JPH061305Y2 - クランプ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案はワークなどのクランプ対象物をベッドに押圧固
定するクランプ装置に係り、特に高さ寸法がまちまちの
如何なるクランプ対象物に対してもクランプの適応性と
着脱操作性を向上させたクランプ装置に関するものであ
る。

〔従来技術〕

ねじの締結力を利用して工作機械のベッドにワークを押
圧固定する従来のクランプ装置は、ベッドに載置したベ
ースブロックとワークとの間にクランプピースを差し渡
して、この中間部にクランプボルトを貫通させ、同ボル
トの先端ねじ部をベッドのＴ溝に嵌入したＴナットなど
に締結してワークをベッドに固定する形式のものであ
る。

このようなクランプ装置を高さの異なる全てのワークに
適用するためには、ワークの高さに応じて高さ寸法の異
なるベースブロックを個々に用意し、その都度対処しな
ければ、クランプピースが傾くことにより押圧ねじの締
め付けに従ってクランプピースに水平方向の力が働き、
ワークに対してクランプピースが滑ったりベット上でワ
ークが滑ったりしてワークを安定的に押圧固定すること
ができない。さらに、押圧ねじを緩めてワークを交換す
ると、クランプピースは容易にベースブロックから脱落
するので、新たにワークをセットするには前と同じ操作
が必要となる。

一方、このような各種高さ寸法のワークに対する適応性
とワークの交換操作性という点を改良したクランプ装置
としては、ピストンロッドの先端にクランプピースを固
定し、ベッドに予め形成した雌ねじに螺合可能な雄ねじ
をシリンダチューブの外周部に刻設した油圧シリンダ構
造のものが公知であるが、このクランプ装置を用いると
きには、ベットの雌ねじにシリンダチューブをねじ嵌合
し、ワークの高さに応じてそのねじ込み深さを調整する
などの手段を講じなければならず、当該クランプ装置は
シリンダチューブ外周の雄ねじに螺合する比較的内径の
大きな雌ねじを備えたベットにしか適用することができ
ない。

〔考案が解決しようとする問題点〕

ワーク及びベースブロックの上に差し渡したクランプピ
ースに貫通させたクランプボルトの締結力を利用する従
来構造のクランプ装置では各種高さ寸法のワークに対す
る適応性とワークの交換操作性の面で劣るという点で問
題があり、また、シリンダチューブの外周部に雄ねじを
刻設した油圧シリンダ構造のクランプ装置ではその雄ね
じがベッドへの締結手段とクランプピースの高さ調整手
段とを兼ねるために上記雄ねじに螺合可能な比較的内径
の大きな雌ねじを持つベッドにしか利用することができ
ないという問題点があった。

本考案は、上記事情に鑑みてなされたもので、各種高さ
寸法のクランプ対象物に対する適応性と対象物の交換操
作性が良好であって、しかも各種構造のベッドに適用す
ることができるクランプ装置を提供しようとするもので
ある。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は、上記問題点を解決するための手段として、ベ
ッドに固定されるベースブロックと、このベースブロッ
クの柱状部分に昇降自在に被嵌される筒形のクランプベ
ースと、上記ベースブロックとクランプベースとの間に
介在され、ベースブロックに対してクランプベースを上
昇方向に弾発付勢す弾発部材と、上記クランプベースを
貫通し上記弾発部材の弾発力に抗してベースブロックに
ねじ嵌合され、その回動操作によってクランプベースを
昇降させるクランプボルトと、上記クランプベースの外
周に形成した雄ねじに回転可能にねじ嵌合したクランプ
ピースとを設けた構成を採用するものである。

〔作用〕

本考案のクランプ装置は、適宜の手段を用いてベースブ
ロックをベッドに固定し、クランプ対象物の高さに合わ
せてクランプピースを回転操作してクランプベースに対
するねじ嵌合高さ位置を初期設定すると共に、クランプ
ピースの下にクランプ対象物を挿入しておき、その後で
クランプボルトを回動操作して、クランプピースと上記
クランプベースをベースブロックに相対して押し下げる
ことによりクランプ対象物をベッドに押圧固定する。ク
ランプ対象物を交換するときはクランプボルトを逆方向
に回動してクランプピースをクランプベースと一体に逆
方向へ動かせばよく、このとき初期設定高さ近傍の位置
に戻されるクランプピースの下に次のクランプ対象物を
挿入して再びクランプボルトを回動操作してクランプピ
ースと一体にクランプベースを押し下げる。

〔実施例〕

第１図に示す本実施例では、クランプ装置１は、底面側
にフランジ部２Ａを備えた段付き円柱状のベースブロッ
ク２を備え、そのフランジ部２Ａの底面部には、ベース
ブロック２を工作機械などのベッド３に締結する手段と
して、例えばベッド３のＴ溝４に遊嵌して上方に突出す
るＴボルト５にねじ嵌合可能な締結雌ねじ６を形成す
る。

上記ベースブロック２の外周部には筒形のクランプベー
ス７を昇降可能に嵌合し、更に、このクランプベース７
の外周部全体に雄ねじ８を刻設し、同ねじ８に、ベッド
３上のワーク９を下方へ押圧するためのクランプピース
１０を回転可能にねじ嵌合する。このクランプピース１
０は、クランプベース７に対する回転操作量に応じて距
離Ｄ１の範囲内で所望の高さ位置を採ることができ、ワ
ーク９の高さ寸法に応じてその上方位置に初期設定され
る。尚、高さ位置が初期設定されたクランプピース１０
の回り止めを施すためのロックナット１１が上記雄ねじ
８にねじ嵌合されている。このロックナット１１はクラ
ンプピース１０の下側に設けてもよい。

本実施例において、クランプベース７にねじ嵌合したク
ランプピース１０をベースブロック２に対して昇降させ
る機構はクランプボルト１２の締め付け力を利用する。
即ち、上方からクランプベース７にクランプボルト１２
を挿通して、このクランプボルト１２の雄ねじ部１３
を、ベースブロック７の段付き軸心孔に形成した中間雌
ねじ部１４にねじ嵌合し、同ねじ部１４の下端から段付
き軸心孔の中間大径部１５に突出するクランプボルト１
２の先端にストッパ１６を固定する。ベースブロック２
の段付き軸心孔の上端開口部１７にはクランプベース７
を上方に弾発付勢する圧縮コイルばね１８を収容してお
く。

第１図の状態からクランプボルト１２を緩み方向例えば
左向きに回転操作してこれを上昇させると、圧縮コイル
ばね１８の弾発力を受けるクランプベース７はクランプ
ボルト１２と共に上昇して、クランプピース１０をワー
ク９から離間させる。クランプボルト１２を逆向きに回
転操作すると、クランプベース７は圧縮コイルばね１８
の弾発力に抗して降下しながらクランプピース１０を介
してワーク９をベッド３に押圧する。クランプボルト１
２の上昇限界はストッパ１６が中間太径部１５の下向き
上面に当接することによって規定されるため、ベースブ
ロック２に対するクランプベース７の昇降可能な範囲は
距離Ｄ２とされる。したがって、クランプピース１０
は、クランプベース７と一体的に距離Ｄ２の範囲で昇降
可能とされ、且つ、クランプベース７に対して単独に距
離Ｄ１の範囲で昇降可能とされることにより、最小高さ
Ｈminから最大高さＨmaxの範囲でワーク９をクランプす
る。このとき、クランプベース７にねじ嵌合するクラン
プボルト１２の雄ねじ部１３の有効長さは常に一定に保
たれる。

上記クランプボルト１２は、単なる６角ボルトであって
もよいが、クランプピース１０でワーク９を固定すると
きにクランプボルト１２に生ずる弾性変形量に基づい
て、ワーク９の押圧固定状態を目視可能に表示する構造
を採用することができる。この場合、第２図に示すよう
に、クランプボルト１２の頭部２０から軸方向に穿設し
た収容穴２１に、弾性部材としての環状ゴム２２の弾発
力に抗してロッド２３を挿入し、このロッド２３のトッ
プヘッド２４には赤色や黄色など比較的目立つ色で塗装
やマーキングを施して成る光反射性などの指示体２５を
設ける。この指示体２５表面の対向位置には、濃青色や
黒色のような光吸収流体２６を介在させてガラスのよう
な光透過部材２７を配置する。前記光吸収流体２６は、
光透過性であって柔軟な光透過性袋体２８に充填してお
くことができる。そして上記光透過部材２７によってロ
ッド２３を上記環状ゴム２２の弾発力に抗して押圧しな
がら光透過部材２７と指示体２５との間から光吸収流体
２６を排除した状態で、光透過部材２７をクランプボル
ト１２の収容穴２１開口部にリングホルダ２９でかしめ
付け固定すると共に、ロッド２３の先端部を収容穴２１
の盲端部に接着固定する。これにより、ロッド２３のト
ップヘッド２４が光透過部材２７を均一に押圧して、当
該押圧部における光吸収流体２６を光透過性袋体２８の
回り部に完全に排除し、トップヘッド２４の表面に設け
た指示体２５を光透過部材２７を介して明瞭に表示する
初期状態を得る。

初期状態からクランプボルト１２が所定の応力歪状態に
到達するまでは、ロッド２３のトップヘッド２４が光透
過部材２７に押圧力を作用してこの押圧部における光吸
収流体２６を周り部に移動保持させることにより、ロッ
ド２３上端面の指示体２５は光透過部材２７を通して目
視可能に表示される。クランプボルト１２が所定の引っ
張り歪状態に到達すると、この歪によって光透過部材２
７がロッド２３のトップヘッド２４から離間し、これに
呼応して光吸収流体２６が指示体２５を遮るように回り
部から流入し、同指示体２５を光透過部材２７を通して
暗い色に急変させる。このような指示体２５の状態変化
によって、クランプボルト１２の所定の応力歪状態を知
らせる。

光透過部材２７を通して目視可能な指示体２５の状態変
化（色変化）は、クランプボルト１２が弾性変形される
限りにおいて可逆的である。この関係において、指示体
２５に目視可能な状態変化をもたらすときのクランプボ
ルト１２の応力歪状態は、クランプボルト１２に締め付
けトルクを作用したとき実質的に伸びを生ずる部位の長
さＬやその部位の横断面積及び弾性係数などに応じて決
定されるから、これらの値は、前記クランプピース１０
によってワーク９を充分に押圧固定し得る締め付けトル
クが作用するとき指示体２５に状態変化をもたらすよう
に設定されている。

このような構造を持つクランプボルト１２は、第２図に
おいてＬで示される部位の弾性変形に基づいて応力歪状
態を指示する性質上、当該部位にねじを形成しておくこ
とは好ましくないので、ねじの有効長さはボルト全長よ
りも比較的短くなっている。斯る事情のもとでは、クラ
ンプピース１０がクランプボルト１２に追従して昇降す
るだけでなく、クランプベース７に対しても単独に高さ
調整可能とされる本実施例の構成は、各種高さ寸法のワ
ークに対する適応性を広げる上で好適である。

次に本実施例の作用を説明する。

本実施例のクランプ装置１を利用してワーク９をベッド
３に押圧固定するには、先ず、ベッド３のＴ溝４に遊嵌
したＴボルト５を介してベースブロック２をベッド３の
所望位置に固定する。

次いで、クランプピース１０の下にワーク９を挿入し得
るようにクランプピース１０の高さを初期設定する。即
ち、ワーク９の高さが最小高さＨmin以上であって同寸
法Ｈminと距離Ｄ１との和よりも小さいときは、クラン
プベース７にねじ嵌合されているクランプピース１０を
回転操作して同ピース１０の底面をワーク９の上面以上
の高さに合わせる。ワーク９の高さが最小高さＨminと
距離Ｄ１との和以上であって最大高さＨmax以下のとき
は、クランプピース１０を回転操作してこれを第１図の
ような最大高さ位置に合わせ、更に、クランプボルト１
２を上昇方向に回転操作してクランプピース１０と一体
にクランプベース７を圧縮コイルばね１８の弾発力で上
昇させ、クランプピース１０の底面をワーク９の上面以
上の高さに合わせる。その後にワーク９をクランプピー
ス１０の下に挿入し、クランプボルト１２を締め付け方
向に回してクランプベース７と一体的にクランプピース
１０を押し下げながらこのクランプピース１０でワーク
９をベッド３に押圧固定する。尚、本実施例で採用して
いるクランプボルト１２はそれ自体が応力歪状態を指示
する構造を持つので、光透過部材２７を介して目視可能
な指示体２５の状態変化によって適正な締め付けトルク
を知ることができる。

ワーク９を取り外す場合には、クランプボルト１２を上
記とは逆の緩み方向に回転操作してこれを上昇させる
と、圧縮コイルばね１８の弾発力を受けるクランプベー
ス７はクランプボルト１２と共に上昇してクランプピー
ス１０をワーク９から離間保持する。この状態でワーク
９を交換して新たなワーク９をクランプピース１０の下
に挿入した後はクランプボルト１２を再び締め付け方向
に回すだけでクランプベース７と一体にクランプピース
１０が押し下げられることにより、同クランプピース１
０がワーク９をベッド３に押圧固定する。

本考案は上記実施例に限定されず、その要旨を逸脱しな
い範囲において種々変更は可能である。

例えば、上記実施例では圧縮コイルばね１８の弾発力を
利用してクランプベース７をクランプボルト１２と共に
上昇するように構成したが、クランプベース７に回転可
能に挿通したクランプボルト１２に抜け止め用のストッ
プリングを嵌着するようにしてもよい。

また、ベースブロック２に対してクランプベース７を昇
降移動させる昇降機構は上記実施例で説明したクランプ
ボルト１２の締め付け力を利用する構造に限定されず、
油圧を利用することもできる。この場合、ベースブロッ
クはシリンダチューブを兼ね、このベースブロックから
上方に突出するピストンロッドにクランプベースを固定
する。

ベースブロックをベッドに締結する手段はベッドのＴ溝
に遊嵌したＴボルトを利用する構造に限定されず、ベー
スブロックの底面に突設固定したボルトにＴナットをね
じ嵌合してベッドに固定する構造など適宜の手段を採用
することができ、更には、ベッドとベースブロックの底
面との間にビルディングブロックを介在させてクランプ
装置を全体的に上方にシフトさせるように固定してもよ
い。

本考案のクランプ装置は工作機械のベッドにワークを固
定する場合だけではなく、射出成形機のベッドに成形型
を固定するような場合にも適用することができる。

〔考案の効果〕

本考案のクランプ装置は、クランプピースの高さはクラ
ンプボルトの回動操作でクランプベースと一体に昇降す
る範囲で変更可能であるだけでなく、クランプベースに
ねじ嵌合して移動可能な範囲においてもクランプピース
の高さは単独に調整可能であるから、各種高さ寸法のク
ランプ対象物にそのまま利用することができる。

更に、クランプベースにねじ嵌合するクランプピースの
位置をワークの高さ寸法に応じて一旦調整設定した後
は、同一のクランプ対象物を順次交換して固定するとき
に一々クランプピースの位置を設定し直すことなくクラ
ンプベースと一体的にクランプピースを昇降させるだけ
でクランプ対象物の交換を簡単に行うことができる。

しかも、クランプピースをクランプベースにねじ嵌合す
るための雄ねじはベースブロックをベッドに固定する締
結手段を兼ねるものではないから、クランプ装置をベッ
ドに締結固定する手段はベッドの構造に影響されず、Ｔ
溝や雌ねじなどを備える各種構造のベッドに適用するこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案に係るクランプ装置の１実施例を示すもの
で、第１図は縦断側面図、第２図はクランプボルトの一
例を示す縦断面図である。 １…クランプ装置、２…ベースブロック、３…ベッド、
７…クランプベース、８…雄ねじ、９…ワーク、１０…
クランプピース、１２…クランプボルト、１８…圧縮コ
イルばね。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ベッドに固定されるベースブロックと、 このベースブロックの柱状部分に昇降自在に被嵌される
   筒形のクランプベースと、 上記ベースブロックとクランプベースとの間に介在さ
   れ、ベースブロックに対してクランプベースを上昇方向
   に弾発付勢す弾発部材と、 上記クランプベースを貫通し上記弾発部材の弾発力に抗
   してベースブロックにねじ嵌合され、その回動操作によ
   ってクランプベースを昇降させるクランプボルトと、 上記クランプベースの外周に形成した雄ねじに回転可能
   にねじ嵌合したクランプピースと、 を備えて成るものであることを特徴とするクランプ装
   置。