにおける粘度の比率)を測定することにより、
塗料のチキソトロピーの程度を測定し、塗布作業性を評
価した。その評価基準は以下の通りである。 ◎:0.9以上、1.3未満 ○:1.3以上、1.6未満 △:1.6以上、3.6未満 ×:3.6以上
【0038】(b)耐食性(耐外面錆性) 供試材に日本ペイント(株)製U−600で電着塗装
(25μm)を行い、次いで、関西ペイント(株)製K
PX−36で中塗り塗装(30μm)し、さらに関西ペ
イント(株)製ルーガベークB−531で上塗り塗装
(35μm)を行った。これらの試験片にカッターナイ
フでクロスカットを入れて、〔塩水噴霧試験・10分→
乾燥・155分→湿潤試験・75分→乾燥・160分→
湿潤試験・80分〕を1サイクルとする複合腐食試験を
300サイクル行い、クロスカット部からの腐食の膨れ
幅で耐食性(耐外面錆性)を評価した。その評価基準は
以下の通りである。 ◎:2mm未満 ○:2mm以上、4mm未満 △:4mm以上、6mm未満 ×:6mm以上
【0039】(c)鮮映性 供試材に上記(b)と同様の電着塗装・中塗り塗装・上
塗り塗装を行い、スガ試験機(株)製の写像性測定器
(ICM−2DP)を用い、0.5mmのスリットを使
用した場合の像鮮明度Cにより評価した。その評価基準
は以下の通りである。 ◎:80以上 ○:80未満、75以上 △:75未満、70以上 ×:70未満
【0040】(d)塗料密着性 供試材に上記(a)と同様の電着塗装・中塗り塗装・上
塗り塗装を行い、これらの試験片を40℃のイオン交換
水中に240時間浸漬した。次いで、試験片を取り出
し、24時間・室温で放置した後、塗膜に2mm間隔の
碁盤目を100個刻み、接着テープを粘着・剥離して、
塗膜の剥離率で評価した。その評価基準は以下の通りで
ある。 ◎:剥離なし ○:3%未満 △:3%以上、10%未満 ×:10%以上
【0041】(e)溶接性 CF型電極、加圧力:200kgf、通電時間:10サ
イクル/50Hz、溶接電流:10kAで連続打点性の
試験を行い、連続打点数で評価した。その評価基準は以
下の通りである。 ◎:5000点以上 ○:4000点以上、5000点未満 △:3000点以上、4000点未満 ×:3000点未満
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】*1 表2に記載された有機樹脂のNo. *2 表3に記載されたシリカのNo. *3 表4に記載された難溶性クロム酸塩のNo. *4 不揮発分の重量比 *5 不揮発分の重量比 *6 ジアセトンアルコールまたはジエチレングリコー
ルモノブチルエーテルが、塗料組成物中の有機溶剤に占
める割合(wt%) *7 有機溶剤が塗料組成物中に占める割合(wt%)
【0051】
【表9】
【0052】
【表10】
【0053】
【表11】
【0054】
【表12】
【0055】
【表13】
【0056】*8 発:本発明例 比:比較例 *9 表1に記載された亜鉛系めっき鋼板のNo. *10 金属クロム換算のクロメート付着量 *11 表5〜表8に記載された塗料組成物のNo.
【0057】
【発明の効果】以上述べたように本発明の有機複合被覆
鋼板は、特定のブロックウレタン変性エポキシ樹脂と、
シリカおよび/または難溶性クロム酸塩からなる防錆添
加剤と、ジアセトンアルコールおよび/またはジエチレ
ングリコールモノブチルエーテルを含有する有機溶剤と
からなる塗料組成物を塗布して得られた第2層有機樹脂
皮膜を有するため、優れた耐外面錆性と鮮映性を有し、
また、塗料密着性および溶接性にも優れていることか
ら、自動車および家電用表面処理鋼板として極めて有用
なものである。
フロントページの続き (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 菊田 佳男 千葉県茂原市東郷1900番地 三井東圧化学 株式会社内 (72)発明者 小堀 公夫 千葉県茂原市東郷1900番地 三井東圧化学 株式会社内 (72)発明者 春田 泰彦 神奈川県平塚市東八幡4丁目17番1号 関 西ペイント株式会社内 (72)発明者 今崎 善夫 兵庫県尼崎市神崎町33番1号 関西ペイン ト株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛系めっき鋼板の表面に、第1層とし
    て金属クロム換算で付着量10〜200mg/m2のク
    ロメート層を有し、その上層に第2層として、下記
    (1)および(2)を含有し、且つ下記(3)の有機溶
    剤を70〜95wt%含有する塗料組成物を塗布して得
    られた、膜厚0.2〜2μmの有機樹脂皮膜を有してな
    る耐外面錆性および鮮映性に優れた有機複合被覆鋼板。 (1) エポキシ樹脂、多官能アミンおよびモノイソシ
    アネートからなる変性エポキシ樹脂(A)に対し、ポリ
    オール、ポリイソシアネートおよびブロック剤からなる
    ブロックウレタン(B)をA/B=95/5〜50/5
    0(不揮発分の重量比)の割合で混合したブロックウレ
    タン変性エポキシ樹脂 (2) ブロックウレタン変性エポキシ樹脂に対する配
    合割合が、ブロックウレタン変性エポキシ樹脂/防錆添
    加剤=90/10〜40/60(不揮発分の重量比)で
    ある防錆添加剤 (3) ジアセトンアルコールおよび/またはジエチレ
    ングリコールモノブチルエーテルを50wt%以上含有
    する有機溶剤
  2. 【請求項2】 塗料組成物中の防錆添加剤がシリカであ
    る請求項1に記載の耐外面錆性および鮮映性に優れた有
    機複合被覆鋼板。
  3. 【請求項3】 塗料組成物中の防錆添加剤が難溶性クロ
    ム酸塩である請求項1に記載の耐外面錆性および鮮映性
    に優れた有機複合被覆鋼板。
  4. 【請求項4】 塗料組成物中の防錆添加剤が、下記割合
    からなるシリカおよび難溶性クロム酸塩である請求項1
    に記載の耐外面錆性および鮮映性に優れた有機複合被覆
    鋼板。 シリカ/難溶性クロム酸塩=90/10〜10/90
    (固形分の重量比)
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