JPH0613495B2 - 新規電子受容体及びこれを成分とする電荷移動錯体 - Google Patents

新規電子受容体及びこれを成分とする電荷移動錯体

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JPH0613495B2
JPH0613495B2 JP1171720A JP17172089A JPH0613495B2 JP H0613495 B2 JPH0613495 B2 JP H0613495B2 JP 1171720 A JP1171720 A JP 1171720A JP 17172089 A JP17172089 A JP 17172089A JP H0613495 B2 JPH0613495 B2 JP H0613495B2
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文夫 小倉
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幸治 湯井
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は新規な電子受容体及びその中間体並びに該電子
受容体を一成分とした高導電性の有機電荷移動錯体に関
する。
(従来の技術) 有機高導電性物質は銅やアルミニウム等の金属材料に比
べ軽量であり、腐蝕性がないこと或いは豊富に存在する
有機資源を製造原料に使用できる等の優れた利点を有す
ることから近年特に注目されつつある。
一般に有機物質は電気絶縁性であるが、これに導電性を
付与するには電荷移動錯体を形成させるのがよく、これ
までに種々の電子供与体と電子受容体が合成され、これ
らの組合わせから多数の導電性電荷移動錯体が提出され
ている。
たとえば従来知られている典型的な電子受容体であるテ
トラシアノキノジメタン(A)のヘテロ環同族体と見做
せる下記式(B)で示される 2,5−ビス(ジシアノメチレン)−2,5−ジヒドロセレノ
フェンはグロノヴイッツ(S.Gronowitz)とアップストレ
ーム(B.Uppstrom)(Acta.Chem.Scand.,Ser.B,28,981(197
4))によって報告されたが電子受容体としては特に注目
されなかった。
また本発明者らは下記式(C)で示される 5,5′−ビス−(ジシアノメチレン)−5,5′−ジヒドロ
−2,2′−ビチオフェンを見出し、これとテトラチアフ
ルバレン又はテトラチオテトラセンとの電荷移動錯体が
2.2×10-4〜3.3×10-4Scm-1の電気伝導度を示すことを
見出した(J.Chem.Soc.Chem.Commun.1987,1816)。
(発明が解決しようとする課題) テトラシアノキノジメタン(A)に対するヘテロ環同族
体のヘテロ原子としては従来技術では硫黄原子,セレン
原子が用いられてきたが、本発明ではこれら周期律表第
VIb族原子の中で最も電気陰性度の大きい酸素原子を導
入した新規な電子受容体及びその中間体を提供するこ
と,並びに該化合物を電子受容体としてこれに適切な電
子供与体を組合わせた改善された高導電性電荷移動錯体
を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段) 本発明は下記一般式(I) ((I)式中、Xは水素原子又はハロゲン原子を表わ
し、nは0又は1の整数であって、nが0のときはXは
水素原子を表わす。) で表わされる化合物,及び該化合物を電子受容体とし、
他成分の電子供与体とから導かれた導電性電荷移動錯体
を提供するものである。
更に本発明は上記(I)式化合物を製造する際の中間体
である下記式(II)で表わされる化合物を提供するもの
である。
本発明の化合物(I)及び化合物(II)は次の様にして
合成することができる。
(1)化合物(I)においてn=1の場合 i) ii) iii) 又は iv) 反応 i) 2,2′−ビフラン(II−a)を溶媒中1〜4倍モルのN
−ブロモサクシニイミドと0〜50℃で0.1〜10時間反応
させて化合物(II−b)が得られる。溶媒としてはペン
タン,ヘキサン,シクロヘキサン,ベンゼン,クロロベ
ンゼン,ブロモベンゼン,クロロホルム,ジクロロメタ
ン等が挙げられる。
反応 ii) さらに化合物(II−b)を溶媒中1〜5倍モルのN−ブ
ロモサクシニイミドと60〜150℃で0.1〜40時間反応させ
て化合物(II)が得られる。溶媒としてはヘキサン,シ
クロヘキサン,ベンゼン,クロロベンゼン,ブロモベン
ゼン等が挙げられる。
化合物(II)はまた(II−a)化合物を2〜8倍モルの
N−ブロモサクシニイミドと60〜150℃で0.1〜40時間反
応させても得ることができる。溶媒としてはヘキサン,
シクロヘキサン,ベンゼン,クロロベンゼン,ブロモベ
ンゼン,クロロホルム等が挙げられる。
なお化合物(II)のXが塩素原子の場合は化合物(II−
b)を溶媒中1〜5倍モルのN−クロロサクシニイミド
と60〜150℃で0.1〜40時間反応させて得ることができ
る。溶媒としてはヘキサン,シクロヘキサン,ベンゼ
ン,クロロベンゼン,ブロモベンゼン,クロロホルム等
が挙げられる。
反応 iii)iv) 化合物(II−b)又は化合物(II)を溶媒中銅又は塩化第
一銅塩の存在下,又は非存在下で1〜10倍モルのテトラ
シアノエチレンオキシドと反応させて対応する化合物
(I−a)すなわちテトラシアノ−2,2′−ビフラノキ
ノジメタン又は化合物(I−b)が得られる。溶媒とし
てはペンタン,ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭
化水素、ジクロロメタン,クロロホルム,ブロモホル
ム,トリクロロエタン,ジブロモエタン,ジブロモプロ
パン等のハロゲン化芳香族炭化水素、ジエチルエーテ
ル,テトラヒドロフラン,ジオキサン等のエーテル化合
物が挙げられる。反応温度は40〜200℃が適当であり、
反応時間は0.5〜50時間が適当である。
(2)化合物(I)においてn=0の場合 vi) フラン(II−c)を上記反応i)と同様、溶媒中N−ブ
ロモサクシニイミドと反応させて化合物(II−d)が得
られる。次いで上記反応iii)と同様に、溶媒中銅又は塩
化第一銅の如き第一銅塩の存在下,又は非存在下でテト
ラシアノエチレンオキシドと反応させて化合物(I−
c)すなわちテトラシアノフラノキシジメタンが得られ
る。
この様にして得られた本発明の化合物(I)はこれを電
子受容体とし、他成分からなる電子供与体と組合わせて
高電導性錯体を造ることができる。
本発明の電荷移動錯体は、一般には有機溶媒中で化合物
(I)と電子供与体とを混合することによって該錯体を
固体として合成することができる。
有機溶媒としてはベンゼン,トルエン,クロロベンゼ
ン,テトラヒドロフラン,アセトニトリル,ベンゾニト
リル,ジクロロメタン,クロロホルム,メチルアルコー
ル,エチルアルコールなどを挙げることができる。本発
明の錯体は上記方法の他、有機溶媒を用いずに相当量の
化合物(I)と電子供与体とを乳鉢等でよく混合するこ
とによっても合成することができる。本発明の電荷移動
錯体の合成に用いられる電子供与体としては各種のもの
が適用されるが、本発明においては2,2′,5,5′−テト
ラチアフルバレン,2,2′,5,5′−テトラセレナフルバ
レン,テトラメチルテトラチアフルバレン,テトラメチ
ルテトラセレナフルバレン,テトラチオメトキシテトラ
チアフルバレン,5,6,11,12−テトラチオテトラセン,
5,6,11,12−テトラセレナテトラセン,ヘキサメチレン
テトラチアフルバレン,ヘキサメチレンテトラセレナフ
ルバレン,ヘキサメチレンテトラテルラフルバレン,テ
トラフェニルビピラニリデン,N,N′−テトラメチル−
p−フェニレンジアミン,アセナフテンジテルリド,4,
5:4′,5′−ビス(エチレンジチオ)−2,2′,5,5′−
テトラチアフルバレン,ビチアピラン,テトラフェニル
ビチアピランから選ばれた電子供与体が高電導性を与え
る電子供与体成分として適当である。
本発明の電荷移動錯体は化合物(I)と電子供与体とが
モル比で1:0.5〜2の割合で構成されたものが好まし
い。
以下本発明を実施例によって具体的に説明するが本発明
はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 (反応i)ii)) 窒素下で、2,2′−ビフラン(II−a)990mg(7.38mmol)
のベンゼン30ml溶液にN−ブロモサクシニイミド2.63g
(14.8mmol)を加えて室温で1.5時間攪拌した。これにN
−ブロモサクシニイミド2.63g(14.8mmol)を更に加えて
ゆっくり還流温度まで昇温し、そのまま2時間還流し
た。反応後冷却してからベンゼンを留去し、クロロホル
ムで抽出後クロロホルム層を飽和食塩水で洗浄し、無水
硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒留去後ヘキサンより
再結晶した化合物(II)3,3′,5,5′−テトラブロモ−
2,2′−ビフランを得た。
収量 980mg(収率30%) 融点 151〜152℃ H−NMR(CDCl,TMS内部規準) δ=6.43 MS(70eV.DI)m/z450(M) 元素分析 実測値 C;21.44,H;0.45% CBr4としての計算値 C;21.37,H;0.45% 実施例2(反応iv)) 銅粉末254mg,テトラシアノエチレンオキシド712mg(4mm
ol),3,3′,5,5′−テトラブロモ−2,2′のビフラン(I
I)450mg(1mmol),1,2−ジブロモエタン8mlを用い実施
例3と同様に反応し、化合物(I)(n=1,X=Br)
を得た。
収量 141mg(収率38%) 融点 220℃以上 IR(KBr) νC≡N 2236cm-1 MS(70eV,DI) m/z418(M100%) 元素分析 実測値 C;40.19,H;0.45,N;13.35% C14Br2としての計算値 C;40.23,H;0.48,N;13.40% サイクリックボルタメトリー (ジクロロメタン溶媒,支持電解質0.1M テトラブチルアンモニウムパークロレート,参照電極Ag
/AgCl) E 1/2+0.08V,E 1/2−0.12V 実施例3(反応iii)) 銅粉末475mg,テトラシアノエチレンオキシド1.03g(7.1
5mmol),1,3−ジブロモプロパン8.5mlを45分間還流し、
還流下で5,5′−ジブロモ−2,2′−ビフラン(II−b)
525mg(1.80mmol)の1,3−ジブロモプロパン溶液(6ml)を
滴下し、そのまま1.5時間還流した。反応後冷却してジ
クロロメタンを加え、シリカゲルカラムクロマトグラフ
ィー(溶離液ジクロロメタン)で分離した。溶媒留去後
クロロベンゼンより再結晶し化合物(I)テトラシアノ
−2,2′−ビフラノキノジメタン(n=1,X=H)が
得られた。
収量 54mg(収率12%) IR(KBr) νC≡N 2234cm-1 融点(分解) 265℃以上 MS(70eV,DI) m/z260(M100%) 元素分析 実測値 C;64.62,H;1.52,N;21.37% C14としての計算値 C;64.62,H;1.55,N;21.53% サイクリックボルタメトリー (ジクロロメタン溶媒,支持電解質0.1M テトラブチルアンモニウムパークロレート,参照電極Ag
/AgCl) E 1/2−0.09V,E 1/2−0.31V 実施例4 (反応vi)) 2,5−ジブロモフラン(II−d)1.82g(8.06mmol),テト
ラシアノエチレンオキシド4.64g(32.2mmol),銅粉末2.0
5gを1,3−ジブロモプロパン18mlに加えて2.5時間還流し
た。反応後冷却してジクロロメタンを加えて短時間でシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液ジクロロメ
タン)を行なった。溶媒留去後、ベンゼンより再結晶し
化合物(I)すなわちテトラシアノフラノキノジメタン
(n=0,X=H)を得た。
収量 450mg(収率29%) 融点 184〜184.5℃ H−NMR(アセトン−d,TMS内部規準) δ=8.07 IR(KBr) νC≡N 2245cm-1 MS(70eV,DI) m/z194(M) 元素分析 実測値 C;61.62,H;1.21,N;28.81% C10Oとしての計算値 C;61.86,H;1.04,N28.86% サイクリックボルタメトリー (ジクロロメタン溶媒,支持電解質0.1M テトラブチルアンモニウムパークロレート,参照電極Ag
/AgCl) E1/2+0.03V,E1/2−0.55V 実施例5 化合物(I)(n=0,X=H)13mg,2,2′,5,5′−
テトラチアフルバレン(TTF)13.7mgをそれぞれアセ
トニトリルに熱時最少量で溶かし、熱時直接混合し、こ
れをそのまま室温で3日間放置すると化合物(I)(n
=0,X=H)とTTFとの1:1錯体が析出し、これ
を取した。
融点 180〜190℃(分解) IR(KBr) νC≡N 2242cm-1 元素分析 実測値 C;47.38,H;1.31,N;13.64% C16OSとしての計算値 C;48.23,H;1.52,N14.06% 実施例6 化合物(I)(n=1,X=H)13mg,TTF10.2mg,
アセトニトリル溶媒を用い実施例5と同様にして化合物
(I)(n=1,X=H)とTTFとの1:1錯体を得
た。
融点 200℃(分解) IR(KBr) νC≡N 2228cm-1 元素分析 実測値 C;51.67,H;1.70,N;11.91% C20としての計算値 C;51.71,H;1.74,N12.06% 実施例7 化合物(I)(n=1,X=Br)6mg,TTF120mg,ク
ロロベンゼン溶媒を用い混合液を−20℃で2日間放置す
ること以外は実施例5と同様にして化合物(I)(n=
1,X=Br)とTTFとの1:1錯体を得た。
融点 190℃(分解) IR(KBr) νC≡N 2224cm-1 元素分析 実測値 C;38.60,H;0.92,N;8.88% C20Br2としての計算値 C;38.60,H;0.97,N9.00% 実施例8 化合物(I)(n=1,X=Br)10mg,5,6,11,12−テ
トラチオテトラセン(TTT)8.4mg,クロロベンゼン
溶媒を用い実施例5と同様にして化合物(I)(n=
1,X=Br)とTTTとの1:1錯体を得た。
融点 270℃(分解) IR(KBr) νC≡N 2203cm-1 元素分析 実測値 C;49.82,H;1.27,N;7.13% C3210Br2としての計算値 C;49.88,H;1.31,N7.27% 実施例9 実施例5,6及び8で得られた1:1錯体を夫々錠剤に
圧縮成型し、これを四点法を用いて室温で電気伝導度を
測定した結果は表の通りであった。
(発明の効果) 本発明の化合物(I)は電荷移動錯体を構成する電子受
容体として優れており、これにより得られた電荷移動錯
体は従来のこの種の錯体に比べて非常に高い導電性を有
している。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式(I) ((I)式中、Xは水素原子又はハロゲン原子を表わ
    し、nは0又は1の整数であって、nが0のときはXは
    水素原子を表わす。) で表わされる化合物。
  2. 【請求項2】一般式(I)中ハロゲン原子が塩素原子;
    又は臭素原子である請求項1記載の化合物。
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載の化合物を電子受容体
    とし、他成分の電子供与体とから導かれた導電性電荷移
    動錯体。
  4. 【請求項4】電子供与体が2,2′,5,5′−テトラチアフ
    ルバレン,2,2′,5,5′−テトラセレナフルバレン,テ
    トラメチルテトラチアフルバレン,テトラメチルテトラ
    セレナフルバレン,テトラチオメトキシテトラチアフル
    バレン,5,6,11,12−テトラチオテトラセン,5,6,11,12
    −テトラセレナテトラセン,ヘキサメチレンテトラチア
    フルバレン,ヘキサメチレンテトラセレナフルバレン,
    ヘキサメチレンテトラテルラフルバレン,テトラフェニ
    ルビピラニリデン,N,N′−テトラメチル−p−フェニ
    レンジアミン,アセナフテンジテルリド,4,5:4′,
    5′−ビス(エチレンジチオ)−2,2′,5,5′−テトラチ
    アフルバレン,ビチアピラン,テトラフェニルビチアピ
    ランから選ばれた化合物である請求項3記載の導電性電
    荷移動錯体。
  5. 【請求項5】電子受容体と電子供与体のモル比が1:0.
    5〜2である請求項3又は4記載の導電性電荷移動錯
    体。
  6. 【請求項6】下記式(II)で表わされる化合物
JP1171720A 1989-07-03 1989-07-03 新規電子受容体及びこれを成分とする電荷移動錯体 Expired - Lifetime JPH0613495B2 (ja)

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