JPH0539018A - アンチロツクブレーキ装置 - Google Patents

アンチロツクブレーキ装置

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JPH0539018A
JPH0539018A JP28235991A JP28235991A JPH0539018A JP H0539018 A JPH0539018 A JP H0539018A JP 28235991 A JP28235991 A JP 28235991A JP 28235991 A JP28235991 A JP 28235991A JP H0539018 A JPH0539018 A JP H0539018A
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Abstract

(57)【要約】 〔目的〕 アンチロックブレーキ装置に於て、路面摩擦
力若しくは路面摩擦係数が最大値付近の最適な値になる
ようにブレーキ力を制御するとともに、ブレーキ力を強
める過程からブレーキ力を弱める過程へ移行する時期を
路面の状況によらずに最適に設定する。これらにより、
ロック前兆に至り難く、かつ制動力の損失を低減し制動
距離の短縮を実現することを目的とする。 〔構成〕 路面摩擦力若しくは路面摩擦係数を検出する
手段とブレーキ油圧を検出する手段を備え、これらの検
出値に基づいて路面摩擦力若しくは路面摩擦係数に平衡
するブレーキ油圧を算出する。この算出値を基準として
ブレーキ油圧の指示値が設定され、この指示値に追随す
るようプレーキ油圧が調整される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、路面摩擦力若しくは路
面摩擦係数に基づいて車輪の制動時にロック(車体が走
行中にも拘らず車輪のみが静止する現象)を防止すべく
ブレーキ力(車輪の回転を制動する力)の制御を行うア
ンチロックブレーキ装置(ABS)に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】自動車等の車両に於ける市販のABS
は、車輪速度センサーの信号をもとに車輪加速度(車輪
の回転周速度の時間変化率)、並びにスリップ比(車輪
のスリップの度合を表わす量で、車輪速度(車輪の回転
周速度)と車体速度(車体の走行速度)の比の1に対す
る補数で定義される)を演算し、これらの組合せにより
車輪のロックを防止するようブレーキ力の制御を行なう
ものである。すなわち市販のABSは、路面摩擦力(路
面と車輪の間に作用する摩擦力であってFと表記する)
を検出する手段若しくは路面摩擦係数(路面と車輪の間
の摩擦係数であってμと表記する)を検出する手段の何
れをも備えていない。このため、路面摩擦力若しくは路
面摩擦係数が最大値付近の最適な値になるようにブレー
キ力を制御することが容易ではない。更に、ブレーキ力
を強める過程からブレーキ力を弱める過程へ移行する時
期を路面の状況によらずに最適に設定することが困難で
ある。これらの結果、市販のABSは制動力(車体を制
動する力であって各車輪の路面摩擦力の総和に相当す
る)の損失が大きく制動距離(制動開始から停車までの
走行距離)が長くなるという欠点を有している。
【0003】市販のABSが有する前記の欠点を改善す
るものとしての特開昭63−25169号、若しくは特
開昭62−166152号が開示されているが、この公
知のABSでは、路面摩擦力による車軸周りのトルク
(路面トルクと表記する)若しくは路面摩擦係数(μ)
を検出する手段を有しており、ブレーキ油圧(ブレーキ
源強度の一例である)を強める過程に於て路面トルク若
しくは路面摩擦係数(μ)が最大値に達した時のブレー
キ油圧を記憶して、ブレーキ油圧を弱めた後再びブレー
キ油圧を強める過程に於て、この記憶値を基準としてブ
レーキ油圧の目標値を決定している。しかしながら、ア
ンチロックブレーキ装置が最も必要とされる急ブレーキ
を作動させた場合に於て、ブレーキ油圧を強める過程に
於ては通常車輪加速度は負の値であり、特にF若しくは
μがその最大値に達したときには車輪加速度の負の値が
大きく、ブレーキ油圧はF若しくはμが最大値に達する
に必要なブレーキ油圧よりは相当に高くなっている。そ
れ故前記のブレーキ油圧の記憶値はF若しくはμを最大
にするには過剰なブレーキ油圧を含んでいる。しかもそ
の過剰分は常に一定であるわけではなく、ブレーキペダ
ルの踏み加減等のブレーキ操作、或はμの最大値の大き
さなどの路面の状況等に依存して変わる。従って、再度
ブレーキ油圧を強める過程でのブレーキ油圧の目標値を
前記記憶値を基準に決定すると、ブレーキ操作、或は路
面の状況によっては、目標値が過度に高くなってロック
の前兆に再び到り易くなったり、逆に過度に低くなって
F若しくはμが不必要に長い時間低い値にとどまること
になり制動力の損失が大きくなるという欠点を有してい
る。
【0004】前記した市販のABS、前記特開昭63−
25169号に開示されるABS、若しくは前記特開昭
62−166152号に開示されるABSのいずれに於
ても、ブレーキ油圧を緩める過程に於て、ブレーキ油圧
を保持する或は再度強める過程へ移行する直前までブレ
ーキ油圧をブレーキ装置の能力の範囲で最大の速さで緩
める。そのために、ブレーキ油圧を保持する或は再度強
める時期を超えてもなお、ブレーキ油圧が不必要に下降
することがあり、その結果制動力の損失を増大させると
いう欠点を有している。
【0005】前記特開昭62−166152号に開示さ
れるABSでは更に、ブレーキ油圧を強める過程からブ
レーキ油圧を弱める過程に移行する時期を決定するのに
μのスリップ比(S)に対する変化率を参照しており、
該μのスリップ比(S)に対する変化率が所定の基準値
を超えて小さくなった時点をブレーキ油圧を弱める過程
に移行する時期としている。それ故、μが最大値に近い
値に達した時点でブレーキ油圧を緩めることになるの
で、市販のABSに比べてブレーキ油圧を緩める時期が
より適切に設定される。しかしながら、μの最大値は乾
燥舗装路面に於ける0.8程度から氷上路面に於ける
0.05程度まで路面の状況によって広い範囲にわたっ
ている。それ故、μのスリップ比(S)に対する変化率
を所定の基準値と比較するだけでは、様々のμの最大値
を有する様々の路面の状況に幅広く対応して常にμが最
大値付近の最適な値に達した時期を見いだすことは困難
である。
【0006】また、前記特開昭62−166152号に
開示されるABSでは、ブレーキ油圧検出手段、並びに
スリップ比検出手段の他にμを検出する手段を具備して
いる。しかしながら、該ABSではμを検出する手段は
ブレーキ油圧から間接的にμを算出するものであり、精
度上の問題がある。前記特開昭62−166152号に
開示されるABSでは、路面摩擦係数の全車輪について
の総和を算出し、該総和に重力加速度を乗することによ
り車体減速度を算出し、該車体減速度に積分演算を行う
ことにより車体速度を算出し、該車体速度と車輪速度と
に基づいてスリップ比を算出している。しかしながら、
路面摩擦係数の各車輪についての総和からは車体減速度
を正しく計算することはできない。それ故、計算される
スリップ比には精度上の問題がある。また、特開昭62
−110554号に開示されるABSでは、路面摩擦力
の各車輪についての総和と定数としての車体質量との比
から車体減速度を算出している。この公知例では車体質
量が車両への積載人員、積載物の数量とともに変動し得
る点が考慮されておらず、計算されるスリップ比は同様
に精度上の問題を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の技術
が有する上記の問題点を除去し、制動力の損失が少なく
短い制動距離を実現するアンチロックブレーキ装置(A
BS)を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに提案される請求項1に記載の本発明は、アンチロッ
クブレーキ装置であって、車輪加速度を検出する手段
と、路面摩擦力を検出する手段と、ブレーキ源強度を検
出する手段と、ブレーキ源強度の指示値にブレーキ源強
度を追随させるブレーキ源強度サーボ機構と、ブレーキ
源強度の指示値を算出する制御装置とを備え、該制御装
置が車輪加速度の検出値、路面摩擦力の検出値、並びに
ブレーキ源強度の検出値とに基づいて路面摩擦力に平衡
するブレーキ源強度を算出して、該路面摩擦力に平衡す
るブレーキ源強度を基準にブレーキ源強度の指示値を決
定することを特徴とするものである。請求項2に記載の
本発明は、アンチロックブレーキ装置であって、車輪加
速度を検出する手段と、路面摩擦係数を検出する手段
と、ブレーキ源強度を検出する手段と、ブレーキ源強度
の指示値にブレーキ源強度を追随させるブレーキ源強度
サーボ機構と、ブレーキ源強度の指示値を算出する制御
装置とを備え、該制御装置が車輪加速度の検出値、路面
摩擦係数の検出値、並びにブレーキ源強度の検出値とに
基づいて路面摩擦係数に平衡するブレーキ源強度を算出
して、該路面摩擦係数に平衡するブレーキ源強度を基準
にブレーキ源強度の指示値を決定することを特徴とする
ものである。請求項3に記載の本発明は、請求項1に記
載のアンチロックブレーキ装置であって、制御装置は車
輪加速度の絶対値が所定の正数よりも小さい時に限りブ
レーキ源強度の路面摩擦力に対する比を計算して当該比
の値を更新し、当該比と路面摩擦力との積として路面摩
擦力に平衡するブレーキ源強度を計算し、該路面摩擦力
に平衡するブレーキ源強度を基準にブレーキ源強度の指
示値を決定することを特徴とするものである。請求項4
に記載の本発明は、請求項2に記載のアンチロックブレ
ーキ装置であって、制御装置は車輪加速度の絶対値が所
定の正数よりも小さい時に限りブレーキ源強度の路面摩
擦係数に対する比を計算して当該比の値を更新し、当該
比と路面摩擦係数との積として路面摩擦係数に平衡する
ブレーキ源強度を計算し、該路面摩擦係数に平衡するブ
レーキ源強度を基準にブレーキ源強度の指示値を決定す
ることを特徴とするものである。請求項5に記載の本発
明は、請求項1に記載のアンチロックブレーキ装置であ
って、制御装置が車輪加速度、路面摩擦力、並びにブレ
ーキ源強度の各々の異なる2時点に於ける検出値から、
車輪加速度、路面摩擦力並びにブレーキ源強度の間の線
形結合定数を算出し、当該線形結合定数を用いて路面摩
擦力に平衡するブレーキ源強度を計算し、該路面摩擦力
に平衡するブレーキ源強度を基準にブレーキ源強度の指
示値を決定することを特徴とするものである。請求項6
に記載の本発明は、請求項2に記載のアンチロックブレ
ーキ装置であって、制御装置が車輪加速度、路面摩擦係
数、並びにブレーキ源強度の各々の異なる2時点に於け
る検出値から、車輪加速度、路面摩擦係数並びにブレー
キ源強度の間の線形結合定数を算出し、当該線形結合定
数を用いて路面摩擦係数に平衡するブレーキ源強度を計
算し、該路面摩擦係数に平衡するブレーキ源強度を基準
にブレーキ源強度の指示値を決定することを特徴とする
ものである。請求項7に記載の本発明は、アンチロック
ブレーキ装置であって、路面摩擦力を検出する手段と、
スリップ比を検出する手段と、ブレーキ源強度を調整す
るブレーキ源強度制御手段とを備え、該ブレーキ源強度
制御手段が路面摩擦力のスリップ比に対する変化率を算
出し、該比率が路面摩擦力とスリップ比の所定の関数の
値を超えて小となるときにブレーキ源強度を強める過程
からブレーキ源強度を弱める過程に移行することを特徴
とするものである。請求項8に記載の本発明は、アンチ
ロックブレーキ装置であって、路面摩擦係数を検出する
手段と、スリップ比を検出する手段と、ブレーキ源強度
を調整するブレーキ源強度制御手段とを備え、該ブレー
キ源強度制御手段が路面摩擦係数のスリップ比に対する
変化率を算出し、該比率が路面摩擦力とスリップ比の所
定の関数の値を超えて小となるときにブレーキ源強度を
強める過程からブレーキ源強度を弱める過程に移行する
ことを特徴とするものである。請求項9に記載の本発明
は、アンチロックブレーキ装置であって、路面摩擦力を
検出する手段と、スリップ比を検出する手段と、ブレー
キ源強度を調整するブレーキ源強度制御手段とを備え、
路面摩擦力が最大値(Fp)であるときのスリップ比
(Sp)に対して路面摩擦力が前記Fpの所定の割合ま
で減少しかつスリップ比が前記Spの所定の割合まで減
少したときに、前記ブレーキ源強度制御手段がブレーキ
源強度を弱める過程若しくは保持する過程を終了しブレ
ーキ源強度を強める過程へ移行することを特徴とするも
のである。請求項10に記載の本発明は、アンチロック
ブレーキ装置であって、路面摩擦係数を検出する手段
と、スリップ比を検出する手段と、ブレーキ源強度を調
整するブレーキ源強度制御手段とを備え、路面摩擦係数
が最大値(μp)であるときのスリップ比(Sp)に対
して路面摩擦係数が前記μpの所定の割合まで減少しか
つスリップ比が前記Spの所定の割合まで減少したとき
に、前記ブレーキ源強度制御手段がブレーキ源強度を弱
める過程若しくは保持する過程を終了しブレーキ源強度
を強める過程へ移行することを特徴とするものである。
請求項11に記載の本発明は、アンチロックブレーキ装
置であって、路面摩擦力を検出する手段と垂直抗力を検
出する手段と車体速度を演算する手段とを備え、該車体
速度を演算する手段が路面摩擦力の所定の車輪について
の総和と垂直抗力の所定の車輪についての総和とから車
体速度を演算し出力することを特徴とするものである。
請求項12に記載の本発明は、アンチロックブレーキ装
置であって、路面摩擦力を直接に検出する手段と、スリ
ップ比を検出する手段と、ブレーキ源強度を検出する手
段と、ブレーキ源強度を調整するブレーキ源強度制御手
段とを備え、該ブレーキ源強度制御手段が前記路面摩擦
力、スリップ比、並びにブレーキ源強度とに基づいてブ
レーキ源強度の調整を行うことを特徴とするものであ
る。請求項13に記載の本発明は、アンチロックブレー
キ装置であって、路面摩擦係数を直接に検出する手段
と、スリップ比を検出する手段と、ブレーキ源強度を検
出する手段と、ブレーキ源強度を調整するブレーキ源強
度制御手段とを備え、該ブレーキ源強度制御手段が前記
路面摩擦係数、スリップ比、並びにブレーキ源強度とに
基づいてブレーキ源強度の調整を行うことを特徴とする
ものである。
【0009】
【作用】請求項1の本発明では、車輪加速度を検出する
手段で検出される車輪加速度と、路面摩擦力を検出する
手段により検出される路面摩擦力とに基づいて制御装置
が路面摩擦力に平衡するブレーキ源強度を算出する。制
御装置はこの算出された値に基づいてブレーキ源強度の
指示値を定める。ブレーキ源強度の指示値にブレーキ源
強度を追随させるブレーキ源強度サーボ機構を備えてい
るために、制御装置が定めたブレーキ源強度の前記指示
値に追随してブレーキ源強度が変化する。路面摩擦力に
平衡するブレーキ源強度を基準にブレーキ源強度の指示
値を決定するためにブレーキ力が適切な大きさに調整さ
れ、車輪のロックを安定して防ぎかつ短い制動距離を実
現することができる。請求項2の本発明では、車輪加速
度を検出する手段で検出される車輪加速度と、路面摩擦
係数を検出する手段により検出される路面摩擦係数とに
基づいて制御装置が路面摩擦係数に平衡するブレーキ源
強度を算出する。制御装置はこの算出された値に基づい
てブレーキ源強度の指示値を定める。ブレーキ源強度の
指示値にブレーキ源強度を追随させるブレーキ源強度サ
ーボ機構を備えているために、制御装置が定めたブレー
キ源強度の前記指示値に追随してブレーキ源強度が変化
する。路面摩擦係数に平衡するブレーキ源強度を基準に
ブレーキ源強度の指示値を決定するためにブレーキ力が
適切な大きさに調整され、車輪のロックを安定して防ぎ
かつ短い制動距離を実現することができる。請求項3の
本発明では、請求項1に記載のアンチロックブレーキ装
置に於て、車輪加速度の絶対値が所定の正数よりも小さ
い時に限りブレーキ源強度の路面摩擦力に対する比を計
算して当該比の値を更新し、当該比と路面摩擦力との積
として路面摩擦力に平衡するブレーキ源強度を制御装置
が計算する。請求項4の本発明では、請求項2に記載の
アンチロックブレーキ装置に於て、車輪加速度の絶対値
が所定の正数よりも小さい時に限りブレーキ源強度の路
面摩擦係数に対する比を計算して当該比の値を更新し、
当該比と路面摩擦係数との積として路面摩擦係数に平衡
するブレーキ源強度を制御装置が計算する。請求項5の
本発明では、請求項1に記載のアンチロックブレーキ装
置に於て、制御装置が車輪加速度、路面摩擦力、並びに
ブレーキ源強度の各々の異なる2時点に於ける検出値か
ら、車輪加速度、路面摩擦力並びにブレーキ源強度の間
の線形結合定数を算出し、当該線形結合定数を用いて路
面摩擦力に平衡するブレーキ源強度を計算する。請求項
6の本発明では、請求項2に記載のアンチロックブレー
キ装置に於て、制御装置が車輪加速度、路面摩擦係数、
並びにブレーキ源強度の各々の異なる2時点に於ける検
出値から、車輪加速度、路面摩擦係数並びにブレーキ源
強度の間の線形結合定数を算出し、当該線形結合定数を
用いて路面摩擦係数に平衡するブレーキ源強度を計算す
る。請求項7の本発明では、路面摩擦力を検出する手段
により検出される路面摩擦力と、スリップ比を検出する
手段により検出されるスリップ比とに基づいて、ブレー
キ源強度を調整するブレーキ源強度制御手段が、路面摩
擦力のスリップ比に対する変化率を算出し、該比率が路
面摩擦力とスリップ比の所定の関数の値を超えて小とな
るときにブレーキ源強度を強める過程からブレーキ源強
度を弱める過程に移行する。このため、該関数を適切に
設定することによりブレーキ源強度を強める過程からブ
レーキ源強度を弱める過程への移行の時期が路面の状況
によらずに路面摩擦力が最大値付近に達した適切な時期
に常に設定され、制動力の損失を低減することができ
る。請求項8の本発明では、路面摩擦係数を検出する手
段により検出される路面摩擦係数と、スリップ比を検出
する手段により検出されるスリップ比とに基づいて、ブ
レーキ源強度を調整するブレーキ源強度制御手段が、路
面摩擦係数のスリップ比に対する変化率を算出し、該比
率が路面摩擦力とスリップ比の所定の関数の値を超えて
小となるときにブレーキ源強度を強める過程からブレー
キ源強度を弱める過程に移行する。このため、該関数を
適切に設定することによりブレーキ源強度を強める過程
からブレーキ源強度を弱める過程への移行の時期が路面
の状況によらずに路面摩擦係数が最大値付近に達した適
切な時期に常に設定され、制動力の損失を低減すること
ができる。請求項9の本発明では、路面摩擦力を検出す
る手段により検出される路面摩擦力と、スリップ比を検
出する手段により検出されるスリップ比とに基づいて、
ブレーキ源強度を調整するブレーキ源強度制御手段が、
路面摩擦力が最大値(Fp)であるときのスリップ比
(Sp)に対して、これらFp及びSpの値を記憶して
いて、路面摩擦力が前記Fpの所定の割合まで減少しか
つスリップ比が前記Spの所定の割合まで減少したとき
に、前記ブレーキ源強度制御手段がブレーキ源強度を弱
める過程若しくは保持する過程を終了しブレーキ源強度
を強める過程へ移行する。このため、μ対S曲線に於て
μが最大となる点よりもSの低い側に動作点が回復して
いることを路面摩擦力とSの双方から2重に判定するも
のとなっており、ブレーキ強度を強める過程へ移行する
べきかどうかを判断する条件として誤りが少ないばかり
ではなく、ブレーキ強度を強める過程の開始の時期を適
切に設定することができるために制動力の損失を少なく
することができる。請求項10の本発明では、路面摩擦
係数を検出する手段により検出される路面摩擦係数と、
スリップ比を検出する手段により検出されるスリップ比
とに基づいて、ブレーキ源強度を調整するブレーキ源強
度制御手段が、路面摩擦係数が最大値(μp)であると
きのスリップ比(Sp)に対して、これらμp及びSp
の値を記憶していて、路面摩擦係数が前記μpの所定の
割合まで減少しかつスリップ比が前記Spの所定の割合
まで減少したときに、前記ブレーキ源強度制御手段がブ
レーキ源強度を弱める過程若しくは保持する過程を終了
しブレーキ源強度を強める過程へ移行する。このため、
μ対S曲線に於てμが最大となる点よりもSの低い側に
動作点が回復していることをμとSの双方から2重に判
定するものとなっており、ブレーキ強度を強める過程へ
移行するべきかどうかを判断する条件として誤りが少な
いばかりではなく、ブレーキ強度を強める過程の開始の
時期を適切に設定することができるために制動力の損失
を少なくすることができる。請求項11の本発明では、
路面摩擦力を検出する手段と垂直抗力を検出する手段と
車体速度を演算する手段とを備え、該車体速度を演算す
る手段が路面摩擦力の所定の車輪についての総和と垂直
抗力の所定の車輪についての総和とから車体速度を演算
し出力することを特徴としている。それ故、車体速度が
精度良く計算される。請求項12の本発明では、路面摩
擦力を直接に検出する手段と、スリップ比を検出する手
段と、ブレーキ源強度を検出する手段と、ブレーキ源強
度を調整するブレーキ源強度制御手段とを備え、該ブレ
ーキ源強度制御手段が前記路面摩擦力、スリップ比、並
びにブレーキ源強度とに基づいてブレーキ源強度の調整
を行う。路面摩擦力を直接に検出するために路面摩擦力
が精度良く検出できる。精度の良い路面摩擦力の検出値
に加えて、スリップ比とブレーキ源強度をも参照してブ
レーキ源強度の制御を行うために車輪のロックを防止
し、かつ制動力の損失を低減し短い制動距離を実現し得
る。請求項13の本発明では、路面摩擦係数を直接に検
出する手段と、スリップ比を検出する手段と、ブレーキ
源強度を検出する手段と、ブレーキ源強度を調整するブ
レーキ源強度制御手段とを備え、該ブレーキ源強度制御
手段が前記路面摩擦係数、スリップ比、並びにブレーキ
源強度とに基づいてブレーキ源強度の調整を行う。路面
摩擦係数を直接に検出するために路面摩擦係数が精度良
く検出できる。精度の良い路面摩擦係数の検出値に加え
て、スリップ比とブレーキ源強度をも参照してブレーキ
源強度の制御を行うために車輪のロックを防止し、かつ
制動力の損失を低減して短い制動距離を実現し得る。
【0010】なお本発明に於て、ブレーキ源強度とはブ
レーキ力の基になる機械的若しくは電気的作用の大きさ
を総称したもので、油圧式ブレーキ機構に於てはブレー
キ油圧など、油圧式ブレーキ機構に於てブレーキ油圧を
生成する電気式アクチュエータを備えておれば該アクチ
ュエータの駆動電流など、空気圧式ブレーキ機構に於て
はブレーキエアー圧力など、或は電気式ブレーキ機構に
於ては電動アクチュエータへの通電電流などがブレーキ
源強度の例である。一例として油圧式ブレーキ機構に於
てブレーキ油圧を増圧、減圧、若しくは保持すること
は、ブレーキ源強度を強め、弱め、或は保持することに
各々相当する。当然ながらブレーキ源強度を強めるにと
もなってブレーキ力は強まり、ブレーキ源強度を弱める
にともなってブレーキ力は弱まる。市販のABS、並び
に前記公知例のABSの何れに於てもブレーキ力の制御
はブレーキ源強度の制御を介して行われる。また本発明
に於て、路面摩擦力若しくは路面摩擦係数に平衡するブ
レーキ源強度とは、その大きさの路面摩擦力若しくは路
面摩擦係数を均一な路面に於て定常的に実現し得るブレ
ーキ源強度の意味であり、換言すれば該路面摩擦力若し
くは路面摩擦係数に相応した路面トルクとブレーキトル
ク(ブレーキ力による車軸周りのトルク)とが大きさに
於て一致するようなブレーキ源強度を意味する。
【0011】
【実施例】ここに示すのは車両、特に自動車に実施した
好ましい実施形態の一例であって、特許請求の範囲はこ
こに示す実施例に限定されるものではない。図1に、本
発明のアンチロックブレーキの実施例に於ける全体構成
のブロック図を示す。実際には車輪毎に必要な構成要素
を、独立にアンチロック制御を行なう車輪の数だけ並列
的に備えているが、図を簡略明快にするために便宜上1
車輪に関してのみ描いている。本実施例では油圧式ブレ
ーキ機構を有している。制御装置1は車輪2に関わる諸
計測データをもとに、アンチロック制御を目的としてブ
レーキ油圧の指示値(Ps)を算出し出力する。制御装
置1は、マイクロプロセッサ、メモリー、及び入出力イ
ンタフェイスを含む電子回路で構成され、予めメモリー
に書き込まれたプログラムに従って動作する(このよう
に構成された電子回路を以下に於てコンピュータ回路と
表現する)。油圧サーボ制御装置3は、ブレーキ油圧セ
ンサ4により計測されたブレーキ油圧(P)と制御装置
1より出力されるブレーキ油圧の指示値(Ps)との差
を減算器5で演算した結果の値を入力し、この差の値が
ゼロになるように油圧制御バルブ6を制御する。すなわ
ち、油圧サーボ制御装置3、ブレーキ油圧センサー4、
減算器5、並びに油圧制御バルブ6は全体でブレーキ油
圧サーボ機構を構成している。油圧サーボ制御装置3は
コンピュータ回路で構成することもできる。ブレーキ油
圧はブレーキペダル7を運転者が踏み込むことによりマ
スターシリンダー8で生成され、油圧制御バルブ6によ
り調整されブレーキ装置9に伝えられる。油圧制御バル
ブ6の働きでブレーキ油圧が減圧されるときにブレーキ
装置9へ送出されたブレーキ油の一部を回収する必要が
ある。この目的のためにリザーバ及びポンプ10を備え
ている。ブレーキ油圧は油圧配管11によって伝達され
る。車輪2に関する車輪速度(Vw)、路面摩擦力
(F)、並びに垂直抗力(路面が車輪に作用する垂直抗
力の意であり記号Nで表記する)を各々車輪速度センサ
ー12、路面摩擦力センサー13、並びに垂直抗力セン
サー14で計測する。制御装置1は、これらの計測デー
タ並びにブレーキ油圧(P)のデータを読み取って、ブ
レーキ油圧の指示値(Ps)を算出する。路面摩擦力セ
ンサー13については例えば、同一出願人の特願平1−
197809号、或は特開昭62−110554号に開
示される公知の計測手段を用いる。垂直抗力センサー1
4については、例えば同一出願人の特願平1−1978
09号、或は特開昭56−39946号に開示される公
知の計測手段を用いる。コンピュータ回路により構成さ
れる制御装置1は、メモリーに予め格納されたプログラ
ムに従って動作する。それ故、該プログラムの流れ(フ
ロー)について記述をすれば、装置の動作説明としては
十分である。制御装置1のプログラムのフローについ
て、望ましい具体例を図2から図12に記述する。該プ
ログラムは図2に示すメインルーチンを有しており、こ
の中でタイマー割り込みにより、図3より図12に示す
別に用意された割り込みルーチンを周期的に実行する。
割り込みの周期は例えば1msecから5msec程度
である。車両のキースイッチを投入することにより電源
が入力されると、ステップ100よりメインルーチンが
開始される。次にステップ101に進み、書き込み可能
メモリーの初期化、諸変数の初期化、値が予め定められ
る定数への値の付与等を行なう。つづいてステップ10
2に於て割り込みの許可を行なう。次に、ステップ10
3を反復する無限ループに入って割り込みを待つ。ステ
ップ103は特に意味のある処理を行なうわけではな
く、割り込みを待つために設けられたステップである。
【0012】割り込みルーチンの全体のフローを図3及
び図4に示す。ステップ200で割り込みが開始される
と、まず計測データを読み込み(ステップ201)、こ
れらを基に路面摩擦係数(μ)、スリップ比(S)、並
びに車輪加速度(V’w)を計算する(ステップ20
2)。スリップ比(S)は車輪速度(Vw)と車体速度
(Vs)とから、 S=1−Vw/Vs ・・・・(1) に基づいて計算される。車体速度(Vs)はj番目の車
輪の路面摩擦力F{j}及びj番目の車輪の垂直抗力N
{j}とから次の式に従って計算される。 Vs=VsO−g・∫(ΣF{j}/ΣN{j})dt ・・・・(2) ここで、VsOは車体速度の初期値、gは重力加速度、
Σは全車輪にわたる総和、若しくは前車輪のみの総和な
ど、所定の車輪についての総和を表す記号、並びに∫・
・dtは時間に関する積分を表す記号である。このよう
に、車体速度(Vs)をF、及びNの検出値をもとに計
算するので、Vsが精度良く計算される。垂直抗力
(N)の検出値を計算に用いているので、車載重量の変
化による誤差が小さいか若しくはない。全車輪のなかの
何れか1車輪の車輪速度(Vw)がVsを超えるときに
はこの車輪のVwの値でVsの値を更新するとよい。こ
のように計算されたVsを使って式(1)よりスリップ
比(S)を計算するのでスリップ比(S)が精度良く計
算される。ステップ204からステップ207までのル
ープに於て、割り込み周期のK倍以前までのμ、S、
V’w、並びにPの値を更新する。定数Kは正の整数で
メインルーチンのステップ101に於て値が予め付与さ
れている。ステップ208では現在時点のステップ20
2で計算された諸変数がμ(0)等の諸変数に代入され
る。ステップ300では1割り込み周期の間のμとSの
各々の変化量Δμ、及びΔSが定義される。ステップ3
01ではμのSに対する変化率とμのSに対する比率と
の間の比率(ρ)を計算する。ステップ302ではμに
平衡するブレーキ油圧(Peq)を計算する。ステップ
303ではμの最高値(μp)、μが最高値(μp)で
ある時のSの値(Sp)、並びにμが最高値(μp)で
ある時のPeqの値(Peqp)を更新する。ステップ
304に於て、変数Mの値に応じてステップ305から
ステップ308の4通りにフローが振り分けられる。変
数Mはメインルーチンのステップ101に於て1に初期
化されている。それ故少なくとも第1回目の割り込みに
於てはステップ305のルーチンが選択される。ステッ
プ305からステップ308に於て必要に応じてその値
が更新される。ステップ305から順に、ブレーキ油圧
を増圧するルーチン、減圧若しくは保持するルーチン、
再び増圧するルーチン、並びに徐々に増圧するルーチン
である。これらのルーチンではブレーキ油圧の指示値
(Ps)を算出する。ステップ309では算出されたP
sを出力する。つづいてステップ400で本割り込みル
ーチンを終了する。以上の割り込みルーチンは、独立に
アンチロック制御すべき各車輪毎に用意され処理され
る。
【0013】ステップ301のルーチンは図5に示すフ
ローで実現される。すなわち、ステップ500で本ルー
チンが開始され、つづいてスリップ比(S)の変化量
(ΔS)が所定の定数δと比較され、ΔSが大きけれ
ば、ステップ502でρの値がが定義・更新されΔSが
大きくなければステップ503でρに定数ρmaxの値
が付与される。ステップ501はΔSが十分な精度を保
証できる大きさであるかどうかを判断する目的のもの
で、定数(δ)はこの目的に適切であるようにその値が
予め設定される。例えば、δの値は0.0025程度で
ある。定数ρmaxはρが取り得る最大の値に対応して
おりその値は1である。すなわち本ルーチン301で
は、ΔSが意味を持つ精度で得られる時にはρがμのS
に対する変化率とμのSに対する比率との間の比率で定
義され、ΔSの精度が不十分である時にはρには最大の
値が付与される。本実施例ではスリップ比(S)が精度
良く計算されるために、スリップ比の変化量ΔSの精度
も従来技術に比べて良好である。
【0014】ステップ302に於て路面摩擦係数に平衡
するブレーキ油圧(Peq)を計算する手順の根拠は次
式に示される車輪の回転運動を記述する運動方程式に置
かれる。 I・V’w/r=r・F−k・P=r・N・μ−k・P ・・・・(3) ここで、Iは車輪の完成能率、rは車輪の有効半径であ
る。kはブレーキトルクとブレーキ油圧(P)の間の比
例係数であり、ブレーキ装置9を構成するブレーキディ
スク及びブレーキパッドの両者の間の摩擦係数を因数と
して含んでいる。書き換えると、 P=a・F−B・V’w=A・μ−B・V’w, ・・・・(4) 但し a=r/k, A=r・N/k, B=I/(k・r) のようになる。ブレーキ油圧(P)と路面摩擦係数
(μ)若しくは路面摩擦力(F)の間の関係は車輪加速
度(V’w)を介してこの式で決定付けられる。ブレー
キ油圧(P)と路面摩擦力(F)若しくは路面摩擦係数
(μ)が平衡するとき、すなわち V’w=0 ・・・・(5) であるときには P=a・F=A・μ ・・・・(6) である。係数a若しくはAは、車輪の種類、車輪の有効
半径、ブレーキパッドとブレーキディスクの間の摩擦系
数等に依存するもので、タイヤ、ホイール、ブレーキパ
ッド、ブレーキディスク等の交換に伴って変化し得る。
また、経年変化、タイヤの空気圧、制動時の摩擦熱によ
る温度上昇などによる変化も有り得る。このため、係数
a、或はAはABSが作動中に於て絶えず計算してその
値を更新して行くのがよい。これらの係数a、若しくは
Aを得るのに、例えば以下の2通りの手順がある。一つ
は、V’wがゼロに近いときに限って、F(又はμ)と
Pの計測値から上記の式(6)から a=P/F, A=P/μ ・・・・(7) として係数a、若しくはAを算出することができる。
V’wがゼロに近くないときは係数a、又はAはその値
を更新されず以前に更新された値を保持しつづける。こ
のようにして得られる係数a又はAを用いて Peq=a・F=A・μ ・・・・(8) により、Peqが得られる。もう一つの例では、2つの
異なる時点t1及びt2に於けるμ、V’w、及びPの
計測値から、 μ(t1)・A−V’w(t1)・B=P(t1), μ(t2)・A−V’w(t2)・B=P(t2) ・・・・(9) の形の連立方程式からAを求める。係数aも同様の手順
で得られる。これらa若しくはAと式(8)とからPe
qが得られる。
【0015】ステップ302のルーチンのフローの一例
を図6に示す。この例は、上記第1番目の手順に対応す
るものである。ステップ600で本ルーチンが開始さ
れ、つづいてステップ601で路面摩擦係数(μ)が正
であってかつ車輪加速度(V’w)の絶対値が所定の基
準値よりも小さいかどうかを判断し、判断が肯定されれ
ばPeqとμの間の換算係数(A)をブレーキ油圧
(P)とμとの比として更新しステップ603へ進み、
否定されればそのままステップ603へ進む。ステップ
603では路面摩擦係数に平衡するブレーキ油圧(Pe
q)を変数Aとμとの積として定義する。つづいてステ
ップ604で本ルーチンを終了する。定数ε1の値は例
えば0.5g(gは重力加速度)である。
【0016】ステップ302のルーチンのフローのもう
一つの例を図7に示す。この例は上記第2番目の手順に
対応するものである。ステップ700から始まり、ステ
ップ708で終了する。このフローでは、現在時点と割
り込み周期のI倍過去の時点の各々に於けるμ、V’
w、及びPの計測値から前記の連立方程式を立てて係数
Aを求めるものである(ステップ703及び705)。
Iは1からKまでの間の値であり(ステップ701、7
02、及び706で決まる)、精度良く係数Aを求め得
る保証が得られる範囲で最も小さい値に決められる(ス
テップ704)。ステップ704に於て、ステップ70
3で得られる変数D(I)とC(I)との比の絶対値が
ある程度大きければ精度は十分であると判断する。判断
の基準値ε2は例えば0.05である。ステップ707
に於て係数Aを使ってPeqを定義する。
【0017】ステップ303のフローの例を図8に示
す。ステップ800に始まりステップ803に終わる。
ステップ801に於てμの最大値μpとμとを比較し
て、μが小さくなければステップ802に於てμpをμ
で更新し、同時にSp、Peqpも各々S、Peqで更
新する。ステップ801に於てμが小さければμp、S
p、Peqpともに更新せずにステップ803に至る。
【0018】ステップ305はブレーキ油圧を増圧する
ルーチンでありそのフローの例を図9に示す。ステップ
900に始まり、ステップ901に於てρが所定の基準
値よりも小さく、ΔSが正で、V’wが所定の基準値
(負の値)よりも負の方向に大きく、かつSが所定の基
準値よりも大きければステップ902へ進み、ブレーキ
油圧の指示値(Ps)をゼロに設定する。そしてフロー
を制御する変数Mを2に変更する。すなわち、ロック前
兆と判断してブレーキ油圧を減圧する過程へ移行する。
なお、Psはメインルーチンのステップ101に於て、
最大の値に初期設定される。すなわち、少なくとも初回
の割り込みに於ては、マスターシリンダ8が生成するブ
レーキ油圧が油圧制御バルブ6に於て調整を受けること
なくブレーキ装置9へ伝達される。ステップ901の減
圧過程へ移行する条件が満たされないときはそのままス
テップ904へ至って本ルーチンを終了する。従って次
回の割り込みに於ても本ルーチンが再度選択される。基
準値μc2,a2,Sc2はそれぞれ一例として0、−
g、0.03の値を持つ。ρを所定の基準値と比較する
ことは、Δμ/ΔSをμ/Sに比例する関数と比較する
ことに相当する。路面のμの最大値(μp)の大きさ及
びμの最大値に対応するスリップ比(Sp)の大きさに
応じてΔμ/ΔSの比較の対象の値が変化する。すなわ
ち、μpが大きいほど、またSpが小さいほどΔμ/Δ
Sの比較の対象が大きな値となる。このため、Δμ/Δ
Sを所定の定数である基準値と比較する従来技術に比べ
て、μp、或はSpの異なる様々の路面に於て減圧へ移
行する時期を適切に決定することができる。Δμ/ΔS
の比較の対象は一般にμ若しくはS若しくはこれら双方
の関数で、この関数はμに対しては増加関数、Sに関し
ては減少関数であることが望ましい。他の具体例として
Δμ/ΔSを所定の定数cを用いてc・μと比較しても
良い。ステップ901の条件には誤判断を防止するため
にV’w並びにSの条件も付加されている。ΔSに関す
る条件が付加されているのはスリップ比(S)が減少に
向かっている時には減圧過程に移行する必要がないから
である。
【0019】ステップ306はブレーキ油圧を減圧若し
くは保持するルーチンでありそのフローの例を図10に
示す。ステップ910に於て始まり、ステップ911と
ステップ912に於て、μが最大値(μp)であるとき
のPeqであるPeqpの所定の割合と比較してブレー
キ油圧(P)が低くなっておればブレーキ油圧の指示値
(Ps)をブレーキ油圧(P)よりもわずかだけ低い値
に設定する。すなわち減圧過程に入って後、ブレーキ油
圧(P)がPeqpの所定の割合まで減圧するまではP
sはゼロであり、ブレーキ油圧はブレーキ油圧系統の最
大能力の速さで減圧される。その後は、幾分緩やかに減
圧されるようにPsが更新設定される。そのため減圧を
やめるべく指示をする時に速やかに減圧が終了し、ブレ
ーキ油圧(P)が不必要に下降する恐れがなく、制動力
の損失を低減することができる。また、減圧が始まって
後の最大の速さでの減圧を終了するときのPの値はPe
qpを基準にしている。それ故、路面の状況、ブレーキ
ペダルの踏み加減によらずに最適に設定される。α1、
γ1の値の一例は各々0.8、0.95である。ステッ
プ913及び914では、V’wが正であれば減圧の効
果が現れて車輪速度の回復が始まったものと判断してP
sをPに等しく設定する。すなわちブレーキ油圧を保持
すべく指示する。ステップ915ではブレーキ油圧を再
増圧する過程に移行すべきかどうかを判断する。S、μ
が各々Sp、μpと比べて所定の割合よりも低くなって
いれば再増圧過程へ移行すべきと判断して、ステッブ9
16から918に於て、Psを最大値に設定し、μpを
ゼロクリアし、Mを再増圧ルーチンに対応する3に設定
する。ステップ915で再増圧に移行する条件が満たさ
れなければそのままステップ919へ至って本ルーチン
を終了する。この場合には、次回の割り込みに於ても本
ルーチンが再度選択される。定数α2、α3は各々例え
ば0.9に設定される。ステップ915に於ける判定条
件はμ対S曲線に於てμが最大となる点よりもSの低い
側に動作点が回復していることをμとS双方から2重に
判定するものとなっており、再増圧へ向かうべきかどう
かを判断する条件として誤りが少ないばかりではなく、
適切な時期に再増圧へ向かわしめることができるために
制動力の損失を少なくすることができる。
【0020】ステップ307はブレーキ油圧を再び増圧
するルーチンであり、そのフローの例を図11に示す。
ステップ920に於て始まり、ステップ921から92
3では前記ステップ901から903と同様にロック前
兆にあるかどうかを判断し、ロック前兆にあればブレー
キ油圧を減圧する過程へ移行する。ステップ924では
ブレーキ油圧の指示値が最大となっている現在の再増圧
過程から次の徐増圧過程へ移行すべきかどうかを判断す
る。Pが増圧されてPeqpの所定の割合に達したなら
ば、徐増圧過程へ移行すべきと判断して、ステップ92
6、927でPsをPに一致させ一旦Pを保持すべく指
示して、Mを徐増圧ルーチンに対応する4に設定する。
ステップ924の条件が満たされなければステップ92
8にそのまま進んで本ルーチンを終了する。すなわち、
次回の割り込みに於ても本ルーチンが選択される。再増
圧過程から徐増圧過程への移行の条件がPとPeqpと
の比較により構成されるために、路面の状況、ブレーキ
ペダルの踏み加減によらずに、ブレーキ油圧の大きさが
最適な値に達した時期に徐増圧過程へ移行する。このた
め、ロック前兆に至ることを防止し、かつ制動力の損失
を低減することができる。定数μc3,a3,Sc3は
例えば各々前記μc2、a2、Sc2と同じ値である。
【0021】ステップ308はブレーキ油圧を徐々に増
圧するルーチンであり、そのフローの例を図12に示
す。ステップ930に於て始まり、ステップ931から
933では前記ステップ901から903と同様にロッ
ク前兆にあるかどうかを判断し、ロック前兆にあればブ
レーキ油圧を減圧する過程へ移行する。ステップ934
では、ブレーキ油圧の指示値(Ps)をPsよりもわず
かに高い値に更新する。定数、μc4、a4、Sc4は
例えば各々前記μc2、a2、Sc2と各々同一の値で
ある。定数γ2は例えば1.005である。
【0021】制御装置1はμの代わりにFを参照して動
作してもよい。この場合には図1の全体構成からはNセ
ンサー14並びにNセンサーの出力信号を制御装置1へ
伝達する信号線が不要である。図3のステップ202か
らはμを計算する手順が不要となる。以下μの代わりに
Fと置き換えるとよい。
【0022】
【効果】本発明のアンチロックブレーキ装置では、以上
のように構成されるために車輪がロック前兆に至りにく
く、かつ制動力の損失を低減して制動距離を短縮するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアンチロックブレーキ装置の実施例を
示す全体構成のブロック図である。
【図2】コンピュータ回路により構成される制御装置に
於ける、プログラムの中のメインルーチンの流れ図であ
る。
【図3】制御装置1に於けるプログラムの中の割り込み
ルーチンの流れ図の前半部である。
【図4】制御装置1に於けるプログラムの中の割り込み
ルーチンの流れ図の後半部である。
【図5】図4に於ける割り込みルーチンの中のステップ
301のルーチンの流れ図である。
【図6】図4に於ける割り込みルーチンの中のステップ
302のルーチンの一例に於ける流れ図である。
【図7】図4に於ける割り込みルーチンの中のステップ
302のルーチンのもう一例に於ける流れ図である。
【図8】図4に於ける割り込みルーチンの中のステップ
303のルーチンの流れ図である。
【図9】図4に於ける割り込みルーチンの中のステップ
305のルーチンの流れ図である。
【図10】図4に於ける割り込みルーチンの中のステッ
プ306のルーチンの流れ図である。
【図11】図4に於ける割り込みルーチンの中のステッ
プ307のルーチンの流れ図である。
【図12】図4に於ける割り込みルーチンの中のステッ
プ308のルーチンの流れ図である。
【符号の説明】
1 制御装置 2 車輪 3 油圧サーボ制御装置 4 ブレーキ油圧センサ 5 減算器 6 油圧制御バルブ 12 車輪速度センサー 13 路面摩擦力センサー 14 垂直抗力センサー

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車輪加速度を検出する手段と、路面摩擦力
    を検出する手段と、ブレーキ源強度を検出する手段と、
    ブレーキ源強度の指示値にブレーキ源強度を追随させる
    ブレーキ源強度サーボ機構と、ブレーキ源強度の指示値
    を算出する制御装置とを備え、該制御装置が車輪加速度
    の検出値、路面摩擦力の検出値、並びにブレーキ源強度
    の検出値とに基づいて路面摩擦力に平衡するブレーキ源
    強度を算出して、該路面摩擦力に平衡するブレーキ源強
    度を基準にブレーキ源強度の指示値を決定することを特
    徴とするアンチロックブレーキ装置。
  2. 【請求項2】車輪加速度を検出する手段と、路面摩擦係
    数を検出する手段と、ブレーキ源強度を検出する手段
    と、ブレーキ源強度の指示値にブレーキ源強度を追随さ
    せるブレーキ源強度サーボ機構と、ブレーキ源強度の指
    示値を算出する制御装置とを備え、該制御装置が車輪加
    速度の検出値、路面摩擦係数の検出値、並びにブレーキ
    源強度の検出値とに基づいて路面摩擦係数に平衡するブ
    レーキ源強度を算出して、該路面摩擦係数に平衡するブ
    レーキ源強度を基準にブレーキ源強度の指示値を決定す
    ることを特徴とするアンチロックブレーキ装置。
  3. 【請求項3】制御装置は車輪加速度の絶対値が所定の正
    数よりも小さい時に限りブレーキ源強度の路面摩擦力に
    対する比を計算して当該比の値を更新し、当該比と路面
    摩擦力との積として路面摩擦力に平衡するブレーキ源強
    度を計算し、該路面摩擦力に平衡するブレーキ源強度を
    基準にブレーキ源強度の指示値を決定することを特徴と
    する請求項1に記載のアンチロックブレーキ装置。
  4. 【請求項4】制御装置は車輪加速度の絶対値が所定の正
    数よりも小さい時に限りブレーキ源強度の路面摩擦係数
    に対する比を計算して当該比の値を更新し、当該比と路
    面摩擦係数との積として路面摩擦係数に平衡するブレー
    キ源強度を計算し、該路面摩擦係数に平衡するブレーキ
    源強度を基準にブレーキ源強度の指示値を決定すること
    を特徴とする請求項2に記載のアンチロックブレーキ装
    置。
  5. 【請求項5】制御装置が車輪加速度、路面摩擦力、並び
    にブレーキ源強度の各々の異なる2時点に於ける検出値
    から、車輪加速度、路面摩擦力並びにブレーキ源強度の
    間の線形結合定数を算出し、当該線形結合定数を用いて
    路面摩擦力に平衡するブレーキ源強度を計算し、該路面
    摩擦力に平衡するブレーキ源強度を基準にブレーキ源強
    度の指示値を決定することを特徴とする請求項1に記載
    のアンチロックブレーキ装置。
  6. 【請求項6】制御装置が車輪加速度、路面摩擦係数、並
    びにブレーキ源強度の各々の異なる2時点に於ける検出
    値から、車輪加速度、路面摩擦係数並びにブレーキ源強
    度の間の線形結合定数を算出し、当該線形結合定数を用
    いて路面摩擦係数に平衡するブレーキ源強度を計算し、
    該路面摩擦係数に平衡するブレーキ源強度を基準にブレ
    ーキ源強度の指示値を決定することを特徴とする請求項
    2に記載のアンチロックブレーキ装置。
  7. 【請求項7】路面摩擦力を検出する手段と、スリップ比
    を検出する手段と、ブレーキ源強度を調整するブレーキ
    源強度制御手段とを備え、該ブレーキ源強度制御手段が
    路面摩擦力のスリップ比に対する変化率を算出し、該比
    率が路面摩擦力とスリップ比の所定の関数の値を超えて
    小となるときにブレーキ源強度を強める過程からブレー
    キ源強度を弱める過程に移行することを特徴とするアン
    チロックブレーキ装置。
  8. 【請求項8】路面摩擦係数を検出する手段と、スリップ
    比を検出する手段と、ブレーキ源強度を調整するブレー
    キ源強度制御手段とを備え、該ブレーキ源強度制御手段
    が路面摩擦係数のスリップ比に対する変化率を算出し、
    該比率が路面摩擦係数とスリップ比の所定の関数の値を
    超えて小となるときにブレーキ源強度を強める過程から
    ブレーキ源強度を弱める過程に移行することを特徴とす
    るアンチロックブレーキ装置。
  9. 【請求項9】路面摩擦力を検出する手段と、スリップ比
    を検出する手段と、ブレーキ源強度を調整するブレーキ
    源強度制御手段とを備え、路面摩擦力が最大値(Fp)
    であるときのスリップ比(Sp)に対して路面摩擦力が
    前記Fpの所定の割合まで減少しかつスリップ比が前記
    Spの所定の割合まで減少したときに、前記ブレーキ源
    強度制御手段がブレーキ源強度を弱める過程若しくは保
    持する過程を終了しブレーキ源強度を強める過程へ移行
    することを特徴とするアンチロックブレーキ装置。
  10. 【請求項10】路面摩擦係数を検出する手段と、スリッ
    プ比を検出する手段と、ブレーキ源強度を調整するブレ
    ーキ源強度制御手段とを備え、路面摩擦係数が最大値
    (μp)であるときのスリップ比(Sp)に対して路面
    摩擦係数が前記μpの所定の割合まで減少しかつスリッ
    プ比が前記Spの所定の割合まで減少したときに、前記
    ブレーキ源強度制御手段がブレーキ源強度を弱める過程
    若しくは保持する過程を終了しブレーキ源強度を強める
    過程へ移行することを特徴とするアンチロックブレーキ
    装置。
  11. 【請求項11】路面摩擦力を検出する手段と垂直抗力を
    検出する手段と車体速度を演算する手段とを備え、該車
    体速度を演算する手段が路面摩擦力の所定の車輪につい
    ての総和と垂直抗力の所定の車輪についての総和とから
    車体速度を演算し出力することを特徴とするアンチロッ
    クブレーキ装置。
  12. 【請求項12】路面摩擦力を直接に検出する手段と、ス
    リップ比を検出する手段と、ブレーキ源強度を検出する
    手段と、ブレーキ源強度を調整するブレーキ源強度制御
    手段とを備え、該ブレーキ源強度制御手段が前記路面摩
    擦力、スリップ比、並びにブレーキ源強度とに基づいて
    ブレーキ源強度の調整を行うことを特徴とするアンチロ
    ックブレーキ装置。
  13. 【請求項13】路面摩擦係数を直接に検出する手段と、
    スリップ比を検出する手段と、ブレーキ源強度を検出す
    る手段と、ブレーキ源強度を調整するブレーキ源強度制
    御手段とを備え、該ブレーキ源強度制御手段が前記路面
    摩擦係数、スリップ比、並びにブレーキ源強度とに基づ
    いてブレーキ源強度の調整を行うことを特徴とするアン
    チロックブレーキ装置。
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