JP6388695B1 - コイルばねを備えたスプリングクラッチの構造 - Google Patents
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Abstract
Description
スプリングクラッチのコイルばねは、通常、自由状態の内径が回転体の外径よりわずかに小さく、弾性的に拡径した状態で回転体に密着して巻き付けられる。このようなコイルばねを用いたスプリングクラッチの一例について、図5により説明する。
そして、歯車G1にはストッパ係合用の切欠きRSが設けてある。図示は省略するが、ここにストッパを係合したときは、歯車G1の負荷トルクが増大するためコイルばねCSと駆動軸ISとの間にスリップが発生し、歯車G1が停止したまま駆動軸ISが空転して回転伝達が遮断される。
スプリングクラッチでは、締め付けトルクにより回転伝達を行うときにフック部に大きな曲げ応力が生じ、緩みトルクの場合には、所定のトルクに達すると滑りが発生してそれ以上のトルクが作用しないため、曲げ応力は実質上問題にならない。なお、フック部の直線部を短くすると曲げモーメント及び曲げ応力は小さくなるけれども、スリットへの挿入長さが減少し、トルク伝達の際にスリットから外れる恐れがある。
「回転体の外周に単一のコイルばねを装着し、前記回転体の回転により前記コイルばねが締め付けられるときは、前記回転体の回転を出力部材に伝達し、前記コイルばねが緩められるときは、前記出力部材への回転伝達が遮断されるスプリングクラッチであって、
前記コイルばねの一端には、径方向外方に曲げられたフック部が形成されるとともに、前記出力部材には、前記フック部の挿入されるスリットが形成され、さらに、
前記回転体の内部には断面円形の中空部が設けられ、かつ、前記出力部材には、前記コイルばねを取り囲み前記スリットの形成された外側円筒部と、前記コイルばねの長さ以上に亘って軸方向に延び、前記回転体の中空部に嵌め込まれる案内部とが設けられており、
前記回転体は、前記案内部の外周に密着しながら摺動可能に設置され、前記回転体の回転を前記出力部材に伝達するときは、前記フック部が前記スリットの壁面に当接して、トルクの伝達が行われる」
ことを特徴とするスプリングクラッチとなっている。
このような構成を採用したときは、「前記出力部材には、前記コイルばねを取り囲み前記フック部の形成された外側円筒部を設けるとともに、前記制御部材には、前記第2スリットの形成された円筒壁部を設け、前記出力部材の外側円筒部と前記制御部材の円筒壁部とを、係合手段により結合する」ことが好ましい。また、前記制御部材を合成樹脂製とするのが好ましい。
回転体から出力部材に回転を伝達するときは、前述したように、トルク伝達に伴ってフック部には反力が作用して回転体の中心軸にも横方向の力が加わる。ここで、本発明のスプリングクラッチは、その回転体が出力部材の案内部に密着して嵌め込まれており、回転伝達時において振動等が起こったとしても、回転体と出力部材の中心軸にずれや傾きの生じることがなく、円滑な回転伝達が達成される。また、回転体と出力部材とが相対的に回転する回転伝達遮断時においては、回転体が出力部材の案内部の外周面を摺動するため、やはり両者の中心軸の間に傾き、芯ぶれ等が起こることはなく、それに起因する部品の破損などを防止することができる。
出力部材に設けられる案内部は、回転体に装着されたコイルばねの長さ以上に亘って軸方向に延びている。このようにすることにより、伝達トルクの反力の作用するコイルばねが案内部により全体的に支持される形となり、回転体と出力部材の中心軸の傾き等が確実に防止される。
その結果、フック部の根元には曲げモーメントが作用せず、根元に生じる応力は主にせん断応力となり、曲げ応力が加わる場合に比べて耐久性が向上するので、締め付けトルクによる大きなトルク伝達が繰り返されたとしても、フック部の破損を招くことはない。フック部の直線部は、スリットの壁面に対し1°以上傾斜しているため、回転体や出力部材が回転中に振動を起こしたとしても、両者の接触による曲げモーメントの発生を回避することができる。また、その角度を15°以下とすることにより、回転中にフック部がスリットから抜け出る恐れが非常に小さくなる。フック部の直線部とスリットの壁面とのなす角を、3°以上で10°以下の範囲としたときは、より確実にこうした効果を得ることができる。
この実施態様では、回転体に装着したコイルばねの両端にフック部を設け、一端のフック部を出力部材のスリットに挿入するとともに、他端の第2フック部を、制御部材に形成した第2フック部に挿入する。スプリングクラッチの回転伝達時には、制御部材は回転体(及びコイルばね)と共に回転しているが、回転伝達を遮断するときは、例えば、ソレノイドで操作されるストッパを制御部材に係合して制御部材の回転を停止する。
コイルばね2は、ピアノ線等の弾性を有する金属線材を卷回して製作され、その内径部に嵌め込まれる回転体1は、耐摩耗性を有する鉄鋼材料等の金属材により製作される。また、コイルばね2と回転体1との間には、耐摩耗性、耐久性の向上を目的として、グリース等の潤滑剤が塗布される。潤滑剤としてはフッ素系潤滑剤(パーフルオロポリエーテル)が好ましく、特に、直鎖型パーフルオロポリエーテルと側鎖型パーフルオロポリエーテルとの混合物を基油とするグリースを用いるのが好ましい。このようなグリースは特許第6122191に記載されている。
そして、本発明の実施例である図1のスプリングクラッチにおいては、出力部材3の内方には、回転体1の中空部11に密着して嵌め込まれる案内部33が設けられる。案内部33は、内部が中空となった円筒形状をなし、コイルばね2が装着された回転体1の部分の長さ以上に亘って、軸方向に延長されている。スリット31を有する外側円筒部32と案内部33とは端板34により連結され、端板34には、回転体1の一端を嵌め込む環状の凹所35が形成される。
軽量化や製造の容易化を目的として、出力部材3は、ポリブチレンテレフタレート等の合成樹脂により製作される。耐摩耗性の向上のため、ガラス繊維などの繊維体を合成樹脂に混入することもできる。
円筒壁部42の先端には、内向きの爪45が周方向に4個形成されており、爪45が出力部材3の外側円筒部32の円周溝に係合することにより、制御部材4と出力部材3が結合される。制御部材4は出力部材3と同様な合成樹脂により製作され、制御部材4の爪45は、弾性を利用して外側円筒部32の円周溝に係合される。
このように、図1の実施例のスプリングクラッチでは、回転体1に装着したコイルばね2の外方が、出力部材3の外側円筒部32と制御部材4の円筒壁部42とにより全面的に覆われることとなる。そのため、回転体1とコイルばね2との間の摺動面に異物や埃等が侵入することがなく、潤滑剤の汚染が防止できると同時に、封入された潤滑剤の外部への漏洩を防ぐことができる。
そのため、スプリングクラッチの回転伝達時においては、トルク伝達に伴う反力の作用により、回転体1の中心軸に横方向の力が働いたとしても、回転体1の中心軸が出力部材3の中心軸からずれたり傾いたりするのを防ぐことがきる。さらに、出力部材3のスリット31とコイルばね2のフック部21との相対的位置が振動等で変動するのを防止し、後述するように、フック部21に曲げモーメントが作用しない状態に保持することが可能である。
図4の上部の拡大図に示すとおり、スリット31内にフック部21が挿入されると、フック部21の曲り部Bと直線部Lとの接続部分J、つまり直線部Lの根元部分が、スリット31の面取り部3Cの外方端に当接し、フック部21の直線部Lは、スリット31の壁面に対して先端が離れるようにわずかに傾斜する。その傾斜は、フック部21の直線部Lとスリット31の壁面とのなす角αが1°以上15°以下となるように設定され、図4のものの場合には約6°となっている。
なお、制御部材4の停止に伴い第2フック部22に反力が作用するが、これは締め付けトルクによりフック部21に生じる反力と比べるとはるかに小さく、第2フック部22に大きな曲げ応力が発生することはない。
上記の実施例においては、回転体の内部に嵌め込まれる出力部材の案内部を中空の円筒形状としているが、中実の円柱体とすることもできる。また、回転伝達遮断用の制御部材を停止させるため、ストッパ突起を設けてストッパに係合しているが、これに代え、摩擦式ブレーキを用いて制御部材を停止させるなど、上記の実施例に対して各種の変形が可能であるのは明らかである。
2:コイルばね
21:フック部(B:曲げ部、L:直線部、J:接続部分)
22:第2フック部
3:出力部材
31:スリット
32:外側円筒部
33:案内部
4:制御部材
41:第2スリット
42:円筒壁部
Claims (6)
- 回転体の外周に単一のコイルばねを装着し、前記回転体の回転により前記コイルばねが締め付けられるときは、前記回転体の回転を出力部材に伝達し、前記コイルばねが緩められるときは、前記出力部材への回転伝達が遮断されるスプリングクラッチであって、
前記コイルばねの一端には、径方向外方に曲げられたフック部が形成されるとともに、前記出力部材には、前記フック部の挿入されるスリットが形成され、さらに、
前記回転体の内部には断面円形の中空部が設けられ、かつ、前記出力部材には、前記コイルばねを取り囲み前記スリットの形成された外側円筒部と、前記コイルばねの長さ以上に亘って軸方向に延び、前記回転体の中空部に嵌め込まれる案内部とが設けられており、
前記回転体は、前記案内部の外周に密着しながら摺動可能に設置され、前記回転体の回転を前記出力部材に伝達するときは、前記フック部が前記スリットの壁面に当接して、トルクの伝達が行われることを特徴とするスプリングクラッチ。 - 前記出力部材には、前記回転体の端部が嵌め込まれる環状の凹所が形成された請求項1に記載のスプリングクラッチ。
- 前記回転体及び前記コイルばねが金属製であり、前記出力部材が合成樹脂製である請求項1又は請求項2に記載のスプリングクラッチ。
- 前記コイルばねの他端には、径方向外方に曲げられた第2フック部が形成されるとともに、前記第2フック部の挿入される第2スリットを有する制御部材が、前記回転体と共に回転するように設置されており、
前記制御部材の回転を停止したときは、前記コイルばねが緩められて、前記出力部材への回転伝達が遮断される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスプリングクラッチ。 - 前記出力部材には、前記コイルばねを取り囲み前記フック部の形成された外側円筒部が設けられるとともに、前記制御部材には、前記第2スリットの形成された円筒壁部が設けられており、
前記出力部材の外側円筒部と前記制御部材の円筒壁部とは、係合手段により結合されている請求項4に記載のスプリングクラッチ。 - 前記制御部材が合成樹脂製である請求項4又は請求項5に記載のスプリングクラッチ。
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