JPH0556744U - ラック・ピニオン式舵取装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ラック軸をたわませる力に対応してサポート
ヨークによる対抗力を変化させ、ハウジング内における
サポートヨークの摺動性を確保すると共に、ラック軸の
軸方向移動を容易とする。 【構成】 ラック軸３の周方向に延在するパッド12の両
端部夫々の一部にハウジング4aに摺接する突起部12d,12
e を設け、サポートヨーク11がコイルばね14の拡圧力に
抗して後退し、押板13が調節ロッド19に当接して後退限
に達すると、パッド12がラック軸３とサポートヨーク11
との間で挟圧されて外方に向けて膨出し、前記突起部12
d,12e とハウジング4aとの接触面積及び当接圧力が増大
し、ラック軸３をたわませようとする力に対する抵抗力
が強化され、またラック軸３をたわませようとする力が
小さくなると、突起部12d,12e が収縮し、ハウジング4a
内におけるサポートヨーク11の摺動性, ラック軸３の軸
方向移動の容易性が確保される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は舵輪の回転動作に連動してピニオン軸を回転させ、これと噛合するラ ック軸を往復移動させて操向を行うようにしたラック・ピニオン式舵取装置に関 する。

【０００２】

【従来の技術】

ラック軸のラックとピニオン軸のピニオンとの噛合部ではピニオン軸の回転に 伴ってラック軸とピニオン軸との間に互いに離反する向きの力が作用するため、 ラック軸にたわみが発生し、ラック軸の歯筋方向へのガタつきが大きくなり、ラ ックとピニオンとの歯部間に打音が生じる。 このため通常はラック軸を隔ててピニオンと反対側にラック軸の軸方向への移 動を許容しつつ、ラック軸をピニオン軸側に押圧するサポートヨークを設ける構 成が採られている。

【０００３】 図９は従来のラック・ピニオン式舵取装置におけるラックとピニオンとの噛合 部分及びその近傍の断面図 (特開昭50-102027 号) であり、図中22はピニオン軸 、23はラック軸、24はギヤケースを示している。ピニオン軸22はギヤケース24内 に針状コロ軸受28を介して回転可能に軸支され、またラック軸23は図示しない軸 受部材にてギヤケース24内にその軸方向に向けて移動可能に支承された状態でピ ニオン軸22と相互に噛合せしめられている。

【０００４】 ギヤケース24にはピニオン軸22とラック軸23との噛合部近傍であって、ラック 軸23を隔ててピニオン軸22と反対側にハウジング24a が設けられており、このハ ウジング24a 内にラック軸23と対向する先端面に摩擦抵抗の小さい合成樹脂製の パッド26を付設した金属製のサポートヨーク25を摺嵌し、コイルばね27の拡圧力 を利用してラック軸23に弾接せしめてある。

【０００５】 このようなラック・ピニオン式舵取装置にあっては、コイルばね27の拡圧力に よってサポートヨーク25を摩擦抵抗の小さいパッド26を介してピニオン軸22に弾 接させることでラック軸23との摩擦力を低減し、ラック軸23の軸方向への移動を 許容しつつ、ラック軸23の歯筋方向のガタつきを抑制し、ラック軸23とピニオン 軸22との歯部間の打音を低減するようになっている。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

ところでこのような従来装置にあっては、サポートヨーク25は焼結金属等にて 形成されていること、また熱膨張時にもハウジング24a 内でのサポートヨーク25 の摺動機能を確保する必要上、サポートヨーク25とハウジング24a の周面との間 には20μm 程度の隙間が形成されているためサポートヨーク25とハウジング24a との間のラジアル方向におけるガタつき音が解消出来ないという問題があった。

【０００７】 この対策として、サポートヨーク25とハウジング24a との間の隙間を小さくす ること、或いはサポートヨーク25を押圧するコイルばねの拡圧力を強くすること が考えられるが、サポートヨーク25を金属製とする場合には、その熱膨張率を考 慮すると隙間の狭小化には限界があり、またコイルばねの拡圧力を大きくすると ラック軸とサポートヨーク25との間の摩擦が大きくなり、ラック軸の軸方向への 移動が重くなるという問題があった。 本考案はかかる事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところはラ ック軸22とサポートヨークとの摩擦抵抗を軽減しつつハウジングとサポートヨー クとの間のガタつき音をも低減し得るようにしたラック・ピニオン式舵取装置を 提供するにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

本考案に係るラック・ピニオン式舵取装置は、ギヤハウジング内におけるラッ クとピニオンとの噛合部近傍であって、ラックを隔ててピニオンと反対側にハウ ジングを設け、該ハウジング内にラックをピニオン側に向けて弾圧すべく前記ラ ックの軸との対向面に合成樹脂製のパッドを設けたサポートヨークを摺嵌してな るラック・ピニオン式舵取装置において、前記パッドはラックの円形断面をなす 軸の周方向に延在する両端部であって、夫々前記ハウジングの内周面と対向する 外周面の一部に前記ハウジングに摺接する突起部を設けたことを特徴とする。

【０００９】

【作用】

本考案にあっては、ラック軸の周方向に延在して位置するパッドの両端部夫々 の一部にハウジングに摺接する突起部を設けたから、常時はハウジング内におけ るサポートヨークの摺動機能, ラック軸の軸方向の移動機能が確保され、一方ラ ック軸をたわませる大きな力が作用すると、パッドの突起部が膨出し、突起部と ハウジングとの間の摩擦抵抗が増大強化されて、ラック軸のたわみを抑制するこ ととなる。

【００１０】

【実施例】

以下本考案をその実施例を示す図面に基づき具体的に説明する。図１は本考案 に係るラック・ピニオン式舵取装置の部分切欠正面図、図２は図１のII−II線に よる拡大断面図、図３は図２のサポートヨークの部分拡大図、図４は図３のIV− IV線による断面図を示している。 図中１は舵輪、２はピニオン軸、３はラック軸、４はギヤケース、５，６は軸 受部材を示している。

【００１１】 ピニオン軸２は玉軸受７にてギヤケース４内に回転可能に軸支され、またラッ ク軸３は軸受部材５，６にてその軸方向に向けて移動可能に支承された状態でギ ヤケース４内にて相互に噛合せしめられている。ラック軸３の両端部は図１に示 す如くその両端部がタイロッド８，９にて図示しない操向車輪に連繋せしめられ ており、舵輪１の回転に伴うラック軸３の左，右方向への移動により操向が行な われるようになっている。

【００１２】 ギヤケース４にはラック軸３を隔ててピニオン軸２と反対側に図２，図３に示 す如くハウジング4aが設けられており、このハウジング4a内にサポートヨーク11 が摺嵌されている。 サポートヨーク11は焼結金属製で円柱形に形成され、図３に示す如く先端面に はラック軸３の周面に沿うよう円弧状の凹面11a が、またこの凹面11a の底部に 沿って凹溝11j が夫々形成され、この凹面11a に低摩擦抵抗の合成樹脂製のパッ ド12が装着され、また後端部側には先端部側に向けてその長さの過半部にわたる 凹孔11b が形成され、該凹孔11b の底部から凹面11a にわたってパッドの支持突 部12a を嵌着するための貫通孔11c が形成されており、周面にハウジング4aとの 間に摩擦力を作用させるためのオイルシール11d を介在させてハウジング4a内に 摺嵌せしめられている。

【００１３】 サポートヨーク11の前記凹孔11b 内にはその底面形状に合わせた形状の押板13 が内嵌せしめられ、この押板13の周囲には、ばねガイド部材16の鍔16a に一端を 当接させたコイルばね14の他端が当接せしめられ、またばねガイド部材16はその 鍔16a に皿形板ばね18を外嵌した状態でハウジング4a内に挿入されてギヤケース ４にねじ止めされたカバー17にて抜け止めされている。

【００１４】 図５は皿形の板ばね18の平面図であり、リング状をなし、内周面にはその周方 向の複数個所に係止突起18a が形成されている。この皿形板ばね18における中心 から係止突起18a 先端迄の内径は前記ばねガイド部材16における鍔部16a の直径 よりも若干小さく設定されており、組立て時には前記鍔部16a の外周に外嵌せし められて係止突起18a にて鍔部16a の周面に固定した状態でギヤケース４のハウ ジング4aに対する組み付けを行うようになっている。

【００１５】 19は調節ロッドであり、外周面に螺条が形成されており、ばねガイド部材16の 内面に螺合貫通せしめられ、その先端面を押板13の表面と所定の間隙を隔てて対 向せしめられている。また他端は緩み止めナット19a にてばねガイド部材16に緊 締されており、緩み止めナット19a を緩めて調節ロッド19を回転させることで、 押板13との間の間隙を調節し得るようになっている。

【００１６】 図６はパッドの拡大正面図、図７は同じく平面図、図８は同じく下面図であり 、パッド12は合成樹脂性の円板をラック軸３の周面に沿うよう側面視で円弧状に 湾曲させた形状に形成されており、その凸面側の中央部には頂部に沿う向きの位 置決め用突条12j を備え、またその中央には前記サポートヨーク11の凹面11a の 中央部に開孔する貫通孔11c に係入する係止突部12a を、両端部にはサポートヨ ーク11に外嵌される係止片12m,12n が起立形成され、更にこの係止突部12a の両 側から夫々湾曲方向の両端部側に向けて厚肉とした条状のリブ12b,12c が形成さ れ、このリブ12b,12c の両端部は図６に示す如く断面逆円錐台形をなし、その一 の稜線Ａがハウジング4aの内周面と摺接する突起部12d となっている。 この突起部12d は他の稜線Ｂよりも外方に向けて所定寸法Δｄだけ突き出して 位置している。

【００１７】 一方パッド12の内面、即ちラック軸３の周面と対向する側の凹面の底部にはラ ック軸３の軸心線と平行な向きに凹溝12f が、またこれと直交する方向の両端側 に向けて前記凹溝12f の両側から厚肉化したリブ12g,12h が前記突起部12d,12e の内面側に迄延在しめられている。 このようなパッド12はその支持突部12a を貫通孔11c に、また突条12j を凹溝 11j 内に嵌め込んで位置決めされた状態でサポートヨーク11の先端部に嵌合保持 せしめられている。

【００１８】 而してこのような本考案装置にあっては、舵輪１の回転操作によってピニオン 軸２が回転せしめられると、これと噛合するラック軸３が左，又は右方向に移動 せしめられて操向が行われる。ピニオンとラックとの間に互いに離反する向きの 力、即ちラック軸３をたわませる力が作用すると、コイルばね14の拡圧力、サポ ートヨーク11周面のオイルシール11d とハウジング4aとの間に作用する摩擦力、 パッド12とハウジング4aとの間に作用する摩擦力等にてこれに対抗し、ラック軸 ３のたわみを抑制する。

【００１９】 そしてピニオン軸２の回転に伴ってラック軸３がサポートヨーク11側により強 く押圧されたときは、サポートヨーク11がコイルばね14の拡圧力に抗してハウジ ング4a内を後退する結果、押板13が調節ロッド19の先端面と当接し、サポートヨ ーク11が後退限に達する。 その後はラック軸３とサポートヨーク11との間でパッド12が強く狭圧される結 果、パッド12が外方向に膨出し、両突起部12d の肉厚が増大し、ハウジング4aの 内周面に対する突起部12d の摺接面積, 摺接圧力が増大し、パッド12とハウジン グ4aとの摩擦力が増大し、ラック軸３のたわみを抑制する力が強化されることと となる。

【００２０】 ピニオン軸２からラック軸３に作用する力が小さくなると、パッド12に対する 挟圧力が低減され、パッド12の突起部12d が収縮されてハウジング4aとの摺接面 積も縮小し、相互の摺接圧力も低減されて旧状態に復帰し、ラック軸３の軸方向 移動に対する抵抗が軽減されることとなる。

【００２１】

【考案の効果】

以上の如く本考案装置にあっては、ラック軸の周方向に延在するパッドの両端 部に設けた突起部をハウジングの内周面に摺接せしめることとしてあるから、ラ ック軸にたわみ力が作用しない常時には、ラック軸の軸方向移動を容易とし、ラ ック軸をたわませる強い力が作用すると、ラック軸に対するサポートヨークの押 圧力が強化されることとなり、ラック軸のたわみを確実に抑制し得ると共に、ハ ウジング内でのサポートヨークの摺動機能も損われず、しかもがたつきが低減さ れる等、本考案は優れた効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案装置の部分破断側面図である。

【図２】図１のII−II線による拡大断面図である。

【図３】図２のサポートヨークの部分拡大図である。

【図４】サポートヨーク及びパッドの拡大断面図であ
る。

【図５】板ばねの拡大平面図である。

【図６】パッドの拡大側面図である。

【図７】パッドの拡大平面図である。

【図８】パッドの拡大下面図である。

【図９】従来装置の断面図である。

【符号の説明】

１ 舵輪 ２ ピニオン軸 ３ ラック軸 ４ ギヤケース ５，６ 軸受部材 ７ 玉軸受 11 サポートヨーク 11j 凹溝 12 パッド 12a 支持突部 12b,12c リブ 12d,12e 突起部 12f 凹溝 12g,12h リブ 12j 突条 13 押板 14 コイルばね 16 ばねガイド部材 17 カバー 18 板ばね

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ギヤハウジング内におけるラックとピニ
   オンとの噛合部近傍であって、ラックを隔ててピニオン
   と反対側にハウジングを設け、該ハウジング内にラック
   をピニオン側に向けて弾圧すべく前記ラックの軸との対
   向面に合成樹脂製のパッドを設けたサポートヨークを摺
   嵌し、前記ラックの軸側にむけて付勢保持してなるラッ
   ク・ピニオン式舵取装置において、 前記パッドはラックの円形断面をなす軸の周方向に延在
   する両端部であって、夫々前記ハウジングの内周面と対
   向する外周面の一部に、前記ハウジングに摺接する突起
   部を備えることを特徴とするラック・ピニオン式舵取装
   置。