JP2002249794A - トルクリミッタ用潤滑油及び潤滑グリース - Google Patents
トルクリミッタ用潤滑油及び潤滑グリースInfo
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Abstract
コイルばねで構成されるトルクリミッタにおいて良好な
トルク安定性を得ることができる含浸軸受潤滑油又は潤
滑グリースを提供する。 【解決手段】 ばね自身の緊縛力によりトルクを発生さ
せる機構又は摩擦板をばねで押し付けることによりトル
クを発生させる機構を有するトルクリミッタにおいて、
使用する潤滑油及び潤滑グリースの基油が、合成飽和炭
化水素化合物であり、且つ、基油100重量部に対し、
脂肪族系のリン酸エステル及び亜リン酸エステルから選
択される少なくとも1種のリン酸系エステルを1〜8重
量%配合してなるトルクリミッタ用含浸軸受潤滑油又は
潤滑グリース。
Description
油膜形成能力を高め、軸受寿命の延長と発生トルクの安
定化を図るために用いられる潤滑油組成物に関する。
るラジアル方向の緊縛力を利用したもの、摩擦板をばね
で摩擦板にスラスト方向に押し当ててすりあわせてトル
クを発生させるものがあるが、いずれも摩擦力によりト
ルクを発生させている。トルクリミッタに関する先行技
術としては、特開平8-270675号公報、特開平7-
301248号公報、特開平6-235447号公報、
実開平5-8062号公報等がある。
イルばね2の内輪1に対する緊縛力によりトルクを発生
させる摩擦式リミッタである。トルクリミッタは金属製
内輪1の外側に、大径部、小径部のあるコイルばね2は
設けられ、ばねのフック2a、2bで蓋3、外套4に係り
止めされている。外套4に圧入されている蓋3を回転さ
せることにより、ばね2の内輪に対する緊迫力が連続的
に変化してトルク調整は自由自在である。ばねの巻き方
向により内輪の回転方向は制限される一方向回転トルク
リミッタである。
の外側に円筒状のコイルばね2が設けられており、ばね
のフック2bにて外套4に係り止めされている。また、
円筒状バネであるため、トルク調整は出来ないが、内輪
に対する締め代を変化させたものを組み合せることによ
りばねの緊迫力は変化し、トルク値は決まり、トルク調
整は可能となる。本形状もばねの巻き方向により内輪の
回転方向は制限される一方向回転トルクリミッタであ
る。
の金属製内輪1の外側に図2と同様に円筒状のコイルばね
2が設けられている。また、ばねは円筒状のため、トル
ク調整は出来ないが内輪に対するばねの締め代によりト
ルク値は決定される。本形状もばねの巻き方向により内
輪の回転方向は制限される。図4に示すトルクリミッタ
は金属製内輪1に摩擦版5がばね2により押し当てられ
ており、内輪−摩擦板間に働く摩擦力にてトルクを発生
させるものである。ばね2の押し当て力により摩擦力を
変化させることが出来るために、トルク調整は可能であ
る。本形状は内輪の回転方向はばねの巻き方向に依存し
ない。
擦版、摩擦板と摩擦板間の摩耗、異常発熱、焼き付き異
音等を防止するために潤滑油、グリースが用いられてい
る。通常、トルクリミッタの内輪は金属の焼結材となっ
ており、潤滑油やグリースを含浸させて使用する潤滑機
構となっている。トルクリミッタ用潤滑油及び潤滑グリ
ースには、鉱物油、アルキルナフタレン、エステルなど
を基油に使用し、耐摩耗剤等の各種添加剤を用途に応じ
て添加したものが多く使用されている。トルクリミッタ
に必要とされる性能は、長期間に渡っての油膜確保・維
持であり、いかに金属接触を抑制し、摩擦係数を安定化
できるかで軸受の性能が左右される。特に、複写機、プ
リンタ等の紙送り装置やリボン・シート等のテンション
機構に使用されるトルクリミッタには、トルクの変動が
極めて少なく、且つ金属接触音を発生しない潤滑剤が要
望されている。
工性の良いポリカーボネートやABS樹脂などの非結晶
性の樹脂が使用され、トルクリミッタに使用される潤滑
剤の漏洩等による油やその蒸気等の接触によって樹脂材
にヒビ、ワレや面荒れが発生する場合がある。
異音の原因になったり、異音が発生しなくても摩擦低減
効果が高すぎてトルク低下を引き起こすことが問題とな
っている。複写機、プリンタの給紙部にはトルクリミッ
タが持つ発生トルクを利用して、紙さばき機構部品とし
て使用される。問題となるトルク低下及び異音は、長期
間の使用による摩擦面の摩耗及び潤滑剤のせん断によっ
て発生する。また、使用頻度が極めて高い装置になると
発熱による潤滑剤の粘度低下からも性能低下が生じる。
更に、トルクリミッタに使用されている潤滑剤が何らか
の原因によりトルクリミッタ外部に漏洩や蒸発した場
合、周辺部品、特にポリカーボネートやABS樹脂等の
非結晶樹脂材への影響が懸念されるため、そのような樹
脂材との相溶性の小さい潤滑剤が要求される。例えば、
分子内に芳香環を有するナフテン系の鉱油やアルキルナ
フタレン又はアルキルジフェニルエーテルを基油に用い
た潤滑剤は、油膜形成能力が高くトルクリミッタに必要
とされるトルク性能等を満足させる潤滑剤として知られ
ているが、そのような分子内に芳香環や極性基を持つ基
油を主体とする潤滑剤では非結晶性樹脂材を侵してしま
う。このようなトルクリミッタに必要とされる潤滑性能
(トルク性能)と耐樹脂性の両方を満足できるような潤
滑剤は存在しない。
目的は、摩擦式トルクリミッタにおいて、トルクの変動
が少なく、油膜切れによる金属接触を抑制することによ
り軸受の長寿命化を可能とし、かつ耐樹脂性に優れたト
ルクリミッタ用潤滑油及び潤滑グリースを提供すること
にある。
ね自身の緊縛力によりトルクを発生させる機構又は摩擦
板をばねで押し付けることによりトルクを発生させる機
構を有するトルクリミッタにおいて、使用する潤滑油及
び潤滑グリースの基油が、合成飽和炭化水素化合物であ
り、且つ、基油100重量部に対し、脂肪族系のリン酸
エステル及び亜リン酸エステルから選択される少なくと
も1種のリン酸系エステルを1〜8重量%配合してなる
トルクリミッタ用含浸軸受潤滑油又は潤滑グリースであ
る。基油としては、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポ
リ−α−オレフィン又はエチレン−α−オレフィン共重
合体の水素化物あるいはそれらの混合物が採用される。
化水素油であるが、好ましくはα-オレフィンのオリゴ
マーであり、例えばブテン-1、イソブチレン-1、α−オ
クテン、デセン-1等の炭素数3〜20程度α-オレフィ
ンの重合体又は共重合体があり、これらは通常、常温液
状のオリゴマーである。共重合体としては、エチレンと
上記α-オレフィンの共重合体がある。本発明において
は、基油として上記のものを2種以上組み合わせて使用
することができる。
ィンあるいはエチレン−α−オレフィン共重合体の水素
化物が挙げられる。ポリ−α−オレフィンとしては炭素
数6〜18のα−オレフィンのオリゴマー水素化物が好
ましく使用され、エチレン−α−オレフィン共重合体と
しては、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンの
共重合体水素化物が好ましく使用される。
領域での粘度変化が小さいため油膜形成能力が高い。従
って、トルクリミッタの異音ならびに軸受の摩耗を抑制
する効果が大きく、軸受の長寿命化が図れる。また、粘
度−温度特性に優れるためトルクリミッタ回転数の変化
に対するトルクの変動を小さく抑えることができる。さ
らに、これらの基油は耐樹脂性に優れるため、何らかの
原因によりトルクリミッタ外部に潤滑油組成物が漏洩し
た場合、周辺部品の樹脂材に接触した場合にも、樹脂材
を侵す問題も生じない。
として、脂肪族系のリン酸エステル及び亜リン酸エステ
ルから選択されるリン酸系エステルが配合される。これ
らは、比較的樹脂材との相溶性が小さい点で優れるが、
好ましくは脂肪族系の亜リン酸エステルである。
(1)で表されるものが使用される。 (RO)3P=O (1) 上記一般式(1)において、Rとしては炭素数10〜2
5のアルキル基又はアルケニル基が好ましいものとして
挙げられる。3つのRは、同一であっても異なってもよ
い。炭素数が10未満のものは、安定性あるいは低摩擦
性に劣り、スラッジが発生し易く、異音を抑制する効果
が小さい。また、炭素数が25を越えるものは配合量に
対するトルク変動抑制等の潤滑性の効果が小さい。好ま
しいリン酸エステルとしては、具体的には、トリラウリ
ルフォスフェート、トリオレイルフォスフェート、トリ
ステアリルフォスフェート等が挙げられる。
(2)で表されるものが使用される。 (RO)3P (2) 上記一般式(2)において、Rとしては、上記リン酸エ
ステルと同様な理由により、炭素数が10〜25のアル
キル基又はアルケニル基が好ましい。3つのRは、同一
であっても異なってもよい。好ましくは、トリオレイル
フォスファイト、トリステアリルフォスファイト、トリ
ス(トリデシル)フォスファイト等が挙げられる。
配合量としては、基油100重量部に対し、1〜8重量
%配合する。配合量が1重量%未満であると、摩耗低減
効果やトルク安定性の改善に効果がなく、配合量が8重
量%を越えると耐樹脂性に悪影響を及ぼす。このような
トルクリミッタの性能と耐樹脂性を考慮すると、より好
ましい配合量は3〜5重量%である。
してのリン酸系エステルを必須成分として含む潤滑油組
成物は、流動性を有する油状物、グリース化した潤滑グ
リースとして使用することができる。潤滑グリースとす
る場合の増ちょう剤は、基油中に分散し、ミセル構造を
とって半固体状を呈する役割を担うものであり、ナトリ
ウム石けん、リチウム石けん、カルシウム石けん、バリ
ウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミ
ニウムコンプレックス石けん、リチウムコンプレックス
石けん、バリウムコンプレックス石けん等の金属石けん
等やベントン、シリカエアロゲル、ナトリウムテレフタ
レート、ウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ヒドロ
キシアパタイト、ポリエチレンパウダー等の無機物、ウ
レア化合物、ワックス類等の非石けん系を用いることが
できる。好ましくは、機械的安定性や耐熱性、耐水性な
どトータル的にバランスのとれた性能を有するリチウム
系の石けんやウレア化合物等の増ちょう剤が好適であ
る。
が損なわれない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、防錆
剤、粘度指数向上剤、金属不活性剤、無灰系分散剤、金
属系清浄剤、油性剤、界面活性剤、消泡剤などを用途に
応じて配合することができる。
るが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるも
のではない。実施例及び比較例で用いた各成分の略号は
次のとおりである。また、配合割合は重量%で示されて
いる。
F401:40℃動粘度:377mm2/s) EAO:エチレン-α-オレフィン共重合体(三井化学社製ルーカントHC20:
40℃動粘度:155mm2/s) AN: アルキルナフタレン(40℃動粘度:27mm2/s) TCP:リン酸トリクレジル PE1:トリオレイルホスフェート PE2:トリオレイルホスファイト FR:スチレン-α−メチルスチレン-脂肪族共重合樹脂(比重:1.0
3,軟化点:125℃) DTBP:酸化防止剤(ジ−t−ブチルフェノール) BTA:金属不活性剤(ベンゾトリアゾール誘導体) TL:防錆剤(アミンフォスフェート)
た潤滑油組成物を製造した。表1は油状の潤滑油の例で
あり、表2は増ちょう剤としてリチウム石けんを使用し
たグリース状の潤滑油の例である。なお、表1及び表2
中の「Bal」は、全体を100重量部として、数値(重
量部)表示したもの以外の残量を表している。なお、表
1においては全ての実験において、DTBPの配合量は0.
5重量部、BTAの配合量は0.03重量部、TLの配合量
は0.03重量部の一定としたので、その記載を省略し
ている。同様に、表2においては全ての実験において、
DTBPの配合量は1.0重量部、BTAの配合量は0.1重
量部、TLの配合量は0.1重量部の一定としたので、そ
の記載を省略している。
ものを用い、評価に使用したトルクリミッタは、NTN
社製NTS18を用いた。図5はそのトルク安定性試験
機の構造を説明するための図であり、軸回転用のモータ
11とトルク検出用のロードセル12、カップリング13、歪
計14及び記録計15からなる。回転軸に各サンプルオイル
を含浸させた焼結内輪を用いたトルクリミッタ16をセッ
トし、リミッタのトルク発生方向に回転させることによ
り、発生トルクはロードセルに伝わり、記録計により記
録させるものである。なお、低速モータ17は、高速モー
タ11と切り替えて使用するものである。また、図5の左側
の図は、上部から見た図である。試験条件は、設定トル
ク350gf・cm、回転数220rpm、運転サイク
ル1.5秒間運転−0.5秒間停止の間欠運転、雰囲気温
度:室温、試験時間1000時間とし、測定項目は試験
後の手感、0時間、500時間、1000時間毎のトル
クの変化(経時変化、一分間のトルク変動)、運転中の異
音有無の確認を実施した。トルク測定試験機により各時
間毎のトルク測定を行った。試験結果表3中の○、×は
トルクの安定性試験における結果を表す記号であり、一
分間のトルク測定の結果、トルク低下が20gf・cm以下を
「○」、20gf・cm以上を「×」とした。
品には加工性の良いPC(ポリカーボネート)やABS樹脂な
どが用いられ、トルクリミッタに用いられる潤滑剤の漏
洩などによる、潤滑剤との接触により、樹脂材にヒビや
ワレが発生する可能性がある。そこで、本発明の潤滑油
の耐樹脂性を確認するために、PC(ポリカーボネート)、
ABSにて耐樹脂性のテストを行った。テストの結果、テ
ストピースに割れ、ヒビが発生しなかった場合を
「○」、テストピースに割れ、ヒビが発生した場合を
「×」とした。上記試験結果を表3に示す。なお、実験
番号1〜4及び14〜15が、本発明の実施例である。
チレン-α-オレフィン共重合体水素化物などの合成炭化
水素化合物は耐樹脂性に優れているが、そのもの単独で
はトルクリミッタオイルとしてのトルク安定性に劣る
(実験番号5、9及び16)。しかし、これらの基油に
脂肪族系のリン酸エステルや亜リン酸エステルを配合す
ると、トルク安定性は向上する。ただし、トルク安定性
の向上効果が認められるのは、上記リン系耐摩耗剤の配
合量が1重量%以上であり、実験番号6、10、17及
び18のように1重量%未満であると効果が乏しい。ま
た、8重量%を越えると、その性能以外の耐樹脂性に悪
影響を及ぼしてくる(実験番号8、12及び19)。ま
た、リン系耐摩耗剤の中でもTCPのような芳香族系の
ものは配合量が0.5重量%を越えると耐樹脂性に悪影
響を及ぼしてくる(実験番号7、11及び20)。当
然、トルク安定性能に優れるアルキルナフタレンなどの
芳香族系油もTCPと同様に耐樹脂性に劣る(実験番号
13及び21)。従って、トルク安定性性能に優れかつ
耐樹脂性にも優れるトルクリミッタ用潤滑油としては、
基油が合成炭化水素化合物であり、基油100重量部に
対し、脂肪族系のリン酸エステル及び亜リン酸エステル
を1〜8重量%配合してなるものが好適と考えられる。
タ用潤滑油及び潤滑グリースは、耐樹脂性に優れかつ金
属製の内輪とコイルばねで構成されるトルクリミッタに
おいて良好なトルク安定性を得ることができる。
Claims (4)
- 【請求項1】 潤滑油又は潤滑グリースの基油が、合成
飽和炭化水素油であり、且つ、基油100重量部に対
し、脂肪族系のリン酸エステル及び脂肪族系の亜リン酸
エステルから選択される少なくとも1種のリン酸系エス
テルを1〜8重量%配合してなるトルクリミッタ用潤滑
油又は潤滑グリース。 - 【請求項2】 基油が、ポリ−α−オレフィン、エチレ
ン−α−オレフィン共重合体の水素化物及びそれらの混
合物から選ばれる少なくとも1種のポリ−α−オレフィ
ン系油である請求項1記載のトルクリミッタ含浸軸受用
潤滑油及び潤滑グリース。 - 【請求項3】 トルクリミッタが、ばね自身の緊縛力に
よりトルクを発生させる機構又は摩擦板をばねで押し付
けることによりトルクを発生させる機構を有するトルク
リミッタである請求項1又は2記載のトルクリミッタ用
潤滑油又は潤滑グリース。 - 【請求項4】 トルクリミッタ含浸軸受用潤滑油又は潤
滑グリースである請求項1又は2記載のトルクリミッタ
用潤滑油又は潤滑グリース。
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