JPH0532597B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は圧縮機、膨張機、モーター等として利
用できるスクロール型流体機械のスクロール歯形
自動成形方法に関する。

（従来の技術） スクロール型流体機械は、それぞれ側板の内面
にうず巻状ラツプを立設した旋回スクロールと固
定スクロールとを噛み合せ、旋回スクロールを公
転円運動させることにより、上記１対のスクロー
ルの噛み合いによつて限界される密閉小室の容積
を変化させ、その容積の変化によつて密閉小室内
に取り込まれた流体の圧力を変えて吐出するよう
になつている。

しかして、この種のスクロール型流体機械にお
いては、１対のスクロールの噛み合いによつて限
界される密閉小室内に取り込まれた流体を漏洩を
できるだけ少くする必要があり、このため次のよ
うな対策がとられている。

(1) 互に噛み合う１対のスクロールのラツプを超
精密加工で仕上げて、ラツプ相互間の間隙を少
くする。

(2) 特公昭58―19875号公報に記載されるように、
旋回スクロールの旋回半径を可変とし、１対の
スクロールのラツプを相互に接触させることに
よつて、ラツプ相互間の間隙をなくすようにす
る。

(3) 特開昭54―157315号公報に記載されるよう
に、ラツプの表層をなじみのある磨耗し易い物
質で形成し、その下層を硬化層として、使用に
先立ち、両方のラツプの接触点の一部で下層の
硬化層と相手ラツプの硬化層とが接触するま
で、両方のラツプの表層を磨耗させる。

（発明が解決しようとする問題点） 前述の従来技術には次のような問題点がある。

(1) 超精密加工を行う場合には、コストが高くな
り、また加工時間も長くなる。

(2) 特公昭58―19875号公報によると、ラツプが
相互に接触しながら摺動するので、接触面の摩
耗が生じ易く、更に焼付き等の事故を生ずる場
合がある。

(3) 特開昭54―157315号公報によると、摩耗し易
い物質からなるラツプ表層の厚さの選定に高度
の技術を必要とし、また表層を摩耗させるため
に両スクロールを強引に変形させて組立てる必
要がある。

本発明は、上記の従来技術における問題点を解
決し、軟質コーテイング層の厚さに対する精度管
理が不要で、且つ加工の容易なスクロール型流体
機械のスクロール歯形自動成形方法を提案するこ
とを目的とするものである。

（問題点を解決するための手段） 旋回スクロール又は及び固定スクロールの少く
とも摺接面に、軟質コーテイング材の層を形成す
る。公転円運動の旋回半径が可変で、且つその可
変範囲を規制するストツパー機構を有する旋回半
径可変機構を設ける。旋回スクロールの旋回半径
を馴らし運転中に徐々に変化させて、スクロール
歯形を自動成形し、ラツプ相互間の隙間が実質的
に零になつた時、上記軟質コーテイング材の層に
おける摩耗の進行を、旋回半径可変機構のストツ
パー機構により停止させる。

（作用） 第３図、第４図において、ブツシユ２３の駆動
ピン２３−１及び主軸１７の穴１７−２が、公転
円運動の旋回半径が可変で、且つその可変範囲を
規制するストツパー機構を構成し、穴１７−２と
駆動ピン２３−１との間の隙間が可変範囲とな
る。

両方のスクロールを噛み合せた馴らし運転中
に、軟質のコーテイング材を徐々に摩耗させ旋回
スクロールの旋回半径を徐々に変化させ、駆動ピ
ン２３−１と穴１７−２とが相対的運動を規制さ
れた位置で、コーテイング材の摩耗を停止させ、
両方のラツプ間の隙間を零とさせる。

（実施例） 以下、本発明を図面に示す１実施例を参照しな
がら具体的に説明する。

第１図において、１０はハウジングでカツプ状
部分１２とこの開口端を俺蓋するフロントエンド
プレート１１からなり、カツプ状部分１２には流
体吸入口１４及び流体排出口１５が設けられてい
る。フロントエンドプレート１１には、これを貫
通する主軸１７が軸受１６を介して回転可能に支
承されている。主軸１７の内端に固定されたロー
タ２１の外面とフロントエンドプレート１１の内
面との間には、スラストニードル軸受２２が介装
されている。ロータ２１の内面には、主軸１７の
軸芯に対し偏心したクランクピン１７−１が突設
されている。２４は旋回スクロール部材で、その
側板２４１の内面にはうず巻状のラツプ２４２が
固定され、外面には軸方向丸孔を備えた環状の突
部２４３が形成されている。この突部２４３はラ
ツプ２４２のうず巻中心と同芯で、その軸方向丸
孔内には軸受２６を介して円筒状のブツシユ２３
が軸承され、このブツシユ２３にクランクピン１
７−１が嵌合されている。２５は固定スクロール
で、その側板２５１の内面にはうず巻状ラツプ２
５２ガス立設されている。側板２５１の中央部に
は叶出ポート２５３が貫設されており、そして、
側板２５１の外面には叶出ポート２５３を取り囲
むように環状の突起２５４が設けられている。

カツプ状部分１２の底部内面には、流体排出口
１５を取り巻くように環状の突起１２１が立設さ
れ、この突起１２１の先端外縁を切り欠いて形成
した環状の凹部１２２と固定スクロール２５の環
状突起２５４との間に配設されたゴムリング等の
環状の弾性体３０によつて、固定スクロール部材
２５を軸方向及び径方向に弾性支持するととも
に、突起２５４と突起１２１との間をシールして
叶出室３１１を形成している。固定スクロール２
５の側板２５１の周縁に設けた切り欠きに、カツ
プ状部分１２の内周面から突出した突起１３１を
係合させることによつて、固定スクロール２５の
回転を阻止している。

旋回スクロール２４の自転阻止機構２９は次の
ようになつている。旋回スクロール２４の突部２
４３にフランジ体２７の中央部に形成された角筒
部２７１をキー結合し、フランジ体２７の角筒部
２７１を含めた軸方向長さを旋回スクロール２４
の突部２４３の軸方向長さ以上とすることによつ
て、旋回スクロール２４に加わるスラスト荷重は
フランジ体２７をロータ２１との間に設けたスラ
ストニードル軸受２８を介してロータ２１で支持
される。角筒部２７１は第２図に示すように外形
が四角形の摺動体２９１の四角の穴２９４内に嵌
合されている。この四角の穴２９４は第２図に示
すように、対抗する一対の辺が角筒部２７１の一
対の辺と同一寸法で、残りの一対の辺が角筒物２
７１の残りの一対の辺よりも、クランクピン１７
−１の主軸１７に対する偏心量の２倍以上長くな
つており、これによつて、角筒部２７１の摺動体
２９１とは相互に一方向に摺動可能となつてい
る。この摺動体２９１はリング部材２９２の中央
の角穴２９５内に嵌合され、リング部材２９２は
キー２９３によつてカツプ状部分１２の内周面に
回転止めされている。リング部材２９２の中央部
の角穴２９５は、摺動体２９１の外形の対抗する
一対の辺と同じ寸法をもつ一対の辺と摺動体２９
１の残りの一対の辺よりもクランクピン１７−１
の偏心量の２倍以上長い一対の辺とで構成される
四角形状をしており、摺動体２９１を角筒部２７
１との摺動方向に対し直角の方向に摺動するよう
に案内する。

かくして、角筒部２７１は互いに直交する二方
向に摺動可能であるが、その自転は禁止され、従
つて、直交する二方向への摺動の合成として円軌
道上の運動を許され、主軸１７の回転に伴うクラ
ンクピン１７−１の偏心回転運動によつて、角筒
部２７１即ち旋回スクロール２４は回転せずに円
軌道上を公転する。

第３図、第４図及び第５図に示すように、ブツ
シユ２３にはその中心O_cから距離R_pだけ偏心し
た位置O_s′に軸線に沿つて外方に延びる駆動ピン
２３−１が突設され、この駆動ピン２３−１は、
主軸１７の軸芯に沿つて穿設され駆動ピン２３−
１の外径よりｌだけ大きい内径の穴１７−２内に
嵌挿されている。クランクピン１７−１は主軸１
７の軸心O_sより距離ε₁だけ偏心した位置O_Dに軸
線に沿つて内方に延び、ブツシユ２３に穿設され
た穴２３−２内に嵌合せいめられ止め輪１７−３
によつて抜け止めされている。かくして、O_sと
O_c間の距離R_pが旋回スクロール２４の公転円運
動の旋回半径となる。

旋回スクロール２４が固定スクロール２５と摺
接する摺接面上には、軟質のコーテイング材２４
−１が施されている。このコーテイング材２４−
１の厚さは馴し運転時、即ち、駆動ピン２３−１
が穴１７−２の内面上の点ａと僅かな間隙を保つ
た非接触状態において、旋回スクロール２４のラ
ツプ２４２と固定スクロール２５のラツプ２５２
とを相互に接触させて、このコーテイング材２４
−１を摩耗させるが、駆動ピン２３−１が穴１７
−２の内面上のａ点と接したときにはコーテイン
グ材２４−１の摩耗が進行が停止し、１対のラツ
プ２４２と２５２相互間の間隙が自動的に実質的
に零となるように決められる。このときの旋回ス
クロール２４の旋回半径ρは、ρ＝1/2〔（ラツプ
のピツチ）−２×（ラツプの肉厚）〕で与えられる。

しかして、馴し運転のため主軸１７を回転させ
れば、クランクピン１７−１の偏心回転により、
旋回スクロール２４は自転阻止機構２９によつて
自転を制せられながら旋回半径Ｒ_Ｏの円軌道上を
公転円運動する。この結果、ラツプ２４２及び２
５２の外周から密閉小室内に取り込まれた流体
は、密閉小室のうず巻中心への移動に伴う容積減
少の結果、徐々に圧縮されて吐出ポート２５３か
ら吐出室３１１を経て流体排出口１５よりハウジ
ング１０外へ排出される。

この際、ブツシユ２３の中心O_cは、クランク
ピン１７−１の中心O_Dまわりに半径ε₂を持つ円
弧上を動く。即ち、ブツシユ２３には、旋回スク
ロール２４の遠心力により第３図にＦで示す力が
働き、駆動ピン２３−１が穴１７−２の内面上の
点ａに当接するまでは、ブツシユ２３の中心O_D
は半径ε₂の円弧上を動く。そして、この間、旋回
スクロール２４の摺接面に施された軟質のコーテ
イング材２４−１は、固定スクロール２５のラツ
プ２５２と接触して摩耗する。そして、駆動ピン
２３−１が穴１７−２の内面上の点ａに当接する
と、ブツシユ２３の中心O_cの半径ε₂を持つ円弧上
の移動が止まり、これと同時に軟質のコーテイン
グ材２４−１の摩耗の進行が止まり、旋回スクロ
ール２４のスクロール歯形即ちラツプ２４２の輪
廓が自動的に成形され、ラツプ２４２と２５２と
を非接触状態でかつ、これらの間隙を実質的に零
とすることができる。

上記実施例においては、旋回スクロールの摺接
面に軟質コーテイング材を施したが、固定スクロ
ールの摺接面に施しても良く、また、双方の摺接
面に施すことができる。また、摺接面のみならず
スクロールの全表面に施すこともできる。

（発明の効果） 本発明によるスクロール型流体機械のスクロー
ル歯形自動成形方法は、それぞれ側板の一面にう
ず巻状ラツプを立設してなる一対の固定スクロー
ルと旋回スクロールとを180度位相をずらし、両
うず巻状ラツプの側璧が互に摺接するよう噛み合
せて両スクロール間に流体室を形成し、旋回スク
ロールを自転阻止機構を介してその自転を阻止し
ながらクランクピンを有する主軸により旋回半径
ρで公転旋回運動せしめると共に、同クランクピ
ンと旋回スクロールとの間に、前記旋回半径ρを
可変となし、かつ、その可変範囲を規制するスト
ツパー機構を備えた旋回半径可変機構を設けてな
るスクロール型流体機械において、前記旋回スク
ロール又は固定スクロールの少なくとも摺接面の
軟質のコーテイング材を施し、旋回スクロールの
旋回半径ρを馴らし運転中に徐々に変化させてス
クロール歯形を自動成形し、ラツプ相互間の隙間
が実質的に零になつた時、上記軟質のコーテイン
グ材の摩耗の進行を前記旋回半径可変機構のスト
ツパー機構により停止させることにより、次の効
果を有する。

従来のようにスクロールを超精密機械加工する
必要がなくなり、安価に製造できる。

また、１対のスクロールのラツプ相互間に最少
隙間を保持できるので、ラツプの摩耗及び焼き付
きを防止し、且つ、密閉小室からの流体の漏洩を
防止でき、流体機械の性能を向上できる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例を示し、第１図は縦断
面図、第２図は第１図の−線に沿う断面図、
第３図は第１図及び第４図の−線に沿う断面
図、第４図は第３図の−線に沿う断面図、第
５図はクランクピン、駆動ピン及びブツシユの各
中心相互間の配置を示す線図である。 １７−１……クランクピン、１７−２……穴、
２３……ブツシユ、２３−１……駆動ピン、２４
……旋回スクロール、２５……固定スクロール、
２４−１……コーテイング材、R_p……旋回半径、
２４２，２５２……ラツプ。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ それぞれ側板の一面にうず巻状ラツプを立設
   してなる一対の固定スクロールと旋回スクロール
   とを180度位相をずらし、両うず巻状ラツプの側
   壁が互に摺接するよう噛み合せて両スクロール間
   に流体室を形成し、旋回スクロールを自転阻止機
   構を介してその自転を阻止しながらクランクピン
   を有する主軸により旋回半径ρで公転旋回運動せ
   しめると共に、同クランクピンと旋回スクロール
   との間に、前記旋回半径ρを可変となし、かつ、
   その可変範囲を規制するストツパー機構を備えた
   旋回半径可変機構を設けてなるスクロール型流体
   機械において、前記旋回スクロール又は及び固定
   スクロールの少なくとも摺接面の軟質のコーテイ
   ング材を施し、旋回スクロールの旋回半径ρを馴
   らし運転中に徐々に変化させてスクロール歯形を
   自動成形し、ラツプ相互間の隙間が実質的に零に
   なつた時、上記軟質のコーテイング材の摩耗の進
   行を前記旋回半径可変機構のストツパー機構によ
   り停止させることを特徴とするスクロール型流体
   機械のスクロール歯形自動成形方法。