JPH05338180A - インクジェット記録ヘッドの表面処理方法 - Google Patents

インクジェット記録ヘッドの表面処理方法

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JPH05338180A
JPH05338180A JP4145780A JP14578092A JPH05338180A JP H05338180 A JPH05338180 A JP H05338180A JP 4145780 A JP4145780 A JP 4145780A JP 14578092 A JP14578092 A JP 14578092A JP H05338180 A JPH05338180 A JP H05338180A
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JP
Japan
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nozzle
recording head
treatment
ink
oxide layer
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JP4145780A
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Isao Mizuma
功 水間
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Seiko Epson Corp
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Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ノズル孔を有するノズル表平面の撥水性とノ
ズル孔内壁の親水性を実現しつつ、さらに撥水膜の強密
着強性と長時間の持続性を実現したインクジェット記録
ヘッドの表面処理方法を提供するものである。 【構成】 インクジェット記録装置に用いる樹脂製イン
クジェット記録ヘッドにおいて、ノズル孔を有するノズ
ル表平面に撥水膜として含フッ素高分子膜を形成した
後、ノズル内壁に酸化物層を形成する親水処理をするこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録装
置に用いる樹脂製インクジェット記録ヘッド及びそれら
の製造方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録ヘッドに樹脂を用い
ることは、加工組立が容易で製造の低コスト化ができる
という点からガラス、金属等に比べ有利である。しか
し、樹脂製インクジェット記録ヘッドにおいて水性イン
クを用いる場合、ノズル孔内壁の撥水性が高く、水性イ
ンクの濡れが悪いため、インク充填の際インク流路内に
気泡を取り残してしまったり、流路内に発生した気泡に
対して排出操作を行なっても排出することが困難であ
り、ドット抜けや印字乱れ等のトラブルによって記録不
能となることがあった。さらに、樹脂製インクジェット
記録ヘッドのノズル孔を有するノズル表平面は、充分な
撥水性がないと、インク吐出時にインクダレを生じ、吐
出安定性、方向性が悪くなることがあった。そこで、樹
脂成形により作成されたインクジェット記録ヘッドのノ
ズル孔を有するノズル表平面及びノズル孔内壁を親水処
理した後、ノズル孔を有するノズル表平面に撥水処理膜
を形成する方法が、特開昭61−141565に示され
ている。さらに、親水処理方法として酸処理、放電処
理、紫外線処理、電子線処理又は放射線処理、撥水処理
方法として塗布、真空蒸着、スパッタコーティング又は
プラズマ重合法、撥水材料としてペルフルオロ及びポリ
フルオロ化合物を用いることが示されている。
【0003】ところが、前述の樹脂成形のインクジェッ
トヘッドの表面処理方法で示された親水処理は持続性が
乏しいため、インクジェット記録ヘッドにインクが充填
されていない状態で長時間放置するとインク流路内の親
水処理の効果が失われるという課題がある。そこで、最
近では持続性に優れる酸化物層、耐アルカリ性酸化物層
を形成する親水処理方法が、特願平3−227872及
び特願平3−291659で示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
特願平3−227872及び特願平3−291659記
載の親水処理方法を、特開昭61−141565の記載
の表面処理方法における親水処理の代用として行なった
場合、ノズル孔を有するノズル表平面に形成された親水
性の酸化物層の表面と、ペルフルオロ及びポリフルオロ
化合物との密着性は非常に弱く、インクに長時間触れた
り、摩擦が加わるだけで容易に剥離が起こるため、ノズ
ル孔を有するノズル表平面の撥水性が持続性に乏しくな
り、インク吐出時にインクダレが生じ、インクの吐出方
向や安定性が悪くなる。さらに、剥離した撥水膜がノズ
ル孔を有するノズル表平面に残存するためにインクダレ
が非常に多くなり、インク吐出が不能になるという技術
課題があった。
【0005】本発明は前記課題を解決するためのもので
あり、ノズル孔を有するノズル表平面の撥水性とノズル
孔内壁の親水性を実現しつつ、さらに撥水膜の強密着性
と長時間の持続性を実現したインクジェット記録ヘッド
の表面処理方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のインクジェット
記録ヘッドの表面処理方法は、樹脂製のインクジェット
記録ヘッドのノズル孔を有するノズル表平面に撥水膜と
して含フッ素高分子膜を形成した後、ノズル孔内壁に酸
化物層形成の親水処理をすることを特徴とする。 ま
た、樹脂製のインクジェット記録ヘッドのノズル孔を有
するノズル表平面及びノズル孔内壁を酸処理、放電処
理、紫外線処理、電子線処理又は放射線処理による親水
処理した後、ノズル孔を有するノズル表平面に撥水膜と
して含フッ素高分子膜を形成し、さらにその後ノズル孔
内壁に酸化物層を形成する親水処理することを特徴とす
る。
【0007】
【作用】本発明の表面処理によれば、持続性及び密着性
に優れた撥水処理がノズル孔を有するノズル表平面に、
親水処理がノズル孔内壁にそれぞれ行なわれるため、流
路内の気泡詰まりとノズル表平面のインクダレをなく
し、持続性のある表面処理を行なうことができる。
【0008】
【実施例】図1はインクジェット記録ヘッドの概略図で
ある。1は圧力室であり、PZT素子または発熱体等に
よってインク吐出のための圧力を得る部分である。2は
インク流路、3はインク吐出ノズルである。
【0009】図2は、本発明の表面処理方法により、撥
水処理及び親水処理された図1のインク吐出ノズル3付
近の拡大図である。インクジェット記録ヘッド基材4の
ノズル孔5を有するノズル表平面6には撥水膜7が形成
され、ノズル孔内壁8には親水性の酸化物層9が形成さ
れている。
【0010】(実施例1)図3は本発明の、インクジェ
ット記録ヘッドの表面処理方法を示す、第1の表面処理
工程である。図3の(a)は、樹脂性のインクジェット
記録ヘッド基材のインク吐出ノズル部分の断面図であ
る。図3の(b)は撥水膜7をノズル孔5を有するノズ
ル表平面6に付着させた図である。撥水膜の付着は、デ
ッピング法あるいは転写法または水面展開法によって行
なわれる。含フッ素高分子の撥水膜は、溶剤可溶性含フ
ッ素重合体で非晶質であることが好ましい。例えば、ポ
リジパーフルオロアルキルフマレート、テフロンAF
(デュポン社の登録商標)、サイトップ(旭硝子社の登
録商標)のような溶媒可溶性含フッ素重合体、あるい
は、ジパーフルオロアルキルフマレートとスチレンとの
交互共重合体、三フッ化塩化エチレンとビニルエーテル
との交互共重合体、四フッ化エチレンとビニルエステル
との交互共重合体などの含フッ素エチレンとビニルエス
テルとの交互共重合体もしくはその類似体ないし誘導体
が好ましく用いられる。溶媒としては、フッ化液体、例
えばフロリナート(3M社の登録商標)、ガルデン、
(モンテフルオス社の登録商標)、トリフルオロメチル
ベンゼン、ハイドロクロロフルオロカーボン等が好まし
く用いられる。また、フッ素重合体の濃度としては、
0.01〜7重量%の範囲である。図3の(c)は、イ
ンクジェット記録ヘッド表面に親水処理を施し、酸化物
層9を付着させた図である。ノズル孔内壁8及び撥水膜
7の表面10にも酸化物層が付着している。ただし、撥
水膜表面に付着した酸化物層9は密着性に乏しいため容
易に剥離する。酸化物層は酸化物微粒子が分散したゾル
を塗布し、80℃あるいは80℃以上で加熱乾燥して密
着することができる。酸化物粒子としては、シリカ、ア
ルミナ、チタニアあるいはシリカ−ジルコニア組成物、
シリカ−ジルコニア−アルミナ組成物、シリカ−ジルコ
ニア−酸化ナトリウム組成物から適宜選択して用いるこ
とが出来る。そして、ゾルは前記酸化物粒子を有機溶媒
を主成分とする溶媒で例えばエタノールやイソプロパノ
ール中に分散した状態で塗布に用いた。図3の(d)
は、撥水膜7の表面10から酸化物層が剥離した図であ
る。ノズル孔を有するノズル表平面には撥水膜が形成さ
れ、ノズル孔内壁には親水性の酸化物層が形成されてい
る。
【0011】次に、本発明の前記表面処理を施したイン
クジェット記録ヘッドを記録装置に装着して印字試験を
行なったところ、ドット抜けや印字乱れ等のトラブルは
発生せず、良好な撥水処理がなされたことを確認した。
次に、インクジェット記録ヘッドを染料インクに浸漬し
70℃で5日間保持した後、同様の印字試験を行なっ
た。印字は初期特性と変わらず、撥インク効果は十分で
あった。染料インクを注入しながらシリコンゴムによる
擦り試験をしたところ、試験後もノズル孔を有するノズ
ル表平面の水との接触角は100度以上あり、撥水効果
はほとんど劣化せず長時間いにわたって印字品質の高い
インクジェット記録ヘッドを達成できた。さらに、親水
効果を確認する試験も行なった。インクジェット記録ヘ
ッドからインクを抜取り70℃で5時間放置した後、気
泡排出試験を行なった。吸引時間10秒ごとに印字を行
ない、流路内に残留している気泡が完全に排出されてド
ット抜けや印字乱れ等のトラブルがなくなるまでの時間
を測定したところ、すべて30秒以下で完全になくなる
ことを確認した。親水効果が全く劣化せず、インクジェ
ット記録ヘッドのインク流路内に発生した気泡を簡単な
操作で容易に排出することが可能であった。
【0012】比較試験として、表面処理工程を図3の
(a)、(c)、(b)の順で行い、酸化物層を付着さ
せる親水処理の後に撥水膜を付着させたインクジェット
記録ヘッドについて同様な印字試験を行なった。気泡排
出試験は同様に良好な結果を示したが、染料インクに浸
漬した場合、撥水膜がノズル孔を有するノズル表平面か
ら剥がれ、印字乱れあるいはインクダレのためにインク
が吐出しないというトラブルが発生した。また、染料イ
ンクへの浸漬をおこなわず、染料インクを注入しながら
シリコンゴムによる擦り試験を行なったところ、撥水膜
は容易にノズル孔を有するノズル表平面から剥がれた。
よって、酸化物層表面への撥水膜の密着性は非常に小さ
いことが確認された。
【0013】(実施例2)図4は本発明のインクジェッ
ト記録ヘッドの表面処理方法を示す、第2の表面処理工
程である。図4の(a)は、インクジェット記録ヘッド
に用いる樹脂製ノズルプレート11と該樹脂製ノズルプ
レートのノズル孔12を示した断面である。図4の
(b)は、ノズルプレートのインク吐出側の表平面13
に撥水膜7を付着させた図である。図4の(c)は、樹
脂製ノズルプレート表面に親水処理を施し、酸化物層9
を付着させた図である。ノズル孔12の内壁14、樹脂
製ノズルプレートの裏側平面15及び撥水膜7の表面1
0にも酸化物層9が付着している。ただし、撥水膜7の
表面10に付着した酸化物層は密着性に乏しいため容易
に剥離する。図4の(d)は、撥水膜7の表面10から
酸化物層が剥離した図である。ノズル孔を有するノズル
表平面13には撥水膜が形成され、ノズル孔内壁14と
樹脂製ノズルプレート裏側平面15には親水性の酸化物
層が形成されている。
【0014】次に、本発明の前記表面処理を施した樹脂
製ノズルプレートを装着したインクジェット記録ヘッド
を記録装置に装着して印字試験を行なったところ、ドッ
ト抜けや印字乱れ等のトラブルは発生せず、良好な撥水
処理がなされたことを確認した。次に、インクジェット
記録ヘッドを染料インクに浸漬し70℃で5日間保持し
た後、同様の印字試験を行なった。印字は初期特性と変
わらず、撥インク効果は十分であった。染料インクを注
入しながらシリコンゴムによる擦り試験をしたところ、
試験後もノズル孔を有するノズル表平面の水との接触角
は100度以上あり、撥水効果はほとんど劣化せず長時
間いにわたって印字品質の高いインクジェット記録ヘッ
ドを達成できた。さらに、親水効果を確認する試験も行
なった。インクジェット記録ヘッドからインクを抜取り
70℃で5時間放置した後、気泡排出試験を行なった。
吸引時間10秒ごとに印字を行ない、流路内に残留して
いる気泡が完全に排出されてドット抜けや印字乱れ等の
トラブルがなくなるまでの時間を測定したところ、すべ
て30秒以下で完全になくなることを確認した。親水効
果が全く劣化せず、インクジェット記録ヘッドのインク
流路内に発生した気泡を簡単な操作で容易に排出するこ
とが可能であった。
【0015】比較試験として、表面処理工程を図4の
(a)、(c)、(b)の順で行い、酸化物層を付着さ
せる親水処理の後に撥水膜を付着させたインクジェット
記録ヘッドについて同様な印字試験を行なった。気泡排
出試験は同様に良好な結果を示したが、染料インクに浸
漬した場合、撥水膜がノズル孔を有するノズル表平面か
ら剥がれ、印字乱れあるいはインクダレのためにインク
が吐出しないというトラブルが発生した。また、染料イ
ンクへの浸漬をおこなわず、染料インクを注入しながら
シリコンゴムによる擦り試験を行なったところ、撥水膜
は容易にノズル孔を有するノズル表平面から剥がれた。
よって、酸化物層表面への撥水膜の密着性は非常に小さ
いことが確認された。
【0016】(実施例3)図5は本発明のインクジェッ
ト記録ヘッドの表面処理方法を示す、第3の表面処理工
程である。図5の(a)は、処理前のインクジェット記
録ヘッド基材のノズル部分の断面図である。図5の
(b)は、ノズル孔5を有するノズル表平面6及びノズ
ル孔内壁8を、酸処理、放電処理、紫外線処理、電子線
処理又は放射線処理のいずれかを施し、表面に極性基1
6を生成させ親水化している。図5の(c)は撥水膜7
をノズル孔を有するノズル表平面6に付着させた図であ
る。図5の(d)は、インクジェット記録ヘッド表面に
親水処理を施し、酸化物層9を付着させた図である。ノ
ズル孔内壁8及び撥水膜7の表面10にも酸化物層が付
着している。ただし、撥水膜表面に付着した酸化物層9
は密着性に乏しいため容易に剥離する。図5の(e)
は、撥水膜7の表面10から酸化物層が剥離した図であ
る。ノズル孔を有するノズル表平面には撥水膜が形成さ
れ、ノズル孔内壁には親水性の酸化物層が形成されてい
る。
【0017】次に、本発明の前記表面処理を施したイン
クジェット記録ヘッドを記録装置に装着して印字試験を
行なったところ、ドット抜けや印字乱れ等のトラブルは
発生せず、良好な撥水処理がなされたことを確認した。
次に、インクジェット記録ヘッドを染料インクに浸漬し
70℃で5日間保持した後、同様の印字試験を行なっ
た。印字は初期特性と変わらず、撥インク効果は十分で
あった。染料インクを注入しながらシリコンゴムによる
擦り試験をしたところ、試験後もノズル孔を有するノズ
ル表平面の水との接触角は100度以上あり、撥水効果
はほとんど劣化せず長時間いにわたって印字品質の高い
インクジェット記録ヘッドを達成できた。さらに、親水
効果を確認する試験も行なった。インクジェット記録ヘ
ッドからインクを抜取り70℃で5時間放置した後、気
泡排出試験を行なった。吸引時間10秒ごとに印字を行
ない、流路内に残留している気泡が完全に排出されてド
ット抜けや印字乱れ等のトラブルがなくなるまでの時間
を測定したところ、すべて30秒以下で完全になくなる
ことを確認した。親水効果が全く劣化せず、インクジェ
ット記録ヘッドのインク流路内に発生した気泡を簡単な
操作で容易に排出することが可能であった。
【0018】比較試験として、表面処理工程を図5の
(a)、(b)、(d)、(c)の順で行い、酸化物層
を付着させる親水処理の後に撥水膜を付着させたインク
ジェット記録ヘッドについて同様な印字試験を行なっ
た。気泡排出試験は同様に良好な結果を示したが、染料
インクに浸漬した場合、撥水膜がノズル孔を有するノズ
ル表平面から剥がれ、印字乱れあるいはインクダレのた
めにインクが吐出しないというトラブルが発生した。ま
た、染料インクへの浸漬をおこなわず、染料インクを注
入しながらシリコンゴムによる擦り試験を行なったとこ
ろ、撥水膜は容易にノズル孔を有するノズル表平面から
剥がれた。よって、酸化物層表面への撥水膜の密着性は
非常に小さいことが確認された。
【0019】(実施例4)図6は本発明のインクジェッ
ト記録ヘッドの表面処理方法を示す、第4の表面処理工
程である。図6の(a)は、インクジェット記録ヘッド
に用いる樹脂製ノズルプレート11と該樹脂製ノズルプ
レートのノズル孔12を示した断面である。図6の
(b)は、樹脂製ノズルプレートのインク吐出孔側表面
13、ノズル孔内壁14及び、樹脂製樹脂製ノズルプレ
ートの裏側平面15に酸処理、放電処理、紫外線処理、
電子線処理又は放射線処理のいずれかを施し、表面に極
性基16を生成させ親水化している。図6の(c)は、
樹脂製ノズルプレートのインク吐出側の表平面13に撥
水膜7を付着させた図である。図6の(d)は、樹脂製
ノズルプレート表面に親水処理を施し、酸化物層9を付
着させた図である。ノズル孔12の内壁14、樹脂製ノ
ズルプレートの裏側平面15及び撥水膜7の表面10に
も酸化物層9が付着している。ただし、撥水膜7の表面
10に付着した酸化物層は密着性に乏しいため容易に剥
離する。図6の(e)は、撥水膜7の表面10から酸化
物層が剥離した図である。ノズル孔を有するノズル表平
面13には撥水膜が形成され、ノズル孔内壁14と樹脂
製ノズルプレート裏側平面15には親水性の酸化物層が
形成されている。
【0020】次に、本発明の前記表面処理を施した樹脂
製ノズルプレートを装着したインクジェット記録ヘッド
を記録装置に装着して印字試験を行なったところ、ドッ
ト抜けや印字乱れ等のトラブルは発生せず、良好な撥水
処理がなされたことを確認した。次に、インクジェット
記録ヘッドを染料インクに浸漬し70℃で5日間保持し
た後、同様の印字試験を行なった。印字は初期特性と変
わらず、撥インク効果は十分であった。染料インクを注
入しながらシリコンゴムによる擦り試験をしたところ、
試験後もノズル孔を有するノズル表平面の水との接触角
は100度以上あり、撥水効果はほとんど劣化せず長時
間いにわたって印字品質の高いインクジェット記録ヘッ
ドを達成できた。さらに、親水効果を確認する試験も行
なった。インクジェット記録ヘッドからインクを抜取り
70℃で5時間放置した後、気泡排出試験を行なった。
吸引時間10秒ごとに印字を行ない、流路内に残留して
いる気泡が完全に排出されてドット抜けや印字乱れ等の
トラブルがなくなるまでの時間を測定したところ、すべ
て30秒以下で完全になくなることを確認した。親水効
果が全く劣化せず、インクジェット記録ヘッドのインク
流路内に発生した気泡を簡単な操作で容易に排出するこ
とが可能であった。
【0021】比較試験として、表面処理工程を図6の
(a)、(b)、(d)、(c)の順で行い、酸化物層
を付着させる親水処理の後に撥水膜を付着させたインク
ジェット記録ヘッドについて同様な印字試験を行なっ
た。気泡排出試験は同様に良好な結果を示したが、染料
インクに浸漬した場合、撥水膜がノズル孔を有するノズ
ル表平面から剥がれ、印字乱れあるいはインクダレのた
めにインクが吐出しないというトラブルが発生した。ま
た、染料インクへの浸漬をおこなわず、染料インクを注
入しながらシリコンゴムによる擦り試験を行なったとこ
ろ、撥水膜は容易にノズル孔を有するノズル表平面から
剥がれた。よって、酸化物層表面への撥水膜の密着性は
非常に小さいことが確認された。
【0022】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、樹脂
性インクジェット記録ヘッドにおいて、ノズル孔を有す
るノズル表平面の撥水効果を損なうことなく、しかも、
インク流路内の親水性効果が長時間持続するインクジェ
ット記録ヘッドを提供できたため、気泡排出するための
装置が簡略化でき、記録装置のコスト低減化が可能とな
るばかりでなく、気泡排出に消費するインクを大幅に節
約できる。また、撥水膜の密着性が非常に優れているた
め、インクジェット記録ヘッドの耐久時間が大幅に延長
される。
【0023】さらに、本発明の大きな特徴として、従来
の酸処理、放電処理等による親水処理と比較してはるか
に優れた酸化物層による親水処理を、従来の表面処理工
程の順序の入れ替えのみによって簡単に表面処理工程に
導入できる点にある。しかも、酸化物層を付着させる親
水処理は、従来の親水処理と比較してはるかに低コスト
であるから、製造コストの大幅な削減とインクジェット
記録ヘッドの性能の向上が同時に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面処理を施された、インクジェット
記録ヘッドのインク吐出ノズル孔付近の拡大した図。
【図2】樹脂性インクジェット記録ヘッドの概略を示す
図。
【図3】本発明の表面処理工程の第1の実施例を示す
図。
【図4】本発明の表面処理工程の第2の実施例を示す
図。
【図5】本発明の表面処理工程の第3の実施例を示す
図。
【図6】本発明の表面処理工程の第4の実施例を示す
図。
【符号の説明】
1 圧力室 2 インク流路 3 インク吐出ノズル 4 ヘッド基材 5 ノズル孔 6 ノズル孔を有するノズル表平面 7 撥水膜 8 ノズル孔内壁

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂製のインクジェット記録ヘッドのノ
    ズル孔を有するノズル表平面に撥水膜として含フッ素高
    分子膜を形成した後、ノズル孔内壁に酸化物層形成の親
    水処理をすることを特徴とするインクジェット記録ヘッ
    ドの表面処理方法。
  2. 【請求項2】 樹脂製のインクジェット記録ヘッドのノ
    ズル孔を有するノズル表平面及びノズル孔内壁を酸処
    理、放電処理、紫外線処理、電子線処理又は放射線処理
    による親水処理した後、ノズル孔を有するノズル表平面
    に撥水膜として含フッ素高分子膜を形成し、さらにその
    後ノズル孔内壁に酸化物層を形成する親水処理すること
    を特徴とするインクジェット記録ヘッドの表面処理方
    法。
JP4145780A 1992-06-05 1992-06-05 インクジェット記録ヘッドの表面処理方法 Pending JPH05338180A (ja)

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