JPH05320819A

JPH05320819A - 耐クラック性に優れた圧延用ロール材

Info

Publication number: JPH05320819A
Application number: JP12626192A
Authority: JP
Inventors: Hiroyuki Kimura; 広之木村; Yoshito Seto; 良登瀬戸; Akitoshi Okabayashi; 昭利岡林; Takeru Morikawa; 長森川; Takashi Shikata; 敬志方
Original assignee: Kubota Corp
Current assignee: Kubota Corp
Priority date: 1992-05-19
Filing date: 1992-05-19
Publication date: 1993-12-07

Abstract

(57)【要約】【目的】耐摩耗性の低下を極小にして、耐クラック性
を大幅に改善すること。【構成】化学組成が重量％でＣ：1.5 〜2.5 ％、Ｓｉ：1.2 〜3.2 ％、Ｍｎ：
1.5 ％以下、Ｃｒ：３〜10％、Ｍｏ：１〜９％
、Ｗ：２〜９％Ｖ：２〜10％および残部実質的にＦｅからなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、圧延用ロール、スリー
ブロール等の使用層である外面に使用される耐クラック
性に優れた圧延用ロール材に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、熱間圧延用ロールとして、使用層
である外層に高合金材質、例えばハイス材が使用されて
おり、耐摩耗性の飛躍的向上が達成された。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来の
材質ロールは、圧延条件によっては、ロールに深いクラ
ックが入り、場合によっては、チル剥げ事故を引き起こ
すことが知られている。換言すると、従来のハイス材
は、高クロム材などの従来例と比較して、耐摩耗性に優
れるが、耐クラック性に劣る。

【０００４】本発明の目的は、耐摩耗性の低下を極小に
して、耐クラック性を大幅に改善した圧延用ロール材を
提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のロール材として、化学組成が重量％でＣ：1.5 〜2.5 ％、Ｓｉ：1.2 〜3.2 ％、Ｍｎ：
1.5 ％以下、Ｃｒ：３〜10％、Ｍｏ：１〜９％、Ｗ：
２〜９％Ｖ：２〜10％および残部実質的にＦｅからなる構成を採用した。

【０００６】

【作用】従来のハイス材が、Ｓｉ：0.2 〜1.0 ％程度の
ものであったのに対し、Ｓｉ量を1.2 〜3.0 ％と増加さ
せると、ロールのクラックの進展スピードを遅くし、耐
クラック性を改善した。

【０００７】

【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。まず、本
発明のロール材質の化学組成（単位重量％) の限定理由
を下記に示す。Ｃ：1.5 〜2.5 ％Ｃは、Ｃｒ, Ｍｏ, Ｗ, Ｖと結びついて、高硬度の各種
カーバイドを形成し、耐摩耗性を向上する。 1.5％未満
ではカーバイド量が過少となり、耐摩耗性が不足する。
2.5％を越えると、溶融状態から直接晶出する１次カー
バイドが多くなり、耐クラック性が低下する。

【０００８】Ｓｉ：1.2 〜3.0 ％Ｓｉは耐クラック進展性を改善するために必要な元素で
あり、1.2 ％未満ではその効果が小さい。一方、 3.0％
を越えると、焼入性が悪くなることによって硬度が低く
なり耐摩耗性が低下する。Ｍｎ：1.5 ％以下Ｍｎは溶湯の脱酸および脱硫のために添加する。また、
焼入性を向上させ、耐摩耗性を向上するが、 1.5％を越
えるとオーステナイト結晶粒が粗大化し焼入時の割れの
原因となるので好ましくない。

【０００９】Ｃｒ：３〜10％Ｃｒは一部基地組織中に固溶して基地の焼入性を改善
し、耐摩耗性を向上する。また、Ｃと結合して高硬度の
炭化物を形成し、耐摩耗性をさらに向上する。３％未満
では炭化物量が少なく耐摩耗性が劣り、10％を越える
と、炭化物量が過多となるので靭性が低下する。

【００１０】Ｍｏ：１〜９％Ｍｏは基地組織の焼入性を向上すると共にＣと結合して
Ｍ₂Ｃ型またはＭ₆Ｃ型の炭化物を生成して耐摩耗性を
向上する。１％未満では焼入性向上の効果が顕著に現わ
れず、生成炭化物量も少ないため、耐摩耗性が劣り、９
％を越えると炭化物量が飽和するので、コスト的に不利
になる。さらに、過飽和に溶け込んだＭｏは、基地の残
留オーステナイトを安定化し十分な硬度が得難くなる。

【００１１】Ｗ：２〜９％Ｗは強力な炭化物形成元素であり、焼もどし処理によ
り、炭化物として微細析出し、顕著な２次硬化をもたら
す。その効果を得るためには２％以上必要であるが、９
％を越えると、晶出炭化物が増し、耐クラック性が劣化
する。Ｖ：２〜10％Ｖは鋳造組織を微細緻密化して基地を強靭化する。ま
た、Ｃと結合して高硬度のＭＣ型炭化物を形成する。該
カーバイドは組織中に微細分散して形成されるので耐摩
耗性を向上する。本発明のＣ含有量の範囲（ 1.5〜2.5
％) においてＶの上記効果を得るには、２％以上の添加
が望ましい。一方、10％を越えるとその効果は飽和し、
材質を脆くする。

【００１２】本発明のロール材は以上の成分のほか、残
部Ｆｅおよび不可避的に混入した不純物（実質的にＦ
ｅ) で形成される。尚、Ｐ, Ｓはいずれも材質を脆くす
るので少ない程望ましく、Ｐ： 0.1％未満、Ｓ： 0.1％
未満に止めておくのがよい。また、Ｎｉは高温での軟化
抵抗を弱めるため少いほど良く、目標の材質を得るため
には１％以下にするのがよい。

【００１３】次に本発明に係るロール材の具体的製造実
施例について説明する。なお、比較のため、比較例とし
て、ハイス材及び高クロム材を用いたものを併せて示し
た。（具体的製造実施例) 溶湯として表１に示す化学組成のものを用いた。

【００１４】

【表１】

【００１５】遠心力鋳造条件は下記の通りである。・チラーサイズ：直径（600 〜700)×長さ（1300〜
2000) ・Ｇ No ： 140 ・注湯温度：1388℃ ・鋳込厚： 70 〜 100mm 熱処理・温度： 1100 ℃，３時間試験結果熱処理後、表面から35mmの位置をセンターにして、試片
を切出した。

【００１６】その結果は下記表２に示すとおりである。

【００１７】

【表２】

【００１８】※ 疲労亀裂進展試験のｍ値は計算式（Paris − Erdoganの式) ｄａ／ｄｎ＝Ｃ・（ΔＫ）^m で算出した。但しｄａ／ｄｎ：疲労亀裂進展速度 ΔＫ；応力拡大係数の変化幅Ｃ，ｍ；材料定数評価疲労亀裂進展速度（ｄａ／ｄｎ）は、ｍ値が小さいほど
遅くなる。

【００１９】本発明材は、比較材のハイス材に対し、引
張強度と硬度は略同等に保ちながらｍ値が非常に小さ
い。また、比較材の高クロム材に対し、硬度の低下が見
られず、ｍ値が高クロム材と同程度である。従って、本
発明材は、引張強度、硬度を比較材のハイス材と劣るこ
となく、比較材の高クロム材のように耐クラック進展性
に優れたものであることが判った。

【００２０】

【発明の効果】本発明は、化学組成が重量％でＣ：1.5 〜2.5 ％、Ｓｉ：1.2 〜3.2 ％、Ｍｎ：
1.5 ％以下、Ｃｒ：３〜10％、Ｍｏ：１〜９％
、Ｗ：２〜９％Ｖ：２〜10％および残部実質的にＦｅからなることを特徴とし、従来
のハイス材の耐摩耗性を維持しながら、耐クラック進展
性を大幅に向上したものとして優れる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁵ 識別記号庁内整理番号ＦＩ技術表示箇所Ｃ２２Ｃ 38/24 (72)発明者森川長兵庫県尼崎市西向島町64番地株式会社クボタ尼崎工場内 (72)発明者志方敬兵庫県尼崎市西向島町64番地株式会社クボタ尼崎工場内

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】化学組成が重量％でＣ：1.5 〜2.5 ％、Ｓｉ：1.2 〜3.2 ％、Ｍｎ：
1.5 ％以下、Ｃｒ：３〜10％、Ｍｏ：１〜９％、Ｗ：
２〜９％Ｖ：２〜10％および残部実質的にＦｅからなることを特徴とする耐ク
ラック性に優れた圧延用ロール材。