JPH06141875A - 微生物による5−アミノレブリン酸の製造方法 - Google Patents

微生物による5−アミノレブリン酸の製造方法

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JPH06141875A
JPH06141875A JP32269492A JP32269492A JPH06141875A JP H06141875 A JPH06141875 A JP H06141875A JP 32269492 A JP32269492 A JP 32269492A JP 32269492 A JP32269492 A JP 32269492A JP H06141875 A JPH06141875 A JP H06141875A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 5−アミノレブリン酸生産菌を、特定の天然
成分の特定量を、特に特定の方法で添加した培地で培養
し、5−アミノレブリン酸を高収率で製造する方法を提
供する。 【構成】 酵母エキス、乾燥酵母、ペプトン、コーンス
ティープリカー、カザミノ酸、麦芽エキス、肉エキスか
らなる群の天然成分から選ばれる少なくとも1種2〜5
0g/リットルを、(1)菌体増殖が対数増殖期中期以
降に達した後に、一度に、または連続的もしくは断続的
に添加するか、(2)培養開始時に1〜10g/リット
ルを添加し、菌体増殖が対数増殖期中期以降に達した後
に、1〜50g/リットルを、一度に、または連続的も
しくは断続的に添加した培地で、微工研菌寄第1254
2号,第12543号として寄託された5−アミノレブ
リン酸生産菌を培養する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、5−アミノレブリン酸
生産菌を、特定の天然成分の特定量を添加した培地で培
養して、5−アミノレブリン酸を高収率で製造する方
法、およびこの天然成分の特定量を特定の方法で添加し
た培地で培養して、5−アミノレブリン酸生産菌を高濃
度化し、かつ5−アミノレブリン酸を高収率で製造する
方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】5−
アミノレブリン酸は、ビタミンB12、ヘム、クロロフ
ィルなどのテトラピロール化合物のプレカーサとして、
生体系中で重要な役割を果たしている化合物である。こ
の5−アミノレブリン酸は、人畜に対して毒性を示さ
ず、分解性が高いため環境への残留性もないという優れ
た性質を有する天然化合物であり、近年、除草剤,殺虫
剤,その他への利用が注目されている(特公表61−5
02814号,特開平2−138201号公報参照)。
【0003】しかし、この天然の5−アミノレブリン酸
は、コストが高く、除草剤や殺虫剤等として使用するに
は実用性に欠ける(Chemical Week/Oc
tober,29,1984)。
【0004】このような現状において、5−アミノレブ
リン酸について、多くの化学合成方法が検討されている
(例えば、特開平2−76841号,同2−26138
9号公報参照)が、未だ充分な方法が開発されていな
い。また、光合成細菌等の微生物を用いた5−アミノレ
ブリン酸の製造方法も検討されている(例えば、特開平
2−92293号,同3−172191号公報参照)。
【0005】生体系中では、5−アミノレブリン酸は、
グリシンと、コハク酸もしくはグルタミン酸とから生合
成され、5−アミノレブリン酸デヒドラターゼにより2
分子が縮合してポルフォビリノーゲンとなり、遂次反応
して各種テトラピロール化合物へと代謝される。ただ
し、このデヒドラターゼは、一般に、活性が高いため、
通常、生体系中に5−アミノレブリン酸が蓄積されるこ
とは稀である。そこで、微生物を用いた5−アミノレブ
リン酸の製造法では、レブリン酸に代表されるような5
−アミノレブリン酸デヒドラターゼの活性阻害物質を添
加し、5−アミノレブリン酸を蓄積させる方法がよく知
られている。
【0006】ところで、一般に、微生物は、酵母エキス
等の天然成分を含んだ培地で培養を行うと、最小培地で
培養した場合に比べ、非常に高い増殖性を示す。したが
って、光合成細菌等の微生物を用いた5−アミノレブリ
ン酸の製造方法においても、その培養に天然成分を添加
することで、菌体濃度を数倍に上昇させることが可能で
ある。
【0007】ただし、この場合、光合成細菌は、高い増
殖性を示しながらも、5−アミノレブリン酸デヒドラタ
ーゼの活性阻害物質の添加、無添加にかかわらず、5−
アミノレブリン酸を殆ど生成しない場合が多い。つま
り、天然成分により何らかの蓄積阻害が起きていること
になる。
【0008】一方、例えば、本発明者等により先に提案
された工業技術院微生物工業技術研究所微工研菌寄第1
2542号(FERM P−12542)や第1254
3号(FERM P−12543)のように、自然変異
もしくは人為的な変異処理により、5−アミノレブリン
酸蓄積に関する酵素の天然成分に対する感受性が無くな
り(すなわち「脱感作」して)、5−アミノレブリン酸
を蓄積するようになった光合成細菌も存在する(特願平
3−289303号明細書参照−以下、「先提案」と言
う)。ただし、これらの菌の場合も、菌体濃度は向上す
るが、最小培地で培養した場合に比べ、5−アミノレブ
リン酸の蓄積量は低く、生産収率は低いものとなってい
る。
【0009】本発明は、以上の諸点を考慮し、天然成分
を添加した培地中でも5−アミノレブリン酸を生産する
ことのできる5−アミノレブリン酸生産菌を、天然成分
を添加した培地、特に天然成分をより多量に含む培地で
高濃度化し、かつ5−アミノレブリン酸を高収率で製造
する方法を提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の目
的を達成するために、研究を重ねる途上で、上記した先
提案の基礎となった知見、すなわち、(a)光合成細菌
を変異させたもののなかに、天然成分を添加した培地で
5−アミノレブリン酸を生成する菌株(光合成細菌の5
−アミノレブリン酸蓄積に対する天然成分の阻害に脱感
作した菌株)が存在すること、(b)この菌株を使用す
れば、天然成分を添加した培地での菌体の高濃度化を計
ることができるとともに、5−アミノレブリン酸を高収
率で製造することができること、を踏まえて、さらに研
究を進めた結果、(c)培地に添加する天然成分の種
類、量、そして添加方法を工夫することにより、5−ア
ミノレブリン酸蓄積を阻害しないばかりか、蓄積が著し
く促進されることを見出し、よって5−アミノレブリン
酸をこれまでの製造法よりも高収率で製造できること、
を確認し、本発明を開発するに至った。
【0011】すなわち、本発明の5−アミノレブリン酸
の製造方法は、 〔1〕酵母エキス、ペプトン、コーンスティープリカ
ー、カザミノ酸、麦芽エキスからなる群の天然成分から
選ばれる少なくとも1種を2〜50g/リットル(以
下、リットルを「L」と記し、ミリリットルを「mL」
と記す)添加した培地で、5−アミノレブリン酸生産菌
を培養することを特徴とし、 〔2〕上記の天然成分から選ばれる少なくとも1種を、
(1)菌体増殖が対数増殖期中期以降に達した後に、一
度に、または連続的もしくは断続的に添加するか、
(2)培養開始時に1〜10g/Lを添加し、菌体増殖
が対数増殖期中期以降に達した後に、1〜49g/L
を、一度に、または連続的もしくは断続的に添加する、
ことをも特徴とし、 〔3〕5−アミノレブリン酸生産菌が工業技術院微生物
工業技術研究所微工研菌寄第12542号(FERM
P−12542)、第12543号(FERMP−12
543)の一方または双方であることをも特徴とする。
【0012】本発明の製造方法に使用する5−アミノレ
ブリン酸生産菌は、光合成細菌、例えばロドバクター
セファロイデス(Rhodobacter sphae
roides)を親株とし、これを変異して得られるも
のであって、上記した特定の天然成分の特定量を添加し
た培地で5−アミノレブリン酸を生産することのできる
菌株(天然成分による5−アミノレブリン酸蓄積阻害に
脱感作した菌株)である。具体例として、工業技術院微
生物工業技術研究所微工研菌寄第12542号(FER
M P−12542),第12543号(FERM P
−12543)として寄託されたものが挙げられる。こ
れら微工研菌寄第12542号および第12543号の
分離方法を、以下に例示する。
【0013】上記の親株の増殖に必要な成分を試験管に
分注し、滅菌した後、親株を接種し、光照射下において
静置培養する。この培養液を緩衝液で洗浄した後、変異
操作を行う。この変異操作としては、通常の変異手法を
採用することができる。例えば、紫外線,電離放射線等
の物理的変異原を寒天培地上の親株に照射したり、エチ
ルメタンスルフォネート(EMS),N−メチル−N′
−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG),エチル
ニトロソ尿素(ENU)等のアルキル化剤やブロモデオ
キシウリジン(BrdUrd)等の塩基アナログ等の化
学的変異原を添加した緩衝液中で親株を培養したり、あ
るいはトランスポゾン変異法等の生物的変異原を用いる
方法がある。
【0014】上記のような変異手法によって上記の親株
を変異した後、さらに緩衝液で洗浄し、寒天培地等に撒
き、培養する。なお、この培養により生育した変異株の
中から、上記した特定の天然成分の特定量を添加した培
地においても5−アミノレブリン酸を生産することので
きる菌株を選択するには、これらの変異株を後述するよ
うな培地で培養し、培養液中の5−アミノレブリン酸を
測定し、5−アミノレブリン酸が生成されているか否か
を確認することによって行われる。
【0015】以上のような分離・変異操作に用いる培地
には、変異前の親株の場合,変異後の変異菌の場合とも
同様のものでよく、グルタミン酸,リンゴ酸,酢酸,ピ
ルビン酸,乳酸,コハク酸,フマル酸,酒石酸,グルコ
ン酸,エタノール,グリセロール,グルコース,フルク
トース,マンニトール,ソルビトール,酵母エキス等の
炭素源の他に、一般的な培地成分、あるいは通常光合成
細菌の培養に用いられる成分が添加される。一般的な培
地成分としては、窒素源として、例えばアンモニア,塩
化アンモニウム,燐酸アンモニウム,硫酸アンモニウ
ム,炭酸アンモニウム,酢酸アンモニウム,硝酸アンモ
ニウム,硝酸ナトリウム,尿素等の無機窒素化合物や、
酵母エキス,乾燥酵母,ペプトン,肉エキス,コーンス
ティープリカー,カザミノ酸等の有機窒素源を用いるこ
とができる。また無機塩類として、例えばカリウム,ナ
トリウム,鉄,マグネシウム,マンガン,銅,カルシウ
ム,コバルト等の各塩類等を用いることができる。
【0016】培養条件としては、親株,変異株ともpH
約5〜10,温度約15〜45℃,培養時間約1〜20
日間で、菌体を生育させるには、親株、変異株とも約
0.5〜50kluxの光照射嫌気条件下が好ましく、
また好気暗条件下であっても良い。
【0017】以上の分離・変異操作によって得られる菌
株の例であるCR−286およびCR−2S5は、親株
とほぼ同様の菌学的性質を有し、かつ上記した特定の天
然成分を添加した培地で5−アミノレブリン酸を生産す
る。このCR−286およびCR−2S5株が、工業技
術院微生物工業技術研究所に微工研菌寄第12542号
(FERM P−12542)および第12543号
(FERM P−12543)として寄託されている。
【0018】本発明の製造方法では、上記したCR−2
86やCR−2S5株に代表される5−アミノレブリン
酸生産菌に限らず、他の作出方法によって得られるも
の,他の菌を親株として得られるものを使用することが
できる。これらの5−アミノレブリン酸生産菌を、特定
の天然成分の特定量を添加した培地で培養することによ
り、5−アミノレブリン酸を高収率で製造することがで
き、またこの特定の天然成分の特定量を特定の方法で添
加した培地で培養することにより、これらの5−アミノ
レブリン酸生産菌を高濃度化し、かつ5−アミノレブリ
ン酸を高収率で製造することができる。
【0019】以下、CR−286やCR−2S5株を用
いて、本発明の製造方法により、5−アミノレブリン酸
を製造する場合につき、詳細に説明する。先ず、培地と
しては、上記の分離・変異操作に用いる培地に、酵母エ
キス、ペプトン、コーンスティープリカー、カザミノ
酸、麦芽エキスからなる群の天然成分から選ばれる少な
くとも1種を3〜50g/L添加した培地(以下、「特
定培地」と言う)を使用する。培養条件は、前述の分離
・変異操作の条件と同様である。ただし、この場合、約
0.5〜50kluxの光照射嫌気条件が望ましい。
【0020】上記の天然成分の添加量は少なすぎると、
5−アミノレブリン酸蓄積の促進効果が出ず、逆に多す
ぎても、菌体の生育が阻害されるため、培地全体に対
し、添加総量で約2〜50g/L、好ましくは約3〜5
0g/L、さらに好ましくは約5〜30g/Lの範囲内
とする。
【0021】なお、天然成分の添加量を約2g/Lとす
る場合は、前述した先提案の実施例や後述の参考例7に
も示すように、培養開始時に全量を一度に添加しても、
5−アミノレブリン酸生産菌の生育が阻害されることは
なく、菌体濃度を高濃度化することができる。これに対
し、天然成分の添加量を約3g/L以上もの大量にする
場合は、5−アミノレブリン酸の蓄積は促進されて、5
−アミノレブリン酸の製造量は増加するが、5−アミノ
レブリン酸生産菌の生育が阻害され、菌体の高濃度化を
図ることができず、したがって5−アミノレブリン酸の
製造量にも限界が生じてくる。
【0022】そこで、5−アミノレブリン酸生産菌の高
濃度化をも図るべく、延いては5−アミノレブリン酸の
製造量の増大をも図るべく、添加方法を次のようにする
ことが好適である。 (1)菌体増殖が対数増殖期中期以降に達した後に、一
度に、または連続的もしくは断続的に添加するか、
(2)培養開始時に1〜10g/Lを添加し、菌体増殖
が対数増殖期中期以降に達した後に、1〜49g/L
を、一度に、または連続的もしくは断続的に添加する。 なお、上記の対数増殖期とは、細菌の数が対数的に増加
していく時期であり、微工研菌寄第12542号、第1
2543号を使用する場合には、植菌後、約24〜48
時間で終了する。
【0023】上記の(1)では、所定の菌体増殖時期に
達した時点で、一度に、または連続的もしくは断続的に
添加し、上記の(2)では、培養開始時に必要量の一部
を添加しておき、所定の菌体増殖時期に達した時点で、
残部を、一度に、または連続的もしくは断続的に添加し
てもよい。なお、(1),(2)の連続的もしくは断続
的に添加する際には、同量づつであってもよいし、徐々
に多量となるようにしてもよい。天然成分による5−ア
ミノレブリン酸生産菌の生育阻害が多く見られる場合
は、後者の徐々に多量となるようにすることが好まし
い。
【0024】また、上記の天然成分を添加した特定培地
には、5−アミノレブリン酸のプレカーサであるグリシ
ンとコハク酸もしくはグルタミン酸を添加すると、より
高濃度の5−アミノレブリン酸を生成することができる
が、培養開始時にグリシンとコハク酸もしくはグルタミ
ン酸を添加すると、菌株の増殖速度が遅くなるため、あ
る程度増殖した時点で添加することが好ましい。添加量
は、グリシンとコハク酸もしくはグルタミン酸のいずれ
の場合も、余り少なすぎると添加効果がなく、逆に余り
多すぎても菌体の生育が阻害されるため、培地全体に対
し、約10〜80mmol/L、特に約15〜45mm
ol/Lの範囲内とすることが好ましい。添加方法は、
一度に全量を添加してもよいが、連続的にまたは断続的
に添加してもよい。後者の場合は、同量づつであっても
よいし、徐々に多量となるようにしてもよい。5−アミ
ノレブリン酸生産菌の生育阻害が多く見られる場合は、
後者の徐々に多量となるようにすることが好ましい。
【0025】また、5−アミノレブリン酸デヒドラター
ゼの活性阻害物質を添加することもできる。例えば、こ
の阻害物質としてレブリン酸を使用する場合、レブリン
酸の添加方法は、培養開始時(あるいはグリシンとコハ
ク酸の添加時)から一定の間隔で少量(同量)づつ添加
してもよいし、培養開始時(あるいはグリシンとコハク
酸の添加時)に全量添加しておいてもよい。菌の生育が
対数増殖期中期を過ぎた後に、全量を一度に、あるいは
少量(同量)づつ添加するとなおよい。
【0026】培養液のpHは5〜10の範囲内で、例え
ばHCl水溶液等の酸またはNaOH水溶液等のアルカ
リを用いて一定に保つことにより、より高濃度の5−ア
ミノレブリン酸を製造することができる。
【0027】5−アミノレブリン酸の蓄積量は、培養後
一定時間が通過すると、減少してしまう。これは、培養
液中に添加されている上記のレブリン酸が代謝等により
減少してしまうため、レブリン酸による5−アミノレブ
リン酸デヒドラターゼの活性阻害効果が弱まり、5−ア
ミノレブリン酸が代謝されるためと考えられる。したが
って、5−アミノレブリン酸を高効率で製造するには、
所定の時間経過後(すなわち、5−アミノレブリン酸の
蓄積量がピークとなった時点で)、培養を停止すればよ
い。
【0028】以上のようにして得られる培養液または反
応液中の5−アミノレブリン酸は、常法により精製する
ことができる。例えば、溶剤抽出等の方法によって回収
することができ、このときカラムクロマトグラフィ等の
公知の精製方法を適宜併用することもできる。
【0029】
【作用】本発明の製造方法では、使用する5−アミノレ
ブリン酸生産菌が、特定の天然成分が特定量で添加され
た培地において、5−アミノレブリン酸を生成し、培養
液中に5−アミノレブリン酸を多量に蓄積する作用をな
すため、5−アミノレブリン酸が高収率で製造される。
【0030】また、本発明の製造方法では、上記の特定
の天然成分の特定量を、特定の方法で添加することによ
り、該天然成分による5−アミノレブリン酸生産菌の生
育阻害が回避されて、菌体が高濃度化され、かつ5−ア
ミノレブリン酸の生産量も一層向上する。
【0031】
【実施例】
〔5−アミノレブリン酸生産菌の分離〕表1に示す光合
成細菌用の最小培地であるグルタメート・マレート培地
(培地1)の培地成分を、水道水1Lに溶かして培地1
を調製した。培地1のpHは6.8であった。
【0032】
【表1】
【0033】上記の培地1に酵母エキス2g/Lを添加
して調製した培地(培地2)を、外径21mmの試験管
に10mL入れ、121℃で15分間滅菌し、光合成細
菌であるロドバクター・セファロイデス(Rhodob
acter sphaeroides)IFO1220
3を1白金耳植え継ぎ、30℃,5kluxの光照射下
で3日間静置培養した。別の試験管に培地2を10mL
分注し、滅菌した。この培地2に上記の培養液1を3白
金耳植え継ぎ、30℃,250rpmで8時間往復振盪
培養した。この培養液2を、洗浄のため、15,000
rpmにて30秒間遠心分離し、その上清を捨て、遠心
分離前の培養液2と同量になるようにトリス・マレイン
酸バッファ(pH6.0)に懸濁させた。この洗浄操作
を、さらに2度繰り返した。
【0034】この後、再び15,000rpmにて30
秒間遠心分離し、その上清を捨て、化学的変異原である
N−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン
(NTG)を100μg/mLの濃度になるように添加
し、30℃で80分間静置インキュベートした。
【0035】このようにして処理した菌1を、上記と同
様の方法で3回洗浄した後、別の試験管に分注し、滅菌
した培地2に植え継ぎ、30℃,250rpmで2日間
往復振盪培養した。培地2に寒天17g/Lを添加して
調製した培地を121℃で15分間滅菌し、同じく滅菌
したシャーレに撒いて、寒天平板培地を調製した。この
シャーレに、上記の培養液(菌1の培養液)3を滅菌水
で1,000倍に希釈して塗布し、30℃で4日間培養
した。上記のようにして得られたコロニー約14,00
0個を、それぞれ培地2に植菌し、30℃,5klux
で1.5日間静置培養した。
【0036】次いで、グリシンとコハク酸をそれぞれ3
0mmol/L、レブリン酸を15mmol/Lになる
ように添加し、培養を更に2日間続けた。その後、培養
液の上清から5−アミノレブリン酸を定量した。これら
約14,000個の変異菌株の中に、培地2中で5−ア
ミノレブリン酸を生成する菌株が数株存在していた。こ
の5−アミノレブリン酸を生成する菌株のうち生成量の
多い2株を、それぞれロドバクター セファロイデス
CR−286およびCR−2S5と命名した。
【0037】〔5−アミノレブリン酸の製造〕 参考例1 上述の5−アミノレブリン酸生産菌の分離例で得られた
変異菌株CR−286(微工研菌寄第12542号)お
よびCR−2S5(微工研菌寄12543号)を、それ
ぞれ各3本づつ試験管に入れた特定培地(実施例1の培
地1に、天然成分として酵母エキス2g/Lを添加した
もの)(培地量10mL)に接種し、30℃,5klu
xの光照射下で1.5日間静置培養した。次いで、グリ
シンとコハク酸をそれぞれ30mmol/L、レブリン
酸を0,10,30mmol/Lになるように添加し、
培養を続けた。その後、培養液中に生成される5−アミ
ノレブリン酸の量の経時変化を測定した。この結果を、
表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】表2から明らかなように、CR−286及
びCR−2S5は、特定培地中で多量の5−アミノレブ
リン酸を生成していることが判る。また、5−アミノレ
ブリン酸の生成量は、一定の時間が経過すると、減少し
てしまう。これは、前述したように、培養液中に添加し
たレブリン酸が代謝等により減少してしまうことによ
り、5−アミノレブリン酸デヒドラターゼへの阻害効果
が弱まり、5−アミノレブリン酸が代謝されることを明
示していると解される。
【0040】実施例1〜20,比較例1〜5 表3に示す光合成細菌用の最小培地であるグルタメート
・マレート培地の培地成分を水道水1Lに溶かして培地
3を調製した。培地3のpHは、6.8であった。
【0041】
【表3】
【0042】上記の培地3に、天然成分として酵母エキ
ス(株式会社日本製薬製商品名「Extract Ye
ast D−3,Dry」),カザミノ酸(Difco
製商品名「Casamino Acid,Bacto
Vitamin assay」),ペプトン(株式会社
日本製薬商品名「ポリペプトン」),麦芽エキス(Di
fco製商品名「Malt Extract,Bact
o」),コーンスティープリカー(和光純薬株式会社製
薬商品名「Corn Steep Liquor,Po
wder」)の5種類を、それぞれ0g/L,2g/
L,5g/L,10g/L,15g/Lになるように添
加し、計25種類の特定培地を調製し、外径21mmの
試験官に10mL入れ、121℃で15分間滅菌した。
次に、CR−286(微工研菌寄第12542号)を接
種し、30℃,5kluxの光照射下で、24時間静置
培養した。次いで、グリシンとコハク酸をそれぞれ30
mmol/L、レブリン酸を15mmol/L添加し、
培養を続けた。培養液中に蓄積する5−アミノレブリン
酸の量の経時変化を測定した。この結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】表4から明らかなように、天然成分による
5−アミノレブリン酸の蓄積阻害に脱感作した菌株CR
−286に対して、天然成分の添加は著しい蓄積促進を
示している。しかし、酵母エキスの場合、添加量が15
g/Lになると蓄積量が減少しているが、これは生育阻
害がかかっているためと思われる。
【0045】実施例21 CR−286を、実施例1〜20で調製した培地3に、
実施例1〜4で使用したものと同じ酵母エキスを2g/
Lとなるように添加して調製した特定培地に接種し、3
0℃、5kluxの光照射下で培養を開始した。48時
間経過後(すなわち、菌体増殖が対数増殖期中期以降に
達した後)、グリシンとコハク酸を各30mmol/
L、レブリン酸を30mmol/L、上記と同じ酵母エ
キスを10g/Lとなるように添加し、その後、レブリ
ン酸を24時間毎に2回、15mmol/Lとなるよう
に添加した。また、2N−HCl水溶液と、2N−Na
OH水溶液とを用いて、培養中の培養液をpH6.5に
制御した。以上のような生産培養中に蓄積した5−アミ
ノレブリン酸量の最高値は、1.8g/Lであった。
【0046】実施例22,23 実施例1〜4で使用したものと同じ酵母エキスと、実施
例9〜12で使用したものと同じペプトンとを、各5g
/Lづつ、または10g/Lづつ、2種類同時に添加し
た以外は、実施例1〜20および比較例1〜5と同様に
して培養を行った。この結果を表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】実施例24〜27、比較例6 CR−286を、実施例1〜20で調製した培地3に、
実施例1〜4で使用したものと同じ酵母エキスを0g/
L,2g/L,5g/L,10g/L,15g/Lにな
るように添加して調製した特定培地に接種し、30℃、
5kluxの光照射下で48時間培養した後、菌体重量
を測定した。この結果を表6に示す。
【0049】
【表6】
【0050】表6から明らかなように、天然成分(酵母
エキス)を添加することにより、非常に高い増殖性を示
すことが判る。また、実施例27のように、15g/L
もの天然成分を培養開始時に一度に添加すると、生育阻
害がかかることも判るが、これを実施例21のように数
回に分けて添加すれば、阻害がかかるどころか、むしろ
生育は促進される。
【0051】実施例28〜31、比較例7 使用した菌株をCR−2S5(微工研菌寄第12543
号)に、また培地に加える天然成分を酵母エキス1種類
としたこと以外は、すべて実施例1〜20および比較例
1〜5と同様にして培養を行った。結果を表7に示す。
【0052】
【表7】
【0053】比較例8〜12 使用した菌株を親株(Rhodobacter sph
aeroides IFO12203)としたこと以外
は、すべて実施例28〜31および比較例7と同様にし
て培養を行った。結果を表8に示す。
【0054】
【表8】
【0055】表8から明らかなように、親株であるRh
odobacter sphaeroides IFO
12203株は、酵母エキスを添加しても5−アミノレ
ブリン酸を蓄積しなかった。
【0056】実施例32 CR−286(微工研菌寄第12542号)を、実施例
1〜15で調製した培地3に、実施例1〜4で使用した
ものと同じ酵母エキスを10g/Lになるように添加し
て調製した特定培地(培地4)に接種し、30℃、5k
luxの光照射下で48時間予備培養した。この菌体
を、遠心分離により回収し、再び、培地4に、菌体濃度
を回収する前の2倍まで高濃度化して再懸濁し、生産培
養を行った。培養条件は、30℃,5klux,光照射
条件下とし、グリシンとコハク酸を各60mmol/
L、レブリン酸を30mmol/Lになるように生産培
養開始時に添加、その後レブリン酸を24時間毎に2
回、30mmol/Lになるように添加した。また、2
N−HCl水溶液、2N−NaOH水溶液を用いて、p
H6.5の一定に制御した。生産培養中に蓄積した5−
アミノレブリン酸量の経時変化を表9に示す。
【0057】
【表9】
【0058】表9から明らかなように、天然成分を10
g/L添加することにより、5−アミノレブリン酸を最
高約2.4g/Lまで蓄積することができる。
【0059】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の製造方法
によれば、5−アミノレブリン酸生産菌が、特定の天然
成分の特定量を、特に特定の方法で添加した培地におい
て、非常に高い増殖率を示し、かつ5−アミノレブリン
酸を多量に蓄積することができるため、製造中の菌体濃
度を数倍に上昇させることができ、製造効率が大幅に向
上し、5−アミノレブリン酸の製造コストを低減するこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堀田 康司 埼玉県幸手市権現堂1134−2 株式会社コ スモ総合研究所研究開発センター内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酵母エキス、ペプトン、コーンスティー
    プリカー、カザミノ酸、麦芽エキスからなる群の天然成
    分から選ばれる少なくとも1種を2〜50g/リットル
    添加した培地で、5−アミノレブリン酸生産菌を培養す
    ることを特徴とする5−アミノレブリン酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の天然成分から選ばれる少
    なくとも1種を、(1)菌体増殖が対数増殖期中期以降
    に達した後に、一度に、または連続的もしくは断続的に
    添加するか、(2)培養開始時に1〜10g/リットル
    を添加し、菌体増殖が対数増殖期中期以降に達した後
    に、1〜49g/リットルを、一度に、または連続的も
    しくは断続的に添加する、ことを特徴とする5−アミノ
    レブリン酸の製造方法。
  3. 【請求項3】 5−アミノレブリン酸生産菌が工業技術
    院微生物工業技術研究所微工研菌寄第12542号(F
    ERM P−12542)、第12543号(FERM
    P−12543)の一方または双方であることを特徴
    とする請求項1,2記載の5−アミノレブリン酸の製造
    方法。
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