JPH058062U - トルクリミツタ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 コイルばねの滑り面に対する潤滑性を良く
し、トルク値の安定性と耐久性を向上させる。 【構成】 入力軸１１と出力軸１２にわたって締り嵌め
したコイルばね１３に断面四角形の線素材を用い、線素
材間にすき間のある螺旋に巻回したコイルばねを使用
し、線素材の内周面にグリース保持溝１５を長さ方向に
沿って設け、線素材間のすき間にグリースが常に保持さ
れ、コイルばね１３と出力軸１２の滑り面間にグリース
が供給され、しかもグリース保持溝１５にもグリースが
留るため、滑り面に対する潤滑が確実に行なえ、滑り面
の耐久性を向上させる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、主として事務機器等における紙の送り装置やブレーキ装置に用い られるトルクリミッタに関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来から事務機器に用いられているトルクリミッタの一例を図４に示す。この トルクリミッタは、入力軸１と出力軸２を同軸上で突き合わせ、両方の軸１、２ の外径面に１つのコイルばね３を締り嵌めしたものであり、コイルばね３の外側 に保護カバー４が被せられる。

【０００３】 上記の出力軸２のばね嵌合部の外径ｄ₁ は、コイルばね３の内径ｄよりわずか に大きい径に形成される。また入力軸１の外径ｄ₂ は、更に出力軸２の外径ｄ₁ よりわずかに大きい径に形成される。従って、コイルばね３の緊縛力は、出力軸 ２側よりも入力軸１側の方が強くなる。

【０００４】 上記のトルクリミッタにおいて、コイルばね３の巻き方向が右巻きであり、出 力軸２が固定されている状態で入力軸１が右回転すると仮定すると、コイルばね ３の各軸１、２に対する緊縛力の差により、コイルばね３は出力軸２との間で滑 りを生じる。

【０００５】 この滑りを生じさせるに要するトルクは、コイルばね３の緊縛力と滑り部分の 直径及びその部分の摩擦係数で決定される。

【０００６】 上記のようなトルクリミッタにおいては、コイルばね３と出力軸２の滑りによ る摩耗の発生を防止するため、保護カバー４の内部空間にグリースを充填し、滑 り部分を潤滑することが行なわれている。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、従来のトルクリミッタにおけるコイルばね３は、断面円形もしくは 四角形の線素材を密着巻きしたものが使用されていたため、コイルばねの外周か ら内周側へのグリースの通過性が悪く、滑り部分に対するグリースの供給が困難 になり、グリースによる潤滑効果が十分に得られず、滑り部分の耐久性が低下す るという問題がある。

【０００８】 そこでこの考案は、コイルばねの滑り部分に対するグリースの供給が十分に行 なえ、滑り部分の耐久性を向上させることができるトルクリミッタを提供するこ とを課題としている。

【０００９】

【課題を解決するための手段】

上記のような課題を解決するため、この考案は、コイルばねを、断面四角形の 線素材を用い、線素材間にすき間のある螺旋に巻回したコイルばねにより構成し 、このコイルばねにおける線素材の内周面にグリース保持溝を長さ方向に沿って 設けた構成を採用したものである。

【００１０】

【作用】

コイルばねを線素材間にすき間のある螺旋に巻回したので、コイルばねの各線 素材間に常に新しいグリースが供給され、グリースは回転にともない滑り面間に 入って行くと共に、線素材の内周に設けた保持溝がグリースを保持するので、グ リースによる滑り面の潤滑が確実に行なえ、耐久性を向上させることができる。

【００１１】

【実施例】

以下、この考案の実施例を添付図面の図１乃至図３に基づいて説明する。

【００１２】 図１に示す第１の実施例のトルクリミッタは、入力部材としての入力軸１１と 出力部材としての出力軸１２を同軸心上で突き合わせ、入力軸１１と出力軸１２ の外径面に一つのコイルばね１３を締り嵌めし、コイルばね１３の外側を入力軸 １１と出力軸１２にわたって嵌合する保護カバー１４で覆い、保護カバー１４の 内部空間にグリースを充填した構造になっている。

【００１３】 上記コイルばね１３は、断面四角形の線素材１３ａを用い、線素材１３ａ間に すき間のある螺旋に巻回したコイルばねにより構成し、入力軸１１と出力軸１２ はコイルばね１３の緊縛力が入力軸１１側の方が強くなるように設定されている 。

【００１４】 前記コイルばね１３における線素材１３ａの内周面には、図１と図２に示すよ うにグリース保持溝１５が長さ方向に沿って設けられている。

【００１５】 次に、図３に示す第２の実施例を説明する。なお、図１及び図２で示した第１ の実施例と同一部分は同一符号を付して説明に代える。

【００１６】 第２の実施例のトルクリミッタは、出力部材としてのハウジング２１、入力部 材としての内輪２２、コイルばね１３及びハウジング２１の端部を閉鎖する蓋部 材２３とによって構成され、ハウジング２１は、内径面に一段大径のすべり軸受 部２４が設けられ、更にその軸受部２４よりも一段大径のばね収納部２５が設け られている。

【００１７】 内輪２２は、ハウジング２１内に挿入され、軸受部２４及び蓋部材２３の内径 部において回動自在に支持され、ハウジング２１内に収納したコイルばね１３は その全長が内輪２２に締り嵌めされ、一方の端部に軸方向へ突出するよう設けた 係合フック２６が蓋部材２３の凹所に係合し、コイルばね１３とハウジング２１ が一体に回転するようになっている。

【００１８】 前記ハウジング２１におけるばね収納部２５内にはグリースが充填されている と共に、コイルばね１３は第１の実施例の場合と同様、断面四角形の線素材１３ ａを用い、線素材１３ａ間にすき間のある螺旋状になっていると共に、線素材１ ３ａの内周面にグリース保持溝１５が形成されている。

【００１９】 この考案のトルクリミッタは上記のような構成であり、図１に示す第１の実施 例においては、入力軸１１が回転すると、コイルばね１３を介して出力軸１２に トルクが伝達され、出力軸１２に一定値以上の負荷が作用するとコイルばね１３ と出力軸１２の間で滑りが生じ、回転が遮断される。

【００２０】 また、図３に示す第２の実施例は、内輪２２の回転をコイルばね１３を介して ハウジング２１に伝え、ハウジング２１に一定値以上の負荷が作用するとコイル ばね１３と内輪２２の間で滑りが生じることになる。

【００２１】 何れの実施例においても、コイルばね１３は線素材１３ａ間にすき間が形成さ れているため、このすき間がグリースで埋められ、これによって各すき間にグリ ースが常に保持され、コイルばね１３の回転時には図１及び図３に矢印で示すよ うに、グリースはコイルばね１３に沿ってすき間を移動することになり、保護カ バー１４又はハウジング２１内を循環する。

【００２２】 従って、コイルばね１３の内周面と相手滑り面との間には常に新しいグリース が供給され、すべてのグリースが均等に使用される。

【００２３】 更に、コイルばね１３は線素材１３ａの内周面にグリース保持溝１５が設けら れているため、コイルばね１３の内周面と相手滑り面との間に常時グリースを保 持供給することができ、グリースによる滑り面の潤滑性が向上し、摩耗の発生を 防ぐことができる。

【００２４】

【効果】

以上のように、この考案は、コイルばねの線素材間にすき間を設けると共に、 線素材の内周面にグリース保持溝を形成したので、コイルばねの内周面と相手滑 り面間へのグリースの供給が確実に行なえ、滑り面の潤滑性が向上し、トルク値 の安定性が良くなり、耐久性を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案に係るトルクリミッタの第１の実施例
を示す縦断面図

【図２】同上に用いるコイルばねの拡大断面図

【図３】第２の実施例を示す縦断面図

【図４】従来のトルクリミッタを示す縦断面図

【符号の説明】

１１ 入力軸 １２ 出力軸 １３ コイルばね １４ 保護カバー １５ グリース保持溝 ２１ ハウジング ２２ 内輪 ２３ 蓋部材 ２５ ばね収納部

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項１】 入力部材と出力部材の間に設けたコイル
   ばねを入力部材と出力部材の少なくとも一方に締り嵌め
   し、入力部材の回転を出力部材にコイルばねを介して伝
   達するようにしたトルクリミッタにおいて、コイルばね
   を、断面四角形の線素材を用い、線素材間にすき間のあ
   る螺旋に巻回したコイルばねにより構成し、このコイル
   ばねにおける線素材の内周面にグリース保持溝を長さ方
   向に沿って設けたことを特徴とするトルクリミッタ。