JPH0610354B2 - セラミツク被覆耐熱部材およびその製造方法 - Google Patents

セラミツク被覆耐熱部材およびその製造方法

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JPH0610354B2
JPH0610354B2 JP61052484A JP5248486A JPH0610354B2 JP H0610354 B2 JPH0610354 B2 JP H0610354B2 JP 61052484 A JP61052484 A JP 61052484A JP 5248486 A JP5248486 A JP 5248486A JP H0610354 B2 JPH0610354 B2 JP H0610354B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は高温あるいは高温腐蝕環境下で用いられる耐熱
部材及びその製造方法に関する。
〔従来の技術〕
発電用ガスタービンプラントの発電効率を向上すること
を目的として、ガスタービンの高温化技術が検討されて
いる。このような高温化に伴なつて、ガスタービン部材
の耐熱温度の向上が望まれている。Ni基あるいはCo
基等の合金材料の開発により、これら耐熱合金の耐熱温
度が向上してきているが、現状では850℃程度で飽和
している。一方、セラミツク材料は耐熱性の点では金属
材料に比べで優れているが、構造材として用いるには靭
性等の問題がある。従つて、このような部材の高温化に
対処するために、部材が高温にならないような方法の検
討が盛んに行なわれている。このような方法として、部
材の冷却方法が各種検討されている。又、もう一つの方
法として熱伝導率の小さいセラミツクを、金属部材の表
面にコーテイングする方法がある。このようなコーテイ
ングは熱遮蔽コーテイング(Thermal Barrier Coating
以下TBCと略す)と呼ばれる。TBCは各種の冷却方
法と組み合わせて用いることにより、その効果は大きく
なる。一例として、基材である金属部材の温度をTBC
を施さないものに比べで50〜100℃低減できるとい
う報告もある、このような方法を用いることによつて、
高温ガスタービン等の構成部材の信頼性を向上させるこ
とができる。ところで、TBCの技術的課題としては、
TBCは基材を構成する耐熱合金と物性値が異なるセラ
ミツク被覆層1を組み合せたものであるため、基材とセ
ラミツク被覆層との密着機構及びその信頼性の問題があ
る。特に、ガスタービン等では起動停止等の熱サイクル
により、セラミツク被覆層の剥離,脱落等の損傷が生じ
る。そこで、このような点を解決する方法として各種の
手段が用いられている。主な方法としては、例えば、特
開昭55−112804号公報に見られる如くセラミツク被覆層
と基材との間に、金属材料からなる結合層を設けるもの
がある。その結合層は基材とセラミツク被覆層の物性値
の相異を緩和することを目的としている。この場合、セ
ラミツク被覆層と結合層との密着機構は機械的な結合に
すぎずその強度は2〜5kg/mmである。更に、結合層
の他に、結合層とセラミツク被覆層の間に、結合層を構
成する合金材とセラミツク被覆層を構成する材料との混
合物からなる層を形成したものがある。この方法はセラ
ミツク被覆層と結合層との物性値の相異を緩和すること
を目的としたものであるが、この場合も、セラミツクと
合金材流との結合状態は機械的な結合にすぎない。従つ
て、熱サイクル等により、TBCに大きな熱応力が生じ
た場合、結合力の弱い部分から剥離,脱落等の損傷が生
じることになる。
更に、このようなTBCに用いるセラミツク被覆層,結
合層及び中間層は、主にプラズマ溶射法で形成される。
その理由は被覆層形成速度が速く経済性に優れているこ
との他に、セラミツク被覆層に適用した場合に溶射被膜
の多孔質な構造を利用することにある。すなわち、空孔
や微細なクラツクを形成することにより、空孔やクラツ
クを、熱応力の緩和作用に利用している。このように、
プラズマ溶射で形成したセラミツク溶射被膜は、スパツ
タリング等の方法で形成した緻密なセラミツク被覆層に
比べ熱サイクル等の作用による熱衝撃性に優れている。
しかし、TBCは高温度で、燃料中の不純物等による高
温腐蝕条件下で用いられるため、プラズマ溶射により多
孔質構造のセラミツク被覆層を形成したTBCでは、結
合層あるいは中間層を形成する合金材料の高温酸化、高
温腐食の問題がある。合金材料は高温耐酸化、耐食性に
優れた成分であるが、それらの合金被覆層の形成方法に
より、必ずしも、本来の合金材料で予想される高温耐酸
化性、耐食性を発揮するものではないと考えられる。本
発明者らの検討によればTBCを高温酸化或いは高温腐
食環境下にさらした後、熱サイクル試験を行なつた結
果、その耐久性は著しく低下することが判明した。この
場合、セラミツク材料と合金材料との結合が本来機械的
な結合でその強度が弱いことに加え、更に、その境界部
分の合金材料の表面が酸化あるいは腐蝕されその密着力
が更に低下したためと考えられる。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従来のTBCでは、セラミツクと合金材料の結合力が低
いということ、更に、高温酸化、高温腐蝕等により合金
材の表面が変化しセラミツク合金材料の結合力が更に低
下すると考えられる。このような問題点はTBCの信頼
性を大巾に低下させるものである。プラズマ溶射法にお
いても、大気中で溶射を行なう他に、プラズマアークの
周囲の雰囲気を制御し更にその雰囲気圧力をも制御する
減圧雰囲気中溶射が行なわれている。このような減圧雰
囲気中溶射によれば、溶射中の溶射粒子が酸素等によつ
て汚染されないので、非常に良好な金属合金結合層が形
成できる。このような金属合金結合層は高温ガスタービ
ン部材の高温酸化、高温腐食を防止する被覆層として利
用されている。そこで、本発明者らは以上の点にかんが
みて、TBCの信頼性を向上させることを目的として、
セラミツクと合金材料の結合機構の強化という点に注目
し各種の検討を行なつた。
本発明者らは、従来用いられている各種の材料によるT
BCについて検討した。例えば、ZrO系セラミツク
被覆層と金属合金材料からなる結合層とから成るTBC
を用い、TBCの高温酸化試験を実施した。この試験は
高温条件下で使用されるガスタービン部品あるいは局部
的に高温になるガスタービン部品へのTBCの施工を考
慮したものである。その結果、従来のTBCはZrO
系被覆層と結合層の界面の酸化が著しく進行することが
判つた。そして、試験前後のTBCの密着力を判定した
結果、1000℃,500時間の酸化試験で、ZrO
系被覆層と結合層との界面の密着力は1/2〜1/4に
低下することがわかつた。このような密着力の低下は、
ZrO系被覆層の厚さ、気孔率、更にZrOへの添
加剤の種類及び量によつて若干の相異が認められるが、
いずれもその低下は著しい。又、結合層の合金材料の成
分に関しても若干の相異があるが、いずれも低下してい
た。このような界面の密着力の低下は酸化試験の温度が
高くなるほど或いは試験時間の増加とともに著しくな
る。そして、1100℃、100時間の試験では一部、界
面からの剥離損傷が認められるものがあつた。一方、金
属合金材料とZrO系材料との混合物を中間層として
用いたTBCでは、酸化試験による密着力の低下は更に
著しいものであつた。このような結果は、本発明者らが
実施した高温熱サイクル試験の結果とも対応している。
すなわち、970℃,1020℃,1070℃,112
0℃のそれぞれの温度で30分間保持、空冷により15
0℃までの冷却を繰り返す試験においても試験温度が高
くなるに従つて、TBCの損傷が生じるまでの繰り返し
数は著しく低下していた。このような従来のTBCの問
題は、ガスタービンの高温化に対処した信頼性の優れた
TBCを得る上で重大な障害となる。すなわち、ガスタ
ービン部品の基材温度が高くなるのを防止し、その温度
を低減化することを目的としてTBCを実施するに際し
て、従来のTBCを施した部品ではTBCの高温耐久性
が低いので、部品の基材温度の低減を十分発揮すること
は困難である。
そこで、本発明者らは従来のTBCを施工したガスター
ビン部品に代り、高温稼動条件下でもガスタービン部品
の基材温度の低減化を十分発揮しうる高温耐久性に優れ
たTBCを施工したガスタービン部品について検討し
た。
すなわち、本発明者らは以上のような点を考慮して、ガ
スタービンの高温化を達成しうるに十分なTBCを得る
ことを目的として各種の検討を行ない、耐久性に優れた
TBCを有したガスタービン部品を発明するに至つた。
本発明の目的は、TBCの信頼性を向上させることにあ
る。すなわち、セラミツク材料と基材との結合力が長期
間にわたつて安定しており、クラツクや剥離の起りにく
いTBCを提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、金属材料より成る基材上に、窒化物,酸化
物,炭化物より選ばれた化合物よりなる被覆層を形成
し、その上にNiとCoの一方を主成分としCrとAl
を含み基材よりも高温耐酸化、高温耐蝕性に優れた合金
の結合層を形成し、前記結合層上にセラミツク被覆層を
形成し、更に前記結合層とセラミツク被覆管との境界に
予めAlを主成分とする酸化物層を形成したことを特徴
とする。
基材は、Niを35〜61重量%、Coを1〜3重量
%、Feを14〜27重量%含むNi基合金が望まし
い。
結合層は、Ni又はCoを主成分とし、Crを10〜3
0重量%及びAlを5〜30重量%含む合金が望まし
い。これに更にHf,Ta,Y,Si,Zrの1つ以上
を0.1〜5重量%含むと更に望ましい。
セラミツク層は、ZrO2を主成分とし、CaOとMgO
とY23の1つを含むものが望ましい。CaOの量は4
〜10重量%、MgOの量は8〜24重量%、Y23
量は4〜20重量%が望ましい。CaOとMgOとY2
3の2つ以上を複合添加することも可能である。
〔作用〕
本発明によれば、Alを主成分とする酸化物層が、高温
雰囲気中でも安定であり、これにより合金結合層の酸化
の進行を防止し、しかもセラミツク被覆層との結合強度
も強いため、長期間の使用に対してもセラミツク被覆層
のクラツクの発生、剥離を防止できる。更に、結合層と
基材の境界に熱的に安定な化合物から成る境界層を設け
ることにより、長期間の使用による結合層中の合金元素
の基材への拡散を防止し、結合層の変質によるTBCの
耐久性の低下を防止できる。
〔実施例〕
以下、本発明の詳細について説明する。先ず、従来のT
BCの問題点について詳細に検討し、その原因について
調べた。各種の酸化試験を実施したTBCについて、そ
の断面組織の観察を行なつた。その結果ZrO系被覆
層と結合層との界面部分に欠陥が生じていた。結合層と
ZrO系被覆層との間に合金材料とZrO系材料と
の混合層を形成したTBC酸化試験結果では、中間層の
合金材料は著しく酸化していた。これら現象は高温熱サ
イクル試験でも認められる。すなわち、TBCでは、熱
応力を緩和する多孔質あるいは微細クラツクを有した構
造のZrO系被覆層を通じて結合層或いは中間層の酸
化という問題が生じる。このような酸化は、界面の密着
力を著しく低下させ、熱応力等によつてその界面部から
TBCに剥離損傷が生じることになる。このような界面
の酸化の原因としては、高温状態でZrO系材料が半
導体となり、酸素の移動を容易にし、境界面部の酸素分
圧の増加を生じることも一つの重要な要因であると考え
られる。このような酸化は例えば中間層を形成した場
合、界面の面積の増加を招くのでより促進すると考えら
れる。従来のTBCについて界面の状態を分析した結
果、界面にはCrを主成分とする酸化物が形成されてい
た。このようなCr系酸化物は高温で不安定であるた
め、その酸化物を生じた部分から損傷が生じていた。従
つて、高温ガスタービン用TBCにおいては、界面での
酸化というものを十分考慮することが必要である。本発
明者らは、このような観点から、各種の方法について検
討した結果、界面部にAlを主成分とする緻密な構造の
酸化物薄膜を形成することが有望であることを見い出し
た。Al系酸化物を高温で安定であり、かつ、ZrO
系材料のように高温で半導体にもならない。従つて、A
l系酸化物の薄膜は内部酸化を防止するバリヤーとして
有効なものである。一方、このようなAl系酸化物層の
厚さは、厚い場合Al系酸化物の物性値を反映した新た
な中間層となる。その結果、熱応力等によりAl系酸化
物層から損傷を生じることになる。一方、薄すぎる場合
は、内部酸化防止作用を十分満足するバリヤーとなり得
ない。従つて、その厚さは0.1μm以上、20μm以
下であることが望ましい。このような範囲のAl系酸化
物層は結合層の内部酸化を防止するバリヤー層として十
分なものになる。一方、このようなAl系酸化物の薄膜
の他の重要な作用として、ZrO系セラミツクと結合
層との密着力を向上させることを見い出した。すなわ
ち、従来のTBCがZrO系セラミツクと結合層を構成
する金属合金とが機械的に結合していたのに比べ、本発
明者らが見い出したAl系酸化物の薄膜を介してのZr
系セラミツクと結合層との密着は、Al系酸化物と
ZrO系セラミツクという酸化物どうしの界面と、結
合層を構成する金属合金のAl成分から生じるAl系酸
化物というものになり、その密着機構は非常に強固なも
のになる。一例として、このようなAl系酸化物の薄膜
を有するTBCの1000℃,500時間の酸化試験に
おいて、結合層とZrO系セラミツク被覆層の密着力
はほとんど低下せず7kg/mm以上である。
次に結合層に注目した場合、高温・長時間の使用条件下
では、結合層を構成する合金中の元素及び基材を構成す
る合金中の元素の拡散が生じる。このような拡散は基材
に比べ厚さの薄い結合層では重大な問題となる。すなわ
ち、高温耐酸性、高温耐食性等を満足する組成範囲の合
金成分中から高温・長時間の使用により例えばCr,A
l等の元素が基材へ拡散することにより、結合層の耐久
性は低下する。このような問題点を解決する方法とし
て、本発明者らの検討結果、熱的に安定な化合物をバリ
ヤーとして用いることが有効であることが判明した。す
なわち、結合層と基材との境界に熱的に安定な化合物か
ら成る境界層を設ける。熱的に安定な化合物としては、
酸化物,炭化物,窒化物が適している。又、この境界層
の厚さは重要な要因であり、0.1μm以下の場合、拡
散防止用のバリヤーとして有効ではない。又、20μm
以上の場合、化合物と基材或いは結合層合金との物性値
(熱膨張係数)の相異により熱応力が生じ、むしろTB
Cとしての耐久性は低下する。
第1図及び第2図は本発明のTBCを示したものであ
る。第1図は基材3と結合層2の境界の境界層5が連続
的であるもので、第2図は不連続的であるものである。
符号1はセラミツク被覆層、4はAl酸化物層である。
後者の場合、合金元素の拡散を局部的に防止するととも
に、一部においては拡散による結合層と基材の密着力の
強化の両者の効果がほぼ達成される。一方、前者の場
合、合金元素の拡散は完全に防止できる。従つて、いず
れの構造のTBCにおいても、従来のTBCに比べ、高
温で長時間の使用により、結合層の変化を防止でき、T
BCの耐久性の向上が可能になる。なお、本発明のTB
Cの適用方法として、前者の場合は高温条件下での静止
体部品に、後者の場合、回転体部品等に用いるのが望ま
しい。このような本発明のTBCの効果を検証するため
に、基材の表面に本発明の1要素である化合物から成る
境界層を設け、その上に結合層を形成した状態の試験片
を作製し、高温酸化試験と高温腐食試験を組み合せた試
験を実施した。表1はその結果で、比較のため、境界層
を有しない従来のものも評価した。試験方法は、高温酸
化試験は大気中で1000℃,500時間の加熱で、そ
れに引き続く高温腐食試験は、25%NaCl−75%
Na2SO4溶融塩を塗布し850℃で300時間保持し
て行つた。表1中No.101,No.103〜108は本発
明の例でNo.102は従来のものの結果である。表1の
結果から、本発明の効果は明らかである。
次に表1中のNo.101と同様の試験片の上にセラミツ
ク被覆層を形成した本発明のTBCに関し、以下の様な
試験を実施した。すなわち1030℃,1070℃,1
120℃,1170℃のそれぞれの温度で30分間保
持、空冷による150℃までの冷却を繰り返す試験を行
つた。結果は表2の通りである。
表2中試料No.201〜204は従来のTBC、No.20
5〜208は本発明のTBCの結果である。その結果、
本発明のTBCは従来のTBCに比べTBCが損傷にい
たるまでの繰り返し数は約3〜7倍であつた。又、試験
温度が高くなるに従つて、その効果は顕著になる。この
ように、本発明者らが見い出した、Al系酸化物の薄膜
を有するTBCは、高温条件下で特に効果が顕著なもので
ある。このようなTBCを施したガスタービン部品は高
温条件下でも安定なもとのなりうる。更に、Al系酸化
物の薄膜を介して接合したZrO系被覆層を有するT
BCでは、ZrO系被覆層の密着力が7kg/mm以上
である。この密着力は従来のTBCのZrO系被覆層
の密着力が3〜5kg/mm程度であつたのに比べ非常に
大きい。従つて、燃焼器部品等で生じる燃焼振動による
TBCの損傷を防止することが可能である。そこで、こ
のようなTBCを施したことによる効果について検討し
た。ガスタービン部品において燃焼器のように基材温度
が高くなる部品においては、高温の燃焼ガスにさらされ
る部分に上記のような高温耐久性に優れたTBCを施工
することにより、基材の温度低減を安定して得ることが
可能である。一例として、円筒形状の燃焼器に対して、
高温ガスにさらされる円筒の内面に上記のようなAl系
酸化物の薄膜を有するTBCを施した燃焼器部品は、従
来のTBCを施した部品に比べ、TBCが損傷に至るま
での稼動時間は約3倍になつていた。これは、Al系酸
化物の薄膜を有するTBCが耐久性特に高温条件下での
耐久性に優れているためである。従つて、TBCを施す
ことによつて得られる燃焼器の基材温度の低減効果は安
定して維持される。一方、従来のTBCを施した燃焼器
では、短時間でTBCが損傷し、特に基材温度の高い部
分のTBCの損傷が著しくなつてしまう。その結果TB
Cによる基材の温度低減の効果は消失し、基材の温度が
高くなり、部品の損傷に至つてしまう。更に、燃焼器に
おいて、基材の強度、あるいは燃焼器の固定等の構造上
から圧縮空気等による冷却が十分に行なえない部分は、
特に基材の温度上昇が生じ易くなつている。このような
部分ではTBCの役割は特に重要で、TBCの熱遮蔽効果
による基材の温度低減の他に、熱伝導率の小さいセラミ
ツクス被覆層を有するTBCは、局部的な基材の温度上
昇を防止し、基材の温度を均一化させる作用も有してい
る。その結果、TBCは、構造上或いは燃焼条件等のた
め部品の局部的な温度上昇を防止し、基材の局部的な温
度上昇による部品の変形或いは損傷を防止する上で非常
に重要なものになる。しかるに、従来のTBCは、特に
高温での耐久性に問題があり、このような基材の温度が
局部的に高くなる部品においては、その部分のTBCは短
時間で損傷し易い。燃焼器では燃焼振動により基材が振
動するので高温条件下でセラミツク被覆管の密着力の低
下したTBCは更に損傷を生じ易くなる。そのため、最
もTBCの効果が必要である部分に対して、十分な効果
を発揮することができなくなる。そして、TBCの損傷
した部分では他のTBCが健全である部分に比べ基材の
温度はむしろ高くなる可能性もありうる。例えば燃焼器
のように火炎に接している部品ではTBCはセラミツク
被覆層のふく射の効果により火炎から基材への入熱量を
低減する作用もある。従つてTBCの損傷した部分の基材
温度は、TBCを施工しない場合に比べて高くなつてし
まうこともありうる。その結果、従来のTBCを施工し
た燃焼器は、TBCの効果を十分に発揮しうることは困
難であり、むしろ、基材の温度が高い部分に対しては、
従来のTBCを施工した部品では、部品の信頼性を損う
こともありうる。一方、Al系酸化物の薄膜を有するT
BCを施工した本発明のガスタービン部品では、TBC
が特に高温での耐久性に優れたものであるため、基材の
温度が高くる部分でのTBCの損傷は生じ難い。従つ
て、Al系酸化物の薄膜を有する本発明のガスタービン
部品は、基材の温度が局部的に高くなつても、TBCに
よる熱遮蔽効果が十分維持され、かつ、TBCによる局
部的な温度上昇を緩和する作用も発揮される。その結
果、本発明のガスタービン部品は信頼性の高いものにな
る。また、基材の温度が局部的に高くなる部品において
は、その部品に、Al系酸化物を有するTBCを施工す
ることも有効である。すなわち、TBCの熱遮蔽効果に
より、局部的な温度上昇を防止することができるからで
ある。更に、他の部分にTBCが無い場合、TBCのセ
ラミツク被覆層のふく射の効果により、TBCを施工し
た部分の基材への入熱量を低くすることができ、他のT
BCの無い部分との入熱量のバランスをとり、基材の局
部的な温度上昇を防止することも期待できうる。このよ
うに、Al系酸化物の薄膜を有するTBCはガスタービ
ン部品に高温にさらされる部分の全面あるいは一部分に
施工されることによつて、いずれの場合もその効果を十
分発揮しうるものである。この結果、ガスタービン部品
は信頼性の高いものとなり、ガスタービンの高温化を可
能にするものになりうる。以下、本発明について実施例
により詳細に説明する。
実施例1 基材としてNi基合金であるハステロイ−X(22重量
%Cr−1.5重量%Co−9重量%Mo−19重量%
Fe−0.1重量%C−残部Ni)を用い、その表面を
脱脂洗浄後、スチール製のグリツドを用いてブラスチン
グした。しかる後、前述のブラスチング処理を施した基
材表面上にAl23被覆層を形成した。形成方法はAl
2O3製ターゲツトを用いたスパツタリング法である。ス
パツタリングの際の印加電圧は1kWであり、10-2
orrのAr雰囲気中で2時間実施した。形成したAl2
3被覆層の厚さは2μmである。
なお、この場合、被処理物とスパツタリング用ターゲツ
トとは常にほぼ対向するように被処理物を移動し、被処
理物に対して常にほぼ直角の角度でスパツタリングを行
うようにした。
その結果、基材のブラスト面に対しほぼ均一にAl23
の被覆層を形成することができた。しかる後、プラズマ
溶射を行い、10重量%Ni−25重量%Cr−7重量
%Al−0.6重量%Y−5重量%Ta−残部Coから
なる合金材料の被覆層を形成した。プラズマ溶射は20
0Torrの圧力のAr中で行なつた。この場合プラズマ溶
射を行う雰囲気中の酸素分圧は、酸素センサーで測定し
た結果10-3気圧以下であつた。プラズマの出力は40
kWである。このような条件で厚さ0.01mmのCo,N
i,Cr,Al,Y合金被覆層を形成し、TBCの結合
層とした。しかる後、直ちに前述の結合層の上にZrO
−8重量%Y23被覆層を形成した。溶射条件はプラ
ズマ出力50kWで、大気中溶射である。ZrO2−8
%Y23被覆層の厚さは0.3mmである。その後、1060
℃10時間の真空中加熱処理を行い結合層と基材との拡
散処理を行つた。なお、比較のため、従来法によつて本
発明のTBCと同じ材料を用いて、同じ厚さの被覆層か
らなるTBCを作成した。従来法として前述の合金材料
を大気中でArガスを使用して溶射し、次いで前述と同
様にZrO−8%Y23を被覆した。次に、本発明の
TBCの効果を確認するため、以下に述べる各種の試験
を実施した。先ず、各種の温度で酸化試験を行ない、試
験後の外観観察及び断面組織観察更に密着力試験を実施
した。表3は外観観察及び密着力試験の結果である。
表3中No.1〜No.6は従来のTBCの効果、No.7〜No.
11は本実施例で作成した本発明のTBCの結果であ
る。すなわち、従来のTBCでは1070℃以上の温度(1
00時間保持)で、ZrO−8%Y23被覆層が剥離
しTBCは損傷した。一方、本発明のNo.7〜No.11の
TBCは外観的に何ら損傷は認められない。一方、酸化
試験後のTBCの密着力試験の結果も、TBCが損傷し
ていないNo.1〜No.6の従来のTBCは、その密着力は
2〜5kg/mmで、酸化試験温度の増加とともに密着力
は低下している。又、密着力試験での破断部分は結合層
とZrO−8%Y23被覆層との境界部である。一
方、No.7〜No.11に示した本発明のTBCではいずれ
の酸化試験条件下でもTBCの密着力の低下は認められ
ず、接着剤(接着剤の密着強度7kg/mm)を用いた密
着力試験法の限界値である7kg/mm以上の値であつ
た。従つて、試験後の破断部はいずれも接着剤の部分で
ある。次に、上記酸化試験後の試験片を用いて熱サイク
ル試験を実施した。試験条件は750℃、15分間保
持、20〜25℃水中、15秒間保持の繰り返しであ
る。表3はその結果である。
表4中の試料はそれぞれの酸化試験を実施した後の試料
である。表4中No.1〜No.3の従来のTBCは200〜5
00回の熱サイクル試験でZrO−8%Y23被覆層
が剥離しTBCが損傷した。一方、表4中No.7〜No.1
1の本発明のTBCは、1400〜1700回の熱サイ
クルの繰り返し後も損傷が無く、最高1700回の熱サ
イクル試験でTBCの損傷が認められた。このように本
発明のTBCは従来のTBCに比べ高温耐酸化性、ある
いは耐熱衝撃性に優れた耐久性に富むTBCである。
実施例2 実施例1と同様の材料を用い、実施例1と同様の条件で
TBCを作成した。なお、本実施例ではブラスチングし
た基材表面にAl23被覆層を形成する際、基材表面に
網目状のマスチングをかけたスパツタリングを実施し
た。マスキング材はSUS製で50メツシユの網目を有
するものである。このようなマスキングを施して、実施
例1と同様の条件でスパツタリングを行つた。その結
果、マスキング材を取り除いた後は、基材表面にはAl
23の被覆された部分とされていない部分がほぼ均一に
分布したものが得られた。
Al23被覆層の厚さは2μmである。しかる後、実施
例1と同様の材料を用い、実施例1と同様の条件でTB
Cを作成した。しかる後、1060℃、3時間の真空中加熱
を行ない。Co,Ni,Cr,Al,Y被覆層から成る
被覆層から成る結合層と基材との拡散処理を行なつた。
更に、その後、1000℃、15時間の大気中加熱処理
を行なつた。このようにして作製した本発明のTBCは
ZrO−8%Y23被覆層とCo,Ni,Cr,A
l,Y被覆層との界面部に約5μmの厚さの境界層がほ
ぼ均一に形成されていた。その境界層はEPMA分析或いは
X線回折の結果、Al系酸化物を主成分とするものであ
ることが判つた。なお、比較のため、本発明のTBCと
同じ材料を用いて、従来方法でTBCを作成し、更に、
そのTBCを本発明のTBCと同じ真空中拡散処理及び
大気中加熱処理を行なつた。表4中No.301及びNo.30
2はこのようにして作成した本発明のTBC及び比較の
ための従来のTBCを用いて、実施例1と同様の熱サイ
クル試験を行なつた結果である。表4中No.301の従
来のTBCは約500回の繰り返しでZrO−8%Y
23被覆層が剥離した。一方、表4中No.302の本発
明のTBCは約1500回の繰り返しで損傷が生じた。この
ように、本発明のTBCは、従来のTBCに比べ約3倍
の耐久性がある。
以上実施例について説明してきたが被覆層の厚さに関し
ていうと、TBCの遮熱効果と耐久性の点を考慮した場
合、結合層は0.03mm以上0.5mm以下、ZrO
被覆層は0.05mm以上0.8mm以下が好ましい。
〔発明の効果〕
以上説明したように本発明によれば、結合層の酸化腐蝕
の進行を防止できるので、セラミツク被覆層の結合強度
を長期間にわたり、安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図は本発明の一実施例を示すセラミツ
ク被覆耐熱部材の断面図である。 1…セラミツク被覆層、2…結合層、3…基材、4…A
l酸化物層、5…境界層。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ni,Co,Feの少なくとも1種を主成
    分とする基材上にNiとCoの一方を主成分としCrと
    Alを含み前記基材よりも高温耐酸化,高温耐蝕性に優
    れた合金の結合層を有し、前記結合層上にZrOを主
    成分とするセラミツクから成る被覆層を有する耐熱部材
    において、前記結合層と前記セラミツク被覆層の境界に
    予めAlを主成分とする酸化物層を形成し、かつ、前記
    結合層と前記基材との境界に化合物からなる境界層を有
    することを特徴とするセラミツク被覆耐熱部材。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項において、前記化合
    物からなる境界層が酸化物,窒化物,炭化物のいずれか
    1つであることを特徴とするセラミツク被覆耐熱部材。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項において、前記化合
    物からなる境界層の厚さが0.1μm〜20μmである
    ことを特徴とするセラミツク被覆耐熱部材。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲第1項において、前記セラ
    ミツク被覆層を構成する材料が、ZrOを主成分と
    し、CaO,MgO,Y23のいずれか1つを含むもの
    であることを特徴とするセラミツク被覆耐熱部材。
  5. 【請求項5】特許請求の範囲第1項において、前記結合
    層を構成する材料が、CoあるいはNiのいずれか1つ
    もしくはそれらの組み合せに、Crを10〜30重量%
    及びAlを5〜30重量%含み、更にHf,Ta,Y,
    Si,Zrの1つ以上を0.1〜5重量%含む合金より
    なることを特徴とするセラミツク被覆耐熱部材。
  6. 【請求項6】特許請求の範囲第1項において、前記Al
    を主成分とする酸化物層の厚さが0.1μm〜20μm
    であることを特徴とするセラミツク被覆耐熱部材。
  7. 【請求項7】特許請求の範囲第1項において、前記結合
    層の厚さが0.03mm〜0.5mm、前記セラミツク被覆
    層の厚さが0.05mm〜0.8mmであることを特徴とす
    るセラミツク被覆耐熱部材。
  8. 【請求項8】Ni,Co,Feの少なくとも1つを主成
    分として構成された基材の表面に、酸化物と窒化物と炭
    化物のいずれかの化合物からなる被覆層を形成する工程
    と、NiとCoの一方を主成分としCrとAlを含み前
    記基材よりも高温耐酸化性、高温耐食性に優れた合金の
    結合層を形成する工程と、前記結合層の表面にセラミツ
    クからなる被覆層を形成する工程と、前記結合層と前記
    セラミツク被覆層の境界にAlを主成分とする酸化物層
    を形成する熱処理工程とを含むことを特徴とするセラミ
    ツク被覆耐熱部材の製造方法。
  9. 【請求項9】特許請求の範囲第8項において、前記結合
    層を、酸素分圧10-3気圧以下の雰囲気中でプラズマ溶
    射にて形成することを特徴とするセラミツク被覆耐熱部
    材の製造方法。
  10. 【請求項10】特許請求の範囲第8項において、前記A
    lを主成分とする酸化物層を形成する工程は、600℃〜
    1200℃の温度範囲で1時間〜200時間、大気中で
    加熱処理する工程を含むことを特徴とするセラミツク被
    覆耐熱部材の製造方法。
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