JP3010728B2 - インクジェット記録装置及びその製造方法 - Google Patents

インクジェット記録装置及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、インク滴を飛翔させて記録媒体上に画像を
形成するインクジェット記録装置に関するものである。
〔従来の技術〕
インクジェット記録装置において、インクノズル周縁
部に不均一なインクの溜りがあると、吐出するインク滴
が正規の飛翔方向から離脱したり、さらには上記インク
溜りによりインク滴形成時のメニスカスの安定性が低下
して吐出異常になり良好な記録が行なえなくなる。さら
に印字品質を向上するために、単位当りのインクノズル
数を多くしてドット密度を高める場合、これに応じてイ
ンク滴、インクノズルは小さくなり、インクノズル間距
離は狭くなる。したがって、インクノズル周縁部におけ
る不均一なインクの溜りの影響はより受けやすい。ま
た、高速印字を実現するために、高周波数で駆動する場
合も同様に上記影響を受けやすい。
そのため、インクノズルの周縁部にインクを弾く撥水
性を有した表面処理を施して上述の問題を解決し、安定
したインク滴の吐出を得ようとする提案が数多く報告さ
れている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながらそのような表面処理においては、単にイ
ンクを弾く撥水能力があるだけでなく、その能力の持続
性も十分になければ実用性がない。すなわち、インクジ
ェット記録装置に備わったクリーニング動作、その際生
じた過剰インクの除去のためのゴム部材等によるワイピ
ング動作によっても、その撥水性が劣化することなく、
安定したインクの吐出ができなければならない。
また、インクノズル内に撥水処理液が侵入して目詰ま
りを起こしたり、撥水処理層がインクノズル内に回り込
んでインク滴吐出を不安定にしたりしないために、撥水
処理層を形成する作業は、煩雑で効率が悪く、歩留まり
も低い。また、同様な理由で処理層の膜厚を厚くするこ
とも非常に難しい。
本発明の目的は、以上のような問題点を解決し、簡便
に形成することができて十分な撥水能力および持続性を
有する撥水処理層を備え、これによって常に安定したイ
ンク滴吐出動作を得ることのできるインクジェット記録
装置及びその製造方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため本発明のインクジェットヘッ
ドは、ノズルが形成された高分子樹脂製の基材と、該基
材表面上に形成された微細な凹凸表面と、該凹凸表面上
に形成された撥水性を備えた表面処理層とを有し、前記
ノズルが前記表面処理層形成後にレーザー加工により形
成されてなるインクジェット記録装置において、前記ノ
ズルが形成された面のノズル近傍にノズルに対して同心
円状の深さ15〜25μm、直径150〜250μmの溝部が形成
されてなることを特徴とする。
また、前記表面処理層の厚みが、前記微細な凹凸の高
低差より厚いことを特徴とする。
さらに、高分子樹脂の基材表面にプラズマエッチング
により表面加工して微細な凹凸を形成する工程と、該微
細な凹凸を有する基材表面上に撥水性を備えた表面処理
層を形成する工程と、前記基材にレーザー加工によりノ
ズルを形成する工程とを備えたことを特徴とする。
また、前記基材にノズルを形成する工程において、前
記基材の表面処理層が形成された面とは反対の面からレ
ーザー加工することを特徴とする。
〔実 施 例〕
以下、本発明の実施例について説明する。
第1図は、本発明の第1実施例であるインクジェット
記録装置におけるヘッド基板の流路構造の断面図を示
す。ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエーテル
サルフォン等の高分子樹脂を基材とし、その射出成形に
より作られたヘッド基板1の片面1aには、キャビティ
2、インク供給路3、インク準備室4から成る一連の流
路溝が複数形成されている。そして各インク流路溝の端
部には、厚み方向に形成された孔状の連絡流路5が接続
されている。この連絡流路5は流路溝が形成されている
面1aとは反対側の面1bに0.08〜0.12mmの肉厚を残しため
くら穴構造となっている。この面1bはインクノズルが形
成される面(以下インクノズル面という)であり、連絡
流路5の先に、後述するレーザー加工で微細孔をあける
ことで、インクノズルが形成される。
第2図(a)は、上記構成のヘッド基板1のインクノ
ズル1bにプラズマエッチング加工により、超微細孔を形
成することで表面粗化した状態を示す部分平面図であ
る。加工条件10mA/0.1Torrで約10分間スパッタエッチン
グしたところ、図に示すような無数の約0.3〜0.45μm
の凹凸部6が形成された。インク流路は親水性を必要と
するため、流路溝形成面をマスキングしておいて、第2
図(b)に示すとおり、凹凸部6が形成されたインクノ
ズル1bに、真空蒸着機にて四フッ化エチレンの撥水処理
層7を0.1〜0.25μmの厚みで形成する。
第3図(a)、(b)は、プラズマエッチングにより
形成した微細な凹凸部6に蒸着による四フッ化エチレン
層を施して撥水性を与えたインクノズル面1bに、内容φ
35〜45μmのインクノズルをレーザー加工で形成する方
法を示す説明図である。
本実施例では、エキシマレーザー装置8により発生し
たレーザービームLはステンレス製金属マスク9に達
し、開口穴10を通過することによりφ0.35mmに絞られ
る。さらにレーザービームLは集光レンズ11によって、
連絡流路5の先端のインクノズル形成部にインクノズル
径とほぼ等しい大きさで結像される。この時のエネルギ
ー密度は6.5〜7.5J/cm2である。レーザービームLは樹
脂を溶融し、繰り返し周波数10Hz、ショット数500ショ
ットで貫通し、インクノズル12が形成される。(第3図
(b))。この場合、エキシマレーザー加工で形成した
穴は、テーパーが付き入射側に抗して反対側が小さくな
るので、入射側を連絡流路5側として加工した。さらに
ノズル数に応じて照射位置を走査して上記サイクルを繰
り返すことにより必要なインクノズル数が得られる。
第4図に示すとおり、上記のごとく加工されたヘッド
基板1に同材質の振動板13を溶剤接着により接合して実
際の流路を形成する。さらに、図示しない共通電極を得
るための金属板または金属膜からなる電極を配し、圧電
素子、信号線、インク供給管、ヘッドケースを組み込む
ことにより、ヘッドが構成される。
このヘッドは、ノズル周縁部が四フッ化エチレン層に
より撥水処理層を有しており、図示しないインクを供給
するインク貯蔵室はインクノズルの位置より下位にある
ため、インク貯蔵室の負圧により、インクノズルにつな
がった状態でノズル面にインクが残ることはない。粘度
2.0cP、表面張力60dyn/cm(20℃)の水溶性インクを用
いて吐出試験を行なったところ、インク滴は曲がること
なく、良好な飛行状態が得られた。さらに、撥水処理層
7の下地は、プラズマエッチングにより微細な凹凸が形
成されているため、上記撥水処理層の密着強度は高い。
すなわち、凹凸の高部に付着している撥水処理層はクリ
ーニング部材の摺動、あるいは印字紙の接触によって少
なからず摩耗するが、底部については剥がれることなく
安定している。非常に微細な凹凸のためこのような状態
でもインクの撥水効果は十分ある。
第5図に示すとおり、実際にインクノズル面1bをクリ
ーニングするための耐インク性の高いブチルゴムを基材
とするクリーニングブレード14を、20g/cm2の接触圧で
上記インクノズル面1bに一方向に摺動させてその耐久性
について調べた。500回、1000回、2000回〜10000回と10
00回毎にインクの飛行状態及びインクノズル近傍の状態
を観察した。本実施例ではクリーニングブレード14によ
る摺動動作10000回実施後もインクの飛行状態は良好で
あり、インクノズル周縁での撥水層の剥離によるインク
の不規則な溜り等の異常もなかった。一方、インクノズ
ル面を粗面化することなく単に四フッ化エチレン層を設
けたヘッドにおいてはクリーニング動作1000回実施後
に、インクノズル周縁部での撥水処理の剥がれ及びそれ
に伴うインク飛行曲がりが発生して、品質が低下してし
まった。
また、本実施例では撥水処理層を施した後にインクノ
ズル12をエキシマレーザー加工で形成しているため、第
6図(a)に示すとうり、インクノズル12の内壁12aと
撥水効果のあるインクノズル1bとは明確に区分されてい
る。したがって、インク15の均一なメニスカス16が形成
され、第6図(b)に示すような撥水処理層7がインク
ノズルの内壁に付着して不均一なメニスカス16′となっ
て、インク滴の飛行曲がり、吐出安定性の低下を招くこ
ともない。
第7図は、本発明における第2の実施例を説明するも
のであり、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリエ
ーテルサルフォン等の高分子樹脂を基材とし、その射出
成形より成るヘッド基板の構造を示す断面図である。連
絡流路5の先に位置する箇所には、他の面よりも15〜25
μm低い、連絡流路の中心に対して同心円状のφ150〜2
50μmの溝部(クレーター)17が射出成形により一体形
成されている。このクレーター17は、インクノズル形成
法と同様にレーザー加工による後加工により形成しても
よい。あとは前述同様、インクノズル1bにプラズマエッ
チングによる物理処理によって、表面粗化して微細な凹
凸部6を形成した後、四フッ化エチレンの蒸着による撥
水性を備えた表面処理層7を施し、レーザー加工による
後加工でインクノズル12を形成する、このようなインク
ジェットヘッドでは、前述した実施例の効果に加えて、
さらにクレータ17部におけるインクノズル面がヘッド先
端面より低いために、機構上のトラブルによって紙ジャ
ムリが発生した際にも、それにより表面処理層の剥離、
インクノズルへの損傷を抑えることができ、撥水性の維
持、安定したインク飛行状態の確保が可能となる。
第8図は本発明における第3の実施例を示すものであ
り、インクノズル面の表面処理状態を説明するための模
式図である。ヘッド流路内においては、気泡が滞留する
ことなく、加圧や負圧吸引等の復帰手段により速やかに
インクノズルから排出され、また安定してメニスカスを
形成するために、インクノズル面とは逆に親水性が必要
である。そこで、水系インクがあまり良く濡れない高分
子樹脂を基材とするヘッドでは、インクの濡れ性アッ
プ、ヘッド流路内のエージング処理等による親水性付与
等の方策がとられている。このため、前述のインクノズ
ル面に設けた凹凸の凹部に濡れ性の互いインクやエージ
ング処理液が溜った場合、撥水性処理能力が低下する。
しかし、このような事態は、インクノズル面の凹凸より
も厚い撥水層を形成し、撥水層により平滑にすることで
防ぐことが可能となる。そこで本実施例では、ポリカー
ボネート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォンを
基材としたヘッド基材1のインクノズル面1bに、前述と
同様の条件でプラズマエッチングにより表面粗化した
後、その凹凸部6の約0.35〜0.4μ高低差により厚い約
0.5〜1μmの撥水処理層7′を以下の方法で設けた。
すなわち、四フッ化エチレン層は膜厚が0.5μm以上に
なるとエキシマレーザー加工でうまくあけられないた
め、本実施例では、住友3M(株)製、フッ素系ポリマー
含有溶液FC−721(商品名)の1wt%を含むダイフロン溶
液(商品名、ダイキン工業(株)製)にインクノズル面
1bを浸漬したのち、あるいは処理液を含ませた発泡体を
用いて、処理液を密着、転写したのち、100℃で2時間
加熱することにより、同等の撥水効果のある撥水処理層
7′を得た。さらに、レーザー加工による後加工でイン
クノズル部を形成する。こうして加工されたヘッド基板
に同材質の振動板を溶剤接着により接合して実際の流路
を形成し、さらに共通電極を得るための金属板または金
属膜からなる電極を配し、圧電素子、信号線、インク供
給管、ヘッドケースを組み込むことにより、本実施例の
ヘッドは構成される。こうして得られたヘッドの流路内
をエチレングリコール99%、染料(Daiwa 1000SC)1
%の組成液で70℃2時間、循環して流すことにより、エ
ージング処理し親水性を付加した。この際インクノズル
12より滲み出たエージング液は、表面粗化した表面の凹
凸部6より厚い撥水層7′を設けて平滑化しているため
純水を含ませた布または発泡体で拭くことにより容易に
除去することができる。こうしてエージング処理後も良
好な撥水効果を維持できる。
また、インクノズル面1bにおいて、各インクノズルに
対して同心円状の深さ15〜25μm、径150〜250μmのク
レーターを有したヘッド基板に、プラズマエッチングに
より表面粗化して形成した凹凸部の高低差より厚い数μ
の撥水処理層を設けることでも、前述と同等の作用を奏
することは言うまでもない。
〔発明の効果〕
本発明によれば、インクが吐出するインクノズルの周
縁部をプラズマエッチングにより粗面化して微細な凹凸
部を設け、そのインクノズル面に撥水処理を施し、レー
ザーによる後加工でインクノズルを形成したため、簡便
で安定したしかも自由度の高い撥水処理が可能となっ
た。さらにその処理層の撥水能力の持続性も十分で実用
性が高く、常に安定したインクの吐出が可能な、高印字
品質、高信頼性のインクジェット記録装置を実現でき
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1実施例であるインクジェット記録
装置におけるヘッド基板の流路構成図、第2図(a)、
(b)は同実施例における表面粗面化したインクノズル
面の模式的平面図と部分断面図、第3図(a)、(b)
は、同実施例におけるインクノズルを形成する方法を示
す機械説明図と部分拡大図、第4図は同実施例における
インクジェットヘッドの流路構成図、第5図は同実施例
における表面処理層の耐久性を評価するための試験方法
を説明する模式図、第6図(a)、(b)は同実施例に
おけるインクノズル部のメニスカスの状態を説明するた
めの模式図、第7図(a)、(b)は本発明の第2実施
例を示すインクジェットヘッド基板の流路構成図、第8
図は本発明の第3実施例におけるインクノズル面の表面
処理状態を説明するため部分拡大断面図である。 1……ヘッド基板 2……キャビティ 3……インク供給路 4……インク準備室 5……連絡流路 6……凹凸部 7……撥水処理層 8……エキシマレーザー装置 9……金属マスク 10……開口穴 11……集光レンズ 12……インクノズル 13……振動板 14……クリーニングブレード 15……インク 16、16′……メニスカス 17……溝部(クレーター) L……レーザービーム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−48953(JP,A) 特開 平2−121843(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/135

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ノズルが形成された高分子樹脂製の基材
    と、該基材表面上に形成された微細な凹凸表面と、該凹
    凸表面上に形成された撥水性を備えた表面処理層とを有
    し、前記ノズルが前記表面処理層形成後にレーザー加工
    により形成されてなるインクジェット記録装置におい
    て、 前記ノズルが形成された面のノズル近傍にノズルに対し
    て同心円状の深さ15〜25μm、直径150〜250μmの溝部
    が形成されてなることを特徴とするインクジェット記録
    装置。
  2. 【請求項2】前記表面処理層の厚みが、前記微細な凹凸
    の高低差より厚いことを特徴とする請求項1記載のイン
    クジェット記録装置。
  3. 【請求項3】高分子樹脂の基材表面にプラズマエッチン
    グにより表面加工して微細な凹凸を形成する工程と、該
    微細な凹凸を有する基材表面上に撥水性を備えた表面処
    理層を形成する工程と、前記基材にレーザー加工により
    ノズルを形成する工程とを備えたことを特徴とするイン
    クジェット記録装置の製造方法。
  4. 【請求項4】前記基材にノズルを形成する工程におい
    て、前記基材の表面処理層が形成された面とは反対の面
    からレーザー加工することを特徴とする請求項3記載の
    インクジェット記録装置の製造方法。
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