JPH059059A - 酸化物超電導体の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導体の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、より大きな結晶からなるR1 Ba
2 Cu3 7-δの酸化物超電導体が得られるとともに、
その製造プロセスを簡略化できる酸化物超電導体の製造
方法を提供することを目的としたものである。 【構成】 本発明は、酸化物超電導体の製造方法の1つ
であるいわゆる溶融法を用い、製造すべき超電導体の結
晶構造に類似する結晶構造を有する結晶を種結晶として
結晶を育成させるようにした方法において、種結晶とし
て、分解温度が高いペロブスカイト構造を有する単結晶
もしくは分解温度の高い立法晶構造の単結晶を用いるこ
とを特徴としたもので、これにより、より大きな結晶か
らなるR1 Ba2 Cu3 7-δの酸化物超電導体が得ら
れるとともに、その製造プロセスを簡略化できる酸化物
超電導体の製造方法を得ているものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強磁場下においても高
臨界電流密度を備えた超電導特性を示すR1 Ba2 Cu
3 7-δ酸化物超電導体を製造する酸化物超電導体の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般式R1 Ba2 Cu3 7-δ(ただ
し、Rは、Y、Sc及びランタノイドのなかから選ばれ
る1種以上の元素とし、δ=0.1〜0.5とする)で
表される酸化物超電導体の製造方法としては、従来、以
下の方法が知られていた。
【0003】(1) まず、種結晶として、Y1 Ba2
Cu3 7-δより分解温度の高いSm1 Ba2 Cu3
7-δの単結晶を事前に作成しておく。
【0004】次に、Y2 Ba1 Cu1 5 を過剰に含む
1 Ba2 Cu3 7-δの粉末を約1450°Cで溶融
した後、銅版に流して急冷することにより、Y2 3
相と液相とからなる前駆体を作る。
【0005】次いで、この前駆体を再び1100°Cで
半溶融状態にする。
【0006】しかる後、事前に作成しておいたSm1
2 Cu3 7-δの単結晶の劈開面をこの前駆体に接触
させ、徐冷することによって一方向成長させ、Y1 Ba
2 Cu3 7-δの比較的大型の結晶を得る。
【0007】(2) まず、種結晶として、Y1 Ba2
Cu3 7-δより分解温度の高いM1 Ba2 Cu3
7-δ(MはSm、Eu、Gd、Dyのどれか)単結晶を
事前に作製しておく。
【0008】次に、Y2 Ba1 Cu1 5 を過剰に含む
1 Ba2 Cu3 7-δの粉末を約1450°Cで溶融
した後、銅版に流し、急冷することによってY2 3
相と液相とからなる前駆体を作る。
【0009】次に、この前駆体を1100°Cで20分
キープした後、上記種結晶の分解温度以下まで冷し、こ
れに上記種結晶の劈開面を接触させ、1000°C以下
で1°C〜5°C/時間の割合で種結晶側より温度勾配
をかけて徐冷することによって種結晶を基点としてR2
Ba1 Cu1 5 がR1 Ba2 Cu3 7-δ中に微細に
分散された比較的大きな結晶を得る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
従来の製造方法には、いずれも以下のような欠点があっ
た。
【0011】すなわち、Y1 Ba2 Cu3 7-δのより
大型の結晶を得るためには、種結晶たるM1 Ba2 Cu
3 7-δ単結晶もより大型のものを用いる必要がある。
しかし、M1 Ba2 Cu3 7-δの種結晶として大きな
ものを作るのは極めて困難であるから、結局、この種結
晶の大きさによって得られるY1 Ba2 Cu3 7-δ
結晶の大きさも制限されてしまう。
【0012】また、前駆体が種結晶の融点以下になった
時に加熱炉をあけて種結晶を接触させなければならない
ので、製造プロセス的に著しく手間がかかる。
【0013】本発明は、より大きな結晶からなるR1
2 Cu3 7-δの酸化物超電導体が得られるととも
に、その製造プロセスを簡略化できる酸化物超電導体の
製造方法を提供することを目的としたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めに本発明は、(1) 一般式R1 Ba2 Cu3 7-δ
(ただし、Rは、Y、Sc及びランタノイドのなかから
選ばれる1種以上の元素とし、δ=0.1〜0.5とす
る)で表される酸化物超電導体の製造方法において、R
化合物、Ba化合物、Cu化合物をR1+2KBa2+K Cu
3+K (ただし、K=0〜0.6とする)の組成で混合し
た後ペレット成形し、次に、前記R1 Ba2 Cu3
7-δより分解温度が高いペロブスカイト構造を有する単
結晶を種結晶として前記ペレットに接触させ、次いで、
このペレットを1050〜1300℃に加熱して該ペレ
ット中にR2 BaCuO5 の相と液相とを形成させ、し
かる後に、前記種結晶側の温度を960〜1050°C
の低温側に設定して該種結晶側より前記ペレット側にか
けて5〜20°C/cmの温度勾配をかけ、1°C〜5
°C/時間の降温速度で徐冷することによって前記種結
晶を基点としてR2 BaCuO5 がR1 Ba2 Cu3
7-δ中に微細に分散された結晶を成長させるようにした
ことを特徴とする構成とし、また、構成1の態様とし
て、(2)構成1の酸化物超電導体の製造方法におい
て、前記種結晶がSrTiO2 単結晶であることを特徴
とした構成として、さらに、構成1の他の態様として、
(3) 構成1の酸化物超電導体の製造方法において、
前記種結晶として立方晶構造を有する単結晶を用いるこ
とを特徴とした構成とし、さらに、構成3の態様とし
て、(4) 構成3の酸化物超電導体の製造方法におい
て、前記種結晶がMgO単結晶であることを特徴とした
構成とするとともに、構成1ないし4のいずれかの態様
として、(5) 構成1ないし4のいずれかの酸化物超
電導体の製造方法において、前記R化合物、Ba化合
物、Cu化合物を前記酸化物超電導体の組成に応じた割
合で混合した後ペレット成形する工程が、R化合物、B
a化合物、Cu化合物のうち少なくとも1つ以上を取り
出して混合し、次に、この混合物を800〜900°C
で焼成し、しかる後にこの焼成物を残りの化合物と混合
してにペレット成形する工程であることを特徴とする構
成としたものである。
【0015】
【作用】上述の構成1によれば、R2 BaCuO5 がR
1 Ba2 Cu3 7-δ中に微細に分散されたより大型の
結晶よりなるR1 Ba2 Cu3 7-δの酸化物超電導体
を比較的容易に得ることが可能になった。これは、種結
晶として、R1 Ba2 Cu3 7-δより分解温度が高い
ペロブスカイト構造を有する単結晶を用いるようにした
ことから、この種結晶として、例えば、構成2のように
容易に大型の単結晶が得られ、かつ、十分に高い分解温
度を有するSrTiO2 等の単結晶を用いることが可能
となったためである。すなわち、本発明は、種結晶とし
て、格子定数がY1 Ba2 Cu3 7-δの格子定数に近
く、大型な単結晶が得られやすいと共に、高い分解温度
を有するペロブスカイト構造をもつSrTiO2 等の単
結晶を用いることができるという本発明者が見出だした
事実に基づくものである。ちなみに、従来は、種結晶と
して、R1 Ba2 Cu3 7-δに近似した組成及び構造
を有するものを用いる必要があるとしていたために、大
きな種結晶を得ることが極めて困難であり、これがため
により大きな結晶からなるR1 Ba2 Cu3 7-δの酸
化物超電導体を得ることが困難であったと共に、種結晶
の分解温度が低いために、処理温度が高い段階から予め
種結晶をセットしておくことができず、熱処理の途中で
処理温度が種結晶の分解温度以下になった時点で種結晶
を挿入するという繁雑な操作が必要であった。構成1に
よれば、種結晶の分解温度が十分に高いので予め種結晶
をセットしておくことができるからそのような繁雑な操
作を必要としない。また、構成1の方法によって得られ
たR1 Ba2Cu3 7-δの酸化物超電導体は、R1
2 Cu3 7-δ中に微細に分散されたR2 BaCuO
5 が磁束ピン止め中心(ピンニングセンタ)として働く
ために、高い臨界電流密度が得られる。
【0016】また、種結晶としては、構成3のように立
方晶構造を有する単結晶、例えば、構成4のようにMg
O単結晶を用いても構成1の場合と同様の作用効果が得
られることが確認されている。
【0017】さらに、ペレット成形する工程を構成5の
ように構成することにより、R1 Ba2 Cu3 7-δ
にR2 BaCuO5 がより均一に微細分散されてより良
好なピンニングセンタとして働き、より超電導体特性の
よい酸化物超電導体を得ることが可能となる。
【0018】
【実施例】実施例1 まず、粒径0.01〜3μmのY2 3 、BaCO3
CuOの各原料粉末を、Y:Ba:Cuの比が1.8:
2.4:3.4になるように秤量した。
【0019】次に、BaCO3 とCuOのみを混合し、
850〜900°Cで24時間焼成して焼成粉を得た
【0020】次に、この焼成粉とY2 3 の原料粉とを
混合した後、直径1インチφのペレットに成形した。
【0021】次に、このペレット上に、5mm角のSr
TiO3 単結晶をその(100)面がペレットに接触す
るようにして乗せ、1°C〜20°C/minで110
0〜1150°Cまで昇温し、その温度で20分間キー
プした。
【0022】次に、そのペレットを5°C〜20°C/
minで1000°Cまで降温した。
【0023】次いで、酸素を種結晶側より吹き付けるこ
とによって種結晶側を低温側に設定し、該種結晶側から
ペレット側にかけて5〜15°C/cmの温度勾配を付
け、1°C/時間で徐冷した。
【0024】こうして得られた1インチφ×(厚さ)5
mmのペレット内に育成された結晶粒は15mm角×3
mmであった。また、この結晶粒は、Y1 Ba2 Cu3
7- δ中にY2 BaCuO5 が微細分散されたものであ
って、超電導特性を示すものであり、その臨界電流密度
を測定したところ、1.7×104 A/cm2 であっ
た。
【0025】実施例2 まず、粒径0.01〜3μmのY2 3 、BaCO3
CuOの各原料粉を、Y:Ba:Cuの比が1.8:
2.4:3.4になるように混合した。
【0026】次に、この混合物を20°C/minの昇
温速度で1450°Cに昇温して溶融した後、銅板に流
し込み、室温まで急冷して凝固させた。
【0027】次に、この急冷した凝固体を粒径0.5〜
3μmに粉砕した後、1インチφのペレットに成形した
後、このペレット上にMgO単結晶をその(100)面
がペレット接触するようにして乗せた。
【0028】次に、このペレットをるつぼに入れ、これ
を白金線にて縦型管状炉の中央につるした。
【0029】次に、この縦型管状炉内で、ペレットを1
°C〜20°C/minで1100°Cまで昇温し、そ
の温度で20分間キープした後、ペレットをモーターで
2mm/時間の引上げ速度で種結晶側より引き上げるこ
とによって温度勾配をかけて徐冷した。
【0030】得られた1インチφ×(厚さ)5mmペレ
ット内に育成された結晶粒は20mm角×3mmであっ
た。また、この結晶粒は、Y1 Ba2 Cu3 7-δ中に
2 BaCuO5 が微細分散されたものであって、超電
導特性を示すものであり、その臨界電流密度を測定した
ところ、1.7×104 A/cm2であった。
【0031】次に、従来の方法で製造した例を比較例と
してかかげる。
【0032】比較例2 3 、BaCO3 、CuOをY:Ba:Cuの比が
1.8:2.4:3.4になるように秤量し、まず、B
aCO3 とCuOのみを混合し850°Cで24時間焼
成した。これをY2 3 と混合した後、1インチφのペ
レットに成形し、20°C/minで1100°Cまで
昇温した後20分キープし、20°C/minで100
0°Cまで降温する途中1030°Cにてあらかじめ作
成しておいたSm、Ba2 Cu3 7-δ単結晶2mm角
をこのペレット上にのせ10°C/cmの温度勾配をか
けて1°C/時間の割合で徐冷した。
【0033】得られた1インチφ×(厚さ)5mmペレ
ット内に育成された結晶粒は10mm角×3mmであっ
て、超電導特性を示すものであり、その臨界電流密度を
測定したところ、1.0×104 A/cmであった。
【0034】なお、以上の各実施例では、Y1 Ba2
3 7-δの酸化物超電導体を製造する例をかかげた
が、本発明は、一般式R1 Ba2 Cu3 7-δ(ただ
し、Rは、Y、Sc及びランタノイドのなかから選ばれ
る1種以上の元素とし、δ=0.1〜0.5とする)で
表される他の酸化物超電導体の製造にも同様に適用でき
ることが確認されている。
【0035】また、種結晶として、SrTiO3 単結晶
(ペロブスカイト構造)、MgO単結晶(立方晶)を用
いる例をかかげたが、種結晶としては、例えば、LaA
lO3 、LaGaO3 等のペロブスカイト構造を有する
単結晶や、YSZ、Si等の立方晶構造の単結晶を用い
ることができることが確認されている。
【0036】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、酸化物
超電導体の製造方法の1つであるいわゆる溶融法を用
い、製造すべき超電導体の結晶構造に類似する結晶構造
を有する結晶を種結晶として結晶を育成させるようにし
た方法において、種結晶として、分解温度が高いペロブ
スカイト構造を有する単結晶もしくは分解温度の高い立
法晶構造の単結晶を用いることを特徴としたもので、こ
れにより、より大きな結晶からなるR1 Ba2 Cu3
7-δの酸化物超電導体が得られるとともに、その製造プ
ロセスを簡略化できる酸化物超電導体の製造方法を得て
いるものである。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式R1 Ba2 Cu3 7-δ(ただ
    し、Rは、Y、Sc及びランタノイドのなかから選ばれ
    る1種以上の元素とし、δ=0.1〜0.5とする)で
    表される酸化物超電導体の製造方法において、 R化合物、Ba化合物、Cu化合物をR1+2KBa2+K
    3+K (ただし、K=0〜0.6とする)の組成で混合
    した後ペレット成形し、 次に、前記R1 Ba2 Cu3 7-δより分解温度が高い
    ペロブスカイト構造を有する単結晶を種結晶として前記
    ペレットに接触させ、 次いで、このペレットを1050〜1300℃に加熱し
    て該ペレット中にR2 BaCuO5 の相と液相とを形成
    させ、 しかる後に、前記種結晶側の温度を960〜1050°
    Cの低温側に設定して該種結晶側より前記ペレット側に
    かけて5〜20°C/cmの温度勾配をかけ、1°C〜
    5°C/時間の降温速度で徐冷することによって前記種
    結晶を基点としてR2 BaCuO5 がR1 Ba2 Cu3
    7-δ中に微細に分散された結晶を成長させるようにし
    たことを特徴とする酸化物超電導焼結体の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の酸化物超電導体の製造
    方法において、 前記種結晶がSrTiO2 単結晶であることを特徴とし
    た酸化物超電導体の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の酸化物超電導体の製造
    方法において、 前記種結晶として立方晶構造を有する単結晶を用いるこ
    とを特徴とした酸化物超電導体の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の酸化物超電導体の製造
    方法において、 前記種結晶がMgO単結晶であることを特徴とした酸化
    物超電導体の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載の
    酸化物超電導体の製造方法において、 前記R化合物、Ba化合物、Cu化合物をR1+2KBa
    2+K Cu3+K (ただし、K=0〜0.6とする)の組成
    で混合した後ペレット成形する工程が、 R化合物、Ba化合物、Cu化合物のうち少なくとも1
    つ以上を取り出して混合し、次に、この混合物を800
    〜900°Cで焼成し、しかる後にこの焼成物を残りの
    化合物と混合してペレット成形する工程であることを特
    徴とする酸化物超電導体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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