JPH0592280A - 特殊クラツド鋼板、特殊クラツド鋼板の製造方法および特殊クラツド鋼板製金庫 - Google Patents
特殊クラツド鋼板、特殊クラツド鋼板の製造方法および特殊クラツド鋼板製金庫Info
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- JPH0592280A JPH0592280A JP27045691A JP27045691A JPH0592280A JP H0592280 A JPH0592280 A JP H0592280A JP 27045691 A JP27045691 A JP 27045691A JP 27045691 A JP27045691 A JP 27045691A JP H0592280 A JPH0592280 A JP H0592280A
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- steel
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 小型金庫に適し、かつ防犯性能に優れた材
料を提供する。 【構成】 難溶断性を有するオ−ステナイト系ステン
レス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加工
性を有する低合金工具鋼とが接合されたクラッド鋼板。 【効果】 難溶断性と難ドリル加工性の両特性を兼ね
備えた材料が得られ、防犯用の鋼板として優れた機能を
得ることができる。また、鋼板の薄肉化が可能となり、
金庫の小型化が可能となる。
料を提供する。 【構成】 難溶断性を有するオ−ステナイト系ステン
レス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加工
性を有する低合金工具鋼とが接合されたクラッド鋼板。 【効果】 難溶断性と難ドリル加工性の両特性を兼ね
備えた材料が得られ、防犯用の鋼板として優れた機能を
得ることができる。また、鋼板の薄肉化が可能となり、
金庫の小型化が可能となる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、主として防犯用の材
料として用いられるものであり、特に金庫などの扉や外
壁に適した特殊クラッド鋼板およびこの特殊クラッド鋼
板の製造方法ならびにこの特殊クラッド鋼板を用いた金
庫に関するものである。
料として用いられるものであり、特に金庫などの扉や外
壁に適した特殊クラッド鋼板およびこの特殊クラッド鋼
板の製造方法ならびにこの特殊クラッド鋼板を用いた金
庫に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、金庫の扉や外壁に用いられる材料
には、軟鋼材が用いられており、焼入れによって硬度を
高めることにより、防犯性を高めている。このような軟
鋼材は、十分な厚みを持たせることにより、窃盗に際し
てドリルやガス溶断によっても容易に穴が開けられたり
切断がなされることがなく、金庫が破壊されるまでに十
分な時間を要することによって、安全性を得ている。
には、軟鋼材が用いられており、焼入れによって硬度を
高めることにより、防犯性を高めている。このような軟
鋼材は、十分な厚みを持たせることにより、窃盗に際し
てドリルやガス溶断によっても容易に穴が開けられたり
切断がなされることがなく、金庫が破壊されるまでに十
分な時間を要することによって、安全性を得ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、金庫を小型
化したり、軽量化する場合には、扉や外壁に用いる材料
も薄板化が必要とされる。しかし、従来の材料である軟
鋼材を薄板化すると、ドリルによる加工や、ガスの溶断
によって容易に穴開けや、切断が可能となり、防犯用の
材料としては、その性能は不十分である。このため、強
く焼入れを行って硬度を増すことも考えられるが、上記
性能の向上は僅かであるばかりでなく、焼き入れによる
ひずみにより曲りが生じやすく、また、靱性が低下する
ので、機械加工時や曲げ矯正時に割れが発生しやすいと
いう問題がある。この発明は、上記課題を解決すること
を基本的な目的とし、薄板化してもガス溶断およびドリ
ル加工に対して優れた抵抗性を有し、しかも曲げ矯正も
容易である特殊クラッド鋼板、特殊クラッド鋼板の製造
方法、特殊クラッド鋼板製金庫を提供するものである。
化したり、軽量化する場合には、扉や外壁に用いる材料
も薄板化が必要とされる。しかし、従来の材料である軟
鋼材を薄板化すると、ドリルによる加工や、ガスの溶断
によって容易に穴開けや、切断が可能となり、防犯用の
材料としては、その性能は不十分である。このため、強
く焼入れを行って硬度を増すことも考えられるが、上記
性能の向上は僅かであるばかりでなく、焼き入れによる
ひずみにより曲りが生じやすく、また、靱性が低下する
ので、機械加工時や曲げ矯正時に割れが発生しやすいと
いう問題がある。この発明は、上記課題を解決すること
を基本的な目的とし、薄板化してもガス溶断およびドリ
ル加工に対して優れた抵抗性を有し、しかも曲げ矯正も
容易である特殊クラッド鋼板、特殊クラッド鋼板の製造
方法、特殊クラッド鋼板製金庫を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本願発明の特殊クラッド鋼板は、難溶断性を有する
オ−ステナイト系ステンレス鋼またはオ−ステナイト系
耐熱鋼と、難ドリル加工性を有する低合金工具鋼とが接
合されていることを特徴とする。難溶断性材または難ド
リル加工性材は、1層ずつ接合する他に、複数層を接合
することも可能である。なお、ここで難溶断性とは、ガ
ス切断に対して容易には穴が開かず、穴開けに十分に長
い時間(例えば1分以上)を要する性質をいうものと
し、難ドリル加工性とは、通常のドリル(例えばTiN
コーティングドリル)では貫通しない性質をいうものと
する。
め、本願発明の特殊クラッド鋼板は、難溶断性を有する
オ−ステナイト系ステンレス鋼またはオ−ステナイト系
耐熱鋼と、難ドリル加工性を有する低合金工具鋼とが接
合されていることを特徴とする。難溶断性材または難ド
リル加工性材は、1層ずつ接合する他に、複数層を接合
することも可能である。なお、ここで難溶断性とは、ガ
ス切断に対して容易には穴が開かず、穴開けに十分に長
い時間(例えば1分以上)を要する性質をいうものと
し、難ドリル加工性とは、通常のドリル(例えばTiN
コーティングドリル)では貫通しない性質をいうものと
する。
【0005】上記性質を有するオ−ステナイト系ステン
レス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼および低合金工具
鋼の組成は、特に限定されないが、難溶断性、難ドリル
加工性、機械的加工性などの特性を十分に得るために
は、以下の組成を有するのが望ましい。すなわち、オ−
ステナイト系ステンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱
鋼は、重量%で、C:0.25%以下、Mn :2.0%
以下、Ni :3.5〜37.0%、Cr :13.5〜2
6.0%を含有し、残部がFe および不可避的不純物か
らなるものが望ましい。具体的には、オ−ステナイト系
ステンレス鋼として、JIS 301、302、302
B、304、305、309S、310Sなどを例示す
ることができ、オ−ステナイト系耐熱鋼としては、JI
S SUH309、SUH310、SUH330などを
例示することができる。また、上記性質を有する低合金
工具鋼は、重量%で、C:0.8〜1.2%、Mn :
0.3〜1.2%、Cr :2〜6%、Mo :0.3〜
0.8%を含有し、残部がFe および不可避的不純物か
らなるものが望ましい。
レス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼および低合金工具
鋼の組成は、特に限定されないが、難溶断性、難ドリル
加工性、機械的加工性などの特性を十分に得るために
は、以下の組成を有するのが望ましい。すなわち、オ−
ステナイト系ステンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱
鋼は、重量%で、C:0.25%以下、Mn :2.0%
以下、Ni :3.5〜37.0%、Cr :13.5〜2
6.0%を含有し、残部がFe および不可避的不純物か
らなるものが望ましい。具体的には、オ−ステナイト系
ステンレス鋼として、JIS 301、302、302
B、304、305、309S、310Sなどを例示す
ることができ、オ−ステナイト系耐熱鋼としては、JI
S SUH309、SUH310、SUH330などを
例示することができる。また、上記性質を有する低合金
工具鋼は、重量%で、C:0.8〜1.2%、Mn :
0.3〜1.2%、Cr :2〜6%、Mo :0.3〜
0.8%を含有し、残部がFe および不可避的不純物か
らなるものが望ましい。
【0006】次に、第2の発明の特殊クラッド鋼板の製
造方法は、難溶断性を有するオ−ステナイト系ステンレ
ス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加工性
を有する低合金工具鋼とを溶接させた組合わせ体を、9
50〜1250℃の温度範囲内に均一加熱後、熱間圧延
により接合してクラッド鋼板とする圧延工程と、このク
ラッド鋼板を830〜920℃の温度範囲内で加熱保持
後、冷却して焼入れし、引き続き、150〜300℃の
温度範囲内で焼戻しを施す熱処理工程とを有することを
特徴とする。第3の発明の特殊クラッド鋼板製金庫は、
第1の発明の特殊クラッド鋼板を扉材または壁材に用い
たことを特徴とする。
造方法は、難溶断性を有するオ−ステナイト系ステンレ
ス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加工性
を有する低合金工具鋼とを溶接させた組合わせ体を、9
50〜1250℃の温度範囲内に均一加熱後、熱間圧延
により接合してクラッド鋼板とする圧延工程と、このク
ラッド鋼板を830〜920℃の温度範囲内で加熱保持
後、冷却して焼入れし、引き続き、150〜300℃の
温度範囲内で焼戻しを施す熱処理工程とを有することを
特徴とする。第3の発明の特殊クラッド鋼板製金庫は、
第1の発明の特殊クラッド鋼板を扉材または壁材に用い
たことを特徴とする。
【0007】
【作用】すなわち、本願発明の特殊クラッド鋼板によれ
ば、合わせ板がそれぞれ有する難溶断性と難ドリル加工
性が確保され、両特性を兼ね備えたクラッド鋼板を得る
ことができる。さらに、クラッド鋼板は、合わせ板が密
接して接合されており、熱容量が増大し、かつ熱伝導性
が向上するので、材料本来が有している難溶断性がさら
に向上する。さらに、曲り修正が容易で、密接接合され
た状態にあるので製品寸法精度が向上し、金庫の扉材、
壁材として金庫の外枠に容易に嵌込むことが可能とな
り、大きな余裕を持たせる必要がないので、さらに薄肉
化が可能となる。
ば、合わせ板がそれぞれ有する難溶断性と難ドリル加工
性が確保され、両特性を兼ね備えたクラッド鋼板を得る
ことができる。さらに、クラッド鋼板は、合わせ板が密
接して接合されており、熱容量が増大し、かつ熱伝導性
が向上するので、材料本来が有している難溶断性がさら
に向上する。さらに、曲り修正が容易で、密接接合され
た状態にあるので製品寸法精度が向上し、金庫の扉材、
壁材として金庫の外枠に容易に嵌込むことが可能とな
り、大きな余裕を持たせる必要がないので、さらに薄肉
化が可能となる。
【0008】したがって、この特殊クラッド鋼板で金庫
を構成した特殊クラッド鋼板製金庫によれば、溶断とド
リル加工に対して優れた抵抗性を有し、窃盗防止に優れ
ており、さらに小型の金庫を得ることができる。また、
本願発明の特殊クラッド鋼板の製造方法によれば、低合
金工具鋼を十分に硬化させることができ、優れた難ドリ
ル加工性を得ることができ、また、オ−ステナイト系ス
テンレス鋼または耐熱鋼の性質が損なわれることなく、
優れた難溶断性が確保される。そして、クラッド鋼板
は、適正な焼戻しにより適度な靱性が得られており、良
好な機械加工性を有している。このため、曲げ修正も容
易となり、薄肉化された鋼板を得ることが可能になる。
を構成した特殊クラッド鋼板製金庫によれば、溶断とド
リル加工に対して優れた抵抗性を有し、窃盗防止に優れ
ており、さらに小型の金庫を得ることができる。また、
本願発明の特殊クラッド鋼板の製造方法によれば、低合
金工具鋼を十分に硬化させることができ、優れた難ドリ
ル加工性を得ることができ、また、オ−ステナイト系ス
テンレス鋼または耐熱鋼の性質が損なわれることなく、
優れた難溶断性が確保される。そして、クラッド鋼板
は、適正な焼戻しにより適度な靱性が得られており、良
好な機械加工性を有している。このため、曲げ修正も容
易となり、薄肉化された鋼板を得ることが可能になる。
【0009】さらに、上記製造方法における圧延工程お
よび熱処理における条件の限定理由を以下に述べる。 (圧延工程)加熱温度:950〜1250℃ 圧延温度が950℃を下回ると熱間変形抵抗が増大し、
圧延ができなくなるばかりでなく、割れを生じる場合が
ある。また、1250℃を超えると結晶粒が粗大化して
肌荒れ現象が生じる。このため加熱温度を上記範囲に設
定した。なお、圧延における仕上温度は650℃以上と
するのが望ましい。これは、仕上温度が650℃未満で
あると、材料の延性が低下し、圧延中に割れるおそれが
あるためである。
よび熱処理における条件の限定理由を以下に述べる。 (圧延工程)加熱温度:950〜1250℃ 圧延温度が950℃を下回ると熱間変形抵抗が増大し、
圧延ができなくなるばかりでなく、割れを生じる場合が
ある。また、1250℃を超えると結晶粒が粗大化して
肌荒れ現象が生じる。このため加熱温度を上記範囲に設
定した。なお、圧延における仕上温度は650℃以上と
するのが望ましい。これは、仕上温度が650℃未満で
あると、材料の延性が低下し、圧延中に割れるおそれが
あるためである。
【0010】(熱処理)加熱保持温度:830〜920℃ 加熱保持温度は、低合金工具鋼では、合金元素の固溶が
十分になされ、必要な変態特性が得られるように830
℃以上とする。ただし、920℃を超えると、低合金工
具鋼中に残留オ−ステナイトが過剰に生成して、必要な
硬さが得られず、また、結晶粒が粗大化して焼き割れ感
受性が増大し、さらに、機械的性質の劣化を招くため上
記範囲内で加熱保持するものとした。なお、オ−ステナ
イト系のステンレス鋼または耐熱鋼では、オ−ステナイ
ト系の材料であるため、熱処理によって硬化はしない
が、焼入れによる悪影響も生じない。
十分になされ、必要な変態特性が得られるように830
℃以上とする。ただし、920℃を超えると、低合金工
具鋼中に残留オ−ステナイトが過剰に生成して、必要な
硬さが得られず、また、結晶粒が粗大化して焼き割れ感
受性が増大し、さらに、機械的性質の劣化を招くため上
記範囲内で加熱保持するものとした。なお、オ−ステナ
イト系のステンレス鋼または耐熱鋼では、オ−ステナイ
ト系の材料であるため、熱処理によって硬化はしない
が、焼入れによる悪影響も生じない。
【0011】冷却速度 冷却時にクラッド接合面が剥れたり、低合金工具鋼が割
れないように、冷却速度は大きすぎないのがよく、空冷
または油冷により行うのが望ましい。具体的には、50
〜80℃/minの冷却速度で冷却するのが望ましい。
これは、50℃/min未満では、パーライト変態が起
こって硬さが低下し、十分な難ドリル加工性が得られな
いためであり、また、80℃/minを超えると、前述
したようにクラッド鋼の接合界面が剥れるなどの不具合
が生じやすいためである。
れないように、冷却速度は大きすぎないのがよく、空冷
または油冷により行うのが望ましい。具体的には、50
〜80℃/minの冷却速度で冷却するのが望ましい。
これは、50℃/min未満では、パーライト変態が起
こって硬さが低下し、十分な難ドリル加工性が得られな
いためであり、また、80℃/minを超えると、前述
したようにクラッド鋼の接合界面が剥れるなどの不具合
が生じやすいためである。
【0012】焼戻し条件 焼戻しは、150℃〜300℃の温度範囲で行う。これ
は、150℃未満では靱性が十分ではなくもろいため、
機械加工や曲げ修正時に接合界面が剥れたり、工具鋼が
割れるおそれがあり、また、300℃を超えると、硬さ
が十分ではなく、所望の硬さ(例えば、ビッカース硬さ
で、650以上)が得られないためである。
は、150℃未満では靱性が十分ではなくもろいため、
機械加工や曲げ修正時に接合界面が剥れたり、工具鋼が
割れるおそれがあり、また、300℃を超えると、硬さ
が十分ではなく、所望の硬さ(例えば、ビッカース硬さ
で、650以上)が得られないためである。
【0013】
【実施例】表1に示す組成および板厚を有する板材をそ
れぞれ用意し、従来材では単板のままで圧延に供した。
一方、発明材では、2層のクラッド材を得るために、工
具鋼からなる難ドリル加工材1と、JIS SUS30
4からなる難溶断性材2とを合わせて合わせ体3とし、
また、3層のクラッド材を得るために、難ドリル加工材
1を、難溶断性材2、2で挟んで合わせ体4とし、それ
ぞれ2組の合わせ体3、3または合わせ体4、4を、分
離材5を介して重ね合わせ、端面を全周溶接して組合わ
せ体として圧延に供した。
れぞれ用意し、従来材では単板のままで圧延に供した。
一方、発明材では、2層のクラッド材を得るために、工
具鋼からなる難ドリル加工材1と、JIS SUS30
4からなる難溶断性材2とを合わせて合わせ体3とし、
また、3層のクラッド材を得るために、難ドリル加工材
1を、難溶断性材2、2で挟んで合わせ体4とし、それ
ぞれ2組の合わせ体3、3または合わせ体4、4を、分
離材5を介して重ね合わせ、端面を全周溶接して組合わ
せ体として圧延に供した。
【0014】圧延は、表2に示す条件にて行い、従来材
ではそのままで、発明材では、圧延後端面を切断し、分
裏面よりはがして、それぞれ板厚5mmの圧延材を得
た。さらに、各圧延材には、表2に示す条件で焼入れ、
焼戻し熱処理を行った。なお、従来材Fでは、圧延時に
割れが発生するため途中で圧延を中止し、後の熱処理
は、この圧延を中止した材料に行った。
ではそのままで、発明材では、圧延後端面を切断し、分
裏面よりはがして、それぞれ板厚5mmの圧延材を得
た。さらに、各圧延材には、表2に示す条件で焼入れ、
焼戻し熱処理を行った。なお、従来材Fでは、圧延時に
割れが発生するため途中で圧延を中止し、後の熱処理
は、この圧延を中止した材料に行った。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】得られた供試材に対し、溶断性、ドリル加
工性および硬度を評価する試験を行った。なお、溶断性
は、アセチレンガス炎を供試材に噴射した際に、供試材
が貫通するまでの時間で評価し、ドリル加工性は、Ti
Nコーティングドリルで加工した際に、供試材が貫通す
るか否かで行った。この、ドリル加工を所定時間行って
も貫通しない場合は加工を中止して、貫通しないものと
判断した。表3から明らかなように、発明材A、Bは、
ガス炎の照射に対し、穴が開くまでに長い時間を要する
のに対し、従来材C〜Eは比較的早い時期に穴が開いて
貫通してしまった。
工性および硬度を評価する試験を行った。なお、溶断性
は、アセチレンガス炎を供試材に噴射した際に、供試材
が貫通するまでの時間で評価し、ドリル加工性は、Ti
Nコーティングドリルで加工した際に、供試材が貫通す
るか否かで行った。この、ドリル加工を所定時間行って
も貫通しない場合は加工を中止して、貫通しないものと
判断した。表3から明らかなように、発明材A、Bは、
ガス炎の照射に対し、穴が開くまでに長い時間を要する
のに対し、従来材C〜Eは比較的早い時期に穴が開いて
貫通してしまった。
【0018】また、発明材A、Bでは、ドリル加工によ
って穴が開かなかったが、従来材C〜Eでは、いずれも
貫通してしまった。以上のように、発明材A、Bは、難
溶断性および難ドリル加工性のいずれにも優れていた。
なお、従来材Fは、圧延時に割れたために溶断性、ドリ
ル加工性の評価試験を行うことができなかった。また、
発明材A、Bは、割れなどが生ずることなく曲げ矯正を
行うことができ、接合界面も隙間が生ずることなく完全
に接合されていた(超音波探傷法による)。
って穴が開かなかったが、従来材C〜Eでは、いずれも
貫通してしまった。以上のように、発明材A、Bは、難
溶断性および難ドリル加工性のいずれにも優れていた。
なお、従来材Fは、圧延時に割れたために溶断性、ドリ
ル加工性の評価試験を行うことができなかった。また、
発明材A、Bは、割れなどが生ずることなく曲げ矯正を
行うことができ、接合界面も隙間が生ずることなく完全
に接合されていた(超音波探傷法による)。
【0019】
【表3】
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本願発明の特殊ク
ラッド鋼板によれば、優れた難溶断性と難ドリル加工性
のいずれもが得られ、防犯用の鋼板として優れた機能を
得ることができ、また、薄肉化することが可能となる。
また、本願発明の特殊クラッド鋼板製金庫によれば、溶
断とドリル加工に対して優れた抵抗性を有し、窃盗防止
に高い安全性を有する金庫を得ることができ、また、金
庫の小型化が可能になる。さらに、本願発明の特殊クラ
ッド鋼板の製造方法によれば、優れた難ドリル加工性と
難溶断性が確保される。さらに、適度な靱性と、良好な
機械加工性が得られ、曲げ修正が容易となり、薄肉化さ
れた鋼板を得ることができる。
ラッド鋼板によれば、優れた難溶断性と難ドリル加工性
のいずれもが得られ、防犯用の鋼板として優れた機能を
得ることができ、また、薄肉化することが可能となる。
また、本願発明の特殊クラッド鋼板製金庫によれば、溶
断とドリル加工に対して優れた抵抗性を有し、窃盗防止
に高い安全性を有する金庫を得ることができ、また、金
庫の小型化が可能になる。さらに、本願発明の特殊クラ
ッド鋼板の製造方法によれば、優れた難ドリル加工性と
難溶断性が確保される。さらに、適度な靱性と、良好な
機械加工性が得られ、曲げ修正が容易となり、薄肉化さ
れた鋼板を得ることができる。
【図1】図1は、発明材の製造過程における、圧延前の
合わせ体の正面図である。
合わせ体の正面図である。
【図2】図2は、他の発明材の製造過程における、圧延
前の合わせ体の正面図である。
前の合わせ体の正面図である。
1 難ドリル加工材 2 難溶断性材 3 合わせ体 4 合わせ体
【手続補正書】
【提出日】平成3年12月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 クラッド鋼板、クラッド鋼板製金庫お
よびクラッド鋼板の製造方法
よびクラッド鋼板の製造方法
【特許請求の範囲】
【請求項2】 請求項1記載のクラッド鋼板を扉材また
は壁材に用いたことを特徴とするクラッド鋼板製金庫
は壁材に用いたことを特徴とするクラッド鋼板製金庫
【請求項3】 難溶断性を有するオ−ステナイト系ステ
ンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加
工性を有する低合金工具鋼とを密接させた組合わせ体
を、950〜1250℃の温度範囲内に均一加熱後、熱
間圧延により接合してクラッド鋼板とする圧延工程と、
このクラッド鋼板を830〜920℃の温度範囲内で加
熱保持後、冷却して焼入れし、引き続き、150〜30
0℃の温度範囲内で焼戻しを施す熱処理工程とを有する
ことを特徴とするクラッド鋼板の製造方法
ンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加
工性を有する低合金工具鋼とを密接させた組合わせ体
を、950〜1250℃の温度範囲内に均一加熱後、熱
間圧延により接合してクラッド鋼板とする圧延工程と、
このクラッド鋼板を830〜920℃の温度範囲内で加
熱保持後、冷却して焼入れし、引き続き、150〜30
0℃の温度範囲内で焼戻しを施す熱処理工程とを有する
ことを特徴とするクラッド鋼板の製造方法
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、主として防犯用の材
料として用いられるものであり、特に金庫などの扉や外
壁に適したクラッド鋼板、このクラッド鋼板を用いた金
庫および前記クラッド鋼板の製造方法に関するものであ
る。
料として用いられるものであり、特に金庫などの扉や外
壁に適したクラッド鋼板、このクラッド鋼板を用いた金
庫および前記クラッド鋼板の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、金庫の扉や外壁に用いられる材料
には、軟鋼材が用いられており、焼入れによって硬度を
高めることにより、防犯性を高めている。このような軟
鋼材は、十分な厚みを持たせることにより、窃盗に際し
てドリルやガス溶断によっても容易に穴が開けられたり
切断がなされることがなく、金庫が破壊されるまでに十
分な時間を要することによって、安全性を得ている。
には、軟鋼材が用いられており、焼入れによって硬度を
高めることにより、防犯性を高めている。このような軟
鋼材は、十分な厚みを持たせることにより、窃盗に際し
てドリルやガス溶断によっても容易に穴が開けられたり
切断がなされることがなく、金庫が破壊されるまでに十
分な時間を要することによって、安全性を得ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、金庫を小型
化したり、軽量化する場合には、扉や外壁に用いる材料
も薄板化が必要とされる。しかし、従来の材料である軟
鋼材を薄板化すると、ドリルによる加工や、ガスの溶断
によって容易に穴開けや、切断が可能となり、防犯用の
材料としては、その性能は不十分である。このため、強
く焼入れを行って硬度を増すことも考えられるが、上記
性能の向上は僅かであるばかりでなく、焼き入れによる
ひずみにより曲りが生じやすく、また、靱性が低下する
ので、機械加工時や曲げ矯正時に割れが発生しやすいと
いう問題がある。この発明は、上記課題を解決すること
を基本的な目的とし、薄板化してもガス溶断およびドリ
ル加工に対して優れた抵抗性を有し、しかも曲げ矯正も
容易であるクラッド鋼板、クラッド鋼板製金庫およびク
ラッド鋼板の製造方法を提供するものである。
化したり、軽量化する場合には、扉や外壁に用いる材料
も薄板化が必要とされる。しかし、従来の材料である軟
鋼材を薄板化すると、ドリルによる加工や、ガスの溶断
によって容易に穴開けや、切断が可能となり、防犯用の
材料としては、その性能は不十分である。このため、強
く焼入れを行って硬度を増すことも考えられるが、上記
性能の向上は僅かであるばかりでなく、焼き入れによる
ひずみにより曲りが生じやすく、また、靱性が低下する
ので、機械加工時や曲げ矯正時に割れが発生しやすいと
いう問題がある。この発明は、上記課題を解決すること
を基本的な目的とし、薄板化してもガス溶断およびドリ
ル加工に対して優れた抵抗性を有し、しかも曲げ矯正も
容易であるクラッド鋼板、クラッド鋼板製金庫およびク
ラッド鋼板の製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本願発明のクラッド鋼板は、難溶断性を有するオ−
ステナイト系ステンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱
鋼と、難ドリル加工性を有する低合金工具鋼とが接合さ
れていることを特徴とする。難溶断性材または難ドリル
加工性材は、1層ずつ接合する他に、複数層を接合する
ことも可能である。なお、ここで難溶断性とは、ガス切
断に対して容易には穴が開かず、穴開けに十分に長い時
間(例えば1分以上)を要する性質をいうものとし、難
ドリル加工性とは、通常のドリル(例えばTiNコーテ
ィングドリル)では貫通しない性質をいうものとする。
め、本願発明のクラッド鋼板は、難溶断性を有するオ−
ステナイト系ステンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱
鋼と、難ドリル加工性を有する低合金工具鋼とが接合さ
れていることを特徴とする。難溶断性材または難ドリル
加工性材は、1層ずつ接合する他に、複数層を接合する
ことも可能である。なお、ここで難溶断性とは、ガス切
断に対して容易には穴が開かず、穴開けに十分に長い時
間(例えば1分以上)を要する性質をいうものとし、難
ドリル加工性とは、通常のドリル(例えばTiNコーテ
ィングドリル)では貫通しない性質をいうものとする。
【0005】上記性質を有するオ−ステナイト系ステン
レス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼および低合金工具
鋼の組成は、特に限定されないが、難溶断性、難ドリル
加工性、機械的加工性などの特性を十分に得るために
は、以下の組成を有するのが望ましい。すなわち、オ−
ステナイト系ステンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱
鋼は、重量%で、C:0.25%以下、Si :3.0%
以下、Mn :2.0%以下、Ni :3.5〜37.0
%、Cr :13.5〜26.0%を含有し、残部がFe
および不可避的不純物からなるものが望ましい。具体的
には、オ−ステナイト系ステンレス鋼として、JIS
301、302、302B、304、305、309
S、310Sなどを例示することができ、オ−ステナイ
ト系耐熱鋼としては、JIS SUH309、SUH3
10、SUH330などを例示することができる。 ま
た、上記性質を有する低合金工具鋼は、重量%で、C:
0.8〜1.2%、Si :1.0%以下、Mn :0.3
〜1.2%、Cr :2〜6%、Mo :0.3〜0.8%
を含有し、残部がFe および不可避的不純物からなるも
のが望ましい。
レス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼および低合金工具
鋼の組成は、特に限定されないが、難溶断性、難ドリル
加工性、機械的加工性などの特性を十分に得るために
は、以下の組成を有するのが望ましい。すなわち、オ−
ステナイト系ステンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱
鋼は、重量%で、C:0.25%以下、Si :3.0%
以下、Mn :2.0%以下、Ni :3.5〜37.0
%、Cr :13.5〜26.0%を含有し、残部がFe
および不可避的不純物からなるものが望ましい。具体的
には、オ−ステナイト系ステンレス鋼として、JIS
301、302、302B、304、305、309
S、310Sなどを例示することができ、オ−ステナイ
ト系耐熱鋼としては、JIS SUH309、SUH3
10、SUH330などを例示することができる。 ま
た、上記性質を有する低合金工具鋼は、重量%で、C:
0.8〜1.2%、Si :1.0%以下、Mn :0.3
〜1.2%、Cr :2〜6%、Mo :0.3〜0.8%
を含有し、残部がFe および不可避的不純物からなるも
のが望ましい。
【0006】次に、第2の発明のクラッド鋼板製金庫
は、第1の発明のクラッド鋼板を扉材または壁材に用い
たことを特徴とする。第3の発明のクラッド鋼板の製造
方法は、難溶断性を有するオ−ステナイト系ステンレス
鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加工性を
有する低合金工具鋼とを密接させた組合わせ体を、95
0〜1250℃の温度範囲内に均一加熱後、熱間圧延に
より接合してクラッド鋼板とする圧延工程と、このクラ
ッド鋼板を830〜920℃の温度範囲内で加熱保持
後、冷却して焼入れし、引き続き、150〜300℃の
温度範囲内で焼戻しを施す熱処理工程とを有することを
特徴とする。
は、第1の発明のクラッド鋼板を扉材または壁材に用い
たことを特徴とする。第3の発明のクラッド鋼板の製造
方法は、難溶断性を有するオ−ステナイト系ステンレス
鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加工性を
有する低合金工具鋼とを密接させた組合わせ体を、95
0〜1250℃の温度範囲内に均一加熱後、熱間圧延に
より接合してクラッド鋼板とする圧延工程と、このクラ
ッド鋼板を830〜920℃の温度範囲内で加熱保持
後、冷却して焼入れし、引き続き、150〜300℃の
温度範囲内で焼戻しを施す熱処理工程とを有することを
特徴とする。
【0007】
【作用】すなわち、本願発明のクラッド鋼板によれば、
合わせ板がそれぞれ有する難溶断性と難ドリル加工性が
確保され、両特性を兼ね備えたクラッド鋼板を得ること
ができる。さらに、クラッド鋼板は、合わせ板が密接し
て接合されており、熱容量が増大し、かつ熱伝導性が向
上するので、材料本来が有している難溶断性がさらに向
上する。さらに、曲り修正が容易で、密接接合された状
態にあるので製品寸法精度が向上し、金庫の扉材、壁材
として金庫の外枠に容易に嵌込むことが可能となり、大
きな余裕を持たせる必要がないので、さらに薄肉化が可
能となる。
合わせ板がそれぞれ有する難溶断性と難ドリル加工性が
確保され、両特性を兼ね備えたクラッド鋼板を得ること
ができる。さらに、クラッド鋼板は、合わせ板が密接し
て接合されており、熱容量が増大し、かつ熱伝導性が向
上するので、材料本来が有している難溶断性がさらに向
上する。さらに、曲り修正が容易で、密接接合された状
態にあるので製品寸法精度が向上し、金庫の扉材、壁材
として金庫の外枠に容易に嵌込むことが可能となり、大
きな余裕を持たせる必要がないので、さらに薄肉化が可
能となる。
【0008】したがって、このクラッド鋼板で金庫を構
成したクラッド鋼板製金庫によれば、溶断とドリル加工
に対して優れた抵抗性を有し、窃盗防止に優れており、
さらに小型の金庫を得ることができる。また、本願発明
のクラッド鋼板の製造方法によれば、低合金工具鋼を十
分に硬化させることができ、優れた難ドリル加工性を得
ることができ、また、オ−ステナイト系ステンレス鋼ま
たは耐熱鋼の性質が損なわれることなく、優れた難溶断
性が確保される。そして、クラッド鋼板は、適正な焼戻
しにより適度な靱性が得られており、良好な機械加工性
を有している。このため、曲げ修正も容易となり、薄肉
化された鋼板を得ることが可能になる。
成したクラッド鋼板製金庫によれば、溶断とドリル加工
に対して優れた抵抗性を有し、窃盗防止に優れており、
さらに小型の金庫を得ることができる。また、本願発明
のクラッド鋼板の製造方法によれば、低合金工具鋼を十
分に硬化させることができ、優れた難ドリル加工性を得
ることができ、また、オ−ステナイト系ステンレス鋼ま
たは耐熱鋼の性質が損なわれることなく、優れた難溶断
性が確保される。そして、クラッド鋼板は、適正な焼戻
しにより適度な靱性が得られており、良好な機械加工性
を有している。このため、曲げ修正も容易となり、薄肉
化された鋼板を得ることが可能になる。
【0009】さらに、上記製造方法における圧延工程お
よび熱処理における条件の限定理由を以下に述べる。 (圧延工程)加熱温度:950〜1250℃ 圧延温度が950℃を下回ると熱間変形抵抗が増大し、
圧延ができなくなるばかりでなく、割れを生じる場合が
ある。また、1250℃を超えると結晶粒が粗大化して
肌荒れ現象が生じる。このため加熱温度を上記範囲に設
定した。なお、圧延における仕上温度は650℃以上と
するのが望ましい。これは、仕上温度が650℃未満で
あると、材料の延性が低下し、圧延中に割れるおそれが
あるためである。
よび熱処理における条件の限定理由を以下に述べる。 (圧延工程)加熱温度:950〜1250℃ 圧延温度が950℃を下回ると熱間変形抵抗が増大し、
圧延ができなくなるばかりでなく、割れを生じる場合が
ある。また、1250℃を超えると結晶粒が粗大化して
肌荒れ現象が生じる。このため加熱温度を上記範囲に設
定した。なお、圧延における仕上温度は650℃以上と
するのが望ましい。これは、仕上温度が650℃未満で
あると、材料の延性が低下し、圧延中に割れるおそれが
あるためである。
【0010】(熱処理)加熱保持温度:830〜920℃ 加熱保持温度は、低合金工具鋼では、合金元素の固溶が
十分になされ、必要な変態特性が得られるように830
℃以上とする。ただし、920℃を超えると、低合金工
具鋼中に残留オ−ステナイトが過剰に生成して、必要な
硬さが得られず、また、結晶粒が粗大化して焼き割れ感
受性が増大し、さらに、機械的性質の劣化を招くため上
記範囲内で加熱保持するものとした。なお、オ−ステナ
イト系のステンレス鋼または耐熱鋼では、オ−ステナイ
ト系の材料であるため、熱処理によって硬化はしない
が、焼入れによる悪影響も生じない。
十分になされ、必要な変態特性が得られるように830
℃以上とする。ただし、920℃を超えると、低合金工
具鋼中に残留オ−ステナイトが過剰に生成して、必要な
硬さが得られず、また、結晶粒が粗大化して焼き割れ感
受性が増大し、さらに、機械的性質の劣化を招くため上
記範囲内で加熱保持するものとした。なお、オ−ステナ
イト系のステンレス鋼または耐熱鋼では、オ−ステナイ
ト系の材料であるため、熱処理によって硬化はしない
が、焼入れによる悪影響も生じない。
【0011】冷却速度 冷却時にクラッド接合面が剥れたり、低合金工具鋼が割
れないように、冷却速度は大きすぎないのがよく、空冷
または油冷により行うのが望ましい。具体的には、50
〜80℃/minの冷却速度で冷却するのが望ましい。
これは、50℃/min未満では、パーライト変態が起
こって硬さが低下し、十分な難ドリル加工性が得られな
いためであり、また、80℃/minを超えると、前述
したようにクラッド鋼の接合界面が剥れるなどの不具合
が生じやすいためである。
れないように、冷却速度は大きすぎないのがよく、空冷
または油冷により行うのが望ましい。具体的には、50
〜80℃/minの冷却速度で冷却するのが望ましい。
これは、50℃/min未満では、パーライト変態が起
こって硬さが低下し、十分な難ドリル加工性が得られな
いためであり、また、80℃/minを超えると、前述
したようにクラッド鋼の接合界面が剥れるなどの不具合
が生じやすいためである。
【0012】焼戻し条件 焼戻しは、150℃〜300℃の温度範囲で行う。これ
は、150℃未満では靱性が十分ではなくもろいため、
機械加工や曲げ修正時に接合界面が剥れたり、工具鋼が
割れるおそれがあり、また、300℃を超えると、硬さ
が十分ではなく、所望の硬さ(例えば、ビッカース硬さ
で、650以上)が得られないためである。
は、150℃未満では靱性が十分ではなくもろいため、
機械加工や曲げ修正時に接合界面が剥れたり、工具鋼が
割れるおそれがあり、また、300℃を超えると、硬さ
が十分ではなく、所望の硬さ(例えば、ビッカース硬さ
で、650以上)が得られないためである。
【0013】
【実施例】表1に示す組成および板厚を有する板材をそ
れぞれ用意し、従来材では単板のまま(厚さ25mm×
幅150mm×長さ100mm)で圧延に供した。一
方、発明材では、2層のクラッド材を得るために、工具
鋼からなる難ドリル加工材1と、JIS SUS304
からなる難溶断性材2とを合わせて厚さ25mm×幅1
50mm×長さ100mmの寸法を有する合わせ体3と
し、また、3層のクラッド材を得るために、難ドリル加
工材1を、難溶断性材2、2で挟んで同寸法の合わせ体
4とした。さらに、それぞれ2組の合わせ体3、3また
は合わせ体4、4を、分離材5を介して重ね合わせ、端
面を全周溶接して組合わせ体として圧延に供した。
れぞれ用意し、従来材では単板のまま(厚さ25mm×
幅150mm×長さ100mm)で圧延に供した。一
方、発明材では、2層のクラッド材を得るために、工具
鋼からなる難ドリル加工材1と、JIS SUS304
からなる難溶断性材2とを合わせて厚さ25mm×幅1
50mm×長さ100mmの寸法を有する合わせ体3と
し、また、3層のクラッド材を得るために、難ドリル加
工材1を、難溶断性材2、2で挟んで同寸法の合わせ体
4とした。さらに、それぞれ2組の合わせ体3、3また
は合わせ体4、4を、分離材5を介して重ね合わせ、端
面を全周溶接して組合わせ体として圧延に供した。
【0014】圧延は、表2に示す条件にて行い、従来材
ではそのままで、発明材では、圧延後端面を切断し、分
裏面よりはがして、それぞれ板厚5mm×幅150mm
×長さ500mmの寸法を有する圧延材を得た。さら
に、各圧延材には、表2に示す条件で焼入れ、焼戻し熱
処理を行った。なお、従来材Fでは、素材圧延時に割れ
が生じたので、板厚7.5mmで圧延を中止し、その
後、機削りで5mm厚に減肉し、表2の条件で焼入れ、
焼戻しの熱処理を行って特性評価を行った。
ではそのままで、発明材では、圧延後端面を切断し、分
裏面よりはがして、それぞれ板厚5mm×幅150mm
×長さ500mmの寸法を有する圧延材を得た。さら
に、各圧延材には、表2に示す条件で焼入れ、焼戻し熱
処理を行った。なお、従来材Fでは、素材圧延時に割れ
が生じたので、板厚7.5mmで圧延を中止し、その
後、機削りで5mm厚に減肉し、表2の条件で焼入れ、
焼戻しの熱処理を行って特性評価を行った。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】得られた供試材に対し、溶断性、ドリル加
工性および硬度を評価する試験を行った。なお、溶断性
は、アセチレンガス炎を供試材に噴射した際に、供試材
が貫通するまでの時間で評価し、ドリル加工性は、Ti
Nコーティングドリルで加工した際に、供試材が貫通す
るか否かで行った。この、ドリル加工を所定時間行って
も貫通しない場合は加工を中止して、貫通しないものと
判断した。表3から明らかなように、発明材A、Bは、
ガス炎の照射に対し、穴が開くまでに長い時間を要し、
難溶断性に優れているのに対し、従来材C〜Fは比較的
早い時期に穴が開いて貫通してしまった。このように発
明材が難溶断性に優れている原因としては、溶断の際に
生ずるノロかすがプール周囲に付着し、次層の溶断を遅
らすためである。また、工具鋼側から溶断する場合にも
同様の難溶断性を示すことが確認されている。このよう
な現象はクラッド材特有の性質であり、そのメカニズム
は解明されていない。
工性および硬度を評価する試験を行った。なお、溶断性
は、アセチレンガス炎を供試材に噴射した際に、供試材
が貫通するまでの時間で評価し、ドリル加工性は、Ti
Nコーティングドリルで加工した際に、供試材が貫通す
るか否かで行った。この、ドリル加工を所定時間行って
も貫通しない場合は加工を中止して、貫通しないものと
判断した。表3から明らかなように、発明材A、Bは、
ガス炎の照射に対し、穴が開くまでに長い時間を要し、
難溶断性に優れているのに対し、従来材C〜Fは比較的
早い時期に穴が開いて貫通してしまった。このように発
明材が難溶断性に優れている原因としては、溶断の際に
生ずるノロかすがプール周囲に付着し、次層の溶断を遅
らすためである。また、工具鋼側から溶断する場合にも
同様の難溶断性を示すことが確認されている。このよう
な現象はクラッド材特有の性質であり、そのメカニズム
は解明されていない。
【0018】また、発明材A、Bでは、ドリル加工によ
って穴が開かなかったが、従来材C〜Eでは、いずれも
貫通してしまった。また、発明材A、Bは、割れなどが
生ずることなく曲げ矯正を行うことができ、接合界面も
隙間が生ずることなく完全に接合されていた(超音波探
傷法による)が、従来材Fは、割れが生ずるため曲げ矯
正を行うことができなかった。以上のように、発明材
A、Bは、難溶断性および難ドリル加工性のいずれにも
優れているとともに、曲げ矯正も良好に行うことができ
る。
って穴が開かなかったが、従来材C〜Eでは、いずれも
貫通してしまった。また、発明材A、Bは、割れなどが
生ずることなく曲げ矯正を行うことができ、接合界面も
隙間が生ずることなく完全に接合されていた(超音波探
傷法による)が、従来材Fは、割れが生ずるため曲げ矯
正を行うことができなかった。以上のように、発明材
A、Bは、難溶断性および難ドリル加工性のいずれにも
優れているとともに、曲げ矯正も良好に行うことができ
る。
【0019】
【表3】
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本願発明のクラッ
ド鋼板によれば、優れた難溶断性と難ドリル加工性のい
ずれもが得られ、防犯用の鋼板として優れた機能を得る
ことができ、また、薄肉化することが可能となる。ま
た、本願発明のクラッド鋼板製金庫によれば、溶断とド
リル加工に対して優れた抵抗性を有し、窃盗防止に高い
安全性を有する金庫を得ることができ、また、金庫の小
型化が可能になる。さらに、本願発明のクラッド鋼板の
製造方法によれば、優れた難ドリル加工性と難溶断性が
確保される。さらに、適度な靱性と、良好な機械加工性
が得られ、曲げ修正が容易となり、薄肉化された鋼板を
得ることができる。
ド鋼板によれば、優れた難溶断性と難ドリル加工性のい
ずれもが得られ、防犯用の鋼板として優れた機能を得る
ことができ、また、薄肉化することが可能となる。ま
た、本願発明のクラッド鋼板製金庫によれば、溶断とド
リル加工に対して優れた抵抗性を有し、窃盗防止に高い
安全性を有する金庫を得ることができ、また、金庫の小
型化が可能になる。さらに、本願発明のクラッド鋼板の
製造方法によれば、優れた難ドリル加工性と難溶断性が
確保される。さらに、適度な靱性と、良好な機械加工性
が得られ、曲げ修正が容易となり、薄肉化された鋼板を
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、発明材の製造過程における、圧延前の
合わせ体の正面図である。
合わせ体の正面図である。
【図2】図2は、他の発明材の製造過程における、圧延
前の合わせ体の正面図である。
前の合わせ体の正面図である。
【符号の説明】 1 難ドリル加工材 2 難溶断性材 3 合わせ体 4 合わせ体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C22C 38/00 301 H 7217−4K 302 X 7217−4K B23K 103:04 103:16
Claims (3)
- 【請求項1】 難溶断性を有するオ−ステナイト系ステ
ンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加
工性を有する低合金工具鋼とが接合されていることを特
徴とする特殊クラッド鋼板 - 【請求項2】 難溶断性を有するオ−ステナイト系ステ
ンレス鋼またはオ−ステナイト系耐熱鋼と、難ドリル加
工性を有する低合金工具鋼とを溶接させた組合わせ体
を、950〜1250℃の温度範囲内に均一加熱後、熱
間圧延により接合してクラッド鋼板とする圧延工程と、
このクラッド鋼板を830〜920℃の温度範囲内で加
熱保持後、冷却して焼入れし、引き続き、150〜30
0℃の温度範囲内で焼戻しを施す熱処理工程とを有する
ことを特徴とする特殊クラッド鋼板の製造方法 - 【請求項3】 請求項1記載の特殊クラッド鋼板を扉材
または壁材に用いたことを特徴とする特殊クラッド鋼板
製金庫
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27045691A JPH0592280A (ja) | 1991-09-24 | 1991-09-24 | 特殊クラツド鋼板、特殊クラツド鋼板の製造方法および特殊クラツド鋼板製金庫 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27045691A JPH0592280A (ja) | 1991-09-24 | 1991-09-24 | 特殊クラツド鋼板、特殊クラツド鋼板の製造方法および特殊クラツド鋼板製金庫 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0592280A true JPH0592280A (ja) | 1993-04-16 |
Family
ID=17486548
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27045691A Pending JPH0592280A (ja) | 1991-09-24 | 1991-09-24 | 特殊クラツド鋼板、特殊クラツド鋼板の製造方法および特殊クラツド鋼板製金庫 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0592280A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010045937A3 (de) * | 2008-10-22 | 2010-07-15 | Benteler Automobiltechnik Gmbh | Sicherungsschrank |
-
1991
- 1991-09-24 JP JP27045691A patent/JPH0592280A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010045937A3 (de) * | 2008-10-22 | 2010-07-15 | Benteler Automobiltechnik Gmbh | Sicherungsschrank |
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