JP3596063B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明はスクロール圧縮機に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
スクロール圧縮機は、圧縮工程を表わした図３に示すように（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は渦巻羽根１１１を有する固定スクロール１１と、前記固定スクロール１１の渦巻羽根１１１とほぼ対称な渦巻羽根１０１を有する旋回スクロール１０とを互いに１８０度ずらせた状態で噛み合わせることにより、径方向に左右対称な複数個の圧縮作業空間を同時に形成している。この時、左右対称な圧縮作業空間は、一方は固定スクロールの渦巻羽根１１１の内周側壁面と旋回スクロールの渦巻羽根１０１の外周側壁面で挟まれて形成され、もう一方は旋回スクロールの渦巻羽根１０１の内周壁面と固定スクロールの渦巻羽根１１１の外周壁面に挟まれてそれぞれ形成される。ここで、旋回スクロール１０は自転拘束部品（図示せず）により自転を拘束されているため、固定スクロール１１に対して旋回スクロール１０を旋回半径ｒで旋回運動させると、渦巻羽根径方向外周部分で取り込まれた流体が、前記圧縮作業空間の体積が連続的に減少するのに伴って中心部に向かって圧縮される。さらに旋回運動が続くと、中心部付近まで圧縮された左右対称の圧縮作業空間が連通し、固定スクロール１１の中心部付近に設けられた吐出口（図示せず）から圧縮された流体が吐出される。
【０００３】
スクロール圧縮機は上記のような原理により吸入、圧縮、吐出作業を行う容積形圧縮機の一種である。吸入冷媒は吸入管１１３から固定スクロール１１と旋回スクロール１０の最外周で形成される吸入室へと入り、旋回スクロール１０の旋回運動によって圧縮室へ取り込まれる。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
吸入室の中では、旋回スクロール１０の旋回運動とそれによる吸入冷媒の流れにより、多少なりとも吸入行程中に過給効果が現れると考えられる。特に吸入口１１３から遠い方の圧縮作業空間、すなわち固定スクロールの渦巻羽根１１１の内周側壁面と旋回スクロールの渦巻羽根１０１の外周側壁面で挟まれて形成される圧縮作業空間につながる吸入室では旋回スクロール１０の旋回運動により吸入室の面積が徐々に小さくなっていく。本来ならばこの作用により、吸入口１１３から遠い方の圧縮作業空間には圧力上昇がみられ、大きな過給効果がもたらされるはずである。
【０００５】
しかし、上述の構成を持つスクロール圧縮機では、吸入口１１３から遠い方の圧縮作業空間につながる吸入空間にも十分な吸入冷媒を送り込むため、図３（ｂ）に示すように旋回スクロール１０と固定スクロール１１間のもっとも狭くなる通路Ｄをできるだけ大きくとれるように固定スクロール１１の最外周の径を最大限大きくとり、通路Ｄによる吸入抵抗を低減していた。このため吸入空間の圧力は吸入口１１３付近の圧力とほぼ等しくなり、上述の過給効果は失われる結果となっていた。従来のスクロール圧縮機ではこういった課題を有していた。
【０００６】
本発明は、上記従来例の課題を解決するもので、旋回スクロール１０の旋回運動による過給効果を失うことがないような構成とし、高効率なスクロール圧縮機を提供することを目的とするものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、固定スクロールの最外周部を、旋回スクロールの旋回運動により圧縮作業空間のうち吸入口から遠い方の圧縮作業空間、すなわち固定スクロールの渦巻羽根の内周側壁面と旋回スクロールの渦巻羽根の外周側壁面で挟まれて形成される圧縮作業空間につながる吸入室への通路の最小隙間が吸入行程終了時にゼロになるように徐々に減少していくような形状とした。
【０００８】
【作用】
上記構成により、吸入口付近や吸入行程完了に達するまでの途中においては十分な通路面積が得られるため２つの圧縮室ともに十分な吸入冷媒を送り込むことができる。なおかつ、固定スクロールの渦巻羽根の内周側壁面と旋回スクロールの渦巻羽根の外周側壁面で挟まれて形成される圧縮作業空間に関して言えば、旋回スクロールの旋回運動によって徐々に通路面積が狭くなってくるので、吸入行程完了近くになると通路面積がかなり小さくなり通路抵抗が増大して、吸入室の容積が小さくなっていても吸入室中の吸入冷媒が吸入口の方へ逃げにくくなる。本発明はこのような作用を持つ。
【０００９】
【実施例】
以下本発明の一実施例におけるスクロール圧縮機について図面とともに説明する。
【００１０】
図１において、圧縮機構は、渦巻羽根１１１を有する固定スクロール１１、渦巻羽根１０１を旋回鏡板１０２上に形成した旋回スクロール１０および自転拘束部品１２とから構成されており、前記固定スクロール１１は軸受部材１３とともに密閉容器１７に固定されている。前記旋回スクロール１０の旋回鏡板１０２の渦巻羽根１０１と反対側には軸１０３が設けてあり、この軸１０３は、軸受部材１３の軸受部１３１とボールベアリング軸受部１５によって回転自在に支承された主軸１４の一端に形成された偏心穴部１４１で支承されている。主軸１４の両軸受部１３１、１５の間には密閉容器１７に固定された固定子１６１と、主軸１４に固定され主軸１４とともに回転可能な回転子１６２とからなる電動機１６が配置されている。また、主軸１４の一端には容積型オイルポンプ２５が装着されており、このオイルポンプ２５で汲み上げられたオイルによって各摺動部は良好に潤滑される。
【００１１】
従って、電動機１６を駆動させることにより、主軸１４が回転し、主軸１４の偏心穴部１４１が偏心回転運動を行う。これにより、旋回スクロール１０が自転運動を行おうとするが、自転拘束部品１２によって自転を拘束されているので主軸１４と旋回スクロール１０の軸部１０３との軸間距離を半径とする旋回運動を行う。その結果、固定スクロール１１の渦巻羽根１１１と旋回スクロール１０の渦巻羽根１０１を互いに１８０度ずらせた状態で噛み合わせることにより左右対称な複数個の圧縮作業空間１９が形成される。吸入管１８から吸入した流体を吸入口１１３から吸入室１１４を経て流体を取り込み、圧縮作業空間１９の体積が減少するのに伴って連続的に圧縮作業を行う。このとき、図２の（ａ）、（ｂ）、（ｃ）の詳細図で示しているように、固定スクロール渦巻羽根１１１の最外周内側壁面と旋回スクロールの渦巻羽根１０１の最外周外側壁面との最小隙間Ｄが、吸入行程終了時点でゼロになるように連続的に減少していく。圧縮作業空間１９に吸入された吸入ガスは、中心付近まで圧縮されると左右対称の圧縮作業空間１９が吐出口１１２と連通し、圧縮流体が吐出される。吐出された圧縮流体は連通口２６を通って密閉容器内に流入し、吐出管２１から密閉容器１７の外部に放出される。
【００１２】
弁装置２２に含まれる弁押さえ２２２は、吐出弁２２１の開弁高さを規制するものである。また、液圧縮時などに前記圧縮作業空間１９内の圧力が異常に高くなった場合には、軸方向コンプライアンス機構２３が作動し、旋回スクロール１０が軸受け部材１３側に移動することにより、固定スクロール１１の渦巻羽根１１１先端に適当な隙間を形成して、そこから液を逃がして圧力の異常上昇を回避する。
【００１３】
なお、軸受け部材の旋回スクロール１０側には背圧仕切帯２４が設置してあり、旋回鏡板１０２の該背圧仕切帯２４中心側には吐出圧力が、また外側には吸入圧力が作用し、通常運転中は適度なスラスト力が作用するようになっている。
【００１４】
【発明の効果】
本発明は上記説明からも明らかなように、吸入口付近や吸入行程完了に達するまでの途中においては２つの圧縮室ともに十分な吸入冷媒を送り込むことができ、なおかつ、固定スクロールの渦巻羽根の内周側壁面と旋回スクロールの渦巻羽根の外周側壁面で挟まれて形成される圧縮作業空間では過給効果が現れ体積効率の向上につながるものである。
【００１５】
以上に述べたように、本発明により体積効率の非常に優れた高効率なスクロール圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施例におけるスクロール圧縮機の断面図
【図２】（ａ）は同吸入部の詳細図
（ｂ）は同吸入部の詳細図
（ｃ）は同吸入部の詳細図
【図３】（ａ）は従来のスクロール圧縮機の吸入部詳細図
（ｂ）は従来のスクロール圧縮機の吸入部詳細図
（ｃ）は従来のスクロール圧縮機の吸入部詳細図
【符号の説明】
１０ 旋回スクロール
１１ 固定スクロール
１２ 自転拘束部品
１９ 圧縮作業空間
１０１ 旋回鏡板
１１４ 吸入室

Claims (1)

1. 圧縮機構を、渦巻羽根を有する固定スクロールと、前記固定スクロールと噛み合わせて複数個の圧縮作業空間を形成するように配置した渦巻羽根を旋回鏡板上に形成した旋回スクロールと、前記旋回スクロールの自転を拘束して旋回運動を行わせるための自転拘束部品とで構成し、前記旋回スクロールの旋回運動により、固定スクロール渦巻羽根の最外周内側面と旋回スクロール渦巻羽根の最外周外側面とが最も接近する部分で構成される隙間が徐々に減少した後、吸入行程終了時にゼロになる様に、固定スクロール渦巻羽根の最外周内側面形状を形成してなるスクロール圧縮機。

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