JPH05336984A - リン脂質の塩基交換反応方法 - Google Patents

リン脂質の塩基交換反応方法

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JPH05336984A
JPH05336984A JP17197692A JP17197692A JPH05336984A JP H05336984 A JPH05336984 A JP H05336984A JP 17197692 A JP17197692 A JP 17197692A JP 17197692 A JP17197692 A JP 17197692A JP H05336984 A JPH05336984 A JP H05336984A
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phospholipase
phospholipid
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selectivity
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Atsushi Nakajima
淳 中島
Toshimitsu Nakajima
敏光 中嶋
Hideki Fukuda
秀樹 福田
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 微生物の生産するホスホリパーゼDのホスフ
ァチジル基転移作用を利用して塩基構造が変換されたリ
ン脂質を製造するにあたり、反応系のpHをホスホリパー
ゼDの加水分解反応の至適pHから偏倚させ、ホスホリパ
ーゼDを失活させることなく加水分解反応を抑制できる
pHに保持し、ホスホリパーゼDの選択率(加水分解反応
速度に対する転移反応速度の比)を高めて反応を行なう
ことを特徴とするリン脂質の塩基交換反応方法。 【効果】 微生物種に依存することなく選択率を高める
ことができ、所望のリン脂質を高収率で得ることができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はリン脂質の生産方法に関
し、更に詳しくは、塩基構造の変換されたリン脂質を効
率的に生産するためのホスファチジル基転移反応方法に
関する。リン脂質は、その界面活性や生理作用を生かし
て、単に乳化剤に用い得るのみならずリポソームの基材
として薬剤運搬体、人工血液、人工細胞等への応用が近
年注目されており、また、それ自体生理活性・薬理作用
を持つものとして、医学・薬学・工学的分野の様々の用
途が考えられている。このような多様な要求に対応する
ために、各々の用途に応じた構造を有するリン脂質を効
率的に製造する方法を開発することは、産業上非常に意
義あることである。
【0002】
【従来の技術】従来、このようなリン脂質を製造する方
法としては、キャベツ由来、膵臓由来、或いは微生物由
来の種々の精製ホスホリパーゼDを直接或いは固定化等
を行って反応させる方法が提案されている(特開昭63
−42691、同63−44893、特開平1−153
090、同2−35093、同2−49593)。
【0003】このようなホスホリパーゼDによるホスフ
ァチジル基転移反応を利用してリン脂質の塩基部分を交
換しようとする場合、一般に水相と有機溶媒相とからな
る2相系で反応が行なわれる。即ち、主として水溶性酵
素、受容体、pH緩衝液、無機塩等を含む水相と、主とし
て親油性である原料リン脂質を含む有機溶媒相とを攪
拌、混合する反応系である。
【0004】本来リン脂質分解酵素のひとつであるホス
ホリパーゼDは、リン脂質のホスファチジル基と塩基と
の間のエステル結合を加水分解して、ホスファチジン酸
及び塩基を遊離させる酵素であるが、グリセロール、エ
タノールなどのアルコール性水酸基を有する化合物の共
存下で、リン脂質の塩基交換反応を接触することが知ら
れている。しかしながら、一般的にはホスホリパーゼD
の特性のひとつ、即ち塩基交換反応速度と加水分解反応
速度の比(選択率)はその酵素の由来の微生物種に大き
く依存していると考えられている( Biochimica et Bio
physica Acta.,960, 334, 1988 )。従って、工業的に
は目的とする反応に応じた特性を有するホスホリパーゼ
Dを生産する微生物の選択が重要な課題となっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本考案はかかる実情に
鑑み、微生物種に依存することなく上記選択率を高める
ことのできるリン脂質の塩基交換反応方法を提供するも
のである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の課
題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、反応系のpHを
制御することにより、微生物によって生産されるホスホ
リパーゼDの選択率を制御することが可能となり、これ
まで主として加水分解反応が優先的に進行すると考えら
れていた微生物由来のホスホリパーゼDを用いた場合で
も、微生物種に依存することなくホスファチジル基転移
反応を安定に且つ効率的に行なうことができることを見
いだした。即ち、本発明は、微生物の生産するホスホリ
パーゼDのホスファチジル基転移作用を利用して塩基構
造が変換されたリン脂質を製造するにあたり、反応系の
pHをホスホリパーゼDの加水分解反応の至適pHから偏倚
させ、ホスホリパーゼDを失活させることなく加水分解
反応を抑制できるpHに保持し、ホスホリパーゼDの選択
率(加水分解反応速度に対する転移反応速度の比)を高
めて反応を行なうことを特徴とするリン脂質の塩基交換
反応方法を内容とするものである。
【0007】即ち、例えば加水分解反応の至適pHがpH8
付近に存在するホスホリパーゼDをホスファチジル基転
移反応に利用する際に、反応系のpHを加水分解反応を抑
制する様な条件、即ちpHが3〜5の低pH域又はpH10〜
12の高pH域において反応を行なうことにより、転移活
性に比べ加水分解活性が低く抑えられるためホスホリパ
ーゼDの選択率を高めることが可能となる。特に低pH域
においてはホスホリパーゼDの転移活性自体も高められ
るため、この効果がより顕著となる。本発明者らの検討
結果によれば、本発明の方法により加水分解生成物は殆
ど認められず、ホスホリパーゼDの選択率をほぼ100
%にまで高めることが可能である。
【0008】本発明に用いられる微生物としては、ホス
ホリパーゼDを生産するものであればいかなる微生物も
利用することができるが、代表的なものとして、リゾプ
ス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus) 属、ム
コール(Mucor) 属、シュードモナス(Psedomonas)属、キ
ャンディダ(Candida) 属、ペリシリウム(Penicillium)
属、クロモバクテリウム(Chromobacterium) 属、ストレ
プトマイセス(Streptomyces)属、ストレプトバーチシ
リウム(Streptoverticillium )属、ミクロモノスポラ
(Micromonospora) 属、ノカルディア(Nocardia) 属、
ノカルディオプシス(Nocardiopsis) 属、アクチノマヂ
ューラ(Actinomadura) 属、等に属する微生物を挙げる
ことができる。より具体的には、リゾプス・ジャパニカ
ス(Rhizopus japonicus, IFO 4785)、リゾプス・デレ
マー(Rhizopus delemar, IFO 4697)、アスペルギルス・
ニガー(Aspergillus niger, IFO 4066) 、シュードモナ
ス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens, IFO
3081) 、ムコール・ミーハイ(Mucor miehei, ATCC 1645
7)、キャンディダ・ルゴサ(Candida rugosa, ATCC 1057
1)、ペニシリウム・サイクロピウム(Penicillium cyclo
pium, IFO 5847) 、クロモバクテリウム・ビスコサム(C
hromobacterium viscosum, ATCC 6918) 、ストレプトマ
イセス・メディオシディカス(Streptomyces mediocidi
cus, IFO 13202)、ストレプトマイセス・プルニカラー
(Streptomyces prunicolor, IFO 13075)、ストレプトマ
イセス・アンチバイオティカス(Streptomyces antibiot
icus, IFO 13271)、ストレプトバーチシリウム・ハチジ
ョーエンセ(Streptoverticillium hachijoense, IFO 1
2782)、ストレプトバーチシリウム・シンナモネウム(S
treptoverticillium cinnamoneum, IFO 12852)、ミクロ
モノスポラ・チャルセア(Micromonospora chalcea,ATC
C 12452) 、ノカルディア・メディテラーネイ(Nocardi
a mediterranei, IFO13142) 、ノカルディオプシス・ダ
ソンビレイ(Nocardiopsis dassonvillei, IFO 13908)
、アクチノマジューラ・リバノチカ(Actinomadura li
banotica, IFO14095) 等が挙げられる。これらは単独又
は2種以上組み合わせて用いられ、これらの他にも公知
の微生物が適用される。
【0009】上記該微生物を培養して、ホスホリパーゼ
を生産させるために用いられる培地成分としては、微生
物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭
素源としては同化可能な炭素化合物、例えばブドウ糖、
ショ糖、乳糖、麦芽糖、澱粉、デキストリン、糖蜜等の
糖類、グリセリン、炭化水素類、有機酸、脂肪酸、油
脂、アルコール類等が単独又は2種以上の組み合わせで
使用される。窒素源としては利用可能な窒素化合物であ
ればよく、無機窒素源、有機窒素源いづれでも利用可能
であり、例えばコーンスチープリカー、大豆粉、小麦グ
ルテン、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、麦芽エキ
ス、カゼイン加水分解物、尿素、カザミノ酸、硝酸態窒
素、アンモニウム態窒素等が単独又は2種以上の組み合
わせで使用される。その他、リン酸塩、マグネシウム、
カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛、食塩等の
塩類が必要に応じて単独又は2種以上の組み合わせで使
用される。
【0010】また、上記該微生物の培養方法としては一
般に微生物の培養に用いられる方法が利用される。即
ち、回分培養、流加培養、連続培養等が用いられ、培養
温度は、菌体が生育しリン脂質分解酵素を生産可能な範
囲内で適宜採用し得るが、通常15〜40℃が好まし
い。回分培養においては、培養時間は菌体内リン脂質分
解酵素活性が最大となる時点で培養を終了すればよく、
通常は1〜7日程度である。
【0011】微生物の生産するホスホリパーゼDとして
は、菌体外に分泌された酵素を利用する場合は、微生物
の培養液をそのまま反応に用いてもよいし、静置分離、
濾過、或いは遠心分離などの方法を用いて菌体を分離し
た後に利用してもよい。また、精製した酵素を用いても
よいが、好ましくは微生物の培養液から菌体を除去した
後培養液を濃縮し、反応に利用するほうが効率よくホス
ファチジル基転移反応を行なうことができ、工業的には
好都合である。また、菌体内に蓄積された酵素を利用す
る場合は、該酵素を微生物菌体から分離あるいは抽出
し、そのままもしくは固定化して使用してもよく、ある
いは微生物菌体をそのまま使用してもなんら問題はな
い。
【0012】酵素の使用量としてはリン脂質1gあたり
0.01〜1000ユニットが好ましく、より好ましく
は0.1〜10ユニットの範囲である。ここでいう酵素
活性単位の1ユニットとは、1分間に1μmol のホスフ
ァチジルコリンを加水分解する酵素量を表す。
【0013】本発明において用いられるホスファチジル
基転移反応の原料リン脂質としては、ホスホリパーゼD
の基質となり得るものであれば、天然資源から抽出した
もの、又は抽出後精製したもの、或いは合成したものの
如何を問わず使用できる。また、市販のもの、或いは公
知の方法で調整したものを使用してもよい。例えば、大
豆レシチン、脱脂大豆レシチン、卵黄レシチン、ホスフ
ァチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホ
スファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、リ
ゾレシチン、ホスファチジン酸等、又はそれらの混合物
等が挙げられる。本発明の効果を最大に発揮するために
は、原料リン脂質として精製したもの、ないしは組成の
単純なものを用いた方が純粋な反応生成物が得られる面
で都合が良い。また、原料リン脂質の価格及び人手の容
易さ、更には酵素に対する反応性の面から、特にホスフ
ァチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホ
スファチジルセリンが工業的に効果が高く好ましい。
【0014】これらのリン脂質の構成脂肪酸としては同
一又は異種であって、炭素数8〜24の飽和又は不飽和
脂肪酸であり、例えばカプロン酸、カプリン酸、ラウリ
ン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベ
ヘン酸、アラキジン酸、パルミトオレイン酸、オレイン
酸、リノール酸、α−及びγ−リノレイン酸、エルシン
酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキ
サエン酸、テトラコサテトラエン酸等が挙げられる。
【0015】本発明における受容体としては、コリン、
エタノールアミン、セリン、Nーメチルエタノールアミ
ン、N,Nージメチルエタノールアミン等の含窒素アル
コール類やグリセロール、グルコース、フラクトース等
のポリオール、単糖類等、カルニチン、アスコルビン酸
等の水酸基を有するビタミン類等を挙げることができ
る。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられ
る。
【0016】本発明において所定のpHを保つために種々
の酸、アルカリ、バッファーが用いられるが、例えばpH
3〜5の範囲では、20mM〜1Mのギ酸−ギ酸ナトリウ
ムバッファー、グリシン−塩酸バッファー、酢酸−酢酸
ナトリウムバッファー、クエン酸−クエン酸ナトリウム
バッファー、或いは1mM〜1Mのギ酸、酢酸、コハク
酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、塩
酸、硫酸、硝酸、リン酸等が、pH10〜12の範囲で
は、20mM〜1Mのリン酸ナトリウムバッファー、グリ
シン−水酸化ナトリウムバッファー、炭酸水素ナトリウ
ム−炭酸ナトリウムバッファー、アンモニア−塩化アン
モニウムバッファーや、1mM〜1Mの水酸化カリウム、
水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等
が用いられ得る。これらは単独又は2種以上組み合わせ
て用いられる。
【0017】反応は、原料リン脂質を溶解又は懸濁する
有機溶媒の存在下で行うことが好ましく、微生物酵素を
失活させることの少ない溶媒系であればいずれも使用で
きる。例えば石油エーテル、ジエチルエーテル、メチル
エチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、クロロホル
ム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、n
−オクタン、イソオクタン、酢酸エチル、ジオキサン、
ベンゼン等の溶媒、又はこれらの混合溶媒系等が挙げら
れる。ただし、前述の如くアルコール類は目的反応の基
質となるため、基質として添加する以外に用いることは
あまり好ましくない。反応温度は、用いる微生物の生産
するホスホリパーゼDの至適温度付近が好ましく、通常
20〜60℃の範囲である。ただし、用いる溶媒が低沸
点のものである場合等は、この限りではない。反応時間
については、回分法の場合は概ね0.5〜40時間、半
回分法や連続法においても、この反応条件に見合った反
応時間を設定することにより、目的とする反応を行わせ
ることができる。また反応様式としては、容器に入れた
有機溶媒相と水相とを、懸濁し接触反応させればよく、
回転撹拌や超音波による撹拌方式、カラム中において水
相と有機溶媒相とを向流に流して接触させる方式、カラ
ム中に酵素を含む水相を保持しておいて、油滴状に導入
した有機溶媒相を自然浮上させながら反応を行なう方
式、などのあらゆる形式の反応様式が適用可能である。
【0018】
【発明の効果】叙上のごとく、ホスファチジル基転移反
応を行なう際に反応系のpHをホスホリパーゼDの加水分
解反応の至適pHより偏倚させ、ホスホリパーゼDを失活
させることなく加水分解反応を抑制できるpHを保つこと
により、ホスファチジル基転移反応の選択率を微生物種
に依存することなく著しく高めることが可能となる。こ
の様に反応条件を操作することによりホスファチジル基
転移反応の選択率を抑制することに成功したのは本発明
が最初である。更に本発明によれば、例えば近年、ドラ
ッグデリバリーシステムにおけるリポソームの基材とし
て工業的生産が望まれている高純度のリン脂質を生産す
るにあたり、ホスファチジル基転移反応を利用して効率
的且つ経済的に所望のリン脂質を高収率で得ることがで
きる。
【0019】
【実施例】次に実施例を用いて本発明を詳細に説明する
が、本発明はもとよりかかる実施例のみに限定されるも
のではない。以下の記載において、「%」は特に断らな
い限り「重量%」を意味する。尚、リン脂質の分析は高
速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて行なった。
固定相には、シリカゲルにアミノプロピル基を化学結合
させたカラムを、また移動相溶媒としてはアセトニトリ
ル:メタノール:10mMリン酸二水素アンモニウム=6
12:289:100の混合溶媒系を用い、205nmに
おける吸収を測定することにより定量を行なった。ホス
ホリパーゼDの加水分解活性は、ホスファチジルコリン
がホスホリパーゼDにより加水分解される際に遊離して
くるコリンの量を酵素法を用いることにより測定を行な
った。酵素活性の定義として、37℃、pH8.0におけ
る反応で、1分間あたり1μmol のコリンを遊離する酵
素量を1ユニット(Unit)と定義した。
【0020】比較例1 ストレプトバーチシリウム・シナモネウム IFO 12852
を、グルコース1%、肉エキス0.75%、ポリペプト
ン0.75%、NaCl0.3%、MgSO4 0.1%を含む培
地(pH7.2)で、温度30℃、6日間振盪培養した。
得られた培養液は3000rpm で10分間遠心分離を行
なうことにより菌体を除去した後酵素溶液として塩基交
換反応に供した。こうして得られた培養液中のホスホリ
パーゼDの加水分解反応の至適pHは8.0であり、37
℃、pH8.0におけるホスホリパーゼD加水分解活性は
培養液1リットルあたり1000ユニットであった。密
栓したサンプル瓶に、ホスファチジルコリン(旭化成
製)0.7g、ジエチルエーテル300ml、4Mモノエ
タノールアミン(pH8.0)40ml、0.1Mクエン酸
−クエン酸ナトリウムバッファー(pH8.0)155m
l、上記の如く調製した培養上清5.0mlを加え、30
℃にて5時間反応させた。反応液組成の経時変化を図1
に示した。分析の結果、5時間反応後の反応液組成は、
ホスファチジルコリン0%、ホスファチジルエタノール
アミン11%、ホスファチジン酸89%、選択率は11
%であった。
【0021】実施例1 モノエタノールアミンならびにクエン酸−クエン酸ナト
リウムバッファーのpHを5.0とした以外は比較例1と
全く同様に行なった。反応液組成の経時変化を図2に示
した。分析の結果、5時間反応後の反応液組成は、ホス
ファチジルコリン0%、ホスファチジルエタノールアミ
ン100%、ホスファチジン酸0%、選択率は100%
であった。
【0022】実施例2 モノエタノールアミンのpHを11.0として、バッファ
ーとしてリン酸ナトリウムバッファー(pH11.0)を
用いた以外は実施例1と全く同様に行なった。反応液組
成の経時変化を図3に示した。分析の結果、5時間反応
後の反応液組成は、ホスファチジルコリン74%、ホス
ファチジルエタノールアミン25%、ホスファチジン酸
1%、選択率は96%であった。
【0023】実施例3 実施例1で使用した微生物の代わりに、ストレプトマイ
セス・メディオシディカス IFO 13202、ミクロモノスポ
ラ・チャルセア ATCC 12452 、ノカルディア・メディテ
ラーネイ IFO 13142、ノカルディオプシス・ダソンビレ
イ IFO 13908、アクチノマジューラ・リバノチカ IFO 1
4095、リゾプス・デレマー IFO 4697 、アスペルギルス
・ニガー IFO 4066 、シュードモナス・フルオレッセン
ス IFO 3081 、ムコール・ミーハイ ATCC 16457 、キャ
ンディダ・ルゴサ ATCC 10571 、ペニシリウム・サイク
ロピウム IFO 5847 、クロモバクテリウム・ビスコサム
ATCC 6918を使用し、pH5.0、8.0、11.0の各
pHにおいて塩基交換反応を実施した。pH5.0の時は実
施例1と、pH8.0の時は比較例1と、pH11.0の時
は実施例2とそれぞれ一致する様に反応条件を調製して
反応を実施した。どの微生物もpH7.0〜8.0の範囲
に加水分解反応の至適pHを持っていた。PCからPEへ
の塩基交換反応を行なった場合の5時間後の反応液組成
の分析結果ならびに選択率を表1及び表2に示した。表
1及び表2より、微生物種によらず反応液のpHをホスホ
リパーゼDの加水分解反応の至適pHより偏倚させ加水分
解反応を抑制することにより、ホスホリパーゼDの選択
率が著しく高められていることがわかる。
【0024】
【表1】 PC:ホスファチジルコリン PE:ホスファチジルエタノールアミン PA:ホスファチジン酸
【0025】
【表2】 PC:ホスファチジルコリン PE:ホスファチジルエタノールアミン PA:ホスファチジン酸
【0026】実施例4 塩基交換反応の際の受容体として、エタノールアミンの
代わりにセリンを16.8g加え、微生物としてストレ
プトバーチシリウム・シナモネウムを用いた以外は実施
例2と全く同様に行なった。結果を表3に示す。
【0027】実施例5 塩基交換反応の際の受容体として、セリンの代わりにグ
リセロールを14.7g加えた以外は実施例4と全く同
様に行なった。結果を表3に示す。
【0028】実施例6 塩基交換反応の際の受容体として、セリンの代わりにア
スコルビン酸を28.2g加えた以外は実施例4と全く
同様に行なった。結果を表3に示す。
【0029】実施例7 塩基交換反応の際の受容体として、セリンの代わりにカ
ルニチンを25.9g加えた以外は実施例4と全く同様
に行なった。結果を表3に示す。
【0030】
【表3】 PC:ホスファチジルコリン PA:ホスファチジン酸 PX:ホスファチジルセリン(実施例3) ホスファチジルグリセロール(実施例4) ホスファチジルイノシトール(実施例5) ホスファチジルアスコルビン酸(実施例6) ホスファチジルカルニチン(実施例7)
【0031】実施例8 ストレプトバーチシリウム・シナムネウム IFO 12852
を、グルコース10%、肉エキス0.75%、ポリペプ
トン0.75%、NaCl 0.3%、MgSO4 0.1%を含
む培地(pH7.2)で、温度30℃、6日間振盪培養し
た。得られた菌体を2回水洗し、次いでアセトンに浸漬
した後濾過し、次いで常温にて真空乾燥した。得られた
乾燥菌体を50mg培養上清を加える代わりに添加した以
外は実施例3と全く同様に行なった。5時間反応後の反
応液組成の分析結果ならびに選択率を表4に示した。ホ
スファチジル基転移反応を行なう際に反応系のpHをPL
−Dの加水分解反応の至適pHより偏倚させることによ
り、PL−Dの選択率を変えることができ、ホスファチ
ジル基転移反応を微生物種に依存することなく抑制する
ことが可能となる。
【0032】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例1における反応液組成の経時変化を示す
グラフである。
【図2】実施例1における反応液組成の経時変化を示す
グラフである。
【図3】実施例2における反応液組成の経時変化を示す
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12P 9/00 C12R 1:72) (C12P 9/00 C12R 1:465) (C12P 9/00 C12R 1:365) (C12P 9/00 C12R 1:66) (C12P 9/00 C12R 1:785) (C12P 9/00 C12R 1:80) (C12P 9/00 C12R 1:29) (C12P 9/00 C12R 1:03)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物の生産するホスホリパーゼDのホ
    スファチジル基転移作用を利用して塩基構造が変換され
    たリン脂質を製造するにあたり、反応系のpHをホスホリ
    パーゼDの加水分解反応の至適pHから偏倚させ、ホスホ
    リパーゼDを失活させることなく加水分解反応を抑制で
    きるpHに保持し、ホスホリパーゼDの選択率(加水分解
    反応速度に対する転移反応速度の比)を高めて反応を行
    なうことを特徴とするリン脂質の塩基交換反応方法。
  2. 【請求項2】 微生物がリゾプス属、アスペルギルス
    属、シュードモナス属、ムコール属、キャンディダ属、
    ペリシリウム属、クロモバクテリウム属、ストレプトマ
    イセス属、ストレプトバーチシリウム属、ミクロモノス
    ポラ属、ノカルディア属、ノカルディオプシス属及びア
    クチノマヂューラ属から選択される少なくとも1種であ
    る請求項1記載の反応方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2006015773A2 (de) * 2004-08-07 2006-02-16 Bioghurt Biogarde Gmbh & Co. Kg Verfahren zur herstellung und/oder modifikation von phospholipiden unter verwendung der phospholiphase d aus streptomyces flavopersicum
US7067292B2 (en) 2001-08-28 2006-06-27 Bioghurt Biogarde Gmbh & Co. Kg Method for the production of phospholipids

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US7067292B2 (en) 2001-08-28 2006-06-27 Bioghurt Biogarde Gmbh & Co. Kg Method for the production of phospholipids
WO2006015773A2 (de) * 2004-08-07 2006-02-16 Bioghurt Biogarde Gmbh & Co. Kg Verfahren zur herstellung und/oder modifikation von phospholipiden unter verwendung der phospholiphase d aus streptomyces flavopersicum
WO2006015773A3 (de) * 2004-08-07 2006-07-13 Bioghurt Biogarde Gmbh & Co Kg Verfahren zur herstellung und/oder modifikation von phospholipiden unter verwendung der phospholiphase d aus streptomyces flavopersicum

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