JPH06128298A - 特異的鶏卵抗体及びその製造方法 - Google Patents

特異的鶏卵抗体及びその製造方法

Info

Publication number
JPH06128298A
JPH06128298A JP3359268A JP35926891A JPH06128298A JP H06128298 A JPH06128298 A JP H06128298A JP 3359268 A JP3359268 A JP 3359268A JP 35926891 A JP35926891 A JP 35926891A JP H06128298 A JPH06128298 A JP H06128298A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
egg
specific
egg yolk
powder
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP3359268A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3195631B2 (ja
Inventor
Ken Tsuda
憲 津田
Hiromi Inoue
洋美 井上
Hajime Hatta
一 八田
Katsuya Nishimoto
勝也 西元
Busaku Kin
武祚 金
Takehiko Yamamoto
武彦 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
Taiyo Kagaku KK
Original Assignee
Research Development Corp of Japan
Taiyo Kagaku KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Research Development Corp of Japan, Taiyo Kagaku KK filed Critical Research Development Corp of Japan
Priority to JP35926891A priority Critical patent/JP3195631B2/ja
Priority to DE69228016T priority patent/DE69228016D1/de
Priority to EP92102325A priority patent/EP0503293B1/en
Publication of JPH06128298A publication Critical patent/JPH06128298A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3195631B2 publication Critical patent/JP3195631B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23BPRESERVING, e.g. BY CANNING, MEAT, FISH, EGGS, FRUIT, VEGETABLES, EDIBLE SEEDS; CHEMICAL RIPENING OF FRUIT OR VEGETABLES; THE PRESERVED, RIPENED, OR CANNED PRODUCTS
    • A23B5/00Preservation of eggs or egg products
    • A23B5/08Preserving with chemicals
    • A23B5/12Preserving with chemicals in the form of liquids or solids
    • A23B5/14Organic compounds; Microorganisms; Enzymes
    • A23B5/16Microorganisms; Enzymes
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K16/00Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
    • C07K16/02Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies from eggs
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/54Improvements relating to the production of bulk chemicals using solvents, e.g. supercritical solvents or ionic liquids

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Meat, Egg Or Seafood Products (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Cosmetics (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】特定抗原で免疫した産卵鶏の卵黄から、超臨界
ガス抽出により脂質等の不純物を除去してなる、特定抗
原に対する抗体活性を実質的に有する特異的鶏卵抗体、
その製造方法、およびさらに超臨界ガス抽出により得ら
れる脱脂卵黄粉末中の卵黄水溶性タンパク質を緩衝液で
抽出し、塩析法により精製する高純度特異的鶏卵抗体の
製造方法。 【効果】本発明によれば、特定抗原で免疫された産卵鶏
より得られる卵黄粉末より、実質的に特異的抗体活性を
失活させることなく、抗体活性を実質的に有しかつ卵黄
の色、臭い、風味の少ない特異的鶏卵抗体を簡単に、か
つ安価に製造することができる。また、本発明の特異的
鶏卵抗体は、保存中の酸化に対する安定性も良好であ
り、流動性にも優れている。また、超臨界ガス抽出脱脂
卵黄粉末を出発原料として、高純度特異的鶏卵抗体が高
回収率で精製される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、食品、化粧品及び医薬
品素材として、あるいは、家畜、養殖魚用飼料及び動物
薬素材として、あるいは研究試薬及び臨床検査薬用素材
としての利用に適する特異的鶏卵抗体及びその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】動物は体内に侵入してきた細菌、ウイル
ス、異種タンパク質等の異物(抗原)に対し、特異的に
結合し、その感染力あるいは毒性を消去する免疫たんぱ
く質(特異的抗体)を血液中に産生する。産卵鶏の場
合、血液中の特異的抗体は鶏卵中へ濃縮移行することが
知られている(D.T.Fraserら;J.Immunol., 26巻,347
ページ,1934年)。これは、自己のみならず、抗原から
子孫を防衛する目的で卵性動物のみが有する優れた免疫
機能である。この産卵鶏の免疫機能を利用すれば、人為
的に選ばれた抗原(特定抗原)に対する特異的抗体を鶏
卵卵黄中に得ることが可能である(R.Patterson ら;J.
Immunol., 89巻,272 ページ,1962年)。卵黄中に得ら
れる特異的抗体は血液中の特異的抗体と区別する目的
で、特異的鶏卵抗体と呼ばれている。
【0003】従来、特異的抗体はウサギ、ヤギ等の動物
を特定抗原で免疫し、その血液中より得られていた。産
卵鶏の免疫機能を利用し、その鶏卵より得られる特異的
鶏卵抗体は、ウサギ、ヤギ等の血液から得られる特異的
血液抗体と比較し、量産が可能である、生産コストが安
い、動物生命の犠牲を必要としない等の利点を有し、現
在、その応用研究が活発に進められている。特異的鶏卵
抗体の用途分野としては、その特異的抗原認識力を利用
し、臨床検査試薬及び研究試薬として、抗原成分の同
定、定量に利用される。また、アフィニティークロマト
グラフィーのリガンドとして対応する抗原物質の精製に
利用することも可能である。
【0004】また、特に特異的鶏卵抗体は、古来より人
類が食してきた鶏卵より得られる為、これを食品素材等
として利用し、口腔内、腸管内あるいは皮膚表面等でお
こる細菌、またはウイルス感染症の予防及び治療に役立
てる試みが成されている(T.Ebina ら;Microbiol.Immu
nol., 34巻,617 ページ,1990年:S.Otake ら;J.Dent
al.Res.(abstract),69巻,239 ページ,1990年)。この
場合、特異的鶏卵抗体は経口的または経皮的に投与さ
れ、細菌またはウイルス等の病原体が、口腔内、腸管
内、皮膚表面等の体外局所に付着感染することを阻害
し、感染症を予防及び治療する。特異的抗体は、体外局
所において対応する病原体に選択的に結合し、該病原体
の付着感染力、毒性等を中和する作用を有する。このよ
うな特異的抗体の利用法は受動免疫と呼ばれている。
【0005】受動免疫には比較的大量の特異的抗体が必
要である。また、特異的抗体を経口的または経皮的に投
与する場合、用いる抗体の安全性等が大切である。この
ような視点から、食品である鶏卵から調製される特異的
鶏卵抗体は受動免疫への利用に最も適するものである。
従って、当業者の間では、コスト面あるいは衛生面、機
能面等において、食品素材等として有効に利用できる特
異的鶏卵抗体の開発が強く望まれ、さらに高純度かつ高
回収率に、しかも工業的に大量調製できる特異的鶏卵抗
体の製造方法の開発が強く望まれている。
【0006】卵黄は水分48.0%,タンパク質17.8%,及
び脂質30.5%よりなる。卵黄脂質は、その殆どが遊離の
形では存在せず、種々の割合でタンパク質と結合した巨
大複合体すなわちリポタンパク質として存在する。卵黄
中には脂質と結合していないタンパク質,すなわち水溶
性タンパク質も存在する。鶏卵抗体は卵黄水溶性タンパ
ク質の1種であり、卵黄中ではリポタンパク質と混在し
卵黄エマルジョンを形成している。
【0007】特異的鶏卵抗体を食品等へ応用する場合、
まず該鶏卵抗体を含有する卵黄粉末の利用が考えられ
る。しかしながら、この場合、卵黄の有する独特の風
味、臭い、色等が食品によっては好ましくない場合が多
い。また、卵黄粉末はその約60%が脂質であり、保存中
の脂質の酸化劣化が問題となる。また、脂質を多く含む
高カロリー食品素材では、食品用途も限定されてしま
う。脂質を多く含む粉末は流動性も悪く、食品加工上も
好ましくない。
【0008】従って、特異的鶏卵抗体の応用としては、
該鶏卵抗体含有卵黄より、不純物として、脂質を除去す
ることが好ましく、現在、公知となっている特異的鶏卵
抗体の精製方法は、以上の観点から開発されたものとし
て、超遠心分離法(L.F.Mcbee ら;J.Food Sci.,44巻,
656 ページ,1979年)、有機溶剤による脱脂法(H.Bade
ら;J.Immunol.Methods ,72巻,421 ページ,1984
年)、ポエチレングリコール(A.Polsonら;Immunol.Co
mmun.,9巻,475 ページ,1980年)あるいはデキストラ
ン硫酸ナトリウム(J.C.Jensenius ら;J.Immunol.Meth
ods ,46巻,63ページ,1981年)を利用する卵黄リポタ
ンパク分離方法及びカラギナン等の天然多糖類を利用す
る方法(特開昭64−38098 )等が挙げられる。
【0009】しかし、特異的鶏卵抗体を食品素材として
応用する場合、従来の精製方法では種々の問題点を有す
る。例えば、超遠心分離法では設備的に大量調製が不可
能である。有機溶剤による脱脂法は卵黄脂質の除去に多
量の有機溶剤を必要とする。また有機溶剤による抗体活
性の失活が問題となる。リポタンパク質沈澱剤として、
ポリエチレングリコールやデキストラン硫酸ナトリウム
を用いる方法は、リポタンパク質沈澱剤が化学合成品で
あるため、得られる鶏卵抗体を食品素材として用いる目
的には好ましくない。また用いるリポタンパク質沈澱剤
が高価である。さらには、鶏卵抗体の精製操作も複雑
で、大量調製には適さないという問題点を有する。一
方、カラギナン等の天然多糖類を利用する方法は大量調
製も可能で、得られる鶏卵抗体を食品用途へ安全に利用
できるため、比較的優れた方法である。しかしながら、
特異的鶏卵抗体を受動免疫用途として、例えば食品等へ
添加し大量に用いる場合は、さらに低コスト化が望まれ
ている。
【0010】以上のように、現在、特異的鶏卵抗体の応
用分野が数多く開発されているにもかかわらず、該特異
的鶏卵抗体を食品、化粧品及び医薬品素材として、ある
いは家畜、養殖魚用飼料及び動物薬素材として、あるい
は研究試薬及び臨床検査薬用素材として実用的に利用す
る為に、高純度かつ高回収率に、しかも大量に製造する
有効な方法がなく、近年、その開発が強く望まれてい
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、食
品、化粧品及び医薬品素材として、あるいは家畜、養殖
魚用飼料及び動物薬素材として、あるいは研究試薬及び
臨床検査薬用素材として実用的に利用可能な特異的鶏卵
抗体を提供することにある。本発明の他の目的は、その
ような特異的鶏卵抗体の製造方法を提供することにあ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために特異的鶏卵抗体含有卵黄粉末を超臨界
ガス抽出により脂質等の不純物を除去した結果、特異的
抗体活性に何ら影響を与えることなく、卵黄独特の風
味、臭い、色等を効果的に抽出除去し、流動性の優れた
脱脂卵黄粉末を特異的鶏卵抗体として調製できることを
見い出した。また、特異的抗体活性を含有する該脱脂卵
黄粉末から、緩衝液により卵黄水溶性タンパク質を抽出
し、次いで、塩析操作により特異的鶏卵抗体を高純度に
精製できることを見い出し、本発明を完成するに至っ
た。即ち、本発明は、(1)特定抗原で免疫した産卵鶏
の卵黄から、超臨界ガス抽出により脂質等の不純物を除
去してなる、特定抗原に対する抗体活性を実質的に有す
る特異的鶏卵抗体、(2)特定抗原で免疫した産卵鶏の
卵黄から、有機溶剤抽出および超臨界ガス抽出により脂
質等の不純物を除去してなる、特定抗原に対する抗体活
性を実質的に有する特異的鶏卵抗体、(3)特定抗原で
免疫した産卵鶏の卵黄を粉末化し、次いで超臨界ガス抽
出により脂質等の不純物を除去することを特徴とする、
特定抗原に対する抗体活性を実質的に有する特異的鶏卵
抗体の製造方法、(4)特定抗原で免疫した産卵鶏の卵
黄を粉末化し、次いで有機溶剤抽出後、超臨界ガス抽出
により脂質等の不純物を除去することを特徴とする、特
定抗原に対する抗体活性を実質的に有する特異的鶏卵抗
体の製造方法、(5)特定抗原で免疫した産卵鶏の卵黄
を粉末化し、次いで少なくとも、超臨界ガス抽出により
脂質等の不純物を除去する工程、前記工程により得られ
る脱脂卵黄粉末中の卵黄水溶性タンパク質を緩衝液で抽
出する工程、および該抽出液中の鶏卵抗体を塩析法によ
り精製する工程を有することを特徴とする高純度特異的
鶏卵抗体の製造方法に関する。
【0013】超臨界ガス抽出は公知の方法であり、従
来、鶏卵卵黄への応用としては、低コレステロール卵黄
粉末の調製(特開昭59−135847)あるいは、卵黄油の調
製(特開昭59−140299)に利用する方法が公知となって
いるが、特異的鶏卵抗体に着目し応用した例はなく、本
発明によりはじめて、特異的鶏卵抗体含有卵黄粉末へ超
臨界ガス抽出を応用し、抗体活性を何ら損なうことなく
食品素材としても好ましい特異的鶏卵抗体が得られた。
【0014】本発明において特定抗原とは、細菌、ウイ
ルス、異種タンパク質、毒素、糖脂質、核酸、精子等、
産卵鶏に対し免疫活性を有する抗原のうち、人為的に選
ばれた1種以上の抗原をいう。
【0015】具体的には、ストレプトコッカス・ミュー
タンスあるいはストレプトコッカス・ソブリヌス等のむ
し歯菌あるいは、該菌体から精製された菌体表層タンパ
ク質、グルコシルトランスフェラーゼ等の酵素等が、特
定抗原として、むし歯予防を目的とした特異的鶏卵抗体
の調製に選ばれる。
【0016】あるいは、ロタウイルス、腸性アデノウイ
ルス等の下痢症原因ウイルス及びそれらの感染抗原等が
特定抗原として、ウイルス性下痢症予防を目的とした特
異的鶏卵抗体の調製に選ばれる。
【0017】あるいは、病原性大腸菌、サルモネラ菌、
コレラ菌、カンピロバクター等の下痢症誘発細菌及びそ
れらの感染抗原等が特定抗原として、細菌性下痢症予防
を目的とした特異的鶏卵抗体の調製に選ばれる。
【0018】あるいは、インフルエンザウイルス及びイ
ンフルエンザ菌等のインフルエンザ病原体が特定抗原と
して、インフルエンザ予防を目的とした特異的鶏卵抗体
の調製に選ばれる。
【0019】あるいは、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球
菌、化膿連鎖球菌、サルモネラ菌、アイロゲネス菌、緑
膿菌、大腸菌、ジフテリア菌、座瘡菌、インフルエンザ
菌等の皮膚細菌が特定抗原として、ニキビあるいは体臭
発生の予防を目的とする特異的鶏卵抗体の調製に選ばれ
る。
【0020】あるいは、カンピロバクター菌、毒素産生
病原性大腸菌等の食中毒菌が特定抗原として、食中毒予
防を目的とした特異的鶏卵抗体の調製に選ばれる。
【0021】また、研究用及び臨床検査試薬用の目的と
しては、特定抗原として、例えばヒトの体液成分あるい
は各種ウイルス等が挙げられる。ヒトの体液成分として
は、例えばヒトIgA,IgM,IgG,IgE,Ig
D等の免疫クロブリンが、C反応性タンパク質,アンチ
トリプシン,ハプトグロブリン等の炎症マーカーが、C
3 ,C4 ,C1 q等の補体成分が挙げられる。また、ウ
イルスとしては、例えばロタウイルス,アデノウイル
ス,ヒト免疫不全ウイルス,B型肝炎ウイルス等が挙げ
られる。その他にも特定抗原としては、リウマチ因子,
アポリポタンパク質,LDL、トランスフェリン、イン
シュリン等も挙げられる。
【0022】産卵鶏への免疫は特定抗原あるいは特定抗
原と免疫増強活性を有する水酸化アルミニウムゲルある
いはフロイントアジュバンドとの混合液を産卵鶏へ筋肉
注射、皮下注射、静脈注射、腹腔注射等の方法で投与す
ることにより行われる。免疫は週1回、あるいは隔週1
回で合計2〜5回繰り返せば、鶏卵卵黄中に目的とする
特異的鶏卵抗体を高濃度に蓄積させることができる。産
卵鶏1羽当たりの抗原量は、用いる特定抗原の種類によ
り異なるが、産卵鶏に対し充分な特異的鶏卵抗体を産生
させ得る抗原量が選ばれる。一般的には、タンパク質抗
原の場合、産卵鶏1羽当たり数μg から数十mgの抗原量
が、あるいは細菌抗原の場合は105 個から109 個の抗原
量が選ばれる。
【0023】超臨界ガス抽出を行う卵黄は、生卵黄,凍
結解凍卵黄,あるいはそれらの卵黄液を噴霧乾燥あるい
は凍結乾燥等の公知の乾燥方法により粉末化した卵黄粉
末であればよい。特に、脂質の抽出効率を考えれば、本
発明においては卵黄粉末を用いるのが好ましい。超臨界
ガス抽出を行う卵黄粉末は、特異的鶏卵抗体を含有する
卵黄液あるいは、免疫産卵鶏をカロチノイド系色素が少
ないか、あるいは含まない飼料で飼育し得られる特異的
鶏卵抗体を含有する白色卵黄液(特願平2 −223061号)
を噴霧乾燥あるいは凍結乾燥することにより得られる。
乾燥条件は含有される特異的抗体の活性低下をおこさな
い条件であれば良く、例えば、噴霧乾燥の場合、入口熱
風温度140 〜160 ℃、排風温度75〜85℃の条件が好まし
い。また乾燥の程度は水分含量が10%以下、好ましくは
2〜5%であることが本発明において好ましい。
【0024】本発明において超臨界ガス抽出により脂質
等の不純物を除去する工程とは、ある一定温度、圧力以
上の条件下で超臨界状態とされたガスと、特異的鶏卵抗
体含有卵黄粉末を接触させることにより脂質等の不純物
を除去する工程をいい、公知の超臨界ガス抽出装置を用
いて行うことが出来る。超臨界ガスとしては、二酸化炭
素、窒素、プロパン等の公知のものであればよく、特に
安全性及び経済性の面から本発明においては二酸化炭素
の使用が好ましい。例えば、二酸化炭素を用いる場合、
31.0℃の臨界温度以上及び72.80 気圧の臨界圧力以上で
二酸化炭素は超臨界ガス状態となり、本発明にいう卵黄
粉末中の不純物除去に用いられる。超臨界ガス抽出の条
件としては、温度は通常25〜55℃、好ましくは35〜45℃
で、通常100 〜400 気圧、好ましくは150 〜350 気圧の
条件にある超臨界二酸化炭素が本発明において用いられ
る。
【0025】本発明においては、特異的鶏卵抗体含有卵
黄粉末と超臨界ガスの接触により、抗体活性を実質的に
失活させることなく、特異的鶏卵抗体の精製に阻害的に
働く卵黄脂質成分が効率的に抽出除去される。また、本
発明においては、特異的鶏卵抗体含有卵黄粉末と超臨界
ガスを接触させ、卵黄脂質成分を抽出除去した後、さら
に、抗酸化剤として例えばα−トコフェロールを溶解状
態とした超臨界ガスを抽出槽内に導入し、脱脂卵黄粉末
に該α−トコフェロールを吸着させることができる。こ
の操作により、脱脂卵黄粉末中の残存脂質の酸化を有効
に防止することができる。
【0026】本発明において卵黄中の脂質成分を完全に
除去する場合は、予め有機溶剤抽出を行った卵黄を超臨
界ガス抽出することにより行うことが出来る。この場
合、卵黄重量に対し5〜15倍重量の有機溶剤が抽出に使
用され、有機溶剤抽出操作は通常1〜3回行えばよい。
しかしながら、有機溶剤抽出により、特異的抗体活性の
低下が生じるため、好ましくは卵黄重量の5〜15倍重量
で有機溶剤抽出を1回行い、直ちに抽出残渣卵黄粉末を
超臨界ガスと接触させることにより、特異的抗体活性の
失活を最小限にすることができる。
【0027】用いられる有機溶剤としては、エタノー
ル,イソプロピルアルコール,アセトン,クロロホル
ム,ヘキサン等が用いられるが、抗体活性の失活を最小
限におさえる為には、エタノール,あるいはイソプロピ
ルアルコールが最も望ましい。
【0028】超臨界ガス抽出を利用し、脂質が抽出除去
された脱脂卵黄から、特異的鶏卵抗体を含む、卵黄水溶
性タンパク質を抽出する為には、緩衝液が用いられる。
即ち、本発明において脱脂卵黄粉末中の卵黄水溶性タン
パク質を緩衝液で抽出する工程とは、緩衝液を用いてな
される抽出工程をいい、本発明における緩衝液とは、塩
濃度が0.1 M以上好ましくは0.15〜1.5 MでかつpHが
中性付近に調製されたものであればよく、例えばリン酸
緩衝液,トリス緩衝液等が用いられる。塩濃度は、通常
NaCl,KCl等の中性塩を添加することにより調整
される。
【0029】卵黄水溶性タンパク質の抽出においては、
超臨界ガス抽出により脱脂された脱脂卵黄粉末を10〜40
倍重量の緩衝液に懸濁させ、室温で1〜4時間攪拌した
後、不溶性成分を遠心分離、濾過等の公知の方法で分離
し、その液性画分として得ることができる。
【0030】以上のようにして得られた卵黄水溶性タン
パク質画分からの特異的鶏卵抗体の精製には、硫酸ナト
リウムあるいは硫酸アンモニウムを利用した塩析法が用
いられる。即ち、本発明において鶏卵抗体を塩析法によ
り精製する工程とは、各種の塩析法により鶏卵抗体を精
製する工程をいい、例えば卵黄水溶性タンパク質画分に
最終濃度が12.5〜25%(w/w)となるよう硫酸ナトリ
ウム,あるいは硫酸アンモニウムを添加し、室温で30分
〜2時間攪拌することにより、鶏卵抗体のみが選択的に
塩析される。生ずる塩析物を遠心分離あるいは濾過等で
回収した後、適当な緩衝液に再溶解し、同緩衝液に対し
充分透析後、凍結乾燥あるいは噴霧乾燥等の方法によ
り、粉末化すれば、高純度の特異的鶏卵抗体を得ること
ができる。
【0031】特異的鶏卵抗体の純度をさらに高める必要
がある時は、上記塩析操作を数回くり返し行うか、また
は、あらかじめ卵黄水溶性タンパク質画分より、陰イオ
ン交換体等を用い、卵黄リベチンのみを精製した後、塩
析操作を行うことで実施される。卵黄リベチンとは、卵
黄水溶性タンパク質の主成分であり、鶏卵抗体もこの画
分に含まれる。
【0032】現在、超臨界ガス抽出技術は確立されてお
り、その操作も簡単である為、本発明の方法によれば、
従来の有機溶剤脱脂法,リポタンパク質沈澱除去法を用
いた鶏卵抗体精製方法に比較し特異的鶏卵抗体の大量精
製が可能であり、その工程及び作業性も簡単でかつ安全
である。しかも、本発明の方法によれば特異的鶏卵抗体
を高純度にかつその抗体活性をほとんど失活させること
なく、抗体活性を実質的に有するものを高回収率に得る
ことができる。また、本発明の方法を用いれば、卵黄の
脱質工程においてタンパク質の変性がほとんどない為、
鶏卵抗体以外の卵黄水溶性タンパク質の精製にも適す
る。また、本発明の方法において、その工程中に残査と
して得られる卵黄脂質からは、ホスファチジルコリン,
ホスファチジルイノシトール等の有用脂質が副産物とし
て得られる利点も有する。
【0033】本発明においては、特異的鶏卵抗体含有卵
黄粉末と超臨界ガスの接触により、抗体活性を実質的に
失活させることなく、抗体活性を実質的に有する特異的
鶏卵抗体を、越臨界ガス抽出脱脂卵黄粉末として得るこ
とができる。即ち、本発明において特定抗原に対する抗
体活性を実質的に有する特異的鶏卵抗体とは、前記のよ
うな特異的鶏卵抗体の精製に阻害的に働く卵黄脂質成分
を除去する精製段階で、抗体活性の実質的な失活がない
ことから、各種用途に必要な抗体活性を実質的に有して
いる特異的鶏卵抗体であることを意味する。該特異的鶏
卵抗体では卵黄風味、臭い及び色の主体となる卵黄脂質
の内、主に非極性脂質が効率的に不純物として抽出除去
される。従って本発明により得られる特異的鶏卵抗体
は、卵黄風味、臭い、色が少なく、かつ特異的抗体活性
が充分量保持されているため、食品素材等として有利に
利用される。
【0034】このように本発明により得られる特異的鶏
卵抗体は、卵黄独特の風味、臭い、色が殆ど除去されて
おり、かつ特異的鶏卵抗体の活性を殆ど失活させること
なく抗体活性を実質的に有している。また粉末物性とし
て流動性が優れ、食品等の加工面からも好ましいもので
ある。超臨界ガス抽出は操作が簡単で、かつ抽出に用い
たガスは常温、常圧下で直ちに飛散するため、粉末中に
残存する危険性が全く無い。また、本発明により得られ
る特異的鶏卵抗体は、卵黄粉末と比較し酸化による臭い
の変化が非常に少なくなっている。これは、卵黄粉末中
の酸化を受けやすい物質、おそらくは非極性脂質等が効
率よく超臨界ガス抽出により抽出除去されているためと
思われる。以上のことは、特異的鶏卵抗体を食品素材と
して利用する場合、特に好ましい利点である。
【0035】本発明によれば、特異的鶏卵抗体含有卵黄
粉末と超臨界ガスの接触により、抗体活性を実質的に失
活させることなく、高純度特異的鶏卵抗体の精製に阻害
的に働く卵黄脂質成分が効率的に抽出除去される。従っ
て、本発明により得られる特異的鶏卵抗体、すなわち、
超臨界ガス抽出脱脂卵黄粉末を出発原料として、鶏卵抗
体の抽出操作、塩析操作等を組み合わせることにより、
高純度の特異的鶏卵抗体を高回収率で精製することがで
きる。得られる高純度特異的鶏卵抗体は、研究試薬、臨
床検査薬のみならず、動物薬及び医薬品素材として利用
することができる。
【0036】
【実施例】以下、実施例、比較例および試験例により本
発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施
例等によりなんら限定されるものではない。 実施例1.特異的鶏卵抗体含有卵黄粉末の調製 特定抗原として、ストレプトコッカス・ミュータンス
MT8148(以下S.mutansという)菌体を用
い、産卵鶏を免疫した。抗原の調製はS.mutans
を5%砂糖を含むブレインハートインフュージョン培地
で増殖させ、3000×g,10分間の遠心分離操作で集菌
後、菌体を生理食塩水で充分に洗浄し、その1ml当たり
約108 個のS.mutansが含まれる様調製した。産
卵鶏1羽に対し該抗原1mlを1週間に一度、合計4回筋
肉注射した。最終の筋肉注射より3ケ月間にわたり、鶏
卵を集め、その卵黄を分離した。卵黄はホモミキサーに
より均質化した後、63℃、3分間の殺菌を行い、熱風乾
燥法(入口温度150 ℃、出口温度80℃)で粉末化した。
免疫鶏の鶏卵卵黄20kgからS.mutansに対する特
異的鶏卵抗体を含有する卵黄粉末9.8 kgが得られた。
【0037】実施例2.超臨界ガス抽出による特異的鶏
卵抗体の調製 実施例1で得られた卵黄粉末1kgを超臨界抽出装置の抽
出槽(4リットル容量)に入れ、300 kg/cm2 ,40℃の
条件下で超臨界ガス状態とした二酸化炭素と接触させ、
不純物の除去操作を行った。抽出された不純物は分離槽
内において、超臨界二酸化炭素ガスを60kg/cm2 ,40℃
の条件に減圧し分離した。以上の不純物の除去操作を、
1時間当たり10リットルの超臨界ガス流量で6時間行っ
た後、除圧し抽出槽内より580 gの超臨界ガス抽出脱脂
卵黄粉末が、特異的鶏卵抗体の粉末として得られた。
【0038】実施例3.超臨界ガス抽出による特異的鶏
卵抗体の調製 実施例1で得られた卵黄粉末1kgを超臨界抽出装置の抽
出槽(4リットル容量)に入れ、300 kg/cm2 ,40℃の
条件で超臨界ガス状態とした二酸化炭素と接触させ、不
純物の除去操作を行った。抽出された不純物は分離槽内
において、超臨界二酸化炭素ガスを60kg/cm2 ,40℃の
条件に減圧し分離した。以上の不純物の除去操作を1時
間当たり10リットルの超臨界ガス流量で6時間行った
後、除圧し分離槽内にα−トコフェロールを1.0 g含ま
せた脱脂綿を入れ、再度抽出槽、分離槽を100 kg/c
m2 ,40℃の条件で超臨界二酸化炭素ガスを1時間当た
り10リットルのガス流量で2時間循環させ、α−トコフ
ェロールを抽出槽内の特異的鶏卵抗体粉末に均質分散さ
せた。除圧後、抽出槽内より580 gの超臨界ガス抽出脱
脂卵黄粉末が、特異的鶏卵抗体の粉末として得られた。
【0039】実施例4.超臨界ガス抽出による特異的鶏
卵抗体の調製 実施例1で得られた卵黄粉末1kgを未変性エタノール5
kg中に懸濁させ、室温30分間攪拌後、吸引ろ過によりエ
タノールと卵黄粉末を分離した。この残渣卵黄粉末を直
ちに超臨界ガス抽出装置の抽出槽(4リットル容量)に
入れ、300 kg/cm2 ,40℃の条件で超臨界ガス状態とし
た二酸化炭素と接触させ、エタノール及び卵黄粉末中不
純物の除去操作を行った。抽出されたエタノール及び不
純物は分離槽内において、超臨界二酸化炭素ガスを60kg
/cm2 ,40℃の条件に減圧し分離した。エタノール及び
不純物の除去操作は、1時間当たり10リットルの超臨界
ガス流量で4時間行った後、除圧し分離槽内より460 g
の超臨界ガス抽出脱脂卵黄粉末が、特異的鶏卵抗体の粉
末として得られた。
【0040】実施例5.特異的鶏卵抗体の抽出及び精製 実施例2で得られた特異的鶏卵抗体粉末580 gを20倍重
量の20mMリン酸緩衝液(0.30MNaCl,pH8.0 )
にけん濁させ、室温で2時間攪拌抽出した後、遠心分離
(3,000 ×g,10分間)で不溶物を分離除去した。その
上清液に対し、15重量%濃度となるよう、硫酸ナトリウ
ムを添加溶解し、室温で30分間攪拌し塩析操作を行っ
た。塩析物は遠心分離(3,000 ×g,10分間)で回収
し、20mMリン酸緩衝液(pH8.0 )に溶解後、同緩衝
液に対し充分透析した後、凍結乾燥し、凍結乾燥粉末と
して24.7gの精製された特異的鶏卵抗体を得た。
【0041】実施例6.特異的鶏卵抗体の抽出及び精製 実施例4で得られた特異的鶏卵抗体粉末を用いて、実施
例5と同様の抽出及び精製操作を行い、凍結乾燥粉末と
して25.2gの精製された特異的鶏卵抗体を得た。
【0042】実施例7.抗CRP鶏卵抗体の調製 特定抗原としてヒト血中のC反応性タンパク質(CR
P)で過免疫された鶏の卵より卵黄を分離し、凍結乾燥
により卵黄粉末を得た。該卵黄粉末80gとエタノール80
0 gを混合し、室温30分攪拌した後、吸引濾過により、
卵黄残査を分離した。該卵黄残査を超臨界抽出装置の抽
出槽(300 ml容量)へ充填し、350 kg/cm2 ,40℃の
条件下で超臨界ガス状態とした二酸化窒素と接触(1.2
kgガス/時間×3時間)させ、残留エタノール及び卵
黄脂質の抽出操作を行った。
【0043】本操作により41gの脱脂卵黄粉末を得た。
これを20mMリン酸緩衝液(0.3 MNaCl含む,pH
8.0 )400 ml中にけん濁させ、室温で2時間攪拌した
後、遠心分離により(3,000 ×g,10分間)不溶物を分
離した。得られた上清に対し硫酸ナトリウムを15重量
(%)となる様、溶解し、室温で30分間攪拌し塩析操作
を行った。塩析物を遠心分離(3,000 ×g,10分間)で
回収し、20mMリン酸緩衝液(pH8.0 )200 mlに再
溶解した。この溶液に対し、同上の硫酸ナトリウムによ
る塩析操作を再度行い、回収された塩析物を20mMリン
酸緩衝液(pH8.0 )に溶解し、同緩衝液に対し充分透
析した。透析内液を凍結乾燥し、抗CRP鶏卵抗体1.9
gを得た。得られた抗CRP鶏卵抗体のタンパク質純度
(鶏卵抗体として)は97%であった。また、免疫卵黄液
からの抗体活性(CRP結合活性)回収率をELISA
法で測定した結果、91%であった。
【0044】実施例8.仔豚下痢症予防鶏卵抗体の調製 特定抗原として、仔豚下痢症の病原体である大腸菌K8
8株、大腸菌K99株、大腸菌987P株、及びブタロ
タウィルスS80株の混合抗原で過免疫された鶏の卵よ
り卵黄を分離し、熱風乾燥により、卵黄粉末を得た。該
卵黄粉末1kgを超臨界抽出装置の抽出槽(4リットル
容量)に入れ、300kg/cm2 ,40℃の条件下で
超臨界ガス状態とした二酸化炭素と接触させ、不純物の
除去操作を行った。抽出された不純物は分離槽内におい
て、超臨界二酸化炭酸ガスを60kg/cm2 ,40℃
の条件に減圧し分離した。以上の不純物の除去操作を1
時間当たり10リットルの超臨界ガス流量で6時間行った
後、除圧し抽出槽内より、572 gの超臨界ガス抽出脱脂
卵黄粉末が、仔豚下痢症予防鶏卵抗体の粉末として得ら
れた。
【0045】実施例9.仔豚下痢症予防鶏卵抗体配合代
用初乳の調製 実施例8で調製した仔豚下痢症予防鶏卵抗体の粉末500
g、脱脂粉乳7,000 g、分離大豆蛋白質500 g、ブドウ
糖500 g、粉末油脂1,000 g、及びビタミン、ミネラル
混合物500 gを混合し、仔豚下痢症予防鶏卵抗体配合代
用初乳を調製した。
【0046】実施例10.ウナギパラコロ病予防鶏卵抗
体の調製 特定抗原として、ウナギのパラコロ病病原体であるエド
ワードジェラ・タルダ菌を抗原として過免疫された鶏の
卵より、卵黄を分離し、熱風乾燥により卵黄粉末を得
た。該卵黄粉末1kgを超臨界抽出装置の抽出槽(4リ
ットル容量)に入れ、300kg/cm2 ,40℃の条
件下で超臨界ガス状態とした二酸化炭素と接触させ、不
純物の除去操作を行った。抽出された不純物は分離槽内
において、超臨界二酸化炭酸ガスを60kg/cm2
40℃の条件に減圧し分離した。以上の不純物の除去操
作を1時間当たり10リットルの超臨界ガス流量で6時間
行った後、除圧し抽出槽内より586 gの超臨界ガス抽出
脱脂卵黄粉末が、ウナギパラコロ病予防鶏卵抗体の粉末
として得られた。
【0047】実施例11.ウナギパラコロ病予防鶏卵抗
体配合ウナギ飼料の調製 実施例10で調製したウナギパラコロ病予防鶏卵抗体50
0 g、魚粉7,000 g、小麦粉1,000 g、コーンスターチ
800 g、ビール酵母200 g、食塩30g、ビタミン、ミネ
ラル混合物470 gを混合し、ウナギパラコロ病予防鶏卵
抗体配合ウナギ飼料を調製した。
【0048】実施例12.小児ロタウィルス性下痢症予
報鶏卵抗体の調製 特定抗原として、小児ロタウィルス性下痢症の病原体で
あるヒトロタウィルスWa株(セロタイプ1型)及びヒ
トロタウィルスMo株(セロタイプ3型)を抗原として
過免疫された鶏の卵より卵黄を分離し、熱風乾燥により
卵黄粉末を得た。該卵黄粉末1kgを未変性エタノール
5kg中に懸濁させ、室温30分間攪拌後、吸引ろ過により
エタノールと卵黄粉末を分離した。この残渣卵黄粉末を
直ちに超臨界ガス抽出装置の抽出槽(4リットル容量)
に入れ、300 kg/cm2 ,40℃の条件で超臨界ガス状態と
した二酸化炭素と接触させ、エタノール及び卵黄粉末中
不純物の除去操作を行った。抽出されたエタノール及び
不純物は分離槽内において、超臨界二酸化炭素ガスを60
kg/cm2 ,40℃の条件に減圧し分離した。エタノール及
び不純物の除去操作は、1時間当たり10リットルの超臨
界ガス流量で4時間行った後、除圧し分離槽内より430
gの超臨界ガス抽出脱脂卵黄粉末が小児ロタウィルス性
下痢症予防鶏卵抗体の粉末として得られた。
【0049】実施例13.小児ロタウィルス性下痢症予
防鶏卵抗体配合粉乳の調製 実施例12で調製した小児ロタウィルス性下痢症予防鶏
卵抗体100 gと、市販の調製粉乳900 gと混合し、小児
ロタウィルス性下痢症予防鶏卵抗体配合乳幼児調製粉乳
を調製した。
【0050】比較例1.エタノール抽出による特異的鶏
卵抗体の調製 実施例1で得られた卵黄粉末1kgを未変性エタノール5
kgに懸濁させ、室温30分間攪拌後、吸引ろ過によりエタ
ノールろ液と残渣粉末を分離した。この残渣粉末を再
度、未変性エタノール5kgに懸濁させ、上記と同様の操
作でエタノールろ液と残渣粉末を分離した。この残渣粉
末を減圧乾燥でエタノール除去することにより470 gの
特異的鶏卵抗体の粉末を得た。
【0051】比較例2.カラギナンを用いた特異的鶏卵
抗体の調製 実施例1で得られた卵黄粉末1kgをλ−カラギナン水溶
液(0.15重量%)9kgに溶解し、室温、30分間攪拌後、
生じたリポタンパク質−カラギナン凝集体をバスケット
型遠心分離機(3,000 ×g,10分間)で沈澱物として分
離した。得られた上清液をセライトろ過した後、凍結乾
燥することにより110 gの特異的鶏卵抗体の粉末を得
た。
【0052】比較例3.卵黄粉末からの特異的鶏卵抗体
の抽出及び精製 実施例1で得られた卵黄粉末1kgを20倍(重量)の20m
Mリン酸緩衝液(0.3NaCl,pH8.0 )にけん濁さ
せ、室温で2時間攪拌後、遠心分離(3,000 ×g,10分
間)で不溶解物を除去した。その上清液に硫酸ナトリウ
ムを15重量%となるよう溶解し、室温で30分間攪拌し、
塩析操作を行った。塩析物は、遠心分離(3,000 ×g,
10分間) で回収し、20mMリン酸緩衝液(pH8.0 )に
溶解後、同緩衝液に対し充分透析した後、凍結乾燥し、
精製された特異的鶏卵抗体36.4gを得た。
【0053】比較例4.カラギナンを用いたリポタンパ
ク沈澱法による特異的鶏卵抗体の抽出及び精製 実施例1で得られた卵黄粉末1kgを、λ−カラギナン水
溶液(0.15重量%)9kgにけん濁させ、室温で30分間攪
拌後、生じた卵黄リポタンパク質−カラギナン凝集体を
遠心分離(3,000 ×g,10分間) で沈澱物として除去し
た。得られた上清液をセライトを用いて濾過した後、そ
の濾液1kgに対し硫酸ナトリウム150 gを溶解し、塩析
操作を行った。生じた塩析物を遠心分離(3,000 ×g,
10分間)で回収し、20mMリン酸緩衝液(pH8.0 )に
溶解し、同緩衝液に対し充分透析した後、凍結乾燥によ
り、精製された特異的鶏卵抗体12.6gを得た。
【0054】比較例5.有機溶剤を用いた卵黄脂質除去
法による特異的鶏卵抗体の抽出及び精製 卵黄脂質の抽出に用いる有機溶剤としては、エチルアル
コール,イソプロピルアルコール,アセトン,クロロホ
ルム,及びヘキサンを用いた。実施例1で得られた卵黄
粉末1kgをそれぞれの有機溶剤,10kgにけん濁し、室温
で1時間攪拌後、吸引濾過により脱脂卵黄粉末を残査と
して回収した。これを室温,減圧下で溶剤を留去し、そ
れぞれの有機溶剤による脱脂卵黄粉末,546 g(エチル
アルコール),438 g(イソプロピルアルコール),57
2 g(アセトン),456 g(クロロホルム)及び508 g
(ヘキサン)を得た。それぞれの脱脂卵黄粉末に対し、
実施例5と同様の抽出及び精製操作を行い、各有機溶剤
脱脂法による精製された特異的鶏卵抗体を、凍結乾燥粉
末として、それぞれ、19.8g(エチルアルコール),2
0.3g(イソプロピルアルコール),19.5g(アセト
ン),22.1g(クロロホルム)及び22.7g(ヘキサン)
を得た。
【0055】試験例1.特異的抗体力価回収率の比較 実施例1〜4及び比較例1,2で得られた卵黄粉末及び
特異的鶏卵抗体粉末を試料とし、それぞれに含まれる
S.mutansに対する特異的抗体力価を酵素免疫測
定法(以下ELISAという)により測定した。各試料
を0.5 %Tween20を含む生理的リン酸緩衝液pH7.
2 (以下PBS−Tweenという)に溶解し、1mg粉
末重量/ml濃度とした。これら試料液を100 μl/ウ
エルの割合で抗原として用いたS.mutansを固相
へコーティングしたELISAプレート(96穴,ヌンク
社製)へ添加し、37℃,1時間放置することにより抗原
と特異的抗体の反応を行った。各ウエルをPBS−Tw
eenで充分洗浄した後、抗ニワトリIgGウサギIg
G−アルカリホスファターゼコンジュゲート(ザイメッ
ト社製)のPBS−Tween希釈液(2,000 倍)を10
0 μl/ウエルの割合で添加した。37℃で1時間放置す
ることにより、抗原と反応した特異的抗体と上記コンジ
ュゲートの反応を行った。各ウエルをPBS−Twee
nで充分洗浄した後、0.1 %p−ニトロフェニルホスフ
ェート・2ナトリウム溶液(0.1 M炭酸ナトリウム緩衝
液pH9.6 に溶解)を基質として100 μl/ウエルの割
合で添加し、37℃,30分間酵素反応を行った。反応の停
止は2M水酸化ナトリウム溶液(50μl/ウエル)を添
加することにより行い、405 nmにおける各ウエルの吸光
度をプレートリーダーにより測定した。なお、対照とし
ては試料の代わりにPBS−Tweenを用いた。各試
料につき、4ウエルを用い、各試料の示す吸光度平均値
から対照の示す吸光度平均値を引き、それぞれの試料重
量を乗じた値(総吸光度)を各試料の総抗体力価として
比較した。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】表1の結果より、特異的鶏卵抗体調製法と
して公知であるエタノール(有機溶剤)による脂質抽出
除去法(比較例1粉末)では12%の抗体力価しか回収さ
れなかった。種々のリポタンパク質除去法の中で、最も
抗体の回収率が高く、かつ、食品用鶏卵抗体としても安
全に用いられるカラギナンを用いた方法(比較例2粉
末)では、60%の抗体力価が回収された。これら公知の
方法に比べ、本発明による特異的鶏卵抗体粉末(実施例
2〜4粉末)では、約90%の抗体力価の回収が達成され
た。
【0058】試験例2.特異的鶏卵抗体粉末中の脂質含
量及びその組成の比較 実施例1〜4で得られた卵黄粉末及び特異的鶏卵抗体粉
末のそれぞれ1gを試料とし、その20倍重量のクロロホ
ルム−メタノール混液(2:1)で合計3回、脂質を抽
出し、溶剤を減圧下ロータリーエバポレーターで除去し
た後、残渣重量をそれぞれの試料が含有する総脂質量と
して比較した。また、それぞれの試料から得られた脂質
に占める非極性脂質及び極性脂質の割合をイヤトロスキ
ャン(ヤトロン社製)を用い測定した。イヤトロスキャ
ンのシリカゲルロッドに各試料を適当量アプライし、展
開溶媒としてクロロホルム:メタノール:アンモニア水
=65:25:4の割合で混合した溶液を用い展開した。分
離した各成分を水素炎によって検出し、非極性脂質、極
性脂質及びその他の成分の含有量を計算した。結果を表
2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】表2の結果より、卵黄粉末を超臨界ガス抽
出することにより、非極性脂質が選択的に除去されるこ
とが示された(実施例2、3粉末)。また、実施例4の
粉末では、おそらくエタノールと超臨界ガスの相乗作用
により、非常に効果的に、非極性脂質の除去が達成でき
た。
【0061】試験例3.特異的鶏卵抗体粉末の酸化安定
性についての比較 実施例1〜4で得られた卵黄粉末及び特異的鶏卵抗体粉
末のそれぞれを試料とし、37℃,10,000ルクスの明所に
360 時間保存した。保存前と後の各試料について、試験
例2と同様の方法で粉末中の脂質を抽出し、それらの過
酸化物価(POV値)を測定することにより、各試料の
酸化性について比較した。過酸化物価の測定は、Asakaw
a らの方法(Lipids,15巻,965 ページ,1980年)を用
い、試料脂質1kg当たりのヨウ化カリウムより遊離され
るヨウ素のミリ当量数をPOV値として算出した。結果
を表3に示す。
【0062】
【表3】
【0063】表3の結果より、本発明の特異的鶏卵抗体
の粉末は、その明所保存時の酸化が非常に少ないという
結果が得られた。これは表2の結果より非極性脂質の除
去に由来すると考えられる。また、実施例3および実施
例4の粉末では保存中の酸化をほぼ完全に抑制できるこ
とが示された。これは前者では添加したトコフェロール
の効果によるものと思われる。後者では予めエタノール
抽出した後に超臨界ガス抽出されているため、実施例2
の粉末と比べて、卵黄脂質がより多く除去されているこ
とに基づくものと思われる。
【0064】試験例4.特異的鶏卵抗体粉末の官能テス
ト 実施例1〜4で得られた卵黄粉末及び特異的鶏卵抗体の
それぞれについて、任意に選ばれた10人のパネラーを用
い、その色、臭い、風味について官能テストを実施し
た。評価方法については、表4に示す基準を用い行っ
た。その結果を表5に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】表5の結果により、本発明の特異的鶏卵抗
体の粉末は、卵黄特有の色、臭い及び風味がかなり除去
されていることがわかった。表2の結果を考え合わせる
と、各特異的鶏卵抗体粉末中の残液中の脂質量と本試験
の官能テスト各スコアーは相関性が見られることから、
卵黄特有の色、臭い、風味は、非極性脂質量に由来する
と推測される。
【0068】試験例5.特異的鶏卵抗体粉末添加チョコ
レートの官能テスト 市販のチョコレートを40℃で溶解し、この中へ実施例1
〜4で得られた卵黄粉末及び特異的鶏卵抗体粉末のそれ
ぞれを試料として、2重量%添加し、よく混練した後、
5℃で固型化し、各試料を添加したチョコレートを作成
した。任意に選ばれた10人のパネラーを用い、それぞれ
のチョコレートについて食した時に卵風味を感じるか否
かの官能テストを行った。結果を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】表6の結果より、本発明の特異的鶏卵抗体
の粉末はチョコレートに2重量%添加しても、実質的に
その風味を損なうことがないと示された。
【0071】試験例6.精製された特異的鶏卵抗体の抗
体力価回収率及び純度の比較 実施例1で得られたS.mutansに対する特異的鶏
卵抗体含有卵黄粉末、実施例5,6、比較例3〜5で精
製された特異的鶏卵抗体について、抗体活性(抗原との
結合活性)を、抗原として用いたS.mutans全菌
体をコーティングした96穴ポリスチレンプレート(ヌ
ンク社製)を用い、試験例1と同様の酵素免疫測定法に
より調べた。ELISAプレートへ抗原として用いた
S.mutans全菌体をコーティングした。各ウエル
をTween20含有リン酸緩衝液(20mMリン酸,
0.15MNaCl,0.5 % Tween20,pH7.4 、
以下PBS−Tweenと呼ぶ)で3回洗浄し、オボア
ルブミンでブロッキング操作(1mg/ウエル,37℃,
1時間)を行った後、各ウエルをPBS−Tweenで
洗浄した。実施例1で得られたS.mutansに対す
る特異的鶏卵抗体含有卵黄粉末,実施例5,6,比較例
3〜5で得られたS.mutansに対する特異的鶏卵
抗体のそれぞれをPBS−Tweenにけん濁,あるい
は溶解し、各ウエルに添加した。37℃,1時間,抗原と
抗体を反応させた後、PBS−Tweenで各ウエルを
洗浄した。
【0072】2次抗体としてザイメット社製の抗ニワト
リIgGウサギIgG−アルカリホスファターゼコンジ
ュゲートを用いた。2次抗体をPBS−Tweenで希
釈(2,000 倍)し、各ウエルへ添加した。37℃,1時
間,鶏卵抗体と2次抗体を反応させた後、PBS−Tw
eenで各ウエルを洗浄した。基質としては、シグマ社
製のp−ニトロフェニルホスフェート・2ナトリウム塩
を用いた。基質を0.1 M炭酸緩衝液pH9.6 に溶解し、
各ウエルへ添加した。37℃,30分間,酵素反応を行った
後、2N水酸化ナトリウム溶液を各ウエルへ添加し、酵
素反応を止めた。各鶏卵抗体サンプルの示す発色は405
nmにおける吸光度を測定し、ブランク値を差し引いた
値をELISA値として計算した。それぞれの鶏卵抗体
サンプル1mg粉末の示すELISA値より、抗体活性
の回収率を算出した。
【0073】鶏卵抗体のタンパク質純度をゲル濾過分析
法により行った。ゲル濾過カラムは、スーパーロース12
HR 10/30(ファルマシア社製)を用い、ファルマシ
ア社、高速液体クロマトグラフィーシステム(FPL
C)で行った。展開溶媒は50mMリン酸緩衝液pH8.0
(0.15MNaCl含む)で0.5 ml/分の流速で行っ
た。実施例5,6及び比較例3〜5で得られた特異的鶏
卵抗体を展開溶媒に溶解し(5mg/ml)その50μl
をゲル濾過カラムへアプライした。カラム通過液はシン
グルパスモニター(UV−1,ファルマシア社)によ
り、波長280 nmの値を測定した。また、得られたピー
クのインテグレート値により、全タンパク質ピーク面積
に対する鶏卵抗体の示すピーク面積の割合を算出し鶏卵
抗体のタンパク質純度とした。尚、鶏卵抗体の標準品と
しては、シグマ社製ニワトリ血清IgGを用いた。
【0074】表7に実施例1の卵黄粉末及び、実施例
5,6、比較例3〜5で得られた精製鶏卵抗体の特異的
抗体活性回収率及び抗体純度を示す。卵黄粉末より鶏卵
抗体を抽出し、塩析法で高純度鶏卵抗体を精製する為に
は、まず卵黄の脱脂が必要であると示された(比較例
3)。脱脂方法として公知である有機溶剤脱脂を用いる
ことにより、抗体純度は、61〜76%まで上昇した。しか
しながら、特異的抗体の活性回収率は25〜52%であっ
た。この原因としては有機溶剤による抗体の変性失活及
び有機溶剤脱脂卵黄粉末からは鶏卵抗体が抽出されにく
いのではないかと考えられる(比較例5)。もう1つの
脱脂法としてリポタンパク質を凝集させ、卵黄水溶性タ
ンパク質と分離する方法がある。種々の卵黄リポタンパ
ク質凝集剤が公知化されてはいるがその中で最も効果の
あるλ−カラギナンを用いた場合、抗体純度は93%であ
り、高純度抗体を得ることが可能であったが、その特異
的抗体活性回収率は、68%であった。これは、抗体の変
性失活ではなく、リポタンパク質凝集物の方へ鶏卵抗体
がかなり混在し、残存するものと思われる(比較例
4)。本発明の方法によれば、抗体純度、及び抗体活性
回収率ともに90%以上で特異的鶏卵抗体の精製が行なわ
れる(実施例5,6)。これは超臨界ガス抽出法を利用
することにより、抗体の変性をおこすことなく、卵黄脂
質が効率よく抽出除去された為と思われる。また、超臨
界ガス抽出後の脱脂粉末は、有機溶剤抽出後の脱脂粉末
に比較し緩衝液等でより抽出されやすい状態として、特
異的鶏卵抗体を含有しているものと思われる。
【0075】
【表7】
【0076】
【発明の効果】本発明によれば、特定抗原で免疫された
産卵鶏より得られる卵黄粉末より、実質的に特異的抗体
活性を失活させることなく、抗体活性を実質的に有しか
つ卵黄の色、臭い、風味の少ない特異的鶏卵抗体を簡単
に、かつ安価に製造することができる。また、本発明の
特異的鶏卵抗体は、保存中の酸化に対する安定性も良好
であり、流動性にも優れている。また、本発明によれ
ば、高純度鶏卵抗体の精製において、阻害的に働く卵黄
脂質成分が効率的に抽出除去される。従って、本発明に
より得られる特異的鶏卵抗体、すなわち、超臨界ガス抽
出脱脂卵黄粉末を出発原料として、高純度特異的鶏卵抗
体が高回収率で精製される。このような特徴を有する本
発明の特異的鶏卵抗体は、特に食品素材用としての特異
的鶏卵抗体の応用を実用的なものとし、実際に食品へ添
加しても、その食品の風味を損なうことなく、特異的鶏
卵抗体の実際的な食品への付与が可能となった。このよ
うな特異的鶏卵抗体添加食品は、受動免疫分野への応用
に適し、口腔内、皮膚表面あるいは腸管内細胞上の局所
における付着感染を特徴とする種々の病原体に対して、
その感染予防に役立つものである。また、本発明の特異
的鶏卵抗体の粉末は、食品素材としてのみならず、家畜
や養殖魚の飼料素材、及び化粧品、医薬品分野において
も衛生的、かつ安価な特異的鶏卵抗体として幅広く利用
できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 八田 一 三重県四日市市赤堀新町9番5号 太陽化 学株式会社内 (72)発明者 西元 勝也 三重県四日市市赤堀新町9番5号 太陽化 学株式会社内 (72)発明者 金 武祚 三重県四日市市赤堀新町9番5号 太陽化 学株式会社内 (72)発明者 山本 武彦 三重県四日市市赤堀新町9番5号 太陽化 学株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 特定抗原で免疫した産卵鶏の卵黄から、
    超臨界ガス抽出により脂質等の不純物を除去してなる、
    特定抗原に対する抗体活性を実質的に有する特異的鶏卵
    抗体。
  2. 【請求項2】 特定抗原で免疫した産卵鶏の卵黄から、
    有機溶剤抽出および超臨界ガス抽出により脂質等の不純
    物を除去してなる、特定抗原に対する抗体活性を実質的
    に有する特異的鶏卵抗体。
  3. 【請求項3】 特定抗原で免疫した産卵鶏の卵黄を粉末
    化し、次いで超臨界ガス抽出により脂質等の不純物を除
    去することを特徴とする、特定抗原に対する抗体活性を
    実質的に有する特異的鶏卵抗体の製造方法。
  4. 【請求項4】 特定抗原で免疫した産卵鶏の卵黄を粉末
    化し、次いで有機溶剤抽出後、超臨界ガス抽出により脂
    質等の不純物を除去することを特徴とする、特定抗原に
    対する抗体活性を実質的に有する特異的鶏卵抗体の製造
    方法。
  5. 【請求項5】 特定抗原で免疫した産卵鶏の卵黄を粉末
    化し、次いで少なくとも、超臨界ガス抽出により脂質等
    の不純物を除去する工程、前記工程により得られる脱脂
    卵黄粉末中の卵黄水溶性タンパク質を緩衝液で抽出する
    工程、および該抽出液中の鶏卵抗体を塩析法により精製
    する工程を有することを特徴とする高純度特異的鶏卵抗
    体の製造方法。
JP35926891A 1991-02-16 1991-12-29 特異的鶏卵抗体の製造方法 Expired - Fee Related JP3195631B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP35926891A JP3195631B2 (ja) 1991-02-16 1991-12-29 特異的鶏卵抗体の製造方法
DE69228016T DE69228016D1 (de) 1991-02-16 1992-02-12 Spezifischer Hühnerei-Antikörper und Methode zu seiner Herstellung
EP92102325A EP0503293B1 (en) 1991-02-16 1992-02-12 Specific chicken egg antibody and method for its production

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10901091 1991-02-16
JP3-109010 1991-02-16
JP35926891A JP3195631B2 (ja) 1991-02-16 1991-12-29 特異的鶏卵抗体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06128298A true JPH06128298A (ja) 1994-05-10
JP3195631B2 JP3195631B2 (ja) 2001-08-06

Family

ID=26448815

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP35926891A Expired - Fee Related JP3195631B2 (ja) 1991-02-16 1991-12-29 特異的鶏卵抗体の製造方法

Country Status (3)

Country Link
EP (1) EP0503293B1 (ja)
JP (1) JP3195631B2 (ja)
DE (1) DE69228016D1 (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001503386A (ja) * 1996-07-30 2001-03-13 ディーシーヴィー インコーポレイテッド 胃腸の損傷を治療する方法
JP2003535033A (ja) * 1999-10-28 2003-11-25 オフィディアン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド 腸管腔に投与されるポリクローナル抗体による自己免疫疾患の予防および治療
KR100423551B1 (ko) * 2001-06-22 2004-03-18 한국식품개발연구원 에드워드 타다, 스트랩토코커스 이니에 및 우결핵균에대한 특수면역단백질을 공유하는 계란생산방법 및 상기방법으로 생산된 계란, 난황 및 상기 항-혼합균특수면역단백질을 함유한 양어사료
WO2004105792A1 (ja) * 2003-05-30 2004-12-09 Ghen Corporation 抗パルボウイルス感染症組成物
KR100532678B1 (ko) * 2003-06-30 2005-11-30 그린텍이십일 주식회사 특수면역항체의 역가가 향상된 난황분말 및 그의 제조방법
WO2007034741A1 (ja) * 2005-09-22 2007-03-29 Daikin Industries, Ltd. 抗ウイルス剤、及びウイルス感染細胞の処理方法
US8173783B2 (en) 2000-12-08 2012-05-08 Good Biotech Corporation Process for selectively isolating IgY antibodies from egg yolk of an anseriform bird and IgY antibodies obtained thereby
JP2018080177A (ja) * 2017-12-20 2018-05-24 オーストリッチファーマ株式会社 アレルゲン抗体およびそれを有する組成物

Families Citing this family (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE4407933A1 (de) * 1993-03-15 1994-09-22 Sueddeutsche Kalkstickstoff Verfahren zur Gewinnung von Lipidfraktionen aus pulverförmigen Eiprodukten
DE19518232A1 (de) * 1995-05-12 1996-11-14 Ruediger Dr Schade Aviäre, vitelline, gegen Stützgewebe gerichtete Antikörper
EP0826005B1 (de) * 1996-03-12 2004-05-12 Ovogenix Immunpharma GmbH Verwendung von aviären, vitellinen, gegen hiv-antigene gerichteten antikörpern zur herstellung pharmazeutischer zubereitungen
US5741489A (en) * 1996-05-24 1998-04-21 Anitox Corporation Passively administered antibody that enhances feed conversion efficiency
WO1998021979A1 (en) * 1996-11-19 1998-05-28 Wisconsin Alumni Research Foundation Method for increasing the efficiency of feed conversion in animals
SE9701026D0 (sv) 1997-03-20 1997-03-20 Immun System Ims Ab use of avian antibodies
DE19854807A1 (de) * 1998-11-27 2000-05-31 Krupp Uhde Gmbh Verfahren zur Gewinnung insbesondere von Lecithin aus Trockenei
DE19910159A1 (de) * 1999-02-26 2000-09-14 Rosemarie Heis Spezifische lgY-Eidotterantikörper, ihre Gewinnung und ihre Verwendung
US6413572B1 (en) 1999-08-24 2002-07-02 Michael Foods, Inc. Enhanced precooked egg product and process for formulation of precooked egg products
US6680376B2 (en) 2000-12-08 2004-01-20 Good Biotech Corporation Process for selectively isolating avian immunoglobulins
DE10065227A1 (de) * 2000-12-27 2002-07-11 Good Biotech Corp Verfahren zur Isolierung und Reinigung von Eigelb-Antikörpern aus Vogeleiweiß und Verwendung von dadurch erhaltenen Eigelb-Antikörpern
US20030118714A1 (en) 2001-12-21 2003-06-26 Michael Foods Of Delaware, Inc. Formulation and process to prepare a premium formulated fried egg
US7241469B2 (en) 2002-05-30 2007-07-10 Michael Foods, Inc. Formulation and process to prepare a pre-formed filing unit
DE102011006809A1 (de) * 2011-04-05 2012-10-11 Freistaat Bayern vertreten durch die Julius-Maximilians-Universität Würzburg Verwendung eines Mittels aus Antikörpern und/oder Insulin-like growth factor-Antagonisten
CN111378031A (zh) * 2018-12-28 2020-07-07 埃格生物科技(常州)有限公司 一种卵黄抗体的脱脂方法

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001503386A (ja) * 1996-07-30 2001-03-13 ディーシーヴィー インコーポレイテッド 胃腸の損傷を治療する方法
JP2003535033A (ja) * 1999-10-28 2003-11-25 オフィディアン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド 腸管腔に投与されるポリクローナル抗体による自己免疫疾患の予防および治療
US8173783B2 (en) 2000-12-08 2012-05-08 Good Biotech Corporation Process for selectively isolating IgY antibodies from egg yolk of an anseriform bird and IgY antibodies obtained thereby
KR100423551B1 (ko) * 2001-06-22 2004-03-18 한국식품개발연구원 에드워드 타다, 스트랩토코커스 이니에 및 우결핵균에대한 특수면역단백질을 공유하는 계란생산방법 및 상기방법으로 생산된 계란, 난황 및 상기 항-혼합균특수면역단백질을 함유한 양어사료
WO2004105792A1 (ja) * 2003-05-30 2004-12-09 Ghen Corporation 抗パルボウイルス感染症組成物
KR100532678B1 (ko) * 2003-06-30 2005-11-30 그린텍이십일 주식회사 특수면역항체의 역가가 향상된 난황분말 및 그의 제조방법
WO2007034741A1 (ja) * 2005-09-22 2007-03-29 Daikin Industries, Ltd. 抗ウイルス剤、及びウイルス感染細胞の処理方法
JP2018080177A (ja) * 2017-12-20 2018-05-24 オーストリッチファーマ株式会社 アレルゲン抗体およびそれを有する組成物

Also Published As

Publication number Publication date
EP0503293A1 (en) 1992-09-16
DE69228016D1 (de) 1999-02-11
EP0503293B1 (en) 1998-12-30
JP3195631B2 (ja) 2001-08-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3195631B2 (ja) 特異的鶏卵抗体の製造方法
Yokoyama et al. Passive protective effect of chicken egg yolk immunoglobulins against experimental enterotoxigenic Escherichia coli infection in neonatal piglets
AU600240B2 (en) Specific antibody-containing substance from eggs and method of production and use thereof
US5367054A (en) Large-scale purification of egg immunoglobulin
Korhonen et al. Bovine milk antibodies for health
CA2517911C (en) Composition and method for the treatment and prevention of enteric bacterial infections
KR910005409B1 (ko) 계란으로 부터의 특이적항체함유재료의 제조방법
JP2002501526A (ja) 乳汁における免疫グロブリンaの生成方法
JP4316012B2 (ja) 卵の抗炎症性組成物、単離法および使用
US20020044942A1 (en) Transfer factor composition and process for producing same
JPH0840932A (ja) スタフイロコッカス属菌感染症の予防ワクチン及び治療用抗体並びにそれの製造法
Yokoyama et al. A two-step procedure for purification of hen egg yolk immunoglobulin G: utilization of hydroxypropylmethylcellulose phthalate and synthetic affinity ligand gel (Avid AL®)
WO2003030918A1 (en) Pharmaceutical product or food supplement and intermediate product to be used therewith
WO1999002188A1 (en) Hen egg yolk antibodies to clostridium difficile antigens and use in therapy for pseudomembranous colitis
JPH11512746A (ja) 乳漿中の免疫グロブリンの単離方法
HORIKOSHI et al. IgG antibody from hen egg yolks: purification by ethanol fractionation
AU767570B2 (en) Egg anti-inflammatory composition and method of treating and preventing inflammation
JPH0669962B2 (ja) 経口免疫グロブリン
JPH04275232A (ja) 胃炎,胃または十二指腸潰瘍予防食品
CA2061134A1 (en) Specific chicken egg antibody and method for its production
JPH06329700A (ja) 特異的鶏卵抗体の製造法
CA2484716A1 (en) Immune t-cell stimulation
JP2002234849A (ja) 消化性潰瘍抑制組成物及びそれを含有する飲食品
AU690521B2 (en) Anti-cholesterolemic egg, vaccine and method for production,and use
MXPA98007754A (en) Anti-inflammatory composition based on egg, method of insulation and

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080601

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090601

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees
S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350