JPH0578915A - 高強度、低収縮ポリエステル系繊維の製造方法 - Google Patents

高強度、低収縮ポリエステル系繊維の製造方法

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JPH0578915A
JPH0578915A JP26275191A JP26275191A JPH0578915A JP H0578915 A JPH0578915 A JP H0578915A JP 26275191 A JP26275191 A JP 26275191A JP 26275191 A JP26275191 A JP 26275191A JP H0578915 A JPH0578915 A JP H0578915A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 タイヤ補強材、ベルトコンベア補強材の用
途に適した高強度・高初期引張弾性率で寸法安定性が改
善された高性能ポリエステル繊維の製造方法を提供す
る。 【構成】 極限粘度が1.0〜3.0のポリエチレンテレフ
タレートに210 ℃以上の温度で相溶する化合物をポリエ
ステルを膨潤させる溶剤中で添加し、この混合物を中空
部の形成が可能な紡糸口金より溶融紡出し、得た未延伸
糸をポリエステルを膨潤させる溶剤中で膨潤処理した
後、多段で高倍率に延伸するポリエステル繊維の製造方
法。 【効果】 従来になかった高い強度と初期引張弾性率
及び寸法安定性を有するに高性能ポリエステル繊維を工
業的な速度で生産することが可能になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は従来にない高い破断強度
及び初期引張弾性率を有し、かつ寸法安定性が著しく改
善されたポリエステル繊維を工業的に効率よく製造する
方法に関するものである。更に詳しくはタイヤ補強材、
コンベアベルト補強材あるいは熱可塑性コンボジット補
強材等の用途に有用な高性能ポリエステル繊維の製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、高い破断強度と高い初期引張弾性
率を有するポリエステル繊維を得る方法としては例えば
特公昭41−7892号公報、特開昭63−12715
号公報、特開昭63−99322号公報、特開昭63−
196711号公報、特開昭63−196712号公
報、等が提案されている。これらに提案された製造方法
に共通するのは高強度・高弾性率のポリエステル繊維を
得るための手段として高分子量の原料重合体を利用する
ことであり、又前記した特開昭63−99322号公
報、特開昭63−196711号公報や特開昭63−1
96713号公報、特開平1−229807号公報、特
開平2−277811号公報、等ではポリエステル重合
体に対して膨潤作用を有する溶媒でポリエステル未延伸
糸を処理した後、該未延伸糸を高倍率で多段熱延伸する
方法を併用して高物性化の効果が引き出されるとしてい
る。
【0003】一方、ポリエステル繊維の寸法安定性を改
善するために種々の検討がなされており、例えば特開昭
53−53031号公報、又は特開昭53−53032
号公報等でその方法が開示されており、これらは高分子
量の溶融重合体を吐出して急冷した後、高速度下に引き
取って得られる高配向の未延伸糸を多段延伸・熱処理す
ることを提案している。又、特開平1−229807号
公報の中ではポリエステル未延伸糸を溶媒で膨潤処理し
た後、多段熱延伸することによって寸法安定性が改善さ
れるとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記した特公昭41−
7892号公報、特開昭63−12715号公報や特開
昭63−196712号公報で提案された製造方法で得
られるポリエステル繊維は何れも当初の意図通り破断強
度及び初期引張弾性率は改善されるが寸法安定性は未だ
満足すべきレベルとは言えない。高い破断強度と高い初
期引張弾性率のポリエステル繊維を得る手段として高分
子量の原料重合体を利用することは原理的に正しい方向
である。しかし、分子量が高くなるにつれて溶融粘度も
上昇するため、より高温の紡糸条件とより高耐圧性の紡
糸装置が必要になる。また複屈折率が0.002〜0.
060と比較的低配向の未延伸糸を得るためには限定さ
れた紡糸条件が必要であるため通常使用される分子量
(極限粘度IV≦1.0)の原料重合体の紡糸に比べて
生産性は必然的に低下する。例えば前記特開昭63−1
9672号公報に記載された紡糸速度は高々20m/分
である。又、前記特開昭63−12715号公報に記載
された紡糸速度は8m/分と更に低いレベルにある。特
開昭53−53031号公報、特開昭53−53032
号公報で提案されたポリエステル繊維の寸法安定性の改
善に係る方法で何れも寸法安定性はかなり改善されるが
繊維の破断強度は例えば特公昭41−7892号公報に
記載された方法、つまり低配向度のポリエステル未延伸
糸を延伸する方法で得られる繊維の破断強度よりも劣る
欠点を有している。一方、特開平1−229807号公
報の中で記載されている様にポリエステル未延伸糸を溶
剤で膨潤処理した後、多段熱延伸することによる初期引
張弾性率の向上及び寸法安定性の改善効果は顕著である
が、延伸繊維の破断強度は充分満足すべきレベルとはい
えない。特開平2−277811号公報に記載した高強
度・高初期引張弾性率ポリエステル中空繊維は我々が先
に提案したものであるが、該公報に記載されたポリエス
テル重合体の極限粘度IVが1.0を越えると自然延伸
倍率が200〜250%と比較的低配向の未延伸糸を得
るためには限定された紡糸条件、特に低い紡糸速度、が
必要になり通常使用される分子量(極限粘度IV0.5
〜1.0)の原料重合体を使用した紡糸に比べて生産性
は極度に低下する。従来より提案されている破断強度、
高初期引張弾性率及び寸法安定性共に優れたポリエステ
ル繊維を製造する方法は何れも生産性が低く、実用性に
欠ける点が問題である。本発明は従来技術では欠如して
いたこれらの問題点を解決し、実用的な生産速度で破断
強度、初期引張弾性率及び寸法安定性に優れたポリエス
テル繊維を得る新規な製造方法を提供せんとするもので
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の手段、即ち本発明は、エチレンテレフタレート系ポリ
エステルを溶融紡糸延伸するに際し、極限粘度IVが
1.0〜3.0のエチレンテレフタレート系ポリエステ
ルに、210℃以上の温度で該エチレンテレフタレート
系ポリエステルに相溶する化合物を添加して溶融し、次
いで、溶融物を中空糸形成用紡糸細孔を複数個配列した
紡糸口金を用いて紡出し、次いで紡出した糸条を冷却固
化せしめて引取り、紡糸に連続して又は一旦巻き取った
後、上記エチレンテレフタレート系ポリエステルを膨潤
させる溶剤中で膨潤処理し引き続いて多段熱延伸するこ
とを特徴とする高強度・低収縮ポリエステル系繊維の製
造方法である。
【0006】本発明に使用するエチレンテレフタレート
系ポリエステルは1.0以上で、3.0未満の極限粘度
と少なく、少なくとも85mo1%のエチレンテレフタ
レート単位を有する。極限粘度が3.0以上のポリエス
テルでは該ポリエステルに対して相溶性のある前記化合
物を添加しても重合体溶融液の粘度が高いため、溶融紡
糸法で繊維化するには高耐圧性の特殊な紡糸装置並びに
特殊な紡糸・延伸条件が必要となり、極限粘度が1.0
未満のポリエステルの場合には本発明の特徴の一つであ
る高い強度並びに高い初期引張弾性率が得られないから
である。
【0007】本発明でエチレンテレフタレート系ポリエ
ステルに添加する該ポリエステルと相溶性のある化合物
とはビフェニール化合物またはナフタレン化合物または
フェニルエーテル化合物の中より選ばれた少なくとも1
種類以上の化合物またはそれらの混合物である。該化合
物をエチレンテレフタレート系ポリエステルに添加した
ことによる溶融状態における溶融粘度の低下の大きさや
ポリエステル重合体の熱安定性(極限粘度の保持性)の
向上の程度、さらには該化合物及び該化合物を添加した
ポリエステル重合体の取扱性を考慮すると特に好ましい
化合物としてはエチルビフェニール、1−メチルナフタ
レン、ジフェニールエーテル、等が挙げられる。
【0008】これらの化合物のポリエステル重合体に対
する添加率は2重量%以上、50重量%未満とすること
であり、更に好ましくは2〜20重量%とすることであ
る。ポリエステル重合体に対する添加率が2重量%未満
では本発明を満足する溶融粘度は得られず、更に後述す
るように該ポリエステル重合体を紡糸して得た未延伸糸
では高倍率の延伸が達成できない。一方、ポリエステル
重合体に対する該化合物の添加率が50重量%を越える
と紡糸バレル部からの添加化合物の漏れを生じることが
あり特殊な紡糸装置が必要になったり、紡糸口金面の汚
れによる糸切れ発生頻度が高くなり紡糸状態が不安定に
なる等の問題も派生する。
【0009】前記化合物を添加したポリエステル重合体
を相溶系混合物の示す融点以上、好ましくは該混合物の
融点より少なくとも10℃高い温度で溶融して押出す。
特に注目すべき点は前記化合物を含有するエチレンテレ
フタレート系ポリエステルは該化合物を添加していない
エチレンテレフタレート系ポリエステルに比べて添加率
にも依るが10〜50℃の範囲の融点降下を示すことで
ある。このことは前記化合物を添加していないポリエス
テル重合体に比べて融点降下に相当する分だけ低い温度
で押出せ、ポリエステル重合体の分子鎖の熱的な切断の
抑制が可能になる。つまり、前記化合物を添加すること
により、溶融粘度の低下−化工性の改善、低い紡糸
温度の採用−溶融時の熱分解の抑制、という利点があ
る。この様にして溶融した後、溶融物を紡糸口金から吐
出するが該溶融物の吐出には紡出糸を延伸した後の繊維
の横断面に面積比で2%以上、45%未満の中空部を形
成することが可能な形状の紡糸細孔を複数個配列した溶
融紡糸口金を使用することが本発明の要点の一つであ
る。紡糸細孔の形状は特に限定するものではないが1箇
所に欠円部を有するC字型で円環状のものが好ましい。
後述する様に繊維の中空率は紡糸細孔のディメンジョン
のみならず使用するポリエステル重合体の極限粘度や紡
糸温度および溶融紡糸口金から吐出された直後の糸条の
冷却条件の影響を受ける。
【0010】溶融紡糸口金から吐出された紡出糸に該紡
糸口金の直下で整流された、又は整流されていない冷却
気流を吹き当てて固化せしめるが、前述した様に溶融紡
糸口金からこの冷却気流の吹き当てを開始する距離、該
冷却気流の温度及び流速は紡出糸の中空率を大きく影響
するから適切に設定する必要のあることは言うまでもな
い。中空率が延伸後の繊維の横断面に面積比で2%未満
になるような未延伸糸は溶剤で膨潤処理し、次いで多段
熱延伸しても膨潤処理で発生した繊維横断面内の微細構
造の不均一性は解消されず破断強度の改善効果は小さ
い。一方、延伸後の繊維で横断面に面積比で45%以上
になる様な未延伸糸は、吐出直後の冷却・固化の過程で
繊維横断面内に微細構造の分布を生じ易い、糸長さ方向
に局部的な中空部の開裂を生じることがある、糸条間で
中空率に斑を生じる、等が原因で高倍率の延伸が困難と
なり高強度・高初期引張弾性率は達成出来ない。従っ
て、中空率は2%以上、45%未満、好ましくは5%以
上で40%未満とするのがよい。次に紡出糸に必要に応
じて適量の油剤を付与した後、糸条の速度を制御する引
取りローラー(群)によって引き取られる。
【0011】引取り速度は特に限定されるものではない
が前記化合物の添加量、ポリエステル重合体の分子量及
び紡糸細孔ディメンション、単孔当りの吐出量、紡糸口
金温度、紡糸口金から紡出糸の冷却開始までの距離、等
の所謂紡糸条件を勘案して未延伸糸の自然延伸倍率(N
E)が200%〜300%となる様に設定することが好
ましい。自然延伸倍率が200%未満の未延伸糸では引
き続き行う溶剤による膨潤処理した後の全延伸倍率の向
上効果が小さく結果的に高破断強度・高初期引張弾性率
を有する延伸繊維は得られない。自然延伸倍率300%
以上の未延伸糸を得ようとすると紡糸状態が非常に不安
定になり糸長手方向の斑の抑制も困難になる。
【0012】引き取られた糸条は一旦巻き取った後、又
は紡糸に連続してポリエステル重合体に対して膨潤作用
を有する溶液で該未延伸糸を処理する。膨潤溶液として
は繊維自体を溶解することなく繊維を膨潤させることに
より高倍率延伸を可能にするものであれば如何なるもり
でもよいが、特にアセトン/水系(水含有率0〜50v
ol%)が最も好ましい。膨潤溶液による浸漬処理は0
℃以上、好ましくは10℃以上の一定温度でポリエステ
ル未延伸糸の外観が白く変化して結晶化が完了する様に
浸漬時間を設定する。ポリエステル未延伸糸内部への膨
潤剤の拡散速度の制御は膨潤溶液の温度と膨潤溶液中の
膨潤剤の濃度を変更することにより可能である。この様
にして膨潤処理されたポリエステル未延伸糸を90℃以
下の温度で、かつ、延伸ヒーター内での糸条の変形・細
化が支配的である最大の倍率で第1段目の熱延伸を行
う。該延伸ヒーター温度が90℃を越えると未延伸糸の
延伸開始前に該未延伸糸の熱結晶化が進行して延伸性を
阻害するので好ましくない。
【0013】この第1段目の延伸に引き続いて、150
℃〜250℃の温度の範囲で高温熱延伸を行う。この高
温熱延伸には多段延伸が好ましく、まず150℃〜20
0℃の温度範囲で最大延伸倍率の95%以上で延伸す
る。ここで言う最大延伸倍率とは1000m以上のポリ
エステル未延伸糸が糸切れを生じることなく連続した延
伸が可能な最大の倍率のことである。次いで、200℃
〜250℃の温度範囲で連続した延伸が可能な高い倍率
で延伸を行うことが好ましい。
【0014】
【作用】本発明でポリエステル重合体と相溶性のある特
定の化合物を該重合体に対し特定の比率で添加すること
によって溶融粘度が低下し実用的な成形が可能になり、
又溶融粘度が低下したことにより高い紡速でも比較的低
配向の未延伸糸が得られ使用するポリエステル重合体の
極限粘度IVが1.0〜3.0と高いにもかかわらず紡
糸速度で見た生産性は顕著に改善される。
【0015】
【実用例】以下実施例を示すが本発明はこれらの実施例
に限定されるものではない。尚、本発明の評価に用いた
各種特性値の測定法は以下のとおりである。
【0016】極限粘度の測定法 本発明において、エチレンテレフタレート系ポリエステ
ルの極限粘度(IV)はP−クロロフェノール/テトラ
クロロエタン=3/1混合溶液を用い、30℃の温度で
測定した極限粘度(η)を次式によりフェノール/テト
ラクロロエタン=60/40の極限粘度(IV)に換算
したものである。 IV=0.8325×(η)+0.005
【0017】なお前記化合物を含有する糸条の極限粘度
の測定には予めソックスレー抽出器でアセトン3.0時
間の抽出を行なった後、さらに120℃の温度で6時間
の減圧乾燥をした糸条を使用した。
【0018】繊維の断面観察法 試料を樹脂に包埋しミクロトームにより数十ミクロンの
厚みにカットした後、光学顕微鏡を用い200〜600
倍の倍率下に観察するか、あるいは、黒色のポリノジッ
ク繊維綿を充填した貫通細孔中に試料を差し込み、カミ
ソリ刃でカットしたものを光学顕微鏡を用い200〜6
00倍の倍率下に観察し、これを写真に撮った。この写
真を拡大したもので繊維横断面の中空部面積(S1 )及
び中空部を含む繊維横断面の全面積(S2 )をプラニメ
ーターを用いて測定した。中空率は下式により求めた。 中空率=S1 ×100/S2
【0019】糸条中の添加化合物の残留量の測定法 理学電機社製・示差熱天秤TG−DTA高温型を用い、
試料重量5mgをアルゴンガス気流の雰囲気中で試料の
昇温開始温度20℃、試料加熱終了温度500℃、昇温
速度20℃/分の条件で加熱し、減量曲線から試料中に
残留していた添加化合物の重量%を求めた。
【0020】未延伸糸の自然延伸倍率の測定 標準状態の試験室において東洋ボールドウィン社製の定
速伸長型万能引張試験装置Tensilon UTM−
3を使用して、ループ状の試料を5Kgf引張型ロード
セル、つかみ間隔5cm、引張速度20cm/分、記録
用紙送り速度20cm/分の条件で引っ張り、記録紙上
に荷重−伸長曲線を描き、この図より図上の長さlcm
(図1に例示した)を読み取り、下式により自然延伸倍
率(NE)を求めた。 自然延伸倍率(%)=02×l×100
【0021】
【図1】
【0022】繊維の繊度の測定法 標準状態(温度20±2℃、相対湿度65±2%の状
態)の試験室でサーチ(株)製のオートバイブロン式繊
度測定器DENIER COMPUTER DC−11
B型を使用して、単繊維の繊度(デニール、d)を測定
した。但し、繊維の測定試料長は、50cmとした。
【0023】繊維の強度の測定方法 繊維の引張強さ(強度)はJIS−L−1013(19
81)の7.5.1に準じ、標準状態の試験室において
東洋ボールドウィン社製の定速伸長型万能引張試験装置
Tensilon UTM−3を使用して単繊維で測定
した。ただし、測定条件は5Kgf引張型ロードセルを
用い、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分、記
録用紙送り速度100cm/分で引っ張り、試料が切断
したときの荷重(g)を次式により引張強さ(g/d)
を求め、これを強度(g/d)とした。 引張強さ(g/d)=切断時の強さ(g)/試料の繊度
(d)
【0024】繊維の初期引張弾性率の測定方法 繊維の初期引張抵抗度(初期引張弾性率)は上記のJI
S−L−1013(1981)の7.5.1に準じた繊
維強度の試験方法と同じ方法で試験を行ない、記録紙上
に荷重−伸長曲線を描き、この図よりJIS−L−10
13(1981)の7.10に記載の初期引張抵抗度計
算式により初期引張抵抗度(g/d)を求めて、これを
初期引張弾性率(g/d)とした。
【0025】繊維の乾熱収縮率の測定方法 JIS−L−1017(1987)の5.7に準じて測
定を行った。
【0026】実施例1 触媒として三酸化アンチモン(テレフタル酸に対し、ア
ンチモンとして0.05mol%含む)を使用したポリ
エチレンテレフタレートチップ(極限粘度IV0.6)
を水素化トリフェニルの熱媒中、窒素ガスを吹き込みな
がら、237℃に保ち、20時間加熱攪拌、熱媒重合を
行い極限粘度2.05のポリエチレンテレフタレート重
合体を得た。このポリエステルチップを120℃の温度
で16時間減圧乾燥後、該重合体800重量部に対して
1−メチルナフタレン(新日鉄化学(株)製、蒸留品)
200重量部を加えた後に、この混合物を45℃に昇温
して1.0mmHG減圧下で2時間攪拌を行った。所定
時間の攪拌処理が終了した時点で該混合攪拌容器から重
合体を取り出したが該容器中に1−メチルナフタレンは
全く残存していなかった。また処理後のポリエステルチ
ップの表面にも1−メチルナフタレンの付着は認められ
なかった。かかる処理を行うことで1−メチルナフタレ
ンを含浸したポリエチレンテレフタレートが得られた。
該ポリエステルチップを示差熱天秤装置で加熱による重
量変化を測定したところ19.8%の重量減少を示し
た。なお、該測定装置を用いて1−メチルナフタレンを
添加しないポリエチレンテレフタレートチップを同一温
度範囲で測定した重量減少は0.2%であった。
【0027】1−メチルナフタレンを添加した上記ポリ
エチレンテレフタレートチップをエクストルーダー型紡
糸機を使用して該ポリエステルを270℃で溶融した
後、温度310℃、単孔吐出量0.36g/分の条件で
図2に示すC字型紡糸細孔(a/b=0.14、a=
0.40mm、c=0.18mm)を有する溶融紡糸口
金から吐出し、温度20℃、速度0.3m/秒の整流さ
れた空気流で冷却・固化させた後、約1%の油剤を付与
し、引取速度を50〜300m/分の範囲で変更して、
糸条(以下、未延伸糸と称する)を巻き取った。尚、該
紡糸口金温度における該ポリエステルの溶融粘度は1
3,600ポイズであった。引取速度100m/分で巻
き取った未延伸糸に残留する1−メチルナフタレンの重
量分率は12.6重量%であり、動的粘弾性測定から求
めたガラス転移温度は44.5℃であった。また22℃
における自然延伸倍率(NE)は285%であった。
尚、該ポリエステルは紡糸中に糸切れの発生もなく紡糸
状態は安定であった。次いで該未延伸糸を供給速度15
m/分で60℃の温度に加熱した100%のアセトン浴
中に導入して2分間浸漬処理し、引き続き該処理糸を8
0℃の非接触ヒーターで表1に記載した倍率で1段目延
伸した後、185℃の非接触ヒーターで最大延伸倍率の
95%で2段目の延伸を、さらに245℃の非接触ヒー
ターで3段目の延伸を行った。得られた延伸繊維の性能
は表1に示す通りである。未延伸糸自然延伸倍率が20
0%未満(No.4)を除くと何れも高い切断強度と初
期引張弾性率及び良好な寸法安定(熱収縮率)を有して
いた。
【0028】
【図2】
【0029】
【表1】
【0030】実施例2 実施例1において熱媒重合時間を調節することで極限粘
度IVが夫々0.91、1.35、3.00、3.53
のポリエチレンテレフタレート重合体を得た。各重合体
に実施例1で記載した装置・条件を使用して1−メチル
ナフタレンを混合・含浸させた。この重合体につき実施
例1で記載した紡糸装置及び紡糸口金を用いて溶融吐出
を行った。当然のことであるが溶融押出し時に紡糸口金
にかかる圧力及び紡出糸の特性は使用するポリエステル
重合体の極限粘度に大きく依存して変化するため、紡糸
温度や紡糸細孔のディメンジョン、更には単孔吐出量等
は極限粘度の異なるポリエステル重合体毎に紡糸条件の
適正化を図った。得られた未延伸糸を表1に記載した方
法で多段熱延伸を行った。評価結果を表2に示す。表2
から明らかな様に本発明に属するもの(No.1〜2)
は比較的低い溶融粘度で押出しが可能であり、延伸して
得られた繊維は破断強度、初期引張弾性率共に高く寸法
安定性も良好であることが分かる。一方、これに対して
極限粘度が0.91のポリエステル重合体を用いた場合
(No.3)の延伸繊維の破断強度、初期引張弾性率の
向上効果は小さいものであった。又、極限粘度が3.0
を越えるポリエステル重合体を使用した場合(No.
4)の溶融粘度は53,200ポイズであり今回採用し
た紡糸条件下ではドローレゾナンスやメルトフラクチャ
ー現象が発生し易く紡糸状態は極めて不安定であった。
紡糸口金の紡糸口金に配した紡糸細孔の中で2〜3孔に
C字型形状のブリッジ部の破損を生じた。得られた未延
伸糸は単糸間及び糸条長手方向共に均質性に欠けるもの
であった。
【0031】
【表2】
【0032】実施例3 減量ポリエステル重合体1000重量部に対する1−メ
チルナフタレンの混合比率を0〜1250重量部の範囲
でそれぞれ変更し、実施例1に記載した方法・条件で混
合・含浸処理を行った。該混合物をそれぞれ実施例1に
記載した紡糸装置を用いて紡糸し、さらに実施例1に記
載した装置と条件で多段熱延伸を行った。表3に結果を
示す。表3から明らかな様に本発明に属するもの(N
o.1〜4)は溶融紡糸時の吐出圧力は実用レベルにあ
り、また紡糸糸切れの発生もなく状態は安定であった。
それぞれの未延伸糸を多段熱延伸して得た延伸繊維は破
断強度、初期引張弾性率及び寸法安定性共に優れたもの
であった。一方、1−メチルナフタレンを添加しなかっ
た場合(No.6)は溶融吐出時における紡糸口金部の
背圧が極めて高く、実質的に紡糸は困難であった。又、
本発明に属さないNo.5は一般に使用されるエクストルー
ダー型紡糸装置ではバレル部から添加化合物の漏れが発
生したり、また紡糸口金直下において紡出糸条からの1
−メチルナフタレンガスの揮発による多量の発煙等の問
題が発生した。
【0033】
【表3】
【0034】実施例4 1箇所に欠円部を有する図2に示すC字型環状紡糸細孔
のディメンジョンa/b、cを変更した紡糸口金と比較
のため通常の円形断面形状(φ0.28mm)の紡糸口
金を用いて実施例1に準じた条件で溶融吐出し、引取速
度100m/分で未延伸糸を得た。それぞれの未延伸糸
を実施例1と同一条件アセトンに浸漬させて膨潤処理
し、引き続いて多段熱延伸を行った。中空率の異なる各
延伸繊維の性能を表4に示す。尚、同表中のNo.5は中空
率48%の延伸糸繊維を得るべく紡糸細孔ディメンジョ
ンを設定したが中空部の開裂を生じ、満足な未延伸糸を
得ることが出来なかった。表4中のNo.6は通常の円形断
面形状の紡糸口金を使用したときの結果である。
【0035】
【表4】
【0036】実施例5 実施例1と全く同じ紡糸条件で未延伸糸を作成し、該未
延伸糸をアセトンで浸漬処理することなく供給速度15
m/分、65℃の非接触ヒーターで3.78倍延伸した
後、245℃非接触ヒーターで2.23倍延伸した。一
方、アセトンで浸漬処理した未延伸糸の延伸には実施例
1に記載した方法・条件で延伸した。未延伸糸をアセト
ンで膨潤処理しなかった場合(No.2)は、表5中の
No.1の場合に比べて寸法安定性の劣ることが分かる。
【0037】
【表5】
【0038】
【発明の効果】本発明によればポリエチレンテレフタレ
ートと高温下で相溶性を有する特定の化合物を添加する
ことで従来溶融粘度が高すぎて従来工業的には紡糸及び
延伸が困難とされてきた超高分子量ポリエチレンテレフ
タレートを用いた高強度、高初期引張弾性率化が可能に
なった。さらに未延伸糸を膨潤剤で処理した後、熱延伸
する手段を併用することにより高強度、高初期引張弾性
率の特性を維持し、かつ寸法安定性の改善された優れた
ポリエステル繊維を安定に得ることが出来て産業界に寄
与すること大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は未延伸糸の応力・伸び曲線を模式的に表
した図である。
【図2】図2は中空繊維を得るための1箇所に欠円部を
固有するC字型環状紡糸細孔の横断面の一例を示したも
のである。
【符号の説明】
a:紡糸細孔幅 b:欠円状重合体紡糸細孔外円の直径 c:欠円部重合紡糸間隔(ブリッジ幅)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D02J 1/22 Q 7199−3B // D02G 3/48 7199−3B

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンテレフタレート系ポリエステル
    を溶融紡糸延伸するに際し、極限粘度IVが1.0〜
    3.0のエチレンテレフタレート系ポリエステルに、2
    10℃以上の温度で該エチレンテレフタレート系ポリエ
    ステルに相溶する化合物を添加して溶融し、次いで溶融
    物を中空糸形成用紡糸細孔を複数個配列した紡糸口金を
    用いて、紡出し、次いで紡出した糸条を冷却固化せしめ
    て引取り、紡糸に連続して又は一旦巻き取った後、上記
    エチレンテレフタレート系ポリエステルを膨潤させる溶
    剤中で膨潤処理し引き続いて多段熱延伸することを特徴
    とする高強度・低収縮ポリエステル系繊維の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013118785A1 (ja) * 2012-02-06 2013-08-15 株式会社ブリヂストン 空気入りラジアルタイヤ
CN113041848A (zh) * 2021-03-24 2021-06-29 南京工业大学 一种结合选择性溶胀和熔纺拉伸法制备嵌段共聚物中空纤维膜的方法
JP2021120501A (ja) * 2017-09-22 2021-08-19 コーロン インダストリーズ インク 高強度ポリエチレンテレフタレート原糸の製造方法
EP3967796A4 (en) * 2019-07-05 2023-07-12 Kolon Industries, Inc. YARN FOR TIRE CORD

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