JPH06128717A - 磁気ヘッドアーム及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁気ヘッドアームが腐食するのを抑制し、腐
食に起因するヘッドクラッシュを未然に防止する。 【構成】 磁気ヘッドアーム１はアルミニウム合金１ａ
よりなっており、その表面に厚み０．１〜２ミクロンの
酸化アルミニウム層１ｂを形成し、磁気ヘッドアーム１
の表面が腐食するのを抑制する。そして、この酸化アル
ミニウム層１ｂは、アルミニウム合金１ａを成形加工し
た磁気ヘッドアーム１を空気もしくは酸素による熱処
理、純水もしくは略０．３％のアンモニア水による煮沸
処理、又は陽極酸化処理により形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は磁気ディスク装置に使用
する磁気ヘッドアームに関し、特に磁気ヘッドアームの
腐食の発生を抑制することにより磁気ヘッドスライダと
媒体との間の機械的障害を防止する製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】磁気ディスク装置は、高速回転する磁気
ディスク媒体（以下媒体という）上を磁気ヘッドスライ
ダが微小隙間を保持して浮上しつつ磁気情報を読み書き
する装置であり、近年の高密度記録化の要望によって、
浮上隙間は０．１ミクロン程度まで低くなっている。

【０００３】この浮上隙間にダスト（塵埃）が入り込む
と、このダストが磁気ヘッドスライダと媒体との間に食
い込み、一定状態で浮上していた磁気ヘッドのスライダ
浮上姿勢が変化することにより高速で回転している媒体
と接触する。そして、ヘッドと媒体との接触が激しいと
きは、媒体表面の破壊が起こり、磁気情報の読み書きが
不能になる。この現象がいわゆるヘッドクラッシュと呼
ばれる現象である。

【０００４】さて、磁気ヘッドスライダを保持するサス
ペンションを固着するための磁気ヘッドアームは、主に
アルミニウム合金が使用されている。ここでヘッドアー
ムの一般的な製造方法について説明する。

【０００５】まず、アルミニウム合金材を所定の形状に
加工する。そして、有機溶剤による脱脂を行った後、酸
洗浄を行い表面汚染物を洗浄除去することにより完成す
る。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述した従来の磁気ヘ
ッドアームは、それを用いて組み立てた磁気ディスク装
置を、長期保管もしくは長期使用するとアルミニウム部
分が腐食することがある。そして、このときの腐食生成
物がヘッドアーム表面から剥がれ落ちると、ダストとな
って装置内部を浮遊する。この浮遊ダストのうち、適度
な大きさのものが磁気ヘッドと媒体との隙間に流入する
と、磁気ヘッドの浮上姿勢が変化し、高速回転している
磁気ディスクとヘッドが接触し、ヘッドや媒体が機械的
に破壊されるという欠点がある。

【０００７】本発明の目的は、磁気ヘッドアームにおけ
るアルミニウム合金の腐食を抑制し、磁気ヘッド及び媒
体の破壊を防止する方法を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の磁気ヘッドアー
ムは、磁気ヘッドスライダを保持するサスペンションを
固着するためのアルミニウム合金よりなる磁気ヘッドア
ームにおいて、この磁気ヘッドアームの表面に圧み０．
１〜２ミクロンの酸化アルミニウム層を形成するように
したことを特徴とする。

【０００９】次に、この磁気ヘッドアームの製造方法
は、成形したアルミニウム合金の磁気ヘッドアームを空
気雰囲気中で熱処理し、その表面に酸化アルミニウム層
を形成する。そして、この空気が酸素であってもよい。
また、磁気ヘッドアームを沸騰する純水中で煮沸しても
よく、この純水が略０．３％のアンモニアを添加した溶
液であってもよい。

【００１０】さらに、この磁気ヘッドアームを陽極酸化
処理により、その表面に酸化アルミニウム層を形成して
もよい。

【００１１】

【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明す
る。

【００１２】図１は本発明の磁気ヘッドアームを示す拡
大断面図であって、アルミニウム合金１ａを材料とし、
プレス法，切削法，鋳造法等により製造された磁気ヘッ
ドアーム１の表面に安定な酸化アルミニウム層１ｂによ
る保護膜を付与したことを示している。

【００１３】一方、図２は従来の磁気ヘッドアームを示
す拡大断面図であって、同様にアルミニウム合金１ａを
材料として製造され、その表面には何も付与しない磁気
ヘッドアームである。

【００１４】次に、本発明の磁気ヘッドアームの製造方
法について説明する。

【００１５】図５は従来の製造方法を示す工程図であっ
て、まず、アルミニウム合金を必要とする形状に加工し
た後、有機溶剤で脱脂を行い、さらに酸による洗浄を行
っている。

【００１６】図３（ａ）は本発明による空気焼成法の工
程図である。まず、従来と同様にアルミニウム合金を加
工し、脱脂，洗浄を行う。続いて空気雰囲気中で熱処理
をする。

【００１７】図３（ｂ）は図３（ａ）の空気雰囲気の代
りに酸素雰囲気中で熱処理した時の酸素焼成法工程図で
ある。

【００１８】図３（ｃ）は本発明による純水煮沸法の工
程図である。まず、アルミニウム合金を必要とする形状
に加工し、脱脂及び酸による洗浄を従来通りに行う。次
に、沸騰した純水中で磁気ヘッドアームを２分以上煮沸
し、最後に純水による洗浄を行う。

【００１９】図３（ｄ）は図３（ｃ）の沸騰水処理の
際、純水に３ｍｌ／ｌのアンモニアを添加することによ
り酸化反応を促進する促進型煮沸法の工程図である。

【００２０】図４は陽極酸化法の工程図である。まずア
ルミニウム合金を必要とする形状に加工し、脱脂及び酸
による洗浄を従来通り行う。次に、硼酸アンモニウムな
どの電解浴中で陽極酸化を行う。

【００２１】次に、本実施例による具体的な試作結果に
基づいて説明する。

【００２２】従来の製造方法で作成された磁気ヘッドア
ームをアームＡとする。

【００２３】この従来工法の次に空気雰囲気中で２５０
℃で２時間焼成する工程を追加する空気焼成法で酸化ア
ルミニウム層を０．１ミクロン付与した磁気ヘッドアー
ムをアームＢとする。

【００２４】従来工法の次酸素雰囲気中で２５０℃で２
時間熱処理する酸素焼成法で酸化アルミニウム層を０．
１ミクロン付与した磁気ヘッエッドアームをアームＣと
する。

【００２５】従来工法の次に純水で煮沸処理を３分間行
う純水煮沸法で酸化アルミニウム層を２ミクロン付与し
た磁気ヘッドアームをアームＤとする。

【００２６】従来工法の次に純水に３ｍｌ／ｌのアンモ
ニアを添加した溶液中で煮沸処理を１分間行う促進型煮
沸法で酸化アルミニウムを２ミクロン付与した磁気ヘッ
ドアームをアームＥとする。

【００２７】従来工法の次に硼酸アンモニウムが１５％
の電解浴中で陽極に磁気ヘッドアームを取り付け、７０
Ｖ，２０分間で磁気ヘッドアームを１ミクロン厚さに陽
極酸化させる陽極酸化法で酸化アルミニウムを付与した
アームをアームＦとする。そして、各々の酸化アルミニ
ウム層の圧さはＸ線光電子分光器（ＸＰＳ）にて測定し
た。

【００２８】また、６種類のアームに対して塩水噴霧試
験を行った。この塩水噴霧試験は５％食塩水，水温３０
℃，傾き角６０度にて行い、腐食点が認められるまでの
時間を特性値とし、その結果を表１に示す。

【００２９】

【表１】

【００３０】表１の結果によると、本発明の工法により
磁気ヘッドアームを処理すると、従来工法によるアーム
Ａと比較して表面の腐食を抑制できることがわかる。

【００３１】さらに、６種類の磁気ヘッドアームを使用
した磁気ディスク装置を作成し、温度６０℃，相対湿度
８０％の環境下に３ケ月間放置した後、磁気ヘッドスラ
イダを媒体に接触させ、媒体の回転駆動の起動・停止を
繰り返すコンタクトスタートストップ試験を行い、媒体
表面に傷が入り始めるまでのコントクトスタートストッ
プの回数を表２に示す。

【００３２】

【表２】

【００３３】この結果によると、従来工法であるアーム
Ａに比較し、本発明のアームＢからアームＦまではアル
ミニウム合金の表面を防食したことにより、コンタクト
スタートストップ試験で、媒体に傷が入りはじめるまで
の時間、いわゆる寿命が伸びたことがわかる。

【００３４】

【発明の効果】以上説明したように本発明は、アルミニ
ウム合金よりなる磁気ヘッドアームの表面に酸化アルミ
ニウムの保護膜を形成したので、磁気ヘッドアームの表
面の腐食が抑制される。これにより、腐食に起因するダ
ストによる、磁気ヘッドと媒体の破壊が起きなくなると
いう効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す拡大断面図である。

【図２】従来例を示す拡大断面図である。

【図３】分図（ａ）〜分図（ｄ）はそれぞれ本発明の磁
気ヘードアームの製造方法を説明する工程図である。

【図４】本発明の磁気ヘッドアームの製造方法を説明す
る工程図である。

【図５】従来の磁気ヘッドアームの製造方法を説明する
工程図である。

【符号の説明】

１，２ 磁気ヘッドアーム １ａ アルミニウム合金 １ｂ 酸化アルミニウム層

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 磁気ヘッドスライダを保持するサスペン
   ションを固着するためのアルミニウム合金よりなる磁気
   ヘッドアームにおいて、この磁気ヘッドアームの表面に
   圧み０．１〜２ミクロンの酸化アルミニウム層を形成す
   るようにしたことを特徴とする磁気ヘッドアーム。
2. 【請求項２】 請求項１記載の磁気ヘッドアームの製造
   方法であって、成形した前記磁気ヘッドアームを空気雰
   囲気中で熱処理し、その表面に前記酸化アルミニウム層
   を形成することを特徴とする磁気ヘッドアームの製造方
   法。
3. 【請求項３】 前記空気が酸素であることを特徴とする
   請求項２記載の磁気ヘッドアームの製造方法。
4. 【請求項４】 請求項１記載の磁気ヘッドアームの製造
   方法であって、成形した前記磁気ヘッドアームを沸騰す
   る純水中で煮沸し、その表面に前記酸化アルミニウム層
   を形成することを特徴とする磁気ヘッドアームの製造方
   法。
5. 【請求項５】 前記純水が略０．３％のアンモニアを添
   加した溶液であることを特徴とする請求項４記載の磁気
   ヘッドアームの製造方法。
6. 【請求項６】 請求項１記載の磁気ヘッドアームの製造
   方法であって、成形した前記磁気ヘッドアームを陽極酸
   化処理し、その表面に前記酸化アルミニウム層を形成す
   ることを特徴とする磁気ヘッドアームの製造方法。