JPH05345534A - 車両用左右駆動力調整装置 - Google Patents

車両用左右駆動力調整装置

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JPH05345534A
JPH05345534A JP4155426A JP15542692A JPH05345534A JP H05345534 A JPH05345534 A JP H05345534A JP 4155426 A JP4155426 A JP 4155426A JP 15542692 A JP15542692 A JP 15542692A JP H05345534 A JPH05345534 A JP H05345534A
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speed
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  • Arrangement And Driving Of Transmission Devices (AREA)
  • Retarders (AREA)
  • Arrangement And Mounting Of Devices That Control Transmission Of Motive Force (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、車両用左右駆動力調整装置に関
し、トルクロス等を抑制するとともに種々の路面状態に
も適切に左右輪間のトルク配分制御を行なえるようにす
ることを目的とする。 【構成】 車両の左右の回転軸間に、左右輪15,16
の駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構9をそなえ、
駆動力伝達制御機構9を、左右の回転軸のうちの一方の
回転速度を一定の変速比で変速して出力しうる変速機構
30と、他方の回転軸側と上記変速機構の出力部側との
間で駆動力伝達を行なう伝達容量可変制御式トルク伝達
機構12と、これを制御する制御手段18とから構成
し、制御手段18を、制御中のトルク伝達機構12の差
動状態から車輪がスリップ状態にあると判断すると左右
輪のうち駆動力増加させたい側に駆動力移動を行なう側
とは反対側のトルク伝達機構12を係合させるように制
御するよう構成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、四輪駆動式又は二輪駆
動式の自動車における左右の駆動輪への駆動力配分、又
は、二輪駆動式の自動車における左右の否駆動輪(駆動
輪ではない車輪)間での動力の授受による駆動力配分に
用いて好適の、車両用左右駆動力調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、四輪駆動式自動車(以下、四輪駆
動車という)の開発が盛んに行なわれているが、前後輪
間のトルク配分(駆動力配分)を積極的に調整できるよ
うにした、フルタイム四輪駆動方式の自動車の開発も種
々行なわれている。一方、自動車において、左右輪に伝
達されるトルク配分機構を広義にとらえると従来のノー
マルディファレンシャル装置や電子制御式を含むLSD
(リミテッドスリップデフ)が考えられるが、これらは
トルク配分を積極的に調整するものでなく、左右輪のト
ルクを自由自在に配分できるものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前後輪間の
トルク配分調整装置と並んで、左右輪間のトルク配分を
調整できる装置の開発も期待されている。この場合、四
輪駆動車における左右の駆動輪間のみならず、二輪駆動
車における左右の駆動輪間のトルク配分調整も対照とな
る。
【0004】さらには、トルク配分を、エンジンの出力
トルクの配分のみならず左右の回転軸輪間での動力の授
受によって生じるトルクの伝達状態まで含めるように、
大きくとらえると、二輪駆動車における左右の否駆動輪
(駆動輪ではない車輪)間でトルク配分調整を行なうこ
とも考えられる。つまり、左右の否駆動輪はいずれもエ
ンジンから駆動力を受けないが、これらの否駆動輪のう
ちの一方の否駆動輪から他方の否駆動輪へ動力を伝達す
る状態を実現できれば、一方の否駆動輪側では制動力が
生じるが他方の否駆動輪側では駆動力が発生するように
なる。したがって、左右の否駆動輪間でもトルク配分
(負の駆動力、つまり、制動力も含む)の調整が可能と
なる。
【0005】さらに、かかる車両用左右駆動力調整装置
としては、大きなトルクロスやエネルギロスを招来する
ことなく、トルク配分を行なえるものが望ましい。そこ
で、このような左右の各回転軸間で駆動力を授受するこ
とで左右輪の駆動力を調整しうる駆動力伝達制御装置と
して、上記の左右の各回転軸のうちの一方の回転軸側の
回転速度を一定の変速比で増速又は減速して出力して、
この出力部分と上記の左右の各回転軸のうちの他方の回
転軸側とを例えばスリップクラッチ等のスリップ可能な
カップリングで係合することで、高速回転側から低速回
転側へと駆動トルクを伝達するような構成が考えられ
る。
【0006】例えば左右の各回転軸のうちの一方の回転
軸側の回転速度を一定の変速比で増速して出力すると、
左右輪の回転速度差の小さい通常走行時には、この出力
部分が他方の回転軸側の回転速度よりも高速回転するの
で、この出力部分と他方の回転軸とを係合することで、
高速回転側の出力部分側(即ち、一方の回転軸側)から
低速回転側(即ち、他方の回転軸側)へと、駆動トルク
が伝達される。
【0007】また、左右の各回転軸のうちの一方の回転
軸側の回転速度を一定の変速比で減速して出力すると、
左右輪の回転速度差の小さい通常走行時には、この出力
部分が他方の回転軸側の回転速度よりも低速回転するの
で、この出力部分と他方の回転軸とを係合することで、
高速回転側(即ち、他方の回転軸側)から低速回転側の
出力部分側(即ち、一方の回転軸側)へと、駆動トルク
が伝達される。
【0008】この制御は、スリップクラッチ等では、速
度の速い側から遅い側へのみトルクを伝達するという原
理を利用したものだが、スリップクラッチ等では、これ
と同時に相対回転している部材間の相互のスリップ速度
を減少させるという作用も行なう。このため、左右輪の
うち、トルク配分を増加させたい側の車輪のタイヤのス
リップ率は上昇し、同時にトルク配分を減少させたい側
の車輪のタイヤのスリップ率は下降する。そして、車輪
のタイヤのスリップ率が上昇する側では駆動トルクが増
大して、車輪のタイヤのスリップ率が下降する側では駆
動トルクが減少するのである。
【0009】このようなトルク配分制御を理論どおり行
なうには、タイヤ特性が線形であることが前提となる。
タイヤ特性は、タイヤのスリップ率S(%)と対路面駆
動制御摩擦係数μとの間の関係(μ−S特性)図である
タイヤ特性線図として表すことができ、例えば図20に
示すようになる。なお、摩擦係数μはタイヤの路面反力
に対応するものであり、スリップ率Sはタイヤが駆動状
態にある時と制動状態にある時とで区別して、駆動状態
にある時は、S=(V−VB)/V、駆動状態にある時
は、S=(VB−V)/VBと定義する。
【0010】図20に示すように、スリップ率Sの小さ
い領域(例えばスリップ率が20%程度以下の領域)で
は、摩擦係数μはスリップ率Sの増加に対してほぼ線形
に増加する線形領域であるが、スリップ率Sの大きい領
域(例えばスリップ率が20%程度以上の領域)では、
摩擦係数μはスリップ率Sの増加に対して発散的に減少
してしまう非線形領域となる。
【0011】この非線形領域では、タイヤの路面グリッ
プ力に対してスリップクラッチ等の拘束力が勝ってしま
い、最終的にスリップクラッチがロックして、上述の理
論特性の制御を適用できなくなるのである。本発明は、
このような課題に鑑み創案されたもので、大きなトルク
ロスやエネルギロスや装置の耐久性の低下などを招来す
ることなく、低コストで種々の路面状態において適切に
左右輪間のトルク配分制御を行なえるようにした、車両
用左右駆動力調整装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1にか
かる本発明の車両用左右駆動力調整装置は、車両におけ
る左輪回転軸と右輪回転軸との間に、上記の左右の各回
転軸間で左輪側から右輪側へと駆動力移動を行なって左
右輪間での駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構と、
上記の左右の各回転軸間で右輪側から左輪側へと駆動力
移動を行なって左右輪間での駆動力を調整しうる駆動力
伝達制御機構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、
それぞれ、上記の左右の各回転軸のうちの一方の回転軸
側に連結されてこの一方の回転軸側の回転速度を一定の
変速比で変速して出力しうる変速機構と、上記の左右の
各回転軸のうちの他方の回転軸側と上記変速機構の出力
部側との間に介装されて係合時にこれらの間で高速回転
側から低速回転側へと駆動力の伝達を行ないうる伝達容
量可変制御式トルク伝達機構と、上記伝達容量可変制御
式トルク伝達機構の係合状態を制御する制御手段とから
構成され、上記制御手段が、上記伝達容量可変制御式ト
ルク伝達機構のうち駆動力伝達制御を行なっている側の
伝達容量可変制御式トルク伝達機構における差動状態に
基づいて上記車輪のスリップ状態を判断する車輪スリッ
プ判断手段と、この車輪スリップ判断手段で車輪スリッ
プでないと判断されると上記左右輪のうち駆動力増加さ
せたい側に駆動力移動を行なう側の伝達容量可変制御式
トルク伝達機構を係合させ車輪スリップであると判断さ
れると上記左右輪のうち駆動力増加させたい側に駆動力
移動を行なう側とは反対側の伝達容量可変制御式トルク
伝達機構を係合させるように上記伝達容量可変制御式ト
ルク伝達機構の制御量を設定する制御量設定手段とをそ
なえていることを特徴としている。
【0013】上記の左輪回転軸及び右輪回転軸を共にエ
ンジン出力を与えられて回転する駆動輪に設定すること
ができる。また、請求項3にかかる本発明の車両用左右
駆動力調整装置は、車両における左輪回転軸と右輪回転
軸との間に、エンジンからの駆動力を入力される入力部
と、上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ上記の入
力部から入力された駆動力を上記の左右の各回転軸に伝
達する差動機構と、上記の左右の各回転軸間で左輪側か
ら右輪側へと駆動力移動を行なって左右輪間での駆動力
を調整しうる駆動力伝達制御機構と、上記の左右の各回
転軸間で右輪側から左輪側へと駆動力移動を行なって左
右輪間での駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構とを
そなえ、上記駆動力伝達制御機構が、上記回転軸側に連
結されてこの回転軸側の回転速度を一定の変速比で変速
して出力しうる変速機構と、上記の変速機構の出力部側
と上記入力部側との間に介装されて係合時にこれらの間
で高速回転側から低速回転側へと駆動力の伝達を行ない
うる伝達容量可変制御式トルク伝達機構と、この伝達容
量可変制御式トルク伝達機構の係合状態を制御する制御
手段とから構成され、上記制御手段が、上記伝達容量可
変制御式トルク伝達機構のうち駆動力伝達制御を行なっ
ている側の伝達容量可変制御式トルク伝達機構における
差動状態に基づいて上記車輪のスリップ状態を判断する
車輪スリップ判断手段と、この車輪スリップ判断手段で
車輪スリップでないと判断されると上記左右輪のうち駆
動力増加させたい側に駆動力移動を行なう側の伝達容量
可変制御式トルク伝達機構を係合させ車輪スリップであ
ると判断されると上記左右輪のうち駆動力増加させたい
側に駆動力移動を行なう側とは反対側の伝達容量可変制
御式トルク伝達機構を係合させるように上記伝達容量可
変制御式トルク伝達機構の制御量を設定する制御量設定
手段とをそなえていることを特徴としている。
【0014】さらに、請求項4にかかる本発明の車両用
左右駆動力調整装置は、車両における左輪回転軸と右輪
回転軸との間に、エンジンからの駆動力を入力される入
力部と、上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ上記
の入力部から入力された駆動力を上記の左右の各回転軸
に伝達する差動機構と、上記の左右の各回転軸間で左輪
側から右輪側へと駆動力移動を行なって左右輪間での駆
動力を調整しうる駆動力伝達制御機構と、上記の左右の
各回転軸間で右輪側から左輪側へと駆動力移動を行なっ
て左右輪間での駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構
とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、上記の入力部
側に連結されて該入力部側の回転速度を一定の変速比で
変速して出力しうる変速機構と、上記の変速機構の出力
部側と上記回転軸側との間に介装されて係合時にこれら
の間で高速回転側から低速回転側へと駆動力の伝達を行
ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構と、この伝
達容量可変制御式トルク伝達機構の係合状態を制御する
制御手段とから構成され、上記制御手段が、上記伝達容
量可変制御式トルク伝達機構のうち駆動力伝達制御を行
なっている側の伝達容量可変制御式トルク伝達機構にお
ける差動状態に基づいて上記車輪のスリップ状態を判断
する車輪スリップ判断手段と、この車輪スリップ判断手
段で車輪スリップでないと判断されると上記左右輪のう
ち駆動力増加させたい側に駆動力移動を行なう側の伝達
容量可変制御式トルク伝達機構を係合させ車輪スリップ
であると判断されると上記左右輪のうち駆動力増加させ
たい側に駆動力移動を行なう側とは反対側の伝達容量可
変制御式トルク伝達機構を係合させるように上記伝達容
量可変制御式トルク伝達機構の制御量を設定する制御量
設定手段とをそなえていることを特徴としている。
【0015】
【作用】上述の請求項1にかかる本発明の車両用左右駆
動力調整装置では、駆動力伝達制御機構により、左輪回
転軸と右輪回転軸との間で駆動力の移動を行なうこと
で、左右輪間での駆動力が調整される。この駆動力伝達
制御機構は、制御手段の制御で作動するが、この制御手
段では、車輪スリップ判断手段が伝達容量可変制御式ト
ルク伝達機構のうち駆動力伝達制御を行なっている側の
伝達容量可変制御式トルク伝達機構における差動状態に
基づいて車輪のスリップ状態を判断し、制御量設定手段
で、この車輪スリップ判断手段で車輪スリップでないと
判断されると上記左右輪のうち駆動力増加させたい側に
駆動力移動を行なう側の伝達容量可変制御式トルク伝達
機構を係合させるように伝達容量可変制御式トルク伝達
機構の制御量を設定し、車輪スリップであると判断され
ると上記左右輪のうち駆動力増加させたい側に駆動力移
動を行なう側とは反対側の伝達容量可変制御式トルク伝
達機構を係合させるように伝達容量可変制御式トルク伝
達機構の制御量を設定する。
【0016】したがって、車輪スリップでないときに
は、駆動力を増加させたい側の車輪の回転速度が上昇し
てそのタイヤスリップ率が上昇することによりタイヤか
ら路面へ伝達される駆動力が増加し、これとは反対側
(駆動力を減少させたい側)の車輪の回転速度は下降し
てそのタイヤスリップ率が下降することによりタイヤか
ら路面へ伝達される駆動力が減少する。
【0017】また、車輪スリップであるときには、駆動
力を増加させたい側の車輪の回転速度が下降してそのタ
イヤスリップ率が下降することによりタイヤから路面へ
伝達される駆動力が増加し、これとは反対側(駆動力を
減少させたい側)の車輪の回転速度は上昇してそのタイ
ヤスリップ率が上昇することによりタイヤから路面へ伝
達される駆動力が減少する。
【0018】また、請求項3にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置では、入力軸の駆動力が差動機構を介
して左輪回転軸及び右輪回転軸のそれぞれに伝達される
が、このとき、駆動力伝達制御機構により、左輪回転軸
と右輪回転軸との間で駆動力の移動を行なうことで、左
右輪に出力される駆動力の配分状態が調整される。この
駆動力伝達制御機構は、制御手段の制御で作動するが、
この制御手段では、伝達容量可変制御式トルク伝達機構
のうち駆動力伝達制御を行なっている側の伝達容量可変
制御式トルク伝達機構における差動状態からの車輪スリ
ップ判断手段の判断に基づき、制御量設定手段が、車輪
スリップでないときには、上記左右輪のうち駆動力増加
させたい側に駆動力移動を行なう側の伝達容量可変制御
式トルク伝達機構を係合させるように伝達容量可変制御
式トルク伝達機構の制御量を設定し、車輪スリップであ
るときには、上記左右輪のうち駆動力増加させたい側に
駆動力移動を行なう側とは反対側の伝達容量可変制御式
トルク伝達機構を係合させるように伝達容量可変制御式
トルク伝達機構の制御量を設定する。
【0019】したがって、車輪スリップでないときに
は、駆動力を増加させたい側の車輪の回転速度が上昇し
てそのタイヤスリップ率が上昇することによりタイヤか
ら路面へ伝達される駆動力が増加し、これとは反対側
(駆動力を減少させたい側)の車輪の回転速度は下降し
てそのタイヤスリップ率が下降することによりタイヤか
ら路面へ伝達される駆動力が減少する。
【0020】また、車輪スリップであるときには、駆動
力を増加させたい側の車輪の回転速度が下降してそのタ
イヤスリップ率が下降することによりタイヤから路面へ
伝達される駆動力が増加し、これとは反対側(駆動力を
減少させたい側)の車輪の回転速度は上昇してそのタイ
ヤスリップ率が上昇することによりタイヤから路面へ伝
達される駆動力が減少する。
【0021】さらに、請求項4にかかる本発明の車両用
左右駆動力調整装置では、入力軸の駆動力が差動機構を
介して左輪回転軸及び右輪回転軸のそれぞれに伝達され
るが、このとき、駆動力伝達制御機構により、左輪回転
軸と右輪回転軸との間で駆動力の移動を行なうことで、
左右輪に出力される駆動力の配分状態が調整される。こ
の駆動力伝達制御機構は、制御手段の制御で作動する
が、この制御手段では、伝達容量可変制御式トルク伝達
機構のうち駆動力伝達制御を行なっている側の伝達容量
可変制御式トルク伝達機構における差動状態からの車輪
スリップ判断手段の判断に基づき、制御量設定手段が、
車輪スリップでないときには、上記左右輪のうち駆動力
増加させたい側に駆動力移動を行なう側の伝達容量可変
制御式トルク伝達機構を係合させるように伝達容量可変
制御式トルク伝達機構の制御量を設定し、車輪スリップ
であるときには、上記左右輪のうち駆動力増加させたい
側に駆動力移動を行なう側とは反対側の伝達容量可変制
御式トルク伝達機構を係合させるように伝達容量可変制
御式トルク伝達機構の制御量を設定する。
【0022】したがって、車輪スリップでないときに
は、駆動力を増加させたい側の車輪の回転速度が上昇し
てそのタイヤスリップ率が上昇することによりタイヤか
ら路面へ伝達される駆動力が増加し、これとは反対側
(駆動力を減少させたい側)の車輪の回転速度は下降し
てそのタイヤスリップ率が下降することによりタイヤか
ら路面へ伝達される駆動力が減少する。
【0023】また、車輪スリップであるときには、駆動
力を増加させたい側の車輪の回転速度が下降してそのタ
イヤスリップ率が下降することによりタイヤから路面へ
伝達される駆動力が増加し、これとは反対側(駆動力を
減少させたい側)の車輪の回転速度は上昇してそのタイ
ヤスリップ率が上昇することによりタイヤから路面へ伝
達される駆動力が減少する。
【0024】
【実施例】以下、図面により、本発明の実施例について
説明すると、図1〜6は本発明の第1実施例としての車
両用左右駆動力調整装置を示すもので、図1はその装置
をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成図、図2
はその模式的な要部構成図、図3はその制御系の要部の
模式的な要部構成図、図4はその制御系の推定車体速演
算部を示す模式的な構成図、図5はその制御内容を示す
フローチャート、図6はその要部の制御内容を示すフロ
ーチャートであり、図7,8は本発明の第2実施例とし
ての車両用左右駆動力調整装置を示すもので、図7はそ
の装置をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成
図、図8はその模式的な要部構成図であり、図9は本発
明の第3実施例としての車両用左右駆動力調整装置を示
すその模式的な要部構成図であり、図10は本発明の第
4実施例としての車両用左右駆動力調整装置を示すその
模式的な要部構成図であり、図11は本発明の第5実施
例としての車両用左右駆動力調整装置を示すその模式的
な要部構成図であり、図12は本発明の第6実施例とし
ての車両用左右駆動力調整装置を示すその模式的な要部
構成図であり、図13は本発明の第7実施例としての車
両用左右駆動力調整装置を示すその模式的な要部構成図
であり、図14は本発明の第8実施例としての車両用左
右駆動力調整装置を示すその模式的な要部構成図であ
り、図15は本発明の第9実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示すその模式的な要部構成図であり、図
16は本発明の第10実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示すその模式的な要部構成図であり、図17
は本発明の第11実施例としての車両用左右駆動力調整
装置を示すその模式的な要部構成図であり、図18は本
発明の第12実施例としての車両用左右駆動力調整装置
を示すその模式的な要部構成図であり、図19は本発明
の第13実施例としての車両用左右駆動力調整装置を示
すその模式的な要部構成図である。なお、図中、同符号
は同様なものを示ししている。
【0025】まず、第1実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系は、図1に示すよう
に、エンジン1からの駆動力をトランスミッション2を
介して遊星歯車で構成されたセンタデフ3で受けて、セ
ンタデフ3から、前輪側と後輪側とに伝達するようにな
っている。特に、このセンタデフ3には、前後輪の差動
を適当に制限しうるセンタデフ差動制限機構5が設けら
れている。この差動制限機構5は、ここでは油圧式の多
板クラッチにより構成され、供給油圧に応じて前後輪の
差動を制限しながら、前後輪への駆動力配分を制御でき
るようになっており、前後輪間の駆動力配分を制御する
装置となっている。
【0026】このようにして、センタデフ3から配分さ
れた駆動力の一方は、フロントデフ4を通じて左右の前
輪25,26に伝達されるようになっている。一方、セ
ンタデフ3から配分された駆動力の他方は、プロペラシ
ャフト6を介してリヤデフ8に伝達され、このリヤデフ
8を通じて左右の後輪15,16に伝達されるようにな
っている。なお、符号7はドライブピニオン及びリング
ギヤからなるベベルギヤ機構である。
【0027】リヤデフ8部分には、変速機構30と伝達
容量可変制御式トルク伝達機構(又はトルク伝達機構)
としての多板クラッチ機構12とからなる駆動力伝達制
御機構9B(以下、駆動力伝達制御機構を広義に示す場
合は符号9とする)が設けられ、リヤデフ(差動機構)
8及び駆動力伝達制御機構9Bから車両用左右駆動力調
整装置が構成される。なお、この差動機構8としてここ
ではベベルギヤ式のものが用いられているが、差動機構
8は、2つの駆動軸間の差動を許容しつつエンジンから
入力された駆動力をこれらの各駆動軸に伝達できるもの
であればよく、例えば遊星歯車式のものなど歯車機構あ
るいはローラ機構等からなる他の公知の差動機構を適用
することができるのは勿論のことである。また、この多
板クラッチ機構12は油圧式のもので、油圧を調整され
ることで左右輪への駆動力配分を制御できるようになっ
ている。
【0028】そして、この駆動力伝達制御機構9Bの多
板クラッチ機構12の油圧系は、前述の前後駆動力調整
装置の多板クラッチ機構5の油圧系とともに、制御手段
としてのコントロールユニット18によって制御される
ようになっている。つまり、多板クラッチ機構12の油
圧系及び多板クラッチ機構5の油圧系は、各クラッチ機
構にそれぞれ付設された図示しない油圧室と、油圧源を
構成する電動ポンプ24及びアキュムレータ23と、こ
の油圧を上記の油圧室に所要量だけ供給させるクラッチ
油圧制御バルブ17とからなっている。そして、クラッ
チ油圧制御バルブ17の開度がコントロールユニット1
8によって制御されるようになっている。
【0029】つまり、多板クラッチ機構12の係合状態
は、このクラッチ油圧制御バルブ17の開度調整を通じ
て、コントロールユニット18によって制御されるよう
になっている。なお、コントロールユニット18では、
車輪速センサ19,ハンドル角センサ20,ヨーレイト
センサ21,加速度センサ(又は加速度演算手段)22
などからの情報に基づいて、クラッチ油圧制御バルブ1
7の開度を制御する。
【0030】このコントロールユニット18について
は、後で詳述する。ここで、この車両用左右駆動力調整
装置の要部を説明すると、図2に示すように、プロペラ
シャフト6の後端に設けられて回転駆動力(以下、駆動
力又はトルクという)を入力される入力軸6Aと、入力
軸6Aから入力された駆動力を出力する左輪回転軸(左
後輪15の駆動軸)13と右輪回転軸(右後輪16の駆
動軸)14とが設けられており、左輪回転軸13と右輪
回転軸14と入力軸6Aとの間に車両用左右駆動力調整
装置が介装されている。
【0031】そして、この車両用左右駆動力調整装置の
駆動力伝達制御機構9Bは、次のような構成により、左
輪回転軸13と右輪回転軸14との差動を許容しなが
ら、左輪回転軸13と右輪回転軸14とに伝達される駆
動力を所要の比率に配分できるようになっている。すな
わち、左輪回転軸13と入力軸6Aとの間及び右輪回転
軸14と入力軸6Aとの間に、それぞれ変速機構30と
多板クラッチ機構12とが介装されており、左輪回転軸
13又は右輪回転軸14の回転速度が、変速機構30に
より変速(この例では、増速)されて、変速機構30の
出力部側である中空軸11に伝えられるようになってい
る。
【0032】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデファレンシャルケース(以
下、デフケースと略す)8Aとの間に介装されており、
この多板クラッチ機構12を係合させることで、デフケ
ース8A及び中空軸11のうちの高速回転している方の
部材から低速回転している方の部材へと、駆動力が送給
されるようになっている。これは、対向して配設された
クラッチ板における一般的な特性として、トルクの伝達
が、速度の速い方から遅い方へ行なわれるためである。
なお、この例の場合には、左右の回転軸13,14の間
の差動が大きくてデフケース8Aよりも回転軸13又は
14が所定比(変速機構30の減速比に対応する比)以
上に高速にならない限りは、デフケース8Aが高速側と
なり中空軸11が低速側となって、デフケース8Aから
中空軸11へと駆動力が送給されるようになっている。
【0033】したがって、例えば右輪回転軸14と入力
軸6Aとの間の多板クラッチ機構12が係合されると、
右輪回転軸14へ配分される駆動力は入力軸6A側から
のルートで増加又は減少(この例では主として減少)さ
れて、この分だけ、左輪回転軸13へ配分される駆動力
が減少又は増加(この例では主として増加)する。この
実施例の変速機構30は、2つのプラネタリギヤ機構を
直列的に結合してなるいわゆるダブルプラネタリギヤ機
構で構成されているが、この変速機構30自体は、入力
された回転速度を一定の変速比で加速又は減速して出力
する機構であればよく、例えばベルトやチェーン等を用
いた機構なども考えられ、ギヤ機構に限定されるもので
はない。
【0034】このギヤ機構式の変速機構30を、右輪回
転軸14に設けられたものを例に説明すると次のように
なる。すなわち、右輪回転軸14には第1のサンギヤ3
0Aが固着されており、この第1のサンギヤ30Aは、
その外周において第1のプラネタリギヤ(プラネタリピ
ニオン)30Bに噛合している。また、第1のプラネタ
リギヤ30Bは、第2のプラネタリギヤ30Dと一体に
固着され、共にキャリヤに設けられたピニオンシャフト
30Cを通じて、ケーシング(固定部)に固着されて回
転しないキャリア30Fに枢支されている。これによ
り、第1のプラネタリギヤ30Bと第2のプラネタリギ
ヤ30Dとが、ピニオンシャフト30Cを中心として同
一の回転を行なうようになっている。
【0035】さらに、第2のプラネタリギヤ30Dは、
右輪回転軸14に枢支された第2のサンギヤ30Eに噛
合しており、第2のサンギヤ30Eは、中空軸11を介
して多板クラッチ機構12のクラッチ板12Aに連結さ
れている。また、多板クラッチ機構12の他方のクラッ
チ板12Bは、入力軸6Aにより駆動されるデフケース
8Aに連結されている。
【0036】そして、この実施例の構造では、第1のサ
ンギヤ30Aが第2のサンギヤ30Eよりも大きい径に
形成され、これに応じて第1のプラネタリギヤ30Bが
第2のプラネタリギヤ30Dよりも小さい径に形成され
ている。これにより、第2のサンギヤ30Eの回転速度
は第1のサンギヤ30Aの回転速度よりも大きくなり、
この変速機構30は増速機構としてはたらくようになっ
ている。したがって、クラッチ板12Aの回転速度がク
ラッチ板12Bよりも大きく、例えば右輪側の多板クラ
ッチ機構12を係合させた場合には、この係合状態に応
じた量のトルクが、右輪回転軸14側から入力軸6A側
へ送給されるようになっている。
【0037】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構30及び多板クラッチ機構12も、同様に構成され
ている。したがって、入力軸6Aからの駆動トルクを右
輪回転軸14により多く配分したい場合には、その配分
したい程度(配分比)に応じて左輪回転軸13側の多板
クラッチ機構12を適当に係合し、左輪回転軸13によ
り多く配分したい場合には、その配分比に応じて右輪回
転軸14側の多板クラッチ機構12を適当に係合する。
【0038】このとき、多板クラッチ機構12が油圧駆
動式であるから、油圧の大きさを調整することで多板ク
ラッチ機構12の係合状態を制御でき、入力軸6Aから
左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量
(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整す
ることができるようになっている。なお、左右の多板ク
ラッチ機構12が共に完全係合することのないように設
定されており、左右の多板クラッチ機構12のうち一方
が完全係合したら他方の多板クラッチ機構12は滑りを
生じるようになっている。
【0039】また、前述のコントロールユニット18に
は、図1,3に示すように、目標とする左右輪のトルク
に応じて移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl;た
だし、Trは右輪トルク,Tlは左輪トルク)を設定す
る移動トルク量設定部18Aと、左右輪の車輪速度V
l,Vrに基づいて車輪がスリップ状態にあるか判断す
るスリップ判断部(車輪スリップ判断手段)18Bと、
このスリップ判断部18Bの判断に基づいてクラッチ油
圧制御バルブ17の制御量を設定する制御量設定部(制
御量設定手段)18Cとがそなえられる。
【0040】スリップ判断部18Bでは、左右の油圧多
板クラッチ機構12のうち駆動力伝達制御を行なってい
る側のクラッチ機構12における差動状態に基づいて車
輪のスリップ状態を判断する。つまり、駆動力伝達制御
を行なっている油圧多板クラッチ機構12は、通常クラ
ッチ板12A,12B間を滑らせながら制御を行なうよ
うに、タイヤが路面から受ける抵抗に対して比較的小さ
いトルクでクラッチの係合が行なわれるようになってい
る。したがって、旋回時などに、左右輪間に差動が生じ
たことでクラッチ板12A,12B間の回転速度差が接
近する場合を除いて、通常の路面では、クラッチ板12
A,12Bは、相互に一定以上の差動を生じるものであ
る。
【0041】しかしながら、低μ路でタイヤが滑りやす
いと、タイヤの路面から受ける抵抗が大きく低下するの
で、比較的小さいトルクでクラッチの係合が行なわれ
も、クラッチ板12A,12Bがロック(又はロックに
近い状態)して車輪が路面に対してスリップするように
なる。そこで、車両の旋回時を除いて、駆動力伝達制御
を行なっている側の油圧多板クラッチ機構12におい
て、クラッチ板12A,12Bの差動がほぼ0になる
と、車輪がスリップしていると判断するのである。な
お、クラッチ板12A,12Bの回転速度は、それぞれ
左右輪の回転速度と等しいか又はこれに比例するので、
クラッチ板12A,12Bの回転速度としては、車輪速
センサ19の検出値を利用する。
【0042】ただし、車両が旋回しているかどうかは、
操舵角δが基準値bよりも大きいかどうかで判断でき
る。また、駆動力伝達制御を行なっているかどうかの判
断は、クラッチトルクを与えているかどうか、即ち、右
輪側のクラッチトルクTCRが与えられているか、左輪
側のクラッチトルクTCLが与えられているかで判断で
き、ここでは、TCRが略0でないか又はTCLが略0
でないかにより判断する。この略0でないかの判断は、
TCR>T0 又はTCL>T0 (T0 は0に近い値)と
することができる。
【0043】さらに、クラッチ板12A,12Bの差動
がほぼ0であるかどうかの判断は、右輪側の油圧多板ク
ラッチ機構12における差動をDVR、左輪側の油圧多
板クラッチ機構12における差動をDVLとして、DV
R>a又はDVL>a(aは0に近い閾値)とすること
ができる。DVR,DVLは、車輪速センサ19の検出
値から算出する。
【0044】そして、制御量設定部18Cは、このスリ
ップ判断部18Bで、車輪がスリップ状態にないと判断
すると、線形領域用の制御量を設定し、車輪がスリップ
状態にあると判断すると、非線形領域用の制御量を設定
するようになっている。線形領域用の制御量は、以下の
ように設定されるようになっている。この場合、駆動ト
ルクの移動制御の可能な左右回転速度差範囲を規定する
値(制御可能な最大回転速度比)Smax と車輪の左右輪
速度比αとを比較して、左右輪速度比αが速度比Smax
以下のときの制御と、左右輪速度比αが速度比Smaxよ
り大きいときの制御とに分けられる。なお、速度比Sma
x は、クラッチ板12A側とクラッチ板12Bとが等速
になったときの入力側(つまり、デフケース8A側)の
回転速度Niに対する出力側(つまり、各回転軸13,
14側)の回転速度の変化量ΔNの比(即ち、Smax=
ΔN/Ni)と定義できる。
【0045】そして、Z1 を第1のサンギヤ30Aの歯
数、Z2 を第2のサンギヤ30Eの歯数、Z3 をプラネ
タリギヤ30Bの歯数、Z4 をプラネタリギヤ30Dの
歯数とすると、この実施例の構造の装置では速度比Sma
x は、 Z2 3 /Z1 4 =1−Smax となり、変速機構30の変速比(即ち、ギヤ30A,3
0E,30B及び30Dの設定ギヤ比)に応じて一定値
に決まる。
【0046】一方、車輪の左右輪速度比αは、右輪速度
Vrと左輪速度Vlとの平均車輪速Vav〔=(Vr+
Vl)/2〕に対する車輪速偏差Vd〔=(Vr−V
l)/2〕の割合と定義して、左右輪速度比αは以下の
ごとくあらわせる。 α=Vd/Vav=〔(Vr−Vl)/2〕/〔(Vr+Vl)/2〕 =(Vr−Vl)/(Vr+Vl) ・・・・・・(2) このように、左右輪速度比αは、検出した左右輪の車輪
速値Vl,Vrから時々算出できる。
【0047】そこで、適当な制御周期毎に左右輪速度比
|α|を算出して速度比Smax と比較して、この大小関
係とDTとに応じて、各制御量(右制御量TCR及び左
制御量TCL)を、以下のように設定する。 (i)Smax >|α|ならば、 DT≧0のとき、 TCR=0 TCL=(1−Smax )DT DT<0のとき、 TCR=−(1−Smax )DT TCL=0 (ii)Smax ≦αならば、 DT≧0のとき、 TCR=0 TCL=(1−Smax )DT DT<0のとき、 TCR=0 TCL=0 (iii )−Smax ≧αならば、 DT>0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT≦0のとき、 TCR=−(1−Smax )DT TCL=0 とそれぞれ設定する。
【0048】このようにSmax ≦αでDT<0のとき、
及び、−Smax ≧αでDT>0のときに、両輪側ともク
ラッチトルクを0にして制御を行なっていないが、これ
は、Smax ≦|α|になると、旋回外輪側の駆動力を増
加させることができないので、制御を中止しているので
ある。非線形領域用の制御量は、以下のように設定され
るようになっている。
【0049】 DT>0のとき、 TCR=C TCL=0 DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=0 TCL=C なお、上記のCは一定値であり、例えば可能なクラッチ
制御トルクTの最大値Tmax に設定することが好まし
い。このように、非線形領域用では、極めて大胆に制御
量を設定しているが、これは、非線形領域用では制御量
に対する応答が線形でないので実質的に綿密な制御が困
難なためである。
【0050】本発明の第1実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、例
えば図5に示すように、車輪速センサ19で検出された
左右輪の車輪速Vl,Vrがコントロールユニット18
に入力される(ステップA1)。そして、移動させたい
トルク量DT(=Tr−Tl)を設定する(ステップA
2)。
【0051】続いて、ステップA3〜A7で、スリップ
判断部18Bにより、車輪がスリップしているかを判断
する。つまり、ステップA3で、操舵角δが閾値bより
も大きいかを判断して、操舵角δが閾値bよりも大きい
と旋回中であるから、通常の制御(線形領域の制御)の
ステップA8B進む。
【0052】一方、操舵角δが閾値bよりも大きくない
と、ステップA4に進んで、左輪側のクラッチトルクT
CLが与えられているかどうか即ちTCLが略0になっ
ていない(又はTCL>T0 )かどうかを判断する。T
CLが略0でなくクラッチトルクTCLが与えられてい
れば、ステップA7に進んで、左輪側の油圧多板クラッ
チ機構12における差動DVLが略0でない(又はDV
L>aである)かどうかを判断して、差動が略0でない
と、車輪はスリップしていないとして、線形領域の制御
のステップA8に進む。逆に、差動が略0であると、車
輪はスリップしているとして、非線形領域の制御のステ
ップA9に進む。なお、差動量DVLは車輪速センサ1
9の検出値から算出する。
【0053】ステップA4で、TCLが略0であるとさ
れると、ステップA5に進んで、右輪側のクラッチトル
クTCRが与えられているかどうか即ちTCRが略0に
なっていない(又はTCR>T0 )かどうかを判断す
る。TCRが略0でなくクラッチトルクTCRが与えら
れていれば、ステップA6に進んで、右輪側の油圧多板
クラッチ機構12における差動が略0でない(又はDV
R>aである)かどうかを判断して、差動が略0でない
と、車輪はスリップしていないとして、線形領域の制御
のステップA8に進む。逆に、差動が略0であると、車
輪はスリップしているとして、非線形領域の制御のステ
ップA9に進む。この差動量DVLも車輪速センサ19
の検出値から算出する。
【0054】ステップA8の内容を具体的に説明する
と、例えば図6に示すように、上式(1)によって車輪
速Vl,Vrから左右輪速度比αを算出して(ステップ
S3)、この左右輪速度比αの大きさ|α|と速度比S
max とを比較して(ステップS4)、左右輪速度比|α
|が速度比Smax 以上でないならば、ステップS5に進
み、左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上ならば、ス
テップS7に進む。
【0055】ステップS5では、上述のDTから、右輪
側のクラッチトルクTCR又は左輪側のクラッチトルク
TCLを計算して出力する。つまり、DT>0の場合に
は左輪側のクラッチトルクTCL=(1−Smax )DT
のみを出力して、DT=0の場合にはいずれも出力せ
ず、DT<0の場合には右輪側のクラッチトルクTCR
=−(1−Smax )DTのみを出力する。
【0056】そして、ステップS6に進み、トルク移動
制御禁止フラグFGを0とする。このトルク移動制御禁
止フラグFGは、トルク移動制御を禁止する状態では1
とされ、トルク移動制御を禁止しない状態では0とさ
れ、このフラグFGは、車両に装備されている他の走行
制御にも用いられる。一方、ステップS7に進むと、左
右輪のクラッチトルクの出力をクリヤする。つまり、左
右輪側のクラッチトルクTCL,TCRをともに0にす
るように制御信号を出力する。
【0057】そして、ステップS8に進み、トルク移動
制御禁止フラグFGを0とする。このようにして、線形
領域の制御では、左右輪速度比|α|が速度比Smax 以
上でない通常の走行時には、ブレーキ等のエネルギーロ
スを用いてトルク配分を調整するのでなく、一方のトル
クの所要量を他方に転送することによりトルク配分が調
整されるため、大きなトルクロスやエネルギロスを招来
することなく、所望のトルク配分を得ることができる。
【0058】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0059】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、ステ
ップA9の非線形領域用の制御量の設定は、DT>0の
ときには、右輪側のクラッチトルクTCRをC(Cは例
えばTmax )とし、左輪側のクラッチトルクTCLは0
として、右輪側のクラッチのみを係合制御する。DT=
0のときには、左右輪側のクラッチトルクTCL,TC
Rをともに0にして、左右の両クラッチとも係合させな
い。また、DT<0のときには、左輪側のクラッチトル
クTCRを0とし、左輪側のクラッチトルクTCLをC
として、左輪側のクラッチのみを係合制御する。
【0060】そして、非線形領域用の制御量の設定後に
は、ステップA10に進み、トルク移動制御禁止フラグ
FGを0とする。このような非線形領域では、タイヤの
スリップ率Sを上昇させるとこの車輪の駆動トルクは却
って減少して、逆に、タイヤのスリップ率Sを下降させ
るとこの車輪の駆動トルクが増大する原理により、以下
のように左右輪の駆動力が制御される。
【0061】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、右輪側のクラッチトルクTCRのみを与え
る。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0062】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、左輪側のクラッチトルクTCLのみを与える。こ
のとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較的小さ
いので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速度が低
下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、左
輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0063】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0064】なお、この実施例では、伝達容量可変制御
式トルク伝達機構として油圧式の多板クラッチ機構12
が設けられているが、伝達容量可変制御式トルク伝達機
構としては、伝達トルク容量が可変制御できるトルク伝
達機構であればよく、この例の機構のほかに、電磁式多
板クラッチ機構等の他の多板クラッチ機構や、これらの
多板クラッチ機構の他に、油圧式又は電磁式の摩擦クラ
ッチや、油圧式又は電磁式の制御可能なVCU(ビスカ
スカップリングユニット)や、油圧式又は電磁式の制御
可能なHCU(ハイドーリックカップリングユニット=
差動ポンプ式油圧カップリング)、さらには、電磁流体
式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを
用いることもできる。
【0065】摩擦クラッチの場合、多板クラッチ機構と
同様に油圧等で係合力を調整するものが考えられ、特
に、この摩擦クラッチでは、トルク伝達方向が一方向の
ものを所要の方向(それぞれのトルク伝達方向)向けて
設置することが考えられる。また、このVCUやHCU
には、従来型の動力伝達特性が一定のものも考えられる
が、動力伝達特性を調整できるようにしたものが適して
いる。そして、これらの係合力調整や動力伝達特性の調
整は、油圧による他に、電磁力等の他の駆動系を用いる
ことも考えられる。
【0066】次に、第2実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、図7に
示すようになっており、図1に示す第1実施例のものと
ほぼ同様であるので、ここでは説明を省略する。この駆
動力伝達制御機構9Aでは、図7,8に示すように、変
速機構10が第1実施例のものと異なっており、第1の
サンギヤ10Aが第2のサンギヤ10Eよりも小さい径
に形成されているので、第2のサンギヤ10Eの回転速
度は第1のサンギヤ10Aよりも小さくなり、この変速
機構10は減速機構としてはたらくようになっている。
したがって、左右輪の回転速度差の小さな通常走行時に
は、クラッチ板12Aの回転速度がクラッチ板12Bよ
りも小さくなって、多板クラッチ機構12を係合させた
場合には、この係合状態に応じた量のトルクが、入力軸
6A側から右輪回転軸14側へ増加されるようになって
いる。
【0067】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構10及び多板クラッチ機構12も、同様に構成され
ており、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回転軸13
により多く配分したい場合には、その配分したい程度
(配分比)に応じて右輪回転軸14側の多板クラッチ機
構12を適当に係合し、右輪回転軸14により多く配分
したい場合には、その配分比に応じて左輪回転軸13側
の多板クラッチ機構12を適当に係合する。
【0068】このとき、第1実施例と同様に、多板クラ
ッチ機構12が油圧駆動式であるから、油圧の大きさを
調整することで多板クラッチ機構12の係合状態を制御
でき、入力軸6Aから左輪回転軸13又は右輪回転軸1
4への駆動力の送給量(つまりは駆動力の左右配分比)
を適当な精度で調整することができるようになってい
る。
【0069】また、第1実施例と同様に、コントロール
ユニット18には、目標とする左右輪のトルクに応じて
移動させたいトルク量DT(=Tr−Tl)を設定する
移動トルク量設定部18Aと、左右輪の車輪速度Vl,
Vrに基づいて車輪がスリップ状態にあるか判断するス
リップ判断部(車輪スリップ判断手段)18Bと、この
スリップ判断部18Bの判断に基づいてクラッチ油圧制
御バルブ17の制御量を設定する制御量設定部(制御量
設定手段)18Cとがそなえられる。
【0070】スリップ判断部18Bでは、左右の油圧多
板クラッチ機構12のうち駆動力伝達制御を行なってい
る側のクラッチ機構12における差動状態に基づいて車
輪のスリップ状態を判断する。つまり、駆動力伝達制御
を行なっている油圧多板クラッチ機構12は、通常クラ
ッチ板12A,12B間を滑らせながら制御を行なうよ
うに、タイヤが路面から受ける抵抗に対して比較的小さ
いトルクでクラッチの係合が行なわれるようになってい
る。したがって、旋回時などに、左右輪間に差動が生じ
たことでクラッチ板12A,12B間の回転速度差が接
近する場合を除いて、通常の路面では、クラッチ板12
A,12Bは、相互に一定以上の差動を生じるものであ
る。
【0071】しかしながら、低μ路でタイヤが滑りやす
いと、タイヤの路面から受ける抵抗が大きく低下するの
で、比較的小さいトルクでクラッチの係合が行なわれ
も、クラッチ板12A,12Bがロック(又はロックに
近い状態)して車輪が路面に対してスリップするように
なる。そこで、車両の旋回時を除いて、駆動力伝達制御
を行なっている側の油圧多板クラッチ機構12におい
て、クラッチ板12A,12Bの差動がほぼ0になる
と、車輪がスリップしていると判断するのである。な
お、クラッチ板12A,12Bの回転速度は、それぞれ
左右輪の回転速度と等しいか又はこれに比例するので、
クラッチ板12A,12Bの回転速度としては、車輪速
センサ19の検出値を利用する。
【0072】ただし、車両が旋回しているかどうかは、
操舵角δが基準値bよりも大きいかどうかで判断でき
る。また、駆動力伝達制御を行なっているかどうかの判
断は、クラッチトルクを与えているかどうか、即ち、右
輪側のクラッチトルクTCRが与えられているか、左輪
側のクラッチトルクTCLが与えられているかで判断で
き、ここでは、TCRが略0でないか又はTCLが略0
でないかにより判断する。この略0でないかの判断は、
TCR>T0 又はTCL>T0 (T0 は0に近い値)と
することができる。
【0073】さらに、クラッチ板12A,12Bの差動
がほぼ0であるかどうかの判断は、右輪側の油圧多板ク
ラッチ機構12における差動をDVR、左輪側の油圧多
板クラッチ機構12における差動をDVLとして、DV
R>a又はDVL>a(aは0に近い閾値)とすること
ができる。DVR,DVLは、車輪速センサ19の検出
値から算出する。
【0074】そして、制御量設定部18Cは、このスリ
ップ判断部18Bで、車輪がスリップ状態にないと判断
すると、線形領域用の制御量を設定し、車輪がスリップ
状態にあると判断すると、非線形領域用の制御量を設定
するようになっている。線形領域用の制御量は、以下の
ように設定されるようになっている。つまり、この実施
例でも、速度比Smax と、第1実施例と同様に定義され
右輪速度Vrと左輪速度Vlとから求まる車輪の左右輪
速度比αとを比較して、左右輪速度比αが速度比Smax
以下のときの制御と、左右輪速度比αが速度比Smaxよ
り大きいときの制御とに分けて制御量を設定する。
【0075】なお、この実施例では、速度比Smax は、
次式のように、ギヤ比(即ち、ギヤ10A,10E,1
0B及び10Dの設定ギヤ比)に応じて決まる。 Z2 3 /Z1 4 =1/(Smax +1) (i)Smax >|α|ならば、 DT≧0のとき、 TCR=(1−Smax )DT TCL=0 DT<0のとき、 TCR=0 TCL=−(1−Smax )DT (ii)Smax <αならば、 DT≧0のとき、 TCR=(1−Smax )DT TCL=0 DT<0のとき、 TCR=0 TCL=0 (iii )−Smax ≧αならば、 DT>0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT≦0のとき、 TCR=0 TCL=−(1−Smax )DT とそれぞれ設定する。
【0076】このようにSmax ≦αでDT<0のとき、
及び、−Smax ≧αでDT>0のときに、両輪側ともク
ラッチトルクを0にして制御を行なっていないが、これ
は、Smax ≦|α|になると、旋回外輪側の駆動力を増
加させることができないので、制御を中止しているので
ある。非線形領域用の制御量は、以下のように設定され
るようになっている。
【0077】 DT>0のとき、 TCR=0 TCL=C DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=C TCL=0 なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0078】本発明の第2実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、第
1実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分けて制
御を行なう。線形領域の制御では、左右輪速度比|α|
が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレーキ
等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整するので
なく、一方のトルクの所要量を他方に転送することによ
りトルク配分が調整されるため、大きなトルクロスやエ
ネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分を得
ることができる。
【0079】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0080】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0081】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、左輪側のクラッチトルクTCLのみを与え
る。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0082】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、右輪側のクラッチトルクTCRのみを与える。こ
のとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較的小さ
いので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速度が低
下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、左
輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0083】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0084】この実施例でも、第1実施例と同様に、伝
達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式や電磁
式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の摩擦ク
ラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式あるい
は電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用いるこ
ともできる。次に、第3実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、図1に
示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、ここでは
説明を省略する。
【0085】この駆動力伝達制御機構9Cでは、図9に
示すように、変速機構31及び多板クラッチ機構42が
第1及び第2実施例のものと異なっている。ここでも、
右側の装置について説明する。変速機構31は、入力軸
6A側のデフケース8Aの左右側部にそれぞれ設けら
れ、2組の直列な遊星歯車機構からなり、第1のサンギ
ヤ31Aと第2のサンギヤ31Eと第1のプラネタリギ
ヤ31Bと第2のプラネタリギヤ31Dとピニオンシャ
フト31Cとプラネタリキャリア31Fとからなり、第
1のサンギヤ31Aのプレート部分は駆動力伝達補助部
材41になっている。
【0086】そして、この駆動力伝達補助部材41と右
輪回転軸14との間に、多板クラッチ機構42が介設さ
れる。この多板クラッチ機構42は、回転軸14側のク
ラッチ板42Bと駆動力伝達補助部材41側のクラッチ
板42Bとが交互に重合してなり、図示しない油圧系か
ら供給される油圧に応じて、その係合状態を調整され
る。
【0087】このため、多板クラッチ機構42が係合す
ると、回転軸14側から、多板クラッチ機構42,第1
のサンギヤ31A,第1のプラネタリギヤ31B,第2
のプラネタリギヤ31D,第2のサンギヤ31Eを経
て、入力軸6A側のデフケース8Aへ至る駆動力の伝達
路が形成される。ここでは、第1のサンギヤ31Aが第
2のサンギヤ31Eよりも大きい径に形成されているの
で、第2のサンギヤ31Eの回転速度は第1のサンギヤ
31Aより大きくなり、この変速機構31は駆動力伝達
補助部材41を入力軸6A側よりも減速する減速機構と
してはたらくようになっている。
【0088】したがって、クラッチ板42Aの回転速度
がクラッチ板42Bよりも大きく、多板クラッチ機構4
2を係合させた場合には、この係合状態に応じた量のト
ルクが、右輪回転軸14側から入力軸6A側へ送給(返
送)されるようになっている。一方、左輪回転軸13に
そなえられる変速機構31及び多板クラッチ機構42
も、同様に構成されており、入力軸6Aからの駆動トル
クを左輪回転軸13により多く配分したい場合には、そ
の配分したい程度(配分比)に応じて右輪回転軸14側
の多板クラッチ機構42を適当に係合し、右輪回転軸1
4により多く配分したい場合には、その配分比に応じて
左輪回転軸13側の多板クラッチ機構42を適当に係合
する。
【0089】このとき、多板クラッチ機構42が油圧駆
動式であるから、油圧の大きさを調整することで多板ク
ラッチ機構42の係合状態を制御でき、入力軸6Aから
左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量
(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整す
ることができるようになっている。また、左右の多板ク
ラッチ機構42が共に完全係合することのないように設
定されており、左右の多板クラッチ機構42のうち一方
が完全係合したら他方の多板クラッチ機構42は滑りを
生じるようになっている。
【0090】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0091】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0092】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。非線形領域用の制御量は、以
下のように設定されるようになっている。 DT>0のとき、 TCR=C TCL=0 DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=0 TCL=C なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0093】本発明の第3実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分け
て制御を行なう。線形領域の制御では、左右輪速度比|
α|が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレ
ーキ等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整する
のでなく、一方のトルクの所要量を他方に転送すること
によりトルク配分が調整されるため、大きなトルクロス
やエネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分
を得ることができる。
【0094】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構42の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0095】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0096】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、右輪側のクラッチトルクTCRのみを与え
る。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0097】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、左輪側のクラッチトルクTCLのみを与える。こ
のとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較的小さ
いので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速度が低
下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、左
輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0098】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0099】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第4実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0100】この駆動力伝達制御機構9Dでは、図10
に示すように、第3実施例とほぼ同様に変速機構32及
び多板クラッチ機構42を配置しているが、ここでは、
第1のサンギヤ32Aが第2のサンギヤ32Eよりも小
さい径に形成されている。このため、第2のサンギヤ3
2Eの回転速度は第1のサンギヤ32Aよりも小さくな
り、この変速機構32は駆動力伝達補助部材41を入力
軸6A側よりも増速する増速機構としてはたらくように
なっている。
【0101】したがって、クラッチ板42Aの回転速度
がクラッチ板42Bよりも小さく、多板クラッチ機構4
2を係合させた場合には、この係合状態に応じた量のト
ルクが、入力軸6A側から右輪回転軸14側へ送給され
るようになっている。一方、左輪回転軸13にそなえら
れる変速機構32及び多板クラッチ機構42も、同様に
構成されており、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回
転軸13により多く配分したい場合には、その配分した
い程度(配分比)に応じて左輪回転軸13側の多板クラ
ッチ機構42を適当に係合し、右輪回転軸14により多
く配分したい場合には、その配分比に応じて右輪回転軸
14側の多板クラッチ機構42を適当に係合する。
【0102】なお、多板クラッチ機構42が油圧駆動式
であるから、油圧の大きさを調整することで多板クラッ
チ機構42の係合状態を制御でき、入力軸6Aから左輪
回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量(つ
まりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整するこ
とができるようになっている。また、左右の多板クラッ
チ機構42が共に完全係合することのないように設定さ
れており、左右の多板クラッチ機構42のうち一方が完
全係合したら他方の多板クラッチ機構42は滑りを生じ
るようになっている。
【0103】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0104】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0105】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。非線形領域用の制御量は、以
下のように設定されるようになっている。 DT>0のとき、 TCR=0 TCL=C DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=C TCL=0 なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0106】本発明の第4実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分け
て制御を行なう。線形領域の制御では、左右輪速度比|
α|が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレ
ーキ等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整する
のでなく、一方のトルクの所要量を他方に転送すること
によりトルク配分が調整されるため、大きなトルクロス
やエネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分
を得ることができる。
【0107】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構42の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0108】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0109】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、左輪側のクラッチトルクTCLのみを与え
る。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0110】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、右輪側のクラッチトルクTCRのみを与える。こ
のとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較的小さ
いので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速度が低
下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、左
輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0111】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0112】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第5実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0113】この車両用左右駆動力調整装置にそなえら
れる駆動力伝達制御機構9Eでは、図42に示すよう
に、回転軸13,14と並行に軸(カウンタシャフト)
51が設けられ、この軸51には、中径の歯車52と大
径の歯車53と小径の歯車54とがそなえられ、一方の
回転軸13には、中径の歯車52と噛合する中径の歯車
59がそなえられ、他方の回転軸14には、大径の歯車
53と噛合する小径の歯車55と小径の歯車54と噛合
する大径の歯車56とが設けられる。これらの歯車5
9,52,53,55の組み合わせで、変速機構として
の増速機構が構成され、歯車59,52,54,56の
組み合わせで、変速機構としての減速機構が構成され
る。
【0114】そして、回転軸14と小径の歯車55との
間及び回転軸14と大径の歯車56との間には、それぞ
れ、油圧式の多板クラッチ57,58が介装されてい
る。なお、多板クラッチ57,58を軸51上に設けて
もよい。これにより、軸51は回転軸13と等速で回転
するが、回転軸14の小径の歯車55は、これらの軸5
1や回転軸13よりも高速で回転し、左右輪で差動があ
まり生じない通常走行時には回転軸14よりも高速で回
転する。また、回転軸14の大径の歯車56は、これら
の軸51や回転軸13よりも低速で回転し、左右輪で差
動があまり生じない通常走行時には回転軸14よりも低
速で回転する。
【0115】したがって、多板クラッチ57を係合する
と、回転軸14よりも高速の小径の歯車55側から回転
軸14側へトルクが伝達され、この分だけ回転軸13側
へのトルクが減少する。また、多板クラッチ58を係合
すると、回転軸14側から回転軸14よりも低速の大径
の歯車56側へトルクが返送され、この分だけ回転軸1
3側へのトルクが増加する。
【0116】そして、多板クラッチ機構57,58が油
圧駆動式であるから、油圧の大きさを調整することで多
板クラッチ機構57,58の係合状態を制御でき、入力
軸6Aから左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動
力の送給量(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精
度で調整することができるようになっている。また、2
つの多板クラッチ機構57,58が共に完全係合するこ
とのないように設定されており、2つの多板クラッチ機
構57,58のうち一方が完全係合したら他方は滑りを
生じるようになっている。
【0117】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0118】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0119】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。非線形領域用の制御量は、T
CRを多板クラッチ58の制御量,TCLを多板クラッ
チ57の制御量として、以下のように設定されるように
なっている。
【0120】 DT>0のとき、 TCR=C TCL=0 DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=0 TCL=C なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0121】本発明の第5実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分け
て制御を行なう。線形領域の制御では、左右輪速度比|
α|が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレ
ーキ等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整する
のでなく、一方のトルクの所要量を他方に転送すること
によりトルク配分が調整されるため、大きなトルクロス
やエネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分
を得ることができる。
【0122】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構57,58の係合が解除されて駆動力伝達
制御を中止されるので、トルクを増加させたい外輪側か
らトルクを減少させたい内輪側へとトルク移動してしま
うような不具合が回避される。
【0123】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0124】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、右輪側(多板クラッチ機構58)のクラッチ
トルクTCRのみを与える。このとき、タイヤへの路面
反力が比較的小さいので、適当な係合力以上であれば、
右輪側の速度が低下して、この結果、タイヤへの路面反
力が増加して、右輪側の路面への駆動力伝達量が増加す
る。
【0125】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、左輪側(多板クラッチ機構57)のクラッチトル
クTCLのみを与える。このとき、上記同様に、タイヤ
への路面反力が比較的小さいので、適当な係合力以上で
あれば、左輪側の速度が低下して、この結果、タイヤへ
の路面反力が増加して、左輪側の路面への駆動力伝達量
が増加する。
【0126】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0127】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第6実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0128】この実施例では、図12に示すように、第
1実施例(図1,2参照)と同様に、回転駆動力を入力
される入力軸6Aと、入力軸6Aから入力された駆動力
を出力する左輪回転軸13及び右輪回転軸14とが設け
られており、これらの回転軸13,14と入力軸6Aと
の間に本装置が介装されている。そして、この車両用左
右駆動力調整装置の駆動力伝達制御機構9Fは、次のよ
うな構成により、左輪回転軸13と右輪回転軸14との
差動を許容しながら、左輪回転軸13と右輪回転軸14
とに伝達される駆動力を所要の比率に配分できるように
なっている。
【0129】すなわち、左輪回転軸13と入力軸6Aと
の間及び右輪回転軸14と入力軸6Aとの間に、それぞ
れ変速機構60と多板クラッチ機構12とが介装されて
おり、左輪回転軸13又は右輪回転軸14の回転速度
が、変速機構60により減速されて変速機構の出力部
(駆動力伝達補助部材)としての中空軸11に出力され
るようになっている。
【0130】多板クラッチ機構12は、この中空軸11
と入力軸6A側のデフケース8Aとの間に介装されてお
り、この多板クラッチ機構12を係合させることで、高
速側のデフケース8Aから低速側の中空軸11へ駆動力
が送給されるようになっている。これは、対向して配設
されたクラッチ板における一般的な特性として、トルク
の伝達が、速度の速い方から遅い方へ行なわれるためで
ある。
【0131】したがって、例えば、右輪回転軸14と入
力軸6Aとの間の多板クラッチ機構12が係合される
と、右輪回転軸14へ配分される駆動力は、多板クラッ
チ機構12を介して入力軸6A側からの直接ルートで増
加されて、この分だけ、左輪回転軸13へ配分される駆
動力が増加する。上述の変速機構60は、1つのプラネ
タリギヤ機構で構成されており、右輪回転軸14に設け
られた変速機構60を例に説明すると次のようになる。
【0132】すなわち、右輪回転軸14にはサンギヤ6
0Aが固着されており、このサンギヤ60Aは、その外
周においてプラネタリギヤ(プラネタリピニオン)60
Bに噛合している。プラネタリギヤ60Bを枢支するピ
ニオンシャフト60Cは中空軸11に軸支され、中空軸
11がプラネタリギヤ機構のキャリヤとして機能するよ
うになっている。また、プラネタリギヤ60Bは、駆動
力伝達制御機構9Fのケース等に回転しないように固定
されたリングギヤ60Dに噛合している。
【0133】このようなプラネタリギヤ機構では、プラ
ネタリギヤ60Bの公転速度は、サンギヤ60Aの回転
速度よりも小さいので、中空軸(つまり、変速機構60
の出力部)11は、右輪回転軸14よりも低速で回転す
る。したがって、変速機構60は、減速機構として機能
するようになっている。このため、クラッチ板12Aの
回転速度がクラッチ板12Bよりも小さく、多板クラッ
チ機構12を係合させた場合には、この係合状態に応じ
た量のトルクが、入力軸6A側から右輪回転軸14側へ
送給されるようになっている。
【0134】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構60及び多板クラッチ機構12も、同様に構成され
ており、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回転軸13
により多く配分したい場合には、その配分したい程度
(配分比)に応じて左輪回転軸13側の多板クラッチ機
構12を適当に係合し、右輪回転軸14により多く配分
したい場合には、その配分比に応じて右輪回転軸14側
の多板クラッチ機構12を適当に係合する。
【0135】このとき、多板クラッチ機構12が油圧駆
動式であるから、油圧の大きさを調整することで多板ク
ラッチ機構12の係合状態を制御でき、入力軸6Aから
左輪回転軸13又は右輪回転軸14への駆動力の送給量
(つまりは駆動力の左右配分比)を適当な精度で調整す
ることができるようになっている。なお、左右の多板ク
ラッチ機構12が同時に完全係合することのないように
設定されており、左右の多板クラッチ機構12のうち一
方が完全係合したら他方の多板クラッチ機構12は滑り
を生じるようになっている。
【0136】さらに、常に、左輪回転軸13側の多板ク
ラッチ機構12を係合することで左輪側により多くトル
ク配分でき、右輪回転軸14側の多板クラッチ機構12
を係合することで右輪側により多くトルク配分できるの
で、左輪側へのトルク配分増加も右輪側へのトルク配分
増加も常に行なえる。したがって、旋回時に外輪側への
トルク移動を自由に行なうことができ、例えば、旋回外
輪側の駆動力配分を大きくして左右輪間の駆動力不均衡
により車両に旋回方向へのモーメントを生じさせて旋回
時の回頭性を向上させるなど、車両の旋回性能を向上さ
せることができるのである。
【0137】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0138】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0139】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。非線形領域用の制御量は、以
下のように設定されるようになっている。 DT>0のとき、 TCR=0 TCL=C DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=C TCL=0 なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0140】本発明の第6実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分け
て制御を行なう。線形領域の制御では、左右輪速度比|
α|が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレ
ーキ等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整する
のでなく、一方のトルクの所要量を他方に転送すること
によりトルク配分が調整されるため、大きなトルクロス
やエネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分
を得ることができる。
【0141】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ機構12の係合が解除されて駆動力伝達制御を
中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からトル
クを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよう
な不具合が回避される。
【0142】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0143】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、左輪側のクラッチトルクTCLのみを与え
る。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0144】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、右輪側のクラッチトルクTCRのみを与える。こ
のとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較的小さ
いので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速度が低
下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、左
輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0145】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0146】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第7実施例について説明する
と、この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、
図1に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、こ
こでは説明を省略する。
【0147】この実施例では、図13に示すように、第
1実施例(図1,2参照)と同様に、入力軸6Aと第1
及び右輪回転軸13,14とが設けられており、左輪回
転軸13と右輪回転軸14と入力軸6Aとの間に車両用
左右駆動力調整装置が介装されている。そして、この車
両用左右駆動力調整装置の駆動力伝達制御機構9Gは、
第6実施例(図11参照)と同様の変速機構60をそな
えているが、この変速機構60は入力軸6A側に連結さ
れており、入力軸6A側の回転を増速して回転軸13,
14の側に出力するようになっている。
【0148】そして、第6実施例における多板クラッチ
機構12に代えて、例えば摩擦クラッチ等のカップリン
グ61が、変速機構60の出力部60Aと回転軸13,
14との間に介装されている。摩擦クラッチの場合に
は、トルク伝達方向が一方向のものを所要の方向(それ
ぞれのトルク伝達方向)向けて設置する。変速機構60
は、1つのプラネタリギヤ機構で構成されており、右輪
回転軸14に設けられた変速機構60を例に説明する
と、カップリング61の一方(入力側)にサンギヤ60
Aが固着され、サンギヤ60Aは、その外周においてプ
ラネタリギヤ(プラネタリピニオン)60Bに噛合して
いる。そして、プラネタリギヤ60Bを枢支するピニオ
ンシャフト60Cはデフケース8Aから延設されたキャ
リヤ60Eに軸支されている。また、プラネタリギヤ6
0Bは、駆動力伝達制御機構9Gのケース等に回転しな
いように固定されたリングギヤ60Dに噛合している。
【0149】このようなプラネタリギヤ機構では、プラ
ネタリギヤ60Bの公転速度は、サンギヤ60Aの回転
速度よりも小さいので、サンギヤ60A側(つまり、変
速機構60の出力部)は、中空軸11よりも高速で回転
する。したがって、変速機構60は、増速機構として機
能するようになっている。このため、左右輪の回転差が
小さく、回転軸14がデフケース8Aに近い速度で回転
しているときに、カップリング61を係合させた場合に
は、この係合状態に応じた量のトルクが、デフケース8
A側(つまり、入力軸6A側)から右輪回転軸14側へ
送給されるようになっている。
【0150】一方、左輪回転軸13にそなえられる変速
機構60及びカップリング61も同様に構成されてお
り、入力軸6Aからの駆動トルクを左輪回転軸13によ
り多く配分したい場合には、その配分したい程度(配分
比)に応じて左輪回転軸13側のカップリング61を適
当に係合し、右輪回転軸14により多く配分したい場合
には、その配分比に応じて右輪回転軸14側のカップリ
ング61を適当に係合する。
【0151】このとき、カップリング61の係合状態を
制御することで、入力軸6Aから左輪回転軸13又は右
輪回転軸14への駆動力の送給量(つまりは駆動力の左
右配分比)を適当な精度で調整することができるように
なっている。なお、ここでも、左右のカップリング61
が同時に完全係合することのないように設定されてお
り、左右のカップリング61のうち一方が完全係合した
ら他方は滑りを生じるようになっている。
【0152】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0153】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0154】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。非線形領域用の制御量は、右
側のカップリング係合トルクをTCR,左側のカップリ
ング係合トルクをTCLとして、以下のように設定され
るようになっている。
【0155】 DT>0のとき、 TCR=0 TCL=C DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=C TCL=0 なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0156】本発明の第7実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分け
て制御を行なう。線形領域の制御では、左右輪速度比|
α|が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレ
ーキ等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整する
のでなく、一方のトルクの所要量を他方に転送すること
によりトルク配分が調整されるため、大きなトルクロス
やエネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分
を得ることができる。
【0157】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、カッ
プリング61の係合が解除されて駆動力伝達制御を中止
されるので、トルクを増加させたい外輪側からトルクを
減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうような不
具合が回避される。
【0158】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0159】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、左輪側のカップリングトルクTCLのみを与
える。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0160】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、右輪側のカップリングトルクTCRのみを与え
る。このとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較
的小さいので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速
度が低下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加し
て、左輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0161】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0162】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構や、油圧式や電磁式の摩擦
クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式ある
いは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用いる
こともできる。次に、第8実施例について説明すると、
この装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、図1
に示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、ここで
は説明を省略する。
【0163】この実施例では、図14に示すように、第
1実施例(図1,2参照)と同様に、回転駆動力を入力
される入力軸6Aと、入力軸6Aから入力された駆動力
を出力する左輪回転軸13及び右輪回転軸14とが設け
られており、回転軸13,14と入力軸6Aとの間に車
両用左右駆動力調整装置が介装されている。そして、こ
の車両用左右駆動力調整装置の駆動力伝達制御機構9H
は、次のような構成により、左輪回転軸13と右輪回転
軸14との差動を許容しながら、左輪回転軸13と右輪
回転軸14とに伝達される駆動力を所要の比率に配分で
きるようになっている。
【0164】すなわち、左輪回転軸13と入力軸6Aと
の間及び右輪回転軸14と入力軸6Aとの間に、それぞ
れ変速機構62と多板クラッチ機構12とが介装されて
いるが、この変速機構62は、回転速度を出力部で増速
して出力することと減速して出力することができ、増速
して出力する状態(増速出力状態)と減速して出力する
状態(減速出力状態)とを切り替える切替機構63が付
設されている。このため、変速機構62及び多板クラッ
チ機構12は一方の出力軸側(ここでは、左輪回転軸1
3の側)にそれぞれ1つだけ設けられている。
【0165】上述の変速機構62は、互いに直列に結合
された3組のプラネタリギヤ機構で構成されている。す
なわち、左輪回転軸13の側には、大径のサンギヤ62
Aと小径のサンギヤ62Dとがそなえられ、これらのサ
ンギヤ62A,62Dは、それぞれその外周においてプ
ラネタリギヤ(プラネタリピニオン)62B,62Eに
噛合している。
【0166】これらのプラネタリギヤ62B,62Eは
共通のキャリヤ(固定部)に軸支されたピニオンシャフ
ト62Cに一体回転するように装備されており、サンギ
ヤ62A,62Dの径の関係とは逆に、プラネタリギヤ
62Bは、プラネタリギヤ62Eよりも小径に設定され
ている。さらに、このピニオンシャフト62Cには、も
う1つのプラネタリギヤ62Fが一体回転するように装
備され、このプラネタリギヤ62Fに、中空軸11に固
着されているもう1つのサンギヤ62Gが噛合してい
る。なお、サンギヤ62Gの径はサンギヤ62Aの径よ
りも小さく且つサンギヤ62Dの径よりも大きく設定さ
れ、プラネタリギヤ62Fの径はプラネタリギヤ62B
の径よりも大きくプラネタリギヤ62Eの径よりも小さ
く設定されている。
【0167】そして、サンギヤ62A,62Dと左輪回
転軸13との間に、切替機構63が設けられている。こ
の切替機構63は、電磁式アクチュエータ(ソレノイ
ド)63Aと、このアクチュエータ63Aで駆動される
スライドレバー63Bと、このスライドレバー63Bで
駆動される連結部材63Cと、左輪回転軸13に設けら
れたハブ64と、サンギヤ62Aの内周に設けられたハ
ブ65と、サンギヤ62Dの内周に設けられたハブ66
とから構成される。なお、電磁式アクチュエータ63A
は、コントロールユニット18によって作動を制御され
るようになっている。
【0168】連結部材63Cは、その内周でハブ64と
セレーション結合してこのハブ64と常時一体に回転す
るようになっており、連結部材63Cの軸方向位置に対
応して、その内周でハブ65又はハブ66とセレーショ
ン結合して一体に回転しうるようになっている。つま
り、連結部材63Cが、スライドレバー63Bで後進状
態(図14中、左方に移動した状態)に駆動されると、
その外周がハブ65とセレーション結合してこのハブ6
5と一体に回転し、スライドレバー63Bで前進状態
(図14中、右方に移動した状態)に駆動されると、そ
の外周がハブ66とセレーション結合してこのハブ66
と一体に回転するようになっている。
【0169】したがって、連結部材63Cが後進状態の
ときには、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63
C,ハブ65を介してサンギヤ62Aと連結して、左輪
回転軸13の回転は、サンギヤ62A,プラネタリギヤ
62B,ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ6
2F,サンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力され
る。そして、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Aの径
よりも小さく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタ
リギヤ62Bの径よりも大きいので、サンギヤ62Gは
サンギヤ62Aよりも高速で回転する。即ち、中空軸1
1は左輪回転軸13よりも高速で回転することになり、
変速機構62は増速機構として機能するようになってい
る。
【0170】また、連結部材63Cが前進状態のときに
は、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63C,ハブ
66を介してサンギヤ62Dと連結して、左輪回転軸1
3の回転は、サンギヤ62D,プラネタリギヤ62E,
ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ62F,サ
ンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力される。そし
て、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Dの径よりも大
きく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタリギヤ6
2Eの径よりも小さいので、サンギヤ62Gはサンギヤ
62Dよりも低速で回転する。即ち、中空軸11は左輪
回転軸13よりも低速で回転することになり、変速機構
62は減速機構として機能するようになっている。
【0171】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデフケース8Aとの間に介装
されており、この多板クラッチ機構12を係合させるこ
とで、デフケース8Aと中空軸11との間で駆動力の授
受が行なわれるようになっている。したがって、例え
ば、連結部材63Cを後進状態とすると、変速機構62
の出力部としての中空軸11は左輪回転軸13よりも高
速で回転して、比較的高速の中空軸11側からデフケー
ス8A側へと駆動力が返送され、この分だけ、左輪回転
軸13側へ配分される駆動力が減少して、逆に、右輪回
転軸14側へ配分される駆動力は、この分だけ増加す
る。
【0172】また、例えば、連結部材63Cを前進状態
とすると、変速機構62の出力部としての中空軸11は
左輪回転軸13よりも低速で回転して、比較的高速のデ
フケース8A側から中空軸11側へと駆動力が返送さ
れ、この分だけ、左輪回転軸13側へ配分される駆動力
が増加して、逆に、右輪回転軸14側へ配分される駆動
力は、この分だけ減少する。
【0173】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0174】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0175】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。連結部材63Cを後進状態と
すると、右輪回転軸14側へ配分される駆動力は、この
分だけ増加する。
【0176】非線形領域用の制御量は、連結部材63C
の前進時(右方向への移動時)のクラッチトルクをTC
R,連結部材63Cの後退時(左方向への移動時)のク
ラッチトルクをTCLとして、以下のように設定される
ようになっている。 DT>0のとき、 TCR=C TCL=0 DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=0 TCL=C なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0177】本発明の第8実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分け
て制御を行なう。線形領域の制御では、左右輪速度比|
α|が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレ
ーキ等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整する
のでなく、一方のトルクの所要量を他方に転送すること
によりトルク配分が調整されるため、大きなトルクロス
やエネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分
を得ることができる。
【0178】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ12の係合が解除されて駆動力伝達制御を中止
されるので、トルクを増加させたい外輪側からトルクを
減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうような不
具合が回避される。
【0179】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0180】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、右輪側のカップリングトルクTCRのみを与
える。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0181】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、左輪側のカップリングトルクTCLのみを与え
る。このとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較
的小さいので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速
度が低下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加し
て、左輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0182】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0183】さらに、この実施例では、変速機構62及
び多板クラッチ機構12はそれぞれ1つだけ設ければよ
いので、スペース上やコスト上で有利になる。なお、こ
の実施例でも、第1実施例と同様に、伝達容量可変制御
式トルク伝達機構として、油圧式や電磁式の多板クラッ
チ機構の他に、油圧式や電磁式の摩擦クラッチやVCU
やHCU、さらには、電磁流体式あるいは電磁粉体式ク
ラッチ等の他のカップリングを用いることもできる。
【0184】次に、第9実施例について説明すると、こ
の装置をそなえた自動車の駆動系の全体構成は、図1に
示す第1実施例のものとほぼ同様であるので、ここでは
説明を省略する。この実施例では、図15に示すよう
に、第1実施例(図1,2参照)と同様に、回転駆動力
を入力される入力軸6Aと、入力軸6Aから入力された
駆動力を出力する左輪回転軸13及び右輪回転軸14と
が設けられており、回転軸13,14との間に車両用左
右駆動力調整装置が介装されている。
【0185】そして、この車両用左右駆動力調整装置の
駆動力伝達制御機構9Iは、次のような構成により、左
輪回転軸13と右輪回転軸14との差動を許容しなが
ら、左輪回転軸13と右輪回転軸14とに伝達される駆
動力を所要の比率に配分できるようになっている。すな
わち、左輪回転軸13と右輪回転軸14との間に、それ
ぞれ変速機構99と多板クラッチ機構12とが介装され
ており、この変速機構99は、右輪回転軸14の回転速
度を増速して出力することと減速して出力することがで
き、増速して出力する状態(増速出力状態)と減速して
出力する状態(減速出力状態)とを切り替える切替機構
101が付設されている。このため、変速機構99及び
多板クラッチ機構12はそれぞれ1つだけ設けられてい
る。
【0186】上述の変速機構99は、左輪回転軸13と
これと平行な軸(カウンタシャフト)99Cとの間にそ
れぞれ設けられた3組のギヤ機構で構成されている。す
なわち、カウンタシャフト99Cの側には、小径のギヤ
99Aと大径のギヤ99Bとがそなえられ、左輪回転軸
13には、大径のギヤ14Aと小径のギヤ14Bとがそ
なえられ、ギヤ99Aとギヤ14Aとが噛合し、ギヤ9
9Bとギヤ14Bとが噛合している。ただし、ギヤ99
A,99Bは、カウンタシャフト99Cと切替機構10
1を介して接続され、切替機構101の状態に応じて、
カウンタシャフト99Cに対して相対回転したり、一体
回転しうるようになっている。
【0187】さらに、カウンタシャフト99Cの左輪側
端部には中径のギヤ99Dがそなえられ、左輪回転軸1
3の側には中径のギヤ100Cがそなえられ、これらの
ギヤ99D,100Cが噛合している。そして、ギヤ1
00Cと左輪回転軸13との間に多板クラッチ機構12
が介装されている。また、上述の切替機構101は、電
磁式アクチュエータ(ソレノイド)101Aと、このア
クチュエータ101Aで駆動されるスライドレバー10
1Bと、このスライドレバー101Bで駆動される連結
部材101Cと、カウンタシャフト99Cに設けられた
ハブ67と、ギヤ99Aに結合されたハブ68と、サン
ギヤ99Bに結合されたハブ69とから構成される。な
お、電磁式アクチュエータ101Aは、コントロールユ
ニット18によって作動を制御されるようになってい
る。
【0188】連結部材101Cは、ハブ67とハブ68
とにセレーション結合してこのハブ67とハブ68とを
一体に回転する態位と、ハブ67とハブ69とにセレー
ション結合してこのハブ67とハブ69とを一体に回転
する態位とをとりうるようになっている。つまり、連結
部材101Cが、スライドレバー101Bで後進状態
(図15中、左方に移動した状態)に駆動されると、連
結部材101Cを通じてハブ67とハブ68とが一体に
回転するようになり、スライドレバー101Bで前進状
態(図15中、右方に移動した状態)に駆動されると、
連結部材101Cを通じてハブ67とハブ69とが一体
に回転するようになっている。
【0189】したがって、連結部材101Cが後進状態
のときには、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14A,9
9A,ハブ67,連結部材101C,ハブ68を介して
カウンタシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99
E,100Cを介して多板クラッチ機構12に伝達され
るようになっている。このときには、ギヤ14A,99
A,99E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ
100Cは右輪回転軸14よりも高速で回転する。つま
り、右輪回転軸14の回転は増速されてギヤ100Cに
出力される。
【0190】また、連結部材101Cが前進状態のとき
には、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14B,99B,
ハブ67,連結部材101C,ハブ69を介してカウン
タシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99E,1
00Cを介して多板クラッチ機構12に伝達されるよう
になっている。このときには、ギヤ14B,99B,9
9E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ100
Cは右輪回転軸14よりも低速で回転する。つまり、右
輪回転軸14の回転は減速されてギヤ100Cに出力さ
れる。
【0191】つまり、連結部材101Cが後進状態のと
きに多板クラッチ機構12を係合させると、増速された
ギヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転
軸13の側のクラッチプレートよりも高速回転するの
で、右輪回転軸14側から左輪回転軸13側にトルクが
伝達される。また、連結部材101Cが前進状態のとき
に多板クラッチ機構12を係合させると、減速されたギ
ヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転軸
13の側のクラッチプレートよりも低速回転するので、
左輪回転軸13側から右輪回転軸14側にトルクが伝達
される。
【0192】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0193】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0194】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。連結部材63Cを後進状態と
すると、右輪回転軸14側へ配分される駆動力は、この
分だけ増加する。
【0195】非線形領域用の制御量は、連結部材63C
の前進時(右方向への移動時)のクラッチトルクをTC
R,連結部材63Cの後退時(左方向への移動時)のク
ラッチトルクをTCLとして、以下のように設定される
ようになっている。 DT>0のとき、 TCR=0 TCL=C DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=C TCL=0 なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0196】本発明の第9実施例としての車両用左右駆
動力調整装置は、上述のように構成されているので、前
述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分け
て制御を行なう。線形領域の制御では、左右輪速度比|
α|が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレ
ーキ等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整する
のでなく、一方のトルクの所要量を他方に転送すること
によりトルク配分が調整されるため、大きなトルクロス
やエネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分
を得ることができる。
【0197】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ12の係合が解除されて駆動力伝達制御を中止
されるので、トルクを増加させたい外輪側からトルクを
減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうような不
具合が回避される。
【0198】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0199】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、左輪側のカップリングトルクTCLのみを与
える。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0200】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、右輪側のカップリングトルクTCRのみを与え
る。このとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較
的小さいので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速
度が低下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加し
て、左輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0201】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0202】さらに、この実施例でも、変速機構99及
び多板クラッチ機構12はそれぞれ1つだけ設ければよ
いので、スペース上やコスト上で有利になる。なお、こ
の実施例でも、第1実施例と同様に、伝達容量可変制御
式トルク伝達機構として、油圧式や電磁式の多板クラッ
チ機構の他に、油圧式や電磁式の摩擦クラッチやVCU
やHCU、さらには、電磁流体式あるいは電磁粉体式ク
ラッチ等の他のカップリングを用いることもできる。
【0203】次に、第10実施例について説明すると、
この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車は前輪
駆動車であって、本装置は否駆動輪(エンジン出力を与
えられない車輪)である後輪15,16の側に設けら
れ、その駆動力伝達制御機構90Aは、後輪15,16
の回転軸13,14の間に設けら、第1実施例の駆動力
伝達制御機構9Aを否駆動輪に適用したものである。
【0204】つまり、図16に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、右
輪回転軸14側には変速機構91が設けられ、左輪回転
軸13側には変速機構92が設けられており、変速機構
91の出力部と左輪回転軸13との間には油圧式多板ク
ラッチ機構93が介装され、変速機構92の出力部と左
輪回転軸14と連動して等速回転する中空軸95との間
には第1実施例と同様にコントローラ18で制御される
油圧式多板クラッチ機構94が介装されている。なお、
93A,93B,94A,94Bはクラッチプレートで
ある。
【0205】このうち、変速機構91は、右輪回転軸1
4に一体回転するように取り付けられたサンギヤ91A
と、サンギヤ91Aと噛合するプラネタリギヤ91B
と、このプラネタリギヤ91Bを枢支するプラネタリシ
ャフト91Cに設置されプラネタリギヤ91Bと一体回
転するプラネタリギヤ91Dと、プラネタリギヤ91D
と噛合するサンギヤ93Cとから構成される。
【0206】そして、サンギヤ93Cはサンギヤ91A
よりも大径に設定され、プラネタリギヤ91Dはプラネ
タリギヤ91Bよりも大径に設定され小径に設定されて
いるので、サンギヤ93Cはサンギヤ91Aよりも低速
で回転する。したがって、変速機構91は、右輪回転軸
14の回転を減速してサンギヤ93Cの回転として出力
するようになっている。
【0207】このため、油圧式多板クラッチ機構93が
係合すると、減速されたサンギヤ93C側のクラッチプ
レート93Aよりも左輪回転軸13側のクラッチプレー
ト93Bの方が回転が速いので、左輪回転軸13側から
サンギヤ93C側つまり右輪回転軸14側へ駆動力が伝
達される。この場合、左輪回転軸13及び右輪回転軸1
4は共に否駆動輪の回転軸なのでエンジンからの駆動力
は供給されないが、左輪回転軸13は路面から受ける回
転反力を右輪回転軸14へ与えることになる。つまり、
左輪回転軸13に連結された左輪15は路面に制動力を
与えこの一方で路面から回転反力を受け、右輪回転軸1
4に連結された右輪16は左輪回転軸13側から受けた
駆動力を路面に与えるようになる。制動力は負の駆動力
と考えられるので、否駆動輪でありながら、左輪回転軸
13と右輪回転軸14との駆動力配分が調整されること
になる。
【0208】また、変速機構92は、左輪回転軸14に
一体回転するように取り付けられたサンギヤ92Aと、
サンギヤ92Aと噛合するプラネタリギヤ92Bと、こ
のプラネタリギヤ92Bを枢支するプラネタリシャフト
92Cに設置されプラネタリギヤ92Bと一体回転する
プラネタリギヤ92Dと、プラネタリギヤ92Dと噛合
するサンギヤ94Cとから構成される。
【0209】そして、サンギヤ94Cはサンギヤ92A
よりも大径に設定され、プラネタリギヤ92Dはプラネ
タリギヤ92Bよりも大径に設定され小径に設定されて
いるので、サンギヤ94Cはサンギヤ92Aよりも低速
で回転する。したがって、変速機構92は、左輪回転軸
13の回転を減速してサンギヤ94Cの回転として出力
するようになっている。
【0210】また、油圧式多板クラッチ機構94の一方
のクラッチプレート94Bの取り付けられる中空軸95
は、これと一体回転するサンギヤ95A,このサンギヤ
95Aと噛合してプラネタリシャフト91Cに取り付け
られたプラネタリギヤ91E,プラネタリシャフト91
C,プラネタリギヤ91B及びサンギヤ91Aを介し
て、右輪回転軸14と連係されている。
【0211】そして、サンギヤ95Aがサンギヤ91A
と同径に設定され、プラネタリギヤ91Eがプラネタリ
ギヤ91Bと同径に設定されているので、中空軸95
は、常に右輪回転軸14と等しい速度で連動するように
なっている。このため、油圧式多板クラッチ機構94が
係合すると、減速されたサンギヤ94C側のクラッチプ
レート94Aよりも中空軸95側(つまり、右輪回転軸
14側)のクラッチプレート94Bの方が回転が速いの
で、右輪回転軸14側から左輪回転軸13側へ駆動力が
伝達される。
【0212】この場合にも、左輪回転軸13及び右輪回
転軸14は共に否駆動輪の回転軸なのでエンジンからの
駆動力は供給されないが、右輪回転軸14は路面から受
ける回転反力を左輪回転軸13へ与えることになる。つ
まり、右輪回転軸14に連結された右輪16は路面に制
動力を与えこの一方で路面から回転反力を受け、左輪回
転軸13に連結された左輪15は右輪回転軸14側から
受けた駆動力を路面に与えるようになり、否駆動輪であ
りながら、左輪回転軸13と右輪回転軸14との駆動力
配分が調整されることになる。
【0213】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0214】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0215】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。連結部材63Cを後進状態と
すると、右輪回転軸14側へ配分される駆動力は、この
分だけ増加する。
【0216】非線形領域用の制御量は、右側の多板クラ
ッチ93のクラッチトルクをTCR,右側の多板クラッ
チ94の左側のクラッチトルクをTCLとして、以下の
ように設定されるようになっている。 DT>0のとき、 TCR=0 TCL=C DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=C TCL=0 なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0217】本発明の第10実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上でない通常の走
行時には、エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪で
ありながら、左右駆動力配分を調整できるようになり、
前述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分
けて制御を行なう。
【0218】線形領域の制御では、左右輪速度比|α|
が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレーキ
等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整するので
なく、一方のトルクの所要量を他方に転送することによ
りトルク配分が調整されるため、大きなトルクロスやエ
ネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分を得
ることができる。
【0219】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ93,94の係合が解除されて駆動力伝達制御
を中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からト
ルクを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよ
うな不具合が回避される。
【0220】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0221】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、左輪側のカップリングトルクTCLのみを与
える。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0222】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、右輪側のカップリングトルクTCRのみを与え
る。このとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較
的小さいので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速
度が低下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加し
て、左輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0223】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0224】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第11実施例について説明す
ると、この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車
も前輪駆動車であって、本装置は否駆動輪である後輪1
5,16の側に設けられ、その駆動力伝達制御機構90
Bは、後輪15,16の回転軸13,14の間に設けら
れており、第5実施例の機構9Eを否駆動輪に適用した
ものである。
【0225】つまり、図17に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、こ
れらの回転軸13,14間には変速機構96が設けら
れ、左輪回転軸13側には、変速機構96の増速出力部
との間に油圧式多板クラッチ機構97が設けられ、変速
機構96の減速出力部との間に油圧式多板クラッチ機構
98が設けられている。
【0226】変速機構96は、右輪回転軸14に設けら
れたギヤ14Aと、回転軸13,14と平行に設置され
た軸(カウンタシャフト)96Bと、このカウンタシャ
フト96Bに設けられてギヤ14Aと噛合するギヤ96
Aと、油圧式多板クラッチ機構97を介して左輪回転軸
13側に設けられたギヤ97Cと、油圧式多板クラッチ
機構98を介して左輪回転軸13側に設けられたギヤ9
8Cと、カウンタシャフト96Bに設けられてギヤ97
Cと噛合するギヤ96Cと、カウンタシャフト96Bに
設けられてギヤ98Cと噛合するギヤ96Dとから構成
される。
【0227】そして、ギヤ97Cはギヤ14Aよりも小
径に、ギヤ98Cはギヤ14Aよりも大径に設定され、
ギヤ96Cはギヤ96Aよりも大径に、ギヤ96Dはギ
ヤ96Aよりも小径に設定されている。したがって、ギ
ヤ97Cは、ギヤ14A,ギヤ96A,ギヤ96C,ギ
ヤ97Cのルートで回転力を伝達されて、ギヤ14Aよ
りも高速で回転し、このギヤ97Cが変速機構96の増
速出力部となっている。また、ギヤ98Cは、ギヤ14
A,ギヤ96A,ギヤ96D,ギヤ98Cのルートで回
転力を伝達されて、ギヤ14Aよりも低速で回転し、こ
のギヤ98Cが変速機構96の減速出力部となってい
る。
【0228】このため、油圧式多板クラッチ機構97が
係合すると、増速されたギヤ97C側のクラッチプレー
ト97Bよりも左輪回転軸13側のクラッチプレート9
7Aの方が回転が遅いので、右輪回転軸14側から左輪
回転軸13側へ駆動力が伝達される。逆に、油圧式多板
クラッチ機構98が係合すると、減速されたギヤ98C
側のクラッチプレート98Bよりも左輪回転軸13側の
クラッチプレート98Aの方が回転が速いので、左輪回
転軸13側から右輪回転軸14側へ駆動力が伝達され
る。
【0229】この場合も、左輪回転軸13及び右輪回転
軸14は共に否駆動輪の回転軸なのでエンジンからの駆
動力は供給されないが、駆動力を与える側の回転軸13
又は14は路面から受ける回転反力を一方の回転軸14
又は13へ与えることになる。つまり、駆動力を与える
側の回転軸13又は14に連結された車輪15又は16
は路面に制動力を与えこの一方で路面から回転反力を受
け、駆動力を受ける側の回転軸14又は13に連結され
た右輪16又は15はこの回転反力を受けて駆動力とし
て路面に伝えるようになる。
【0230】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0231】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0232】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。連結部材63Cを後進状態と
すると、右輪回転軸14側へ配分される駆動力は、この
分だけ増加する。
【0233】非線形領域用の制御量は、右側の多板クラ
ッチ97のクラッチトルクをTCR,右側の多板クラッ
チ98の左側のクラッチトルクをTCLとして、以下の
ように設定されるようになっている。 DT>0のとき、 TCR=C TCL=0 DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=0 TCL=C なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0234】本発明の第11実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上でない通常の走
行時には、エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪で
ありながら、左右駆動力配分を調整できるようになり、
前述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分
けて制御を行なう。
【0235】線形領域の制御では、左右輪速度比|α|
が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレーキ
等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整するので
なく、一方のトルクの所要量を他方に転送することによ
りトルク配分が調整されるため、大きなトルクロスやエ
ネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分を得
ることができる。
【0236】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ97,98の係合が解除されて駆動力伝達制御
を中止されるので、トルクを増加させたい外輪側からト
ルクを減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうよ
うな不具合が回避される。
【0237】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0238】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、右輪側のカップリングトルクTCRのみを与
える。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0239】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、左輪側のカップリングトルクTCLのみを与え
る。このとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較
的小さいので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速
度が低下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加し
て、左輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0240】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0241】なお、この実施例でも、第1実施例と同様
に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構として、油圧式
や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油圧式や電磁式の
摩擦クラッチやVCUやHCU、さらには、電磁流体式
あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカップリングを用
いることもできる。次に、第12実施例について説明す
ると、この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車
も前輪駆動車であって、本装置は否駆動輪である後輪1
5,16の側に設けられ、その駆動力伝達制御機構90
Cは、後輪15,16の回転軸13,14の間に設けら
れており、第9実施例の機構9Iを否駆動輪に適用した
ものである。
【0242】つまり、図18に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、こ
れらの左輪回転軸13と右輪回転軸14との間には、変
速機構99と多板クラッチ機構12とが介装されてお
り、この変速機構99は、右輪回転軸14の回転速度を
増速して出力することと減速して出力することができ、
増速して出力する状態(増速出力状態)と減速して出力
する状態(減速出力状態)とを切り替える切替機構10
1が付設されている。このため、変速機構99及び多板
クラッチ機構12はそれぞれ1つだけ設けられている。
【0243】上述の変速機構99は、左輪回転軸13と
これと平行な軸(カウンタシャフト)99Cとの間にそ
れぞれ設けられた3組のギヤ機構で構成されている。す
なわち、カウンタシャフト99Cの側には、小径のギヤ
99Aと大径のギヤ99Bとがそなえられ、左輪回転軸
13には、大径のギヤ14Aと小径のギヤ14Bとがそ
なえられ、ギヤ99Aとギヤ14Aとが噛合し、ギヤ9
9Bとギヤ14Bとが噛合している。
【0244】ただし、ギヤ99A,99Bは、カウンタ
シャフト99Cと切替機構101を介して接続され、切
替機構101の状態に応じて、カウンタシャフト99C
に対して相対回転したり、一体回転しうるようになって
いる。さらに、カウンタシャフト99Cの側には中径の
ギヤ99Eがそなえられ、左輪回転軸13の側には中径
のギヤ100Cがそなえられ、これらのギヤ99E,1
00Cが噛合している。そして、ギヤ100Cと左輪回
転軸13との間に多板クラッチ機構12が介装されてい
る。
【0245】また、上述の切替機構101は、電磁式ア
クチュエータ(ソレノイド)101Aと、このアクチュ
エータ101Aで駆動されるスライドレバー101B
と、このスライドレバー101Bで駆動される連結部材
101Cと、カウンタシャフト99Cに設けられたハブ
67と、ギヤ99Aに結合されたハブ68と、サンギヤ
99Bに結合されたハブ69とから構成される。なお、
電磁式アクチュエータ101Aは、コントロールユニッ
ト18によって作動を制御されるようになっている。
【0246】連結部材101Cは、ハブ67とハブ68
とにセレーション結合してこのハブ67とハブ68とを
一体に回転する態位と、ハブ67とハブ69とにセレー
ション結合してこのハブ67とハブ69とを一体に回転
する態位とをとりうるようになっている。つまり、連結
部材101Cが、スライドレバー101Bで後進状態
(図18中、左方に移動した状態)に駆動されると、連
結部材101Cを通じてハブ67とハブ68とが一体に
回転するようになり、スライドレバー101Bで前進状
態(図18中、右方に移動した状態)に駆動されると、
連結部材101Cを通じてハブ67とハブ69とが一体
に回転するようになっている。
【0247】したがって、連結部材101Cが後進状態
のときには、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14A,9
9A,ハブ67,連結部材101C,ハブ68を介して
カウンタシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99
E,100Cを介して多板クラッチ機構12に伝達され
るようになっている。このときには、ギヤ14A,99
A,99E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ
100Cは右輪回転軸14よりも高速で回転する。つま
り、右輪回転軸14の回転は増速されてギヤ100Cに
出力される。
【0248】また、連結部材101Cが前進状態のとき
には、右輪回転軸14の回転が、ギヤ14B,99B,
ハブ67,連結部材101C,ハブ69を介してカウン
タシャフト99Cに伝達され、さらに、ギヤ99E,1
00Cを介して多板クラッチ機構12に伝達されるよう
になっている。このときには、ギヤ14B,99B,9
9E,100Cの大きさ(歯数)の関係で、ギヤ100
Cは右輪回転軸14よりも低速で回転する。つまり、右
輪回転軸14の回転は減速されてギヤ100Cに出力さ
れる。
【0249】つまり、連結部材101Cが後進状態のと
きに多板クラッチ機構12を係合させると、増速された
ギヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転
軸13の側のクラッチプレートよりも高速回転するの
で、右輪回転軸14側から左輪回転軸13側にトルクが
伝達される。また、連結部材101Cが前進状態のとき
に多板クラッチ機構12を係合させると、減速されたギ
ヤ100Cの側のクラッチプレートの方が、左輪回転軸
13の側のクラッチプレートよりも低速回転するので、
左輪回転軸13側から右輪回転軸14側にトルクが伝達
される。
【0250】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0251】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0252】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。連結部材63Cを後進状態と
すると、右輪回転軸14側へ配分される駆動力は、この
分だけ増加する。
【0253】非線形領域用の制御量は、連結部材63C
の前進時(右方向への移動時)のクラッチトルクをTC
R,連結部材63Cの後退時(左方向への移動時)のク
ラッチトルクをTCLとして、以下のように設定される
ようになっている。 DT>0のとき、 TCR=0 TCL=C DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=C TCL=0 なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0254】本発明の第12実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上でない通常の走
行時には、エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪で
ありながら、左右駆動力配分を調整できるようになり、
前述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分
けて制御を行なう。
【0255】線形領域の制御では、左右輪速度比|α|
が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレーキ
等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整するので
なく、一方のトルクの所要量を他方に転送することによ
りトルク配分が調整されるため、大きなトルクロスやエ
ネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分を得
ることができる。
【0256】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ12の係合が解除されて駆動力伝達制御を中止
されるので、トルクを増加させたい外輪側からトルクを
減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうような不
具合が回避される。
【0257】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0258】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、左輪側のカップリングトルクTCLのみを与
える。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0259】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、右輪側のカップリングトルクTCRのみを与え
る。このとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較
的小さいので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速
度が低下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加し
て、左輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0260】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0261】さらに、変速機構99及び多板クラッチ機
構12はそれぞれ1つだけ設ければよいので、スペース
上やコスト上で有利になる。なお、この実施例でも、第
1実施例と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構
として、油圧式や電磁式の多板クラッチ機構の他に、油
圧式や電磁式の摩擦クラッチやVCUやHCU、さらに
は、電磁流体式あるいは電磁粉体式クラッチ等の他のカ
ップリングを用いることもできる。
【0262】次に、第13実施例について説明すると、
この車両用左右駆動力調整装置をそなえた自動車も前輪
駆動車であって、本装置は否駆動輪である後輪15,1
6の側に設けられ、その駆動力伝達制御機構90Dは、
後輪15,16の回転軸13,14の間に設けられてお
り、第8実施例の機構9Hを否駆動輪に適用したもので
ある。
【0263】つまり、図19に示すように、後輪15,
16の回転軸13,14は、互いに独立しているが、こ
れらの左輪回転軸13と右輪回転軸14との間には、変
速機構62と多板クラッチ機構12とが介装されてい
る。この変速機構62は、回転速度を増速して出力部で
出力することと減速して出力することができ、増速して
出力する状態(増速出力状態)と減速して出力する状態
(減速出力状態)とを切り替える切替機構63が付設さ
れている。このため、変速機構62及び多板クラッチ機
構12は一方の出力軸側(ここでは、左輪回転軸13の
側)にそれぞれ1つだけ設けられている。
【0264】上述の変速機構62は、互いに直列に結合
された3組のプラネタリギヤ機構で構成されている。す
なわち、左輪回転軸13の側には、大径のサンギヤ62
Aと小径のサンギヤ62Dとがそなえられ、これらのサ
ンギヤ62A,62Dは、それぞれその外周においてプ
ラネタリギヤ(プラネタリピニオン)62B,62Eに
噛合している。
【0265】これらのプラネタリギヤ62B,62Eは
共通のキャリヤ(固定部)に軸支されたピニオンシャフ
ト62Cに一体回転するように装備されており、サンギ
ヤ62A,62Dの径の関係とは逆に、プラネタリギヤ
62Bは、プラネタリギヤ62Eよりも小径に設定され
ている。さらに、このピニオンシャフト62Cには、も
う1つのプラネタリギヤ62Fが一体回転するように装
備され、このプラネタリギヤ62Fに、中空軸11に固
着されているもう1つのサンギヤ62Gが噛合してい
る。なお、サンギヤ62Gの径はサンギヤ62Aの径よ
りも小さく且つサンギヤ62Dの径よりも大きく設定さ
れ、プラネタリギヤ62Fの径はプラネタリギヤ62B
の径よりも大きくプラネタリギヤ62Eの径よりも小さ
く設定されている。
【0266】そして、サンギヤ62A,62Dと左輪回
転軸13との間に、切替機構63が設けられている。こ
の切替機構63は、電磁式アクチュエータ(ソレノイ
ド)63Aと、このアクチュエータ63Aで駆動される
スライドレバー63Bと、このスライドレバー63Bで
駆動される連結部材63Cと、左輪回転軸13に設けら
れたハブ64と、サンギヤ62Aの内周に設けられたハ
ブ65と、サンギヤ62Dの内周に設けられたハブ66
とから構成される。なお、電磁式アクチュエータ63A
は、コントロールユニット18によって作動を制御され
るようになっている。
【0267】連結部材63Cは、その内周でハブ64と
セレーション結合してこのハブ64と常時一体に回転す
るようになっており、連結部材63Cの軸方向位置に対
応して、その内周でハブ65又はハブ66とセレーショ
ン結合して一体に回転しうるようになっている。つま
り、連結部材63Cが、スライドレバー63Bで後進状
態(図16中、左方に移動した状態)に駆動されると、
その外周がハブ65とセレーション結合してこのハブ6
5と一体に回転し、スライドレバー63Bで前進状態
(図16中、右方に移動した状態)に駆動されると、そ
の外周がハブ66とセレーション結合してこのハブ66
と一体に回転するようになっている。
【0268】したがって、連結部材63Cが後進状態の
ときには、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63
C,ハブ65を介してサンギヤ62Aと連結して、左輪
回転軸13の回転は、サンギヤ62A,プラネタリギヤ
62B,ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ6
2F,サンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力され
る。そして、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Aの径
よりも小さく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタ
リギヤ62Bの径よりも大きいので、サンギヤ62Gは
サンギヤ62Aよりも高速で回転する。即ち、中空軸1
1は左輪回転軸13よりも高速で回転することになり、
変速機構62は増速機構として機能するようになってい
る。
【0269】また、連結部材63Cが前進状態のときに
は、左輪回転軸13がハブ64,連結部材63C,ハブ
66を介してサンギヤ62Dと連結して、左輪回転軸1
3の回転は、サンギヤ62D,プラネタリギヤ62E,
ピニオンシャフト62Cからプラネタリギヤ62F,サ
ンギヤ62Gを通じて中空軸11に出力される。そし
て、サンギヤ62Gの径がサンギヤ62Dの径よりも大
きく且つプラネタリギヤ62Fの径がプラネタリギヤ6
2Eの径よりも小さいので、サンギヤ62Gはサンギヤ
62Dよりも低速で回転する。即ち、中空軸11は左輪
回転軸13よりも低速で回転することになり、変速機構
62は減速機構として機能するようになっている。
【0270】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデフケース8Aとの間に介装
されており、この多板クラッチ機構12を係合させるこ
とで、デフケース8Aと中空軸11との間で駆動力の授
受が行なわれるようになっている。したがって、例え
ば、連結部材63Cを後進状態とすると、変速機構62
の出力部としての中空軸11は左輪回転軸13よりも高
速で回転して、比較的高速の中空軸11側からデフケー
ス8A側へと駆動力が返送され、この分だけ、左輪回転
軸13側へ配分される駆動力が減少して、逆に、右輪回
転軸14側へ配分される駆動力は、この分だけ増加す
る。
【0271】また、例えば、連結部材63Cを前進状態
とすると、変速機構62の出力部としての中空軸11は
左輪回転軸13よりも低速で回転して、比較的高速のデ
フケース8A側から中空軸11側へと駆動力が返送さ
れ、この分だけ、左輪回転軸13側へ配分される駆動力
が増加して、逆に、右輪回転軸14側へ配分される駆動
力は、この分だけ減少する。
【0272】さらに、この装置でも、前述の各実施例と
同様に、コントロールユニット18には、目標とする左
右輪のトルクに応じて移動させたいトルク量DT(=T
r−Tl)を設定する移動トルク量設定部18Aと、左
右輪の車輪速度Vl,Vrに基づいて車輪がスリップ状
態にあるか判断するスリップ判断部(車輪スリップ判断
手段)18Bと、このスリップ判断部18Bの判断に基
づいてクラッチ油圧制御バルブ17の制御量を設定する
制御量設定部(制御量設定手段)18Cとがそなえられ
る。
【0273】推定車体速演算部216,スリップ判断部
18B及び制御量設定部18Cは、前述の各実施例と同
様に構成される。そして、制御量設定部18Cも、前述
の各実施例と同様に、スリップ判断部18Bで、車輪が
スリップ状態にないと判断すると、線形領域用の制御量
を設定し、車輪がスリップ状態にあると判断すると、非
線形領域用の制御量を設定するようになっている。
【0274】線形領域用の制御量は、左右輪速度比αが
速度比Smax 以下のときの制御と、左右輪速度比αが速
度比Smax より大きいときの制御とに分けて、前述の各
実施例と同様に設定する。連結部材63Cを後進状態と
すると、右輪回転軸14側へ配分される駆動力は、この
分だけ増加する。
【0275】非線形領域用の制御量は、連結部材63C
の前進時(右方向への移動時)のクラッチトルクをTC
R,連結部材63Cの後退時(左方向への移動時)のク
ラッチトルクをTCLとして、以下のように設定される
ようになっている。 DT>0のとき、 TCR=C TCL=0 DT=0のとき、 TCR=0 TCL=0 DT<0のとき、 TCR=0 TCL=C なお、上記のCも、例えば可能なクラッチ制御トルクT
の最大値Tmax 等の一定値である。
【0276】本発明の第13実施例としての車両用左右
駆動力調整装置は、上述のように構成されているので、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上でない通常の走
行時には、エンジンからの駆動力を受けない否駆動輪で
ありながら、左右駆動力配分を調整できるようになり、
前述の各実施例と同様に、線形領域と非線形領域とで分
けて制御を行なう。
【0277】線形領域の制御では、左右輪速度比|α|
が速度比Smax 以上でない通常の走行時には、ブレーキ
等のエネルギーロスを用いてトルク配分を調整するので
なく、一方のトルクの所要量を他方に転送することによ
りトルク配分が調整されるため、大きなトルクロスやエ
ネルギロスを招来することなく、所望のトルク配分を得
ることができる。
【0278】そして、例えば、旋回時に内輪側から外輪
側へトルク移動制御を行なおうとする時、トルクを増加
させたい外輪側の回転速度がトルクを減少させたい内輪
側の車輪の回転速度よりも速くなってしまうと、即ち、
左右輪速度比|α|が速度比Smax 以上になると、多板
クラッチ12の係合が解除されて駆動力伝達制御を中止
されるので、トルクを増加させたい外輪側からトルクを
減少させたい内輪側へとトルク移動してしまうような不
具合が回避される。
【0279】また、この不具合の回避を、変速比Smax
を大きな値にすることなく行なえるので、トルク伝達ロ
スやエネルギロスの増大による燃費の悪化や、多板クラ
ッチ等の装置の構成要素の発熱量の増加による耐久性の
低下などの不具合を抑制することができる。一方、非線
形領域用の制御では、タイヤのスリップ率Sを上昇させ
るとこの車輪の駆動トルクは却って減少して、逆に、タ
イヤのスリップ率Sを下降させるとこの車輪の駆動トル
クが増大する原理により、以下のように左右輪の駆動力
が制御される。
【0280】DT>0のとき、つまり、右輪側に駆動力
を移動させようとするときには、右輪側の速度が低下す
るように、右輪側のカップリングトルクTCRのみを与
える。このとき、タイヤへの路面反力が比較的小さいの
で、適当な係合力以上であれば、右輪側の速度が低下し
て、この結果、タイヤへの路面反力が増加して、右輪側
の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0281】DT=0のときは、制御の必要がなく行な
わない。DT<0のとき、つまり、左輪側に駆動力を移
動させようとするときには、左輪側の速度が低下するよ
うに、左輪側のカップリングトルクTCLのみを与え
る。このとき、上記同様に、タイヤへの路面反力が比較
的小さいので、適当な係合力以上であれば、左輪側の速
度が低下して、この結果、タイヤへの路面反力が増加し
て、左輪側の路面への駆動力伝達量が増加する。
【0282】このようにして、本装置では、タイヤ特性
が線形領域であろうが非線形領域であろうが、つまり、
走行路面の路面μや加速状態の影響を受けることなく、
左右のトルク配分を自由にコントロールできるようにな
り、車両の旋回性等の運動性能の向上や走行安定性の向
上に寄与しうるものである。しかも、左右輪の車輪速を
利用して、車体速度を利用しないで制御を行なえるの
で、車体速度を検出又は算出する装置が不要になり、コ
スト低減に寄与しうる利点もある。
【0283】さらに、変速機構99及び多板クラッチ機
構12はそれぞれ1つだけ設ければよいので、スペース
上やコスト上で有利になる。なお、この実施例でも、第
1実施例と同様に、伝達容量可変制御式トルク伝達機構
として、多板クラッチ機構の他に、摩擦クラッチやVC
UやHCU等の他のカップリングを用いることもでき、
これらの駆動系も、油圧駆動の他に、電磁力駆動等を用
いることも考えられる。
【0284】なお、上述の各実施例では、左右輪の速度
比に基づいて、制御中止条件を設定しているが、左右輪
の速度差に基づいて制御中止条件を設定することも考え
られる。また、上述の各実施例では、車両用左右駆動力
調整装置を後輪に装備しているが、かかる左右駆動力調
整装置は勿論前輪にも適用できる。特に、上述の第1〜
9実施例では、車両用左右駆動力調整装置を四輪駆動車
の後輪の駆動系に装備しているが、かかる左右駆動力調
整装置を四輪駆動車の前輪の駆動系や、後輪駆動車の後
輪の駆動系や、前輪駆動車の前輪の駆動系等に適用でき
る。また、上述の第10〜13実施例では、車両用左右
駆動力調整装置を前輪駆動車の否駆動輪である後輪に装
備しているが、かかる左右駆動力調整装置を後輪駆動車
の否駆動輪である前輪にも適用できる。
【0285】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1の本発明
の車両用左右駆動力調整装置によれば、車両における左
輪回転軸と右輪回転軸との間に、上記の左右の各回転軸
間で左輪側から右輪側へと駆動力移動を行なって左右輪
間での駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構と、上記
の左右の各回転軸間で右輪側から左輪側へと駆動力移動
を行なって左右輪間での駆動力を調整しうる駆動力伝達
制御機構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、それ
ぞれ、上記の左右の各回転軸のうちの一方の回転軸側に
連結されてこの一方の回転軸側の回転速度を一定の変速
比で変速して出力しうる変速機構と、上記の左右の各回
転軸のうちの他方の回転軸側と上記変速機構の出力部側
との間に介装されて係合時にこれらの間で高速回転側か
ら低速回転側へと駆動力の伝達を行ないうる伝達容量可
変制御式トルク伝達機構と、上記伝達容量可変制御式ト
ルク伝達機構の係合状態を制御する制御手段とから構成
され、上記制御手段が、上記車両の車体速度と車輪速度
とに基づいて上記車輪のスリップ状態を判断する車輪ス
リップ判断手段と、この車輪スリップ判断手段で車輪ス
リップでないと判断されると上記左右輪のうち駆動力増
加させたい側に駆動力移動を行なう側の伝達容量可変制
御式トルク伝達機構を係合させ車輪スリップであると判
断されると上記左右輪のうち駆動力増加させたい側に駆
動力移動を行なう側とは反対側の伝達容量可変制御式ト
ルク伝達機構を係合させるように上記伝達容量可変制御
式トルク伝達機構の制御量を設定する制御量設定手段と
をそなえるという構成により、タイヤ特性が線形領域で
あろうが非線形領域であろうが、つまり、走行路面の路
面μや加速状態の影響を受けることなく、左右のトルク
配分を自由にコントロールできるようになり、車両の旋
回性等の運動性能の向上や走行安定性の向上に寄与しう
る利点があり、しかも、低コストで是を実現できる。
【0286】また、上記の左輪回転軸及び右輪回転軸が
共にエンジン出力を与えられて回転する駆動輪に適用で
きるほか、エンジン出力を与えられない否駆動輪である
場合にも適用できる。この場合、否駆動輪でありなが
ら、左右駆動力配分を調整できるようになり、かかる調
整を利用して、例えば、車両の旋回性能を向上させた
り、走行安定性を向上させたりできるようになる。
【0287】また、請求項3にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置によれば、車両における左輪回転軸と
右輪回転軸との間に、エンジンからの駆動力を入力され
る入力部と、上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ
上記の入力部から入力された駆動力を上記の左右の各回
転軸に伝達する差動機構と、上記の左右の各回転軸間で
左輪側から右輪側へと駆動力移動を行なって左右輪間で
の駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構と、上記の左
右の各回転軸間で右輪側から左輪側へと駆動力移動を行
なって左右輪間での駆動力を調整しうる駆動力伝達制御
機構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、上記回転
軸側に連結されてこの回転軸側の回転速度を一定の変速
比で変速して出力しうる変速機構と、上記の変速機構の
出力部側と上記入力部側との間に介装されて係合時にこ
れらの間で高速回転側から低速回転側へと駆動力の伝達
を行ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構と、こ
の伝達容量可変制御式トルク伝達機構の係合状態を制御
する制御手段とから構成され、上記制御手段が、上記車
両の車体速度と車輪速度とに基づいて上記車輪のスリッ
プ状態を判断する車輪スリップ判断手段と、この車輪ス
リップ判断手段で車輪スリップでないと判断されると上
記左右輪のうち駆動力増加させたい側に駆動力移動を行
なう側の伝達容量可変制御式トルク伝達機構を係合させ
車輪スリップであると判断されると上記左右輪のうち駆
動力増加させたい側に駆動力移動を行なう側とは反対側
の伝達容量可変制御式トルク伝達機構を係合させるよう
に上記伝達容量可変制御式トルク伝達機構の制御量を設
定する制御量設定手段とをそなえるという構成により、
タイヤ特性が線形領域であろうが非線形領域であろう
が、つまり、走行路面の路面μや加速状態の影響を受け
ることなく、左右のトルク配分を自由にコントロールで
きるようになり、車両の旋回性等の運動性能の向上や走
行安定性の向上に寄与しうる利点があり、しかも、低コ
ストで是を実現できる。
【0288】また、請求項4にかかる本発明の車両用左
右駆動力調整装置によれば、車両における左輪回転軸と
右輪回転軸との間に、エンジンからの駆動力を入力され
る入力部と、上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ
上記の入力部から入力された駆動力を上記の左右の各回
転軸に伝達する差動機構と、上記の左右の各回転軸間で
左輪側から右輪側へと駆動力移動を行なって左右輪間で
の駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構と、上記の左
右の各回転軸間で右輪側から左輪側へと駆動力移動を行
なって左右輪間での駆動力を調整しうる駆動力伝達制御
機構とをそなえ、上記駆動力伝達制御機構が、上記の入
力部側に連結されて該入力部側の回転速度を一定の変速
比で変速して出力しうる変速機構と、上記の変速機構の
出力部側と上記回転軸側との間に介装されて係合時にこ
れらの間で高速回転側から低速回転側へと駆動力の伝達
を行ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構と、こ
の伝達容量可変制御式トルク伝達機構の係合状態を制御
する制御手段とから構成され、上記制御手段が、上記車
両の車体速度と車輪速度とに基づいて上記車輪のスリッ
プ状態を判断する車輪スリップ判断手段と、この車輪ス
リップ判断手段で車輪スリップでないと判断されると上
記左右輪のうち駆動力増加させたい側に駆動力移動を行
なう側の伝達容量可変制御式トルク伝達機構を係合させ
車輪スリップであると判断されると上記左右輪のうち駆
動力増加させたい側に駆動力移動を行なう側とは反対側
の伝達容量可変制御式トルク伝達機構を係合させるよう
に上記伝達容量可変制御式トルク伝達機構の制御量を設
定する制御量設定手段とをそなえるという構成により、
タイヤ特性が線形領域であろうが非線形領域であろう
が、つまり、走行路面の路面μや加速状態の影響を受け
ることなく、左右のトルク配分を自由にコントロールで
きるようになり、車両の旋回性等の運動性能の向上や走
行安定性の向上に寄与しうる利点があり、しかも、低コ
ストで是を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成
図である。
【図2】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図3】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置の制御系の要部の模式的な要部構成図である。
【図4】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置の制御系の推定車体速演算部を示す模式的な構
成図である。
【図5】本発明の第1実施例としての車両用左右駆動力
調整装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置をそなえた自動車の駆動系を示す模式的な構成
図である。
【図7】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図8】本発明の第2実施例としての車両用左右駆動力
調整装置のトルク伝達を説明する速度線図である。
【図9】本発明の第3実施例としての車両用左右駆動力
調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図10】本発明の第4実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図11】本発明の第5実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図12】本発明の第6実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図13】本発明の第7実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図14】本発明の第8実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図15】本発明の第9実施例としての車両用左右駆動
力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図16】本発明の第10実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図17】本発明の第11実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図18】本発明の第12実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図19】本発明の第13実施例としての車両用左右駆
動力調整装置を示す模式的な要部構成図である。
【図20】タイヤ特性線図の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 エンジン 2 トランスミッション 3 センタデフ 4 フロントデフ 5 センタデフ差動制限機構 6 プロペラシャフト 6A 入力軸 7 ベベルギヤ機構 8 リヤデフ 8A デファレンシャルケース(デフケース) 9,9A〜9I 駆動力伝達制御機構 10 変速機構 10A 第1のサンギヤ 10B 第1のプラネタリギヤ(プラネタリピニオン) 10D 第2のプラネタリギヤ 10C ピニオンシャフト 10F プラネタリキャリア 10E 第2のサンギヤ 11 駆動力伝達補助部材としての中空軸 12 伝達容量可変制御式トルク伝達機構としての多板
クラッチ機構 12A,12B クラッチ板 13 左輪回転軸 14 右輪回転軸 14A,14B ギヤ 15 左後輪 16 右後輪 17 クラッチ油圧制御バルブ 17′ カップリング油圧制御バルブ 18 制御手段としてのコントロールユニット 18A 移動トルク量設定部 18B スリップ判断部(車輪スリップ判断手段) 18C 制御量設定部(制御量設定手段) 19 車輪速センサ 20 ハンドル角センサ 21 ヨーレイトセンサ 22 加速度センサ(又は加速度演算手段) 23 アキュムレータ 24 電動ポンプ 25 左前輪 26 右前輪 30,31,32 変速機構 30A,31A,32A 第1のサンギヤ 30B,31B,32B 第1のプラネタリギヤ(プラ
ネタリピニオン) 30D,31D,32D 第2のプラネタリギヤ 30C,31C,32C ピニオンシャフト 30F,31F,32F プラネタリキャリア 30E,31E,32E 第2のサンギヤ 41 駆動力伝達補助部材 42 伝達容量可変制御式トルク伝達機構としての多板
クラッチ機構 42A,42B クラッチ板 51 軸(カウンタシャフト) 52〜56,59 歯車 57,58 伝達容量可変制御式トルク伝達機構として
の多板クラッチ機構 60 変速機構 60A サンギヤ 60B プラネタリギヤ(プラネタリピニオン) 60C ピニオンシャフト 60D リングギヤ 61 摩擦クラッチ等のカップリング 62 変速機構 62A,62D サンギヤ 62B,62E,62F プラネタリギヤ(プラネタリ
ピニオン) 62C ピニオンシャフト 63 切替機構 63A 電磁式アクチュエータ(ソレノイド) 63B スライドレバー 63C 連結部材 64,65,66,67,68,69 ハブ 90A〜90D 駆動力伝達制御機構 91,92 変速機構 91A,92A ササンギヤ 91B,92B プラネタリギヤ 91C,92C プラネタリシャフト 91D,92D プラネタリギヤ 93,94 伝達容量可変制御式トルク伝達機構として
の多板クラッチ機構 93A,93B,94A,94B クラッチプレート 93C,94C サンギヤ 95 中空軸 96 変速機構 96A,96C,96D,97C,98C ギヤ 96B 軸(カウンタシャフト) 97,98 伝達容量可変制御式トルク伝達機構として
の多板クラッチ機構 97A,97B,98A,98B クラッチプレート 99 変速機構 99C 軸(カウンタシャフト) 99A,99B,99D ギヤ 100C ギヤ 101 切替機構 101A 電磁式アクチュエータ(ソレノイド) 101B スライドレバー 101C 連結部材
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年12月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正内容】
【0009】このようなトルク配分制御を理論どおり行
なうには、タイヤ特性が線形であることが前提となる。
タイヤ特性は、タイヤのスリップ率S(%)と対路面駆
動制御摩擦係数μとの間の関係(μ−S特性)図である
タイヤ特性線図として表すことができ、例えば図20に
示すようになる。なお、摩擦係数μはタイヤの路面反力
に対応するものであり、スリップ率Sはタイヤが駆動状
態にある時と制動状態にある時とで区別して、駆動状態
にある時は、S=(V−VB)/V、動状態にある時
は、S=(VB−V)/VBと定義する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正内容】
【0032】そして、多板クラッチ機構12は、この中
空軸11と入力軸6A側のデファレンシャルケース(以
下、デフケースと略す)8Aとの間に介装されており、
この多板クラッチ機構12を係合させることで、デフケ
ース8A及び中空軸11のうちの高速回転している方の
部材から低速回転している方の部材へと、駆動力が送給
されるようになっている。これは、対向して配設された
クラッチ板における一般的な特性として、トルクの伝達
が、速度の速い方から遅い方へ行なわれるためである。
なお、この例の場合には、左右の回転軸13,14の間
の差動が大きくてデフケース8Aよりも回転軸13又は
14が所定比(変速機構30の減速比に対応する比)以
上に高速にならない限りは、デフケース8Aが速側と
なり中空軸11が速側となって、中空軸11からデフ
ケース8Aへと駆動力が送給されるようになっている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正内容】
【0043】さらに、クラッチ板12A,12Bの差動
がほぼ0であるかどうかの判断は、右輪側の油圧多板ク
ラッチ機構12における差動をDVR、左輪側の油圧多
板クラッチ機構12における差動をDVLとして、|D
VR|>a又は|DVL|>a(aは0に近い閾値)と
することができる。DVR,DVLは、車輪速センサ1
9の検出値から算出する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正内容】
【0047】そこで、適当な制御周期毎に左右輪速度比
|α|を算出して速度比Smax と比較して、この大小関
係とDTとに応じて、各制御量(右制御量TCR及び左
制御量TCL)を、以下のように設定する。 (i)Smax >|α|ならば、 DT≧0のとき、 TCR=0 TCL=(1−Smax )DT DT<0のとき、 TCR=−(1−Smax )DT TCL=0(ii)Smax ≦|α|ならば、 TCR=0 TCL=0 とそれぞれ設定する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正内容】
【0048】このようにSmax ≦|α|のときに、両輪
側ともクラッチトルクを0にして制御を行なっていない
が、これは、Smax ≦|α|になると、旋回外輪側の駆
動力を増加させることができないので、制御を中止して
いるのである。非線形領域用の制御量は、以下のように
設定されるようになっている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正内容】
【0051】続いて、ステップA3〜A7で、スリップ
判断部18Bにより、車輪がスリップしているかを判断
する。つまり、ステップA3で、操舵角δが閾値bより
も大きいかを判断して、操舵角δが閾値bよりも大きい
と旋回中であるから、通常の制御(線形領域の制御)の
ステップA8進む。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正内容】
【0052】一方、操舵角δが閾値bよりも大きくない
と、ステップA4に進んで、左輪側のクラッチトルクT
CLが与えられているかどうか即ちTCLが略0になっ
ていない(又はTCL>T0 )かどうかを判断する。T
CLが略0でなくクラッチトルクTCLが与えられてい
れば、ステップA7に進んで、左輪側の油圧多板クラッ
チ機構12における差動DVLが略0でない(又は|D
VL|>aである)かどうかを判断して、差動が略0で
ないと、車輪はスリップしていないとして、線形領域の
制御のステップA8に進む。逆に、差動が略0である
と、車輪はスリップしているとして、非線形領域の制御
のステップA9に進む。なお、差動量DVLは車輪速セ
ンサ19の検出値から算出する。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正内容】
【0053】ステップA4で、TCLが略0であるとさ
れると、ステップA5に進んで、右輪側のクラッチトル
クTCRが与えられているかどうか即ちTCRが略0に
なっていない(又はTCR>T0 )かどうかを判断す
る。TCRが略0でなくクラッチトルクTCRが与えら
れていれば、ステップA6に進んで、右輪側の油圧多板
クラッチ機構12における差動が略0でない(又は|D
VR|>aである)かどうかを判断して、差動が略0で
ないと、車輪はスリップしていないとして、線形領域の
制御のステップA8に進む。逆に、差動が略0である
と、車輪はスリップしているとして、非線形領域の制御
のステップA9に進む。この差動量DVLも車輪速セン
サ19の検出値から算出する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正内容】
【0073】さらに、クラッチ板12A,12Bの差動
がほぼ0であるかどうかの判断は、右輪側の油圧多板ク
ラッチ機構12における差動をDVR、左輪側の油圧多
板クラッチ機構12における差動をDVLとして、|D
VR|>a又は|DVL|>a(aは0に近い閾値)と
することができる。DVR,DVLは、車輪速センサ1
9の検出値から算出する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正内容】
【0075】なお、この実施例では、速度比Smax は、
次式のように、ギヤ比(即ち、ギヤ10A,10E,1
0B及び10Dの設定ギヤ比)に応じて決まる。 Z2 3 /Z1 4 =1/(Smax +1) (i)Smax >|α|ならば、 DT≧0のとき、 TCR=(1−Smax )DT TCL=0 DT<0のとき、 TCR=0 TCL=−(1−Smax )DT(ii)Smax ≦|α|ならば、 TCR=0 TCL=0 とそれぞれ設定する。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正内容】
【0076】このようにSmax ≦|α|のときに、両輪
側ともクラッチトルクを0にして制御を行なっていない
が、これは、Smax ≦|α|になると、旋回外輪側の駆
動力を増加させることができないので、制御を中止して
いるのである。非線形領域用の制御量は、以下のように
設定されるようになっている。
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
【手続補正13】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正内容】
【図9】
【手続補正14】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正内容】
【図10】

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両における左輪回転軸と右輪回転軸と
    の間に、上記の左右の各回転軸間で左輪側から右輪側へ
    と駆動力移動を行なって左右輪間での駆動力を調整しう
    る駆動力伝達制御機構と、上記の左右の各回転軸間で右
    輪側から左輪側へと駆動力移動を行なって左右輪間での
    駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構とをそなえ、上
    記駆動力伝達制御機構が、それぞれ、上記の左右の各回
    転軸のうちの一方の回転軸側に連結されてこの一方の回
    転軸側の回転速度を一定の変速比で変速して出力しうる
    変速機構と、上記の左右の各回転軸のうちの他方の回転
    軸側と上記変速機構の出力部側との間に介装されて係合
    時にこれらの間で高速回転側から低速回転側へと駆動力
    の伝達を行ないうる伝達容量可変制御式トルク伝達機構
    と、上記伝達容量可変制御式トルク伝達機構の係合状態
    を制御する制御手段とから構成され、上記制御手段が、
    上記伝達容量可変制御式トルク伝達機構のうち駆動力伝
    達制御を行なっている側の伝達容量可変制御式トルク伝
    達機構における差動状態に基づいて上記車輪のスリップ
    状態を判断する車輪スリップ判断手段と、この車輪スリ
    ップ判断手段で車輪スリップでないと判断されると上記
    左右輪のうち駆動力増加させたい側に駆動力移動を行な
    う側の伝達容量可変制御式トルク伝達機構を係合させ車
    輪スリップであると判断されると上記左右輪のうち駆動
    力増加させたい側に駆動力移動を行なう側とは反対側の
    伝達容量可変制御式トルク伝達機構を係合させるように
    上記伝達容量可変制御式トルク伝達機構の制御量を設定
    する制御量設定手段とをそなえていることを特徴とす
    る、車両用左右駆動力調整装置。
  2. 【請求項2】 上記の左輪回転軸及び右輪回転軸が共に
    エンジン出力を与えられて回転する駆動輪であることを
    特徴とする、請求項1に記載された、車両用左右駆動力
    調整装置。
  3. 【請求項3】 車両における左輪回転軸と右輪回転軸と
    の間に、エンジンからの駆動力を入力される入力部と、
    上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ上記の入力部
    から入力された駆動力を上記の左右の各回転軸に伝達す
    る差動機構と、上記の左右の各回転軸間で左輪側から右
    輪側へと駆動力移動を行なって左右輪間での駆動力を調
    整しうる駆動力伝達制御機構と、上記の左右の各回転軸
    間で右輪側から左輪側へと駆動力移動を行なって左右輪
    間での駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構とをそな
    え、上記駆動力伝達制御機構が、上記回転軸側に連結さ
    れてこの回転軸側の回転速度を一定の変速比で変速して
    出力しうる変速機構と、上記の変速機構の出力部側と上
    記入力部側との間に介装されて係合時にこれらの間で高
    速回転側から低速回転側へと駆動力の伝達を行ないうる
    伝達容量可変制御式トルク伝達機構と、この伝達容量可
    変制御式トルク伝達機構の係合状態を制御する制御手段
    とから構成され、上記制御手段が、上記伝達容量可変制
    御式トルク伝達機構のうち駆動力伝達制御を行なってい
    る側の伝達容量可変制御式トルク伝達機構における差動
    状態に基づいて上記車輪のスリップ状態を判断する車輪
    スリップ判断手段と、この車輪スリップ判断手段で車輪
    スリップでないと判断されると上記左右輪のうち駆動力
    増加させたい側に駆動力移動を行なう側の伝達容量可変
    制御式トルク伝達機構を係合させ車輪スリップであると
    判断されると上記左右輪のうち駆動力増加させたい側に
    駆動力移動を行なう側とは反対側の伝達容量可変制御式
    トルク伝達機構を係合させるように上記伝達容量可変制
    御式トルク伝達機構の制御量を設定する制御量設定手段
    とをそなえていることを特徴とする、車両用左右駆動力
    調整装置。
  4. 【請求項4】 車両における左輪回転軸と右輪回転軸と
    の間に、エンジンからの駆動力を入力される入力部と、
    上記の左右の回転軸間の差動を許容しつつ上記の入力部
    から入力された駆動力を上記の左右の各回転軸に伝達す
    る差動機構と、上記の左右の各回転軸間で左輪側から右
    輪側へと駆動力移動を行なって左右輪間での駆動力を調
    整しうる駆動力伝達制御機構と、上記の左右の各回転軸
    間で右輪側から左輪側へと駆動力移動を行なって左右輪
    間での駆動力を調整しうる駆動力伝達制御機構とをそな
    え、上記駆動力伝達制御機構が、上記の入力部側に連結
    されて該入力部側の回転速度を一定の変速比で変速して
    出力しうる変速機構と、上記の変速機構の出力部側と上
    記回転軸側との間に介装されて係合時にこれらの間で高
    速回転側から低速回転側へと駆動力の伝達を行ないうる
    伝達容量可変制御式トルク伝達機構と、この伝達容量可
    変制御式トルク伝達機構の係合状態を制御する制御手段
    とから構成され、上記制御手段が、上記伝達容量可変制
    御式トルク伝達機構のうち駆動力伝達制御を行なってい
    る側の伝達容量可変制御式トルク伝達機構における差動
    状態に基づいて上記車輪のスリップ状態を判断する車輪
    スリップ判断手段と、この車輪スリップ判断手段で車輪
    スリップでないと判断されると上記左右輪のうち駆動力
    増加させたい側に駆動力移動を行なう側の伝達容量可変
    制御式トルク伝達機構を係合させ車輪スリップであると
    判断されると上記左右輪のうち駆動力増加させたい側に
    駆動力移動を行なう側とは反対側の伝達容量可変制御式
    トルク伝達機構を係合させるように上記伝達容量可変制
    御式トルク伝達機構の制御量を設定する制御量設定手段
    とをそなえていることを特徴とする、車両用左右駆動力
    調整装置。
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EP93304659A EP0575152B1 (en) 1992-06-15 1993-06-15 Left/right drive torque adjusting apparatus for vehicle and left/right drive torque adjusting method for vehicle
KR1019930011095A KR960004984B1 (ko) 1992-06-15 1993-06-15 차량용 좌우 구동력 조정 장치 및 방법
DE69304144T DE69304144T2 (de) 1992-06-15 1993-06-15 Vorrichtung und Verfahren zur Verteilung des Antriebsmomentes auf das rechte/linke Rad eines Kraftfahrzeuges
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7032699B2 (en) 2001-12-25 2006-04-25 Jtekt Corporation Drive transmission apparatus for vehicle and a four-wheel drive vehicle
JP2007321984A (ja) * 2006-05-30 2007-12-13 Getrag Driveline Systems Gmbh 駆動トルクの配分方法
CN103465778A (zh) * 2013-09-24 2013-12-25 湖南大学 动力传动机构及混合动力汽车
WO2023209814A1 (ja) * 2022-04-26 2023-11-02 ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド 可変特性リミテッドスリップデファレンシャル

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