JPH05318415A - 改質木材の製法 - Google Patents

改質木材の製法

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JPH05318415A
JPH05318415A JP13393792A JP13393792A JPH05318415A JP H05318415 A JPH05318415 A JP H05318415A JP 13393792 A JP13393792 A JP 13393792A JP 13393792 A JP13393792 A JP 13393792A JP H05318415 A JPH05318415 A JP H05318415A
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JP
Japan
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wood
inorganic substance
insoluble
water
cation
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Application number
JP13393792A
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English (en)
Inventor
Kenji Onishi
兼司 大西
Hiroaki Usui
宏明 碓氷
Satoru Konishi
悟 小西
Hiroyuki Ishikawa
博之 石川
Arihiro Adachi
有弘 足立
Ryusuke Honda
龍介 本田
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Panasonic Electric Works Co Ltd
Original Assignee
Matsushita Electric Works Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 木材中心部にまで不溶性不燃性無機物が生
成、定着しているとともに、従来法に比べて、不溶性不
燃性無機物の含浸率が高く、難燃性(防火性)等の性能
がより優れた改質木材を得ることができる方法を提供す
る。 【構成】 水溶性無機物、溶媒および粘稠剤を含むスラ
リー状の混合物からなるカチオン含有薬剤とアニオン含
有薬剤とを原料木材の相対する面から含浸させることに
より木材組織内に不溶性不燃性無機物を生成・定着させ
るようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、住宅設備、建築材料
等に用いられる改質木材の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、木材に対し、難燃性(防火性)、
防腐・防虫性、寸法安定性、耐水・耐湿性、表面硬度、
力学的強度、耐磨耗性等を付与する改質法として、不溶
性不燃性無機物との複合、機能性樹脂との複合、化学修
飾、薬剤含浸等の方法が実施されている。
【0003】これらの方法のうち、不溶性不燃性無機物
との複合法は、主として難燃性(防火性)、寸法安定
性、防腐・防虫性、力学的強度,表面硬度等を付与する
目的で行われている。この方法では、難燃性に関しては
準不燃レベルに達する改質木材が得られており、そのた
め、得られた改質木材は、防火ドア等の材料として利用
されている。
【0004】以下に、不溶性不燃性無機物との複合法、
すなわち、不溶性不燃性無機物を木材中に含ませること
により木材を改質する方法について詳しく説明する。一
般に、木材に難燃性を付与するための改質方法は、以下
のような難燃化のメカニズムに基づいて大別されてい
る。 (a)無機物による被覆 (b)炭化促進 (c)発炎燃焼における連鎖反応の阻害 (d)不燃性ガスの発生 (e)分解・結晶水放出による吸熱 (f)発泡層による断熱 ここで、木材中に不溶性不燃性無機物を含ませるという
改質方法は、以下に説明するように、上記(a)以外に
も、無機物の種類によっては、(b)、(c)、(d)
等による効果も併せて期待できる優れた方法である。し
かも、不溶性不燃性無機物は、一旦、木材組織内に定着
させられれば、木材から溶け出す恐れが少ないので、前
記効果が薄れるといった心配も少ない。
【0005】上記(a)から(d)までの難燃化のメカ
ニズムについて、次に詳しく説明する。(a)の無機物
による被覆は、たとえ可燃性の材料であっても、それを
不燃性の無機物と適当な配合比で複合することにより難
燃化しうるということである。たとえば、従来知られて
いる木片セメント板は、可燃性木材を不燃性のセメント
と約3対1ないし1対1の重量配合比で混合し、板状に
成形したものであって、JISで準不燃材料として認め
られている。
【0006】(b)の炭化促進は、次のようなメカニズ
ムである。木材は、加熱されると熱分解して可燃性ガス
を発生し、これが発炎燃焼するわけであるが、この時、
リン酸あるいはホウ酸が存在すると、木材の熱分解、す
なわち炭化が促進され、速やかに炭化層が形成される。
この炭化層が断熱層として作用し、難燃効果が生じる。
したがって、不溶性不燃性無機物がリン酸成分あるいは
ホウ酸成分を含む場合は、難燃効果が一層高いものとな
る。
【0007】(c)の発炎燃焼における連鎖反応の阻害
とは、ハロゲンにより寄与されるものであり、炎中での
ラジカル的な酸化反応において、ハロゲンが連鎖移動剤
として作用する結果、酸化反応が阻害されて難燃効果が
生じるというメカニズムである。したがって、不溶性不
燃性無機物がハロゲンを含んでおれば、このメカニズム
による難燃効果も得られる。
【0008】(d)の不燃性ガスの発生は、次のような
メカニズムである。すなわち、炭酸塩、アンモニウム塩
等の化合物が、熱分解により炭酸ガス、亜硫酸ガス、ハ
ロゲン化水素などの不燃性ガスを発生し、これらのガス
が可燃性ガスを希釈することにより燃焼を妨げるという
メカニズムである。したがって、不溶性不燃性無機物が
炭酸塩等の不燃性ガスを発生しうるものを含んでいれ
ば、このメカニズムによる難燃効果も併せて得られる。
【0009】次に、木材の防腐・防虫化について説明す
る。菌類が木材を腐敗させる際、まず、菌糸が木材内腔
中へ侵入することが不可欠である。しかし、木材内腔中
に異物が存在すると菌糸が侵入できないため、木材は、
結果的に腐敗しにくくなる。木材内腔中の異物は、防腐
効果のある薬剤(防腐剤)である必要は特になく、菌類
の養分になるものでなければ、何であっても良い。防虫
についても防腐と同じである。したがって、不溶性不燃
性無機物を木材内腔中に含ませれば、木材の防腐・防虫
性を向上させうる。ただし、前記異物は、薬剤効果があ
るものであればそれにこしたことはなく、たとえば、虫
に対して消化性の悪いもの、消化しないもの、あるい
は、忌避作用のあるものが好ましい。
【0010】さらに、木材の寸法安定化および力学的強
化について説明する。木材を水で膨潤させておいて木材
細胞壁中に何らかの物質を固定できれば、バルク効果に
より、寸法安定化効果および力学的強化効果が得られ
る。すなわち、木材細胞壁内が充填材によって占められ
ておれば、木材自体の膨張あるいは収縮が起こりにくく
なり、同時に、各種力学的強度も向上するのである。こ
こで、固定物質としては、水に溶けにくい無機物も使い
うる。したがって、不溶性不燃性無機物を木材細胞壁中
に固定すれば、寸法安定性および力学的強度を向上させ
うる。
【0011】最後に、木材の硬度(表面硬度)向上につ
いて説明すれば、一般に、木材の硬度を上げるために
は、木材内部の導管等の空隙や木材の細胞壁に無機物等
の硬い物質を詰め込んでやればよいため、木材内に不溶
性不燃性無機物を定着させることにより、木材細胞の補
強ならびに硬度の上昇という効果が得られる。この場合
に、木材の表層部分に集中的に無機物を生成させれば、
より効果的である。
【0012】以上のように、不溶性不燃性無機物を含ま
せるという方法は、難燃化をはじめとする木材の改質に
おいて非常に有効であるが、従来、下記のような問題を
有していた。一般に、不溶性不燃性無機物をそのまま水
などの溶媒に分散させ、この分散液からなる処理液中に
木材を浸漬して処理液を木材中に浸透させようとして
も、浸透していくのは、ほとんど水等の溶媒のみとなっ
てしまう。これは、次のような理由による。すなわち、
木材中に浸透する際に処理液が通過する経路のうち、最
も狭い部分はピットメンブランであるが、ここにおける
空隙径が約0.1μmであるのに対し、分散した不溶性
不燃性無機物の粒子は、普通、0.1μmよりもかなり
大きいからである。
【0013】そこで、この問題を解決できる方法が開発
された。すなわち、混合することにより互いに反応して
不溶性不燃性無機物を生じさせるカチオンおよびアニオ
ンを別々に含ませた2種の水溶液(以下、順に「カチオ
ン含有処理液」、「アニオン含有処理液」と称する)
を、水溶性無機物を水に溶解させることにより調製し、
両水溶液を順に原料木材中に含浸させて、木材中で上記
両イオンを反応させることにより、不溶性不燃性無機物
を生成させるという改質木材の製法である(特開昭61
−246003号公報等参照)。
【0014】この方法によれば、不溶性不燃性無機物
を、固体粒子として浸透させるのでなく、イオンの形で
水などの媒体中に溶存させた状態で浸透させるので、含
浸が容易であり、極めて多量の不溶性不燃性無機物を効
率良く木材中に含ませることができる。そのため、防腐
・防虫性や寸法安定性等に極めて優れた改質木材を得る
ことができる。
【0015】この改質方法においては、具体的には、カ
チオン含有処理液およびアニオン含有処理液は、所定の
カチオンを含む水溶性無機物および所定のアニオンを含
む水溶性無機物を別々に水に溶解させることにより得ら
れ、より具体的には、通常、単独の水溶性無機物を含む
処理液の組み合わせ(単独溶液系の掛け合わせ)が用い
られている。たとえば、CaCl2 を含むカチオン含有
処理液とK2 CO3 を含むアニオン含有処理液とを木材
に含浸させたり、AlCl3 を含むカチオン含有処理液
と(NH4)2 HPO4 を含むアニオン含有処理液とを木
材に含浸させたりして、木材中に不溶性不燃性無機物を
生成させるようにしている。
【0016】しかし、カチオン含有処理液とアニオン含
有処理液を順次原料木材に含浸させて木材内に不溶性不
燃性無機物を生成・定着させる前記方法により得られた
改質木材は、木材断面中央部に比べて、表層部により多
くの不溶性不燃性無機物を含有しているため、木材表面
の切削、研磨等の加工を行った場合、前記無機物の損失
が多く、性能が低下するという問題があった。
【0017】この問題を解消するため、発明者らは、改
質しようとする原料木材に対し、互いに反応することに
より不溶性不燃性無機物を生じさせるカチオン含有薬剤
とアニオン含有薬剤とを、前記原料木材の相対する面か
ら含浸させることにより木材組織内に前記不溶性不燃性
無機物を生成・定着させる改質木材の製法をすでに開発
している。この方法では、原料木材の相対する面に、水
溶性無機物固体またはその水溶液からなるカチオン含有
薬剤とアニオン含有薬剤とを散布、塗布等の方法により
付着させ、含浸させる。この方法によれば、カチオン含
有薬剤とアニオン含有薬剤との反応が木材の中心部から
起こっていくため、木材中心部にまで不溶性不燃性無機
物が生成・定着する。その結果、木材表面の加工により
性能が低下するということの少ない改質木材を得ること
ができる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前述した、
カチオン含有薬剤とアニオン含有薬剤とを原料木材の相
対する面から含浸させる方法では、下記のような問題点
があった。水溶液状の薬剤を木材に付着させて含浸する
場合、その薬剤中に含まれる無機物濃度には限りがある
とともに、付着させる際、薬剤の粘度が低く、流出しや
すいため、多量の薬剤を木材に付着させることは困難で
ある。そのため、高含浸率の不溶性不燃性無機物を有す
る改質木材を得ることができない。一方、固体状の薬剤
を木材に付着させて含浸する場合、前述の水溶液状薬剤
の場合に比べると、木材への付着量は多くなる。しか
し、薬剤を溶解させて木材中に浸透させるためにあらか
じめ原料木材に含ませておく水だけでは、薬剤溶解度に
限りがあるので、多量の薬剤を付着させても、薬剤をす
べて溶解することは難しいため、多量の薬剤を木材中に
含浸させることは困難である。
【0019】このような事情に鑑み、この発明は、木材
中心部にまで不溶性不燃性無機物が生成、定着している
とともに、従来法に比べて、不溶性不燃性無機物の含浸
率が高く、難燃性(防火性)等の性能がより優れた改質
木材を得ることができる方法を提供することを課題とす
る。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、この発明にかかる改質木材の製法は、改質しようと
する原料木材に対し、互いに反応することにより不溶性
不燃性無機物を生じさせるカチオン含有薬剤とアニオン
含有薬剤とを、前記原料木材の相対する面から含浸させ
ることにより木材組織内に前記不溶性不燃性無機物を生
成・定着させる改質木材の製法であって、前記カチオン
含有薬剤およびアニオン含有薬剤が、水溶性無機物、溶
媒および粘稠剤を含んでなるスラリー状の混合物である
ことを特徴とする。
【0021】この発明に用いられる改質のための原料木
材としては、特に限定はされず、原木丸太、製材品、ス
ライス単板、合板等が例示されるが、薬剤含浸させる面
が木材体積に対し広い方が望ましい。それらの樹種等に
ついても、何ら限定されることはない。木材中に生成さ
せて木材組織内に分散・定着させる不溶性不燃性無機物
としては、特に限定はされないが、たとえば、ホウ酸
塩、リン酸塩、リン酸水素塩、炭酸塩、硫酸塩、硫酸水
素塩、ケイ酸塩、硝酸塩、水酸塩等の各種塩が挙げられ
る。これらの塩のうち、たとえば炭酸塩について具体例
を挙げると、BaCO3 、CaCO3 、FeCO3 、M
gCO3 、MnCO3 、NiCO3 、ZnCO3 等であ
る。不溶性不燃性無機物は、2種以上が木材中に共存す
るようであってもよい。木材内の不溶性不燃性無機物
は、木材セルロースと反応した形で定着していてもよ
い。
【0022】なお、1種の不溶性不燃性無機物中に、後
述のカチオンおよび/またはアニオン種がそれぞれ2種
以上含まれていてもよい。不溶性不燃性無機物を木材組
織内で生成させるためには、原料木材に含浸させる薬剤
として、この不溶性不燃性無機物のカチオン部を構成す
るカチオン種を含む後述の1群の水溶性無機化合物(以
下、これを「水溶性無機物(I)」と称する)を一成分
とするカチオン含有薬剤と、前記不溶性不燃性無機物の
アニオン部を構成するアニオン種を含む後述の他の1群
の水溶性無機化合物(以下、これを「水溶性無機物(I
I)」と称する)を一成分とするアニオン含有薬剤とを
用いればよい。
【0023】ここで、不溶性不燃性無機物のカチオン部
を構成するカチオン種としては、特に限定はされない
が、たとえば、Na,K等のアルカリ金属、Ca,B
a,Mg,Sr等のアルカリ土類金属、Fe,Cu,C
o,Mn,Ni,Cd等の遷移元素、Si,Pb等の炭
素族元素、Zn、Al等が挙げられる。これらのうちで
も、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ZnおよびAl
の各カチオンが好ましい。また、前記アルカリ土類金属
の中では、Ca、Ba、Mgの各カチオンが好ましい。
【0024】また、不溶性不燃性無機物のアニオン部を
構成するアニオン種としては、特に限定はされないが、
たとえば、B47 、BO3 、PO4 、CO3 、SO
4 、NO3 、Cl、Br、F、IおよびOH等が挙げら
れる。これらのうちでも、BO 3 、PO4 、CO3 、S
4 、F、Cl、BrおよびOHの各アニオンが好まし
い。また、これらのアニオンのうち、B47 、BO3
およびPO4 には前記の(b)のメカニズムによる難燃
効果が、CO3 には前記の(d)のメカニズムによる難
燃効果が、Cl、F、Br等のハロゲンには前記の
(c)および(d)のメカニズムによる難燃効果が、そ
れぞれ期待できる。
【0025】上記カチオンとアニオンは、木材内に生じ
させようとする所望の不溶性不燃性無機物の組成に応じ
て任意に選択される。ただし、前記カチオンとアニオン
との組み合わせに関しては、木材組織内で不溶性不燃性
無機物が生成されやすいような組み合わせが適宜選択さ
れる。水に溶けて前記所望のカチオンを生じさせる水溶
性無機物(I)としては、特に限定されないが、たとえ
ば、MgCl2 、MgBr2 、MgSO4 ・H2 O、M
g(NO3)2 ・6H2 O、CaCl2 、CaBr2 、C
a(NO3)2 、BaCl2 ・2H2 O、BaBr2 、B
a(NO3)2 、AlCl3 、AlBr3 、Al 2(SO4)
3 、Al(NO3)3 ・9H2 O、ZnCl2 等が挙げら
れる。
【0026】また、水に溶けて前記所望のアニオンを生
じさせる水溶性無機物(II)としては、特に限定されな
いが、たとえば、Na2 CO3 、(NH4)2 CO3 、H
2 SO4 、Na2 SO4 、(NH4)2 SO4 、H3 PO
4 、Na2 HPO4 、(NH 4)2 HPO4 、H3 BO
3 、NaBO2 、NH4 BO2 等が挙げられる。この発
明で用いられるカチオン含有薬剤は、水溶性無機物
(I)、溶媒および粘稠剤を含んでなるスラリー状の混
合物である。
【0027】また、この発明で用いられるアニオン含有
薬剤は、水溶性無機物(II)、溶媒および粘稠剤を含ん
でなるスラリー状の混合物である。薬剤(以下、カチオ
ン含有薬剤とアニオン含有薬剤に共通な事柄を述べる場
合、これらを総称して単に「薬剤」と言うことがある)
の粘度は、特に限定されるわけではないが、木材に対す
る薬剤の付着量をより多くするためには、5000セン
チポイズ以上であることが好ましい。
【0028】この発明で用いられる溶媒としては、無機
物の溶解度、含浸効率の点から水単独が好ましいが、こ
れに限定されない。たとえば、水と親水性有機溶媒とを
併用してもよいのである。この発明で用いられる粘稠剤
としては、特に限定はされないが、炭水化合物、多価ア
ルコール類等のように、加熱時に炭化するものが好まし
い。このような粘稠剤を用いた場合、火災等により木材
が加熱された際、木材中に含浸された粘稠剤が炭化層を
形成し、その炭化層が防火上有効な断熱効果を持つた
め、得られる改質木材の防火性をより向上させることが
可能になるからである。
【0029】使用できる炭水化合物としては、特に限定
はされないが、たとえば、デンプン、メチルセルロー
ス、カルボキシメチルセルロース、ペンタエリスリトー
ル等が挙げられる。使用できる多価アルコール類として
は、特に限定はされないが、たとえば、ポリビニルアル
コール等が挙げられる。
【0030】薬剤中に含まれる水溶性無機物(I)また
は(II)と、粘稠剤および溶媒は、それぞれ、1種のみ
用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。以上に述
べたカチオン含有薬剤とアニオン含有薬剤とを原料木材
の相対する面から含浸させる方法としては、特に限定は
されないが、たとえば、原料木材の相対する面A、Bに
対し、前記両薬剤のうちの一方の薬剤をA面に付着させ
るとともに、B面には他方の薬剤を付着させて、含浸さ
せる方法が挙げられる。また、片面に一方の薬剤を付着
させた原料木材と、片面に他方の薬剤を付着させた別の
原料木材とを、それらの薬剤が付着されている面を同じ
方向に向けて、交互に重ねることにより含浸を行うよう
にしてもよい。この方法は、複数の原料木材を1度に処
理することができ、処理効率が上がるので好ましい。木
材に薬剤を付着させる方法については、特に限定されな
い。たとえば、薬剤を木材面に塗布することにより付着
させてもよい。塗布の方法は、特に限定されず、たとえ
ば、刷毛で塗布してもよいし、あるいは、スプレーで塗
布してもよい。
【0031】薬剤の含浸回数は、特に限定されない。1
回だけ含浸させてもよいし、あるいは、複数回含浸させ
てもよい。複数回含浸させる場合、薬剤は、各含浸の回
の間で、同一種のものであっても、異種のものであって
も構わない。また、含浸の処理時間や温度等の処理条件
も特に限定されない。なお、薬剤の最初の含浸処理に先
立ち、溶媒を原料木材内に含ませる処理を施して、原料
木材中に溶媒が充分に含浸された状態にしておくことが
推奨される。これにより、木材中の溶媒を媒体として薬
剤成分が木材中に速く拡散、浸透していくようになり、
処理時間を短縮することができるからである。このよう
な含溶媒処理が施された原料木材の溶媒含有率(含溶媒
率)としては、原料木材の絶乾重量に対して80%以上
が好ましく、100%以上がさらに好ましい。含溶媒処
理の方法としては、特に限定されないが、たとえば、加
熱浸漬、水中貯木、スチーミング、減圧下含浸、加圧下
含浸などで行う。
【0032】薬剤を含浸させ反応させる際には、木材中
の媒体となる溶媒が揮発して木材が乾燥しないようにす
ることが好ましい。その方法としては、特に限定はされ
ないが、たとえば、薬剤を付着させた原料木材を密封す
る方法等が挙げられる。含浸処理する際または含浸処理
後には、必要に応じて養生処理を行い、薬剤の含浸や不
溶性不燃性無機物の生成反応を促進させて、処理効率を
より高めるようにしてもよい。
【0033】養生処理の方法としては、たとえば、超音
波振動、加圧、電波、高周波、マイクロ波等の物理的刺
激を与える方法等が挙げられる。物理的刺激を与える方
法は、薬剤の拡散・反応を促進することにより短時間で
多量の不溶性不燃性無機物を木材内に生成させることの
できる優れた方法である。養生処理の温度、時間等は、
特に限定されない。
【0034】なお、前述のようにして、薬剤を付着させ
た複数の原料木材を、それらの薬剤が付着されている面
を同じ方向に向けて交互に重ねることにより、各原料木
材の相対する面から異なる薬剤を含浸させた後、必要に
応じては、薬剤が付着している面同士を合わせるように
原料木材の重ね合わせ方を変更するようにしてもよい。
このような操作を行った場合は、木材表層部に残留する
未反応の水溶性無機物(I)および(II)を木材表層部
で接触、反応させて、木材表層部にも多量の不溶性不燃
性無機物を生成させることができ、その結果、木材内に
不溶性不燃性無機物として固定化される水溶性無機物
(I)および(II)の歩留りを向上させることができ
る。このような原料木材の重ね合わせ方の変更を行う時
機については、特に限定はされず、たとえば、木材面に
付着させた薬剤が木材内に含浸した時点等が挙げられ
る。
【0035】以上の含浸処理により木材内に不溶性不燃
性無機物を生成・定着させた後、必要に応じては、木材
表面の水洗等を行い、乾燥させることによって、改質木
材を得る。なお、改質木材の耐久性や耐候性等を高める
ために、必要に応じては、得られた改質木材を水や他の
適当な溶媒中に浸漬して、木材中に残留している可溶性
の未反応薬剤成分や副生成物等を除去してもよい。これ
らの可溶性成分は、吸水、吸湿量が多く、その種類によ
っては潮解性を示す場合もあるので、これらが木材中に
過量に存在すると、木材の吸水、吸湿性が高くなりすぎ
るため、建材用途等として不適当になる恐れがあるから
である。一方、このような可溶性成分の中にも、木材の
寸法安定化はもちろん、力学的強度化や難燃化等にも寄
与できる成分も多く含まれているため、それらを適宜残
すようにして、その分の木材性能の向上を図るのも一策
である。
【0036】
【作用】水溶性無機物、溶媒および粘稠剤を含んでなる
スラリー状の混合物を薬剤として用いるようにすると、
溶液状の薬剤を用いる場合に比べて、粘稠剤の添加によ
り薬剤粘度が高まり、木材への薬剤付着量が多くなる。
また、固体状の薬剤を用いる場合に比べて、薬剤中に溶
媒が含まれているため、薬剤付着量を多くしても、薬剤
が木材中に容易に浸透、含浸される。その結果、木材内
に不溶性不燃性無機物を高含浸率で生成・定着させるこ
とができ、木材の性能をより向上させることが可能にな
る。
【0037】また、この発明では、薬剤の含浸は、木材
の相対する面から行うようにしている。すると、薬剤の
反応が木材中心部から起こっていくため、木材中心部に
まで多量の不溶性不燃性無機物が生成・定着する。その
ため、得られた改質木材の表面加工を行っても木材表面
の不溶性不燃性無機物の損失量が少なくてすむので、性
能低下が抑えられる。
【0038】
【実施例】以下に、この発明の具体的な実施例および比
較例を示すが、この発明は下記実施例に限定されない。 −実施例1− 原料木材として、含水率150〜160%、1mm厚のア
ガチス材ロータリー単板(1)および(2)をそれぞれ
複数枚用意した。
【0039】100ccの水に、粘稠剤としてメチルセル
ロース3gを溶解させ、さらに200gのNa2 HPO
4 ・12H2 Oを混合してスラリー化させることによ
り、アニオン含有薬剤(アニオンスラリー)を得た。得
られたアニオン含有薬剤を単板(1)の上面に1634
g/m2 の量均一に塗布した。次に、100ccの水に、
粘稠剤としてメチルセルロース9gを溶解させ、さらに
200gのBaCl2 ・2H2 Oを混合してスラリー化
させることにより、カチオン含有薬剤(カチオンスラリ
ー)を得た。得られたカチオン含有薬剤を単板(2)の
上面に1198g/m2 の量均一に塗布した。
【0040】上記のようにして得られた、アニオン含有
薬剤を塗布した単板(1)と、カチオン含有薬剤を塗布
した単板(2)とを、それらの薬剤塗布面を上に向けて
交互に複数枚積層し、80℃で8時間養生を行うことに
より、木材内部に不溶性不燃性無機物を生成させた。そ
の後、積層単板をばらし、水洗いすることにより、改質
木材を得た。
【0041】−実施例2〜4− 実施例1において、原料木材の樹種、厚み、初期含水
率、薬剤の組成、塗布量を下記表1に示す通りとした以
外は実施例1と同様にして、改質木材を得た。 −比較例1− 実施例1において、アニオン含有薬剤としてアニオンス
ラリーの代わりにNa 2 HPO4 ・12H2 O(固体)
をそのまま単板(1)の上面に741g/m2の量均一
に散布するとともに、カチオン含有薬剤としてカチオン
スラリーの代わりにBaCl2 ・2H2 O(固体)をそ
のまま単板(2)の上面に1089g/m2 の量均一に
散布するようにした以外は実施例1と同様にして、改質
木材を得た。
【0042】−比較例2− 実施例1において、アニオン含有薬剤としてアニオンス
ラリーの代わりにNa 2 HPO4 ・12H2 Oの2モル
/水1リットル濃度水溶液を単板(1)の上面に218
g/m2 の量均一に塗布するとともに、カチオン含有薬
剤としてカチオンスラリーの代わりにBaCl2 ・2H
2 Oの2モル/水1リットル濃度水溶液を単板(2)の
上面に218g/m2 の量均一に塗布するようにした以
外は実施例1と同様にして、改質木材を得た。
【0043】以上の実施例1〜4および比較例1〜2で
得られた改質木材について、不溶性不燃性無機物の含浸
率と難燃性を調べた。不溶性不燃性無機物の含浸率は、
下記の式に従って求めた。 含浸率(%)={(W2−W1)/W1}×100 (式中、W1は未処理木材の絶乾重量を表し、W2は処理木
材の絶乾重量を表す。) 難燃性試験は、JIS−A1321の表面試験に従って
行い、難燃3級に相当するものを○で、難燃3級には相
当しないが、難燃性を有しているものを△で、それぞれ
評価した。
【0044】以上の結果を下記表1および2に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】表1および2にみるように、実施例1〜4
で得られた改質木材は、比較例1〜2で得られた改質木
材に比べて、不溶性不燃性無機物含浸率がいずれも高
く、しかも難燃性に優れている。比較例1では、実施例
1に比べて、水溶性無機物自身の付着量はほぼ同じであ
るにもかかわらず、不溶性不燃性無機物の含浸率が低
く、処理終了後に単板表面に薬剤が溶け残っていた。こ
のことから、水溶性無機物自身の付着量がたとえ同じあ
っても、水溶性無機物に水と粘稠剤を加えてスラリー状
として付着させた方が、水溶性無機物を単独で付着させ
る場合に比べて、多量の不溶性不燃性無機物を木材内に
生成させることができることが確認された。
【0048】水溶液状の薬剤を用いた比較例2では、水
溶性無機物の溶解度および木材表面に塗布できる量に制
限あることから、不溶性不燃性無機物の含浸率が低くな
ることが確認された。
【0049】
【発明の効果】この発明にかかる改質木材の製法によれ
ば、木材中心部にまで不溶性不燃性無機物が生成、定着
しているとともに、従来法に比べて、不溶性不燃性無機
物の含浸率が高く、難燃性(防火性)等の性能がより優
れた改質木材を得ることができる。
【0050】得られた改質木材は、有効成分である不溶
性不燃性無機物が木材中心部にまで多量に生成・定着し
ているため、木材の表面の加工を行う際に、木材表面の
不溶性不燃性無機物の損失量が少なくてすむので、性能
低下が抑えられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石川 博之 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 足立 有弘 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内 (72)発明者 本田 龍介 大阪府門真市大字門真1048番地松下電工株 式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 改質しようとする原料木材に対し、互い
    に反応することにより不溶性不燃性無機物を生じさせる
    カチオン含有薬剤とアニオン含有薬剤とを、前記原料木
    材の相対する面から含浸させることにより木材組織内に
    前記不溶性不燃性無機物を生成・定着させる改質木材の
    製法であって、前記カチオン含有薬剤およびアニオン含
    有薬剤が、水溶性無機物、溶媒および粘稠剤を含んでな
    るスラリー状の混合物であることを特徴とする改質木材
    の製法。
  2. 【請求項2】 粘稠剤が、加熱時に炭化するものであ
    り、かつ、炭水化合物および多価アルコール類からなる
    群の中から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載
    の改質木材の製法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10137351A (ja) * 1996-11-08 1998-05-26 Matsushita Seiko Co Ltd No2除去用かつアレルギー対応マスク

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