JPH05320552A - モノクロ蛍光体ペースト組成物及びそれを用いた蛍光体面 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 蛍光体ペースト組成物は、特定の粒子径・粒
度分布の蛍光体粒子、バインダー樹脂、溶剤から成り、
またこれを用いて蛍光体面を構成したモノクロ蛍光体
面。 【効果】 蛍光体面の凹凸が少なく、ピンホールの発生
もなく、かつ発光特性に優れる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は陰極線管（以下ＣＲＴと
略す）のモノクロ蛍光体面形成に必要な均一で高解像度
の蛍光体膜面を形成しうる印刷用蛍光体ペーストおよ
び、それを用いた蛍光体面に関する。

【０００２】

【従来の技術】テレビのブラウン管に代表されるＣＲＴ
は、電子銃より出る電子ビームが蛍光体面に衝突し、蛍
光体粒子が励起され発光表示するディスプレイ装置で、
近年エレクトロニクスの発展に伴いＣＲＴを用いた各種
ビジュアル機器の多様化が進み、カラーＣＲＴからモノ
クロＣＲＴ、大型ＣＲＴから超小型ＣＲＴと様々な種類
のものが生産されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このようなビジュアル
機器に用いられるＣＲＴにピンホールがなく、良好な発
光特性を発揮させるための最も重要な部分は、蛍光体膜
面の製造方法であり、蛍光体膜面の製造方法としては、
スラリー法、沈降法、電着法、蒸着法、ホトエッチング
法等が知られている。例えば、モノクロモニター用高解
像度陰極線管に用いられる蛍光体膜面は従来より沈降法
が一般的に使用されている。

【０００４】しかしながらこの方法にて形成した蛍光体
膜面は表面の凹凸の少ない均一な厚みの蛍光体膜面を効
率よく得ることが難しい。

【０００５】そのため最近、均一な蛍光体膜厚を有し、
蛍光体膜表面の凹凸の少ない高解像度ＣＲＴの蛍光体膜
形成法として印刷法が使用されるようになった。この印
刷法は、蛍光体ペーストをＣＲＴ用パネル（前面ガラ
ス）に直接又は間接的に印刷し、しかる後にペースト中
のバインダー樹脂成分を焼成除去することにより蛍光体
膜面を作成することを特徴としている。また、従来法に
較べ設備コストが低いこと、蛍光体粒子の回収ロスが少
なく材料コストが低減できること、生産性が高いことか
らも工業的に有利な方法である。

【０００６】この方法を使用してＣＲＴを製造する方法
が特公昭６１−２３２３１号公報や特開昭５９−２１３
７７８号公報が提案されている。

【０００７】しかしながら、従来より印刷法による蛍光
体膜面形成法に使用されている蛍光体ペースト中に含ま
れる蛍光体粒子の平均体積粒子径が１０μｍ、小さくて
も５μｍ以上であり、このような蛍光体ペーストにて形
成した蛍光体膜は蛍光体粒子径が大きいため高解像度用
ＣＲＴに使用すると表面の凹凸が目立つことから高い解
像度は得られなかった。

【０００８】又、ＣＲＴ蛍光体膜の解像度を上げるため
に上述した如き粒子径の大きな蛍光体粒子を粉砕して用
い蛍光体ペーストを作る方法も提案されているが、粉砕
した蛍光体粒子はその形状からペーストにした時、凝集
し易く分散性不良となる傾向が強かった。

【０００９】即ち、印刷されてなる蛍光体粒子の凝集物
を含むペーストを用い印刷法にて形成した蛍光体膜中に
は凝集した蛍光部が形成され、ＣＲＴとして使用する場
合この凝集部が異常発光部となって表面に現れ、その結
果解像度の低下を招き、ＣＲＴとして不良となる欠点を
有していた。

【００１０】又、蛍光体粒子は通常その表面に付活剤を
被覆したものであり、このような蛍光体粒子を単に粉砕
したものは、蛍光体粒子表面に付活剤が被覆されていな
い部分が多くなるため、粉砕されていない蛍光体粒子と
較べ発光特性が必然的に低下し、このような蛍光体粒子
を含むペーストを用いて作られたＣＲＴの輝度を実用範
囲にまで高めようとすると使用する電子銃の加速電圧、
作動電流等を高める必要があり電子回路に多大な負荷が
かかるばかりでなく、コスト高になる等好ましくない結
果をもたらすものであった。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は高解像度用ＣＲ
Ｔの製造にあたり、最も重要な、蛍光体膜に凹凸の少な
い、しかも発光効率のよい蛍光体面を提供するための蛍
光体ペーストおよび、それを用いた蛍光体面に関する。

【００１２】即ち本発明の要旨とするところは、蛍光体
粒子、バインダー樹脂、溶剤から成る陰極線管蛍光面印
刷用ペーストにおいて、蛍光体粒子が実質的に付活剤で
表面が被覆されており、平均体積粒子径が１〜４μｍで
且つ粒子径１〜６μｍの粒子が蛍光体粒子中に６０％以
上含有されている蛍光体ペースト組成物および、それを
用いた蛍光体面にあり、高解像度、高発光効率を有する
ＣＲＴ製造が可能である。

【００１３】本発明に用いられる蛍光体粒子は、実質的
に付活剤で表面が被覆されており、平均体積粒子径が１
〜４μｍでかつ粒子径１〜６μｍの粒子が蛍光体粒子中
に６０％以上含有されたものである。

【００１４】本発明においては蛍光体粒子表面は実質的
に付活剤で表面が被覆されていることが必要であり、大
粒子径の蛍光体粒子を単に粉砕して粒子径を小さくした
ものでは蛍光体粒子表面に付活剤が被覆されていない蛍
光体粒子が多くなり、このような蛍光体粒子を含むペー
ストを用いて作った蛍光体膜はその発光特性が悪くなる
ので好ましくない。

【００１５】モノクロ陰極線管用蛍光体面の形成に使用
される蛍光体粒子は平均体積粒子径は１〜４μｍである
ことが好ましく、平均体積粒子径１μｍ未満の蛍光体粒
子は製造しにくく、コスト高となり、又、一旦バインダ
ー樹脂中に分散した蛍光体粒子が再凝集し易くこのよう
な蛍光体ペーストより形成した蛍光体膜の輝度が低下す
ることから好ましくない。又、平均体積粒子径が４μｍ
を超える蛍光体粒子を含むペーストより得られるＣＲＴ
蛍光体膜にピンホールが発生したり、蛍光体膜表面の平
滑性が悪くその解像度が低下するので好ましくない。

【００１６】又、蛍光体粒子中に粒子径１〜６μｍの蛍
光体粒子が６０％以上、好ましくは８０％以上含有され
ていることが好ましく、これより粒度分布が拡がった蛍
光体粒子を含むペーストより形成した蛍光体膜にはピン
ホールの発生、平滑性の不足、又は蛍光体粒子の凝集
（ブツ）等が発生するので好ましくない。

【００１７】本発明で用いられる蛍光体粒子及び付活剤
は特に制限されるものではなく、一般周知のものからモ
ノクロ用、カラー用等、目的に応じて任意に選択すれば
よい。また、蛍光体粒子及び付活剤の記載は、ＪＥＤＥ
Ｃに基づくＲＭＡ番号を使用している。

【００１８】本発明に用いられるバインダー樹脂として
は、焼成性が良好で蛍光体粒子を均一に分散させること
ができるものであれば特に限定されるものではなく、目
的に応じて任意に選択すればよい。

【００１９】バインダー樹脂の具体例としては、例え
ば、セルロース系、ビニルアルコール系、アクリル系樹
脂等の公知のものが挙げられる。

【００２０】本発明に用いられる溶剤としては、ペース
ト組成物の経時変化を防止できるものであればよく、バ
インダー樹脂の種類や目的に応じて任意に選択すればよ
く、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル
アセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル
アセテート、２，２，４−トリメチル１，３−ペンタジ
オールモノイソブチレート、イソホロン、３−メトキシ
ブチルアセテート等が挙げられる。

【００２１】本発明においては、蛍光体粒子とバインダ
ー樹脂の配合比は特に限定されるものではなく、目的に
応じて任意に選択できるが、通常、蛍光体粒子／バイン
ダー樹脂＝１００ｇ／５ｇ〜１００／４０ｇ程度、好ま
しくは１００ｇ／１０ｇ〜１００ｇ／３０ｇ程度で用い
られる。

【００２２】又、溶剤はペースト組成物の粘度調整に用
いられ、配合量は目的とする蛍光体ペースト組成物粘度
になるように任意に配合すればよい。通常、蛍光体ペー
スト組成物の粘度としては、５，０００〜２００，００
０センチポイズ程度であり、目的に応じて設定すればよ
い。

【００２３】本発明においては、本発明の目的を損わな
い範囲であれば、目的に応じて一般公知の可塑剤、分散
安定剤、レベリング剤、チキソトロピー性付与剤等の各
種添加剤を添加することができる。

【００２４】

【実施例】以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明す
る。尚、実施例中、部及び％はそれぞれ重量部及び重量
％を示す。

【００２５】＜実施例１＞イソブチルメタクリレート９
８部、メタクリル酸２部及びアゾビスイソブチロニトリ
ル1.５部をジエチレングリコールモノエチルエーテルア
セテート中にて８０℃で１０時間反応させた。

【００２６】得られたアクリル樹脂１００部をバインダ
ー樹脂として含む樹脂溶液にモノクロ蛍光体粒子Ｐ−４
５微粉末（付活剤としてテルビウムを被覆させたイット
リウムオキシサルファイド（Ｙ₂ Ｏ₂ Ｓ））、平均体積
粒子径３．０μｍ、粒子径６μｍを超える含有量が５％
450部蛍光体粒子全体を分散、混練し、ジエチレング
リコールモノエチルエーテルアセテートにて粘度を１
３，０００ｃｐｓ（２５℃）に調整したモノクロ蛍光体
ペースト組成物を調整した。

【００２７】該組成物をスクリーン印刷法によってガラ
ス板上に２０μｍの厚さに塗布し、乾燥・焼成を実施し
た。

【００２８】蛍光体膜面の状態を５０〜４００倍の光学
顕微鏡を用いて透過光、反射光の両方を使用して評価し
たところ、得られた蛍光体膜面にはピンホールは認めら
れず、良好な隠蔽性を有し、平滑な蛍光体面が形成され
ており、発光特性も良好であった。又、このガラス板を
使用した作った１．５インチモノクロ用ＣＲＴは６００
本以上の走査線を有したものであった。

【００２９】＜実施例２，３及び比較例１，２＞蛍光体
粒子径を表−１に示した４種のものを用いる以外は実施
例１と同様にして４種の蛍光体ペーストを作り、これを
用いて実施例１と同様にして４種の蛍光体膜面を作り、
その状態を評価した。

【００３０】得られた結果を表−１に示した。

【表１】

【００３１】＜比較例３〜６＞平均体積粒子径８μｍの
蛍光体粒子を表−２に示すような平均体積粒子径の蛍光
体に単純粉砕したものを用いる以外は、実施例１と同様
にして４種の蛍光体ペーストを作り、これらを用い実施
例１と同様にして作成した４種の蛍光体膜面の状態を評
価した。

【００３２】得られた結果を表−２に示した。

【表２】

【００３３】表−２の結果からも明らかなように、蛍光
体粒子を単に粉砕して平均体積粒子径を調整した蛍光体
を用いて作られた蛍光体膜面は蛍光体粒子の平均体積粒
子径が、本発明の範囲内の平均体積粒子径に合致するも
のでもその発光特性が劣っており、蛍光体膜状態は未粉
砕粒子径の場合とほぼ同様であった。

【００３４】＜実施例４〜７，比較例７＞平均体積粒子
径及び粒度分布が表−３に示す如きものである蛍光体粒
子で、実施例１と同様にして付活剤を被覆した蛍光体粒
子を用いる以外は、実施例１と同様にして５種の蛍光体
ペーストを作り、これらの蛍光体ペーストを用い、実施
例１と同様にして作成した蛍光体膜面の状態を評価し
た。

【００３５】結果を表−３に示す。

【表３】

【００３６】・蛍光体膜ピンホール：蛍光体ペースト組
成物をガラス板上に印刷、乾燥、焼成し、蛍光体膜面を
５０〜４００倍の光学顕微鏡にて透過光を使用してピン
ホールの有無を調べた。 ◎；ピンホール全く認められず ○；ピンホールほとんど認められず △；ピンホール若干認められる ×；ピンホールかなり認められる

【００３７】・平滑性：蛍光体ペースト組成物をガラス
板上に印刷、乾燥、焼成し、蛍光体膜面を５０〜４００
倍の光学顕微鏡にて反射光を使用して肉眼評価した。 ◎；凹凸が非常に小さい、スクリーンメッシュ跡無し ○；凹凸が小さい、スクリーンメッシュ跡無し △；凹凸がやや大きい ×；凹凸が非常に大きい、スクリーンメッシュ跡有り

【００３８】・凝集物：蛍光体ペースト組成物をガラス
板上に印刷、乾燥、焼成し、蛍光体膜面を５０倍の光学
顕微鏡で評価した。 ○；３０μｍ以上の蛍光体凝集物無し △； 〃 〃 若干有り ×； 〃 〃 非常に多い

【００３９】・発光特性：粉砕しない蛍光体粒子を使用
したＣＲＴを標準として評価した。 ○；粉砕しない蛍光体粒子の場合と同等 ×； 〃 〃 より劣っている

【発明の効果】以上詳述したように、本発明の蛍光体ペ
ースト組成物は特定粒子径、特定粒度分布の蛍光体粒子
を用いていることから、これを用いて蛍光体膜を作成
し、得たＣＲＴは、蛍光体面の凹凸が少なく、ピンホー
ルの発生もなく、かつ発光特性に優れていることから、
高解像度ＣＲＴ用蛍光体ペースト組成物及びそれを用い
た蛍光体面として非常に大きな効果を奏するものであ
る。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 蛍光体粒子、バインダー樹脂、溶剤から
   成る陰極線管蛍光体膜面印刷用ペーストにおいて、蛍光
   体粒子が実質的に付活剤で表面が被覆されており、平均
   体積粒子径が１〜４μｍで且つ粒子径１〜６μｍの粒子
   が蛍光体粒子中に６０％以上含有されていることを特徴
   とするモノクロ蛍光体ペースト組成物。
2. 【請求項２】 平均体積粒子径が１〜４μｍ、全蛍光体
   粒子に占める粒子径１〜６μｍの蛍光体粒子含有量が６
   ０％以上であり、かつこれら蛍光体粒子が実質的に付活
   剤で被覆された蛍光体粒子の焼成体で蛍光体面を構成し
   たモノクロ蛍光体面。