JPH053383Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、車両の自動変速機の電気系統が故障
して自動変速操作ができなくなつた時の非常用コ
ントロール装置に関する。更に詳しくは非常用コ
ントロールノブの復帰操作忘れ時の車両走行を禁
止する非常用コントロール装置に関するものであ
る。

［従来の技術］ この種の自動変速機は極めて高い信頼性の油圧
系を基に、この油圧系を電気的に制御することに
より自動化を実現している。このため従来より自
動変速機には、その電気系統が故障して自動変速
操作ができなくなつた時に、車両を自走可能にす
る非常用コントロール装置が付加されている。こ
の非常用コントロール装置は、車両の電気系によ
らず、油圧系のみによつて自動変速機のシフト機
構及びセレクト機構を作動させて、変速ギヤ位置
を強制的に１速段又は後退段に切換えるものであ
る。

従来の非常用コントロール装置は手動変速切換
弁とこの切換弁を操作する非常用コントロールノ
ブを備える。このノブは運転席に設けられたハウ
ジングに収容され、非常時のみしか操作できない
ように、通常時には開閉可能なカバーで覆われて
いる。手動変速切換弁はギヤ位置を変えるアクチ
ユエータ機構と、これを油圧制御する制御機構及
び油圧源との間の油圧回路に設けられる。手動変
速切換弁は複数の切換弁からなり、ノブを引出し
たり、押込むことによつてシフト用アクチユエー
タ及びセレクト用アクチユエータに供給する油圧
の方向を切換えるようになつており、押込んだ位
置ではマイクロコンピユータの制御によつてアク
チユエータ機構を操作する通常動作を行わせ、引
出した位置では油圧源を直接アクチユエータ機構
に導くことによつてギヤ位置を強制的に１速段又
は後退段に切換える非常動作を行わせるようにな
つている。

一方、本出願人は変速操作が電気回路とエア回
路によつて行われる電子制御変速機の非常用制御
装置を出願した（実開昭62−44161）。この装置
は、主コントローラがレバー位置センサ及びギヤ
位置センサの出力に基づいて変速機を所定のギヤ
位置にシフトするようにシフトアクチユエータ及
びセレクトアクチユエータを制御し、非常用コン
トローラが非常用スイツチの切換出力に基づいて
主コントローラの制御を禁止しかつギヤ位置を強
制的に１速段又は後退段にシフトするようにシフ
トアクチユエータ及びセレクトアクチユエータを
制御し、非常用コントローラに変速ギヤをシフト
するシフトユニツトのニユートラル時に閉成する
ニユートラルスイツチとシフトユニツトの１速段
又は後退段のセレクト時に閉成するセレクトスイ
ツチとが設けられる。

この装置では、非常時に非常用スイツチを１速
段又は後退段に切換えると、シフトユニツトのシ
フト動作、セレクト動作が順次完了した後に所定
の１速段又は後退段にシフトされるため、非常時
の動作時間が短縮され、かつ単一の操作で確実に
変速機を非常用のギヤ位置にシフトすることがで
きるようになつている。またシフトユニツトがニ
ユートラル状態になつたときに運転席に設けられ
た非常用表示器が点灯するようになつている。

［考案が解決しようとする課題］ しかし、上記非常用コントロール装置では、非
常用コントロールノブを操作して車両を安全な場
所に移動してエンジンを停止し、故障した自動変
速機の電気系統を修理した後、上記ノブを通常位
置に戻さずにエンジンを始動すると、運転者の予
期しない方向に車両が発進する恐れがあつた。

また、上記電子制御変速機の非常用制御装置で
は、電子制御変速機の電気系統が故障すると非常
用コントローラが作動しなくなり、非常用スイツ
チを１速段又は後退段に切換えても変速機を１速
段又は後退段にシフトできない問題点があつた。
また故障した変速機の電気系統を修理した後、運
転者が非常用表示器の点灯に気付かずに、即ち非
常用スイツチをオフ状態に戻さずに変速機が１速
段又は後退段に切換わつたまま、エンジンを始動
すると、運転者の予期しない方向に発進する恐れ
があつた。

本考案の目的は、自動変速制御系、特に自動変
速機の電気系統が故障しても確実に１速段又は後
退段にシフトでき、非常用コントロールノブを操
作してこのノブが元の通常位置に戻つていない場
合に車両走行を禁止する自動変速機の非常用コン
トロール装置を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本考案の構成を実
施例に相応する第１図及び第３図に基づいて説明
する。

本考案は、車両の自動変速機のギヤ位置を変え
るアクチユエータ機構２０とこのアクチユエータ
機構２０を自動変速制御する油圧制御機構３０と
の間の油圧回路に設けられた手動変速切換弁１０
と、手動変速切換弁１０を操作する非常用コント
ロールノブ１１とを備え、ノブ１１が油圧制御機
構３０によるアクチユエータ機構２０の自動変速
制御を可能にする通常位置と自動変速制御系の異
常時に強制的に自動変速機を１速段又は後退段に
シフトさせる非常位置とに切換可能に構成された
自動変速機の非常用コントロール装置の改良であ
る。

その特徴ある構成は、ノブ１１が通常位置にあ
るときにはオン状態になり非常位置にあるときに
はオフ状態になる検出スイツチ１９が車両のスタ
ータモータ２３のリレースイツチ２４のコイル部
に直列に接続されたところにある。

［作用］ 自動変速制御系の異常時に非常用コントロール
ノブ１１を通常位置から非常位置に切換えると、
手動変速切換弁１０が強制的にアクチユエータ機
構２０を介して自動変速機を１速段又は後退段に
シフトさせる。またノブ１１を非常位置に切換え
ると同時に検出スイツチ１９がオフ状態になるの
で、ノブ１１が非常位置にある状態でエンジンを
始動しようとしてもエンジンは始動しない。この
結果、ノブ１１を通常位置に切換えるように運転
者に気付かせることができる。

［実施例］ 次に本考案の実施例を図面に基づいて詳しく説
明する。

第１図に示すように、本考案の非常用コントロ
ール装置は、手動変速切換弁１０とこの切換弁１
０を操作する非常用コントロールノブ１１とを備
える。手動変速切換弁１０はギヤ位置を変えるア
クチユエータ機構２０とこれを自動変速制御する
油圧制御機構３０との間の油圧回路に設けられ
る。アクチユエータ機構２０はセレクトシリンダ
２１とシフトシリンダ２２からなる。セレクトシ
リンダ２１は３つのポートＡ，Ｂ及びＣを有し、
これらのポートへの高圧オイルの出入により、ピ
ストンロツド２１ａを第２図に示すシフトパター
ンの後退段の位置、１速段若しくは２速段の
位置、３速段若しくは４速段の位置、５速段
若しくは６速段の位置にそれぞれ選択できるよう
になつている。またシフトシリンダ２２は２つの
ポートＤ及びＥを有し、これらのポートへの高圧
オイルの出入により、ピストンロツド２２ａを第
２図に示すシフトパターンの後退段若しくは２
速、４速、６速の各段の位置、中立の位置、
１速段若しくは、３速、５速の各段の位置にそれ
ぞれ選択できるようになつている。各ピストンロ
ツド２１ａ，２２ａの先端には図外のギヤの変速
機構が設けられる。

また制御機構３０はセレクトシリンダ用電磁弁
３１，３２及び３３と、シフトシリンダ用電磁弁
３４及び３５とからなる。これらの電磁弁３１〜
３５は自動変速制御を行なう場合に図外のコンピ
ユータの制御出力によりオイルの流路を切換える
ようになつており、予め設定されている自動変速
プログラムにしたがつて電磁弁３１〜３５の開閉
が制御され、これによつてセレクトシリンダ２１
及びシフトシリンダ２２のピストンロツド２１ａ
及び２２ａを作動し変速ギヤを自動的に切換える
操作を行う。制御信号が到来しないときにはそれ
ぞれ戻しばねにより、図示する位置に流路を設定
する。電磁弁３１〜３５にはオイルポンプ４０か
らオイルが圧送される。電磁弁３１を通る油圧回
路のみ手動変速切換弁１０を経由せずに直接セレ
クトシリンダ２１に接続される。この電磁弁３１
は変速ギヤを３速、４速又は５速、６速の位置に
セレクトするための電磁弁であり、手動変速切換
弁１０は非常用として最低限の１速段又は後退段
にのみ変速するように構成されているためであ
る。

手動変速切換弁１０は上記アクチユエータ機構
２０と制御機構３０（電磁弁３１を除く）との間
の油圧回路に設けられるとともにオイルポンプ４
０に直接接続する。この実施例では手動変速切換
弁１０は第１図の矢印の方向に移動することによ
り、〜の７つの位置に切換えられるようにな
つている。

手動変速切換弁１０の位置は「通常位置」で
ある。ここでは電磁弁３２の流路３２ａをセレク
トシリンダ２１のポートＢに連通させ、電磁弁３
３の流路３３ａを同じくポートＣに連通させる。
また電磁弁３４の流路３４ａをシフトシリンダ２
２のポートＤに連通させ、電磁弁３５の流路３５
ａを同じくポートＥに連通させる。オイルポンプ
４０からの流路４０ａは閉止される。電磁弁３１
〜３５が自動変速機の変速を制御する図外のコン
ピユータの制御信号により正常に作動していると
きには、手動変速切換弁１０は位置の通常位置
に置かれる。なお第１図の位置で油が下から上
に流れるように示しているが、電磁弁３２〜３５
の切換えにより上から下に流れる場合もある。以
下に述べる位置から位置までは第１図に示し
た方向にのみ油が流れる。

手動変速切換弁１０の位置から位置までは
電磁弁３１〜３５の自動制御に異常が生じたとき
に、手操作でノブ１１を引出し１速段又は後退段
へ切換える順番を示している。

具体的に述べると、位置は「ギヤを抜く位
置」であつて、自動変速制御系の故障時の変速ギ
ヤを中立位置に戻す操作を行う。ここでは電磁弁
３２の流路３２ａをセレクトシリンダ２１のポー
トＢに連通させ、電磁弁３３の流路３３ａを同じ
くポートＣに連通させる。また電磁弁３４の流路
３４ａと電磁弁３５の流路３５ａは閉止され、オ
イルポンプ４０からの流路４０ａがシフトシリン
ダ２２のポートＤ及びＥに連通する。これにより
セレクト方向には油圧がかからず、またシフト方
向は中立位置に戻される。

以下位置は「１速段へのセレクト位置」、
位置は「１速段へのシフト位置」、位置は「ギ
ヤを抜く位置」、位置は「後退段へのセレクト
位置」、更に位置は「後退段へのシフト位置」
であつて、流路３２ａ〜３５ａを閉止又はシリン
ダ２１，２２の各ポートに連通させるとともに、
流路４０ａをシリンダ２１，２２の各ポートに連
通させる。

本実施例の特徴ある構成は、手動変速切換弁１
０を操作する非常用コントロールノブ１１が通常
位置に戻つているか否かを検出する検出手段と、
この検出手段がノブ１１が戻つていないことを検
出するとき車両のエンジンの始動を禁止する禁止
手段とを備えたところにある。

ノブ１１は車両の運転席に設けられ、非常時の
みしか操作できないように通常時には開閉可能な
「Ｌ」字状のカバー１２で覆われている。カバー
１２が枢着するフレーム１４にはスリーブ１５が
貫設され、このスリーブ１５内にはロツド１６が
摺動可能に挿入される。ロツド１６の一端にはノ
ブ１１が固着され、ロツド１６の他端にはプツシ
ユプルケーブル１７が連結する。またケーブル１
７の他端は手動変速切換弁１０に接続する。ノブ
１１の近傍のロツド１６には係止片１８が固着さ
れる。フレーム１４には検出スイツチ１９が設け
られる。検出スイツチ１９は、ノブ１１が図示す
る通常位置に戻つたときに係止片１８が圧接して
オン状態になり、引出されるとオフ状態になる。

第３図に示すように、検出スイツチ１９はスタ
ータモータ２３のリレースイツチ２４を構成する
コイル部に直列に接続される。２５は始動スイツ
チ、２６はバツテリ、２７は負荷である。

このような構成の装置では、ノブ１１を図示す
る位置まで押込んで手動変速切換弁１０を不作動
の状態、即ち通常状態に復帰しておけば、検出ス
イツチ１９はオン状態になり、始動スイツチ２５
を閉じればスタータモータ２３を起動することが
できる。しかし、ノブ１１を引出したままの状態
にしておくと、検出スイツチ１９はオフ状態にな
るため、始動スイツチ２５を閉じてもスタータモ
ータ２３は起動しない。この結果、ノブ１１が元
の通常位置に戻つていない場合に車両走行を禁止
することができる。

［考案の効果］ 以上述べたように、本考案によれば、ノブを引
出したままにして非常用コントロール装置が元の
通常位置に戻つていない場合には、エンジンの始
動を禁止でき、運転者の予期しない車両の発進又
は後退を未然に防止することができる。

また従来の電子制御変速機の非常用制御装置と
比較して、変速機の電気系統が故障しても確実に
変速機を１速段又は後退段にシフトすることがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案実施例非常用コントロール装置
の構成図。第２図はその自動変速機のシフトパタ
ーンを示す図。第３図はその電気回路構成図。 １０……手動変速切換弁、１１……非常用コン
トロールノブ、１９……検出スイツチ、２０……
アクチユエータ機構、２３……スタータモータ、
２４……リレースイツチ、３０……油圧制御機
構。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 車両の自動変速機のギヤ位置を変えるアクチユ
   エータ機構２０と前記アクチユエータ機構２０を
   自動変速制御する油圧制御機構３０との間の油圧
   回路に設けられた手動変速切換弁１０と、前記手
   動変速切換弁１０を操作する非常用コントロール
   ノブ１１とを備え、 前記ノブ１１が前記油圧制御機構３０によるア
   クチユエータ機構２０の自動変速制御を可能にす
   る通常位置と自動変速制御系の異常時に強制的に
   前記自動変速機を１速段又は後退段にシフトさせ
   る非常位置とに切換可能に構成された自動変速機
   の非常用コントロール装置において、 前記ノブ１１が前記通常位置にあるときにはオ
   ン状態になり前記非常位置にあるときにはオフ状
   態になる検出スイツチ１９が前記車両のスタータ
   モータ２３のリレースイツチ２４のコイル部に直
   列に接続されたことを特徴とする自動変速機の非
   常用コントロール装置。