JPH05332448A - 油圧式無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

油圧式無段変速機の変速制御装置

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JPH05332448A
JPH05332448A JP14040292A JP14040292A JPH05332448A JP H05332448 A JPH05332448 A JP H05332448A JP 14040292 A JP14040292 A JP 14040292A JP 14040292 A JP14040292 A JP 14040292A JP H05332448 A JPH05332448 A JP H05332448A
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clutch
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泉 ▲高▼木
Izumi Takagi
Toshiyoshi Shibata
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 前進高速回転時における伝動効率の向上のた
めの直結用クラッチによる後進回転時における動力伝達
の損失の防止である。 【構成】 モータ用斜板19は、エンジン回転速度の上
昇に応じて立直側へ作動するガバナー油圧アクチュエー
タA1 と、モータ用プランジャ18の傾転モーメントに
より、傾斜角度が制御される。油圧モータ側の回転速度
の上昇に応じて、作動油圧が上昇して直結用油圧クラッ
チC2 を作動するガバナー弁Gを設る。後進状態の傾転
モーメントが、前進状態よりも大きくなるように、油圧
分配環29の中立位置から前進位置までの回動角度θf
よりも後進位置までの回動角度θrを大きく設定する。
エンジン回転数が最大でもモータ回転数は直結用クラッ
チC2を作動させるほどには大きくならない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、斜板式の油圧ポンプと
斜板式の油圧モータとを油圧回路を介して接続し、油圧
モータ側の回転速度に対応して作動する直結用油圧クラ
ッチを備え、モータ用斜板の傾斜角度を変更することに
より無段変速制御を行う油圧式無段変速機の変速制御装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】直結用油圧クラッチを有するこの種油圧
式無段変速機としては、特公昭42-19728号があり、モー
タ用斜板の傾斜角度が略直立したとき、すなわち、減速
比が略1:1までになった時に、これに連動する切り換
え弁により、直結用油圧クラッチを作動させて油圧モー
タと油圧ポンプとを直結するように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術には、
前,後進切り換え機構は開示されていないが、仮に、こ
の従来技術を後進回転に適用するとなると、油圧モータ
の後進回転時には、油圧モータの回転方向と油圧ポンプ
(入力軸)の回転方向が異方向となる。このような後進
回転状態において、モータ用斜板が立直状態になって、
直結用油圧クラッチが作動すると、油圧モータの回転
を、これとは異方向回転の油圧ポンプ(入力軸)が制動
することになり、動力伝達力の大きな損失になる。
【0004】
【発明の目的】本発明の目的は、直結用油圧クラッチを
備えることによる前進高速回転時における伝動効率の向
上、エンジン回転速度及びモータ負荷に応じた自動的な
変速制御及び後進回転時における動力伝達の損失の防止
である。
【0005】
【課題を解決するための手段】モータ用斜板は、エンジ
ン回転速度の上昇によりモータ用斜板を立直側へ、一方
油圧モータの負荷により前記とは逆に傾転側に動くよう
にし、油圧回路には、中立位置から前進位置及び後進位
置に回動切り換え自在な油圧分配環を備え、油圧ポンプ
の回転方向と油圧モータの回転方向が、モータ前進回転
時は同方向、後進回転時は異方向となるように分配環回
動位置を設定し、直結用油圧クラッチの油供給用油路
に、油圧モータ側の回転速度の上昇に応じて作動油圧が
上昇するガバナー弁を設け、後進状態におけるモータ用
斜板に対する上記傾転モーメントが、前進状態における
傾転モーメントよりも大きくなるように、油圧分配環の
中立位置から前進位置までの回動角度に対して、中立位
置から後進位置までの回動角度を大きく設定している。
【0006】
【作用】モータ用斜板は、エンジン回転速度の上昇、た
とえば、エンジン回転速度の二乗に略比例して作動油圧
が上昇するガバナー油圧アクチュエータによる立直側へ
の作用力と、モータ用プランジャの押し付け力による傾
転モーメントとにより、エンジン回転速度とモータ負荷
に応じて傾斜角度が自動制御され、それにより、油圧モ
ータの回転は無段変速制御される。前進回転時におい
て、油圧モータの回転速度が上昇すると、ガバナー弁は
遠心力により開弁し、直結用油圧クラッチへと作動油の
供給を開始する。ガバナー弁の圧力調整作用により、ガ
バナー弁から供給される作動油圧力は、油圧モータの回
転速度の二乗に略比例して上昇するので、直結用油圧ク
ラッチは、 中速時には、半クラッチになり、キックダウ
ンできる余地を残し、高速回転になると、完全にクラッ
チングされ、直結状態となる。 一方、後進回転時には、モータ用斜板に対するモータ用
プランジャの傾転モーメントが、前進状態の時よりも大
きくなるため、エンジン回転速度の上昇により、油圧ア
クチュエータの作動油圧が大きくなっても、モータ用斜
板を立直側へと立ち上がらせることはできず、モータ用
斜板は大きな傾斜角度(大きな減速比)の状態に維持さ
れる。したがって、直結用油圧クラッチは作動せず、油
圧ポンプ(入力軸)の回転によって油圧モータが制動さ
れるのを防止できる。
【0007】
【実施例】図1は、本発明を適用した油圧式無段変速機
の全体縦断面図(シフト部を除く)を示しており、理解
を容易にするために、軸方向の前後方向を図中に記載の
ように仮定している。
【0008】まず、全体のレイアウトを説明する。変速
用入力軸1の前端部は図示しないエンジンに連動連結さ
れており、入力軸1の外周には、前側から順に斜板式の
油圧モータ(アキシャル形プランジャモータ)Mと斜板
式の油圧ポンプ(アキシャル形プランジャポンプ)Pと
が前後方向(軸方向)に並ぶように直列配置されてい
る。さらに具体的には、前側から順に、モータ用斜板1
9、モータ用シリンダブロック4、ポンプ用斜板15及
びポンプ用シリンダブロック2が前後方向(軸方向)に
並ぶように直列配置され、ポンプ用シリンダブロック2
の半径方向外方にはこれを間隔をおいて覆う中間ドラム
5が配置され、該中間ドラム5と上記ポンプ用シリンダ
ブロック2の間に直結用油圧クラッチC2 が配置されて
いる。中間ドラム5及びポンプ用シリンダブロック2の
後側に、油圧回路を有するバルブボディ3が配置され、
バルブボディ3の後側には、リヤカバー23が固着され
ている。該リヤカバー23内には、リヤカバー23内の
空間部24を外方空間部24aと内方空間部24bに区
画する前後進切り換え用の油圧分配環29、これを支持
する分配環支持軸25及び主クラッチ切り換え用のスプ
ール30等が配置されている。モータ用斜板19の前上
方には、モータ用斜板19の傾斜角度を制御して、自動
変速制御を行う油圧アクチュエータA1 が配置されてい
る。
【0009】油圧ポンプPの概要を説明する。ポンプ用
シリンダブロック2は、その内周側が入力軸1の後端部
外周にスプライン嵌合しており、入力軸1と一体的に回
転する。ポンプ用シリンダブロック2には円周方向に等
間隔を置いて、奇数個、たとえば、5つの円筒穴71が
形成されており、各円筒穴71は入力軸1と平行に形成
されると共に、前方に向いて開口している。各円筒穴7
1には、それぞれ有底筒状のポンプ用プランジャ14が
軸方向摺動自在で前方へ突出可能に嵌合しており、各ポ
ンプ用プランジャ14の前端部には緩やかな球面形状部
14aが形成され、前側のポンプ用斜板15に当接して
いる。ポンプ用斜板15は、ポンプ用プランジャ14の
往復運動のガイドとなるものであり、スラスト軸受16
を介してモータ用シリンダブロック4の後端部斜面4a
に設置されている。各ポンプ用プランジャ14内にはこ
れを前方に付勢するコイルばね17が円筒穴後端面との
間に縮設されており、これにより、ポンプ用斜板15を
押さえてポンプ用斜板15の脱落を防止すると共に、ポ
ンプ用シリンダブロック2を後側のバルブボディ3に押
さえ付けて摺動シール面2bにおける低回転時のシール
性を向上させ、さらに、ポンプ用プランジャ14を前方
に付勢していることにより、自己吸引能力を油圧ポンプ
Pに付与している。
【0010】油圧モータMの概要を説明する。モータ用
シリンダブロック4は、中間ドラム5を介してバルブボ
ディ3に一体的に締結されると共に、その内周側が入力
軸1に対して環状油路101を隔てて回転自在に嵌合
し、ミッションケース22に軸受72等を介して支持さ
れている。モータ用シリンダブロック4には円周方向に
等間隔を置いて、奇数個、たとえば、9個の円筒穴73
が形成されており、該円筒穴73は、入力軸1と平行に
形成されると共に、前記油圧ポンプPの場合と同様に前
方に向いて開口している。各円筒穴73には、それぞれ
有底筒状のモータ用プランジャ18が軸方向摺動自在で
前方に突出可能に嵌合しており、各モータ用プランジャ
18の前端部には緩やかな球面形状部18aが形成さ
れ、前側のモータ用斜板19に当接している。モータ用
斜板19は、モータ用プランジャ18の往復運動のガイ
ドとなるものであり、転動体20を介して前側の斜板ホ
ルダー21に支持されている。各モータ用プランジャ1
8内にはこれを前方に付勢するコイルばね37が円筒穴
後端面との間に縮設されており、これにより、自己吸引
力を油圧モータMに付与している。
【0011】油路構造について説明する。図1におい
て、入力軸1の外周に形成された環状油路101の前端
部は、環状油室102を介して図示しないHSTチャー
ジング用フィードポンプ等に接続され、オイルパン等か
ら環状油室102を介して環状油路101へと作動油が
供給されるようになっている。環状油路101の後端部
には、入力軸1内を通って直結用油圧クラッチC2 に至
る直結用油圧クラッチ冷却用油路103と、モータ用シ
リンダブロック4内、中間ドラム5内及びバルブボディ
3内を通って直結用油圧クラッチC2 の作動油室105
に至る直結用油圧クラッチ作動油供給油路106と、図
2のようにモータ用シリンダブロック4内、中間ドラム
5内及びバルブボディ3内を通ってリヤカバー23内の
外方空間部24aに至るチャージング油路108が連通
している。
【0012】上記チャージング油路108の外方空間部
24aへの出口部分には、外方空間部24aへと開弁す
るチェック弁74が設けられおり、該チェック弁74
は、バルブボディ3にバルブシート部75を設け、該シ
ート部75に着座する鋼球45を組み込んでいる。ま
た、このチェック弁74は、バルブボディ3の回転によ
り鋼球45に発生する遠心力が、鋼球45を後方(開弁
方向)に作用するように、バルブシート部75に傾きを
与えている。上記チャージング油路108には、内方空
間部24bに至る枝油路108aが形成されており、枝
油路108aの内方空間部24bへの出口には、内部空
間部24b方向に開弁するチェック弁77が設けられて
いる。該チェック弁77は、バルブシート46、圧縮コ
イルばね48、該圧縮コイルばね48の弾性力により上
記バルブシート46に着座する鋼球49及び押さえ棒4
7等から構成され、バルブボディ3の概略中心部に配置
されている。
【0013】上述のチャージング油路108部分から空
間部24に供給される作動油が、図1の油圧ポンプPを
経て油圧モータMに至り、再度空間部24まで戻る油路
の概要を説明する。油圧ポンプPに関して、バルブボデ
ィ3には、図1の上側に示すように吸入行程のポンプ用
円筒穴71と外方空間部24aとを連通して外方空間部
24aからポンプ用円筒穴71内に作動油を吸入するた
めのポンプ側吸入用油路110と、下側に示すように吐
出行程のポンプ用円筒穴71と内方空間部24bとを連
通してポンプ用円筒穴71から内方空間部24bに作動
油を吐出するためのポンプ側吐出用油路111とが形成
されている。油圧モータMに関して、バルブボディ3、
中間ドラム5及びモータ用シリンダブロック4には、各
モータ用円筒穴73に連通する9つのモータ側油路11
3が形成されており、これらモータ側油路113は空間
部24と各モータ用円筒穴73を連通しているが、モー
タ側油路113の後端ポートは回転軸心を中心とした同
一円周上に配列されており、モータ用シリンダブロック
4と一体に回転するバルブボディ3の回転により、図1
の下側に示すように膨張行程のモータ用円筒穴73は、
内方空間部24bに連通して内方空間部24bからモー
タ用円筒穴73内に作動油を圧入し、一方、上側に示す
ように排出行程のモータ用円筒穴73は、外方空間部2
4aに連通してモータ用円筒穴73から外方空間部24
aに作動油を排出するようになっている。
【0014】図1の斜板ホルダー21は、入力軸1と直
角なトラニオン軸22aを介してミッションケース22
に支持され、トラニオン軸心を回動中心として傾動自在
となっており、自動変速制御用の前記油圧アクチュエー
タA1 及び後述するモータ用プランジャ18による傾転
モーメントによって入力軸心と直角な面に対する傾きが
変化する。それにより、モータ用プランジャ18のスト
ローク量を調整し、無段階にモータ容量を変化させるこ
とができるようになっている。油圧ポンプPに対する油
圧モータMの変速比は次式で与えられる。 変速比=ポンプ回転数/モータ回転数 =1+モータ容量/ポンプ容量 上記式から明らかなように、モータ容量を0からある値
に変えれば、変速比は1からある必要な値まで変化させ
ることができる。モータ容量は、モータ用プランジャ1
8のストロークにより決定されるものであり、モータ用
斜板19が入力軸心と直角な姿勢の時は、上記ストロー
クが0になることにより、モータ容量は0となり、変速
比は1である。そして、図1のように傾斜して行くに従
い、モータ容量が増加することにより、変速比が増加し
て行く。
【0015】斜板ホルダー21の傾斜角度を制御するた
めの詳しい構造を説明する。油圧アクチュエータA1
は、ミッションケース22に一体に形成されたシリンダ
36内に、球面状の摺動部を有するピストン35が摺動
自在に嵌合しており、ピストン35は、シリンダ36の
後端ばね受けリングとの間に縮設されたコイルばね81
により、前方に付勢されている。上記ピストン35に
は、ロッドが一体に形成されると共に、後方に突出する
ロッドエンド34が連結されており、該ロッドエンド3
4は、球継ぎ手機構を介してモータ用斜板ホルダー21
の上端部に連結されている。シリンダ36内の油室82
は、流量調節用の絞り39を介してミッションケース2
2の壁内の油路120に連通している。該油路120
は、エンジンの回転速度の二乗に略比例して圧力が変化
するいわゆるガバナー油圧源に接続しており、上記圧力
の作動油が供給される。従って、エンジン回転速度の上
昇に対応(エンジン回転速度の二乗に略比例)してシリ
ンダ36の油室82の作動油圧が上昇し、コイルばね8
1に抗してモータ斜板19を入力軸1に対して直角な状
態へと立ち上がらせる。
【0016】一方、斜板ホルダー21のトラニオン軸2
2aの位置は、モータ回転軸心に対して上記油圧アクチ
ュエータ側とは反対側(図中下側)に偏心すると共に、
モータ斜板19よりも後方に設定されており、これによ
り、モータ用プランジャ18の前方への押し付け荷重
で、モータ用斜板19に対して、これを傾斜させて減速
比を増大させるT1 方向に傾転モーメントが作用するよ
うになっている。該傾転モーメントは、モータ負荷が大
きくなってモータ用プランジャ18内の作動油圧が上昇
するにしたがって増加し、モータ斜板19の傾斜を増加
させて、変速比(減速比)を大きくするよう作動する。
すなわち、上記のように変速制御装置として、エンジン
回転速度の上昇に対応(エンジン回転速度の二乗に略比
例)してモータ斜板19を立ち上がらせるように作用す
るシリンダ油室82内のガバナー油圧と、モータ負荷の
増加に対応したモータ用プランジャ18の押し付け荷重
(反力)により傾斜するように偏心配置されたモータ斜
板19と、傾斜角が大きくなる方向にピストン35を付
勢するコイルばね81の3要素を備え、それらの釣り合
いにより、エンジン回転速度とモータ負荷に対応する変
速比に自動的に制御することができるようになってい
る。
【0017】リヤカバー23内の構造を説明する。リヤ
カバー23は前述のようにバルブボディ3の後端面に一
体的に締結され、バルブボディ3と一体回転するように
なっており、バルブボディ3の後端面とリヤカバー23
の内面の間で前記空間部24を形成している。該空間部
24内に配置されている油圧分配環支持軸25は、入力
軸1と概略同軸心に配置されると共に、ラジアル軸受2
7、28を介してリヤカバー23に回転自在に支持さ
れ、また、リヤカバー23の後側段部との間にはスラス
ト軸受26が配置されており、これにより回転を確保し
ながら軸方向後方への移動を規制している。支持軸25
の前端部には、支持軸心から偏心した円筒部25aが一
体に形成され、該偏心円筒部25aの外周面に前記有底
筒状の油圧分配環29が嵌合しており、これにより、リ
ヤカバー3内の空間部24を、前述のように分配環29
の外方側の外方空間部24aと、内方側の内方空間部2
4bとに区画している。油圧分配環29の前端面は、内
方空間部24bの作動油圧力によりバルブボディ3の後
端面に押し出されることにより摺接しており、圧力によ
り押し付け強さが自動的に変化することから、自己隙間
補償機能を有している。そして、この支持軸25の回動
により、油圧分配環29を、図4に示すような前進位置
Fと、中立位置Nと、後進位置Rとの間で位置変更自在
に切り換えられるようになっている。
【0018】図3のIV−IV断面部分図を示す図4におい
て、線22'a は、前記トラニオン軸22aと平行で、
モータ軸心を通る線であり、この線22'a と直角な垂
直線(以下、仮に「前後進分離線」と称する)L上に、
モータ用プランジャ18の上死点(最収縮点)U1 と下
死点(最伸長点)U2 が存在している。X1方向が前進
回転方向とすると、分配環29の中立位置Nは、分配環
29の中心が上記前後進分離線L上を通り、かつ、最も
上死点U1 側に偏った位置に設定されている。前進位
置Fは、上記中立位置Nから支持軸心回りにモータ前進
回転方向X1側へと角度θf (概略90°)回動した位
置に設定されているが、後進位置Rは、中立位置Nから
支持軸心回りにモータ後進回転方向X2 へと、前記角度
θf よりも大きな角度θr 回動した位置に設定されてお
り、両角度の差(θr −θf )=θaは、たとえば、概略
5°に設定されている。すなわち、Kn を中立位置にお
ける分配環中心、Kf を前進位置における分配環中心、
Kr を後進位置における分配環中心とすると、図示の実
施例では、前進時の分配環中心Kf は、略上記線22'
a 上に位置しており、後進時の分配環中心Kr は、上
記線22'a よりも下死点U2 側に変位し、線22'a
に対する変位角度θa が、概略5°となっている。
【0019】ポンプ側油路110、111のうち、外方
空間部24aに連通するポンプ側吸入用油路110は2
個形成され、それらの後端ポートは、上側の外方端部に
位置して、分配環29が前進位置F、中立位置Nあるい
は後進位置Rのいずれの状態でも、常に外方空間部24
aに連通している。内方空間部24bに連通するポンプ
側吐出用油路111は3個形成され、それらの後端ポー
トは、軸心近傍の下側部分に位置し、分配環29が前進
位置F、中立位置Nあるいは後進位置Rのいずれの状態
でも、常に内方空間部24bに連通している。
【0020】一方、9つのモータ側油路113の後端ポ
ートは、半径方向中間位置に、同一円周上等間隔で配列
されている。下死点U2 から前進回転方向X1 回りで上
死点U1 までの範囲(図中右側範囲)をW1 、上死点U
1 から前進回転方向X1 回りで下死点U2 までの範囲
(図中左側範囲)をW2 とする。分配環29が中立位置
Nの場合は、概ね線22'a よりも下死点U2 側の範囲
内のモータ側油路113が外方空間部24aに連通し、
上死点U1 側の範囲内のモータ側油路113が内方空間
部24bに連通し、油圧モータMは回転しない。分配環
29が前進位置Fの場合は、範囲W1内のモータ側油路
113が外方空間部24aに連通し、範囲W2 内のモー
タ側油路113が内方空間部24bに連通する。すなわ
ち、前進回転時においては、範囲W1 内のモータ側油路
113は排出行程のモータ用円筒穴73に連通してお
り、範囲W2 内のモータ側油路113は膨張行程のモー
タ用円筒穴73に連通しており、油圧モータMを前進回
転方向X1 に回転する。 分配環29が後進位置Rの場合は、範囲W1からX2 方
向側に角度θa ずれた範囲W'1内のモータ側油路113
が内方空間部24bに連通し、範囲W2 からX2 方向側
に角度θa ずれた範囲W'2内のモータ側油路113が外
方空間部24aに連通する。すなわち、後進時において
は、範囲W'1内のモータ側油路113は膨張行程のモー
タ用円筒穴73に連通しており、範囲W'2 内のモータ
側油路113は排出行程のモータ用円筒穴73に連通し
ており、油圧モータMを後進回転方向X2 に回転する。
この場合、前進回転時と比較して、モータ用プランジャ
18の押し付け荷重の仮想中心が下死点U2 側(上側)
へと移動していることになり、これにより、トラニオン
軸22aよりも下側(上死点U1 側)のプランジャ押し
付け荷重がθa /180だけ減ると共に、トラニオン軸
22aよりも上側(下死点U2 側)のプランジャ押し付
け荷重がθa /180だけ増加し、全体的には、前進時
の傾転モーメントと比べ傾転モーメントが増加すること
になる。いいかえると、後進位置の回動角度θr を、前
進位置の回動角度θf よりも大きくとって下死点U2 側
(上側)へと変位させていることにより、後進時におけ
るモータプランジャ18の押し付け荷重の仮想中心が前
進時よりも上方に移動して、モータ用斜板19に対する
傾転モーメントが、前進時よりも増加することになる。
したがって、モータ用斜板19を倒そうとする力が大き
くなる。該実施例では、図1の油圧アクチュエータA1
のばね81の荷重の調節により、後進回転時には、エン
ジン回転速度が最大になっても、モータ用プランジャ1
8の傾転モーメントによりモータ用斜板19を倒そう時
する力が、油圧アクチュエータA1 によるモータ用斜板
19を立直側へと起こそうとする力よりも大きくなるよ
うに変位角度θa が設定されており、後進回転時には、
常に、モータ用斜板19が最大傾斜位置(最大変速比位
置)に保たれ、それにより油圧モータMが低速域で回転
し、同油圧モータMの回転と関連し作動するガバナー弁
Gが開弁される速度に達せず、よって直結用油圧クラッ
チC2 が作動しないようになっているのである。
【0021】なお、分配環29の前端面(摺接面)に
は、内周端側と外周端側にそれぞれ1対ずつ楔形の溝7
8a,78bが形成されている。各溝78a,78bの
形成位置は、分配環29が前進位置Fあるいは後進位置
Rに位置している時に、上死点U1 及び下死点U2 の近
傍に位置して、 上記両点U1 ,U2 に対して、内側と外
側からそれぞれ突出するような位置に形成されている。
これにより、上死点U1と下死点U2 を各モータ側油路
113が通過する時に、内外の一方の空間部から分配環
29より徐々に閉じられ、続いて他方の空間部に徐々に
開口するようになっている。
【0022】直結用油圧クラッチC2 の構造を説明す
る。図1において、直結用油圧クラッチC2 は、湿式多
板式のクラッチであり、多数のフリクションプレート6
と、該フリクションプレート6と交互に配置された多数
のセパレータプレート7とを備えており、フリクション
プレート6は、ポンプ用シリンダブロック2の外周に形
成されたスプライン2aに軸方向摺動可能に係合して、
シリンダブロック2と一体的に回転するようになってい
る。直結用油圧クラッチC2 の軸方向両端部には、前記
両プレート6、7を軸方向に挟持可能な1対のプレッシ
ャプレート9が配置されており、両プレッシャプレート
9はこれらの間に縮設されたコイルばね(図示せず)に
より、両プレッシャプレート9は軸方向に互いに離れる
方向、すなわち、クラッチオフ側に付勢されている。
【0023】直結用油圧クラッチC2 を作動させるため
の油圧ピストン11は、バルブボディ3の環状凹部に軸
方向摺動自在に嵌合しており、前方に突出してプレッシ
ャプレート9間で両プレート6,7を圧接することによ
り、油圧モータMと油圧ポンプPをクラッチオン(直結
状態)にできるようになっている。
【0024】図5により、直結用油圧クラッチC2 の遠
心式ガバナー弁Gの構造を説明する。遠心式ガバナー弁
Gは、直結用油圧クラッチ作動油供給油路106の途中
であって、モータ用シリンブロック4に設けられてお
り、段付き移動スプール40と固定スリーブ41等から
構成されている。固定スリーブ41は、モータ用シリン
ダブロック4に形成された孔84に固着されており、該
スリーブ41内に、半径方向移動可能に段付き移動スプ
ール40を嵌合し、圧縮コイルばね42により、上記ス
プール40を半径方向内方(閉位置)に付勢している。
121はドレン孔であり、閉じ時に外部に連通して、直
結用油圧クラッチ側からの漏油をミッションケース22
内へと戻すようになっている。モータ用シリンダブロッ
ク4が回転して、遠心力により段付き移動スプール40
がばね42に抗して外方に移動し、上記回転速度が所定
値に達すると、入口側通路122と出口側通路123と
が連通し、スプール40の環状段面部40aに作動油が
流入する。スプール40は小径部と大径部との面積差
(段面部の面積)があることにより、スリーブ41内の
作動油によって、スプール40を半径方向内方に押す力
が発生する。上記面積差による内方へ押す力と遠心力に
よる外方へとの力の釣り合いにより、回転速度の二乗に
略比例した作動油圧力が生じ、直結用油圧クラッチC2
の油室105へと供給される。回転速度の増加に応じて
直結用油圧クラッチC2 側への作動油圧は増加し、それ
により、中速時の半クラッチ状態を経て高速時には完全
なクラッチング状態となるように作動油は制御される。
【0025】図3において、油圧ポンプPと油圧モータ
Mとの間の作動油の流れを断続する主クラッチC1 の構
造を説明する。主クラッチ用スプール30は、支持軸2
5の内周孔内に、支持軸25に対して回動可能に嵌合す
ると共に、スラスト荷重用のボール31、32により、
軸方向の荷重に対してもスムースに回動できるように支
持されている。スプール30の前端部には、内方空間部
24bに開口してスプール軸心を後方へと延びる縦油路
115と、該縦油路115の後端部から半径方向外方に
延びる油路116が形成され、一方、支持軸25には、
上記油路116と同一の軸方向位置に、外方へと延びて
外方空間部24aに開口する油路117が形成されてお
り、スプール30の回動により、上記油路116,11
7同士を遮断、連通することにより主クラッチC1 をオ
ン、オフするのである。
【0026】油圧変速機全体の作動及び本願発明に関連
する作動について説明する。入力軸1の回転によりポン
プ用シリンダブロック2を回転すると、吐出行程のポン
プ用プランジャ14を収容する円筒穴71から、ポンプ
側吐出用油路111を通って内方空間部24bに高圧の
作動油が吐出され、該高圧作動油は、一部のモータ側油
路113を通って膨張行程のモータ用プランジャ18を
収納する円筒穴73に圧入される。一方、排出行程のモ
ータ用プランジャ18を収納する円筒穴73から、残り
のモータ側油路113を通って外方空間部24aに排出
される作動油は、ポンプ側吸入用油路110を通って吸
入行程のポンプ用プランジャ14を有するポンプ用円筒
穴71に還流される。その間、吐出行程のポンプ用プラ
ンジャ14がポンプ用斜板15を介してモータ用シリン
ダブロック4に与える反動トルクと、膨張行程のモータ
用プランジャ18がモータ用斜板19から受ける反動ト
ルクとの和によって、モータ用シリンダブロック4は回
転される。モータ用斜板19は、エンジン回転速度の二
乗に略比例して作動油圧が上昇するガバナー油圧アクチ
ュエータA1 による立直側への作用力と、モータ用プラ
ンジャの押し付け荷重による傾転モーメントにより、エ
ンジン回転速度とモータ負荷に応じて傾斜角度が制御さ
れ、それにより、無段変速制御される。
【0027】油圧モータMが停止状態の時には、ガバナ
ー弁Gは、遠心力が作用していないことにより、閉じて
いる。すなわち、直結用油圧クラッチC2 の油室105
への作動油供給は遮断されている。前進回転時におい
て、油圧モータMの回転速度が上昇すると、ガバナー弁
Gは遠心力により開弁し、直結用油圧クラッチC2 へと
作動油の供給を開始する。ガバナー弁Gの圧力調整作用
により、ガバナー弁Gから供給される作動油圧力は、油
圧モータ回転速度の二乗に略比例して上昇するので、直
結用油圧クラッチC2は、 中速時には、半クラッチにな
り、キックダウンできる余地を残し、高速回転になる
と、完全にクラッチングされ、直結状態となる。 一方、後進回転時には、モータ用斜板19に対するモー
タ用プランジャ18による減速比増加側への傾転モーメ
ントが、前進状態の時よりも大きくなるため、エンジン
回転速度の上昇により、油圧アクチュエータA1 の作動
油圧が大きくなっても、モータ用斜板19を立直側へと
立ち上がらせることはできず、モータ用斜板19は最大
傾斜角度(最大減速比)の状態に維持される。したがっ
て、直結用油圧クラッチC2 は作動せず、油圧ポンプP
の回転が油圧モータMの回転を制動するのを防止でき
る。
【0028】
【別の実施例】(1)分配環29の後進回動角度θr
は、後進時の傾転モーメントが前進時の傾転モーメント
よりも大で、かつ、後進時のエンジン回転速度が最大の
場合でも、少なくともモータ回転を直結クラッチング点
以下に抑える程度の傾転モーメントが発生するように設
定されるものであり、したがって、たとえば、前進回動
角度θf が90°より小さく設定されている場合には、
θr は上記θf よりも大ではあるが、90°より小さく
なる場合もある。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明によると、ガ
バナー油圧アクチュエータA1 による立直側への作用力
と、モータ用プランジャの押し付け力による傾転モーメ
ントにより、エンジン回転速度とモータ負荷に応じて、
自動的に無段変速制御できる。前進回転時には、所定の
モータ回転速度以上で自動的に直結用油圧クラッチC2
を作動させて、高速回転時の動力伝達効率を自動的に向
上させることができ、一方、後進回転時には、油圧ポン
プPと油圧モータMが異方向に回転している状態におい
て、いくらエンジン回転速度が上昇しても、モータ用斜
板19を大きな傾斜角度の状態に維持することができ、
それにより直結用油圧クラッチC2 の作動を阻止し、後
進回転時における動力伝達の損失を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願の発明を適用した油圧式無段変速機の全
体縦断面図である。
【図2】 図1と同じ油圧変速機のチャージング油路回
路部分の縦断面拡大部分図である。
【図3】 図1のIII部分の拡大部分図である。
【図4】 図3のIV−IV断面図である。
【図5】 ガバナー弁の縦断面拡大図である。
【符号の説明】
1 入力軸 2 ポンプ用シリンダブロック 4 モータ用シリンダブロック 15 ポンプ用斜板 18 モータ用プランジャ 19 モータ用斜板 29 油圧分配環 A1 油圧アクチュエータ P 斜板式油圧ポンプ M 斜板式油圧モータ C2 直結用油圧クラッチ G ガバナー弁

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 斜板式の油圧ポンプと斜板式の油圧モー
    タとを油圧回路を介して接続し、油圧モータ側の回転速
    度に対応して作動する直結用油圧クラッチを備え、モー
    タ用斜板の傾斜角度を変更することにより無段変速制御
    を行う油圧式無段変速機において、モータ用斜板は、エ
    ンジン回転速度の上昇によりモータ用斜板を立直側へ、
    一方油圧モータの負荷により前記とは逆に傾転側に動く
    ようにし、上記油圧回路には、中立位置から前進位置及
    び後進位置に回動切り換え自在な油圧分配環を備え、油
    圧ポンプの回転方向と油圧モータの回転方向が、モータ
    前進回転時は同方向、後進回転時は異方向となるように
    分配環回動位置を設定し、直結用油圧クラッチの油供給
    用油路に、油圧モータ側の回転速度の上昇に応じて作動
    油圧が上昇するガバナー弁を設け、後進状態におけるモ
    ータ用斜板に対する上記傾転モーメントが、前進状態に
    おける傾転モーメントよりも大きくなるように、油圧分
    配環の中立位置から前進位置までの回動角度に対して、
    中立位置から後進位置までの回動角度を大きく設定して
    いることを特徴とする油圧式無段変速機の変速制御装
    置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0791771A1 (en) * 1994-11-09 1997-08-27 Komatsu Ltd. Method of controlling speed change of hydraulic drive device for vehicle and speed change device
EP0791771A4 (en) * 1994-11-09 1999-02-24 Komatsu Mfg Co Ltd METHOD FOR CONTROLLING THE SPEED CHANGE IN A HYDRAULIC TRANSMISSION INSTALLED ON A VEHICLE AND SPEED CHANGE DEVICE

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