JPH0573282U - スクロールコンプレッサ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スクロールコンプレッサにおける旋回自在な
一方の鏡板を他方の鏡板へ押圧する力を小さくすること
のできるスクロールコンプレッサを提供することであ
る。 【構成】 スクロールコンプレッサにおける密閉容器の
フレームに備えた環状の突起部は旋回鏡板の裏面を相対
的に摺動可能に摺接し、かつ上記突起部によって内側の
高圧室と外側の低圧室に区画している。そして上記低圧
室内にオルダムリングを内装し、かつ前記突起部によっ
て区画された高圧ガスと低圧ガスで前記旋回鏡板のスラ
スト力をバランスする構成である。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案はスクロールコンプレッサに係り、さらに詳細には、旋回スクロール翼 を固定スクロール翼へ押圧するスラスト方向の荷重を低減したスクロールコンプ レッサに関する。

【０００２】

【従来の技術】

スクロールコンプレッサは、渦巻型の翼を一側に備えた円板状の鏡板を相互に 組合わせ、互いの翼を複数箇所において摺接せしめて圧縮室を形成した構成とな っている。スクロールコンプレッサは、一方の鏡板を他方の鏡板に対して旋回（ 偏心）運動することによって互いの翼の摺接部を外周側から内周側へ次第に移動 して、互いの翼の間の圧縮室に吸入されたガスを、外周側から内周側へ次第に圧 縮するものである。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

一般に、スクロールコンプレッサにおいては、モータのごとき回転駆動装置と 、ガスの圧縮を行なう圧縮装置部は密閉容器内に内装されており、圧縮された高 圧ガスは密閉容器内に吐出された後に、密閉容器から外部へ吐出する構成となっ ている。したがって、旋回自在な一方の鏡板の裏面に密閉容器内の高圧が作用し 、他方の固定された鏡板へ強力に押圧する力が作用し、摩擦力が大きくなって駆 動入力の増加が必要となり、また場合によっては焼付けを生じることがある。

【０００４】 また、密閉容器内が高圧であるからガス密度が大きくなり、旋回自在な一方の 鏡板と密閉容器内のフレームとの間に介在したオルダムリングの往復動による風 損が大きくなる問題がある。

【０００５】 本考案の第１の目的は、スクロールコンプレッサにおける旋回自在な一方の鏡 板を他方の鏡板へ押圧する力を小さくすることのできるスクロールコンプレッサ を提供することである。

【０００６】 本考案の第２の目的はスクロールコンプレッサにおける吸入ポートから圧縮装 置部へ吸込まれたガスが圧縮室へ導かれる以前に加熱されることのないスクロー ルコンプレッサを提供することである。

【０００７】 本考案の第３の目的は、スクロールコンプレッサにおける旋回自在な一方の鏡 板と密閉容器内のフレームとの間の介在したオルダムリングの往復動時における 風損が極めて少ないスクロールコンプレッサを提供することである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

前述のごとき目的に鑑みて、本考案は、固定スクロール翼を一側面に備えた固 定鏡板を、密閉容器内に備えたフレームに密着固定して設け、上記フレームに回 転自在に支持された回転軸の偏心部に嵌合した嵌合部を裏面に備えた旋回鏡板に 、前記固定スクロール翼の複数箇所と摺接自在に接合して圧縮室を構成する旋回 スクロール翼を形成して設け、前記固定鏡板のほぼ中央部に吐出ポートを設けて なるスクロールコンプレッサにして、前記フレームに備えた環状の突起部を前記 旋回鏡板の裏面に相対的に摺動可能に設けると共に当該突起部によって内側の高 圧室と外側の低圧室に区画して設け、前記固定鏡板に対する前記旋回鏡板の方向 性を常に一定に保持するオルダムリングを前記低圧室内に内装してなり、かつ前 記旋回鏡板のスラスト力を前記突起部で区画された前記高圧室と低圧室の前記旋 回鏡板の背面に作用するガス圧力によってバランスする構成としてなるものであ る。

【０００９】

【実施例】

図１を参照するに、総括的に符号１で示すスクロールコンプレッサは、密閉容 器３内に内装されたモータのごとき回転駆動装置５とガスの圧縮を行なう圧縮装 置部７とよりなる。

【００１０】 密閉容器３は、底部を備えた円筒状のケーシング３Ｃと、ケーシング３Ｃに密 閉固定した密閉蓋３Ｓとよりなる。密閉容器３内には、密閉容器３内を駆動室９ Ａと圧縮装置室９Ｂとに二分する大略円板形状のフレーム１１が一体的に固定し てあり、このフレーム１１には駆動室９Ａと圧縮装置室９Ｂとを連通する連通孔 １３が穿設してある。さらに連通孔１３から離反した位置には、密閉容器３に設 けた吐出管１５と駆動室９Ａとを連通する切欠溝状の連通路１７が形成してあり 、この連通路１７の入口付近には、例えば気水分離部材のごとき邪魔板１９が取 付けてある。この邪魔板１９は、駆動室９Ａから吐出管１５へ高圧ガスが直接的 に流出するのを邪魔する作用をなすものであり、かつ高圧ガスが接触することに より、ガス中に混入した潤滑油を凝縮せしめて分離する作用をなすものである。

【００１１】 したがって、密閉容器３から突出管１５を経て吐出されるガス中の潤滑油含有 率が低いものとなり、潤滑油の損失が少なくなる。

【００１２】 回転駆動装置５は、本実施例においてはモータよりなるものであって、固定子 鉄芯２１は前記駆動室９Ａ内においてケーシング３Ｃに一体的に取付けてあり、 回転子２３は、前記フレーム１１の中央部に垂直にかつ回転自在に支承された回 転軸２５に一体的に取付けてある。回転軸２５の下端部は、ケーシング３Ｃ内の 底部に貯留した潤滑油２７内に没入してある。この回転軸２５の軸心部は、回転 時に潤滑油２７を吸入する潤滑油吸入孔２９が軸心に対し適宜に傾斜して穿設し てあり、この吸入孔２９はフレーム１１等と回転軸２５との軸承部に設けた複数 の供給口３１等に接続してある。さらに回転軸２５の上端部には、回転軸２５の 軸心に対して適宜に偏心した偏心部２５Ｅが形成しあると共に、振動を少なくす るために偏心部２５Ｅ等と均衡するバランサ３３が偏心して取りつけてある。

【００１３】 上記構成により回転軸２５の回転時には軸承部などへ潤滑油が自動的に供給さ れ、円滑な作動が確保されるものである。

【００１４】 圧縮装置部７は、前記圧縮装置室９Ｂ内に配置されており、固定スクロール翼 ３５と半円弧状の吸入室３７とを備えた円板形状の固定鏡板３９と、固定スクロ ール翼３５の複数箇所と摺接して圧縮室４１を複数箇所に形成する旋回スクロー ル翼４３を備えた円板形状の旋回鏡板４５等より構成してある。

【００１５】 固定鏡板３９は複数のボルト４７によってフレーム１１に密着固定してあり、 この固定鏡板３９のほぼ中央部には圧縮された高圧ガスを圧縮装置室９Ｂ内に吐 出する吐出ポート４９が穿設してある。また、前記固定スクロール翼３５又は固 定鏡板３９と旋回スクロール翼４３との接合によって形成される圧縮室４１の最 外側に対応する位置の部分において、固定鏡板３９にはガスを吸入するための吸 入ポート５１が穿設してあり、この吸入ポート５１には吸入管５３が接続してあ る。吸入ポート５１の径は、第３図に最も良く示されるように、旋回スクロール 翼４３の肉厚とほぼ等しい径あるいはより大きい径に形成してあり、かつ吸入ポ ート５１の１部は、固定スクロール翼３５の１部に切欠部５１Ｎを設ける態様で もって形成してある。

【００１６】 前記旋回鏡板４５は、一体に備えた旋回スクロール翼４３が固定スクロール翼 ３５と複数箇所においてて摺接することにより、複数箇所に圧縮室４１を形成す べく、図１に示されるように、固定鏡板３９と互いに組合わせてある。旋回鏡板 ４５の裏面の中央部には、円筒形状の嵌合部５５が形成してあり、この嵌合部５ ５内には、前記回転軸２５の偏心部２５Ｅが回転自在に嵌合してある。また上記 旋回鏡板４５の裏面は、前記フレーム１１に形成した環状の突起部の端面に摺動 自在に支承されている。突起部５７の外側には前記吸入室３７と連通自在な低圧 室５９が形成してあり、この低圧室５９内にはオルダムリング６１が配設してあ る。

【００１７】 前記突起部５７は、内側と外側とを高圧室と低圧室５９とに区画して、旋回鏡 板４５のスラスト力を、区画された高圧ガスと低圧ガスでバランスするよう構成 する作用をなすものである。

【００１８】 上記オルダムリング６１は固定鏡板３９に対する旋回鏡板４５の方向性を常に 一定に保持する作用をなすものであって、オルダムリング６１の下面には径方向 の下部凸条６１Ｌが形成してあり、上面には下部凸条６１Ｌに対して直行する方 向の上部凸条（図示省略）が形成してある。このオルダムリング６１の下部凸上 ６１Ｌは、低圧室５９の底部に形成したガイド溝６３に摺動自在に係合してあり 、上部凸条は前記旋回鏡板４５の裏面に形成したガイド溝６５と摺動自在に係合 してある。

【００１９】 さらに、図２（ａ）、（ｂ）に最も良く示されるように、前記吸入ポート５１ に近接した位置には、吸入ポート５１から吸込まれたガスを圧縮室４１方向へ誘 導する誘導弁６７が設けられている。誘導弁６７は、本実施例においては、旋回 スクロール翼４３の幅とほぼ等しい幅の板バネよりなるものであって、その基部 はピン６９を介して固定鏡板３９に支持されており、先端部は旋回スクロール翼 ４３へ押圧当接してある。

【００２０】 以上のごとき構成において、回転駆動装置５によって回転軸２５を回転すると 、回転軸２５の偏心部２５Ｅが偏心回転することとなる。したがって旋回鏡板４ ５はオルダムリング６１によって方向性を一定に保持されたまま旋回され、旋回 鏡板４５に備えたスクロール翼４３は図２（ａ）、（ｂ）おいて上下左右方向に 変位する。この際、旋回スクロール翼４３を図２（ａ）、（ｂ）において時計回 り方向に旋回せしめると、固定鏡板３９の固定スクロール翼３５と旋回鏡板４５ の旋回スクロール翼４３との複数の摺接位置ＣＰは、図２（ａ）、（ｂ）におい て、外周側から次第に内周側へ移動し、圧縮室４１を次第に縮小する。したがっ て、圧縮室４１内のガスは圧縮されて、吐出ポート４９から圧縮装置室９Ｂ内へ 吐出される。

【００２１】 圧縮装置室９Ｂ内へ吐出された高圧ガスは、連通孔１３を経て駆動室９Ａに至 り、吐出管１５から外部へ吐出される。このとき、高圧ガスは邪魔板１９に接触 し、含有した潤滑脂を凝縮して吐出されることとなる。

【００２２】 前述のごとく回転駆動装置５によって旋回鏡板４５を旋回してガスの圧縮を行 なうに際し、ガスの吸入は、吸入管５３を経て吸入ポート５１から行なわれる。 上記吸入ポート５１の径は、前述したように比較的大きく形成してあるので、流 路抵抗が小さくなり、ガスの吸入は効果的に行なわれ得る。また、吸入ポート５ １から吸入されるガスの１部分は低圧室５９へ流入するが、大部分は、誘導弁６ ７によって圧縮室４１側へ誘導案内されることとなり、効率の良い吸入圧縮が行 なわれ得る。さらに、圧縮室４１へのガスの流入は、吸入ポート５１から直接的 に行なわれるので、ガスが加熱されるようなことがなく、圧縮効率及び体積効率 が向上する。

【００２３】 前述のごとく、高圧ガスが密閉容器３内へ吐出されるので、密閉容器３内が高 圧となり、この高圧が旋回鏡板４５の裏面に作用することとなる。ところが本実 施例においては、フレーム１１に形成した環状の突起部５７によって旋回鏡板４ ５の裏面を当接支持し、突起部５７の外側を低圧室５９に形成してあるので、突 起部５７の内側においてのみ旋回鏡板４５に高圧が作用することとなる。したが って、旋回鏡板４５を固定鏡板９側へ押圧する押圧力が小さくなり、旋回鏡板４ ５の旋回を円滑に行ない得る。

【００２４】 なお、圧縮室４１内の圧力によって、旋回鏡板４５は固定鏡板３９から離反す る方向の力を受けるがその分布は旋回鏡板４５の外周よりも中央部側の方が大き くなるものであるから、前記突起部５７の径は、上記のごとき圧力分布を考慮し て適宜に設定されるものである。

【００２５】 前述のごとく旋回鏡板４５を旋回せしめるとき、旋回鏡板４５のスラスト力は 前記突起部５７によって区画された高圧ガスと低圧ガスでバランスされるので、 オルダムリング６１にスラスト力が作用するようなことがない。また、旋回鏡板 ４５の旋回時にはオルダムリング６１がガイド溝６３に沿う方向に往復運動する が、オルダムリング６１は低圧室５９内に位置するのでオルダムリング６１が高 圧の室に位置する場合に比較して、往復動による風損が減少し機械効率が向上す ることとなる。

【００２６】 図４は別の実施例を示すものである。この実施例においては、吐出管１５の取 付位置を変更して連通路１７を省略した構成とし、さらに吸入管５３を低圧室５ ９に接続し、低圧室５９を経てガスを吸入する構成としたものである。また、こ の実施例においては、固定鏡板３９にカバープレート７１を取付けて、吐出ポー ト４９からの高圧ガスの吐出時における消音を行なうと共に、高圧ガスが密閉蓋 ３Ｓに直接噴射されることを防止したものであって、その他の構成は前述の実施 例と同様の構成である。したがって、同一機能を奏する部材には同一符号を附す ることとして、その詳細については説明を省略する。この実施例においても、前 述の実施例と同様の効果を奏するものである。

【００２７】 すなわち本考案の前述の実施例のみに限るものではなく、適宜の変更を行なう ことにより、その他の種々の態様でもって実施可能である。

【００２８】

【考案の効果】

上記構成より明らかなように、本考案においては、フレームに備えた環状の突 起部は旋回鏡板の裏面を相対的に摺動可能に摺接し、かつ上記突起部によって内 側の高圧室と外側の低圧室に区画している。そして上記低圧室内にオルダムリン グを内装し、かつ前記突起部によって区画された高圧ガスと低圧ガスで前記旋回 鏡板のスラスト力をバランスする構成である。

【００２９】 すなわち、本考案によれば、旋回鏡板のスラスト力をガス圧を介してフレーム で受けるので、オルダムリングにはスラスト力が作用することがないものであり 、オルダムリングの移動は軽快に行なわれ得るものである。また、上記オルダム リングは低圧室内に内装されているから、オルダムリングの移動時における風損 が、高圧の室に位置する場合に比較して減少するものである。

【００３０】 すなわち、本考案によれば、オルダムリングは低圧室内に内装され、かつスラ スト力をも受けることがないから、オルダムリングの移動時における損失が減少 して機械効率が向上することとなるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】スクロールコンプレッサの正断面図である。

【図２】図１におけるII−II線に沿った断面の作用説明
図である。

【図３】図１におけるIII の部分の拡大図である。

【図４】別の実施例を示す正断面図である。

【符号の説明】

３ 密閉容器 １１ フレーム ２５ 回転軸 ３５ 固定スクロール翼 ３７ 吸入室 ３９ 固定鏡板 ４１ 圧縮室 ４３ 旋回スクロール翼 ４５ 旋回鏡板 ４９ 吐出ポート ５１ 吸入ポート ５５ 嵌合部 ５７ 突起部 ５９ 低圧室 ６１ オルダムリング ６７ 誘導弁

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 羽鳥 三男 神奈川県横浜市磯子区新杉田町８ 株式会 社東芝家電機器技術研究所内 (72)考案者 服部 仁司 神奈川県横浜市磯子区新杉田町８ 株式会 社東芝家電機器技術研究所内

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 固定スクロール翼を一側面に備えた固定
   鏡板を、密閉容器内に備えたフレームに密着固定して設
   け、上記フレームに回転自在に支持された回転軸の偏心
   部に嵌合した嵌合部を裏面に備えた旋回鏡板に、前記固
   定スクロール翼の複数箇所と摺接自在に接合して圧縮室
   を構成する旋回スクロール翼を形成して設け、前記固定
   鏡板のほぼ中央部に吐出ポートを設けてなるスクロール
   コンプレッサにして、前記フレームに備えた環状の突起
   部を前記旋回鏡板の裏面を相対的に摺動可能に設けると
   共に当該突起部によって内側の高圧室と外側の低圧室に
   区画して設け、前記固定鏡板に対する前記旋回鏡板の方
   向性を常に一定に保持するオルダムリングを前記低圧室
   内に内装してなり、かつ前記旋回鏡板のスラスト力を前
   記突起部で区画された前記高圧室と低圧室の前記旋回鏡
   板の背面に作用するガス圧力によってバランスする構成
   としてなることを特徴とするスクロールコンプレッサ。
2. 【請求項２】 固定スクロール翼の一側面には吸入室が
   備えられており、この固定スクロール翼又は固定鏡板と
   旋回スクロール翼との接合によって形成される圧縮室の
   最外側の部分と吸入室との間に、吸入ポートから吸込ま
   れたガスを前記圧縮室側へ誘導する誘導弁を設け、この
   誘導弁を前記旋回スクロール翼へ付勢接触してなること
   を特徴とする請求項１記載のスクロールコンプレッサ。