JPH058480Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案は、溶解炉等の金属溶湯容器の内壁に
付着した金属や鉱滓等の付着物を除去する装置に
関するもので、特に熱源が容器の外周に設けられ
た高周波および低周波誘導加熱炉や、上部から原
材を投入してバーナで上方から加熱するいわゆる
トツプチヤージ型溶解炉あるいは取鍋等の上部に
開口部を備えた金属溶湯容器の内壁付着物の除去
作業に適した装置に関するものである。

従来の技術 鋳造用あるいは合金の調製および造塊等のため
に金属材料を溶解する溶解炉の内壁や、溶解され
た金属溶湯を汲取る取鍋等の内壁には炉滓が付着
する。この内壁へ付着した炉滓は、除去せずに放
置すると徐々に成長して厚さを増し、容器内の容
積を減少させるとともに、容器のライニング材を
損傷する等の弊害が生じるため、この内壁付着物
の除去を適切な時期に行なう必要がある。

この内壁付着物の除去作業は多くの場合、付着
物が熱により軟化し、付着力が低下して掻き落し
易くなつている状態、すなわち溶解炉や取鍋等の
金属溶湯容器内に、充分な量の溶融金属が保持さ
れている状態において行なわれもので、例えば第
４図に示すように、金属溶解炉等の金属溶湯容器
１の上部開口１ａとほぼ同じ高さに位置した作業
者Ｈが、先端に掻き落し板２ｂを備えた長い柄の
掻き落し棒２ａを用いて、金属溶湯容器１の内壁
１ｂに付着している付着物Ｓを掻き落とすのが一
般的である。

考案が解決しようとする問題点 ところが、前記したように作業者が長い柄の掻
き落し棒２ａを用いて内壁付着物Ｓの除去を行な
うには、金属溶解炉等の金属溶湯容器１の周囲は
高温かつ高粉塵で苛酷な作業環境であり、また金
属溶湯容器１の上部開口１ａの付近で作業するた
め安全衛生面において問題があつた。また、金属
溶湯容器１内に溶融金属Ｍが保持されている状態
で作業する場合には、掻き落し棒２ａが、溶解し
た高温の溶湯中に浸漬された状態で力が加えられ
るため柄および掻き落し板２ｂが熱的変形を起し
易く、耐用期間が短いという問題点があつた。ま
た変形を防止するため掻き落し棒２ａの各部材の
強度をアツプすると重量が増してその取扱いが困
難となり、作業性を低下させるという問題点があ
つた。さらに、掻き落し棒２ａが重く、また容器
１内の比重の大きな溶融金属Ｍの抵抗が加わるた
め、掻き落し作業が重労働となるという問題点が
あつた。また、金属溶湯容器１内に溶融金属Ｍが
溜められている場合には付着物Ｓを掻き落す金属
溶湯容器１の内壁１ｂが溶融金属Ｍにより隠れて
しまい掻き落し状態を目視により確認できず、そ
のため付着物Ｓの掻き落しが不完全となつたり、
あるいは既に付着物Ｓが掻き落された場所を過度
に重複して引掻いて金属溶湯容器１の内壁１ｂの
表面を損傷する虞れがあつた。

この考案は上記問題点に鑑みなされたもので、
苛酷な作業環境下における重労働である金属溶湯
容器の内壁付着物の掻き落し作業を機械化すると
ともに、内壁付着物の完全な掻き落しを短時間に
容易に達成できる金属溶湯容器の内壁付着物除去
装置の提供を目的としている。

問題点を解決するための手段 上記問題点を解決するための手段としてこの考
案は、金属溶湯を保持する容器の内側に付着した
内壁付着物を除去するための金属溶湯容器の内壁
付着物除去装置において、下端に掻き落し板を備
えたアームと、該アームの上部を揺動可能に支持
する支持部材と、前記アームを金属溶湯容器の半
径方向に沿つた方向へ進退移動調整するための位
置調整機構と、前記アームを金属溶湯容器の内壁
面に向けて弾性的に押動する弾性押動手段とを有
するとともに、前記支持部材の上部に昇降機構へ
の連結部を有することを特徴としている。

作 用 上記のように構成することにより、支持部材の
上部を昇降機構に連結するとともに、アームの先
端に設けられた掻き落し板が弾性押動手段により
金属溶湯容器の内壁面を押圧するように位置調整
機構によつてアームの位置を調整した後、前記昇
降機構により昇降させると、弾性押動手段により
押動されているアームの先端の掻き落し板が、金
属溶湯容器の内壁面へ弾性的に押圧されて当接し
た状態を保持しながら上下方向に移動し、内壁面
上の付着物を掻き落す。また、昇降作業中の掻き
落し板が内壁面の凹凸部に衝突した際には、弾性
押動手段が緩衝して装置の変形・故障や炉壁耐火
物の損傷を防止する。

実 施 例 以下、この考案を円筒形の溶解炉の内壁付着物
を除去する付着物除去装置に適用した一実施例を
第１図ないし第３図に基づいて説明する。

付着物除去装置１１は、120度の等間隔で放射
状に接続され、それぞれが水平となるように配設
された３本の支持ビームと１２と、これら各支持
ビーム１２の外周に嵌挿され、かつ各支持ビーム
１２に沿つて水平方向に移動可能に配設されたス
ライダ１３と、このスライダ１３に設けられた雌
ねじコマ１３ａに螺合するとともに前記各支持ビ
ーム１２の上面側に設けられた軸受け１４ａ，１
４ｂに回動可能に支持された送りねじ１５とを備
えており、前記送りねじ１５の端部には回動用ハ
ンドル１５ａが設けられており、この回動用ハン
ドル１５ａを正逆回転させることによつて、前記
スライダ１３を前進後退駆動できるようになつて
いる。これらの回動用ハンドル１５ａ、送りねじ
１５等は、後述するアーム１６を金属溶湯容器の
半径方向に沿つた方向へ進退移動調整するための
位置調整機構を構成している。

そして、前記各支持ビーム１２に移動可能に配
設された各スライダ１３の下部にはアーム１６が
ピン１６ａにより回動自在にそれぞれ吊持されて
おり、各アーム１６は下部を放射方向外方（以下
単に外方という。）に折曲するとともに下端には
掻き落し板１７が取付けられている。

さらに前記支持ビーム１２には、各支持ビーム
１２のスライダ１３を設けた位置より放射方向中
心寄りに、押動アーム１８が固定されており、こ
れら各押動アーム１８の上部には、前記一方の軸
受け１４ｂが設けられている。また前記各押動ア
ーム１８は、必要に応じて各支持ビーム１２に沿
つて水平方向移動可能となつている。そして、こ
れら各押動アーム１８の下端側には弾性押動手段
であるスプリング１９が取付けられており、各ス
プリング１９の先端は、それぞれ同一の支持ビー
ム１２にスライダ１３を介して吊持されている前
記アーム１６の側面に連結され、このスプリング
１９の弾性力によつて、アーム１６がピン１６ａ
を支点に回動して常時外方へ押動されるようにな
つている。なお１１ａは、この付着物除去装置１
１を昇降させるクレーン、ホイスト等の昇降機構
（図示せず）に接続する接続部である。

次に、上記のように構成される付着物除去装置
１１により、溶解炉の内壁に付着した付着物を除
去する場合について説明する。

溶解炉２０は、上部に開口２０ａを有する円筒
形の炉で、内側は耐火性のライニング材２１によ
り全面が覆われている。そして、ライニング材２
１の内壁面２１ａに付いた付着物Ｓの除去作業
は、この溶解炉２０の通常融解面付近まで溶融金
属Ｍが保持されて、付着物が軟化しているときに
行なうことが好ましい。

除去作業は、先ず、付着物除去装置１１の各ハ
ンドル１５ａを介して送りねじ１５を回動して各
スライダ１３の位置を外方へ移動させることによ
り、３本のアーム１６を前記ピン１６ａを支点と
して回動させ、それぞれの下端側を内方に移動さ
せて各掻き落し板１７の位置を通る円の直径が、
溶解炉２０の内径より若干小さくなるようにセツ
トし、次にクレーン等により接続部１１ａを掛止
して吊上げ、前記溶解炉２０の上方に移動した後
降下させる。

クレーン等の昇降機構により吊持した付着物除
去装置１１が降下して、３本のアーム１６の掻き
落し板１７が溶解炉２０の開口２０ａから内部に
入つたところで降下を一時止めて前記ハンドル１
５ａを操作し、各スライダ１３の位置が外方へ移
動するように送りねじ１５を回動して各スライダ
１３に吊持されたアーム１６の掻き落し板１７が
内壁面２１ａに当接しかつ、スプリング１９が所
定の弾性力によりアーム１６を外方へ押動し、各
アーム１６の掻き落し板１７がライニング材２１
の内壁面２１ａに押圧されるように調整した後、
この状態で付着物除去装置１１を再び降下させ
る。

前記掻き落し板１７が内壁面２１ａを押圧した
状態で付着物除去装置１１が降下すると、掻き落
し板１７の下辺が内壁面１７付着している付着物
Ｓを掻き落しながら降下する。そして、前記各掻
き落し板１７が溶解炉２０の底部に達したら、ク
レーン等の昇降機構に吊持されている付着物除去
装置１１を、内壁面２１ａ上の掻き落し作業が未
実施の個所の方向に前記掻き落し板１７の幅に相
当する角度だけ旋回させた後に上昇させる。内壁
付着物除去装置１１が上昇すると、スプリング１
９により押圧されて内壁面２１ａに弾性的に常時
当接している前記掻き落し板１７の上辺が付着物
Ｓを掻き取りながら上昇する。そして付着物除去
装置１１が所定の高さまで上昇したら、内壁面２
１ａの作業実施方向に掻き落し板１７の幅だけさ
らに旋回させた後、この付着物除去装置１１を再
び降下させて付着物Ｓを掻き落す作業を繰返し行
なうことにより、溶解炉２０の内壁面２１ａの全
周に付着した付着物を除去する。

また、付着物除去装置１１を上昇または降下さ
せている際に、各アーム１６の下端に設けられた
掻き落し板１７が、ライニング材２１の目地等の
内壁面２１ａ上の凹凸部に当接して生じる衝撃
を、各アーム１６を外方に押動しているスプリン
グ１９が緩和または回避して、この付着物除去装
置１１およびライニング材２１の損傷を防止す
る。

上記のように本実施例の付着物除去装置１１
は、それぞれの下端に掻き落し板１７を備えたア
ーム１６を120度の等間隔で３本設けるとともに、
各アーム１６をスプリング１９によりそれぞれ外
方に押動するようにしたので、３枚の掻き落し板
１７が内壁面２１ａに弾性的に常時押圧された状
態で当接するとともに、各掻き落し板１７が互い
に他の掻き落し板１７を押圧するスプリング１９
の押動力に対する反力受けとなり、３点で当接し
て安定した状態で、各掻き落し板１７が内壁面２
１ａから離れることなく常時当接して掻き落し作
業が行なわれ、付着物Ｓを残すことなく内壁面２
１ａから除去することができる。

また、３枚の掻き落し板１７が内壁面２１ａに
常時当接しているため、付着物除去装置１１を降
下させた時だけでなく、上昇時および旋回時にも
掻き落し板１７により付着物Ｓを掻き落すことが
できる。

なお、上記実施例においては円筒形をした溶解
炉２０の内壁面２１ａに付着した付着物Ｓを除去
する場合について説明したが、他に高周波および
低周波誘導加熱炉や、上部から原材を投入してバ
ーナ等で上方から加熱するいわゆるトツプチヤー
ジ型溶解炉あるいは取鍋等の円筒形の金属溶湯容
器の内壁付着物の除去にも使用でき、また内径が
下方で若干絞られたり、あるいは逆に下方で若干
拡大している等の容器径の変化する金属溶湯容器
の場合にも使用することができる。また、掻き落
し板１７の形状を変えることにより円形以外の断
面形状の金属溶湯容器用の付着物除去装置にも適
用することができる。

また、上記実施例においては、掻き落し板１７
を下端に設けたアーム１６を３本備えた付着物除
去装置について説明したが、掻き落し板を下端に
設けたアームの本数は適宜選択でき、アームが２
本以上の装置の場合には上記実施例の装置と同様
に、各アームが互いに他のアームの弾性押圧力に
対する反力を受ける構造とし、アームが１本の装
置場合には、例えば昇降機構が弾性押圧力に対す
る反力を受けることができるように装置と昇降機
構とを連結して用いる。

さらに、上記実施例においては、アーム１６を
外方に押動する弾性押動手段としてスプリング１
９を用いたが、他に油圧シリンダやエアシリンダ
あるいはゴム等の弾性体を用いることもできる。

また上記実施例は、内壁付着物の除去作業を溶
解炉２０内に溶融金属Ｍが保持されている状態で
行なう場合について説明したが、溶融金属Ｍを排
出した後でも、内壁面２１ａ上の付着物Ｓが冷え
て固化する前であれば同様に実施することができ
る。

考案の効果 以上説明したようにこの考案の金属溶湯容器の
内壁付着物除去装置は、下端に掻き落し板を備え
たアームと、該アームの上部を揺動可能に支持す
る支持部材と、前記アームを金属溶湯容器の内壁
面に向けて弾性的に押動する弾性押動手段とを有
するとともに、前記支持部材の上部の連結部を介
して昇降機構に連結するようにしたので、苛酷な
作業環境下における重労働である内壁付着物の掻
き落し作業の機械化により作業の安全衛生面を改
善できるとともに、容器内に溶融金属を保持した
状態でも内壁面全面に亘る付着物の完全除去を、
短時間で容易に達成することができる。

また、掻き落し板を内壁面に弾性的に押圧した
状態で掻き落すので、金属溶湯容器のライニング
材等の内壁を損傷することなく付着物を効率良く
除去することができ、また衝撃によつて装置が変
形したり故障したりすることを有効に防止でき
る。

さらに、作業の機械化により、装置の重量アツ
プを無視できることから、掻き落し板等の装置の
各構成部分の強度アツプが可能となるため、装置
の耐用期間を延長できる等の効果を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図はこの考案の一実施例を示
すもので、第１図は溶解炉にセツトした状態の付
着物除去装置を示す第２図の−線断面図、第
２図は同じく平面図、第３図は第１図の−線
断面図、第４図は従来の掻き落し棒による作業状
態を示す説明図である。 １１……付着物除去装置、１１ａ……昇降機構
への接続部、１２……支持ビーム、１３……スラ
イダ、１３ａ……雌ねじコマ、１４ａ，１４ｂ…
…軸受け、１５……送りねじ、１５ａ……回動用
ハンドル、１６……アーム、１６ａ……ピン、１
７……掻き落し板、１８……押動アーム、１９…
…スプリング、２０……溶解炉、２０ａ……上部
開口、２１……ライニング材、２１ａ……内壁
面、Ｍ……溶融金属、Ｓ……付着物。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 金属溶湯を保持する容器の内側に付着した内壁
   付着物を除去するための金属溶湯容器の内壁付着
   物除去装置において、下端に掻き落し板を備えた
   アームと、該アームの上部を揺動可能に支持する
   支持部材と、前記アームを金属溶湯容器の半径方
   向に沿つた方向へ進退移動調整するための位置調
   整機構と、前記アームを金属溶湯容器の内壁面に
   向けて弾性的に押動する弾性押動手段とを有する
   とともに、前記支持部材の上部に昇降機構への連
   結部を有することを特徴とする金属溶湯容器の内
   壁付着物除去装置。