JPH0586412A - 製鋼方法 - Google Patents

製鋼方法

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JPH0586412A
JPH0586412A JP6916692A JP6916692A JPH0586412A JP H0586412 A JPH0586412 A JP H0586412A JP 6916692 A JP6916692 A JP 6916692A JP 6916692 A JP6916692 A JP 6916692A JP H0586412 A JPH0586412 A JP H0586412A
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亨 松尾
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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)
  • Carbon Steel Or Casting Steel Manufacturing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 脱燐処理時に高[Cr]濃度の溶銑を安定して
得られる手法を確立し、Cr願の高い良品質の鋼を安価に
溶製できる製鋼方法を提供する。 【構成】 上下両吹き機能を有する2基の転炉のうちの
一方を脱燐炉1、他方を脱炭炉2として、前記脱燐炉1
内へ注入した溶銑3に“クロム酸化物を含む化合物又は
混合物(クロム鉱石等)”を主成分とするか、或いはこ
れと共に“前記脱炭炉2で発生した転炉滓4”をも主成
分とする精錬剤を添加し、撹拌ガス吹込みノズル5によ
る底吹きガス撹拌とランス6からの酸素ガスの上吹きを
行いつつ溶銑温度を1400℃以下に保ちながら精錬を
行って溶銑[Cr]の上昇を図り、次いで得られた脱燐溶
銑を脱炭炉2で“通常造滓剤”を主成分とする精錬剤を
添加して精錬する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、転炉を用いた溶銑の
脱燐処理時に精錬剤としてクロム酸化物(クロム鉱石,
鉄−クロム鉱石等)を利用し、これによって得られた
[Cr]濃度の高い溶銑を使用して良品質の鋼を安価に溶
製する製鋼方法に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】近年、低燐鋼をより一層低いコ
ストで安定溶製する手段の開発を目指し様々な研究がな
されるようになったが、このような状況下にあって、最
近、製鋼ト−タルコストのミニマム化を考慮した溶銑の
予備脱燐法が模索されるようになった。
【0003】本発明者等も、先に、図3に略示したよう
な「上下両吹き機能を有した2基の転炉形式の炉を使用
し、 その一方を脱燐炉1、 他方を脱炭炉2として、 前記
脱燐炉1内へ注入した溶銑3に前記脱炭炉2で発生した
転炉滓4を主成分とする精錬剤の添加すると共に、 攪拌
ガス吹き込みノズル5により底吹きガス撹拌を行いつつ
ランス6より酸素ガスを上吹きすることで脱燐炉1の溶
銑3の温度を1200〜1400℃に保ちながら溶銑脱
燐を行い、 次に処理後の脱燐溶銑を脱炭炉2で脱炭並び
に仕上脱燐するという“脱燐スラグ- メタルの向流的2
段階接触精錬”にて、 極めて少ない量の造滓剤でもって
通常燐レベルの鋼或いは低燐鋼を作業性良く安価に製造
し得るようにした製鋼方法」を確立し、特公平2−14
404号として提案している。
【0004】なお、本発明者等が先に提案した上記発明
は、「全製鋼工程を通じての造滓剤の必要量はスラグと
メタルとを向流的に接触させる“スラグ- メタル向流精
錬”によるときが最も少なくて良いが、実際上は該向流
精錬の完全な実現は殆ど不可能であり、現状において最
も労少なく造滓剤の使用量を抑え得る可能性を秘めた製
鋼手段として挙げ得るものは、脱燐工程を2段階に分割
し、その下工程で発生するスラグを上工程の脱燐剤とし
て使用する方法以外に見当たらない」との認識の下に、
該“転炉滓再利用による製鋼法”に関し、作業安定性,
脱燐効率或いは設備コスト等の面での問題点解消を目指
した研究による次の知見事項(A) 〜(F)を基に完成され
たものである。
【0005】(A) 溶銑の脱燐処理においては脱燐効率か
らみて処理温度を出来るだけ低くする方が良いが、該温
度が余りに低くなり過ぎると次工程での不都合を引き起
こす上、処理後スラグへの粒鉄ロスが多くなると言う問
題が生じるので、該温度は1200〜1400℃、好ま
しくは1300〜1350℃程度が最も良好である。し
かし、実際作業では脱燐剤の添加そのものが処理温度を
低下する大きな要因となるので上記温度を保持するのは
極めて困難であるが、脱燐処理時に少量の酸素ガスを吹
き込むことによって前記処理温度が安定かつ容易に維持
される。
【0006】(B) フラックスの脱燐能を十分に発揮せし
めて脱燐能率を上げるには、上述のような処理温度の調
整もさることながら、脱燐平衡状態を達成するための十
分な撹拌を欠くことができないが、高温の溶銑を高能率
脱燐するに十分満足できる効率の良い撹拌を短時間に実
現するためには、処理容器底部から吹き込まれるガスに
よるガス撹拌が最も好ましい。
【0007】(C) 加えて、効率の良い脱燐処理を行うた
めには処理容器にスラグフォ−ミングのための十分なフ
リ−ボ−ド(湯面から容器上端までの距離)が必要であ
る, (D) スラグによる処理容器耐火物の溶損を軽減して脱燐
作業能率を上げるためには、塩基性ライニングの使用が
好ましい。 (E) 2段階脱燐工程を含む製鋼法において脱燐作業能率
を上げるためには処理容器からの排滓能率を無視するこ
とができず、排滓が容易な処理容器の使用を欠かせな
い。 (F) 高品質鋼を作業性良く量産するためには十分な排ガ
ス処理設備(集塵機)が必要である。
【0008】(G) これらの条件を考慮すると、溶銑脱燐
処理容器としては転炉形式の炉、それも炉底から撹拌ガ
スを導入できる上下両吹き機能を有した複合吹錬転炉が
理想的であり、これを使用して前述した“2段階脱燐工
程を含む製鋼法”を実施すると、全製鋼工程を通じての
造滓剤の使用量が極く少なくても十分に効率の良い脱燐
がなされ、高品質鋼を作業能率良く量産できる。
【0009】そして、この本発明者等が先に提案した方
法は、使用造滓剤量を極力抑えた低コスト操業でもって
低燐鋼を安定して製造することができ、高品質鋼を安価
に提供する上で極めて有利であった。
【0010】一方、益々高まりつつある鋼材の高品質
化,低価格化要求を受けて「高クロム鋼を出来るだけ低
い価格で溶製しよう」との研究も続けられてきており、
例えば「脱燐溶銑を転炉内(前記脱炭炉に相当)で造滓
剤を使用することなく吹錬を行い、 この吹錬中にクロム
鉱石を溶鋼中に添加して溶鉄の精錬終点[Cr]を上昇さ
せる方法(特開昭56−91913号公報)」等のよう
な溶鉄中[Cr]上昇法も提案されている。
【0011】しかし、この方法を適用した場合でも脱炭
炉でのクロム鉱石の添加可能量には限度があり、要求さ
れる製品の[Cr]値を満たすために相当量の不足[Cr]
分を高価なフェロクロム等の添加で補う必要があった。
従って、精錬後のフェロクロム添加量を減らし高Cr鋼の
製造コストを更に下げるためには、脱炭炉終点[Cr]値
を更に上げなければならなかったが、そのための有効な
手立ては見当たらなかった。
【0012】
【課題を解決するための手段】このようなことから、本
発明者等は、上下両吹き機能を有した2基の転炉形式の
炉のうちの一方を脱燐炉、他方を脱炭炉として溶銑の精
錬を行うという“先に提案した製鋼方法”の利点を生か
し、かつ脱炭炉での終点[Cr]濃度を効果的に上昇させ
ることが可能な“能率が良くて製造コストの安い製鋼方
法”を見出すべく研究を続けたところ、新たに次のよう
な知見が得られた。
【0013】(a) 先に提案した方法(特公平2−144
04号)では脱燐炉でクロム鉱石を添加した場合の効果
について格別な認識はなされなかったが、この脱燐炉に
おいてもクロム鉱石を必須の精錬剤として吹錬を行う
と、該クロム鉱石も脱燐のための酸化剤として十分に作
用する上、脱燐炉で脱燐された溶銑の[Cr]濃度を最大
限に高めることが簡単に可能となること。なお、この場
合において造滓剤を構成するクロム鉱石以外の成分とし
ては、例えば生石灰(CaO) ,蛍石(CaF2),ドロマイ
ト(CaCO3 ・ MgCO3),鉄鉱石(Fe23, Fe34),マ
ンガン鉱石又は鉄マンガン鉱石,石灰石等で十分であ
る。
【0014】(b) 通常、溶銑脱燐用の精錬剤(フラック
ス)は生石灰,酸化鉄及び蛍石を主成分としており、中
でも酸化鉄は不可欠な成分とされていて、本発明者等が
先に提案した方法(特公平2−14404号)において
も「スラグ中のFeOを確保し脱燐を促進するために脱燐
炉で添加する精錬剤(脱燐剤)中に酸化鉄を含ませるこ
とが不可欠である」と認識されていた(従って脱燐剤は
〔転炉滓+酸化鉄+蛍石〕を主成分とするものが良好と
されていた)が、この場合、脱燐剤として酸化鉄を含ま
ない〔転炉滓+クロム鉱石〕、或いはこれに蛍石,生石
灰を配合したものを使用してもクロム鉱石が酸化鉄の代
替剤として有効に作用し良好な脱燐が進行すること。
【0015】(c) 従って、転炉滓以外の必須成分であっ
た酸化鉄に代えてクロム鉱石を含む精錬剤を脱燐炉での
脱燐剤として使用すれば、酸化鉄添加に要する費用が削
減された上で十分に良好な脱燐を進行させることができ
(クロム鉱石は脱燐促進作用を発揮するが、 それ自身が
[C]等で還元されて脱燐銑の[Cr]をも効果的に上昇
させる)、この点からの製造コスト低減効果も確保され
ること。
【0016】(d) これらの結果、その後に行われる脱炭
炉精錬の前での[Cr]がより高くなり、この高い[Cr]
を脱炭炉精錬後にまで維持できることから、脱炭精錬後
のクロム合金鉄添加量を極力低めて高Cr鋼の製造コスト
を顕著に節減できるようになること。
【0017】本発明は、上記知見事項等に基づく検討の
中で完成されたものであり、「図1に示される如く、 上
下両吹き機能を有する2基の転炉のうちの一方を脱燐炉
1、 他方を脱炭炉2として、 前記脱燐炉1内へ注入した
溶銑3に“クロム酸化物を含む化合物又は混合物(クロ
ム鉱石等)”を主成分とするか、 或いはこれと共に“前
記脱炭炉2で発生した転炉滓4”をも主成分とする精錬
剤を添加し、撹拌ガス吹込みノズル5による底吹きガス
撹拌とランス6からの酸素ガスの上吹きを行いつつ溶銑
温度を1400℃以下に保ちながら精錬を行って溶銑
[Cr]の上昇を図り、 次いで得られた脱燐溶銑を脱炭炉
2で“通常造滓剤”を主成分とする精錬剤を添加して精
錬することにより、 低燐レベルで高い[Cr]含有量の高
品質鋼を作業性良く安価に製造し得るようにした点」に
大きな特徴を有するものである。
【0018】ここで、脱燐炉での処理温度を1400℃
以下に調整する理由は、溶銑処理温度がこれよりも高く
なると脱炭ばかりが進行してスラグ中の酸化剤量が低く
なると共に、熱力学的にも1400℃以上では脱燐が悪
化することにある。しかし、余りに低温になるとスラグ
への粒鉄ロスが増加するので、この点に留意する必要が
ある。
【0019】即ち、クロム鉱石の溶融還元は Cr23 +3[C]→2[Cr]+3CO なる吸熱反応で進行する(クロム鉱石の冷却能はスクラ
ップの約3倍もある)。従って、クロム鉱石の添加可能
量(溶融還元可能量)は溶銑の温度及び[C]濃度が高
いほど多くなる。そこで、脱燐炉に注湯する溶銑の温度
及び[C]濃度を出来るだけ高くすることが先ず考えら
れるが、高炉の出銑温度や高炉銑の[C]濃度を大きく
変えることは技術的にもコスト的にも問題がある。従っ
て、脱燐処理時に溶銑の温度と[C]濃度(即ち溶銑の
顕熱と潜熱の合計)を出来るだけ下げないことが重要で
ある。このようなことから、脱燐炉での処理温度は14
00℃以下の領域の中で可能な限り高めに維持するのが
良い。
【0020】上述のような処理温度の維持は、上吹きラ
ンスからの酸素ガス吹き込み或いは炉底羽口からの酸素
ガス吹き込みの併用によって行われる。つまり、上記脱
燐炉での酸素ガス吹き込みは、脱燐処理温度を補償する
ために行われるのである。従って、ここでの上吹き酸素
ランスは通常の転炉ランスでも良いが、脱燐用に新作し
た小流量ランスであっても良い。そして、使用酸素ガス
量は処理前の溶銑温度や珪素含有量、転炉滓の温度、脱
燐炉の温もり具合、目的とする処理溶銑温度等によって
決定されるが、概ね20Nm3/t 以下で良く、通常は5〜
10Nm3/t が効果的である。因に、このときの脱炭量は
0.5%程度である。
【0021】前記「上下両吹き機能を有した転炉形式の
炉」としては現在使われている“上下吹き複合吹錬転
炉”が最も好ましいが、特に脱燐炉については、精錬条
件が脱炭炉よりもマイルドであるため炉自体を更に小さ
くしても良いので、脱燐専用に新設してもコスト的にそ
れほどの影響はない。
【0022】脱燐炉での精錬剤(脱燐剤)としては、
“クロム酸化物を含む化合物又は混合物”を主成分とす
るものが使用されるが、この“クロム酸化物を含む化合
物又は混合物”に加えて“脱炭炉で発生した転炉滓”を
も主成分とするものを使用すれば、造滓剤消費量の著し
い低減や安定した脱燐効率維持,作業性維持にもつなが
るので好ましい。つまり、この精錬剤としては、例えば 転炉滓:40〜80重量%, クロム鉱石:10〜60重量%, 蛍石:0〜30重量% の配合組成のものが推奨される。
【0023】なお、例えば工場での流通バランス事情等
のために脱燐炉で使用すべき“脱炭炉発生の転炉滓”が
不足しているときは、脱燐炉で添加する転炉滓の代替と
して転炉滓に相当する成分の造滓剤混合物(生石灰,蛍
石,鉄鉱石を主成分とするもの)を適用(実作業的には
生石灰,蛍石,鉄鉱石を増配する)しても良いが、この
場合は転炉滓に比べて若干滓化性が悪化するので、蛍石
を更に増配する配慮を講じるのが良い。また、クロム鉱
石は酸化鉄に比して滓化の点で幾分不利であるため、こ
の点からも蛍石は積極的に添加するのが良く、それも酸
化鉄を配合する場合よりも多めとするのが望ましい。
【0024】なお、“クロム酸化物を含む化合物或いは
混合物”としては、上記クロム鉱石の他、鉄−クロム鉱
石,ステンレス鋼溶製時に生成するクロム酸化物を多量
に含むスラグ等が比較的入手が容易なものと言える。こ
れらクロム鉱石等の溶融還元(自身は酸化剤として作用
する)量は、添加量によっても異なるが、例えば投入量
10kg/tで[Cr]増加量は0.15〜0.25%程度である。
【0025】勿論、この精錬剤は上記組成に限定される
ものではなく、例えば付加的に生石灰を配合したり、 C
aCl2, Na2O・SiO2 , Na2CO3 等を加えても良い。
そして、転炉滓以外のこれら脱燐剤原料は滓化性の面か
ら小さい粒径程好ましいが、一般に使われている程度の
ものであれば何ら差し支えない。
【0026】次に、脱燐炉でのクロム酸化物の還元歩留
を高くするための“塩基度の好適範囲”を図2によって
説明する。図2は、 "脱燐炉のスラグ中(Cr)〔実際は
Cr23 の形態であるCr分を重量%で表わしたもの〕と
溶銑[Cr]との比(Cr分配比)”に及ぼす“スラグ塩基
度[(CaO) / (SiO2)] ”の影響を示したものである。
【0027】この図2からも明らかなように、スラグ塩
基度[(CaO)/ (SiO2)] が 2.5 ≦ (CaO) / (SiO2) ≦4 の時、より顕著には 2.75 ≦ (CaO) / (SiO2) ≦ 3.5 の時に「(Cr)/[Cr]」が低値となり、有効にCr上昇
していることが分かる。即ち、クロム酸化物は弱いなが
らも“塩基性酸化物”であるので、スラグの塩基度を上
げることでスラグ中クロム酸化物を減少させることがで
きる。また、スラグの流動性から考えた場合には、塩基
度が 3.5〜4を超えるとスラグが固化し始めるためクロ
ム酸化物の還元が進行しなくなることも指摘できる。従
って、これらの総合作用が、図2に示されるような好ま
しい塩基度範囲を作り出しているものと考えることがで
きる。
【0028】脱燐炉で使用される精錬剤(脱燐剤)の量
は溶製する鋼の[P]レベルにより決定されるが、通常
は30〜60kg/t程度で良い。さて、脱燐炉で使用され
る精錬剤の主成分として好適な転炉滓としては、脱炭炉
で発生した溶融状態のものが熱経済的にも脱燐フラック
スの滓化性の面からも好ましいが(このように溶融状態
のものを用いる場合には耐火物を内張りした鍋を介して
脱燐炉に注滓される)、取り扱いの容易さ等を考慮して
脱炭炉で得られたものを一旦冷却凝固させ、粒状又は塊
状に破砕してから用いても良い(なお、この時も熱的な
面からスラグの温度は高い程良い)。ただ、この場合、
脱燐炉での滓化性向上のために粒径は小さいほど良好で
あるが、転炉滓は本来滓化性に富んでいることもあって
粒径が100mmを下回る程度でも格別な不都合を来たす
ことがないし、これより大きくても使用可能である。そ
して、使用される転炉滓は、タイミングとしては前回チ
ャ−ジのものが良いが、それ以前に脱炭炉から出たもの
や他の工場の脱炭炉で発生したものでも良いことは言う
までもない。
【0029】炉底から吹き込む撹拌ガスとしてはAr,C
2 ,CO, N2 ,O2 ,空気等の何れであっても良
い。そして、脱燐炉の炉底ガス撹拌の程度は通常の上下
両吹き複合吹錬におけると同程度(0.03〜0.2 Nm3/t )
で良いが、脱燐速度の向上を狙ってこれよりも更に多く
して良いことは勿論である。以上のような条件で脱燐処
理を行うと、通常、20分以内で所望の高[Cr]濃度の
脱燐銑を得ることができる。
【0030】次いで実施される脱炭炉での吹錬は、基本
的には通常の“炉外で脱燐された溶銑”を吹錬する場合
と同様であるが、終点での溶鋼[Cr]を維持或いは上昇
させるべく、生石灰やドロマイトを中心とする造滓剤の
他にクロム鉱石等の“クロム酸化物を含む化合物或いは
混合物”を添加しても良いことは言うまでもない。
【0031】ところで、この発明に係る製鋼法を実施す
る場合には、出来れば適用される溶銑の事前脱硫処理を
行うのが良い。その第一の理由として該製鋼法では脱硫
の進行が極めて鈍いことが挙げられるが、他方では、事
前脱硫していない溶銑を用いた場合には転炉スラグ中の
S含有量が上昇し、次のチャ−ジにおける溶鋼S含有量
を高めることも懸念されるからである。なお、前記事前
脱硫は通常行われている溶銑脱硫方法の何れによっても
良い。
【0032】更に、この方法に適用される原料溶銑のSi
含有量も低いほど好ましい。なぜなら、溶銑中のSi含有
量が多くなるほど前記脱燐炉でのスラグ塩基度が低下し
て脱燐能が落ち、全体での生石灰等の使用量が増加する
ためである。それ故、溶銑のSi含有量は出来れば 0.3%
以下、好ましくは 0.2%以下に調整しておくのが良策で
ある。なお、脱炭炉の条件から処理後の溶銑温度を少し
でも高くしたいような場合、溶銑のSi含有量は 0.2%程
度の方が有利なこともあり、工場のロ−カル条件によっ
て決定すべきである。
【0033】続いて、この発明を比較例と対比した実施
例により更に具体的に説明する。
【実施例】比較例1 ト−ピ−ド内で脱硫,脱珪処理した表1の上段に示す成
分の溶銑160トンを脱燐炉として使用する上下両吹き
複合吹錬転炉に注銑し、これに同様の形式の脱炭炉で発
生した転炉滓を冷却・凝固して30mm以下の粒径に破砕
したもの、及び同様の粒径を持つ鉄鉱石並びに蛍石を下
記の配合割合で混合し添加して、10分間の脱燐処理を
行った。 転炉滓:15kg/t,鉄鉱石:12kg/t,蛍石:5kg/t,
生石灰:6kg/t。
【0034】
【0035】ここで、精錬剤として配合した蛍石の成分
は、実質的にCaF2:90%,SiO2:10%のものであっ
た。また、使用した脱燐炉並びに脱炭炉は、何れも炉底
よりガス吹込み撹拌が可能な160トン上下両吹き複合
吹錬転炉であり、表2に示したような操業条件が採用さ
れた。
【0036】
【0037】このようにして得られた脱燐銑(成分組成
は表1の中段に示す)を、一旦鍋中に出銑してから脱炭
炉に注銑し、下記の造滓剤を添加して主吹錬(約16
分)を実施した。 クロム鉱石:20kg/t,生石灰:10kg/t,蛍石:2kg
/t。
【0038】なお、このとき発生した転炉滓は15kg/t
であったが、「これを次チャ−ジにおける脱燐剤の原料
として脱燐炉に添加し脱燐を行うと言う一連の操作」を
繰り返した。
【0039】この結果、表1の下段に示すような鋼中
[P]が 0.009重量%,[Cr]が0.45重量%という溶鋼
が得られた。なお、表1で脱燐後の[Cr]が上昇してい
るのは、脱炭炉で発生した転炉滓中の(Cr23)が約10
重量%存在していたことによる。
【0040】比較例2 ト−ピ−ド内で脱硫,脱珪処理した表3の上段に示す成
分の溶銑160トンを脱燐炉として使用する上下両吹き
複合吹錬転炉に注銑し、これに同様の形式の脱炭炉で発
生した転炉滓を冷却・凝固して30mm以下の粒径に破砕
したもの、及び同様の粒径を持つ鉄鉱石並びに蛍石を下
記の配合割合で混合し添加して、10分間の脱燐処理を
行った。 転炉滓:15kg/t,鉄鉱石:15kg/t,蛍石:5kg/t,
生石灰:5kg/t。
【0041】
【0042】なお、脱燐炉の精錬条件は、3孔ラバ−ル
ノズルを有する上吹きランスによってO2 量:0.5Nm3/
min ・ t で送酸し、炉底からN2 ガス:0.1Nm3/min・ t
にて攪拌するものであった。この結果、表3の下段に
示されるような[P]が 0.012%,[Cr]が0.04%の溶
銑が得られた。
【0043】実施例1 脱燐炉内に注銑した表4の上段に示される如き成分の脱
硫,脱珪溶銑160トンに、脱炭炉で発生した転炉滓、
並びに蛍石,生石灰のほか、鉄鉱石に代えて粒径30mm
以下のクロム鉱石を下記の配合割合で添加した以外は前
記比較例1の場合と同条件で脱燐処理を行った。 転炉滓:15kg/t, クロム鉱石:12kg/t, 蛍石:
5kg/t,生石灰:10kg/t。
【0044】
【0045】次いで、このようにして得られた脱燐銑
(成分組成は表4の中段に示す)を前記比較例と同様条
件で脱炭炉において精錬した。その結果、表4の下段に
示す成分組成の溶鋼が得られ、脱炭炉での終点[Cr]が
0.75重量%まで上昇したことが明らかとなった。
【0046】実施例2 脱燐炉内に注銑した表5の上段に示される如き成分の脱
硫,脱珪溶銑160トンに、粒径30mm以下のクロム鉱
石と脱炭炉で発生した転炉滓、並びに蛍石,生石灰を下
記の配合割合で添加した以外は前記比較例2の場合と同
条件で脱燐処理を行った。 転炉滓:15kg/t, クロム鉱石:15kg/t, 蛍石:
6kg/t,生石灰:10kg/t。
【0044】
【0045】この結果、表5の下段に示したような
[P]が 0.012%で、[Cr]が0.45%という低燐・高
[Cr]溶銑が得られ、最終溶鋼製品の高い[Cr]濃度の
確保が可能となることが確認された。
【0046】実施例3 脱燐炉内に注銑した表6の上段に示される如き成分の脱
硫,脱珪溶銑160トンに、粒径30mm以下のクロム鉱
石と蛍石,生石灰を クロム鉱石:15kg/t, 蛍石:10kg/t, 生石灰:
12kg/t, なるの配合割合で添加した以外は前記比較例2の場合と
同条件で脱燐処理を行った。
【0047】なお、精錬剤成分として転炉滓を使用しな
いこの実施例の場合には幾分か精錬剤中のクロム鉱石の
溶解速度が低下するため、上記の如く精錬剤中の蛍石を
増量し、更に塩基度調整として生石灰も多少増量した点
が実施例2の場合と異なっている。
【0048】
【0049】この結果においても、表6の下段に示した
ような[P]が 0.014%で、[Cr]が0.44%という低燐
・高[Cr]溶銑が得られ、やはり最終溶鋼製品の高い
[Cr]濃度の確保が可能となることが確認された。
【0050】ところで、上記各「比較例」及び各「実施
例」で使用した“クロム鉱石”及び“脱炭炉で発生した
転炉滓”の成分組成は次の通りであった。 クロム鉱石… Cr23 :30〜40重量%, T.Fe :15〜20重量%, Mg O:10〜15重量%, Al23 :10〜15重量%, Si O2 :5〜15重量%。 転炉滓… Ca O:40〜50重量%, Si O2 :5〜15重量%。 Ca F2 :1〜10重量%。 Mg O:5〜10重量%, Cr23 :5〜15重量%, Mn O:5〜10重量%, P2 5 :1重量%。
【0051】
【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、効率の良い前処理によって[Cr]濃度が従来法に比
べ約 0.4重量%程度も高い脱燐溶銑を安定して作ること
ができ、Cr含有量の高い高品位鋼を安価に製造すること
が可能になるなど、産業上極めて有用な効果がもたらさ
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明プロセスの概念図である。
【図2】脱燐炉でのCr分配比とスラグ塩基度との関係を
示したグラフである。
【図3】先に提案した製鋼法に係わるプロセスの概念図
である。
【符号の説明】
1 脱燐炉 2 脱炭炉 3 溶銑 4 転炉滓 4′脱燐スラグ 5 撹拌ガス吹き込みノズル 6 ランス

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上下両吹き機能を有する2基の転炉のう
    ちの一方を脱燐炉、他方を脱炭炉として、前記脱燐炉へ
    注入した溶銑に“クロム酸化物を含有する化合物又は混
    合物”を主成分とする精錬剤を添加し、底吹きガス撹拌
    と酸素ガスの上吹きを行いつつ溶銑温度を1400℃以
    下に保ちながら精錬を行い、次いで得られた脱燐溶銑を
    脱炭炉にて“通常造滓剤”を主成分とする精錬剤を添加
    して精錬することを特徴とする、溶鉄中クロム濃度を上
    昇させる製鋼方法。
  2. 【請求項2】 脱燐炉に添加する精錬剤として“クロム
    酸化物を含有する化合物又は混合物”及び“脱炭炉で発
    生した転炉滓”を主成分とする精錬剤を用いることを特
    徴とする、請求項1に記載の製鋼方法。
  3. 【請求項3】 脱燐炉へ注入する被処理溶銑としてSi含
    有量0.30重量%以下にまで予備脱珪処理されたものを使
    用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の製鋼
    方法。
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Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS58100608A (ja) * 1981-12-11 1983-06-15 Nippon Steel Corp 高合金溶湯の脱リン・脱硫方法
JPH01215917A (ja) * 1988-02-24 1989-08-29 Kawasaki Steel Corp ステンレス鋼の溶製方法
JPH02197513A (ja) * 1989-01-27 1990-08-06 Sumitomo Metal Ind Ltd 製鋼方法

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