JPH05320191A - ペプチド誘導体およびその用途 - Google Patents

ペプチド誘導体およびその用途

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JPH05320191A
JPH05320191A JP4324219A JP32421992A JPH05320191A JP H05320191 A JPH05320191 A JP H05320191A JP 4324219 A JP4324219 A JP 4324219A JP 32421992 A JP32421992 A JP 32421992A JP H05320191 A JPH05320191 A JP H05320191A
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peptide
group
compound
peptide derivative
mmol
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JP4324219A
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Hideto Mori
英登 森
Hiroyuki Komazawa
宏幸 駒澤
Ikuo Saiki
育夫 済木
Ichiro Azuma
市郎 東
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Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 定まった複数個の下記一般式(I)で表され
るペプチド配列がそのカルボキシ末端側から多価アミン
の窒素原子と共有結合してなるペプチド誘導体またはそ
の薬学上許容できる塩。 [X]−Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg
(I) 式中[X]は存在するかあるいは存在しないアミノ酸残
基を表し、存在する場合はGluまたはAsp残基を表
す。一般式(I)で表されるペプチド配列のアミノ末端
側は、炭素数2〜8のアシル基でアシル化されていても
よい。 【効果】 細胞接着性蛋白質であるラミニンのコア配列
と比較して細胞接着性が大きく、癌転移抑制作用等の種
々の生物活性を充分に保持し、毒性の問題もほとんど無
い。合成も容易であり、医薬として価値の高い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は細胞接着性蛋白質である
ラミニンの活性部位配列ペプチド誘導体またはその薬学
上許容可能な塩、およびその用途に関するものである。
【0002】
【従来技術】ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネク
チン等は細胞と結合組織との結合に関与し、また動物細
胞の細胞機能に関連した種々の生物活性を有する蛋白質
であり、細胞接着性蛋白質と総称される。例えばフィブ
ロネクチンは肝臓で生合成され、ヒト血漿中に約0.3 mg
/mlの濃度で存在する糖蛋白質である。
【0003】フィブロネクチンはその1次構造が分子ク
ローニングを用いて決定されており(Koarnblihtt, A.
R. et al., EMBO Journal, 4巻, 2519 (1985))、分子
量約250KのポリペプチドであるA鎖と約240Kの
B鎖がC末端附近でジスルフィド結合した2量体蛋白質
であることが明らかにされている。またラミニンについ
ても佐々木ら(Sasaki, M. et al., Proc. Natl. Acad.
Sci. USA., 81巻, 935 (1987), Sasaki, M. et al.,
J. Biol. Chem., 262巻, 17111 (1987))によりその1
次構造が決定されている。ラミニンはA、B1、B2と
よばれる3本のポリペプチド鎖から構成されており、十
字架状の構造をとっていることが知られている。
【0004】そして細胞接着性に関与する結合部位の研
究も行われ、フィブロネクチンの細胞接着部のコア配列
はArg−Gly−Asp(RGD)なるトリペプチド
であることが1984年に報告された(Pierschbacher, M.
D. et al., Nature 309巻, 30(1984))。またラミニン
の細胞接着部位のコア配列はTyr−Ile−Gly−
Ser−Arg(YIGSR)で表されるペンタペプチ
ドであることも解明されている(Graf, J. et al., Cel
l 48巻, 989 (1987))。
【0005】これらフィブロネクチンやラミニンは、上
記コア配列を介して細胞のレセプターと結合することに
より各種の情報を細胞に伝達し、またヘパリン、コラー
ゲン、フィブリン等の生体高分子とも結合して細胞と結
合組織との接着、細胞の分化、増殖に関与しているもの
と考えられている。
【0006】このように細胞接着性蛋白質は多様な生物
活性を有するため、その活性部位配列ペプチドを用いた
研究が精力的になされている。例えばフィブロネクチン
の細胞結合部のコア配列の利用としては、ポリマーにR
GD配列を有するペプチドを共有結合させ、人工臓器用
基体や動物細胞培養用基体として用いる方法(特開平1-
309682号公報、特開平1-305960号公報、WO 90/05036 A
特許)、RGD配列を有するペプチドに疎水性領域を連
結することにより目的とするペプチドを固体表面に付着
させ、歯科用埋め込み剤や組織培養基体に利用する方法
(WO 90/11297A特許)、RGD配列を有する種々の環状
及び鎖状オリゴペプチドまたはその類縁体を用いて血小
板凝集を阻害する方法あるいは血栓症を予防、治療する
方法(高分子学会予稿集第38巻、3149 (1989)、特開平2
-174797号公報、特開平3-118330 号公報、特開平3-1183
31号公報、特開平3-118398号公報、特開平3-118397号公
報、特開平3-118333号公報、WO 91/01331特許、WO 91/0
7429特許、WO 91/15515特許、WO 92/00995特許)、RG
Dペプチドとヒアルロン酸を共有結合した化合物を用い
て血小板凝集を調節する方法(特開平4-134096号公
報)、RGD配列を有するペプチドを細胞移動制御剤と
して用いる方法(特開平2-4716号公報)、RGD配列を
有するペプチドを固定化した膜を細胞接着膜として用い
る方法(高分子学会予稿集第37巻、705 (1988))、RG
DS配列を有するポリペプチドを体外血液用血小板保護
剤として用いる方法(特開昭64ー6217号公報)、ポリペ
プチド分子内に細胞接着活性を有するペプチドを付加す
ることにより人工機能性ポリペプチドとして利用する方
法(特開平3-34996号公報)等が開示されている。
【0007】更に近年、細胞接着性蛋白質はガン転移に
関与する生体分子としても注目されてきている。癌転移
の一連の段階では、ガン細胞は種々の宿主細胞や生体高
分子と接触する。このときフィブロネクチンやラミニン
のような細胞接着性分子が存在すると該細胞は多細胞塊
を形成し、ガン細胞の増殖や生存がより容易になる。と
ころが、たとえばフィブロネクチンの接着部位コア配列
であるトリペプチドRGDが共存すると、競争的に癌細
胞上のフィブロネクチンレセプターと結合するため細胞
接着がブロックされ、ガン転移阻害作用を示すことが報
告されている(Science 238巻, 467 (1986))。
【0008】しかしながらRGDペプチドはそれ単独で
は細胞接着活性が充分でないため、効果の増強をはかる
目的で該配列を有するオリゴペプチド、環状オリゴペプ
チド、あるいはその繰返し配列を有するポリペプチドを
用いてガン転移を制御する方法(Int. J. Biol. Macrom
ol., 11巻, 23 (1989)、同誌, 11巻, 226 (1989)、Jpn.
J. Cancer Res., 60巻, 722, (1989)、特開平2-174798
号公報)、あるいは腫瘍再発を防止する方法(特開平2-
240020号公報)が試みられている。またフィブロネクチ
ン分子中の細胞接着ポリペプチドとヘパリン結合ポリペ
プチドを構成単位とするポリペプチドを用いてガン転移
を抑制する方法(特開平3-127742号公報)も報告されて
いる。
【0009】一方ラミニンの接着部位コア配列について
も検討が行われており、YIGSR配列を有するペプチ
ド誘導体やYIGSR繰返し配列を有するオリゴ(ポ
リ)ペプチドを用いて細胞接着やガン転移を制御する方
法(WO 88/06039特許、米国特許出願87-13919、米国特
許出願88-221982、欧州特許出願第0278781号公告、特開
平2-174798号公報、特開平3-2196号公報、Iwamoto, I.
Science 238巻, 1132(1987) 、Graf, J. Biochemistry
26巻, 6896 (1987)、Mayumi, T. et al., Biochem. Bio
phys. Res. Commun., 174 巻, 1159 (1991)、Mayumi,
T. et al.,Peptide chemistry 145 (1991)、Tanaka, N.
G. et al., Cancer Res., 51巻, 903 (1991)、特表平3-
506039号公報)、YIGSRペプチドを固定化したエチ
レン−アクリル酸共重合体を細胞接着膜として用いる方
法(Nakajima A. et al.,Polymer Journal 24巻、465
(1992))が開示されている。これらはラミニンへの細胞
接着を阻害することによって活性を示すものと考えられ
ている。またYIGSRペプチド誘導体のコンフォメ−
ション計算を行い、ラミニンコアペプチドの立体構造と
生物活性の関係について述べた論文も報告されている
(McKelvey, D.R. et al., J. Protein Chem., 10巻、2
65 (1991))。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述のようにラミニン
等の細胞接着性蛋白質の活性部位コア配列は様々な生物
活性を保持しているため、その応用価値は高いものと考
えられる。しかしながら該コア配列の細胞接着活性が未
だ充分でないため、それらのガン転移抑制作用は実際の
医療に応用するためには満足できるものではなかった。
そのため従来技術の項で説明したような種々の方法が報
告されているが、それらのなかには未だ生物活性が不充
分であったり、合成が困難なものも多い。またポリエチ
レングリコール(PRG)をはじめとする高分子と該コ
ア配列を連結する方法や、該コア配列を繰返すことによ
り高分子化を行い方法も知られているが、これらの方法
では目的物の構造や分子量を特定して合成を行うことは
極めて困難であり、この点で更に有効な物質の開発が必
要とされていた。そこで本発明者らは細胞接着性蛋白質
であるラミニンの持つ種々の生物活性を充分に保持し、
合成も容易でかつ血液中での安定性の高い新規な化合物
を求めて鋭意検討を行った結果、公知のラミニンコア配
列ペプチドに比べてガン転移抑制能が大きい新規なペプ
チド誘導体を見出し、本発明を完成するに至った。従っ
て本発明の目的は、細胞接着性蛋白質様の活性を充分に
保持しており、簡便な手段で合成可能な、血液中での安
定性の高い新規なペプチド誘導体を提供することにあ
る。本発明はさらにガン転移阻害活性の高い新規なペプ
チド誘導体を提供することを目的とする。本発明はさら
に上記ペプチド誘導体を含有してなる薬物組成物の提供
も目的とする。
【0011】
【課題を解決する手段】上記課題は、定まった複数個の
下記一般式(I)で表されるペプチド配列がそのカルボ
キシ末端側から多価アミンの窒素原子と共有結合してな
るペプチド誘導体を見出したことにより達成された。 一般式(I) [X]−Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg (I) ここでTyr、Ile、Gly、Ser、Argは、チ
ロシン、イソロイシン、グリシン、セリン、アルギニン
残基をそれぞれ表す。これらのアミノ酸(グリシンは除
く)はD-体、L-体、ラセミ体のいずれでもよいが、好
ましくはL-体である。
【0012】式中[X]は存在するかあるいは存在しな
いアミノ酸残基を表し、存在する場合はGluまたはA
sp残基を表す。なおGlu、Aspはそれぞれグルタ
ミン酸、アスパラギン酸残基を表す。本発明のペプチド
誘導体に含まれる一般式(I)で表されるペプチド配列
の個数は好ましくは2〜6個、より好ましくは2〜3個
である。
【0013】本発明のペプチド誘導体は、複数の一般式
(I)で表されるペプチド配列がそのカルボキシ末端側
から多価アミンの窒素原子と共有結合してなり、その結
果1分子内に定まった複数個の下記一般式(I)で表さ
れる配列を有している。従っていわゆるポリマー類とは
異なり、分子構造は明確であることが特徴である。本発
明のペプチド誘導体を製造するために使用することの可
能な多価アミンの好ましい例としては、下記一般式(I
I)及び(IV)で表されるアミンが挙げられる。
【0014】 R1HN−Y−NHR2 (II)
【0015】 N[(CH2)n −NH2]3 (IV)
【0016】一般式(II)においてR1及びR2は水素原
子または炭素数1〜4の低級アルキル基を表し、これら
は同一でも異なっていてもよい。また炭素数が3または
4の場合は分岐構造、環状構造を有していてもよい。こ
のようなR1、R2としては水素原子、メチル基、エチル
基、イソプロピル基等が挙げられるが、特に好ましいR
1及びR2は水素原子またはメチル基である。
【0017】Yは炭素数2〜16の直鎖の置換基を有し
ていてもよいアルキレン基またはアリーレン基を表す。
Yがアルキレン基である場合、好ましい炭素数は2〜1
2であり、2重結合等の不飽和結合やシクロヘキサン
環、ベンゼン環のような環状構造を介していてもよい。
置換基が存在する場合、存在してもよい置換基としては
水酸基、ハロゲン原子、カルボニル基、メチル基、エチ
ル基といった低級アルキル基、アセトキシ基に代表され
る低級アシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基のよう
な低級アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、スルホ基等
が挙げられるが、好ましい置換基はカルボニル基、メチ
ル基、水酸基、アセトキシ基である。Yがアリーレン基
である場合は好ましい炭素数は6〜14であり、置換基
を有していてもよい。存在してもよい置換基としては水
酸基、ハロゲン原子、メチル基、エチル基といった低級
アルキル基、アセトキシ基に代表される低級アシルオキ
シ基、メトキシ基、エトキシ基のような低級アルコキシ
基、ニトロ基、シアノ基、スルホ基等があげられるが、
好ましい置換基はメチル基、水酸基、アセトキシ基であ
る。これらは環上のいずれの位置に置換していてもよ
い。さらに本発明において使用することの可能な3価以
上の多価アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリ
エチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、スペ
ルミジンといった多価アミン類、またトリス(2-アミノ
エチル)アミン等を挙げることができる。一般式(IV)に
おいてnは2〜6、好ましくは2〜4の整数である。
【0018】また一般式(I)で表される配列を構成単
位として有するペプチドのアミノ末端側は、炭素数2〜
8のアシル基でアシル化されていてもよい。炭素数が4
以上であるアシル基の場合は分岐構造を有していてもよ
い。具体的なアシル基としてはアセチル基、プロピオニ
ル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、スクシニル基等
が挙げられるが、好ましいアシル基はアセチル基(Ac)、
ベンゾイル基、スクシニル基である。上記一般式(II)及
び(IV)で表されるアミンを使用して製造される本発明の
ペプチド誘導体はそれぞれ下記一般式(III) 及び(V) で
表される。
【0019】
【化1】
【0020】 (R-[X]-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH-(CH2)n)3N (V) 式中、 [X] 、R1、R2、Y及びnは上記と同じ意味を
有し、Rは水素原子または互いに異なってもよい上記の
炭素数2〜8のアシル基を表す。
【0021】本発明のペプチド誘導体中に存在するイオ
ン性基は適当な対イオンと塩を形成していてもよい。塩
の状態でもペプチドの生物学的活性を充分に維持する。
ただしその塩は生理学的、薬理学的に許容されるもので
あることが必要である。具体的には塩酸塩、硫酸塩、硝
酸塩、リン酸塩のような無機酸との塩、酢酸塩、乳酸
塩、酒石酸塩等の有機酸との塩、さらにナトリウム塩、
カリウム塩などが挙げられるが、なかでも塩酸塩、酢酸
塩が特に好ましい。そのような塩への変換は慣用手段に
より行うことができる。
【0022】以下に本発明の化合物の具体例を示すが、
本発明はこれらに限定されるものではない。尚、ペプチ
ド配列のアミノ末端が遊離のアミノ基である場合は末端
のHの記載は省略した。
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】 化合物10 (Ac-Asp-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NHCH2CH2)3N 化合物11 (Ac-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NHCH2CH2)3N
【0026】
【化5】
【0027】次に本発明の化合物の合成法について説明
する。ペプチドの合成方法としては特に限定しないが、
固相法及び固相法を利用したペプチド自動合成装置によ
る合成法、または液相法が挙げられる。固相法及び固相
法を利用したペプチド自動合成装置による合成法に関し
ては、生化学実験講座・タンパク質の化学IV p.207(日
本生化学会編、東京化学同人)、続生化学実験講座・タ
ンパク質の化学(下) p.641(日本生化学会編、東京化
学同人)等に記載されている。
【0028】また本発明のペプチド誘導体は液相法によ
って合成することも可能である。すなわち、C末端修飾
基となる多価アミンと保護アルギニンから出発し、両者
を縮合したのちアルギニン残基のアミノ末端保護基を除
去し、以下保護アミノ酸を逐次縮合する方法である。ま
た[X]−TyrーIleーGly残基とSerーArg
残基の間でフラグメント縮合を行う方法も有効である。
なおここで[X]は先に定義した内容と同義である。保
護アミノ酸あるいは保護ペプチドを縮合する方法として
は、公知の方法、例えば泉屋信夫ら編「ペプチド合成の
基礎と実験」(丸善)に記載の方法のなかから適宜選択
することができる。縮合反応には種々の方法が知られて
いるが、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールとDCCを用
いるDCC-Additive法、あるいはカルボニルジイミダゾー
ルを用いる縮合法が最も良い結果を与えた。
【0029】保護基の除去の条件は用いている保護基の
種類に依存する。通常用いられる方法は、加水素分解、
HF処理、トリフルオロメタンスルホン酸/チオアニソ
ール/m-クレゾール混合系処理等であるが、保護基の種
類によってはさらにさまざまな方法も可能であることは
言うまでもない。目的とするペプチド誘導体は脱保護の
後公知の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、
ゲル濾過クロマトグラフィーなどで精製することができ
る。
【0030】つぎに本発明のペプチド誘導体の作用及び
用途について説明する。本発明のペプチド誘導体は1分
子中にYIGSR配列を複数個有し、かつC末端がアル
キルアミド、あるいはジアルキルアミド構造となってい
るため生体内でプロテアーゼ等による分解を受けにく
い。さらにある程度の大きい分子量を有するため酵素分
解や代謝によって排泄されにくく、そのため顕著な癌転
移阻害活性を示す。本発明のペプチド誘導体は悪性細胞
上のラミニン受容体に多点で作用し、ラミニンへの結合
を阻害することにより悪性細胞の接着、コロニー化、破
壊的浸食を阻止する。本発明のペプチド誘導体は乳癌、
表皮癌、筋線メラノーマ(muscle line melanoma)、表
皮線神経芽細胞腫xグリオマ(epidermal line neurobla
stoma x glioma )、軟骨細胞、フィブロザルコーマを
含め種々の細胞の接着及び転移を阻止するのに有効であ
る。
【0031】さらに本発明のペプチド誘導体は創傷治癒
作用等の広範な生物活性が認められた。また本発明のペ
プチド誘導体はマウスを用いて毒性試験を行ったとこ
ろ、毒性は全く認められなかった。
【0032】本発明のペプチド誘導体またはその薬学上
許容可能な塩は、ペプチド系医薬に一般に使用されてい
る投与方法によって使用することができ、通常賦形剤を
含む薬物組成物として投与される。この薬物組成物はレ
ミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Scien
ces, Merck, 16, (1980))に開示されているように、知
られているどのような方法で製造してもよい。賦形剤と
しては蒸留水、生理食塩水、リン酸塩あるいは酢酸塩の
様な緩衝塩類を含有する緩衝液、浸透圧調節剤としての
塩化ナトリウムやショ糖、若しくはアスコルビン酸のよ
うな酸化防止剤、または許容し得るこれらの組合せがあ
る。
【0033】このような薬物組成物は溶液、錠剤の様な
種々の形態とすることができる。投与形態としては経
口、経鼻、非経口(静脈注射、皮下注射、腹腔内投与な
ど)等のなかから適宜選択することができる。例えば生
理食塩水に溶解して注射用製剤としても良く、あるいは
0.1規定程度の酢酸緩衝液に溶解したのち凍結乾燥剤と
しても良い。またリポソーム中に内包したマイクロカプ
セル剤あるいはミクロスフェアー等の形態で利用するこ
とも可能である。
【0034】本発明のペプチド誘導体の投与量は、通常
0.2 μg/kg体重/日から200 mg/kg体重/日の範囲であ
るが、患者の年齢、体重、症状、投与方法によって決定
されるものである。
【0035】以下実施例によって本発明を更に詳細に説
明する。尚、溶媒や試薬、保護基の表記には通常用いら
れる以下の略号を使用した。
【0036】 Boc :t-ブトキシカルボニル Bn :ベンジル Ac :アセチル Mts :メシチレンスルホニル HOBt :1ーヒドロキシベンゾトリアゾール DCC :ジシクロヘキシルカルボジイミド iPr2NEt :ジイソプロピルエチルアミン DMF :ジメチルホルムアミド CDI :カルボニルジイミダゾール TFA :トリフルオロ酢酸 TFMSA :トリフルオロメタンスルホン酸
【0037】
【実施例】実施例1 化合物1の合成 まず化合物1の液相法による合成法について詳細に説明
する。化合物1の合成経路を以下に示す。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】 1) 中間体1の合成 Boc-Arg(Mts)-OH (21.4g, 47 mmol)、N,N'-ジメチルエ
チレンジアミン (2.07g, 24 mmol) 、1-ヒドロキシベン
ゾトリアゾール1水和物 (7.18 g, 47 mmol)をDMF (20
ml) 及び塩化メチレン (20 ml)の混合溶媒に溶解し、氷
冷しながらDCC(9.68 g, 47 mmol) を加えた。反応混合
物を氷冷下2時間、更に室温まで昇温しながら終夜撹拌
した後、セライト濾過して生成した沈殿を除去した。濾
液を適当量の酢酸エチルで希釈し、水、5 % 炭酸ナトリ
ウム溶液、1 M クエン酸溶液、飽和食塩水で洗浄、無水
硫酸ナトリウムで乾燥ののち減圧濃縮して油状物を得
た。シリカゲルカラムクロマトグフラフィーで精製(溶
出液:クロロホルム/メタノール=30/1)し、目的
とする中間体1を無色粉末として22.1 g(定量的)得
た。
【0040】2)中間体2の合成 中間体1 (20 g, 21 mmol) の塩化メチレン (50 ml) 溶
液にトリフルオロ酢酸 (50 ml) を加え、反応混合物を
室温で40分間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、残
渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩19.5
gを得た。一方Boc-Ser(Bn)-OH (6.12 g, 21 mmol)をDM
F (30 ml) に溶解し、このものに氷冷しながらCDI(3.4
1 g, 21 mmol) のDMF (20 ml) 溶液を加えた。反応混合
物を氷冷しながら1時間撹拌したのち、上記操作により
得られたトリフルオロ酢酸塩 (10.3 g, 10.4 mmol) と
ジイソプロピルエチルアミン (2.84 g, 22 mmol)のDMF
(30 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷下2時間、更
に室温まで昇温しながら終夜撹拌した後、減圧下溶媒を
留去した。残渣を適当量の酢酸エチルで希釈し、水、1
M クエン酸溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄、無水
硫酸ナトリウムで乾燥ののち減圧濃縮し、目的とする中
間体2を無色粉末として13.6 g(定量的)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1319.
【0041】3) 中間体3の合成 中間体2 (13.3 g, 10.1 mmol)の塩化メチレン (50 ml)
溶液にトリフルオロ酢酸 (50 ml)を加え、反応混合物を
室温で40分間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、残
渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩12.3
gを得た。一方Boc-Gly-OH (3.2 g, 18.3 mmol) をDMF
(20 ml) に溶解し、このものに氷冷しながらCDI(2.97
g, 18.3 mmol) のDMF (20 ml) 溶液を加えた。反応混合
物を氷冷しながら1時間撹拌したのち、上記操作により
得られたトリフルオロ酢酸塩 (12.3 g, 9.15 mmol) と
ジイソプロピルエチルアミン (2.45 g, 19 mmol)のDMF
(30 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷下2時間、更
に室温まで昇温しながら終夜撹拌した後、減圧下溶媒を
留去した。残渣を適当量の酢酸エチルで希釈し、水、1
M クエン酸溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄、無水
硫酸ナトリウムで乾燥ののち減圧濃縮し、目的とする中
間体3を無色粉末として12.4 g(94.3 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1433.
【0042】4) 中間体4の合成 中間体3 (11.5 g, 8 mmol) の塩化メチレン (50 ml)
溶液にトリフルオロ酢酸 (50 ml) を加え、反応混合物
を室温で40分間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、
残渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩1
2.0 gを得た。一方Boc-Ile-OH (3.79 g, 16.4 mmol) を
DMF (20 ml) に溶解し、このものに氷冷しながらCDI
(2.66 g, 16.4 mmol) のDMF (20 ml) 溶液を加えた。
反応混合物を氷冷しながら1時間撹拌したのち、上記操
作により得られたトリフルオロ酢酸塩 (12.0 g) とジイ
ソプロピルエチルアミン (2.26 g, 17.5 mmol) のDMF
(30 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷下2時間、更
に室温まで昇温しながら終夜撹拌した後、減圧下溶媒を
留去した。残渣を適当量の酢酸エチルで希釈し、水、1
M クエン酸溶液、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄、無水
硫酸ナトリウムで乾燥ののち減圧濃縮し、目的とする中
間体4を無色粉末として13.8 g(定量的)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1659.
【0043】5)中間体5の合成 中間体4 (13.7 g, 8.3 mmol) の塩化メチレン (40 ml)
溶液にトリフルオロ酢酸 (40 ml) を加え、反応混合物
を室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、残
渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩13.4
gを得た。一方Boc-Tyr(Bn)-OH (5.94 g, 16.0 mmol)
をDMF (15 ml) に溶解し、このものに氷冷しながらCDI
(2.60 g, 16.0 mmol) のDMF (20 ml) 溶液を加えた。
反応混合物を氷冷しながら1時間撹拌したのち、上記操
作により得られたトリフルオロ酢酸塩 (13.4 g) とジイ
ソプロピルエチルアミン (2.20 g, 17.0 mmol) のDMF
(30 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷下2時間、更
に室温まで昇温しながら終夜撹拌した後、減圧下溶媒を
留去した。残渣を酢酸エチルから再結晶し、目的とする
中間体5を無色結晶として11.1 g(62.1 %)得た。FAB-
MS: (M+H)+ 2165.
【0044】6)中間体6の合成 中間体5 (1.42 g, 0,67 mmol) の塩化メチレン (10 m
l) 溶液にトリフルオロ酢酸 (40 ml) を加え、反応混合
物を室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、
残渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩1.
4 gを得た。これをピリジン (10 ml) に溶解し、無水酢
酸 (150 mg, 1.9 mmol) を加えて反応混合物を室温に4
時間放置した。減圧下大部分の溶媒を留去し、残渣をエ
ーテルから再結晶して目的とする中間体6を無色粉末と
して1.16 g (収率86.3 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+2049.
【0045】7)化合物1の合成 中間体6 (1.15 g, 0.56 mmol) のトリフルオロ酢酸 (1
2 ml) 溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸 (12
g)、チオアニソール (10 ml)、m-クレゾール (8.7ml)
、トリフルオロ酢酸 (45 ml) からなる混合溶液を氷冷
しながら加え、反応混合物を氷冷下1時間撹拌した。反
応液をエーテル (800 ml) に滴下して30分間ゆっくり
撹拌した。沈殿した粗ペプチドを少量の水にとかし、イ
オン交換クロマトグラフィー(アンバーライトIRA-40
0)にかけて精製、凍結乾燥して目的とする化合物1を
無色粉末として610 mg (収率82.1 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1325, (M+Na)+ 1347.
【0046】実施例2 化合物2の合成 実施例1に記載の方法により合成した中間体5 (1.5 g,
0.7 mmol) をトリフルオロメタンスルホン酸/チオア
ニソール/m-クレゾール混合系処理により脱保護、イオ
ン交換クロマトグラフィー(アンバーライトIRA-400)
にかけて精製、凍結乾燥して目的とする化合物2を無色
粉末として830 mg (96.5 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1241, (M+Na)+ 1273.
【0047】実施例3 化合物3〜7の合成 実施例1に記載の方法にほぼ準じ、相当するジアミンと
Boc-Arg(Mts)-OHを縮合したのちペプチド鎖を伸張し
た。必要に応じてN末端アミノ基をアシル化ののち脱保
護、精製して目的とするペプチドを合成した。収量及び
マススペクトルを以下に記す。 化合物3 収量:250 mg FAB-MS: (M+H)+ 1297, (M+Na)+ 1319. 化合物4 収量:540 mg 化合物5 収量:310 mg 化合物6 収量:330 mg FAB-MS: (M+H) + 1381, (M+Na)+ 1403. 化合物7 収量:170 mg
【0048】実施例4 化合物8の合成 化合物8の合成経路を以下に示す。
【0049】
【化8】 1)中間体7の合成 実施例1で製造した中間体5 (3.54 g, 1.64 mmol)のク
ロロホルム (20 ml)溶液にトリフルオロ酢酸 (20 ml)を
加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応終了後
溶媒を留去し、残渣をエーテルから結晶化させてトリフ
ルオロ酢酸塩3.76 gを得た。一方Boc-Asp(Bn)-OH (1.11
g, 3.4 mmol) をDMF (10 ml) に溶解し、このものに氷
冷しながらCDI(550 mg, 3.4 mmol) のDMF (10 ml) 溶
液を加えた。反応混合物を氷冷しながら1時間撹拌した
のち、上記操作により得られたトリフルオロ酢酸塩 (3.
76 g) とジイソプロピルエチルアミン (450 mg, 3.5 mm
ol) のDMF (30 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷下
2時間、更に室温まで昇温しながら終夜撹拌した後、減
圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチルから再結晶し、
目的とする中間体7を無色結晶として4.3 g(定量的)
得た。FAB-MS: (M+H)+ 2575.
【0050】2)中間体8の合成 中間体7 (1.95 g, 0.76 mmol) のクロロホルム (10 m
l) 溶液にトリフルオロ酢酸 (10 ml) を加え、反応混合
物を室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、
残渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩1.
59 gを得た。このものをピリジン (10 ml) に溶解し、
無水酢酸 (0.5 ml) を加えて反応混合物を室温に4時間
放置した。減圧下大部分の溶媒を留去し、残渣をエーテ
ルから再結晶して目的とする中間体8を無色粉末として
1.30 g (収率71.5 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 2459.
【0051】3)化合物8の合成 中間体8 (1.3 g, 0.53 mmol) のトリフルオロ酢酸 (12
ml) 溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸 (12 g)、
チオアニソール (10 ml)、m-クレゾール (8.7ml)、トリ
フルオロ酢酸 (45 ml) からなる混合溶液を氷冷しなが
ら加え、反応混合物を氷冷下1時間撹拌した。反応液を
エーテル (800 ml) に滴下して30分間ゆっくり撹拌し
た。沈殿した粗ペプチドを少量の水にとかし、イオン交
換クロマトグラフィー(アンバーライトIRA-400、対イ
オンOAc-)にかけて精製、凍結乾燥して目的とする化合
物8を無色粉末として580 mg (収率70.4 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1555, (M+Na)+ 1577.
【0052】実施例5 化合物9の合成 実施例4に記載の方法により合成した中間体7 (1.5 g,
0.6 mmol) を、トリフルオロメタンスルホン酸/チオ
アニソール/m-クレゾール混合系処理により同様に脱保
護した。イオン交換クロマトグラフィー(アンバーライ
トIRA-400、対イオンOAc-)にかけて精製、凍結乾燥し
て目的とする化合物9を無色粉末として590 mg (69.2
%)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1471.
【0053】実施例6 化合物10の合成 化合物10の合成経路の概略を以下に示す。
【0054】
【化9】
【0055】1)中間体9の合成 Boc-Arg(Mts)-OH (8.21 g, 18 mmol)、トリス(2-アミ
ノエチル)アミン (870mg, 6 mmol) 、1-ヒドロキシベ
ンゾトリアゾール1水和物 (2.75 g, 18 mmol)をDMF (1
0 ml) 及び塩化メチレン (10 ml)の混合溶媒に溶解し、
氷冷しながらDCC (3.71 g, 18 mmol) を加えた。反応混
合物を氷冷下2時間、更に室温まで昇温しながら終夜撹
拌した後、セライト濾過して生成した沈殿を除去した。
濾液を適当量の酢酸エチルで希釈し、水、5 % 炭酸ナト
リウム溶液、1 M クエン酸溶液、飽和食塩水で洗浄、無
水硫酸ナトリウムで乾燥ののち減圧濃縮して油状物を得
た。シリカゲルカラムクロマトグフラフィーで精製(溶
出液:クロロホルム/メタノール=20/1)し、目的
とする中間体9を無色粉末として9.15 g(定量的)得
た。 FAB-MS: (M-H)- 1459. 以下実施例4の記載の方法に従い、N末端保護基の脱保
護、保護アミノ酸残基の縮合を繰返しペプチド鎖を伸張
した。N末端アミノ基をアセチル化ののち脱保護、精製
して目的とする化合物10を合成した。 収量:880 mg, FAB-MS: (M+H)+ 2346.
【0056】実施例7 化合物11〜13の合成 実施例1に記載の方法にほぼ準じ、アミン成分とBoc-Ar
g(Mts)-OHを縮合したのちN末端保護基の脱保護、保護
アミノ酸残基の縮合を繰返しペプチド鎖を伸張した。必
要に応じてN末端アミノ基をアシル化ののち脱保護、精
製して目的とする化合物を合成した。得られた化合物の
マススペクトルデータを以下に示す。 化合物11 FAB-MS: (M+H)+ 2001. 化合物12 FAB-MS: (M+H)+ 1603. 化合物13 FAB-MS: (M+H)+ 2303.
【0057】 実施例8 実験的肺転移モデル系による癌転移阻害作用 本発明のペプチド誘導体の癌転移阻止作用について実験
的肺転移モデル系によって検討した。本発明の化合物1
〜7、比較例としてTyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2及び特開
平3-2196号公報に記載のAc-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2
用いた。これらの化合物各々1000 μgと非常に転移性の
強い癌細胞であるB16-BL6メラノーマ細胞(対数増殖期
のもの5 x 104)を各々PBS 0.2ml 中で混合し、その0.2
mlを1群5匹のC57BL/6の雌マウスに尾静脈注射した。
投与後14日目にマウスを屠殺、解剖し、肺に転移した癌
のコロニー数を計測して対照のPBS投与群と比較した。
その結果を以下に示す。
【0058】
【表1】 ──────────────────────────────── 肺への転移数 投与化合物 平均±SD (範囲) ──────────────────────────────── PBS(未処理) 167±28 (121-195) 化合物1 18±11 (8-35)*** 化合物2 55±8 (45-67)*** 化合物3 25±9 (10-33)*** 化合物4 80±9 (70-93)** 化合物5 32±8 (20-42)*** 化合物6 28±9 (18-43)*** 化合物7 67±11 (48-76)*** Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2 128±5 (123-125)* Ac-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2 108±17 (85-121)* ──────────────────────────────── * t-検定で未処理対照と比較してP<0.05 ** P<0.01 *** P<0.001
【0059】この結果によれば、本発明の化合物1から
7の投与によって肺への癌転移は顕著に抑制された。こ
れに対し単なるコア配列であるTyr-Ile-Gly-Ser-Argで
は転移の抑制効果はそれほど顕著でないことがわかる。
なかでも本発明の化合物1、3、5、6は特に効果が高
く、公知のペプチドAc-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2と比較
して少なくとも2倍有効である。
【0060】 実施例9 実験的肺転移モデル系による癌転移阻害作用 本発明のペプチド誘導体のガン転移抑制作用について、
実験的肺転移モデル系によって検討した。実施例に記載
した本発明の化合物3及び8〜11、比較例としてTyr-
Ile-Gly-Ser-Arg-NH2及び特開平3-2196号公報に記載のA
c-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2を用いた。これらの化合物
各々500 μgと非常に転移性の強いガン細胞であるB16-B
L6メラノーマ細胞(対数増殖期のもの5 x 104)を各々P
BS中で混合し、これを1群5匹のC57BL/6の雌マウスに
尾静脈注射した。投与後14日目にマウスを屠殺、解剖
し、肺に転移した癌のコロニー数を計測して対照のPBS
投与群と比較した。その結果を以下に示す。
【0061】
【表2】 ───────────────────────────────── 投与化合物 肺への転移数 平均±SD (範囲) ───────────────────────────────── PBS(未処理) 59±13 (40-77) 化合物3 17±6 (8-26)** 化合物8 21±6 (13-29)** 化合物9 20±11 (7-40)** 化合物10 10±3 (8-16)** 化合物11 14±4 (9-19)** Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2 45±17 (25-67) Ac-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2 50±11 (30-58) ───────────────────────────────── ** t-検定で未処理区と比較して P<0.001
【0062】この結果によれば、本発明の化合物3及び
8〜11の投与によって肺への癌転移は有意に抑制され
た。これに対しTyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2やAc-Tyr-Ile-
Gly-Ser-Arg-NH2は、マウス1匹あたり500 μgの投与量
では転移抑制効果をほとんど示さなかった。
【0063】 実施例10 自然肺転移モデル系による癌転移阻害作用 本発明のペプチド誘導体のガン転移抑制作用について、
現実的な病態治療モデルである自然肺転移抑制試験によ
り検討した。本発明の化合物8、10、11及び比較例とし
て特開平3-2196号公報に記載のAc-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg
-NH2を用いた。1群7匹のC57BL/6の雌マウスを用い、
これらの右足かかと部分にB16-BL6メラノーマ細胞(対
数増殖期のもの5 x 104/50 μl)を移植した。移植後
7、9、11、13、15、17、19、22、24、26日目に実験に
用いるペプチド誘導体を尾静脈注射により投与した(1
回あたり100 μg/200 μl PBS)。この間移植後21日目
に原発巣を外科的に切除した。メラノーマ移植後35日め
にマウスを屠殺、解剖し、肺に転移した癌のコロニー数
を計測して対照のPBS投与群と比較した。その結果を以
下に示す。
【0064】
【表3】 ──────────────────────────────── 投与化合物 肺への転移数 平均±SD (範囲) ──────────────────────────────── PBS(未処理) 32±10 (19-48) Ac-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2 36±20 (17-69) 化合物8 14±10 (5-34)* 化合物10 10±9 (1-21)** 化合物11 15±5 (7-23)** ──────────────────────────────── * t-検定で未処理区と比較して P<0.02 ** P<0.01
【0065】この結果によれば、本発明の化合物8、1
0、11の投与によって、現実的な病態治療モデルである
自然肺転移抑制試験においてもガンの転移数は有意に抑
制された。これに対し公知のペンタペプチドであるAc-T
yr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2には転移の抑制効果は全くなか
った。従って本発明のペプチド誘導体のガン転移抑制効
果、およびその有用性、優位性は明白である。
【0066】以上実施例により本発明を特定の例に関し
て説明したが、限定して解釈されるべきではない。本発
明の本質及び範囲から逸脱しない種々の変更や修正が可
能であることは明らかである。そしてそのような発明は
本発明に含まれると考える。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように本発明のペプチド誘
導体は細胞接着性蛋白質であるラミニンのコア配列と比
較して細胞接着性が大きく、ガン転移抑制作用等の種々
の生物活性を充分に保持し、毒性の問題もほとんど無
い。さらに特筆すべきは、現実的な病態治療モデルであ
る自然肺転移抑制試験においてもガン転移抑制作用を示
す。またその構造は単純であるため合成も容易であり、
医薬として価値の高いものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 東 市郎 北海道札幌市南区真駒内上町5丁目3−2

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 定まった複数個の下記一般式(I)で表
    されるペプチド配列がそのカルボキシ末端側から多価ア
    ミンの窒素原子と共有結合してなるペプチド誘導体また
    はその薬学上許容できる塩。 一般式(I) [X]−Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg (I) 式中[X]は存在するかあるいは存在しないアミノ酸残
    基を表し、存在する場合はGluまたはAsp残基を表
    す。一般式(I)で表されるペプチド配列のアミノ末端
    側は、炭素数2〜8のアシル基でアシル化されていても
    よい。
  2. 【請求項2】 薬学上許容できる賦形剤及び特許請求の
    範囲第1項に記載のペプチド誘導体またはその薬学上許
    容できる塩を有効成分として含有してなる、ガン転移抑
    制剤。
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