JPH06228189A - ペプチド誘導体およびその用途 - Google Patents

ペプチド誘導体およびその用途

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JPH06228189A
JPH06228189A JP5000696A JP69693A JPH06228189A JP H06228189 A JPH06228189 A JP H06228189A JP 5000696 A JP5000696 A JP 5000696A JP 69693 A JP69693 A JP 69693A JP H06228189 A JPH06228189 A JP H06228189A
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peptide
bond
peptide derivative
molecule
acid
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JP5000696A
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Hideto Mori
英登 森
Hiroyuki Komazawa
宏幸 駒澤
Ikuo Saiki
育夫 済木
Ichiro Azuma
市郎 東
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 一般式(I)の配列を構成単位とするペプチ
ドがアミノ末端側から適当な有機分子と共有結合してな
り、1分子内に定まった複数個の一般式(I)の配列を
含んでいるペプチド誘導体またはその薬学上許容できる
塩及びこれらを含有してなる薬物組成物。 [X]−Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg−Y (I) [X]は存在するか存在しないアミノ酸残基(存在する
場合はGluまたはAsp残基)、Yは−OHあるいは
−NR12、(R1及びR2は水素原子または炭素数1〜
8のアルキル基で、R1とR2は同一でも異なってもよ
く、またこれらが連結して環を形成してもよい。)を表
す。 【効果】 ガン転移抑制作用等の種々の生物活性を保持
し、毒性もほとんど無く、病態治療モデルである自然肺
転移抑制試験においてもガン転移抑制を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は細胞接着性蛋白質である
ラミニンの活性部位配列ペプチドの誘導体、またはその
薬学上許容可能な塩、及びその用途に関するものであ
る。
【0002】
【従来技術】ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネク
チン等は細胞と結合組織との結合に関与し、また動物細
胞の細胞機能に関連した種々の生物活性を有する蛋白質
であり、細胞接着性蛋白質と総称される。例えばフィブ
ロネクチンは肝臓で生合成され、ヒト血漿中に約0.3 mg
/mlの濃度で存在する糖蛋白質である。
【0003】フィブロネクチンはその1次構造が分子ク
ローニングを用いて決定されており(Koarnblihtt, A.
R. et al., EMBO Journal, 4巻, 2519 (1985))、分子
量約250KのポリペプチドであるA鎖と約240Kの
B鎖がC末端附近でジスルフィド結合した2量体蛋白質
であることが明らかにされている。またラミニンについ
ても佐々木ら(Sasaki, M. et al., Proc. Natl. Acad.
Sci. USA., 81巻, 935 (1987), Sasaki, M. et al.,
J. Biol. Chem., 262巻, 17111 (1987))によりその1
次構造が決定されている。ラミニンはA、B1、B2と
よばれる3本のポリペプチド鎖から構成されており、十
字架状の構造をとっていることが知られている。
【0004】そして細胞接着性に関与する結合部位の研
究も行われ、フィブロネクチンの細胞接着部のコア配列
はArg−Gly−Asp(RGD)なるトリペプチド
であることが1984年に報告された(Pierschbacher, M.
D. et al., Nature 309巻, 30(1984))。またラミニン
の細胞接着部位のコア配列はTyr−Ile−Gly−
Ser−Arg(YIGSR)で表されるペンタペプチ
ドであることも解明されている(Graf, J. et al., Cel
l 48巻, 989 (1987))。
【0005】これらフィブロネクチンやラミニンは、上
記コア配列を介して細胞のレセプターと結合することに
より各種の情報を細胞に伝達し、またヘパリン、コラー
ゲン、フィブリン等の生体高分子とも結合して細胞と結
合組織との接着、細胞の分化、増殖に関与しているもの
と考えられている。
【0006】このように細胞接着性蛋白質は多様な生物
活性を有するため、その活性部位配列ペプチドを用いた
研究が精力的になされている。例えばフィブロネクチン
の細胞結合部のコア配列の利用としては、ポリマーにR
GD配列を有するペプチドを共有結合させ、人工臓器用
基体や動物細胞培養用基体として用いる方法(特開平1-
309682号公報、特開平1-305960号公報、WO 90/05036 A
特許)、RGD配列を有するペプチドに疎水性領域を連
結することにより目的とするペプチドを固体表面に付着
させ、歯科用埋め込み剤や組織培養基体に利用する方法
(WO 90/11297A特許)、RGD配列を有する種々の環状
及び鎖状オリゴペプチドまたはその類縁体を用いて血小
板凝集を阻害する方法あるいは血栓症を予防、治療する
方法(高分子学会予稿集第38巻、3149 (1989)、特開平2
-174797号公報、特開平3-118330号公報、特開平3-11833
1号公報、特開平3-118398号公報、特開平3-118397号公
報、特開平3-118333号公報、WO 91/01331特許、WO 91/0
7429特許、WO 91/15515特許、WO 92/00995特許)、RG
Dペプチドとヒアルロン酸を共有結合した化合物を用い
て血小板凝集を調節する方法(特開平4-134096号公
報)、RGD配列を有するペプチドを細胞移動制御剤と
して用いる方法(特開平2-4716号公報)、RGD配列を
有するペプチドを固定化した膜を細胞接着膜として用い
る方法(高分子学会予稿集第37巻、705 (1988))、RG
DS配列を有するポリペプチドを体外血液用血小板保護
剤として用いる方法(特開昭64-6217号公報)、ポリペ
プチド分子内に細胞接着活性を有するペプチドを付加す
ることにより人工機能性ポリペプチドとして利用する方
法(特開平3-34996号公報)等が開示されている。
【0007】更に近年、細胞接着性蛋白質はガン転移に
関与する生体分子としても注目されてきている。癌転移
の一連の段階では、ガン細胞は種々の宿主細胞や生体高
分子と接触する。このときフィブロネクチンやラミニン
のような細胞接着性分子が存在すると該細胞は多細胞塊
を形成し、ガン細胞の増殖や生存がより容易になる。と
ころが、たとえばフィブロネクチンの接着部位コア配列
であるトリペプチドRGDが共存すると、競争的に癌細
胞上のフィブロネクチンレセプターと結合するため細胞
接着がブロックされ、ガン転移阻害作用を示すことが報
告されている(Science 238巻, 467 (1986))。
【0008】しかしながらRGDペプチドはそれ単独で
は細胞接着活性が充分でないため、効果の増強をはかる
目的で該配列を有するオリゴペプチド、環状オリゴペプ
チド、あるいはその繰返し配列を有するポリペプチドを
用いてガン転移を制御する方法(Int. J. Biol. Macrom
ol., 11巻, 23 (1989)、同誌, 11巻, 226 (1989)、Jpn.
J. Cancer Res., 60巻, 722, (1989)、特開平2-174798
号公報)、あるいは腫瘍再発を防止する方法(特開平2
-240020号公報)が試みられている。またフィブロネク
チン分子中の細胞接着ポリペプチドとヘパリン結合ポリ
ペプチドを構成単位とするポリペプチドを用いてガン転
移を抑制する方法(特開平3-127742号公報)も報告され
ている。
【0009】一方ラミニンの接着部位コア配列について
も検討が行われており、YIGSR配列を有するペプチ
ド誘導体やYIGSR繰返し配列を有するオリゴ(ポ
リ)ペプチドを用いて細胞接着やガン転移を制御する方
法(WO 88/06039特許、米国特許出願87-13919、米国特
許出願88-221982、欧州特許出願第0278781号公告、特開
平2-174798号公報、特開平3-2196号公報、Iwamoto, I.
Science 238巻, 1132(1987)、Graf, J. Biochemistry 2
6巻, 6896 (1987)、Mayumi, T. et al., Biochem. Biop
hys. Res. Commun., 174巻, 1159 (1991)、Mayumi, T.
et al.,Peptide chemistry 145 (1991)、Tanaka, N.G.
et al., Cancer Res., 51巻, 903 (1991)、特表平3-506
039号公報)、YIGSRペプチドを固定化したエチレ
ン−アクリル酸共重合体を細胞接着膜として用いる方法
等(Nakajima A. et al., Polymer Journal 24巻、465
(1992)) が開示されている。これらはラミニンへの細胞
接着を阻害することによって活性を示すものと考えられ
ている。またYIGSRペプチド誘導体のコンフォメ−
ション計算を行い、ラミニンコアペプチドの立体構造と
生物活性の関係について述べた論文も報告されている
(McKelvey,D. R. et al., J. Protein Chem., 10巻、2
65 (1991))。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述のようにラミニン
等の細胞接着性蛋白質の活性部位コア配列は様々な生物
活性を保持しているため、その応用価値は高いものと考
えられる。しかしながら該コア配列の細胞接着活性が充
分でないため、それらのガン転移抑制作用は実際の医療
に応用するためには満足できるものではなかった。また
一般に薬物が生体に投与されたのち薬効を維持するため
には、それ自体の生物活性の強さのみならず薬物の生体
内での安定性(例えば血流中での滞留時間や排泄される
時間など)が重要であることが知られている。細胞接着
性蛋白質の活性部位コア配列ペプチドも例外ではなく、
それ単独ではペプチド類に特有の速い代謝分解や排泄が
起こり、結果的に所望の効果が期待できない場合も生ず
る。そこで生体内での安定性を向上させるため従来技術
の項で説明したような種々の方法が報告されているが、
それらの化合物のなかには未だ生物活性が不充分であっ
たり、合成が困難なものも多い。またポリエチレングリ
コール(PEG)等の高分子と該コア配列を連結する方
法や、該コア配列を繰返すことにより高分子量化を行う
方法も知られているが、これらの方法では目的物の構造
や分子量を特定して合成を行うことは極めて困難であ
り、この点で更に有効な物質の開発が必要とされてい
た。そこで本発明者らは細胞接着性蛋白質であるラミニ
ンの持つ種々の生物活性を充分に保持し、合成も容易で
かつ血液中での安定性の高い新規な化合物を求めて鋭意
検討を行った結果、公知のラミニンコア配列ペプチドに
比べてガン転移抑制能が大きい新規なペプチド誘導体を
見出し、本発明を完成するに至った。従って本発明の目
的は、細胞接着性蛋白質様の活性を充分に保持してお
り、簡便な手段で合成可能な、血液中での安定性の高い
新規なペプチド誘導体を提供することにある。本発明は
さらにガン転移阻害活性の高い新規なペプチド誘導体を
提供することを目的とする。本発明はさらに上記ペプチ
ド誘導体を含有してなる薬物組成物の提供も目的とす
る。
【0011】
【課題を解決する手段】上記課題は、下記一般式(I)
で表される配列を構成単位として有するペプチドがその
アミノ末端側から適当な有機分子と共有結合し、その結
果1分子内に定まった複数個の下記一般式(I)で表さ
れる配列を含んでいることを特徴とするペプチド誘導体
を見出したことにより達成された。一般式(I) [X]−Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg−Y (I) ここでTyr、Ile、Gly、Ser、Argは、チ
ロシン、イソロイシン、グリシン、セリン、アルギニン
残基をそれぞれ表す。これらのアミノ酸(グリシンは除
く)はD-体、L-体、ラセミ体のいずれでもよいが、好
ましくはL-体である。
【0012】式中[X]は存在するかあるいは存在しな
いアミノ酸残基を表し、存在する場合はGluまたはA
sp残基を表す。なおGlu、Aspはそれぞれグルタ
ミン酸、アスパラギン酸残基を表す。
【0013】Yは−OHあるいは−NR12を表す。こ
こでR1およびR2は水素原子または炭素数1〜8のアル
キル基を表す。R1およびR2は同一でも異なっていても
よいが、炭素数が3または4である場合は分岐構造を有
していることが好ましい。またR1及びR2が連結して環
を形成していてもよい。本発明に好ましく用いられるY
としては、−NH2、−NHCH3、−NHiC37、−
N(CH32、 −N〔−(CH24 −〕等を挙げるこ
とができるが、なかでも−NHCH3、−NHiC37
特に好ましい。
【0014】本発明において、一般式(I)で表される
配列を構成単位として有するペプチドを有機分子と共有
結合するのは、有効なペプチドの周辺を修飾することに
より、生体内酵素による分解から保護したり、また高分
子量にして徐放効果を付与するためである。一般式
(I)で表される配列を構成単位として有するペプチド
と有機分子の結合様式としては、アミド結合、イミド結
合、ウレタン結合、尿素結合のなかの少なくとも1種を
挙げることができる。なおここでアミド結合とはカルボ
アミド、スルホンアミド、ホスホンアミドのいずれをも
意味する。本発明のため使用することの可能な有機分子
としては、薬学的に許容されるものであり、有用な生物
活性を減ずることなく、分子全体の水溶性を妨げず、さ
らに一般式(I)で表される配列を構成単位として有す
るペプチドのアミノ末端側アミノ基と反応して上記共有
結合を形成しうるような官能基を、1分子中に2個以上
の定まった個数、好ましくは2個以上6個以下有するも
のであれば、目的に応じて使い分けることができる。つ
まり本発明のペプチド誘導体は、1分子中に定まった複
数個の一般式(I)で表される配列を有することにな
る。従っていわゆるポリマー類とは異なり、分子構造は
明確であることが特徴である。
【0015】本発明において用いられる具体的な有機分
子としては、まず価数が2〜6価の有機酸、より具体的
には多価カルボン酸を挙げることができる。多価カルボ
ン酸の価数としては上述の通り2〜6価であることが好
ましく、また芳香族系、脂肪族系多価カルボン酸いずれ
をも用いることが可能である。好ましい多価カルボン酸
としては、テレフタル酸、トリメシン酸(1,3,5-ベンゼ
ントリカルボン酸)、ピロメリット酸(1,2,4,5-ベンゼ
ンテトラカルボン酸)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカル
ボン酸、コハク酸(ブタン2酸)、アジピン酸(ヘキサ
ン2酸)、クエン酸、リンゴ酸、1,2,3-プロパントリカ
ルボン酸等が挙げられる。多価カルボン酸とペプチドの
アミノ末端側アミノ基を反応させる方法としては、ジシ
クロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤を用いる方法も
挙げられるが、多価カルボン酸を活性アシル誘導体に変
換ののち縮合する方法が実用的かつ有利である。活性ア
シル誘導体としては酸ハロゲン化物、好ましくは酸塩化
物が挙げられる。多価カルボン酸の相当する酸塩化物へ
の変換は公知の方法により行うことができるが、市販品
を購入することも可能である。
【0016】本発明において用いられる他の有機分子と
しては、多価スルホン酸を挙げることもできる。多価ス
ルホン酸の価数としては2〜6価であることが好まし
い。また芳香族系、脂肪族系多価スルホン酸いずれをも
用いることが可能であるが、2価または3価の芳香族ス
ルホン酸を用いることが特に好ましい。具体的な多価ス
ルホン酸としては、1,3-ベンゼンジスルホン酸、1,5-ナ
フタレンジスルホン酸等が挙げられる。これらの多価ス
ルホン酸とペプチドのアミノ末端側アミノ基を反応させ
てスルホンアミド結合を形成する方法としては、活性誘
導体であるスルホニルクロライド等に変換ののち縮合す
る方法が実用的かつ有利である。多価スルホン酸の相当
するスルホニルクロライドへの変換は公知の方法により
行うことができるが、市販品を購入して利用することも
勿論可能である。
【0017】また本発明において用いられる他の有機分
子としては、多価イソシアナート、イソチオシアナート
類を挙げることができる。イソシアナート、イソチオシ
アナート類は、イソシアン酸及びイソチオシアン酸の活
性誘導体ともみなすことができる分子である。多価イソ
シアナート、イソチオシアナートの価数としては2〜6
価であることが好ましい。また芳香族系、脂肪族系多価
イソシアナート、イソチオシアナートいずれをも用いる
ことが可能であるが、2価の脂肪族イソシアナート、イ
ソチオシアナートを用いることが特に好ましくまた現実
的である。具体的にこのような条件を満たすイソシアナ
ート、イソチオシアナートとしては、ヘキサメチレンジ
イソシアナート等を挙げることができる。多価イソシア
ナート、イソチオシアナート類の合成法としては、相当
する多価アミンとホスゲン(条件によってはホスゲンダ
イマー)あるいは二硫化炭素を反応させる方法等により
合成することができる。イソシアナート、イソチオシア
ナート類の合成法としては、新実験化学講座14 有機
化合物の合成と反応(III) P.1490〜1509に詳述されてい
る。
【0018】さらに本発明において好ましく用いること
の可能な他の有機分子として、一般式(I)で表される
配列を構成単位として有するペプチドのアミノ末端側ア
ミノ基と反応して共有結合を形成しうるような異なった
種類の官能基を、一分子中に2個以上の定数個有するよ
うなものも挙げることができる。このような担体として
は、以下に示すような多官能性化合物が挙げられる。
【0019】
【化1】
【0020】R3−CH(COCl)−NCO OCN−(CH2n−COCl 上記式中、R3はH、CH3、iC37等を表し、nは例
えば2〜5の整数を表す。本発明のペプチド誘導体中に
存在するイオン性基は適当な対イオンと塩を形成してい
てもよい。塩の状態でも本発明の化合物はその生物学的
活性を充分に維持する。ただしその塩は生理学的、薬理
学的に許容されるものであることが必要である。具体的
には塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩の様な無機酸と
の塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の有機酸との塩、さ
らにナトリウム塩、カリウム塩などがあげられるが、な
かでも塩酸塩、酢酸塩がとくに好ましい。そのような塩
への変換は慣用手段により行うことができる。
【0021】以下に本発明の化合物の具体例を示すが、
本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
【化2】
【0023】
【化3】
【0024】次に本発明の化合物の合成法について説明
する。本発明のペプチド誘導体は種々の方法でこれを合
成することができるが、まず保護ペプチド部を合成のの
ちアミノ末端の保護基を除去し、これをアミノ基と反応
して共有結合を形成しうるような官能基を1分子中に2
個以上の定数個、好ましくは2個以上6個以下有する有
機分子と反応せしめ、しかるのちに他の保護基を除去す
ることにより合成する方法が実用的かつ有利である。ペ
プチド部の合成方法は特に限定されないが、固相法及び
固相法を利用したペプチド自動合成装置による合成法が
まず挙げられる。固相法及び固相法を利用したペプチド
自動合成装置による合成法に関しては、生化学実験講座
・タンパク質の化学IV p.207(日本生化学会編、東京化
学同人)、続生化学実験講座・タンパク質の化学(下)
p.641(日本生化学会編、東京化学同人)等に記載され
ている。
【0025】また本発明の化合物のペプチド部は液相法
によって合成することも可能である。すなわちC末端成
分となる保護アルギニンから出発し、C末端を修飾のの
ちアルギニン残基のアミノ末端保護基を除去し、以下保
護アミノ酸を逐次縮合する方法である。また[X]−T
yr−Ile−Gly残基とSer−Arg残基の間で
フラグメント縮合を行う方法も有効である。なおここで
[X]は先に定義した内容と同義である。保護アミノ酸
あるいは保護ペプチドを縮合する方法としては、公知の
方法、例えば泉屋信夫ら編「ペプチド合成の基礎と実
験」(丸善)に記載の方法のなかから適宜選択すること
ができる。縮合反応には種々の方法が知られているが、
1−ヒドロキシベンゾトリアゾールとDCCを用いるDC
C-Additive法、あるいはカルボニルジイミダゾールを用
いる縮合法が最も良い結果を与えた。
【0026】以上の方法により合成したペプチド部はア
ミノ末端保護基を除去し、これを先に説明した有機分子
と反応せしめ、しかるのちに保護基の除去を行う。保護
基の除去の条件は用いている保護基の種類に依存する。
通常用いられる方法は、加水素分解、HF処理、トリフ
ルオロメタンスルホン酸/チオアニソール/m-クレゾー
ル/トリフルオロ酢酸混合系処理等であるが、保護基の
種類によってはさらにさまざまな方法も可能であること
は言うまでもない。目的とするペプチド誘導体は脱保護
ののち公知の方法、例えばイオン交換クロマトグラフィ
ー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどで精製することが
できる。
【0027】つぎに本発明のペプチド誘導体の作用及び
用途について説明する。本発明のペプチド誘導体は1分
子中にYIGSR配列を複数個有し、さらにある程度の
大きい分子量を有するため酵素分解や代謝によって排泄
されにくく、そのため顕著な癌転移阻害活性を示す。本
発明のペプチド誘導体は悪性細胞上のラミニン受容体に
多点で作用し、ラミニンへの結合を阻害することにより
悪性細胞の接着、コロニー化、破壊的浸食を阻止する。
本発明のペプチド誘導体は乳癌、表皮癌、筋線メラノー
マ(muscle line melanoma)、表皮線神経芽細胞腫xグ
リオマ(epidermal line neuroblastoma x glioma)、
軟骨細胞、フィブロザルコーマを含め種々の細胞の接着
及び転移を阻止するのに有効である。
【0028】さらに本発明のペプチド誘導体は創傷治癒
作用等の広範な生物活性が認められた。また本発明のペ
プチド誘導体はマウスを用いて毒性試験を行ったとこ
ろ、毒性は全く認められなかった。
【0029】本発明のペプチド誘導体またはその薬学上
許容可能な塩は、ペプチド系医薬に一般に使用されてい
る投与方法によって使用することができ、通常賦形剤を
含む薬物組成物として投与される。この薬物組成物はレ
ミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Scien
ces, Merck, 16, (1980))に開示されているように、知
られているどのような方法で製造してもよい。賦形剤と
しては蒸留水、生理食塩水、リン酸塩あるいは酢酸塩の
様な緩衝塩類を含有する緩衝液、浸透圧調節剤としての
塩化ナトリウムやショ糖、若しくはアスコルビン酸のよ
うな酸化防止剤、または許容し得るこれらの組合せがあ
る。
【0030】このような薬物組成物は溶液、錠剤の様な
種々の形態とすることができる。投与形態としては経
口、経鼻、非経口(静脈注射、皮下注射、腹腔内投与な
ど)等のなかから適宜選択することができる。例えば生
理食塩水に溶解して注射用製剤としてもよく、あるいは
0.1規定程度の酢酸緩衝液に溶解したのち凍結乾燥剤と
してもよい。またリポソーム中に内包したマイクロカプ
セル剤あるいはミクロスフェアー等の形態で利用するこ
とも可能である。
【0031】本発明のペプチド誘導体の投与量は、通常
1日0.2 μg/kgから200 mg/kgの範囲であるが、患者の
年齢、体重、症状、投与方法によって決定されるもので
ある。
【0032】以下実施例によって本発明を更に詳細に説
明する。なお通常用いられる溶媒や試薬、保護基の表記
には以下の略号を使用した。
【0033】Boc :t-ブトキシカルボニル Bn :ベンジル THF :テトラヒドロフラン Mts :メシチレンスルホニル HOBt :1−ヒドロキシベンゾトリアゾール DCC :ジシクロヘキシルカルボジイミド iPr2NEt :ジイソプロピルエチルアミン DMF :ジメチルホルムアミド CDI :カルボニルジイミダゾール TFA :トリフルオロ酢酸 TFMSA :トリフルオロメタンスルホン酸
【0034】
【実施例】
実施例1 化合物1の合成 化合物1の液相法による合成法について詳細に説明す
る。化合物1の合成経路を以下に示す。
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】 1) 中間体1の合成 Boc-Arg(Mts)-OH (25.0 g, 55 mmol)、イソプロピルア
ミン (3.25 g, 55 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾ
ール1水和物 (8.42 g, 55 mmol) をDMF (30 ml)及び塩
化メチレン (30 ml)の混合溶媒に溶解し、氷冷しながら
DCC (11.3 g, 55mmol)を加えた。反応混合物を氷冷下1
時間、更に室温まで昇温しながら終夜撹拌した後、セラ
イト濾過して生成した沈殿を除去した。濾液を適当量の
酢酸エチルで希釈し、水、1 M クエン酸溶液、5 % 炭酸
ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウ
ムで乾燥ののち減圧濃縮して目的とする中間体1を無色
粉末として29.0 g(定量的)得た。
【0037】2)中間体2の合成 中間体1 (29.0 g, 55 mmol) の塩化メチレン (70 ml)
溶液にトリフルオロ酢酸 (70 ml)を加え、反応混合物を
室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、残渣
をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩27.4 g
(97.4 %)を無色粉末として得た。一方Boc-Ser(Bn)-OH
(15.93 g, 54 mmol)をDMF (30 ml) に溶解し、このも
のに氷冷しながらCDI(8.76 g, 54 mmol)のDMF (60 ml)
溶液を加えた。反応混合物を氷冷しながら1時間撹拌
したのち、上記操作により得られたトリフルオロ酢酸塩
(27.4 g, 53.6 mmol)とジイソプロピルエチルアミン
(7.10 g, 55 mmol)のDMF (45 ml) 溶液を加えた。反応
混合物を氷冷下2時間、更に室温まで昇温しながら終夜
撹拌した後、減圧下溶媒を留去した。残渣を適当量の酢
酸エチルで希釈し、水、1 M クエン酸溶液、飽和重曹
水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥のの
ち減圧濃縮し、目的とする中間体2を無色粉末として3
6.14 g(定量的)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 675.
【0038】3)中間体3の合成 中間体2 (36.14 g, 54 mmol) の塩化メチレン (70 ml)
溶液にトリフルオロ酢酸 (70 ml) を加え、反応混合物
を室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、残
渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩33.2
g(89.3 %)を無色粉末として得た。一方Boc-Gly-OH
(8.58 g, 49 mmol)をDMF (30 ml) に溶解し、このもの
に氷冷しながらCDI(7.95 g, 49 mmol) のDMF (60 ml)
溶液を加えた。反応混合物を氷冷しながら1時間撹拌し
たのち、上記操作により得られたトリフルオロ酢酸塩(3
3.2 g, 48.3 mmol) とジイソプロピルエチルアミン (6.
46 g, 50 mmol)のDMF(50 ml)溶液を加えた。反応混合物
を氷冷下2時間、更に室温まで昇温しながら終夜撹拌し
た後、減圧下溶媒を留去した。残渣を適当量の酢酸エチ
ルで希釈し、水、1 M クエン酸溶液、飽和重曹水、飽和
食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥ののち減圧濃
縮し、目的とする中間体3を無色粉末として34.87 g(9
8.8 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 732.
【0039】4)中間体4の合成 中間体3 (34.8 g, 47.7 mmol) の塩化メチレン (80 m
l) 溶液にトリフルオロ酢酸 (80 ml) を加え、反応混合
物を室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、
残渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩3
4.6 g(97.4 %)を無色粉末として得た。一方Boc-Ile-O
H (10.9 g, 47 mmol)をDMF (30 ml) に溶解し、このも
のに氷冷しながらCDI(7.62 g, 47 mmol) のDMF (60 m
l) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷しながら1時間撹
拌したのち、上記操作により得られたトリフルオロ酢酸
塩(34.6 g, 46.4 mmol) とジイソプロピルエチルアミン
(6.33 g, 48 mmol) のDMF(50 ml)溶液を加えた。反応
混合物を氷冷下2時間、更に室温まで昇温しながら終夜
撹拌した後、減圧下溶媒を留去した。残渣を適当量の酢
酸エチルで希釈し、水、1 M クエン酸溶液、飽和重曹
水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥のの
ち減圧濃縮し、目的とする中間体4を無色粉末として3
8.8 g(定量的)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 845.
【0040】5)中間体5の合成 中間体4 (38.8 g, 47.7 mmol) の塩化メチレン (60 m
l) 溶液にトリフルオロ酢酸 (60 ml)を加え、反応混合
物を室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、
残渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩3
8.1 g(95.6 %)を無色粉末として得た。一方Boc-Tyr(B
n)-OH (16.5 g, 44.4 mmol)をDMF (35 ml) に溶解し、
このものに氷冷しながらCDI(7.30 g, 45 mmol)のDMF
(50 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷しながら1時
間撹拌したのち、上記操作により得られたトリフルオロ
酢酸塩 (38.1 g, 44.4 mmol)とジイソプロピルエチルア
ミン (5.94 g, 46 mmol)のDMF (50 ml) 溶液を加えた。
反応混合物を氷冷下2時間、更に室温まで昇温しながら
終夜撹拌した後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エ
チルから再結晶し、目的とする中間体5を無色結晶とし
て36.51 g(75.0 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1098.
【0041】6)中間体6の合成 中間体5 (15.25 g, 13.9 mmol) を塩化メチレン (30 m
l)及びトリフルオロ酢酸 (30 ml)からなる混合溶媒に溶
解し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応終了後
溶媒を留去し、残渣をエーテルから結晶化させてトリフ
ルオロ酢酸塩15.5 g(定量的)を無色粉末として得た。
一方Boc-Asp(Bn)-OH (4.52 g, 14.0 mmol)をDMF (15 m
l) に溶解し、このものに氷冷しながらCDI(2.27 g, 1
4.0 mmol)のDMF (25 ml) 溶液を加えた。反応混合物を
氷冷しながら1時間撹拌したのち、上記操作により得ら
れたトリフルオロ酢酸塩 (15.5 g, 14.0 mmol)とジイソ
プロピルエチルアミン (1.94 g, 15 mmol)のDMF (35 m
l) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷下2時間、更に室
温まで昇温しながら終夜撹拌した後、減圧下溶媒を留去
した。残渣を酢酸エチル/エーテル(1/1)から再結
晶し、目的とする中間体6を無色結晶として16.6 g(9
1.1 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1303.
【0042】7)中間体7の合成 中間体6 (4.69 g, 3.6 mmol) を塩化メチレン (40 ml)
及びトリフルオロ酢酸(40 ml) からなる混合溶媒に溶解
し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応終了後溶
媒を留去し、残渣をエーテルから結晶化させてトリフル
オロ酢酸塩4.7 g(定量的)を無色粉末として得た。得
られたトリフルオロ酢酸塩2.54 g(1.9mmol)をピリジ
ン(1 ml)及びDMF(10 ml)からなる混合溶媒に溶解
し、このものにトリメシン酸クロライド (171 mg, 0.64
mmol)の塩化メチレン(5 ml)溶液を加えた。反応混合
物を室温に終夜放置したのち減圧下溶媒を留去した。残
渣を酢酸エチルから再結晶し、目的とする中間体7を無
色結晶として2.34 g(96.6 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 3763.
【0043】8)化合物1の合成 中間体7 (2.0 g, 0.52 mmol) のトリフルオロ酢酸 (15
ml) 溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸 (12 g)、
チオアニソール (8 ml)、m-クレゾール (7ml)、トリフ
ルオロ酢酸 (36 ml) からなる混合溶液を氷冷しながら
加え、反応混合物を氷冷下2時間撹拌した。反応液をエ
ーテル (800 ml) に滴下して30分間ゆっくり撹拌し
た。沈殿した粗ペプチドを少量の水にとかし、イオン交
換クロマトグラフィー(アンバーライトIRA-400、対イ
オンOAc-)にかけて精製、凍結乾燥して目的とする化合
物1を無色粉末として1.1 g (収率88 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 2407.
【0044】実施例2 化合物2の合成 1)Boc-Arg(Mts)-NHCH3の合成 Boc-Arg(Mts)-OH (20.0 g, 44 mol)とp-ニトロフェノー
ル (6.12 g, 44 mol)のDMF (15 ml) 及び塩化メチレン
(15 ml) 溶液を氷冷し、これにDCC (9.29 g,45 mol)を
加えた。反応混合物を氷冷下2時間、更に室温まで昇温
しながら6時間撹拌した後セライト濾過して生成した沈
殿を除去した。濾液を適当量の酢酸エチルで希釈し、
水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥のの
ち減圧濃縮して粗p-ニトロフェニルエステルを得た。こ
のものをTHF (100 ml) に溶解し、40 % メチルアミン溶
液 (6 ml) を加えて反応混合物を室温で18時間撹拌し
た。減圧下溶媒を留去し、残渣をエーテルから結晶化さ
せて目的とするBoc-Arg(Mts)-NHCH3を無色粉末として1
9.4 g (94 %) 得た。 FAB-MS: (M+H)+ 470.
【0045】2)以下実施例1に記載の方法に従い、Bo
c-Arg(Mts)-NHCH3から保護アミノ酸残基を順次N末端側
に縮合してペプチド鎖を伸張した。全保護ペンタペプチ
ドを合成ののちN末端Boc基を除去し、実施例1に記載
の方法と同様にテレフタロイルクロライドと反応した。
生成物の保護基をトリフルオロメタンスルホン酸/チオ
アニソール/m-クレゾール/トリフルオロ酢酸混合系処
理により除去したのち精製して化合物2を無色粉末とし
て得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1345.
【0046】実施例3 化合物3の合成 実施例2に記載の方法と同様に、p-ニトロフェニルエス
テル中間体にアンモニア水を反応させることによりBoc-
Arg(Mts)-NH2を合成した。以下保護アミノ酸残基を順次
N末端側に縮合してペプチド鎖を伸張した。全保護ヘキ
サペプチドを合成ののちN末端Boc基を除去し、アジポ
イルクロライド[ClCO-(CH2)4-COCl]と反応させた。生
成物の保護基をトリフルオロメタンスルホン酸/チオア
ニソール/m-クレゾール/トリフルオロ酢酸混合系処理
により除去したのち精製して、目的とする化合物3を無
色粉末として得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1527.
【0047】実施例4 化合物4の合成 中間体6のBoc基を除去して得られるトリフルオロ酢酸
塩(実施例1に記載)と化合物Aとの下記式で表される
反応を鍵段階として、目的とする化合物4を無色粉末と
して得た。なお化合物Aは、市販の1,2,3-プロパントリ
カルボン酸(Aldrich社製)を塩化チオニルと反応する
ことにより合成した。 FAB-MS: (M+H)+ 2373.
【0048】
【化6】
【0049】実施例5 化合物5の合成 中間体6のBoc基を除去して得られるトリフルオロ酢酸
塩(実施例1に記載)と化合物Bとの下記式で表される
反応を鍵段階として、目的とする化合物5を無色粉末と
して得た。 FAB-MS: (M+H)+ 2443.
【0050】
【化7】
【0051】実施例6 化合物6の合成 中間体6のBoc基を除去して得られるトリフルオロ酢酸
塩(実施例1に記載)と化合物Cとの下記式で表される
反応を鍵段階として、目的とする化合物6を無色粉末と
して得た。なお化合物Cは文献[Y.Iwakura et al., J.
Org.Chem, 31巻, 142 (1966)]記載の方法に従い合成し
た。 FAB-MS: (M+H)+ 1598.
【0052】
【化8】
【0053】実施例7 化合物7の合成 実施例3に記載の方法で合成した全保護ヘキサペプチド
のBoc基を除去して得られるトリフルオロ酢酸塩と化合
物Dとの下記式で表される反応を鍵段階として、目的と
する化合物7を無色粉末として得た。なお化合物Dは、
市販のピロメリット酸(和光純薬社製)を塩化チオニル
と反応することにより合成した。 FAB-MS: (M+H)+ 1599.
【0054】
【化9】
【0055】実施例8 化合物8の合成 実施例2に記載の方法に準じて合成した全保護ヘキサペ
プチドのBoc基を除去して得られるトリフルオロ酢酸塩
と化合物Eとの下記式で表される反応を鍵段階として、
目的とする化合物8を無色粉末として得た。なお化合物
Eは、市販の1,3-ベンゼンジスルホン酸(Aldrich社
製)を塩化チオニルと反応することにより合成した。 FAB-MS: (M+H)+ 1647.
【0056】
【化10】
【0057】実施例9 実験的肺転移モデル系による癌
転移阻害作用に関する検討 本発明のペプチド誘導体のガン転移抑制作用について、
実験的肺転移モデル系によって検討した。実施例に記載
した本発明の化合物1〜8、比較例として特開平3-2196
号公報に記載のAc-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2を用いた。
これらのペプチド各々500 μgと非常に転移性の強いガ
ン細胞であるB16-BL6メラノーマ細胞(対数増殖期のも
の5 x 104)を各々PBS0.2 ml中で混合し、これを1群5
匹のC57BL/6の雌マウスに尾静脈注射した。投与後14日
目にマウスを屠殺、解剖し、肺に転移した癌のコロニー
数を計測して対照のPBS投与群と比較した。その結果を
以下に示す。
【0058】
【表1】 ───────────────────────────────── 投与化合物 肺への転移数 平均±SD (範囲) ───────────────────────────────── PBS(未処理) 154±27 (106-197) 化合物1 41±5 (34-48)** 化合物2 52±25 (33-87)** 化合物3 118±6 (109-126)* 化合物4 60±9 (52-76)** 化合物5 60±11 (44-77)** 化合物6 90±5 (83-95)** 化合物7 44±14 (30-63)** 化合物8 98±19 (76-126)** Ac-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2 120±40 (88-177) ───────────────────────────────── * t-検定で未処理区と比較して P<0.05 ** P<0.01
【0059】この結果によれば、本発明の化合物1から
8の投与によって肺への癌転移は有意に抑制された。こ
れに対し公知のAc-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2は、マウス
1匹あたり500 μgの投与量では顕著な転移抑制効果は
示さなかった。
【0060】実施例10 自然肺転移モデル系による癌
転移阻害作用の検討 本発明の化合物のガン転移抑制作用について、現実的な
病態治療モデルである自然肺転移抑制試験により検討し
た。本発明の化合物1、2、4、5と、比較化合物とし
て特開平3-2196号公報に記載のAc-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg
-NH2を用いた。1群7匹のC57BL/6の雌マウスを用い、
これらの右足かかと部分にB16-BL6メラノーマ細胞(対
数増殖期のもの5 x 104/50 μl)を移植した。移植後1
4、16、18、20、22、24、26日目に被試験化合物を尾静
脈注射により投与した(1回あたり100 μg/200 μl PB
S)。この間移植後21日目に原発巣を外科的に切除し
た。メラノーマ移植後35日目にマウスを屠殺、解剖し、
肺に転移した癌のコロニー数を計測して対照のPBS投与
群と比較した。その結果を以下に示す。
【0061】
【表2】 ──────────────────────────────── 投与化合物 肺への転移数 平均±SD (範囲) ──────────────────────────────── PBS(未処理) 84±32 (41-128) Ac-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2 71±25 (35-101) 化合物1 31±11 (18-50)** 化合物2 53±16 (27-78)* 化合物4 37±11 (25-57)** 化合物5 41±16 (10-61)** ──────────────────────────────── * t-検定で未処理区と比較して P<0.05 ** P<0.01
【0062】この結果によれば、本発明の化合物1、
2、4、5の投与によって、現実的な病態治療モデルで
ある自然肺転移抑制試験においてもガンの転移数は有意
に抑制された。これに対し公知のペンタペプチドである
Ac-Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg-NH2には、転移の抑制効果はほ
とんどなかった。従って本発明のペプチド誘導体のガン
転移抑制効果、およびその有用性、優位性は明白であ
る。
【0063】以上実施例により本発明を特定の例に関し
て説明したが、限定して解釈されるべきではない。本発
明の本質及び範囲から逸脱しない種々の変更や修正が可
能であることは明らかである。そしてそのような発明は
本発明に含まれると考える。
【0064】
【発明の効果】以上説明したように本発明のペプチド誘
導体は細胞接着性蛋白質であるラミニンのコア配列と比
較して細胞接着性が大きく、ガン転移抑制作用等の種々
の生物活性を充分に保持し、毒性の問題もほとんど無
い。さらに特筆すべきは、現実的な病態治療モデルであ
る自然肺転移抑制試験においてもガン転移抑制作用を示
す。またその構造は単純であるため合成も容易であり、
医薬として価値の高いものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 東 市郎 北海道札幌市南区真駒内上町5丁目3−2

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I)で表される配列を構成
    単位として有するペプチドがそのアミノ末端側から適当
    な有機分子と共有結合してなり、1分子内に定まった複
    数個の下記一般式(I)で表される配列を含んでいるこ
    とを特徴とするペプチド誘導体またはその薬学上許容で
    きる塩。一般式(I) [X]−Tyr−Ile−Gly−Ser−Arg−Y (I) 式中[X]は存在するかあるいは存在しないアミノ酸残
    基を表し、存在する場合はGluまたはAsp残基を表
    す。Yは−OHあるいは−NR12を表す。ここでR1
    及びR2は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を
    表す。R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、また
    これら2つが連結して環を形成していてもよい。
  2. 【請求項2】 一般式(I)で表される配列を構成単位
    として有するペプチドと有機分子の結合様式が、アミド
    結合、イミド結合、ウレタン結合及び尿素結合の少なく
    とも1種である請求項1に記載のペプチド誘導体または
    その薬学上許容できる塩。
  3. 【請求項3】 一般式(I)で表される配列を構成単位
    として有するペプチドと共有結合を形成する有機分子
    が、アミノ基と反応してアミド結合、イミド結合、ウレ
    タン結合及び尿素結合の少なくとも1種である結合を形
    成しうるような官能基を1分子中に2個以上6個以下有
    する分子である、請求項1または2に記載のペプチド誘
    導体またはその薬学上許容できる塩。
  4. 【請求項4】 一般式(I)で表される配列を構成単位
    として有するペプチドと共有結合を形成する有機分子
    が、2価以上6価以下の有機酸またはその活性誘導体で
    ある請求項1〜3のいずれかに記載のペプチド誘導体ま
    たはその薬学上許容できる塩。
  5. 【請求項5】 薬学上許容できる賦形剤及び請求項1〜
    4のいずれかに記載のペプチド誘導体またはその薬学上
    許容できる塩を有効成分として含有してなる、ガン転移
    抑制剤。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002069055A (ja) * 2000-05-15 2002-03-08 Bayer Corp トリプシン基質及び診断具ならびにその使用方法

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