JPH0558890B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 本発明は、木質材薄板と合成樹脂成形品とから
なる複合成形品を製造する方法に関し、木質材薄
板として金属薄板の両面に木材単板を貼付して一
体化した三層構造の木質材薄板を用いることによ
り、木質材薄板の割れを防止し、耐久性が優れ、
かつ表面光沢に富んだ複合成形品が得られるよう
にしたものである。 〔従来の技術〕 従来、自動車の内装部品、家具、電気器機など
に、木目柄を有する合成樹脂複合成形品を広く使
用されている。 上記木目柄の複合成形品をつくるには、突板と
よばれる木材の薄片、木材単板、合板、不織布等
で裏打ちされた単板等の木質材薄板を射出成型金
型内に配置し、合成樹脂を射出してインサート成
形したり、或いは合成樹脂成形体を表面にサンデ
ング、塩素化処理等によつて表面処理を施し、接
着性を向上させた後、接着剤を塗布して、木質材
薄板を圧着する方法などが行われている。 〔発明が解決しようとする課題〕 ところで、上記従来の方法によつて得れた複合
成形品は、意匠性に優れているが、成形品の形状
が複雑となると、表面の木質材薄板に割れを生
じ、不良品が発生し易くなる。これを防止するた
め、木質材薄板を予め真空成形等によつて予備成
形して使用する試みもなされているが、この予備
成形の段階で割れを生ずるため、効果のある対策
ではなかつた。特に後者の接着剤で接着する方法
は、接着剤のハミ出し、汚れ、接着時のズレ等が
あり、また、接着部の固定化に時間を要する欠点
がある。 さらに、複合成形体の表面に塗装した後、バフ
研磨によつて表面仕上げを行なうと、バフ研磨時
の摩擦熱によつて界面の樹脂が軟化し、表面に細
かい凹凸が発生する。そのため、吹上げによる鏡
面仕上げ、或いは艶消し仕上げを採用しなければ
ならなかつた。 本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、
射出成形金型内に木質材薄板を配置して合成樹脂
のインサート成形を行なつても木質材薄板が破れ
ることがなく、また、得られた複合成形体をバフ
研磨しても表面に凹凸模様が現われる等にて、外
観を損うことがない複合成形品の製造方法を提供
することを目的とする。 〔課題を解決するための手段〕 上記の目的を達成するため、本発明の複合成形
品の製造方法は、 表面部に木質材薄板の層を有し、内部に合成樹
脂からなる芯材を有する複合成形品を成形するに
あたり、金属薄板の両面に木材単板を積層した構
造を有する表面材料を成形金型内に配置し、次い
で合成樹脂を該表面材の裏側に成形して、該表面
材と合成樹脂とを一体化する。 上記金属薄板の両面に積層する木材単板とし
て、アルカリ処理した木材単板を用いると、木材
単板に柔軟性が付与されるので、上記三層木質材
薄板の形状変化に対する追従性はさらに増大す
る。 また、金属薄板としては、アルミニウム、アル
ミニウム系合金、マグネシウム、マグネシウム系
合金、チタン、チタン系合金、銅、銅系合金、
鉄、鉄系合金、真鍮、或いはステンレスが用いら
れる。 〔作用〕 本発明は上記の構成となつているので、成形の
際木質材薄板が大きく変形されても、金属薄板の
補強力によつて表面の木材単板が破損することが
ない。また、複合成形品をバフ研磨し、摩擦熱に
よつて境界樹脂が軟化しても金属薄板が設けられ
ているので、木質材薄板表面に細かい凹凸があら
われることはない。 〔実施例〕 第１図は、本発明の方法において用いられる木
質材薄板１の一例を示す縦断面図で、図中符号２
は金属薄板である。この金属薄板２の両面には、
それぞれ表木材単板（以下表単板という）３およ
び裏木材単板（以下裏単板という）４が接着剤に
よつて接着一体化され、三層の木質材薄板１が構
成されている。 上記金属薄板２は、耐食性、接着性等を向上さ
せるため、必要に応じて表面に化成被膜処理や酸
化被膜処理を施してもよい。 また、金属薄板１は、撓性で、かつ表裏単板
３，４を補強する強度を有することが必要で、使
用される金属によつて厚さが選定される。 例えばアルミニウム薄板では、その厚さが0.01
〜0.5mm、特に0.05〜0.2mmが好ましい。厚さが
0.01mm未満では、これをサンドイツチした場合の
補強効果がなく0.5mmを超えると剛性が高過ぎる。
しかし必要に応じてこれ以上の厚さとすることも
ある。 また、表単板３および裏単板４は同じものを用
いてもよいが、表単板３は木目柄の美しいものを
用いることが望ましい。その厚さはいずれも0.15
〜0.5mm、特に0.2mm程度のものが好ましい。厚さ
0.15mm未満では、強度上の難点を生じ、0.5mm越
えると、形状追従性が低下する。 これらは、接着剤によつて一体化されるが、使
用される接着剤の種類の制限はない。しかし、合
成樹脂をインサート成形するため耐熱性の熱硬化
型接着剤を用い、加圧加熱接着するのが望まし
い。この場合三層で両面に表裏単板３，４が一体
に接着されているので両面の力がバランスし加熱
接着後常温としても木質材薄板１が筒状にまるま
ることがなく、平板形状を保持するので使用し易
い。 またインサート成形した場合、第２図に示すよ
うに、合成樹脂５は裏単板４と接するが、その
際、第３図に示すように裏単板４の小孔４ａに樹
脂５が侵入するアンカー効果によつて、接着剤を
用いることなく強固に接合される。 これに対して、金属薄板と表単板の二層とする
と、膜張係数が異なるため筒状にまるまり、扱い
が困難となる。そのため、金属薄板は薄いものを
用いるとともに、接着剤は冷圧接着、或いは80℃
程度以下の中温域接着剤に制限される。従つて射
出成形の際の成形条件に対する制約が厳しくな
り、耐熱性の低い複合成形品しか得られず、不適
当である。 上記三層構造の木質材薄板１を用いて複合成形
品をつくるには、第４図に示すように予備成形用
金型６内に木質材薄板１を配置し、プレス成形す
ると、木質材薄板１は変形し第５図に示すような
表面材１′となる。これを離型して第６図に示す
射出成形金型７にインサートして、合成樹脂５を
射出すると第７図に示すように表面材１′と合成
樹脂５とが一体化された複合成形品８が得られ
る。 或いは第８図および第９図に示すように射出成
形金型７に適宜裁断した木質材薄板１を配置し合
成樹脂５を射出して、木質材薄板１を変形させて
表面材１′とするとともに表面材１′と樹脂５とが
一体化した複合成形品８としてもよい。 これら複合成形品８の表面材１′と合成樹脂５
は、アンカー効果によつて強固に接合され、剥離
することがない。また表面材１′の面に塗装９を
施し、バフ研磨して鏡面仕上げする場合、研磨熱
によつて境界の合成樹脂が軟化しても、金属薄板
が設けられているので、その動きが表面にあらわ
れて細かい凹凸模様が発生することがない。さら
に、金属薄板によつて水分の透過が遮断されるの
で、耐湿性がよく、耐久性が大幅に向上される。 また、上記木質材薄板１の表裏単板３，４とし
て公知のアルカリ処理を施したものを用いれば、
その柔軟性が増大されるので、木質材薄板１の変
形に対する追従性が向上し、さらに複雑な成形品
に対応することが出来る。 以下アルミニウム薄板を代表例として本発明の
方法を具体的に説明する。 実施例 １ 厚さ0.1mmのリン酸クロム酸化成皮膜処理した
アルミニウム薄板の両面に、接着剤を用いて厚さ
0.2mmのウオールナツト単板よりなる表単板３お
よび裏単板４をそれぞれ接着一体化して三層の木
質材薄板１を作製した。 この際、接着剤として、架橋型ウレタンデイス
パージヨン接着剤（旭電化株式会社製）を用い塗
布量：100ｇ／m²，温度：150℃，圧力：10Kg／cm²
で３分間押圧して接着した。この木質材薄板１は
表裏対称のため筒状にまるまることがなく取扱い
易い。 この木質材薄板１を、所定の形状に裁断し予備
成形用金型６内にセツトし、表面材１′をプレス
成形した。この表面材１′を射出成形金型７にイ
ンサートしABS樹脂を射出して、複合成形品８
を作製した。この複合成形品８の表面材１′と樹
脂５は強固に一体化されていた。 この表面１′に着色、下塗り、中塗り、上塗り
よりなる塗装９を施した後、バフ研磨して鏡面に
仕上げたが研磨面は、平滑で細い凹凸の発生は認
められなかつた。また耐湿試験機中において、温
度：50℃，湿度：95％に保持した場合の耐久性
は、従来のものに比して格段に向上していた。 実施例 ２ アルミニウム薄板として、リン酸クロム酸化成
皮膜処理した厚さ0.15mmのものを用い、接着剤と
してフエノールブチラールシート接着剤（アイカ
株式会社製）を用い、140℃，20Kg／cm²，10分の
条件で接着した以外は実施例１と同じにして木質
材薄板をつくり、また同様にして複合成形品を作
製して試験に供した。その結果、実施例１のもの
と同様優れた複合成形品であることがわかつた。 実施例 ３ 表、裏単板として15wt％のNaOH水溶液に16
時間浸漬したものを用いた以外は、実施例１と同
じにして、木質材薄板を作製した。 この木質材薄板と実施例１のアルカリ処理を施
していない表裏単板を用いた木質材薄板の最小曲
げ半径Ｒを調べたところ、第１表のような値を示
した。

〔発明の効果〕

以上説明したように、本発明に係る複合成形品
の製造方法にあつては、金属薄板の両面に表裏単
板がそれぞれ接着一体化された木質材薄板が使用
されるので、接着剤として加熱加圧する接着剤を
用いても筒状にまるまつて扱いが困難となること
がなく、使用する樹脂の範囲が拡大され、耐熱性
に優れた複合成形品を容易につくることが出来
る。 また、単板は金属薄板によつて補強されている
ので、複雑な形状の複合成形品に用いても破損す
ることがなく、美しい木目柄のものが得られる。
また、これに塗装を施してバフ研磨しても、表面
に細い凹凸模様があらわれることがない。さら
に、木質材薄板を構成する単板として、アルカリ
処理を施したのを用いれば柔軟性が付与され、木
質材薄板の形状変化に対する追従性はさらに増大
し、しかも他の長所はそのまま保有する等、複合
成形品の製造方法として極めて優れたものであ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の方法に用いる木質材薄板の一
例を示す縦断面図、第２図は複合成形品の表面近
傍の縦断面図、第３図は裏単板と合成樹脂との接
合部の拡大断面図、第４図ないし第７図は予め予
備成形用金型で木質材薄板を成形して表面材と
し、これを射出成形金型にインサートして複合成
形品をつくる場合の図で第４図は、予備成形用金
型の間に木質材薄板を配置した図、第５図は予備
成形用金型で成形された表面材の縦断面図、第６
図は、表面材を射出成形金型にインサートした
図、第７図は、射出成形された後塗装された複合
成形品の縦断面図、第８図および第９図は射出成
形金型に直接木質材薄板をインサートして、複合
成形品をつくる場合の図で、第８図は射出成形金
型に木質材薄板をインサートして樹脂を射出して
木質材薄板を変形して表面材とした縦断面図、第
９図は射出成形された後塗装された複合成形品の
縦断面図である。 １……木質材薄板、１′……表面材、２……金
属薄板、３……表木材単板（表単板）、４……裏
木材単板（裏単板）、４ａ……小孔、５……合成
樹脂（樹脂）、６……予備成形用金型、７……射
出成形金型、８……複合成形品、９……塗装。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 表面部に木質材薄板の層を有し、内部に合成
   樹脂からなる芯材を有する複合成形品を成形する
   にあたり、 金属薄板の両面に木材単板を積層した構造を有
   する表面材料を成形金型内に配置し、次いで合成
   樹脂を該表面材の裏側に成形して、該表面材と合
   成樹脂とを一体化することを特徴とする複合成形
   品の製造方法。 ２ 金層薄板の両面に積層する木材単板が、アル
   カリ処理した木材単板である請求項１記載の複合
   成形品の製造方法。 ３ 金属薄板が、アルミニウム、アルミニウム系
   合金、マグネシウム、マグネシウム系合金、チタ
   ン、チタン系合金、銅、銅系合金、鉄、鉄系合
   金、真鍮、或いはステンレスである請求項１また
   は２記載の複合成形品の製造方法。