JP3161549B2 - 高強度高弾性率ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

高強度高弾性率ポリエステル繊維の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は従来にない高強度と高弾
性特性とを有するポリエステル繊維を工業的に製造する
方法に関するものである。さらに詳しくはタイヤ補強
材、コンベアベルト補強材、等の用途に有用な高性能ポ
リエステル繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から高強度高弾性率ポリエステル繊
維を得る方法としては例えば特開昭63−12715号
公報、特開昭63−99322号公報、特開昭63−1
96711号公報、特開昭63−196712号公報、
特開昭63−196713号公報、等が提案されてい
る。これらの特許に共通する高強度高弾性率のポリエス
テル繊維を得るための手段として高重合度の原料ポリマ
ーの利用は原理的に正しい方向である。従来よりこの考
え方に基づいた研究がなされており、最近の重合技術の
進歩により極限粘度が3.0を越える所謂超高分子量ポ
リエチレンテレフタレートが工業的に得られるようにな
ってきた。
【0003】しかしながら、上記従来技術を見ると超高
分子量ポリエチレンテレフタレートを用いて溶融紡糸法
により高性能繊維を得ようとすると、超高分子量体のた
めに溶融粘度が極めて高くなり溶融液の流動性が極端に
低下するため従来の紡糸装置と方法および条件を用いた
紡糸は極めて困難である。そのため特公昭47−337
2号公報及びUSP3846377に見られるように高
圧に耐える紡糸装置を新たに設計して高圧高温下での紡
糸研究もなされている。しかし耐圧法を付与するために
は装置の設備投資が大きくなり、またかかる方法によっ
ても生産性の低下は免れ得ないことから十分に実用的と
はいえない。
【0004】また特開昭61−207616号公報に記
載された技術によれば高重合度ポリエステルの加工法を
高めるために溶液を用いて3〜10重量%といった希薄
な濃度で紡糸を行なっており湿式紡糸による生産性の低
さおよび溶媒回収コスト、等を考えると実用的とはいえ
ない。また特開昭63−12715号公報では極限粘度
が1.2以上のエチレンテレフタレート系ポリエステル
をトリフロロ酢酸/塩化メチレン混合溶媒に溶解して紡
糸原液となし、これを紡糸して得た未延伸糸を熱延伸す
ることで高強度高弾性率ポリエステル繊維を製造する技
術が開示されているがこれも前記の特許と同様に生産性
の低い点に問題がある。さらに特開昭63−19671
2号公報に記載されている技術においては溶融紡糸口金
における剪断速度を極端に低下させる必要があり、この
ため紡糸速度は高々20m/分程度であり生産性が低く
実用性に欠ける。特開昭63−196711号公報に記
載された技術は、特開昭63−196712号公報に記
載された技術に延伸前に例えばアセトン等の有機溶剤を
用いて膨潤させる技術を追加したものであり、膨潤処理
速度が律速となり生産性の面で実用性に欠ける。このよ
うにいずれの製造方法も十分な実用性を具備していると
はいい難く現状では工業的に高強度高弾性率を有する高
性能ポリエステル繊維を得るには至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】高強度高弾性率ポリエ
ステル繊維を得ようとする従来技術はいずれも実用性が
欠如しており工業的規模の生産には採用し難い方法であ
る。この発明はエチレンテレフタレート系ポリエステル
繊維の高強度高弾性率化に関し、従来技術では欠如して
いた実用性、特に高速生産性の問題を解決して高強度高
弾性率ポリエステル繊維の安定的な紡糸・延伸が可能な
新規製造方法を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の手段、即ち、本発明は、エチレンテレフタレート系ポ
リエステルを溶融紡糸延伸するに際し、極限粘度IVが
1.0〜3.0のエチレンテレフタレート系ポリエステ
ルに、210℃以上の温度で該エチレンテレフタレート
系ポリエステルに相溶する化合物であり、ビフェニール
化合物、ナフタレン化合物またはフェニルエーテル化合
物の中から選ばれた少なくとも1種類以上の化合物また
はそれらの混合物を、該エチレンテレフタレート系ポリ
エステルに対して2〜50重量%添加し、溶融紡糸口金
を通して空気中に溶融紡出し、引き続いて該溶融紡糸口
金下方に設けた引取り手段によって糸条を該液体浴から
引き出し、紡糸に連続し、または一旦巻き取った後、延
伸することを特徴とする高強度高弾性率ポリエステル系
繊維の製造方法である。
【0007】本発明に使用するエチレンテレフタレート
系ポリエステルは1.0以上、3.0未満の極限粘度と
少なくとも85mol%のエチレンテレフタレート単位
を有する。極限粘度が3.0以上のポリエステルでは該
ポリエステルに対して相溶性のある前記化合物を添加し
ても溶融液の溶融粘度が高いため、溶融紡糸法で繊維化
するには高耐圧仕様と特殊な紡糸装置並びに特殊な紡糸
・延伸条件が必要となり、極限粘度が1.0未満のポリ
エステルの場合には本発明の繊維の特徴である高強度高
弾性率が得られないからである。
【0008】本発明のエチレンテレフタレート系ポリエ
ステルは高強度高弾性率繊維を得るためにはポリエチレ
ンテレフタレート単独が最も好ましいが、少なくとも8
5mol%のエチレンテレフタレートから成るポリエス
テルである必要がある。本発明でエチレンテレフタレー
ト系ポリエステルに添加する該ポリエステルと相溶性の
ある化合物とはビフェニール化合物またはナフタレン化
合物またはフエニルエーテル化合物の中より選ばれた少
なくとも1種類以上の化合物またはそれらの混合物であ
る。該化合物をエチレンテレフタレート系ポリエステル
に添加したことによる溶融状態における溶融粘度の低下
の大きさやポリエステルポリマーの熱安定性(極限粘度
の保持性)の向上の程度、さらには該化合物および該化
合物を添加したポリエステルポリマーの取扱性、等を考
慮すると特に好ましい化合物として、エチルビフェニー
ル、1−メチルナフタレン、ジフェニールエーテル、等
が挙げられる。これらの化合物のポリエステルポリマー
に対する添加率は2重量%以上、50重量%未満とする
ことであり、さらに好ましくは2〜20重量%とするこ
とである。ポリエステルポリマーに対する添加率が2重
量%未満では本発明で満足する溶融粘度は得られず、さ
らに後述するように該ポリエステルポリマーを紡糸して
得た未延伸糸では高倍率の延伸が達成できない。また、
ポリエステルポリマーに対する該化合物の添加率が50
重量%を越えると紡糸バレル部からの添加化合物の漏れ
を生じることがあり特殊な紡糸装置が必要となる。さら
にまた紡糸口金面の汚れによる糸切れ発生頻度が高くな
る、等の紡糸操業性の面で問題も派生する。
【0009】前記化合物を添加したポリエステルポリマ
ーを相溶系混合物の示す融点以上、好ましくは該混合物
の融点より少なくとも10℃高い温度で溶融し押出す。
溶融押出し方法に特に限定はないが、エクストルダー型
押出機、ピストン型押出機、2軸混練型押出機、等が用
いられる。このようにしてエチレンテレフタレート系ポ
リエステルを溶融した後、紡糸口金を通して一旦気中に
吐出した後、該紡糸口金の下方に設けられた液体浴中に
該紡出糸を導入して冷却固化を進行させる。該紡糸口金
の下方に液体浴を設けることなく整流された冷却気流を
吹き当てることのみで紡出糸を冷却固化させた場合、引
取った糸条の単糸断面の半径方向に前記添加化合物のシ
ャープな濃度勾配が形成され、これが紡糸細化過程にお
いて単糸断面の半径方向における伸長粘度の分布の増大
をきたし、ひいては単糸の内外層の微細構造に顕著な分
布、所謂スキン・コア的な構造を生じる。単糸断面内に
おけるこの微細構造の顕著な分布は高倍率延伸の阻害原
因になる。したがって単糸断面の糸径方向における微細
構造分布の形成を抑制することができればさらに高い強
度と弾性率の達成が期待できる。この抑制手段として前
記添加化合物を含むエチレンテレフタレート系ポリエス
テルが紡糸口金を通して空気中に吐出され、該紡出糸の
糸温度が150℃〜250℃の範囲にあるときに該紡出
糸を液体浴に導入し、冷却固化させることで極めて効果
的に達成出来ることを知見した。液体浴に導入される直
前の糸温度が250℃より高い場合、紡糸状態は不安定
となり、一方150℃未満の温度で紡出糸を液体浴に導
入した場合には該液体浴に紡出糸が導入されるまでに空
気中で前記添加化合物の揮発が進行し単糸の内外層に濃
度分布が形成されるため液体浴中での微細構造分布の発
生を抑制する効果は小さいものになる。本発明における
紡糸口金から該紡糸口金の下方に設けた液体浴までの距
離はエチレンテレフタレート系ポリエステルポリマーに
添加する前記化合物の種類および添加率、溶融紡糸口金
を構成する紡糸孔1個あたりの重合体吐出量、該溶融紡
糸口金全体での重合体吐出量、第1ローラーの引取り速
度、等の所謂紡糸条件によって空気中における紡出糸の
細化プロフィールや温度プロフィールが変化するため適
切に選択することが肝要である。また、該紡糸口金から
液体浴に至る距離によっては紡出糸に周期性の斑が発生
し、極端な場合には安定した紡糸状態を維持が困難にな
ることもある。要は液体浴に導入される直前の紡出糸の
糸温度が150〜250℃の範囲にある位置に該液体浴
を設置することである。この液体浴の温度はポリエステ
ルのガラス転移温度(Tg+10)℃以下、好ましくは
(Tg−5)℃以下が用いられる。液浴温度が(Tg+
10)℃より高い状態で糸条を該液体浴に導入すると該
液体浴中における固体との接触による抵抗(例えば、糸
道ガイド、フリーローラーと糸条との接触)や走行中に
受ける液体との接触抵抗、等によって単糸間や糸長手方
向に糸斑を生じ易く安定した状態で操業することが困難
になる。本発明における紡糸口金の下方に設ける液体浴
の長さも添加剤の種類と添加率および紡糸条件等によっ
て適正に選ぶ必要があるが一般的に10cm以上の長さ
が好ましく、より好ましくは15cm以上の長さである
が、該液体浴の長さをいたずらに長くすることは装置設
備の巨大化に伴うコストの上昇や紡糸操作性の低下等の
面で不利となるから、長くても50cmまでにとどめる
べきである。液体浴長が10cm未満の場合は紡糸条件
にもよるが紡出糸の冷却不足の発生するおそれがある。
紡出糸の冷却に用いる液体の種類はエチレンテレフタレ
ート系ポリエステルに対して不活性な液体であれば特に
制限はないが取扱性、回収コスト等を考慮すると水が最
も一般的に用いられる。
【0010】このようにして紡糸口金の下方に設けた液
体浴中を通過させることによって紡出糸を冷却し、必要
に応じて適量の油剤を付与した後、糸条の複屈折率(△
n)が0.0001〜0.0200となるように引取
る。引取った未延伸糸の複屈折率が0.0200以上と
なると前記化合物を添加したことによる延伸性の増大効
果が小さくなり高強度高弾性率の達成は困難になる。一
方、複屈折率が0.0001未満になると紡糸状態が不
安定となり、さらに液体浴中を通過させることで状態の
不安定度が増大し、紡糸過程で発生する糸条の長手方向
の斑の抑制が困難になる。引取られた未延伸糸は一旦巻
取った後、または紡糸に連続して該未延伸糸のガラス転
移温度以上の温度で自然延伸倍率以上の倍率で延伸す
る。第1段の延伸倍率を自然延伸倍率未満とした場合に
は該工程で糸斑の発生頻度が増大し、次の延伸工程での
延伸性の向上は期待できず、全延伸倍率は増大しない。
第1段の延伸に引き続き、150〜250℃の温度範囲
で次段の延伸を行う。必要に応じてさらに多段延伸を行
ってもよいが、最終段の最大延伸応力を3.0g/d以
上で延伸することが肝要である。3.0g/d未満の応
力下で延伸した場合には本発明の目的とする高強度高弾
性率の達成は困難である。この延伸応力を得るための延
伸条件は前記化合物の種類および未延伸糸中に残留する
前記化合物の量、延伸時の糸温度、その温度における滞
留時間、等を勘案して決められる。
【0011】以下に本発明の評価に用いた各種特性値の
測定方法を述べる。
【0012】極限粘度の測定法 本発明において、エチレンテレフタレート系ポリエステ
ルの極限粘度(IV)はP−クロロフェノール/テトラ
クロロエタン=3/1混合溶液を用い、30℃の温度で
測定した極限粘度〔η〕を次式によりフェノール/テト
ラクロロエタン=60/40の極限粘度(IV)に換算
したものである。 IV=0.8325×〔η〕+0.005 なお、前記化合物を含有する糸条の極限粘度の測定には
予めソックスレー抽出器でアセトン3.0時間の抽出を
行なった後、さらに120℃の温度で6時間の減圧乾燥
後の糸条を使用した。
【0013】紡出糸の糸温度の測定法 エベレックスインコーポレーション(株)製の温度計マ
イクロスコピック2000型を用い紡出糸の糸温度を測
定した。
【0014】ガラス転移温度の測定法 東洋ボールドウィン社製、レオバイブロン(Rheo
Vibron)DDV−IIEA型動的粘弾性測定装置
を用い、試料重量約0.1mmg、測定周波数110H
Z、昇温速度1℃/分において乾燥空気中でtanδが
立ち上がる温度(℃)を求めて、該温度をガラス転移温
度の尺度として採用した。
【0015】糸条中に残留する添加化合物量の測定法 理学電機社製・示差熱天秤TG−DTA高温型を用い、
試料重量5mgをアルゴンガス気流の雰囲気中で、試料
昇温開始温度20℃、試料昇温終了温度500℃、試料
昇温速度20℃/分にて加熱したときの減量曲線から試
料中に残留していた添加化合物の重量比率を求めた。
【0016】複屈折率(△n)の測定方法 ニコン製偏光顕微鏡POH型とライツ製ベレックコンペ
ンセーターを用い、干渉縞と消光角度から繊維のリター
デーション(Γ)を、また測微マイクロメーターにより
繊維直径(D)を測定し、下記の式により複屈折率(△
n)を算出した。光源としてはスペクトル光源用起動装
置(東芝SLS−8−B型Na光源)を使用した。 △n=Γ/D (Γ;リターデーション)
【0017】単糸断面内の微細構造分布の測定法 透過定量型干渉顕微鏡(東独カールツアイスイエナ社
製)を使用し、光源としてキセノンランプを用い、偏光
下、干渉フィルター波長544mμの緑色光線で得た干
渉縞パターンから微細構造分布を定性的に判定する。つ
まり第1図(a)に示されるような干渉縞パターンを有
するものを単糸内の微細構造分布は[小]それに対して
第1図(b)に示されるような干渉縞パターンを有する
ものを微細構造分布[大]と判定する。
【0018】繊維の繊度の測定法 繊度はJIS L 1013(1981)の7・3に準
拠した試験方法と条件で測定した。
【0019】繊維の強度の測定方法 繊維の引張強さ(強度)はJIS L 1013(19
81)の7・5・1に準じ、標準状態の実験室において
東洋ボールドウィン社製の定速伸長型万能引張試験装置
Tensilon UTM−IIIを使用して単繊維
の引張強さを測定した。ただし、測定条件は5Kgf、
引張型ロードセルを用い、つかみ間隔10cm、引張速
度10cm/分、記録用紙送り速度100cm/分で引
っ張り、試料が切断したときの荷重(g)を次式により
引っ張り強さ(g/d)を求め、これを強度(g/d)
とした。 引っ張り強さ<(g/d)=切断時の強さ(g)/試料
の繊度(d)
【0020】繊維の初期引張弾性率の測定方法 繊維の初期引張抵抗度(初期引張弾性率)は上記のJI
S L 1013(1981)の7・5・1に準じた繊
維強度の試験方法と同じ方法で試験を行ない、記録紙上
に荷重−伸長曲線を描き、この図よりJIS L 10
13(1981)の7・10に記載の初期引張抵抗度計
算式により初期引張抵抗度(g/d)を求めて初期引張
弾性率(g/d)とした。
【0021】繊維の初期引張弾性率の測定方法 繊維の初期引張抵抗度(初期引張弾性率)は上記のJI
S L 1013(1981)の7・10に記載の初期
引張抵抗度計算式により初期引張抵抗度(g/d)を算
出し、初期引張弾性率(g/d)とした。
【0022】
【作用】本発明で得られるエチレンテレフタレート系ポ
リエステル繊維が高強度高弾性率という優れた物理的特
性を有することは該ポリマーと相溶性のある特定の化合
物を該ポリマーに対して特定の比率で添加することによ
り溶融粘度を低下させ実用的な成形加工を可能とすると
同時に、得られた未延伸糸の延伸においては該化合物が
該ポリマー冷却固化時に分子鎖の絡み合い数を低下させ
るため可塑剤的な役割を果たし、ポリエステル分子鎖の
高度な引き伸ばしが可能になる。さらに該ポリマーの溶
融吐出後の冷却固化過程における単糸の断面の糸径方向
における微細構造差の発生を極力抑制することにより一
層の高強度高弾性率の達成が可能になったものと本発明
者らは推察している。
【0023】
【実施例】以下実施例をあげて、本発明を具体的に説明
する。
【0024】実施例1 触媒として三酸化アンチモン(テレフタル酸に対しアン
チモンとして0.05モル%含む)を使用したポリエチ
レンテレフタレートチップ(極限粘度0.6)を水素化
トリフェニルの熱媒中、窒素ガスを吹き込みながら、2
37℃に保ち、20時間加熱攪拌して熱媒重合を行ない
極限粘度2.0のポリエチレンテレフタレートを得た。
このポリエステルチップを120℃の温度で16時間減
圧乾燥後該ポリマー800重量部に対して1−メチルナ
フタレン〔新日鉄化学(株)製、蒸留品〕200重量部
を加え、この混合物を45℃に昇温して、1.0mmH
gの減圧下で2時間攪拌を行なった。所定時間の攪拌処
理が終了した時点で該混合攪拌容器からポリマーを取り
出したが該容器中に1−メチルナフタレンは全く残存し
ていなかった。また処理後のポリエステルチップの表面
にも1−メチルナフタレンの付着は認められなかった。
かかる処理を行うことで所定量の1−メチルナフタレン
を含浸したポリエチレンテレフタレートが得られた。該
ポリエステルチップを示差熱天秤装置で加熱による重量
変化を測定したところ19.8%の重量減少を示した。
なお、該測定装置を用いて1−メチルナフタレンを添加
しないポリエチレンテレフタレートチップを同一温度範
囲で測定した重量減少は0.2%であった。
【0025】1−メチルナフタレンを添加した上記ポリ
エチレンテレフタレートチップをエクストルーダー型紡
糸機を使用してポリマーを270℃で溶融した後、31
0℃の温度に保った孔径がφ0.28mm、孔数が24
の溶融紡糸口金から該溶融紡糸口金の単孔当りの吐出量
0.31g/分で常温空気中に溶融吐出し、該紡出糸の
温度が237〜245℃にある間に該紡糸口金の下方に
設けた温度24℃の水浴に紡出糸を導入し、該水浴中を
15cm走行させた後、該水浴から糸条を導き出し、次
いで室温の空気流を吹き当てて糸条表面に付着する水分
を除去した。次いで該糸条に対して約0.5%の油剤を
付与し、引取速度を50〜150m/分の範囲で変更し
て巻取った。なお、該紡糸口金温度での該ポリエステル
の零剪断粘度は13600ポイズであった。速度100
m/分で巻取った糸条(以下、未延伸糸と称する)の複
屈折率(△n)は0.0003であり、22℃の温度に
おける自然延伸倍率は3.88であった。また、未延伸
糸中に残留している1−メチルナフタレンの量は18.
6重量%であり、動的粘弾性から求めたガラス転移温度
は40.1℃であった。また透過定量型干渉顕微鏡で観
察される干渉縞パターンから単糸断面の糸径方向の微細
構造の分布は[小]であると判定した。なお、比較のた
めに紡糸口金の下方に水浴を設けることなく、紡糸口金
から吐出した紡出糸に整流された常温の気流を吹きつけ
て冷却固化させ、次いで油剤を付与した後、引取速度1
00m/分で巻取った未延伸糸の該未延伸糸中に残留す
る1−メチルナフタレン量は12.6重量%であり、動
的粘弾性から求めたガラス転移温度は44.5℃であっ
た。また該未延伸糸の透過定量型干渉顕微鏡の干渉縞パ
ターン観察から糸径方向の微細構造の分布は[大]であ
ると判定した。
【0026】次にこれらの未延伸糸を表面速度が50m
/分の供給ローラーと第1延伸ローラーの間で60℃の
温度に加熱した非接触式熱板間ヒーターを介して表1に
記載の第1延伸倍率で第1段の延伸を行った後、引き続
いてさらに245℃の温度に加熱した非接触式熱板間ヒ
ーターを介して第2延伸ローラーとの間で表1に記載し
た第2延伸倍率で延伸を行い、ワインダーで巻き取っ
た。得られた延伸繊維の性能は表1に示す通りである。
紡糸口金下方に設けた水浴中を通過させることにより冷
却固化させて得た未延伸糸(実施例No1〜No3)を
延伸して得られた繊維は強度、初期弾性率ともに極めて
高いことが分かる。
【0027】
【表1】
【0028】実施例2 実施例1で記載したポリマーを同じく実施例1で記載し
た紡糸装置を使用して溶融吐出し、紡出糸が水浴に導入
されるまでの距離(水浴に導入される直前の糸温度を変
更したことになる)を変更した以外は実施例1に記載し
た条件に合わせて未延伸糸を得た。こうして得た未延伸
糸を表1に記載した装置・方法を使用して延伸した。結
果を表2に示す。表2から明らかな様に本発明に属する
もの(実施例No1〜No2)は透過定量型干渉顕微鏡
の干渉縞パターンから判定した未延伸糸の単糸内の糸径
方向の微細構造分布は[小]であり、該未延伸糸を延伸
して得た繊維の強度、初期弾性率ともに極めて高いこと
が分かる。一方、これに対し水浴に導入される直前の紡
出糸の糸温度が250℃を越える場合(比較例No3)
には紡糸口金直下において周期的な糸斑が発生し、紡糸
状態は不安定であり、均質な未延伸糸は得られなかっ
た。また、水浴に導入される直前の紡出糸の温度が15
0℃未満の場合(比較例No4)には透過定量型干渉縞
パターンから判定した未延伸糸の単糸内の微細構造の分
布は[大]であり、該未延伸糸を延伸して得た繊維の強
度ならびに初期弾性率の向上効果は小さいものであっ
た。
【0029】
【表2】
【0030】実施例3 実施例1で記載したポリマーを同じく実施例1で記載し
た紡糸装置を使用して溶融吐出し、該紡糸口金の下方に
設けた水浴の温度を15〜65℃の範囲で変更した以外
は実施例1の方法・条件で未延伸糸を得た。さらにこれ
らの未延伸糸を実施例1に記載した装置・方法で延伸を
行った。表3に結果を示す。表3から明らかな様に本発
明に属するもの(実施例No1〜No2)の紡糸状態は
安定であり、延伸して得た繊維の強度、初期弾性率とも
に高い値を示した。一方、水浴が(Tg+10)℃の温
度を越える場合(比較例No3)、紡糸状態が不安定に
なり得られる未延伸糸は単繊維間および糸長手方向のい
ずれにも糸斑が大きく、該未延伸糸を延伸して得た繊維
の強度ならびに初期弾性率の向上効果は小さいものであ
った。
【0031】
【表3】
【0032】実施例4 原料ポリエステル1000重量部に対する1−メチルナ
フタレンの混合比率を0〜1250重量部の範囲で変更
し、実施例1に記載した方法と条件で混合・含浸処理を
行った。該混合物をそれぞれ実施例1に記載した紡糸装
置を用いて紡糸し、さらに実施例1に記載した装置・方
法で延伸を行った。表4に結果を示す。表4から明らか
な様に本発明に属するもの(実施例No1)は高い強度
と初期弾性率を示した。一方、本発明に属さないもの
(比較例No2〜4)は希望通りの高強度高弾性率は得
られなかった。
【0033】
【表4】
【0034】実施例5 実施例1において熱媒重合時間を調節することで極限粘
度がそれぞれ0.9、3.0のポリエチレンテレフタレ
ートポリマーを得た。各ポリマーに実施例1に記載した
装置と条件を使用して1−メチルナフタレンを混合・含
浸させた。このポリマーにつき実施例1に記載した紡糸
装置を使用して溶融吐出を行い、得られた未延伸糸を表
1に記載した装置・方法で延伸を行った。結果を表5に
示す。表5から明らかな様に本発明に属するもの(実施
例No1)は強度、初期弾性率ともに高いことが分か
る。一方、極限粘度が0.9のポリエステルポリマーを
使用した場合(比較例No4)には、水浴に導入される
紡出糸に糸揺れを生じ、紡糸状態の安定性に欠ける。ま
たこれらの未延伸糸は延伸可能な最大倍率が低く希望通
りの高物性の繊維は得られなかった。
【0035】
【表5】
【0036】
【発明の効果】本発明によればポリエステルと高温下で
相溶性を有する特定の化合物を添加することで溶融粘度
が高すぎて従来工業的には紡糸、延伸方困難とされてき
た超高分子量エチレンテレフタレート系ポリエステルの
繊維化が可能になり、しかも該ポリマーの溶融吐出後の
冷却固化過程における単糸横断面の糸径方向の微細構造
差の発生を極力抑制して均質な未延伸糸を得ることで、
前記添加化合物の延伸性におよぼす可塑化効果がより一
層大きくなり、さらに高倍率延伸が可能になる。このた
め、強度および初期引張弾性率がともに優れたポリエス
テル繊維を安定に得ることがきで、産業界に寄与するこ
と大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は繊維を透過定量型干渉顕微鏡で横方向か
ら観察したときに見られる干渉縞の例であり、図1
(a)は微細構造分布を〔小〕と判定した本発明の繊維
の干渉縞パターンの例、図1(b)は微細構造分布を
〔大〕と判定した繊維の干渉縞パターンの例である。図
1においては、1は単糸の側面図、2は断面図、3は封
入液による干渉縞、4は単糸による干渉縞をそれぞれ表
している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−257318(JP,A) 特開 平2−22335(JP,A) 特開 平3−294539(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/92 D01F 6/62

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エチレンテレフタレート系ポリエステルを
    溶融紡糸延伸するに際し、極限粘度IVが1.0〜3.
    0のエチレンテレフタレート系ポリエステルに、210
    ℃以上の温度で該エチレンテレフタレート系ポリエステ
    ルに相溶する化合物であり、ビフェニール化合物、ナフ
    タレン化合物またはフェニルエーテル化合物の中から選
    ばれた少なくとも1種類以上の化合物またはそれらの混
    合物を、該エチレンテレフタレート系ポリエステルに対
    して2〜50重量%添加し、溶融紡糸口金を通して空気
    中に溶融紡出し、引き続いて該溶融紡糸口金下方に設け
    た引取り手段によって糸条を該液体浴から引き出し、紡
    糸に連続し、または一旦巻き取った後、延伸することを
    特徴とする高強度高弾性率ポリエステル系繊維の製造方
    法。
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