JPH06145865A - Ca系助剤を併用する初晶Siの微細化 - Google Patents
Ca系助剤を併用する初晶Siの微細化Info
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- JPH06145865A JPH06145865A JP32496592A JP32496592A JPH06145865A JP H06145865 A JPH06145865 A JP H06145865A JP 32496592 A JP32496592 A JP 32496592A JP 32496592 A JP32496592 A JP 32496592A JP H06145865 A JPH06145865 A JP H06145865A
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Abstract
(57)【要約】 (修正有)
【目的】 Pの初晶Si微細化作用を促進させるCaを
過共晶Al−Si合金溶湯に含ませるのに好適な微細化
助剤を得る。 【構成】 0.5〜10重量%のCaを含有するAl−
Ca合金であって、断面積が7〜80mm2 のロッド状
又は平均粒径が2〜15mmの粒状体である。ロッド状
の微細化助剤は、金型鋳造又はDC鋳造で得られた鋳塊
を断面積7〜80mm2 のロッド状に押し出すことによ
り製造される。或いは、粒状化したAl−Ca合金を断
面積7〜80mm2 のロッド状に押し出すことによって
も製造される。Al−Ca合金の粒状化には、Al−C
a合金溶湯を回転体の上に滴下する方法を採用すること
ができる。
過共晶Al−Si合金溶湯に含ませるのに好適な微細化
助剤を得る。 【構成】 0.5〜10重量%のCaを含有するAl−
Ca合金であって、断面積が7〜80mm2 のロッド状
又は平均粒径が2〜15mmの粒状体である。ロッド状
の微細化助剤は、金型鋳造又はDC鋳造で得られた鋳塊
を断面積7〜80mm2 のロッド状に押し出すことによ
り製造される。或いは、粒状化したAl−Ca合金を断
面積7〜80mm2 のロッド状に押し出すことによって
も製造される。Al−Ca合金の粒状化には、Al−C
a合金溶湯を回転体の上に滴下する方法を採用すること
ができる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、過共晶Al−Si合金
等に晶出する初晶Siを微細化する助剤,その製造方法
及び初晶Siが微細化された鋳塊に関する。
等に晶出する初晶Siを微細化する助剤,その製造方法
及び初晶Siが微細化された鋳塊に関する。
【0002】
【従来の技術】Siを12.6重量%以上含有する過共
晶Al−Si合金は、熱膨張係数が小さく、耐熱性にも
優れている。また、Al−Si合金溶湯が凝固する際に
高硬度の初晶Siが晶出し、耐摩耗性を向上させる。こ
れらの特性を利用し、ピストン,クランクケース,ブレ
ーキドラム,シリンダーライナー等の内燃機関用部品と
して使用されている。過共晶Al−Si合金は、初晶S
iの晶出によって耐摩耗性を向上させるものの、初晶S
iが大きく成長した鋳造組織になりやすい。この鋳造組
織をもつ過共晶Al−Si合金を加工するとき、初晶S
iやAlマトリックスとの界面等に亀裂が入り、目的と
する製品が得られない。また、機械的性質も十分でな
い。そのため、過共晶Al−Si合金は、強度の加工が
要求される鍛造素材として使用されることはほとんどな
かった。
晶Al−Si合金は、熱膨張係数が小さく、耐熱性にも
優れている。また、Al−Si合金溶湯が凝固する際に
高硬度の初晶Siが晶出し、耐摩耗性を向上させる。こ
れらの特性を利用し、ピストン,クランクケース,ブレ
ーキドラム,シリンダーライナー等の内燃機関用部品と
して使用されている。過共晶Al−Si合金は、初晶S
iの晶出によって耐摩耗性を向上させるものの、初晶S
iが大きく成長した鋳造組織になりやすい。この鋳造組
織をもつ過共晶Al−Si合金を加工するとき、初晶S
iやAlマトリックスとの界面等に亀裂が入り、目的と
する製品が得られない。また、機械的性質も十分でな
い。そのため、過共晶Al−Si合金は、強度の加工が
要求される鍛造素材として使用されることはほとんどな
かった。
【0003】過共晶Al−Si合金に晶出している粗大
な初晶Siは、切削工具の摩耗をも促進させる。また、
鋳物を製品形状に切削加工する際、硬質の初晶Siに起
因してカジリ等の欠陥が発生する。初晶Siに起因する
問題は、初晶Siを微細化することによって抑制するこ
とができる。過共晶Al−Si合金溶湯を急冷凝固する
とき、初晶Siは微細化される。たとえば、特開平52
−129607号公報で紹介されているように、溶湯圧
延法によって過共晶Al−Si合金溶湯を急冷凝固する
とき、微細化された鋳造組織をもつ製品が得られる。
な初晶Siは、切削工具の摩耗をも促進させる。また、
鋳物を製品形状に切削加工する際、硬質の初晶Siに起
因してカジリ等の欠陥が発生する。初晶Siに起因する
問題は、初晶Siを微細化することによって抑制するこ
とができる。過共晶Al−Si合金溶湯を急冷凝固する
とき、初晶Siは微細化される。たとえば、特開平52
−129607号公報で紹介されているように、溶湯圧
延法によって過共晶Al−Si合金溶湯を急冷凝固する
とき、微細化された鋳造組織をもつ製品が得られる。
【0004】溶湯圧延法は、特殊な設備を必要とし、通
常のインゴットを経る金型鋳造やDC鋳造等で採用する
ことはできない。金型鋳造やDC鋳造等において初晶S
iを微細化させるため、Al−Cu−P合金,Cu−P
合金等としてPを過共晶Al−Si合金溶湯に添加する
ことが一般的に行われている。添加されたPは、初晶S
iの微細化に有効な金属間化合物AlPを形成する。た
とえば、特開昭52−153817号公報ではヘキサメ
タリン酸ナトリウムを添加することが紹介されており、
特開昭60−204843号公報ではCu−P合金,赤
燐,リン酸ソーダ,リン酸カルシウム等のP含有物質で
処理することが紹介されている。
常のインゴットを経る金型鋳造やDC鋳造等で採用する
ことはできない。金型鋳造やDC鋳造等において初晶S
iを微細化させるため、Al−Cu−P合金,Cu−P
合金等としてPを過共晶Al−Si合金溶湯に添加する
ことが一般的に行われている。添加されたPは、初晶S
iの微細化に有効な金属間化合物AlPを形成する。た
とえば、特開昭52−153817号公報ではヘキサメ
タリン酸ナトリウムを添加することが紹介されており、
特開昭60−204843号公報ではCu−P合金,赤
燐,リン酸ソーダ,リン酸カルシウム等のP含有物質で
処理することが紹介されている。
【0005】初晶Siの微細化は、P添加のみでは不十
分な場合が多い。特に押出し材,鍛造材等として使用す
ると、加工時における初晶Siの割れが問題となる。ま
た、Caを含む過共晶Al−Si合金にあっては、初晶
Siを微細化させるPの作用が阻害されることが報告さ
れている。本発明者等の研究によるとき、Caの影響に
関する従来の報告に反し、過共晶Al−Si合金に適当
量のP及びCaを共存させるとき、P添加のみの場合に
比較して初晶Siの微細化が促進されることを見い出
し、特願平4−244259号として出願した。すなわ
ち、P/Ca=0.6〜6の条件下でP:40〜130
ppm及びCa:6〜120ppmを含む過共晶Al−
Si合金溶湯にあっては、Pによる初晶Si微細化作用
が顕著となり、微細な鋳造組織をもった製品が得られ
る。
分な場合が多い。特に押出し材,鍛造材等として使用す
ると、加工時における初晶Siの割れが問題となる。ま
た、Caを含む過共晶Al−Si合金にあっては、初晶
Siを微細化させるPの作用が阻害されることが報告さ
れている。本発明者等の研究によるとき、Caの影響に
関する従来の報告に反し、過共晶Al−Si合金に適当
量のP及びCaを共存させるとき、P添加のみの場合に
比較して初晶Siの微細化が促進されることを見い出
し、特願平4−244259号として出願した。すなわ
ち、P/Ca=0.6〜6の条件下でP:40〜130
ppm及びCa:6〜120ppmを含む過共晶Al−
Si合金溶湯にあっては、Pによる初晶Si微細化作用
が顕著となり、微細な鋳造組織をもった製品が得られ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】P及びCaの共存によ
って初晶Siを微細化するとき、鋳塊中のCa含有量を
正確にコントロールすることが要求される。しかし、C
aは、溶解工程,保持工程等において酸化等による消耗
が激しい添加元素である。そこで、鋳塊中のCa含有量
を正確にコントロールするため、溶解後の過共晶Al−
Si合金溶湯に所定量のCaを添加する方法が採用され
る。たとえば、金型鋳造では鋳造開始直前にCaを溶湯
に添加し、DC鋳造では鋳造時に樋や湯溜りにCaを連
続的に添加する。
って初晶Siを微細化するとき、鋳塊中のCa含有量を
正確にコントロールすることが要求される。しかし、C
aは、溶解工程,保持工程等において酸化等による消耗
が激しい添加元素である。そこで、鋳塊中のCa含有量
を正確にコントロールするため、溶解後の過共晶Al−
Si合金溶湯に所定量のCaを添加する方法が採用され
る。たとえば、金型鋳造では鋳造開始直前にCaを溶湯
に添加し、DC鋳造では鋳造時に樋や湯溜りにCaを連
続的に添加する。
【0007】しかし、一般に市販されているAl−Ca
母合金から所定量の小片を切り出すことは、非常に面倒
な作業を必要とし、また切断によるロスも大きくなる。
特に、DC鋳造において大きさが異なる小片を連続的に
正確に添加することは、実操業上で極めて困難である。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたもの
であり、Ca源としてのAl−Ca母合金を適当な形状
にすることにより、初晶Siの微細化に適した添加量で
Caを過共晶Al−Si合金溶湯に共存させることを目
的とする。
母合金から所定量の小片を切り出すことは、非常に面倒
な作業を必要とし、また切断によるロスも大きくなる。
特に、DC鋳造において大きさが異なる小片を連続的に
正確に添加することは、実操業上で極めて困難である。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたもの
であり、Ca源としてのAl−Ca母合金を適当な形状
にすることにより、初晶Siの微細化に適した添加量で
Caを過共晶Al−Si合金溶湯に共存させることを目
的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の初晶Si微細化
助剤は、その目的を達成するため、0.5〜10重量%
のCaを含有するAl−Ca合金であって、断面積が7
〜80mm2 のロッド状又は平均粒径が2〜15mmの
粒状体であることを特徴とする。平均粒径2〜15mm
の粒状体は、たとえば傾斜面をもつ回転体の上に溶湯を
滴下し、傾斜面に沿って液滴を転がしながら冷却するこ
とによって製造される。ロッド状の初晶Si微細化助剤
は、0.5〜10重量%のCaを含有するAl−Ca合
金を金型鋳造又はDC鋳造し、得られた鋳塊を断面積7
〜80mm2 のロッド状に押し出すことにより製造され
る。或いは、粒状化したAl−Ca合金を断面積7〜8
0mm2 のロッド状に押し出すことによっても製造され
る。
助剤は、その目的を達成するため、0.5〜10重量%
のCaを含有するAl−Ca合金であって、断面積が7
〜80mm2 のロッド状又は平均粒径が2〜15mmの
粒状体であることを特徴とする。平均粒径2〜15mm
の粒状体は、たとえば傾斜面をもつ回転体の上に溶湯を
滴下し、傾斜面に沿って液滴を転がしながら冷却するこ
とによって製造される。ロッド状の初晶Si微細化助剤
は、0.5〜10重量%のCaを含有するAl−Ca合
金を金型鋳造又はDC鋳造し、得られた鋳塊を断面積7
〜80mm2 のロッド状に押し出すことにより製造され
る。或いは、粒状化したAl−Ca合金を断面積7〜8
0mm2 のロッド状に押し出すことによっても製造され
る。
【0009】押出し材に使用される粒状のAl−Ca合
金は、押出しに先立って缶に充填したときの充填率を高
め、且つ均一混合を図る上から、粒径が小さいことが好
ましい。微粒状のAl−Ca合金は、たとえば高速回転
する有孔円筒体,円盤等の回転体上にAl−Ca合金溶
湯を供給し、遠心力で回転体から飛散する液滴を急冷す
る方法により製造される。この場合、Al−Ca合金の
粒径を小さくするには、液滴の冷却速度をたとえば10
00℃/秒と大きくすることが好ましい。本発明に従っ
た初晶Si微細化助剤及びPで処理された過共晶Al−
Si合金溶湯は、金型鋳造によるとき直径又は厚み30
mm以下の鋳塊に、DC鋳造によるとき直径又は厚み1
50mm以下の鋳塊に鋳造される。
金は、押出しに先立って缶に充填したときの充填率を高
め、且つ均一混合を図る上から、粒径が小さいことが好
ましい。微粒状のAl−Ca合金は、たとえば高速回転
する有孔円筒体,円盤等の回転体上にAl−Ca合金溶
湯を供給し、遠心力で回転体から飛散する液滴を急冷す
る方法により製造される。この場合、Al−Ca合金の
粒径を小さくするには、液滴の冷却速度をたとえば10
00℃/秒と大きくすることが好ましい。本発明に従っ
た初晶Si微細化助剤及びPで処理された過共晶Al−
Si合金溶湯は、金型鋳造によるとき直径又は厚み30
mm以下の鋳塊に、DC鋳造によるとき直径又は厚み1
50mm以下の鋳塊に鋳造される。
【0010】
【作 用】本発明の初晶Si微細化助剤は、ロッド状又
は粒状体になっている。ロッド状の助剤は、たとえばD
C鋳造の際にフィーダを使用して樋又は湯溜りに連続送
給され、正確な一定量で過共晶Al−Si合金溶湯に添
加される。粒状の助剤は、たとえば金型鋳造に先立って
必要量を計量し、鋳造直前に過共晶Al−Si合金溶湯
に添加される。この添加形態は、インゴットから切り出
した小片を添加する場合に比較して、作業が遥かに容易
であり、しかも添加量が正確にコントロールされる。
は粒状体になっている。ロッド状の助剤は、たとえばD
C鋳造の際にフィーダを使用して樋又は湯溜りに連続送
給され、正確な一定量で過共晶Al−Si合金溶湯に添
加される。粒状の助剤は、たとえば金型鋳造に先立って
必要量を計量し、鋳造直前に過共晶Al−Si合金溶湯
に添加される。この添加形態は、インゴットから切り出
した小片を添加する場合に比較して、作業が遥かに容易
であり、しかも添加量が正確にコントロールされる。
【0011】微細化助剤中のCa含有量 初晶Si微細化助剤中のCa含有量は、過共晶Al−S
i合金溶湯に対し必要量のCaを効率よく含有させる上
で、0.5〜10重量%の範囲に維持することが必要で
ある。Ca含有量0.5未満の助剤を使用して必要量の
Caを過共晶Al−Si合金溶湯に含ませようとする
と、多量の助剤を添加することが要求される。その結
果、過共晶Al−Si合金溶湯に添加されるAlの量が
多くなり、希釈によって過共晶Al−Si合金の組成が
変動する。逆に、10重量%を超える多量のCaを含有
する助剤は、CaAl4 の巨大晶が多く生成するため偏
析が著しく、均質な鋳塊が得られない。また、Ca含有
量が10重量%を超えるとき、材質の硬化によって押出
しが困難になり、所定形状の助剤を得ること自体が困難
になる。
i合金溶湯に対し必要量のCaを効率よく含有させる上
で、0.5〜10重量%の範囲に維持することが必要で
ある。Ca含有量0.5未満の助剤を使用して必要量の
Caを過共晶Al−Si合金溶湯に含ませようとする
と、多量の助剤を添加することが要求される。その結
果、過共晶Al−Si合金溶湯に添加されるAlの量が
多くなり、希釈によって過共晶Al−Si合金の組成が
変動する。逆に、10重量%を超える多量のCaを含有
する助剤は、CaAl4 の巨大晶が多く生成するため偏
析が著しく、均質な鋳塊が得られない。また、Ca含有
量が10重量%を超えるとき、材質の硬化によって押出
しが困難になり、所定形状の助剤を得ること自体が困難
になる。
【0012】微細化助剤中のCa含有量のバラツキ Caは、溶湯を保持している間に酸化等によって消耗さ
れる元素である。消耗の程度は、溶湯の温度が高いほ
ど、また保持時間が長いほど大きくなる。したがって、
Al−Ca母合金鋳塊を得るに当っては、Al−Ca合
金溶湯を可能な限り低温で処理すること、及びCa添加
後に迅速に鋳造することが好ましい。ただし、鋳造温度
が液相線に近すぎると、P及びCaの添加によっても初
晶Siが微細化しない場合がある。金型鋳造,DC鋳造
等で大量のAl−Ca合金溶湯を鋳造するとき、最初に
得られた鋳塊と最後に得られた鋳塊との間でCa含有量
が異なってくる。しかし、たとえば先端と後端とでCa
濃度が異なる数m長さのDC鋳塊から押出し用に数10
0mm長さのブロックを切り出したとき、一つのブロッ
ク内におけるCa濃度にはほとんどバラツキがない。し
たがって、ブロックごとにCa濃度の分析値を管理する
ことにより、Ca濃度のバラツキに起因した問題を回避
することができる。また、ロッド状の押出し材における
Ca含有量のバラツキは、押出し材原料として粒状体を
使用することによって一層小さなものとなる。粒状のA
l−Ca母合金にあっては、最初に製造されたものと最
後に製造されたものの組成が多少異なっていても、両者
を混合することにより平均化された組成をもつ微細化助
剤が得られる。
れる元素である。消耗の程度は、溶湯の温度が高いほ
ど、また保持時間が長いほど大きくなる。したがって、
Al−Ca母合金鋳塊を得るに当っては、Al−Ca合
金溶湯を可能な限り低温で処理すること、及びCa添加
後に迅速に鋳造することが好ましい。ただし、鋳造温度
が液相線に近すぎると、P及びCaの添加によっても初
晶Siが微細化しない場合がある。金型鋳造,DC鋳造
等で大量のAl−Ca合金溶湯を鋳造するとき、最初に
得られた鋳塊と最後に得られた鋳塊との間でCa含有量
が異なってくる。しかし、たとえば先端と後端とでCa
濃度が異なる数m長さのDC鋳塊から押出し用に数10
0mm長さのブロックを切り出したとき、一つのブロッ
ク内におけるCa濃度にはほとんどバラツキがない。し
たがって、ブロックごとにCa濃度の分析値を管理する
ことにより、Ca濃度のバラツキに起因した問題を回避
することができる。また、ロッド状の押出し材における
Ca含有量のバラツキは、押出し材原料として粒状体を
使用することによって一層小さなものとなる。粒状のA
l−Ca母合金にあっては、最初に製造されたものと最
後に製造されたものの組成が多少異なっていても、両者
を混合することにより平均化された組成をもつ微細化助
剤が得られる。
【0013】微細化助剤に含まれる他の元素 本発明に従った初晶Si微細化助剤は、13〜21重量
%のSiを含む過共晶Al−Si合金に対して効果を発
揮する。工業的に使用されている過共晶Al−Si合金
は、Siの他にMg,Cu,Ni,Mn,Fe,Zn,
Ti,Zr,Cr,V,Co等の1種又は2種以上を含
んでいるものもある。これら合金元素は、過共晶Al−
Si合金溶湯に対するCaの添加作用を阻害しない限
り、微細化助剤に含ませることもできる。また、これら
合金元素は、微細化助剤の添加により合金組成に大きな
影響を与えない程度で過共晶Al−Si合金溶湯に含ま
れていても、Caの添加効果を損なうことはない。
%のSiを含む過共晶Al−Si合金に対して効果を発
揮する。工業的に使用されている過共晶Al−Si合金
は、Siの他にMg,Cu,Ni,Mn,Fe,Zn,
Ti,Zr,Cr,V,Co等の1種又は2種以上を含
んでいるものもある。これら合金元素は、過共晶Al−
Si合金溶湯に対するCaの添加作用を阻害しない限
り、微細化助剤に含ませることもできる。また、これら
合金元素は、微細化助剤の添加により合金組成に大きな
影響を与えない程度で過共晶Al−Si合金溶湯に含ま
れていても、Caの添加効果を損なうことはない。
【0014】微細化助剤のサイズ及び形状 ロッド状の初晶Si微細化助剤は、製造性及び取扱い性
を確保する上から、7〜80mm2 の断面積をもつこと
が必要である。断面積が7mm未満のロッド状助剤で
は、Al−Ca合金鋳塊から押し出すことが困難にな
る。逆に、80mm2 を超える断面積をもつロッド状助
剤では、押出し材の巻取りが困難になると共に、取扱い
に支障を来す。ロッド状助剤の断面形状は特に制約され
るものでないが、製造時の押出し性及び添加時の送給性
を考慮するとき、円形断面をもつものが好ましい。この
場合、ロッド状助剤の直径は、断面積7〜80mm2 に
相当する3〜10mmの範囲に設定される。角形の鋳塊
を板状に圧延した扁平な助剤を使用することもできる
が、圧延板を細くスリットする必要があることから製造
コストが高くなる。また、プロペルチ法等の連続鋳造圧
延によってAl−Ca母合金からロッドを製造すること
も可能であるが、鋳片の先端部と後端部におけるCa濃
度変化を管理する必要が生じる。
を確保する上から、7〜80mm2 の断面積をもつこと
が必要である。断面積が7mm未満のロッド状助剤で
は、Al−Ca合金鋳塊から押し出すことが困難にな
る。逆に、80mm2 を超える断面積をもつロッド状助
剤では、押出し材の巻取りが困難になると共に、取扱い
に支障を来す。ロッド状助剤の断面形状は特に制約され
るものでないが、製造時の押出し性及び添加時の送給性
を考慮するとき、円形断面をもつものが好ましい。この
場合、ロッド状助剤の直径は、断面積7〜80mm2 に
相当する3〜10mmの範囲に設定される。角形の鋳塊
を板状に圧延した扁平な助剤を使用することもできる
が、圧延板を細くスリットする必要があることから製造
コストが高くなる。また、プロペルチ法等の連続鋳造圧
延によってAl−Ca母合金からロッドを製造すること
も可能であるが、鋳片の先端部と後端部におけるCa濃
度変化を管理する必要が生じる。
【0015】粒状の初晶Si微細化助剤を使用すると
き、過共晶Al−Si合金溶湯に対するCaの添加効率
を確保する上から、助剤の平均粒径を2〜15mmの範
囲に維持することが必要である。平均粒径が2mm未満
の助剤を過共晶Al−Si合金溶湯に添加すると、酸化
皮膜の巻込みが多くなり、得られた鋳塊に多量の非金属
介在物が分散される。逆に、平均粒径が15mmを超え
る大径の助剤の場合は、取扱いの容易な球形或いは球形
に近い粒状体に製造することが困難になる。
き、過共晶Al−Si合金溶湯に対するCaの添加効率
を確保する上から、助剤の平均粒径を2〜15mmの範
囲に維持することが必要である。平均粒径が2mm未満
の助剤を過共晶Al−Si合金溶湯に添加すると、酸化
皮膜の巻込みが多くなり、得られた鋳塊に多量の非金属
介在物が分散される。逆に、平均粒径が15mmを超え
る大径の助剤の場合は、取扱いの容易な球形或いは球形
に近い粒状体に製造することが困難になる。
【0016】Al−Ca母合金の粒状化 金属溶湯から粒状体を得る手段として、ガスアトマイ
ズ,エアーアトマイズ等が一般的に採用されている。し
かし、これらアトマイズ法によるとき、得られる粒状体
が非常に微細で且つ表面積が異常に大きくなる。そのた
め、押出し材中に多くの酸化皮膜が含まれ、鋳造時にお
ける酸化皮膜巻込みの原因となる。この点、Al−Ca
母合金溶湯を回転冷却体上に滴下するとき、酸化皮膜が
少なく取扱いの容易な適当粒径の粒状体になる。回転体
としては、たとえば傾斜面をもち低速回転する金属円盤
が使用される。
ズ,エアーアトマイズ等が一般的に採用されている。し
かし、これらアトマイズ法によるとき、得られる粒状体
が非常に微細で且つ表面積が異常に大きくなる。そのた
め、押出し材中に多くの酸化皮膜が含まれ、鋳造時にお
ける酸化皮膜巻込みの原因となる。この点、Al−Ca
母合金溶湯を回転冷却体上に滴下するとき、酸化皮膜が
少なく取扱いの容易な適当粒径の粒状体になる。回転体
としては、たとえば傾斜面をもち低速回転する金属円盤
が使用される。
【0017】Al−Ca合金を粒状化し、この粒状体を
押出すとき、Ca含有量のバラツキがより少ないロッド
状の押出し材が得られる。この押出し材用の粒状体は、
金属円盤,側壁に孔部を穿設した円筒体等の回転体を使
用して製造される。回転体として円板又は多数の孔が穿
設されたグラファイト製等の円筒体を使用すると、遠心
力によって孔部から飛び出した溶湯が液滴となって飛散
する。この液滴は、水冷されて粒状体になる。このと
き、孔の大きさ,回転体の温度,回転速度等を調整する
ことによって、得られる粒状体の粒度分布が制御され
る。
押出すとき、Ca含有量のバラツキがより少ないロッド
状の押出し材が得られる。この押出し材用の粒状体は、
金属円盤,側壁に孔部を穿設した円筒体等の回転体を使
用して製造される。回転体として円板又は多数の孔が穿
設されたグラファイト製等の円筒体を使用すると、遠心
力によって孔部から飛び出した溶湯が液滴となって飛散
する。この液滴は、水冷されて粒状体になる。このと
き、孔の大きさ,回転体の温度,回転速度等を調整する
ことによって、得られる粒状体の粒度分布が制御され
る。
【0018】対象とする過共晶Al−Si合金 本発明に従った微細化助剤が添加される過共晶Al−S
i合金は、13〜21重量%のSiを含んでいる。この
Si含有量が13重量%未満では、合金溶湯から初晶S
iが晶出することがないので、微細化助剤によってCa
を添加しても所与の効果が得られない。一方、21重量
%を超えるSiを含む合金では、Caの添加によっても
初晶Siの充分な微細化が図られない。この過共晶Al
−Si合金は、Siの他にMg,Cu,Ni,Mn,F
e,Zn,Ti,Zr,Cr,V,Co等の合金元素を
含んでいても良い。
i合金は、13〜21重量%のSiを含んでいる。この
Si含有量が13重量%未満では、合金溶湯から初晶S
iが晶出することがないので、微細化助剤によってCa
を添加しても所与の効果が得られない。一方、21重量
%を超えるSiを含む合金では、Caの添加によっても
初晶Siの充分な微細化が図られない。この過共晶Al
−Si合金は、Siの他にMg,Cu,Ni,Mn,F
e,Zn,Ti,Zr,Cr,V,Co等の合金元素を
含んでいても良い。
【0019】過共晶Al−Si合金から得られる鋳塊 微細化助剤をPと共に添加した過共晶Al−Si合金溶
湯を鋳造するとき、初晶Siを効果的に微細化させる上
で、冷却速度を大きく設定することが必要である。具体
的には金型鋳造で鋳塊を製造するとき、鋳塊の直径又は
厚みを30mm以下にすることにより、所定の冷却速度
を確保する。直径又は厚みが30mmを超える鋳塊を製
造しようとすると、合金溶湯或いは鋳塊の保有熱が多
く、緩慢な速度で鋳塊が冷却され、初晶Siの微細化が
達成されない。また、DC鋳造で鋳塊を製造するとき、
鋳塊の直径又は厚みが150mmを超えると、同様な理
由から初晶Siの微細化が行われない。
湯を鋳造するとき、初晶Siを効果的に微細化させる上
で、冷却速度を大きく設定することが必要である。具体
的には金型鋳造で鋳塊を製造するとき、鋳塊の直径又は
厚みを30mm以下にすることにより、所定の冷却速度
を確保する。直径又は厚みが30mmを超える鋳塊を製
造しようとすると、合金溶湯或いは鋳塊の保有熱が多
く、緩慢な速度で鋳塊が冷却され、初晶Siの微細化が
達成されない。また、DC鋳造で鋳塊を製造するとき、
鋳塊の直径又は厚みが150mmを超えると、同様な理
由から初晶Siの微細化が行われない。
【0020】
実施例1:ルツボに収容した純Alを溶解し、金属Ca
を0.8重量%目標で添加することにより、Al−Ca
母合金を調製した。Al−Ca母合金を750℃で金型
に鋳造し、直径97mm及び長さ300mmの丸棒状鋳
塊を得た。各鋳塊から長さ140mmのブロックを切り
出し、600トンの縦型押出し機を使用して温度450
℃,ラム速度7cm/分,2本出しの条件下で直径7.
2mmの丸棒に押し出した。得られた丸棒のCaを分析
したところ、0.74重量%であり、押出し材の先端部
と後端部との間でCa分析値に実質的なバラツキはなか
った。
を0.8重量%目標で添加することにより、Al−Ca
母合金を調製した。Al−Ca母合金を750℃で金型
に鋳造し、直径97mm及び長さ300mmの丸棒状鋳
塊を得た。各鋳塊から長さ140mmのブロックを切り
出し、600トンの縦型押出し機を使用して温度450
℃,ラム速度7cm/分,2本出しの条件下で直径7.
2mmの丸棒に押し出した。得られた丸棒のCaを分析
したところ、0.74重量%であり、押出し材の先端部
と後端部との間でCa分析値に実質的なバラツキはなか
った。
【0021】他方、Si:15重量%,Cu:3.5重
量%,Mg:0.5重量%,P:60ppm,残部がA
lの組成をもつ合金を容量50kgのルツボに溶解し、
温度780℃,注本数2本及び速度150mm/分の鋳
造条件で直径98mm及び長さ1400mmの鋳塊をホ
ットトップ鋳造により製造した。このとき、Al−Ca
母合金から得られた押出し丸棒を速度33cm/分で湯
溜り部に供給しながら鋳造を行った。得られた鋳塊のC
aを分析したところ、鋳塊の先端から200mmの部分
を除いて、Ca分析値は58±8ppmの範囲にあっ
た。また、鋳塊半径の1/2の位置で測定した初晶Si
は、平均粒径が18μmと微細化されていた。これに対
し、Ca添加を行わない合金溶湯から同様な鋳造条件の
下で得られた鋳塊では、同じ位置にある初晶Siは、平
均粒径が33μmと粗いものであった。
量%,Mg:0.5重量%,P:60ppm,残部がA
lの組成をもつ合金を容量50kgのルツボに溶解し、
温度780℃,注本数2本及び速度150mm/分の鋳
造条件で直径98mm及び長さ1400mmの鋳塊をホ
ットトップ鋳造により製造した。このとき、Al−Ca
母合金から得られた押出し丸棒を速度33cm/分で湯
溜り部に供給しながら鋳造を行った。得られた鋳塊のC
aを分析したところ、鋳塊の先端から200mmの部分
を除いて、Ca分析値は58±8ppmの範囲にあっ
た。また、鋳塊半径の1/2の位置で測定した初晶Si
は、平均粒径が18μmと微細化されていた。これに対
し、Ca添加を行わない合金溶湯から同様な鋳造条件の
下で得られた鋳塊では、同じ位置にある初晶Siは、平
均粒径が33μmと粗いものであった。
【0022】実施例2:純Alをルツボに溶解し、金属
Caを5重量%目標で添加し、温度700℃でDC鋳造
することにより直径98mm及び長さ1400mmの鋳
塊を得た。鋳塊のCaを分析したところ、Ca含有量
は、鋳塊先端部で4.62重量%,後端部で4.15重
量%であった。鋳塊の先端部及び後端部からそれぞれ長
さ140mmのブロックを切り出し、600トンの縦型
押出し機を使用して温度450℃,ラム速度7cm/
分,2本出しの条件下で直径7.2mmの丸棒に押し出
した。得られた丸棒のCaを分析したところ、鋳塊の先
端部から得られた押出し材のCa含有量は4.7±0.
3重量%、後端部から得られた押出し材のCa含有量は
4.0±0.4重量%であった。このことから、各押出
し材の先端部及び後端部のCa濃度に実質的なバラツキ
がないことが判る。
Caを5重量%目標で添加し、温度700℃でDC鋳造
することにより直径98mm及び長さ1400mmの鋳
塊を得た。鋳塊のCaを分析したところ、Ca含有量
は、鋳塊先端部で4.62重量%,後端部で4.15重
量%であった。鋳塊の先端部及び後端部からそれぞれ長
さ140mmのブロックを切り出し、600トンの縦型
押出し機を使用して温度450℃,ラム速度7cm/
分,2本出しの条件下で直径7.2mmの丸棒に押し出
した。得られた丸棒のCaを分析したところ、鋳塊の先
端部から得られた押出し材のCa含有量は4.7±0.
3重量%、後端部から得られた押出し材のCa含有量は
4.0±0.4重量%であった。このことから、各押出
し材の先端部及び後端部のCa濃度に実質的なバラツキ
がないことが判る。
【0023】他方、Si:17重量%,Cu:4.5重
量%,Mg:0.6重量%,P:60ppm,残部がA
lの組成をもつ合金300kgを容量1トンの炉に溶解
し、温度780℃,注本数8本及び速度150mm/分
の鋳造条件で直径98mm及び長さ1400mmの鋳塊
をホットトップ鋳造により製造した。このとき、第1回
の鋳造では、Caを添加することなく、合金溶湯を鋳造
した。第2回及び第3回の鋳造では、Al−Ca母合金
から得られた押出し丸棒を速度32cm/分で湯溜り部
に供給しながら鋳造を行った。得られた鋳塊のCaを分
析したところ、第2回及び第3回の鋳造で得られた鋳塊
は、先端から200mmの部分を除いてCa分析値がそ
れぞれ42±5ppm及び59±7ppmの範囲にあっ
た。また、鋳塊半径の1/2の位置で測定した初晶Si
は、それぞれ平均粒径が20μm及び18μmと微細化
されていた。これに対し、Ca添加を行わない合金溶湯
から同様な鋳造条件の下で得られた鋳塊では、同じ位置
にある初晶Siは、平均粒径が35μmと粗いものであ
った。
量%,Mg:0.6重量%,P:60ppm,残部がA
lの組成をもつ合金300kgを容量1トンの炉に溶解
し、温度780℃,注本数8本及び速度150mm/分
の鋳造条件で直径98mm及び長さ1400mmの鋳塊
をホットトップ鋳造により製造した。このとき、第1回
の鋳造では、Caを添加することなく、合金溶湯を鋳造
した。第2回及び第3回の鋳造では、Al−Ca母合金
から得られた押出し丸棒を速度32cm/分で湯溜り部
に供給しながら鋳造を行った。得られた鋳塊のCaを分
析したところ、第2回及び第3回の鋳造で得られた鋳塊
は、先端から200mmの部分を除いてCa分析値がそ
れぞれ42±5ppm及び59±7ppmの範囲にあっ
た。また、鋳塊半径の1/2の位置で測定した初晶Si
は、それぞれ平均粒径が20μm及び18μmと微細化
されていた。これに対し、Ca添加を行わない合金溶湯
から同様な鋳造条件の下で得られた鋳塊では、同じ位置
にある初晶Siは、平均粒径が35μmと粗いものであ
った。
【0024】実施例3:純Alを30kgルツボに溶解
し、Caを3重量%目標で添加した後、回転速度240
0r.p.m.で回転するグラファイト製のルツボに温
度740℃で注湯した。ルツボとしては、直径58mm
及び高さ60mmで底付きの円筒状で、側壁に直径1m
mの孔が240個穿設されたものを使用した。ルツボに
注湯されたAl−Ca母合金の溶湯は、遠心力によって
側壁の孔から飛び出し、飛翔過程で冷却され粒状体に成
形された。このとき、溶湯の冷却速度は102 〜103
℃/秒、得られた粒状体は平均粒径0.8mmであっ
た。粒状体を乾燥し、V型混合器で混合した後、直径9
8mm,高さ140mm及び厚さ0.2mmの底付きの
缶に充填した。600トンの縦型押出し機を使用して温
度450℃,ラム速度7cm/分及び2本出しの条件下
で、粒状体を缶ごと押し出し、直径7.2mmの丸棒を
得た。押出し丸棒のCaを分析したところ、平均4.7
重量%であり、押出し材の先端部と後端部との間でCa
分析値にバラツキは実質的にみられなかった。
し、Caを3重量%目標で添加した後、回転速度240
0r.p.m.で回転するグラファイト製のルツボに温
度740℃で注湯した。ルツボとしては、直径58mm
及び高さ60mmで底付きの円筒状で、側壁に直径1m
mの孔が240個穿設されたものを使用した。ルツボに
注湯されたAl−Ca母合金の溶湯は、遠心力によって
側壁の孔から飛び出し、飛翔過程で冷却され粒状体に成
形された。このとき、溶湯の冷却速度は102 〜103
℃/秒、得られた粒状体は平均粒径0.8mmであっ
た。粒状体を乾燥し、V型混合器で混合した後、直径9
8mm,高さ140mm及び厚さ0.2mmの底付きの
缶に充填した。600トンの縦型押出し機を使用して温
度450℃,ラム速度7cm/分及び2本出しの条件下
で、粒状体を缶ごと押し出し、直径7.2mmの丸棒を
得た。押出し丸棒のCaを分析したところ、平均4.7
重量%であり、押出し材の先端部と後端部との間でCa
分析値にバラツキは実質的にみられなかった。
【0025】実施例4:純Alをルツボに溶解し、Ca
を7.5重量%目標で添加した後、速度50r.p.
m.で回転する鉄製円盤上に溶湯を滴下した。鉄製円盤
には、溶湯滴下部が傾斜面になっており、冷却器を備え
た直径100cmの回転体を使用した。滴下された溶湯
は、鉄製円盤の傾斜面を転がりながら冷却され、平均粒
径9mmの粒状体に成形された。粒状体を充分に混合し
た後でCaを分析したところ、6.92重量%のCa濃
度であった。他方、Si:17重量%,Cu:4.5重
量%,Mg:0.6重量%,P:70ppm及び残部が
Alの組成をもつ合金3kgをルツボに溶解し、過共晶
Al−Si合金溶湯を調製した。この過共晶Al−Si
合金溶湯にCaを添加することなく、温度760℃で直
径18mm及び長さ90mmの鋳塊に金型鋳造した。ま
た、同じ過共晶Al−Si合金溶湯に前述のAl−Ca
系粒状体4gを添加した後、所定時間経過後に同様な条
件下で鋳造した。
を7.5重量%目標で添加した後、速度50r.p.
m.で回転する鉄製円盤上に溶湯を滴下した。鉄製円盤
には、溶湯滴下部が傾斜面になっており、冷却器を備え
た直径100cmの回転体を使用した。滴下された溶湯
は、鉄製円盤の傾斜面を転がりながら冷却され、平均粒
径9mmの粒状体に成形された。粒状体を充分に混合し
た後でCaを分析したところ、6.92重量%のCa濃
度であった。他方、Si:17重量%,Cu:4.5重
量%,Mg:0.6重量%,P:70ppm及び残部が
Alの組成をもつ合金3kgをルツボに溶解し、過共晶
Al−Si合金溶湯を調製した。この過共晶Al−Si
合金溶湯にCaを添加することなく、温度760℃で直
径18mm及び長さ90mmの鋳塊に金型鋳造した。ま
た、同じ過共晶Al−Si合金溶湯に前述のAl−Ca
系粒状体4gを添加した後、所定時間経過後に同様な条
件下で鋳造した。
【0026】得られた鋳塊におけるCaの分析値と初晶
Siの平均粒径を調査した。調査結果を示す表1から明
らかなように、Caを添加することなく鋳造した鋳塊の
初晶Siは平均粒径が35μmと粗くなっていた。これ
に対し、Caを添加した過共晶Al−Si合金溶湯から
得られた鋳塊では、初晶Siが20μm以下に微細化さ
れていた。また、鋳塊のCa含有量は、Al−Ca系粒
状体の添加から鋳造開始までの時間が長くなるに従って
低下しているが、120分経過後でも21ppmのCa
が含まれており、初晶Siが効果的に微細化されている
ことが判る。
Siの平均粒径を調査した。調査結果を示す表1から明
らかなように、Caを添加することなく鋳造した鋳塊の
初晶Siは平均粒径が35μmと粗くなっていた。これ
に対し、Caを添加した過共晶Al−Si合金溶湯から
得られた鋳塊では、初晶Siが20μm以下に微細化さ
れていた。また、鋳塊のCa含有量は、Al−Ca系粒
状体の添加から鋳造開始までの時間が長くなるに従って
低下しているが、120分経過後でも21ppmのCa
が含まれており、初晶Siが効果的に微細化されている
ことが判る。
【表1】
【0027】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の初晶S
i微細化助剤は、正確な添加量でPによる初晶Siの微
細化を促進させるのに必要なCaを正確な添加量で過共
晶Al−Si合金溶湯に含有させるのに適した添加材で
ある。しかも、特定された断面積或いは粒径のため、添
加作業自体も容易なものとなる。この微細化助剤が添加
された過共晶Al−Si合金溶湯においては、含有され
るPの作用によって初晶Siの微細化が効果的に進行
し、耐摩耗性,機械的強度,切削加工性等に優れた鋳塊
が得られる。
i微細化助剤は、正確な添加量でPによる初晶Siの微
細化を促進させるのに必要なCaを正確な添加量で過共
晶Al−Si合金溶湯に含有させるのに適した添加材で
ある。しかも、特定された断面積或いは粒径のため、添
加作業自体も容易なものとなる。この微細化助剤が添加
された過共晶Al−Si合金溶湯においては、含有され
るPの作用によって初晶Siの微細化が効果的に進行
し、耐摩耗性,機械的強度,切削加工性等に優れた鋳塊
が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 青木 一男 静岡県庵原郡蒲原町蒲原1丁目34番1号 株式会社日軽技研内
Claims (7)
- 【請求項1】 0.5〜10重量%のCaを含有するA
l−Ca合金であって、断面積が7〜80mm2 のロッ
ド状であることを特徴とする初晶Si微細化助剤。 - 【請求項2】 0.5〜10重量%のCaを含有するA
l−Ca合金であって、平均粒径が2〜15mmの粒状
体であることを特徴とする初晶Si微細化助剤。 - 【請求項3】 0.5〜10重量%のCaを含有するA
l−Ca合金を金型鋳造又はDC鋳造し、得られた鋳塊
を断面積7〜80mm2 のロッド状に押し出すことを特
徴とする初晶Si微細化助剤の製造方法。 - 【請求項4】 0.5〜10重量%のCaを含有するA
l−Ca合金を粒状化し、得られた粒状体を断面積7〜
80mm2 のロッド状に押し出すことを特徴とする初晶
Si微細化助剤の製造方法。 - 【請求項5】 0.5〜10重量%のCaを含有するA
l−Ca合金溶湯を回転体の上に滴下することにより、
請求項2又は4記載の粒状体を得ることを特徴とする初
晶Si微細化助剤の製造方法。 - 【請求項6】 請求項1〜5の何れかに記載の初晶Si
微細化助剤及びPで初晶Siが微細化され、金型鋳造に
よって直径又は厚み30mm以下に鋳造された過共晶A
l−Si合金鋳塊。 - 【請求項7】 請求項1〜5の何れかに記載の初晶Si
微細化助剤及びPで初晶Siが微細化され、DC鋳造に
よって直径又は厚み150mm以下に鋳造された過共晶
Al−Si合金鋳塊。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32496592A JPH06145865A (ja) | 1992-11-10 | 1992-11-10 | Ca系助剤を併用する初晶Siの微細化 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32496592A JPH06145865A (ja) | 1992-11-10 | 1992-11-10 | Ca系助剤を併用する初晶Siの微細化 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06145865A true JPH06145865A (ja) | 1994-05-27 |
Family
ID=18171606
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP32496592A Pending JPH06145865A (ja) | 1992-11-10 | 1992-11-10 | Ca系助剤を併用する初晶Siの微細化 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06145865A (ja) |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2009035029A1 (ja) * | 2007-09-14 | 2009-03-19 | Nissan Motor Co., Ltd. | 応力緩衝材料 |
JP2010126740A (ja) * | 2008-11-25 | 2010-06-10 | Nissan Motor Co Ltd | アルミニウム合金及びその製造方法 |
WO2011062447A2 (ko) * | 2009-11-20 | 2011-05-26 | 한국생산기술연구원 | 알루미늄 합금 및 이의 제조 방법 |
WO2011062448A3 (ko) * | 2009-11-20 | 2011-10-20 | 한국생산기술연구원 | 알루미늄 합금 및 이의 제조 방법 |
WO2012161397A1 (ko) * | 2011-05-20 | 2012-11-29 | 한국생산기술연구원 | 알루미늄 용접용 용가재 및 그 제조방법 |
KR101241426B1 (ko) * | 2009-11-20 | 2013-03-11 | 한국생산기술연구원 | 알루미늄 합금의 제조방법 |
WO2012161463A3 (ko) * | 2011-05-20 | 2013-03-21 | 한국생산기술연구원 | 합금제조방법 및 이에 의해 제조된 합금 |
WO2013157903A1 (ko) * | 2012-04-20 | 2013-10-24 | 한국생산기술연구원 | 알루미늄 합금 및 이의 제조 방법 |
-
1992
- 1992-11-10 JP JP32496592A patent/JPH06145865A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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TWI481726B (zh) * | 2009-11-20 | 2015-04-21 | Korea Ind Tech Inst | 鋁合金及其製造方法 |
TWI500775B (zh) * | 2009-11-20 | 2015-09-21 | Korea Ind Tech Inst | 鋁合金及其製造方法 |
US9200348B2 (en) | 2009-11-20 | 2015-12-01 | Korea Institute Of Industrial Technology | Aluminum alloy and manufacturing method thereof |
WO2012161397A1 (ko) * | 2011-05-20 | 2012-11-29 | 한국생산기술연구원 | 알루미늄 용접용 용가재 및 그 제조방법 |
WO2012161463A3 (ko) * | 2011-05-20 | 2013-03-21 | 한국생산기술연구원 | 합금제조방법 및 이에 의해 제조된 합금 |
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KR101402897B1 (ko) * | 2011-05-20 | 2014-06-02 | 한국생산기술연구원 | 합금제조방법 및 이에 의해 제조된 합금 |
WO2013157903A1 (ko) * | 2012-04-20 | 2013-10-24 | 한국생산기술연구원 | 알루미늄 합금 및 이의 제조 방법 |
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