JPH06103982B2 - 渦電流式減速装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は車両の摩擦ブレーキを補
助する渦電流式減速装置、特に駐車ブレーキを兼ねた構
造により全体が小形になり、変速機の出力軸側の比較的
狭い空間にも取付配置し得る渦電流式減速装置に関する
ものである。

【０００２】

【従来の技術】特開平1-298947号に開示される円板型の
渦電流式減速装置は、変速機の出力回転軸に配設するこ
とにより、車速にほぼ比例した制動力を左右の駆動輪に
与えることができる。ところが、大型車両では変速機の
出力回転軸は運転席の床下に位置し、周辺の取付空間は
ドラム型駐車ブレーキと推進軸とが回転軸に連結される
など種々の制限を受ける。

【０００３】

【発明が解決しようとする問題点】本発明の目的は上述
の問題に鑑み、単独に駐車ブレーキを配設する必要がな
く、したがつて狭い空間にも取付配置が容易な、駐車ブ
レーキを兼ねた渦電流式減速装置を提供することにあ
る。

【０００４】

【問題点を解決するための手段】上記目的を達成するた
めに、本発明の構成は非磁性体からなる固定枠の端壁に
周方向等間隔に設けた多数の開口に強磁性板を嵌合固定
し、固定枠の断面長方形の内空部に内外１対の磁石支持
筒を収容し、各強磁性板に対する極性が周方向に交互に
異なるよう並ぶ永久磁石を、一方の磁石支持筒には固定
する一方、他方の磁石支持筒には磁石の向きを反転可能
に支持し、固定枠の両端壁に対向する１対の制動円板を
軸方向移動可能に回転軸にスプライン嵌合し、１対の制
動円板のボス部の間に制動円板が固定枠から僅かに離れ
た位置と固定枠の端壁に吸着する位置とに制動円板を移
動するカムを配設したものである。

【０００５】

【作用】車両の走行中に渦電流式減速装置として作動す
る時、１対の制動円板はカムにより、内外１対の磁石支
持筒を収容する固定枠の両端壁から僅かに離れた位置に
保持され、一方の磁石支持筒の永久磁石（以下これを単
に磁石という）の向きを逆にすると、制動と非制動の動
作が切り換えられる。

【０００６】一方、駐車中は１対の制動円板を互いに離
しているカムを引込めると、制動円板が回転軸のスプラ
インに沿つて互いに接近可能になる。そこで、一方の磁
石支持筒の磁石の向きを制動位置に切り換えると、磁石
の吸引力が制動円板に作用し、制動円板が固定枠の端壁
に吸着され、回転軸に制動力を与える。

【０００７】

【発明の実施例】図１は本発明による渦電流式減速装置
の正面断面図、図２は同減速装置の磁石支持筒の側面断
面図である。本発明による渦電流式減速装置は、車両用
変速機の出力回転軸２に軸方向移動可能に支持された磁
性体からなる１対の制動円板３と、１対の制動円板３の
間に配設される非磁性体からなる固定枠５と、固定枠５
の内空部に収容した内外１対の磁石支持筒５ｂ，２７ａ
とから構成される。制動円板３は外面に冷却フイン３ｂ
を備えており、またボス部３ａを回転軸２にスプライン
２ａにより支持され、かつ回転軸２に結合した１対の停
止環２ｂにより図示の位置よりも互いに離れることはで
きない。

【０００８】固定枠５は外筒５ａと磁石支持筒５ｂであ
る内筒との両端に環状の端板５ｃを結合して、断面長方
形の内空部を形成する。固定枠５の両端板５ｃは周方向
等間隔に多数の扇形の開口を設けられ、各開口に強磁性
板（ポールピース）６を結合される。実際には、アルミ
ニウムなどから端板５ｃを鋳造する際に、強磁性板６を
鋳込んで一体に構成する。

【０００９】磁石支持筒５ｂは外周壁に、各強磁性板６
に対向する極性が周方向に交互に異なるよう多数の磁石
１３を結合する。磁石支持筒２７ａは各強磁性板６に対
向する磁石１２を、径方向の軸２２により回転可能に支
持する。軸２２はそれぞれ非磁性体からなる筒２７と磁
石支持筒２７ａとに軸受２８，２９により支持され、軸
２２の外端は傘歯車２１を結合する。傘歯車２１に噛み
合う傘歯車２５は、軸受２４により筒２７の外周壁に回
動可能に支持される。傘歯車２５の外周壁に形成した部
分歯車に、固定枠５に支持した小歯車２６が噛み合され
る。小歯車２６は図示してない電動機により駆動され
る。図２に示すように、磁石１２，１３は固定枠５の各
強磁性板６に対向し、かつ強磁性板６に対する極性が周
方向に交互に異なるように配設される。

【００１０】図１，５に示すように、本発明によれば、
１対の制動円板３のボス部３ａの間に板状のカム３１が
突出・引退可能に配設される。このため、固定枠５に箱
形の案内部材３３が結合され、案内部材３３にカム３１
が摺動可能に支持される。カム３１は通常はばね３２の
力により１対のボス部３ａの間へ突出し、１対の制動円
板３を停止環２ｂへ押し付けている。カム３１は公知の
遠隔操作ケーブル３４により、車体の運転席近くに支軸
３５により支持した駐車ブレーキレバー３６に連結され
る。

【００１１】次に、本発明による渦電流式減速装置の作
動について説明する。車両の走行中は、１対の制動円板
３が回転軸２と一緒に回転されるのに対し、図１に示す
ように、非制動時、内外の磁石支持筒５ｂ，２７ａの磁
石１３，１２の強磁性板６に対する極性が互いに逆の配
置では、１対の強磁性板６の間で鎖線で示す短絡的磁気
回路が生じ、制動円板３に磁界を及ぼさない。

【００１２】制動時、電動機により小歯車２６、傘歯車
２５，２１を介して軸２２を半回転すると、図２に示す
ように、内外の磁石１３，１２の各強磁性板６に対する
極性が同じになる。したがつて、図３に示すように、磁
石１３，１２が強磁性板６を経て制動円板３に磁界を及
ぼす。回転する制動円板３が磁界を横切る時、制動円板
３に渦電流が流れ、制動円板３が制動力を受ける。この
時、図３に鎖線で示すように、各磁石１３，１２から強
磁性板６、制動円板３、周方向隣りの強磁性板６、隣り
の磁石１３，１２、反対側の強磁性板６、反対側の制動
円板３、周方向隣りの強磁性板６、もとの磁石１３，１
２へと磁気回路が生じる。

【００１３】車両の停止中は、駐車ブレーキレバー３６
を引き起し、カム３１をばね３２の力に抗して１対のボ
ス部３ａの間から引込め、次いで電動機により小歯車２
６を駆動し、磁石１２の極性を磁石１３と同方向に並べ
て走行中の制動位置（図３の状態）にすると、各磁石１
３，１２の吸引力が制動円板３に作用し、制動円板３が
固定枠５の端板５ｃに密着し、回転軸２に制動力を及ぼ
す。

【００１４】駐車ブレーキを解除する時は、磁石１２を
半回転し、走行中の非制動位置にし、次いで駐車ブレー
キレバー３６を倒し、ケーブル３４によりカム３１を押
し戻すと、１対の制動円板３が互いに離れて停止環２ｂ
へ押し付けられ、制動円板３と固定枠５との間に適正な
隙間が生じる。

【００１５】本発明は上述した形式の渦電流式減速装置
に限定されるものではなく、例えば特開平1-298947号公
報や特願平2-201817号に開示される形式の渦電流式減速
装置にも適用できる。図４に示す実施例は、固定枠５の
内空部に単一の磁石支持筒１５を収容し、磁石支持筒１
５には各強磁性板６に対向し強磁性板６に対する極性が
周方向に交互に異なる磁石１２ａを結合したものであ
り、他の構成については図１の実施例と同様である。

【００１６】車両の走行中の非制動時は、図４に示すよ
うに、強磁性板６に対し磁石１２ａが半ピツチだけずれ
ると、１対の強磁性板６の間で各磁石１２ａは短絡的磁
気回路を形成するが、制動時は１対の強磁性板６の間に
磁石１２ａが並ぶと、周方向に相隣接する１対の磁石１
２ａが、２対の強磁性板６を経て１対の制動円板３との
間に磁気回路を形成し、制動円板３に制動力を及ぼす。
駐車ブレーキの作動と解除の動作は、図１に示す実施例
と同様である。

【００１７】

【発明の効果】本発明は上述のように、車両の走行中は
回転する制動円板が磁石支持筒の磁石からの磁界を横切
る時、渦電流に基づく制動力を発生するだけでなく、停
車中は制動円板を固定枠の端壁へ摩擦係合させると駐車
ブレーキとして作用するので、従来のように渦電流式減
速装置と別のドラム型駐車ブレーキとを併設するのに比
べて無駄がなく、取付空間にあまり余裕がない変速機の
出力軸への取付配置が可能になる。

【００１８】駐車ブレーキ作動中は、磁石の吸引力によ
り制動円板が固定枠の端壁へ摩擦係合されるから、安定
した制動力が得られ、従来のようにケーブルが弛むなど
して制動力が弱まることはない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る渦電流式減速装置の正面断面図で
ある。

【図２】同渦電流式減速装置の磁石支持筒の側面断面図
である。

【図３】渦電流式減速装置の制動時の状態を周方向に展
開して示す平面断面図である。

【図４】本発明の一部変更実施例に係る渦電流式減速装
置の非制動時の状態を周方向に展開して示す平面断面図
である。

【図５】カム支持部の側面断面図である。

【符号の説明】

２：回転軸 ２ａ：ボス部 ３：制動円板 ５：固定枠
５ｂ，２７ａ：磁石支持筒 ６：強磁性板 １２，１
３：永久磁石 ３１：カム

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】非磁性体からなる固定枠の端壁に周方向等
   間隔に設けた多数の開口に強磁性板を嵌合固定し、固定
   枠の断面長方形の内空部に内外１対の磁石支持筒を収容
   し、各強磁性板に対する極性が周方向に交互に異なるよ
   う並ぶ永久磁石を、一方の磁石支持筒には固定する一
   方、他方の磁石支持筒には磁石の向きを反転可能に支持
   し、固定枠の両端壁に対向する１対の制動円板を軸方向
   移動可能に回転軸にスプライン嵌合し、１対の制動円板
   のボス部の間に制動円板が固定枠から僅かに離れた位置
   と固定枠の端壁に吸着する位置とに制動円板を移動する
   カムを配設したことを特徴とする、渦電流式減速装置。
2. 【請求項２】非磁性体からなる固定枠の端壁に周方向等
   間隔に設けた多数の開口に強磁性板を嵌合固定し、固定
   枠の断面長方形の内空部に磁石支持筒を回動可能に収容
   し、各強磁性板に対する極性が周方向に異なるよう並ぶ
   永久磁石を磁石支持筒に結合し、固定枠の両端壁に対向
   する１対の制動円板を軸方向移動可能に回転軸にスプラ
   イン嵌合し、１対の制動円板のボス部の間に制動円板が
   固定枠から僅かに離れた位置と固定枠の端壁に吸着する
   位置とに制動円板を移動するカムを配設したことを特徴
   とする、渦電流式減速装置。